ページ番号1009372 更新日 令和4年6月3日

原油市場他:OPEC及び一部非OPEC(OPECプラス)産油国が2022年7月につき前月比で日量64.8万バレル減産措置を縮小する旨決定(速報)

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レポートID 1009372
作成日 2022-06-03 00:00:00 +0900
更新日 2022-06-03 10:14:30 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 市場
著者 野神 隆之
著者直接入力
年度 2022
Vol
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ページ数 13
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地域1 グローバル
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国・地域 グローバル
2022/06/03 野神 隆之
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概要

  1. OPEC及び一部非OPEC(OPECプラス)産油国は2022年6月2日に閣僚級会合を開催し、2021年8月以降2022年4月まで毎月前月比で日量40万バレル、2022年5~6月については前月比で日量43.2万バレル、それぞれ規模を縮小しながら実施中である減産措置(2022年6月現在日量292万バレル)を、2022年7月については前月比で日量64.8万バレル規模を縮小して実施する旨決定した。
  2. 次回のOPECプラス産油国閣僚級会合6月30日に開催される予定である。
  3. 3月28日より実施していた中国上海市の新型コロナウイルス感染抑制のための都市封鎖措置は6月1日を以て解除されたこともあり、同国での経済成長と石油需要の伸びの回復に対する期待が市場で拡大した。
  4. 加えて、5月17日にウクライナ南東部の主要都市であるマリウポリがロシア軍によって事実上制圧されるなど、ロシアのウクライナに対する事実上の侵攻が継続したこともあり、欧州のロシア産石油輸入禁止措置実施に向けた動きが見られたり、ロシアが欧州一部諸国に対し天然ガス供給停止措置を実施したりしたことにより、欧州諸国等での石油需給引き締まり感が強まった。
  5. このような要因により、前回のOPECプラス産油国閣僚級会合開催直前の5月4日には1バレル当たり107.81ドルの終値であった原油価格(WTI)は今回のOPECプラス産油国産油国閣僚級会合開催直前の6月1日には同115.26ドルの終値と、上昇傾向になった。
  6. そして、夏場のドライブシーズンに伴うガソリン需要期に突入した米国ではガソリン小売価格が5月30日時点で1ガロン当たり4.727ドルと1993年4月以降の同国週間ガソリン小売価格統計史上最高水準に到達した。
  7. このようなこともあり、5月27日に週には、米国バイデン政権関係者がサウジアラビアを訪問、OPECプラス産油国の減産措置縮小ペースの加速を事実上働きかけたものと見られる。
  8. しかしながら、サウジアラビアはOPECプラスの重要な構成国であるロシアとの関係を維持することを含めOPECプラス産油国間での結束にも配慮する必要があった。
  9. このため、当初想定されていたと見られる7~9月の期間における毎月前月比で日量43.2万バレルの減産措置の縮小を7~8月に前倒しして実施すべく、7月(及び8月)は日量64.8万バレル減産措置を縮小するものの、9月の減産措置縮小ペースについては今後の世界石油需給バランスを考慮して再調整する余地を残すことにより、原油価格が大幅に下落することによるロシアの石油収入減少の可能性の抑制を試みたものと考えられる。
  10. 市場では、9月以降のOPECプラス産油国による減産措置縮小ペースが不透明であったうえ、日量64.8万バレルの増産が実際に実施可能かどうかにつき疑問視する見方が発生したこと、さらに米国原油在庫が市場の事前予想を上回って減少している旨判明したこともあり、6月2日の原油価格の終値は1バレル当たり116.87ドルと前日終値比で同1.61ドル上昇した。

(OPEC、IEA、EIA他)

 

1. 協議内容等

 (1) 2022年6月2日にOPEC及び一部非OPEC(OPECプラス)産油国は閣僚級会合を開催し、2021年8月以降2022年4月まで毎月前月比で日量40万バレル、2022年5~6月については前月比で日量43.2万バレル、それぞれ規模を縮小しながら実施中である減産措置(2022年6月現在日量292万バレル)を、2022年7月については前月比で日量64.8万バレル規模を縮小して実施する旨決定した(表1及び参考1(巻末)参照)。

表1 OPECプラス産油国の減産幅

 (2) 当該会合では、世界の主要地域における新型コロナウイルス感染抑制のための都市封鎖措置の解除による経済活動再開に留意した。

 (3) また、世界の製油所の季節的なメンテナンス実施完了後原油精製処理活動が活発化すると予想されることにも留意した。

 (4) このようなこともあり、当該会合では、原油及び石油製品に対する安定的で均衡した市場の重要性が強調された。

 (5) その上で、9月に実施する予定であった前月比で日量43.2万バレルの減産措置縮小を前倒しして実施、7~8月に均等に配分することとした結果、7月のOPECプラス減産措置は前月比で日量64.8万バレルの縮小(これまでの減産措置縮小規模である日量43.2万バレルの1.5倍)となった。

 (6) また、これまで減産目標を達成できていない減産措置参加産油国は2022年12月末(これまでは同年6月末であったが、一部減産措置参加産油国からの要望で延長)までに減産目標未達成部分につき追加減産を実施(することにより減産目標を達成)する他、(該当する産油国は減産目標を完全に達成するための)追加減産計画を2022年6月17日までに提出するよう、会合で要請されるとともに、減産目標の完全遵守に固執することが極めて重要であることを当該会合で再確認した。

 (7) さらに、次回のOPECプラス産油国閣僚級会合を6月30日に開催する旨今次閣僚級会合で決定した。

 (8) なお、今回の閣僚級会合は6月2日午後3時過ぎ(オーストリア ウイーン時間)開始後11分間で終了したとされ、これは3月31日に開催された前回閣僚級会合時の所要時間である12分間を上回って史上最短の開催時間となった。

 (9) また、今回のOPECプラス産油国閣僚会合での決定に対し米国バイデン政権は歓迎する旨6月2日にジャンピエール報道官が明らかにした。

 

2. 今回の会合の結果に至る経緯及び背景等

 (1) 2月24日以降のロシアのウクライナへの事実上の侵攻後、西側諸国等が発動したロシア金融機関への制裁等への抵触の恐れから、西側諸国等の石油会社がロシアから供給される石油の引き取りを敬遠したり、西側諸国等がロシア産石油の輸入禁止を内容とする制裁の発動を検討する動きが見られたり、もしくはロシアが西側諸国等に対し石油を含むエネルギーの供給削減を実施する可能性があったりしたことにより、石油需給引き締まり観測が市場で発生したことが、原油相場に上方圧力を加えた。

 (2) ただ、新型コロナウイルス感染抑制のため中国の上海市が3月28日以降都市封鎖措置を実施した他、同国北京市も4月30日以降経済活動を制限するなどしたことにより、同国の経済成長減速と石油需要の伸びの鈍化に対する懸念が市場で増大したことが原油相場に下方圧力を加えた。

 (3) この結果、前々回のOPECプラス産油国閣僚級会合開催直前の2022年3月30日時点で1バレル当たり107.82ドルであった原油価格(WTI)は、前回のOPECプラス産油国閣僚級会合開催直前の5月4日時点では同107.81ドルと、ほぼ同水準で推移した。

 (4) 他方、4月1~29日のロシアの原油生産量(コンデンセートを含む)は推定日量1,011万バレルと3月(同1,108万バレル)から同97万バレル減少した旨4月30日に報じられた反面、4月1~28日におけるロシアからの原油輸出は日量466万バレルと前月から17%(推定日量68万バレル)増加するなど、4月のロシアの原油生産及び輸出増減がまちまちであることが示唆された。

 (5) 加えて、2022年末にかけロシアの原油生産量は推定日量876~960万バレル(年間4.338~4.753億トン)と2021年の同1,058万バレル(同5.24億トン)から日量98~182万バレル程度の減少となる旨ロシアは認識していると4月27日に伝えられており、同国の原油生産量見通しを巡っては不透明感が強いことが窺われた。

 (6) このように、ロシアの原油生産と輸出の状況がまちまちであったうえ、足元の石油需要及び供給、そして将来の石油需給展望が不透明であったこともあり、石油需給が足元、そしてこの先において必ずしも大幅に引き締まるわけではないかもしれないにもかかわらず、減産措置の縮小(つまり増産)ペースを加速することにより原油価格の急落を招くといった事態が発生することを回避すべく、5月5日に開催された前回の閣僚級会合では、6月の原油生産目標につき、5月比で日量43.2万バレルの引き上げと、5月の前月比での原油生産目標引き上げ幅と同水準にするなど、OPECプラス産油国は原油生産政策に対し慎重な対応を行った。

 (7) 5月5日に開催された前回のOPECプラス産油国閣僚級会合以降も、中国の上海市や北京市等の一部都市において、新型コロナウイルス感染拡大に伴い、感染抑制のために当局が都市封鎖措置を含む個人の外出規制及び経済活動制限を強化したこともあり、同国経済成長減速に伴う石油需要の伸びの鈍化懸念が市場で広がったことに加え、米国金融当局関係者が同国の金融引き締めペースの加速を示唆したこと等の要因により、原油相場に下方圧力が加わる場面が見られた。

 (8) ただ、3月28日より実施していた中国上海市の新型コロナウイルス感染抑制のための都市封鎖措置は6月1日を以て解除されたことにより、中国経済成長と石油需要の伸びの回復に対する期待が市場で拡大した。

 (9) また、5月17日にウクライナ南東部の都市であるマリウポリがロシア軍によって事実上制圧される(5月20日に完全に掌握した旨ロシアのショイグ国防相が発表)など、ロシアのウクライナに対する事実上の侵攻は継続した。

(10) そして、5月21日よりロシアがフィンランド向け天然ガス供給を停止した他、海上輸送を通じたロシアからの原油及び石油製品輸入を禁止する(当該措置の発動に伴い直ちにロシアからの石油輸入の3分の2、2022年末までに同90%程度が、それぞれ停止するとされる)旨5月30日に開催された特別欧州理事会(首脳会議)で加盟国が合意したことにより、欧州での石油需給引き締まり感が市場で強まったことが、原油相場に上方圧力を加えた。

(11) この結果、前回のOPECプラス産油国閣僚級会合開催直前の5月4日には1バレル当たり107.81ドルの終値であった原油価格は今回のOPECプラス産油国産油国閣僚級会合開催直前の6月1日には同115.26ドルの終値と、上昇傾向となった(図1参照)。

図1 原油価格の推移(2021~22年)

(12) そのような中で、西側諸国等がロシア産の原油等の購入を敬遠した代わりに、中国及びインド等の消費国がロシア産の石油を他の産油国産の原油に比べ安価で調達しつつある旨5月19~20日に報じられた他、2022年5月はインドが日量80万バレル程度のロシア産原油を輸入、同年3月の同10万バレル程度から急増する見通しであると5月30日に伝えられたうえ、中国も2022年5月のロシアの原油輸入量が3月に比べ日量30万バレル程度増加している旨示唆されるなど、ロシアのウクライナへの事実上の侵攻により影響を受けたロシアからの石油供給が平準化に向かい始める兆候が見られた。

(13) 5月19日には、ロシアのノバク副首相も、4月のロシアの原油生産量は前月比で日量100万バレル減少したものの、5月は前月比で日量20~30万バレル原油生産量が増加する他、6月も原油生産の増加が継続する見込みである旨明らかにした。

(14) 加えて、5月12日にOPEC事務局が発表した月刊オイル・マーケット・レポートで、世界の経済成長減速と中国での新型コロナウイルス感染再拡大の影響により、OPEC事務局は2022年の世界石油需要を日量21万バレル(前年比では同31万バレル)下方修正した。

(15) さらに、5月12日に国際エネルギー機関(IEA)が発表したオイル・マーケット・レポートでも、中東産油国及び米国といった、ロシア以外の産油国での着実な石油生産量の増加と、特に中国での石油需要増加ペース鈍化に伴い、短期的には大幅な石油供給不足は発生しない旨示唆された。

(16) そして、OPECプラス産油国が2022年5月以降年末にかけ毎月前月比で日量43.2万バレル減産措置を縮小し続ければ、2022年の世界石油需給は概ね均衡状態となることが示唆された。

(17) このような中で、OPECプラス構成産油国としてロシアとの関係を重要視するOPEC及びOPECプラス主要構成産油国であるサウジアラビアのアブドルアジズ エネルギー相は、5月9日に、足元の原油価格の上昇は(原油供給が不足しているわけではなく)世界的な精製能力投資不足(に伴い、石油製品需給が引き締まっていることに伴う石油製品価格上昇)によるものであるとの認識を示した。

(18) また、石油需給は実質的には均衡しているため、原油価格高騰を沈静化するためにサウジアラビアが出来ることは最早ない旨サウジアラビアのファイサル外相が発言したとも5月24日に伝えられる。

(19) さらに、5月10日には、アラブ首長国連邦(UAE)のマズルーイ エネルギー相も、消費国での燃料価格高騰は原油価格の上昇というよりは、精製利幅の拡大によるものである他、世界石油需給は均衡しており、原油価格の上昇は、一部の消費者が一部の産油国産の原油購入を拒否したことに伴い、トレーダーがそのような受入を拒否された原油を他の(同原油を受入可能な)市場に輸送するのに時間を要していることによるものであるとの見解を披露した。

(20) このように、主要OPECプラス産油国間では、足元世界石油需給は、大幅に供給不足に振れている状態である、もしくは振れる兆候が見られるとは、必ずしも認識されず、従って減産措置縮小ペース加速への動機付けが必ずしも十分ではない状況であり、むしろ大幅な供給不足に陥らないかもしれないような状況下で、減産措置縮小(つまり増産)ペースを加速すれば、市場関係者の心理の急変を招くとともに原油相場に強い下方圧力が加わる恐れがあることが懸念された。

(21) しかしながら、原油価格上昇に加え、夏場のドライブシーズンに伴うガソリン需要期が5月30日の戦没将兵追悼記念日(メモリアル・デー)に伴う連休(5月28~30日)を以て開始された米国では、5月30日時点での全国平均ガソリン小売価格が1ガロン当たり4.727ドルと1993年4月以降の同国週間ガソリン小売価格統計史上最高水準に到達しており(図2参照)、米国バイデン大統領に対する政治的圧力も高まりつつあった。

図2 米国ガソリン平均小売価格(2019~22年)

(22) このようなこともあり、5月23日の週に、米国バイデン政権の中東政策調整官であるブレット・マクガーク(Brett McGurk)氏と同国国務省のエネルギー安全保障担当顧問であるアモス・ホフシュタイン(Amos Hochstein)氏が、世界エネルギー安定供給問題に関する協議を行うべく中東諸国を訪問した旨5月26日に米国バイデン政権のジャンピエール報道官が明らかにしており、その際に米国とサウジアラビアとの関係改善を働きかけた結果、制御不可能となる原油価格を回避する必要性につきサウジアラビアが認識するとともに、ロシアからの石油供給が落ち込んだ場合には、例えば、9月に予定されている増産を7~8月に前倒しする等原油生産を引き上げる旨示唆したと、6月1日に報じられるなどしており、米国バイデン政権のサウジアラビア等への原油価格等抑制のための働きかけは継続している旨示唆された(また、6月1日には米国国務省のブリンケン長官も、米国はサウジアラビアとの関係改善を望む旨表明している)。

(23) 他方、5月31日には、ロシアのラブロフ外相が、サウジアラビアのファイサル外相と会談(於リヤド(サウジアラビア))し、OPECプラスの枠内における世界石油市場安定のための協力体制による効果につき賞賛した旨同日ロシア外務省が発表するなど、ロシアがOPECプラス産油国間での結束を意識していることが窺われる。

(24) また、6月1日には、サウジアラビアのリヤドで、ロシアのラブロフ外相とUAEのザイド外相が会談し、世界のエネルギー価格の安定性と予測可能性の確保につきOPECプラスの枠内で緊密に協力していくことに留意した旨同日ロシア外務省が発表した。

(25) さらに、海上輸送を通じたロシアから供給される原油につき今後6ヶ月間程度、及び石油製品につき今後8ヶ月間程度で、段階的に購入を禁止する旨EU加盟国が合意したと5月30日深夜(現地時間)に明らかになったことにより、欧州地域等での石油需給引き締まり観測が5月31日の市場で増大した。

(26) ロシアのウクライナへの事実上の侵攻に伴う、西側諸国等が制裁、もしくは企業評判リスク(ロシアのウクライナ侵攻のための戦費のための原油収入獲得への貢献に対する批判)等によりロシア産石油購入を敬遠する動きが西側諸国等の石油会社等で発生したことから、ロシア産の石油価格が他の産油国産の石油価格を相当程度下回ることに加え、石油販売量も減少することにより、少なくとも短期的には、ロシアの石油収入は、価格及び販売数量の両面で抑制されやすい状況となる。

(27) 一方、サウジアラビア他のOPECプラス産油国がロシアの石油販売減少分を穴埋めする形で増産すれば、本来ロシアに流入するはずの石油販売収入がサウジアラビア等他のOPECプラス産油国に移転することになる他、世界石油需給バランスが相対的に緩和することにより、世界的に石油価格が抑制されることを通じ、ロシアの石油収入が一層不利になる可能性がある。

(28) そのようなこともあり、主要OPECプラス産油国間での相対的な石油収入格差が発生する他、原油価格等の下落によりロシアに対し制裁を発動している欧米諸国等に資する(そしてその分だけ、欧米諸国等はさらなる対ロシア制裁の実施が相対的に容易になる)ことにより、今後予想されるロシアの石油生産減少分をサウジアラビア等他のOPECプラス産油国が補填する方策は、OPECプラス枠内でのロシアと他の産油国との間での結束力に負の影響をもたらす恐れがあった。

(29) このため、サウジアラビアは、OPECプラスの重要な構成国であるロシアとの関係を維持することを通じたOPECプラス産油国間での結束に配慮しつつ、当初想定されていたと見られる7~9月の毎月前月比で日量43.2万バレルの減産措置の縮小を7~8月に前倒しして実施すべく、7月(及び8月)に日量64.8万バレル減産措置を縮小することにより、米国等の夏場のドライブシーズンに伴うガソリン需要期におけるガソリン等石油需給引き締まり感を抑制するものの、9月の減産措置縮小ペースについては今後の世界石油需給バランスを考慮して再調整する余地を残すことにより、原油価格が大幅に下落することによるロシアの石油収入減少の可能性の抑制を試みたものと考えられる。

 

3. 原油価格の動き等

 (1) 市場では、9月以降のOPECプラス産油国による減産措置縮小ペースが不透明であったうえ、西側諸国等の制裁により原油生産が減少しているロシアや原油生産増加に苦慮しているナイジェリア及びアンゴラ等の産油国に対しても、増産(減産措置縮小)幅の拡大が行われたことから、7月の前月比日量64.8万バレルの増産が実際に可能かどうかに関し疑問視する見方が発生したこと、さらに、6月2日に米国エネルギー省エネルギー情報局(EIA)から発表された米国石油統計(5月27日の週分)で、原油在庫が前週比507万バレルの減少と市場の事前予想(同135万バレル程度の減少)を上回って減少している旨判明したこともあり、6月2日の原油価格は前日終値比で1バレル当たり1.61ドル上昇の同116.87ドルの終値となった。

 (2) 今後の石油市場を巡る注目点の一つとしては、4月に前月比で日量100万バレル程度減少したとされるロシアの原油生産量が回復するかどうかが挙げられよう。

 (3) 5月のロシア原油生産量は前月比で日量20~30万バレル増加する他、6月も増産が継続する旨5月19日にロシアのノバク副首相が説明した他、2022年のロシア原油生産量は推定日量969~1,009万バレルになると見込んでいる旨5月26日にノバク副首相は明らかにした。

 (4) この数値にはコンデンセートが含まれているかどうかは不明確であるが、含まれていると仮定すると、IEAによる2021年のロシア原油生産量(コンデンセートを含む)が日量1,052万バレルであることに基づけば、ロシアの原油生産量は前年比で日量43~83万バレル程度の減少(前年比4.1~7.9%程度の減少)となる(2022年のロシア原油生産量が2021年比で8%程度減少する旨5月26日にノバク副首相が明らかにしているところからすると、ノバク副首相が説明するロシア原油生産量にはコンデンセートが含まれているものと見られる)他、2022年2月11日(つまりロシアの事実上のウクライナ侵攻直前)発表時点のIEAによる2022年のロシア原油生産量(コンデンセートを含む)見通しである日量1,120万バレルからは同111~151万バレルの下振れとなる。

 (5) 他方、2022年3月16日に、IEAは、ロシアの2022年原油生産量(コンデンセートを含む)見通しを日量897万バレルと2021年の原油生産量から日量155万バレル減少する他2022年2月11日時点の2022年の同国原油生産見通しに比べ日量224万バレル下振するとの展望を明らかにしていたが、2022年5月12日時点では、IEAは2022年のロシア原油生産量見通しを日量927万バレルと3月の発表時点の見通しから日量29万バレル上方修正するなどしており、2022年のロシア原油生産見通しは不安定であることが窺われる。

 (6) また、5月19日には、ロシア産原油を購入し続ける消費国等に対し当該行為を抑制することを目的として米国バイデン政権は制裁を発動することも否定しない旨米国エネルギー省のグランホルム長官が表明した。

 (7) ロシア産の石油を購入し続ける消費国に対する米国等の制裁発動の動きが明確になる様であれば、ロシア産石油購入が一層敬遠されるようになることから、ロシアからの石油供給が実質的に世界石油市場から排除されることにより、世界石油需給の引き締まり感が市場で意識されるとともに、原油相場に上昇圧力を加えると言った展開が想定される。

 (8) しかしながら、夏場のドライブシーズンに伴うガソリン需要期に突入した米国では既に全米平均ガソリン小売価格が1ガロン当たり4.727ドルと1993年4月以降の全米週間ガソリン小売価格史上最高水準に到達しており、ロシア産原油等の世界市場からの排除は、原油価格及びガソリン小売価格のさらなる高騰を招く可能性を高めることもあり、ロシアから供給される石油を引き取る消費国等に対する制裁の発動を巡っては不透明感が漂う。

 (9) 従って、ロシアから供給される石油を引き取る消費国等に対し、そのような引き取りを抑制するための制裁(いわゆる二次制裁)発動に向け米国等が動くかどうか、ということが原油市場において注目点となるが、もし、そのような二次制裁の発動に向けた米国等の動きが今後明確にならないようであれば、中国やインド等は、世界的に石油及び天然ガス(LNG)価格が高騰する中、割安感のある、ロシア産石油購入を促進し続けるものと見られ、いずれロシアからの石油供給はそれなりに回復していくとの見方が市場で増大するといった展開となることも想定される。

(10) 他方、原油価格が高水準となっていることもあり、中長期的には、自動車の燃費効率の改善等を通じ、石油需要が抑制される可能性もある。

(11) このように、石油供給がそれほど落ち込まない反面、石油需要が抑制される結果、石油需給の引き締まりも緩やかなものにとどまるとの展望が市場で広がるようであれば、OPECプラス産油国としても、無闇に減産措置の縮小を加速するような判断を回避するようになり、従って、6月30日に開催される予定であるOPECプラス産油国閣僚級会合においても、原油生産政策につき慎重に行動する可能性があるものと考えられる。

(12) もっとも、早ければ6月にも米国のバイデン大統領がサウジアラビアを訪問する旨計画していると5月20日に伝えられており、バイデン大統領訪問時の協議内容次第では、サウジアラビアを含むOPECプラス産油国が多少なりとも8月以降の減産措置縮小ペースにつき拡大する方向で再調整するといった展開となることもありうる。

(13) 他方、今後のロシアのウクライナに対する事実上の侵攻、及び欧米諸国等による、ロシアに対するさらなる制裁、もしくはロシアによる欧米諸国等に対する事実上の制裁措置の実施等を巡る動向も、原油相場に影響を与えるものと考えられる。

(14) また、米国の夏場のハリケーンシーズン(例年6月1日~11月30日)におけるハリケーン等の暴風雨の発生状況や進路(米国メキシコ湾沖合及び湾岸地域に来襲するようであれば、当該地域の油・ガス田、製油所及び国外から石油タンカーを受け入れる港湾施設の操業に支障が発生する場面が見られる可能性もある)によっては、石油需給引き締まり感が市場で強まることを通じ、原油価格が変動する場面が見られることもありうる。

(15) さらに、イランによる同国革命防衛隊に対する米国の制裁解除要求を米国が拒否している他、5月22日にはイラン革命防衛隊の大佐が射殺されたが、イラン側はイスラエルが関与している旨主張、5月23日には同国のライシ大統領が報復する方針である旨発言している。

(16) 加えて、5月26日には、イランの首都テヘランの郊外パルチンにある同国軍事関連研究施設で爆発が発生したが、これは国内から発射された無人攻撃機によるものであると5月27日に伝えられる。

(17) まあ、4月にロシアが運航するイラン船籍タンカーが積載したイラン産原油がギリシャ沖合付近で米国に押収され、他の船舶に積み替えられて米国に向かった旨5月26日に伝えられた一方、その報復措置として、ペルシャ湾を航行していたギリシャ船籍の石油タンカー2隻を拿捕した旨5月27日にイラン革命防衛隊が発表、ギリシャが同様の行為を継続するようであれば、拿捕が継続される可能性がある旨イラン革命防衛隊系報道機関が5月27日に伝えている。

(18) このように、イラン核合意正常化のための米国を含む西側諸国等とイランとの間での協議を巡っては、妥結する方向に向かっているとは必ずしも言えず(米国国務省のイラン担当特使であるマレー氏も、妥結する可能性は高くない旨5月25日に米国連邦議会上院外交委員会で明らかにしている)、イラン核合意正常化を巡る米国とイランとの間での協議過程の複雑化による、中東情勢の不安定化に伴う当該地域からの石油供給途絶懸念が市場で増大しており、今後もこの面で、原油相場が下支えすることもありうる。

(19) また、イエメンのフーシ派武装勢力(イランが支援しているとされる)及びフーシ派武装勢力と対立し内政状態に陥っているイエメンのハディ暫定大統領派勢力と同勢力を支援する有志連合軍を主導するサウジアラビアとの間で、4月2日夜(現地時間)から2ヶ月間停戦を実施することで両者が合意した旨4月1日に国連が発表した。

(20) 従って、6月2日には、停戦期間が終了することになるものと見られるが、停戦期間が延長されるとともに、恒久的停戦に向けた協議が両者間で実施されるようであれば、中東情勢の不安定化による当該地域からの石油供給途絶懸念が市場で後退する結果、原油相場に下方圧力が加わるものの、今後両者からの攻撃が再開されるようであれば、中東情勢の不安定化による当該地域からの石油供給途絶懸念が市場で増大する結果、原油相場に上方圧力が加わるといった展開となる可能性もある。

(21) そして、西部及び東部の各地域に2つの政府が並存し対立している他、しばしば原油生産関連施設が地方の武装勢力等により占拠される結果、原油生産量が減少する場面が見られるリビアを巡る情勢にも原油相場が反応することもありうる。

 

(参考1:2022年6月2日開催OPECプラス産油国閣僚級会合時声明)

29th OPEC and non-OPEC Ministerial Meeting

No 12/2022
Vienna, Austria
02 June 2022

The 29th OPEC and non-OPEC Ministerial Meeting was held via videoconference on 2 June 2022. The Meeting noted the most recent reopening from lockdowns in major global economic centers. It further noted that global refinery intake is expected to increase after seasonal maintenance. The Meeting highlighted the importance of stable and balanced markets for both crude oil and refined products.

The Meeting therefore resolved to:

  1. Reaffirm the decision of the 10th OPEC and non-OPEC Ministerial meeting on 12 April 2020 and further endorsed in subsequent meetings, including the 19th OPEC and non-OPEC Ministerial Meeting on the 18 July 2021.
  2. Reconfirm the production adjustment plan and the monthly production adjustment mechanism approved at the 19th OPEC and non-OPEC Ministerial Meeting and the decision to adjust upward the monthly overall production by 0.432 mb/d for the month of July 2022.
  3. Advance the planned overall production adjustment for the month of September and redistribute equally the 0.432 mb/d production increase over the months of July and August 2022. Therefore, July production will be adjusted upward by 0.648 mb/d as per the attached schedule.
  4. Extend the compensation period until the end of December 2022 as requested by some underperforming countries and request that underperforming countries submit their plans by 17 June 2022. Compensation plans should be submitted in accordance with the statement of the 15th OPEC and non-OPEC Ministerial Meeting.
  5. Reiterate the critical importance of adhering to full conformity and to the compensation mechanism.
  6. Hold the 30th OPEC and non-OPEC Ministerial Meeting on 30 June 2022.

 

以上

(この報告は2022年6月3日時点のものです)

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