ページ番号1009376 更新日 令和4年6月6日
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概要
東南アジアの小国ブルネイで、オフショア大水深開発が漸く始まろうとしている。2003年から長期に亘って交渉が持たれていたマレーシアとブルネイ両国の境界水域が2010年に確定し、その後、ブルネイ側が2013年に大水深鉱区の開発に乗り出した際に、掘削フィールドがマレーシア側のガス田と境界を挟んで同一構造であることが判明した。ユニタイゼーション交渉は長引き2021年4月に解決が図られたところである。
本レポートでは、一見して原油と天然ガスの生産を安定して続けているブルネイが、実は油・ガス田の枯渇に直面していることおよびマレーシアとのユニタイゼーションにより生産量の復活に期待が掛かるが、LNG生産に繋がるかどうかについて検証していきたい。
はじめに
普段あまり身近に感ずることが乏しいブルネイ・ダルエスサラーム(以下、「ブルネイ」という)について、最初に経済、歴史的な背景を含む基礎情報について触れ、その後原油・天然ガスの上流動向およびLNGについて述べていくことにする。
位置 | ボルネオ島、マレーシアのサラワク州とサバ州に挟まれた地域 | |
面積 | 5,765平方キロメートル | ほぼ三重県と同じ広さ |
人口 | 45万9,500人 | 2019年時点 |
首都 | バンダル・スリ・ブガワン | Bandar Seri Begawan 人口約14万人 |
元首 | ハサナル・ボルキア国王 | 第29代スルタン |
人口構成 | マレー系65.8%、中華系10.3%、その他インド系等23.9% | 2019年ブルネイ財務経済省経済計画統計局 |
宗教構成 | イスラム教(国教)81%、仏教7%、キリスト教7%、その他5% | ブルネイ財務経済省経済計画統計局 |
言語 | 公用語 マレー語 | 英国保護領の時代が長く、英語は通用する |
独立年 | 1984年 | 1906年から続いていた英国保護領から独立、国連とASEANに加盟 |
政治体制 | 立憲君主制 | 国王が評議員全員45名以内を任命。立法評議会は例年3月に2週間開催、予算審議等を行うのみ。 |
過去の騒乱 | 1962年、アザハリの反乱(ブルネイ人民党のメンバーによる、スルタン制及びブルネイのマレーシア連邦参加に対する反乱)。 | 反乱時に非常事態宣言を発布(現在に至る)。 |
政府 | 国王が、首相、外相、財務経済相および国防相を兼務 | マレー主義、イスラム信仰、王制維持を国是とする。 |
一人当たりGDP |
US$44,809 | 2021年。東南アジアではシンガポールに次ぐ。石油・ガス産業が国の収益に占める割合は2019年で77.2%にもなる。 |
通貨 | ブルネイ・ドル | シンガポール・ドルと等価、1ブルネイ・ドル=約93円(2022年5月20日現在) |
貿易(輸出) | 輸出総額110億5800万ドル。石油・ガス(石油製品含む)78.7%、有機化学品17.8%、その他3.5% | 2021年ITC統計、輸出相手国、シンガポール、日本、オーストラリア等 |
出所 外務省HP。GDPはIMF、貿易統計はInternational Trade Centre(ITC)による。
1961年にマラヤ連邦のアブドゥル・ラーマン首相は共産党の脅威を排除し、マレー人の特権を維持するために、マラヤ連邦、シンガポール自治国,サラワク、サバ(北ボルネオ),ブルネイをまとめる大マレーシア連邦構想を発表した。シンガポールのリー・クアンユー首相はこれに賛成したが(その後1965年にシンガポールが追放される形で分離独立)、サラワクとサバはラーマン首相に譲歩を要求した上で参加を決め、現在のサラワク州とサバ州になった。ブルネイは後述するとおり、Brunei Shell Petroleumの前身であるBritish Malayan Petroleum Company (後のBrunei Shell Petroleum)が設立されたのは1922年であり、1929年には沿岸のセリア油田、1963年には初の海洋油ガス田である南西アンパ油ガス田が発見された。ブルネイは、大マレーシア連邦構想に対して石油利権とスルタンの権限を巡って反発し、参加を拒否した。他方、当時のスカルノ、インドネシア大統領は、マレー人とインドネシア人は一緒になるべきだとの大インドネシア構想を持っており、上の表に記載があるアザハリの反乱を裏で画策した。フィリピンはサバの領有権を主張し、フィリピン、マレーシア、インドネシアを統合するマフィリンド構想を発表したという時代背景がある。
1. ブルネイの原油・天然ガス生産について
(1) 埋蔵量
表2はブルネイの原油と天然ガスの埋蔵量(2P)を示している。生産に伴い減少し、R/P (埋蔵量/生産量)で求められる比率は、原油と天然ガスとも10を切っている。即ち、2021年と同量を生産し続けると仮定すれば、枯渇するまでの期間は単純計算でそれぞれ10年に満たないことになる。実際には、生産は徐々に減退するので、油ガス田の寿命という観点では、枯渇するまでそれ以上の年数が必要となる。ただし、経済性の観点から商業生産の停止は枯渇以前に到来するだろう。特に、天然ガスのR/Pが10を切っているため、LNGの長期SPA(Sales Purchase Agreement)の新規締結、更改は現状難しいだろう。この点については後ほど検証する。
初期埋蔵量 | 2022/1/1埋蔵量 | 2021年 生産量 | R/P ratio | |
原油 | 4,617 mmbbl | 323 mmbbl | 39.1 mmbbl | 8.26 |
天然ガス | 20.2 tcf | 3.6 tcf | 0.368 tcf | 9.78 |
出所 Wood Mackenzie
(2) 原油・天然ガス生産量の推移(2001年~2021年)
原油と天然ガスの2001年からの生産推移は以下の図のとおりである。原油生産は2021年から2030年にはほぼ半減、ガスは同期間で4割弱減少するだろうとWood Mackenzieは予測している。原油・天然ガスとも最大の油ガス田は1970年に発見されたChampionフィールド(Champion-West含む)である。現在も一日当たり原油生産量の46%、ガス生産量の26%を産出している。

出所 Wood Mackenzieデータ

出所 Wood Mackenzieデータ
(3) マレーシアとの境界紛争について
ブルネイでは、以下の図の通り鉱区が設定されている。この図で鉱区CA1とCA2(旧鉱区Jおよび鉱区K)の深海鉱区は、マレーシアも鉱区Lと鉱区Mとして鉱区設定されていた。2003年1月にマレーシアは、両鉱区ともMurphy/PetronasとPSCを締結した。一方、ブルネイは2001年11月に鉱区Jと鉱区Kの入札を行い2002年2月にTotal/BHP/HESSおよびShell/ConocoPhillips/三菱商事にそれぞれ開発Licenseを与えていた。2003年にマレーシアから鉱区権益供与を受けたMurphy Oilは、試掘を試みようとしたが、両国海軍が集結するという騒ぎになり、掘削作業は中止された。
境界画定の交渉はマレーシア、マハティール首相とブルネイのボルキア国王との二回にわたる直接交渉でも決着しなかった。マレーシアは南沙諸島(Spratly Islands)で実効支配している島嶼(Swallow Reef他9岩礁)を起点とする排他的経済水域を、ブルネイも自国沿岸からの排他的経済水域を根拠に対立した。既に、将来の生産減退を見越したブルネイは、マレーシアが提案した共同開発案を退けたようだ。両政府はMurphy Oilがマレーシア側権益(鉱区Lおよび鉱区M)を放棄した2010年3月の後、2010年9月に漸くブルネイ沖合深海の問題に関して合意した。マレーシアは共同開発を含む要求を取り下げ、ブルネイは旧ブルネイ鉱区Jと鉱区Kの代わりに鉱区CA1および鉱区CA2の2鉱区を設定した。マレーシア側で権益を保有していたMurphyとPetronasが鉱区 CA1と鉱区CA2に権益参加したことで妥協が図られたとの見方が出来るだろう。

出所 JOGMEC作成
なお、ブルネイの海岸線から近い北東約80キロメートルから南西40キロメートル沖合にかけて、中国が南シナ海で主権を主張する所謂「九段線」が通過しているが、これまで中国からブルネイのオフショア開発にクレームがあったという事実は確認していない。それは、PetroleumBruneiとCNOOCが2012年にオイル・フィールド・サービスJVを設立したことが関係しているためだろう。
(4) BSPについて
前述の通り1922年に設立されたBritish Malayan Petroleum CompanyがBrunei Shell Petroleum(BSP)に名称を変更したのが、1957年のことであり、その後ブルネイ政府は1973年に25%の株式を取得し、1986年に更に25%を取得し、現在ではShellとブルネイ政府が持分50%ずつを保有している。Shellとブルネイ政府は、2021年にブルネイの原油・天然ガスにおいて93%を占めている。残りは鉱区 B でオペレーターを務めているTotalEnergiesが3.4%である。表2の通り、鉱区CA1のShell Deepwater Borneoは、ニュージーランドのFletcherを買収した2001年に設立された。
また、3つのLicense契約(Offshore Agreement 1, 2 and 3)により、BSPは、2021年における天然ガスの生産量の81%、原油生産量の60%を占めている。BSPは、ブルネイのNOCと言っても過言ではなく、オフショアだけではなくオンショアでも操業している。1980年代後半まで他の上流開発会社は、ブルネイでの探鉱開発に実質的に参入できなかった。しかし、最近ではBSPだけでは対応できない鉱区CA2のような開発案件も出てきており、Brunei Energy Explorationが別に設立された。以下はオフショア主要鉱区を示す。
表3 ブルネイのオフショア主要鉱区

2. マレーシアとのユニタイゼーション(Unitization)
マレーシアのサバ沖Baram Delta堆積盆地の鉱区Jの水深1,000メートルにGumusutフィールドが発見されたのが2003年、2006年にはFIDに至った。また、隣接鉱区KのKakapフィールドが同じ構造であることが分かりGumusutフィールドとユニタイゼーションが行われGumusut-Kakap (J:K=82.5%:17.5%)となり、共同開発のFIDが行われたのは、2008年のことであった。その後、Gumusut-Kakapは開発に移行し、2012年下半期にKikehフィールドの生産設備に接続(Tie-back)し生産を開始した。ユニタイゼーション後のGumusut-Kakapの権益は、JとKの両鉱区の権益保有者により、Shell 33%(オペレーター)、ConocoPhillips 33%、Petronas Carigali 20%、PTTEP 9.8%、Pertamina 4.2%となった。
一方、Gumusut-Kakapに隣接するブルネイ側Offshore Area 3 のGeronggongフィールドがBSPによって2011年に発見され、翌2012年に鉱区CA1のJagus Eastフィールド(当時のオペレーターはTotal、持分86.95%)が見つかった。両フィールドとも同一構造を持つことが分かり、ユニタイゼーションが図られGeronggong-Jagus Eastとなった(原油7割、天然ガス3割と推定)。なお、GeronggongとJagus Eastのユニタイゼーション比率は明らかにされていない。
これらGumusut-KakapとGeronggong-Jagus Eastは、Baram Delta堆積盆地で同一構造であることから、Petronasとブルネイ政府間でユニタイゼーションに関わる交渉が2015年に始まった。交渉は難航し、2020年にペトロナスにより交渉は一旦中断したが、2021年4月に合意を見た。ユニタイゼーション契約の詳細は明らかにされていないが、当初マレーシア88%対ブルネイ12%の比率が交渉中断前には84%:16%までマレーシア側が譲歩した。しかし、マレーシア総選挙を経てS&P Global Commodity Insightによると最終的な分割比率は、2020年1月1日に遡り86.5%:13.5%になったという。いずれにせよ、Gumusut-KakapおよびGeronggong-Jagus Eastの4つのフィールドのオペレーターはShellになり、今後の開発方針を巡って権益保有者間で齟齬が生ずる可能性は低いと思われる。
マレーシアとブルネイとも生産油ガス田の減退に直面しているなか決着を図り、ブルネイは今後10年間で枯渇すると予測されていた埋蔵量がプラスになり、鉱区CA2の開発(Kelidang Cluster)による生産を加えプラスになる転換点になると思われる。
次の図4は、Rystad Energyによるブルネイの2030年までの生産量予測である。原油とガスの生産比率はおよそ7:3と思われる。

出所 Rystad Energy、2021年4月 Upstream Analytics
開発が図4の通りにうまく進めば、原油・天然ガスの生産量は、2010年時点に戻り、ブルネイの産油・ガス国としての地位は2035年くらいまでは安泰するだろう。
3. Kelidang Cluster開発
Kelidang Clusterは、2013年に鉱区CA2で発見され、離岸距離125キロメートル、水深2,000~2,223メートルの大水深ガス田である。埋蔵量は約2tcf(trillion cubic feet)と中型ガス田規模に該当する。同Clusterは、3つのガス田から成るが内2つのガス田の開発が進んでいる。生産は、浮体式生産ユニット(FPU)を使用し、天然ガスは陸上のブルネイLNG液化プラントに20インチのパイプラインで運ばれる予定である。オペレーターのPetronas Carigaliによると生産開始は2025年になるとのことであり、ブルネイで初の大水深油ガス田の開発生産となるだろう。
4. LNG生産に関する考察
日本が初めてLNGを輸入したのは、1969年に米国アラスカのKenai LNGからであった。次いでブルネイが1972年である。2021年時点においてブルネイは、LNGの輸入相手国として6番目の地位である。現在、長期LNG販売契約を締結している日本企業は、JERA(203万トン/年)、東京ガス(100万トン/年)および大阪ガス(37万トン/年)であり、契約期間は2013年~23年までとなっている。その他Petronas(90万トン/年)およびShell(85万トン/年)が日本企業と同じ2023年までの販売契約を締結している。KOGASは、2013年に5年間100万トン/年の契約(5年のオプション付き)を締結したが、オプション権は行使しなかったようである。
現在、ブルネイのLNG液化プラントは5トレインからなり、ルムット地区にある。オフショアからは、Championフィールド、鉱区BとSW Ampaフィールド等から計5本のパイプラインで繋がっている。液化能力は以下表4のとおり合計で720万トン/年である。建設以来これまで二回の近代化工事(1994年および2010年完工)を行っている。
表4 ブルネイLNG液化プラント概要
天然ガスを供給するOffshore 1 & 2 のガスおよびパイプラインの権益保持者であるBSPならびに鉱区BのTotalとLNG液化プラントの保有者が異なることから、供給ガス田側と液化プラント間では、天然ガスの供給契約を結び、液化プラント側で液化し、LNG販売契約(GSPA: Gas Sales Purchase Agreement)をDES(Incoterms 2000: Delivered Ex Ship、本船持ち込み渡し条件)で締結している。プラントの権益保有者が同じ比率で1998年にBrunei Gas Carriers社を設立し、現在LNGタンカーを4隻保有している。
順位 | 国名 | 2021年輸出量(万トン) |
1 | 日本 | 422 |
2 | 中国 | 73 |
3 | フィリピン | 45 |
4 | マレーシア | 29 |
5 | タイ | 19 |
6 | 韓国 | 13 |
7 | ベトナム | 11 |
8 | 台湾 | 6 |
9 | シンガポール | 5 |
10 | その他 | 7 |
合計 | 630 |
出所 International Trade Centre
2023年に満期を迎える長期LNG販売契約の更新が出来るかどうかについて、天然ガスのR/Pが、表1の通り10を割り込んでいるため、10年間の更新は厳しいと考える。ブルネイは、Geronggong-Yagus EastおよびKelidang Clusterで生産されたガスを、ブルネイLNG液化プラントにパイプラインで運びたい意向を持っているが、実現しても2025年以降となり、長期販売契約が締結できるかどうか、今後の各プロジェクトの進捗状況が影響を与えるだろう。
前述の通りGeronggong-Jagus Eastの開発は、マレーシア側Gumusut-Kakapと併せて4フィールドともShellがオペレーターであり、Shell主導によって進むと思われるが、この4つのフィールドは、ブルネイからは離岸距離もあり、またパイプラインも敷設されていない。
Geronggong-Yagus Eastの生産ガスは、マレーシア側の鉱区KのKikehフィールドにある既存設備にTie-backし、マレーシアのサバ州に送った方が経済的である。ただし、マレーシアも、サバ・サラワクパイプラインが2020年1月に起きた爆発の改修工事が漸く終わったばかりで、サバ州からサラワク州BintuluのLNG液化プラントへの輸送が安定していない。サバ州沿岸に設置予定のマレーシアで三番目の浮体式LNG液化プラントのPFLNG Tiga(300万トン/年)は現在FEED中であり、2023年にFIDそして2027年操業開始を目指している。Bintuluでは昨年末LNG液化用のガスが不足したが、サラワク沖を中心にガス田開発が進んでいる状況である。
Geronggong-Yagus Eastの生産ガスが仮にマレーシアに向かった場合、ブルネイLNG液化プラントの供給ガス田は、Petronas Carigaliがオペレーターの鉱区CA2の大水深Kelidang Clusterに期待することになる。ブルネイ国王はGeronggong-Yagus Eastについて、ブルネイで液化することが望ましいと述べる一方、現実的に判断しなければならないとも言っている。
5. まとめ
ブルネイは、原油と天然ガスおよび石油製品の輸出に国の経済が大きく依存している。これ以外目立った産業は育っておらず、労働人口の7割超が公務員ということにもそれが表れている。原油と天然ガスが枯渇した場合は、現在のASEAN二番目の一人当たりのGDPを維持することが出来るのか?それまでの貯蓄を食いつぶしていかなければならないという現実が2030年代後半に直面するかもしれない。ただし、大水深の鉱区CA1および鉱区CA2は、近接するマレーシアのサバとサラワク沖の開発状況から有望視されている。
また、ブルネイは2021年11月に英国グラスゴーで開かれたCOP 26において、カーボンニュートラルの達成年を表明していない。CCS/CCUSについての計画は聞かれない。成熟してきたChampionフィールドでは水攻法による原油の二次回収(EOR: Enhanced Oil Recovery)が実施されている。また他のフィールドにおいては生産された天然ガスの一部を再圧入し、EORを進めている。従って、浅海部では送られてきた生産ガスからCO2を分離し、再度パイプラインで原油もしくはガスフィールドに送り返し圧入するという、CCUSであるCO2-EORまたはCO2-EGR(Enhanced Gas Recovery)は、距離、パイプラインネットワーク、Shellという存在を考えると充分可能と思われる。
ブルネイのエネルギー大臣は、2022年3月上旬に立法評議会において、炭化水素の発見があったと述べた。しかし、Shellを含めどのパートナーも場所を含め、そのことを追認していない。おそらく鉱区CA1のJagus SubThrust-1Xだろうと思われるが、Murphy Oilが1月に語ったところによると、1月時点では最終的な掘削ポイントを選定する評価段階であるとのことであった。
ブルネイの2022年の原油・天然ガスの生産目標は、エネルギー大臣は30万バレル相当/日(boe/d)と述べたが、この生産量はコロナパンデミック前の2019年の32万boe/dまで生産が回復していないことになる。原因としては、Championフィールドの生産減退および同オフショア施設において2021年8月~9月にかけてコロナの大規模クラスターが発生し生産活動ができなくなった影響が考えられる。
新たな開発が順調に進めば、図4のとおり2025年の24万boe/dから2030年には35万boe/dを達成出来るだろう。
以上
(この報告は2022年6月3日時点のものです)