ページ番号1009380 更新日 令和4年6月7日

CPCパイプライン出荷施設の故障と復旧について

レポート属性
レポートID 1009380
作成日 2022-06-07 00:00:00 +0900
更新日 2022-06-07 11:21:33 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 基礎情報
著者 四津 啓
著者直接入力
年度 2022
Vol
No
ページ数 8
抽出データ
地域1 旧ソ連
国1 カザフスタン
地域2
国2
地域3
国3
地域4
国4
地域5
国5
地域6
国6
地域7
国7
地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 旧ソ連,カザフスタン
2022/06/07 四津 啓
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概要

  • カザフスタン産石油の主要な輸出ルートとなっているCPCパイプラインが、2022年3月下旬、出荷ターミナルのある黒海沿岸での悪天候の影響で出荷施設が故障し、パイプラインの稼働状況に支障が出た。
  • 一時は影響の長期化が懸念され、原油価格に上方圧力を加えた。また、修理作業と並行して上流プロジェクト各社は代替ルートを模索した。
  • 結果的には支障発生から約1か月後にはパイプラインは通常操業が可能な状態に戻り、5月下旬には完全に復旧した。本稿ではその経緯をCPCパイプラインの概要と共にまとめる。

(出所 CPCプレスリリース、各種報道)

 

1. CPCパイプライン概要

CPC(Caspian Pipeline Consortium)石油パイプラインはカザフスタン産石油輸出の主脈である。カザフスタンで生産される石油の3分の2、輸出量の約8割がCPCパイプラインで輸送されている。カザフスタン西部にある国内最大の油田プロジェクトTengizからロシアの黒海沿岸ノボロシースク近郊に石油を輸送し、三大プロジェクトの残り2プロジェクト(KashaganとKarachaganak)の輸出ルートが途中で接続している。総延長は1,511キロメートル。2001年に運転開始した後、現在の年間輸送能力は2018年の拡張を経て6,700万トン(日量約140万バレル)となっており、さらに2019年に開始された拡張計画「デボルネッキングプログラム」によって2023年末には年間8,300万トン(日量約170万バレル)となる予定である(表1)。パイプラインオペレーターであるCPCには、ロシア、カザフスタンの政府系企業の他に、上流事業に参画するExxonMobilやShellなどの欧米メジャー企業が出資者として名を連ねている(表2)。

 

表1:CPC(Caspian Pipeline Consortium)石油パイプラインの概要(出典:CPCウェブサイト)
パイプライン全長 Tengiz-Novorossiysk (Yuzhnaya Ozereyevka)間1,511キロメートル
石油年間輸送能力

(当初)2004年~ 2,820万トン(日量約60万バレル)

2018年(拡張)~現在 6,700万トン(日量約140万バレル)

2023年(予定。デボルネッキングプログラム実施中)~ 8,300万トン(日量約170万バレル)
ポンプステーション 15か所
貯油タンク容量 (出荷ターミナル付近陸上)100万トン(10万トン×10基)
出荷装置 一点係留装置3基(沖合5キロメートルに設置)
オペレーター Caspian Pipeline Consortium
株主構成 表2を参照

 

図1:CPCパイプラインルート全体像
図1:CPCパイプラインルート全体像(◎はポンプステーション)(出典:CPCウェブサイト)

 

表2:CPCと上流三大プロジェクトの参加者構成、生産量一覧(出典:各社ウェブサイト等から)
プロジェクト CPCパイプライン TENGIZ KASHAGAN KARACHAGANAK
オペレーター

CPC

Caspian Pipeline Consortium

TCO

Tengizchevroil

NCOC

North Caspian Operation Company

KPO

Karachaganak Petroleum Operating Company
ロシア政府 31%(Transneft)      

KazMunayGas

(カザフスタン政府)

20.75%

(KMG 19%、KPLV 1.75%)
20% 16.877% 10%
Chevron(米) 15% 50%   18%
Lukoil(露) 12.5% 5%   13.5%
ExxonMobil(米) 7.5% 25% 16.807%  
Shell(英) 7.5%(Rosneft-Shell)   16.807% 29.25%
Eni(伊) 2%   16.807% 29.25%

BG(英)2%

Oryx(英)1.75%
 

TotalEnergies(仏)16.807%

CNPC(中)8.333%

INPEX(日)7.563%
 
生産量(日量)

(輸送能力)

140万バレル

(2023年を目標に170万バレルに拡張予定)

65万バレル

(2023年頃に85万バレルに拡張予定)

40万バレル

(2023年目標に50万バレルに拡張予定。さらに2030年頃までに70万バレルに拡張する計画もある)

25万バレル

(ガス田プロジェクトであり、ガスコンデンセートを生産・出荷)

 

本稿では、オペレーターのコンソーシアムを指す場合はCPCと表記し、CPCが操業するTengiz-Novorossiysk 間のパイプラインを指すときはCPCパイプラインと表記する。

図2:カザフスタンの年間石油生産量推移
図2:カザフスタンの年間石油生産量推移(黄色棒)とCPCパイプライン年間輸送量実績(赤色線)(単位:百万トン)
(生産量はBP統計2021およびカザフスタンエネルギー省発表値から、輸送量実績はCPCウェブサイトから)
図3:CPCパイプライン出荷ターミナルのあるユージュナヤ・オゼレエフカ周辺図
図3:CPCパイプライン出荷ターミナルのあるユージュナヤ・オゼレエフカ周辺図(Yandex Mapから作成)

2. 3月下旬の出荷一時停止から完全復旧まで

CPCパイプラインの終点は、黒海北東部のロシア連邦ノボロシースク西方郊外のユージュナヤ・オゼレエフカにある。この周辺では、3月19日から20日にかけて強い北東の風が吹いた。CPCは3月21日、陸から5キロ離れた海上に設置している3基の一点係留出荷装置(Single Point Mooring System;SPM)が悪天候による損傷を受け、3号機(SPM-3)の運転を一時停止すると発表し、さらに翌3月22日に2号機(SPM-2)にも損傷が確認され、また海象状況が悪く1号機(SPM-1)の検査を実施できずに操業の安全を確保できなかったため、全SPMを停止した。

SPM-1の検査は翌3月23日に実施され、運転継続が可能と判断されたため、SPM-1単独での出荷が3月24日に再開された。しかし、SPM-2、SPM-3の修理には1、2か月程度を要すると見込まれ、その間はSPM-1のみによる出荷となって、出荷量の制限、CPCパイプラインで石油を輸送する上流事業の生産量制限と代替の輸出ルート検討が求められることとなった。なお、ユージュナヤ・オゼレエフカ出荷ターミナルには10基の石油貯蔵タンクが設置されていて、出荷が滞る際はパイプラインからの石油を最大100万トン(約750万バレル)貯蔵できるようになっている。

CPCのゴルバンGeneral Directorは4月18日のカザフスタンエネルギー大臣との会議で、2021年の実績ではSPMが2基同時並行で使用されたのは運転時間全体の48%で、その他の時間は全て単独で使用されたと述べている。

4月19日の報道では、カザフスタンの副首相兼財務大臣がCPCパイプラインの故障によるカザフスタンへの損害を、概算で1,000-1,500億テンゲ(約2-3億ドル)と述べた。

4月23日にSPM-3の修理が完了し、SPM-1とSPM-3の2基によりターミナルは通常操業が可能な状態に戻った。

5月に入ると、エネルギー省は一連の出荷減少量は合計で30-35万トン程度に収まり、当初懸念された100万トン規模の大幅な減少を最小限に抑えることができたとコメント。

5月25日には、SPM-2も修理が完了し、ターミナルの出荷設備は完全に復旧した。

図4:一点係留装置(SPM)による出荷の様子
図4:一点係留装置(SPM)による出荷の様子(出典:CPCウェブサイト)

3. 観測された影響

(1) 原油市場への影響

出荷に支障が発生した直後の3月23日の原油先物価格は約5%程度上昇した。2月末以降のロシアによるウクライナ侵攻に関連して米英が対露制裁としてロシア産原油の禁輸措置を発表し、ロシア産原油の取引に抵抗感が強まる中で、3月22日にロシアエネルギー省のソローキン次官が、CPCブレンド出荷量が日量100万バレル程度減少すると発言し、また23日にはロシアのノバク副首相が、出荷設備の修理には最大2か月を要すると発言。これらの発言を受けて、カザフスタンからの石油供給減少により需給が一層ひっ迫するという懸念が広まったことが一つの要因と考えられる。

図5 原油価格の推移(2022年1月3日~3月31日)
図5:原油価格の推移(2022年1月3日~3月31日)

(2) カザフスタンの年間生産量目標の修正と再修正

カザフスタンエネルギー省は3月末時点で、カザフスタンの石油生産量は4月末まで日量換算で約32万バレル(合計130万トン)減少するとの見方を示した。また4月初旬には、3月初め時点で8,750万トンとしていたカザフスタンの2022年の石油生産量目標値を8,570万トン(日量換算約171万バレル)に下方修正した。経済相は、生産量目標を引き下げるが足元の油価高騰により収入は補完されるとし、またエネルギー相は、OPEC+の減産合意との関連でカザフスタンがこれまでに超過生産していた分について、今回の臨時減産と今後上流事業で予定されるメンテナンス作業(Kashaganで6月から7月にかけて予定)に伴う計画減産により相殺が可能ともコメントした。

その後4月23日にSPM-3の運転が再開し、ターミナルの通常出荷能力が回復したことを受けて、エネルギー省は2022年の石油生産量目標値を、引き下げ前の8,750万トン(日量換算約176万バレル)に再修正している。

図6:CPCパイプライン月間輸送量の推移(百万トン)
図6:CPCパイプライン月間輸送量の推移(百万トン)(データ出典:CPC発表値、エネルギー省発表値)

(3) 代替ルートの模索

CPCパイプラインの出荷量制限を受けて検討、実施された代替ルートについて、報道ベースで以下に記述する。代替ルートはいくつかあるが、量もアクセスも限定的で、CPCパイプライン全量はカバーできない。今回は約1か月で出荷制限が解除されたため、実行された代替輸送の規模は少量かつ短期で済んだと考えられる。仮に問題がより長期化していた場合、CPC、上流事業者らは代替ルートの確保と、輸送ルート不足に伴うさらなる減産を余儀なくされたであろう。石油輸出の大部分をCPCパイプラインに頼るカザフスタンの課題を再認識させられる出来事となった。

 

西向けアゼルバイジャン経由

Atyrau地方からロシア、アゼルバイジャン経由の鉄道でバクーまで、またはカスピ海Aktau港まで鉄道で輸送しそこからバクーまでカスピ海上をタンカーで輸送してから、BTC(Baku-Tbilisi-Ceyhan)パイプライン(輸送能力日量120万バレル)、Baku-Supsaパイプライン(同15万バレル)で輸送。両パイプラインには輸送余力があるが、バクーまでの鉄道または海上輸送は量が限られ、1日に輸送できる量は20万バレル程度。ロイター通信によると、TengizプロジェクトオペレーターTCO(Tengizchevroil)はジョージアの黒海沿岸Batumi港向けに出荷を4月に実行した。4月は3,000トン、5月は100,560トンの予定で、今後は月間14万トン(日量約3万バレル)を出荷する計画とされた。また、Kazinformによると、Tengizからの鉄道輸送を拡大するために石油輸送用のタンク車両を現在の1,500両から3,500両に増加させることが検討されている。

図7:カザフスタンからの石油輸出ルート略図
図7:カザフスタンからの石油輸出ルート略図(筆者作成)

北向けロシア経由

Atyrau-Samaraパイプライン経由でロシア国内のTransneftの輸送システムに接続しバルト海のUst-Luga港から石油を出荷するルート。Atyrau-Samaraパイプラインの輸送能力は日量34万バレルで、通常の稼働率は6割程度。Ust-Lugaから出荷される場合はウラル原油として扱われる。ウクライナ戦争の影響で現在ウラル原油は対ブレントで30ドル程度ディスカウントとなっており、CPCブレンドとして輸出するより経済的には悪条件となるが、上流事業の生産量を維持する目的では選択肢となる。

 

東向け中国へ

カザフスタン-中国パイプライン(KKTパイプライン)のカザフスタン東部から中国国境までの区間(Atasu-Alashankou部分)の輸送容量は日量40万バレル(年間2,000万トン)あるが、稼働率は6割程度で大部分はロスネフチがカザフスタンとのトランジット契約に基づき中国向け輸出に使用している。2021年のカザフスタンからの輸送量は日量2万バレル程度だった。これを日量20万バレル程度まで増加させることは設備能力としては可能。しかしながら西部から接続するAtyrau-Kenkiyakパイプラインの容量は日量12万バレル(年間600万トン)しかなく、鉄道輸送での補完には石油タンク車両が不足する。カザフスタン政府は、Atyrau-Kenkiyakパイプライン、Kenkiyak -Kumkolパイプラインの容量を2倍に拡張することを検討している。

 

以上

(この報告は2022年6月7日時点のものです)

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