ページ番号1009392 更新日 令和4年6月28日

特許ってなんだ?(発明を通して考える研究開発と成果)

レポート属性
レポートID 1009392
作成日 2022-06-28 00:00:00 +0900
更新日 2022-06-28 10:00:02 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 著作権
著者
著者直接入力 国司 洋介
年度 2022
Vol
No
ページ数 6
抽出データ
地域1 アジア
国1 日本
地域2
国2
地域3
国3
地域4
国4
地域5
国5
地域6
国6
地域7
国7
地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 アジア,日本
2022/06/28 国司 洋介
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概要

久しぶりにソフトウェアの「発明」をしました。当然、発明者として特許を出す(取る)ための準備を始めたのですが、何といってもソフトウェアの特許、説明が微に入り、特許事務所に持ち込むまで予想外の時間がかかってしまいました。

良い機会なので、発明者サイドから見た特許、事業における知的財産(IP)の役割、JOGMECにとってのIP、こういった点について改めて考えてみます。

お付き合いの程、どうぞよろしくお願いします。

 

1. 特許とは

特許とは何か?

この問いかけには、立場により色々な答えがあると思います。

教科書的な回答は、「公開と独占のバランスで、技術進歩を加速する」でしょう。

イメージ 特許:公開と独占のバランスで技術の進歩を加速する

しかし、特許を出す側から見れば、「その技術の使用を止めてください!」と20年間言える権利です。

相手との競争で優位に立つことこそ大事、つまり、特許というのは「他人の迷惑になってなんぼ」という実に因業な制度と云えます。

もっとも、他人に「止めて」という以上、その範囲を疑念の余地なく示さなければなりません。

読者の皆さんの中には、特許の公報をご覧になったことがある方がいらっしゃると思いますが、「特許請求の範囲」で始まる、例の読みにくい文書は、「止めて」の範囲を疑念の余地なく確定するために先人たちが1世紀以上の試行錯誤で確立したフォーマットです。

 

「その技術の使用を止めてください!」と主張したい人(多くは法人)は、その内容を、書面で特許庁に提出しなければなりません。いわゆる「出願」です。

細かな手続きは省きますが、特許庁は、出願内容を特許にしてよいか、つまり、「止めて」といえる状態にしてよいか、調べてくれます(審査)。

  1. 既知の技術で同じものがないか? ← 新規性
  2. 既知の技術の組み合わせから、類推容易ではないのか? ← 進歩性
  3. 書かれている内容は明確か ← 記載不備

「既知の技術」どうやって探すかは、別の機会に譲ります。

A. の「新規性」は、その技術の専門家であればそう困難なく、判断できるでしょう。

C. の「記載不備」は難問ですが、そうならないように専門家の特許事務所を使うのですから、特許庁と特許事務所の問題です。

本当の難問が、B. の「進歩性」です。色々な判断方法が提案されていのですが、どれもわかったようでわからない。

特許が言葉遊びの様相を呈する理由は、大半がこの部分によるものです。

 

もう一つ、確認しておきたいことは特許というものは、次のようなストーリーになっていることです。

  1. 今までの技術は〇〇で、××の問題があった。(従来技術)
  2. それを◎◎で解決した。(特許請求の範囲)
  3. 具体的には◎◎◎◎である。(実施例)
  4. これには、△△のメリットもある(作用効果)

実際の研究開発は、「何かモヤモヤした中で手を動かしているうちに具体的なモノやプログラムが出来て、それが3. になる。特許の中に書いてある1. 、4. などは後付け説明だ」、そんなケースが圧倒的だと思います。冒頭の私の出願もそうです。

ただ、そこは割り切りで、この物語を上手く紡ぐコツをつかめば、特許は取りやすくなります。

 

例えば、冒頭の私の出願の詳細な説明は省きますが、実施例とすべき私の計算プログラムのアルゴリズムが教科書に載っているアルゴリズムより効率よく動くことを、今年の3月頃、まず確認しました。

次に特許を検索してみたら、近いコンセプトが既に出されていることが判明したので、その時は正直「あ~あ」という思いでした。

ただ、一晩経つと、違う点がいくつか見えてきました。ここを強調すれば・・・、ということで、これを先行技術に入れ、また、プログラムの説明を実施例に入れ、こんな具合に特許を書き始めました。

次は、「特許請求の範囲」です。

実施例をそのまま持ってくればよさそうなものですが、そうすると、「止めて」と言った時、相手は「ここが違うから、貴方から文句を言われる筋合いではないです」と言われてしまいます。

そうならないため、抽象的な表現にし、相当風呂敷を広げ、かつ、従来技術を含まない表現にします。

「止めて」という範囲は、ここで決まるのですが、読みにくく、また書きにくい部分です。

そのため、この「特許請求の範囲」は発明者が書かないケースも多いと思いますが、私は特許事務所との打ち合わせのたたき台とするため、必ず書くことにしています。結局、発明者が特許にしたい技術の本質を熟知していますので、発明者と特許事務所員がお互いに協力して、最適な「特許請求の範囲」の文章を作ります。

自分でここを書く理由はもう一つ、自問自答の良いプロセスという側面もあります。

つまり、表現を変え、抽象的に書いてみることで別の可能性が見えてきます。これが、相当な実験をしなければ確認できないケースならば、表現を変えることを適当に打ち切りますが、最初に書いた通り、今回の私の特許は計算プログラムの特許ですので、その場でも直せます。計算プログラムの一部を修正して試してみる、すると、最初の計算プログラム程ではないがが、まあまあの結果が得られる、それも含まれるように請求項を修正する、今度は、従来例との比較が分かりにくくなったので、こちらも追加する・・・。

結局、パラメータ設定も含め4通りの実施例で動作を確認し、特許事務所に相談するまで2ケ月ほどかかってしまいました。

 

2. 特許の権利範囲

「特許は早い者勝ちなのに2ケ月?弁理士先生に相談するまで悠長に2ケ月も費やすならば、何で最初の案で出さないの?」と疑問をお持ちになる方も居るかもしれません。

これは、特許を出した後のことについて、色々と頭の中を過ったからです。

先ほど、「特許請求の範囲=止めてと言える範囲」と言いましたが、現実には実施例(正確には特許明細書ですが)及び先行技術の影響を受けます。

例えば、「実施例1」と「従来技術」から、広い範囲を権利範囲の請求項で出願したとします。

しかし、多くの場合、出願後に「新たな先行技術」が見つかります。

これは特許庁が審査過程で見つけることもありますし、出願内容が実用化された後、JOGMECが競合者へ「特許の使用を止めてください」と言ったら、言われた相手が、「じゃあその特許へ異議を申立しますよ」と提出してくることもあります。

実施例1のみで出した特許は、新たに見つかった先行技術と比べられ、「考えていたのは、実施例1だけですね。そうではない証拠は無いでしょう?」と言われ、特許請求の範囲は、実施例1そのものまで、小さくなってしまいます。

一方、実施例2も一緒に書いておけば、「私は初めから、実施例2もちゃんと考えていました」と主張することが可能になり、特許請求の範囲をより広く確保することが出来るようになります。

イメージ:出願時に意図した権利範囲

出願の届け出をすると、知財担当者は、頻繁に細かいこと聞いてきます。これを、正直、鬱陶しいと感じられる読者も多いと思います。実は、私も30年前はそうでした。

でも、その知財担当は、実はこのようなことを考えて、質問をしているはずです。

それでも、早期の出願を優先するか、出願内容を充実させて広い権利確保を狙うか、これらは悩ましい問題です。

私の場合、発明者の顔と知財担当者の顔の間で自問自答の無限ループと、さらに優柔不断な性格で、要らざる時間を要してしまいましたが、その業界の技術開発スピード、競争の速さ、発明の中身などで折り合いをつけるしかありません。

もし皆さんが、この部分で悩むようでしたら、知財担当者と話し合ってみてください。皆さんの状況を知財担当者に理解してもらえれば、妥協点やセカンドプランはきっとあるはずです。

 

3. JOGMECが特許を出す理由

JOGMECは、資源確保を目的の1つとして設立されました。

基本的に利益追求をしない組織が、特許をはじめとするIPにこだわる理由は知的財産ポリシーに述べられています。

それにより、技術センター(TRC)の委託研究において、知財はJOGMECと共同研究者とで原則共有としています。(研究の目的・性質にもよります)

図 JOGMECの研究開発事業

「油ガス業界で特許は話題にならない」、そう感じておられる方も読者の中にはいるかもしれません。

確かに、油ガス業界は、水平分業が進んでいるため、特に上流では、「技術をサービスカンパニーに任せる」ビジネスモデルも選択肢です。

しかし、大手の海外サービスカンパニーが、石油の取れない日本でも300件、全世界では過去1万数千件の特許を出していることを、皆さんはご存じでしょうか?

そのような現実において、JOGMECは、技術に携わる以上、特許と計算プログラムの著作権には敏感にならざるを得ません。

JOGMECの技術面での仕事は、油ガス資源の確保に必要な技術の開発・実証を行うこと、そしてそれを元に、NOCと交渉する時、少しでも我が国に有利にすることです。

それには、実用化した技術と、そのIPがなければ話になりません。

もちろん、JOGMECは、委託研究のパートナーによる開発成果の実用化を妨げるつもりは、全くありません。

JOGMECは、もし共同研究の成果の実用化に成功したなら、前述のJOGMECの事業目的である「国民の皆様に資する」ことを考えていただきたいと思っています。JOGMECは、共同研究の資金が無駄にならなかったことを、国民の皆様に説明できるようにしたいと考えています。これが、IPの共有をパートナーの皆さんにお願いする理由です。

 

4. おわりに

ここまで、知財担当の現場の意見だけでなく、結構ハードルが高い理想論も書きました。

また、特許をはじめとするIPについては、JOGMEC内でしばしば議論になっているのも事実です。

ただ、種を撒かなければ、絶対に刈り取ることはできません。

私は知財担当として、WIN-WINの関係で、パートナーの皆さんとお付き合いできればと思います。

 

以上

(この報告は2022年6月15日時点のものです)

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