ページ番号1009400 更新日 令和4年7月1日

アルゼンチン:Vaca Muertaシェールの石油・ガス生産量急増 ―昨今のウクライナ情勢により開発加速への期待高まる―

レポート属性
レポートID 1009400
作成日 2022-07-01 00:00:00 +0900
更新日 2022-07-01 15:25:40 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 天然ガス・LNG非在来型
著者 舩木 弥和子
著者直接入力
年度 2022
Vol
No
ページ数 16
抽出データ
地域1 中南米
国1 アルゼンチン
地域2
国2 チリ
地域3
国3
地域4
国4
地域5
国5
地域6
国6
地域7
国7
地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 中南米,アルゼンチン,チリ
2022/07/01 舩木 弥和子
Global Disclaimer(免責事項)

このwebサイトに掲載されている情報は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、機構が作成した図表類等を引用・転載する場合は、機構資料である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。機構以外が作成した図表類等を引用・転載する場合は個別にお問い合わせください。

※Copyright (C) Japan Oil, Gas and Metals National Corporation All Rights Reserved.

PDFダウンロード1.2MB ( 16ページ )

概要

2020年には新型コロナウイルス感染拡大抑制のためのロックダウンにより、2021年にはNeuquén州での抗議行動により停滞していたVaca Muertaシェールの探鉱・開発が活発化し、Vaca Muertaシェールの石油・ガス生産量が急増した。これを受けて、アルゼンチン全体の生産量も増加している。2022年4月のアルゼンチンの生産量は、石油が日量578,000バレル(うちVaca Muertaシェールが日量234,000バレル)、天然ガスが日量1億2,700万立方メートル(うちVaca Muertaシェールとタイトプレイによるものが日量6,700万立方メートル)となっている。

2020年以降、ConocoPhillipsやWintershall Dea等がVaca Muertaシェールから撤退したが、Shell、Equinor、Vista Oil & Gasがその権益を取得し、開発を継続している。これらの企業は、国営石油会社YPFやChevron等と併せてVaca Muertaシェールでの生産拡大に努めている。

Neuquén州は、Vaca Muertaシェールの開発、生産増に牽引され、2030年までに同州の生産量は原油が日量70万バレル、天然ガスが日量1億4,000万立方メートルと現在の2倍以上に急増する見込みだとした。連邦政府は、2026年には、同国の石油生産量を日量100万バレル近くに、天然ガス生産量を日量1億6,300万立方メートルに引き上げるという目標を掲げている。YPFも、アルゼンチンは2026年に原油生産量を日量100万バレルに、原油輸出量を日量60万バレルに増やすことができるとしている。

Vaca Muertaシェールで生産される原油やガスを輸送するパイプラインの拡張、新設が計画されている。Bahía Blanca近郊に原油を輸送するOldelvalシステムは送油能力を25%拡張、チリ向けに原油を輸送するTrasandinoパイプラインは2023年末には日量10万バレル以上の原油をチリに輸送する計画だ。Buenos Aires州Salliquelo経由でSanta Fe州San Jeronimoまでガスを輸送するNestor Kirchnerパイプラインは2023年半ばまでに第1期、2024年までに第2期の建設が終了予定で、アルゼンチンの天然ガス輸送能力が25%拡大される。欧州に向けてガスを輸出する可能性を狙って、大西洋岸に大規模な天然ガス液化施設を建設するプロジェクトの検討も始まった。

アルゼンチンでは長年にわたり資本規制が行われてきたが、2022年5月、政府は石油・ガス会社が生産量を増加させた場合、増産分から得た収益の一部を公式レートでドルに交換し、債務の返済、配当金の支払い、利益の分配等に充てることを認めた。

Vaca Muertaシェール以外では、南部Tierra del Fuego州でガスを中心に粛々と開発・生産が続けられている。一方、沖合での探鉱は、ナミビアでの油田発見で期待が高まっているものの、環境保護団体等による反対が強く、2022年末に予定されている試掘が遅延するのではないかと見られている。

 

1. はじめに

EIAは「世界のシェールガス資源量評価」(2013年)で、アルゼンチンのシェールガスの技術的回収可能量は802兆立方フィート、シェールオイルの技術的回収可能量は265億バレルで、それぞれ世界第2位、第4位にあたるとしている。中でも、同国中西部のVaca Muertaシェールはその技術的回収可能量が、ガスが308兆立方フィート、石油が162億バレルとされている。このVaca Muertaシェールの開発が始まってから約10年が経過し、生産コストも米国のシェールに近い水準まで下がってきているという。それにもかかわらず、同シェール開発のペースは遅々としたものであった。しかし、この1年ほどの間に、これまでに比べ開発が進展し、石油、ガスともに生産量が急増している。ちょうどそのタイミングで、ロシアがウクライナに侵攻したことで、世界的に需給逼迫に対する懸念が高まり、原油やガスの価格が上昇した。これを受けて、アルゼンチンでは、ロシアからの石油、ガス供給減少分のいくらかを補えるのではないかと、Vaca Muertaシェール開発加速への期待が再燃しているという。

 

2. アルゼンチンおよびVaca Muertaシェールの開発・生産状況

アルゼンチンでは、2020年3月20日より新型コロナウイルス感染拡大抑制のためロックダウン(都市封鎖)が実施された。その結果、石油需要が減退し、石油貯蔵設備が満杯となって、石油会社各社はVaca Muertaシェールを含むアルゼンチンでの石油生産量を削減せざるを得なくなり、探鉱・開発も停滞した。政府は同年5月に、石油生産量を維持、回復させるために、国内で生産される原油の取引価格をバレル当たり45ドルに固定し、さらに、Brent原油の価格がバレル当たり45ドルを下回っている期間は、原油輸出税を免除することとした。国内の石油需要回復には時間がかかったが、原油輸出が増加し、これが後押しする形で、アルゼンチン、そして、Vaca Muertaシェールの石油生産量は回復に向かった。政府はガスについても、「Gas Plan 4」を2020年に導入し、2021年から2024年に生産される天然ガス、日量7,000万立方メートルについて補助金を出すことにより生産回復を図ろうとしたが、Vaca Muertaシェールで生産されるシェールガスを含むアルゼンチンの天然ガスの生産回復には時間がかかっていた。[1]

このように、アルゼンチン、特にVaca Muertaシェールでは2020年後半よりシェールオイルを中心に開発が進み始めた。ところが、2021年4月7日よりNeuquén州の医療従事者が新型コロナウイルス感染拡大に伴い給与を引き上げるよう求めて、Vaca Muertaシェールに通じる道路を封鎖した。約30基のリグが使用できなくなる等、Vaca MuertaシェールをはじめとするNeuquén州の探鉱・開発に影響を与えた。ヒューストンに拠点を置くサービス企業NCS Multistageによると、2021年3月に733と過去最高を記録したフラッキングステージ数は、4月に67%減少し239となった。Baker Hughesによる稼働リグ数も、順調に増加を続けていたが、3月の39基から、4月は33基に減少した。Vaca Muertaシェールでは2021年第1四半期には1か月当たり17〜18坑の坑井の生産が開始されていたが、4月にはPan American Energy(BPが株式の50%を保有するアルゼンチン企業)がわずか2坑の生産を開始しただけであった。

抗議行動が収まると、石油会社は設備を修理し、砂や水の供給を確保して、すぐに活動を再開、Vaca Muertaシェールのプロジェクトを積極的に推し進めた。

その結果、2021年5月のフラッキングステージ数は1,079と再び過去最高を記録した。その後もフラッキングステージ数は1,000前後で推移し、2021年通年では10,254と、2019年の6,405、2020年の3,276を大きく上回った。2022年に入っても状況は変わらず、2022年5月にはフラッキングステージ数が1,180とまた過去最高を更新した。内訳は、国営石油会社YPFが384、Shellが187、ExxonMobilが177、Vista Energy(メキシコ)が122、Tecpetrol(アルゼンチン)が115、Pluspetrol(アルゼンチン)が76、Pan American Energyが72、Phoenix Global Resources(英国)が47となっている。稼働リグ数も、その後、回復し50基前後で推移している。

(図1)アルゼンチンのフラッキングステージ数推移(2020~2021年)
(図1)アルゼンチンのフラッキングステージ数推移(2020~2021年)
(出所:各種資料を基にJOGMEC作成)
(図2)アルゼンチンの稼働リグ数推移
(図2)アルゼンチンの稼働リグ数推移
(出所:Baker Hughes websiteを基にJOGMEC作成)

開発活発化により、Vaca Muertaシェールの石油生産量が急増し、これを受けて、Neuquén州やアルゼンチン全体の生産量も増加している。Vaca Muertaシェールの石油生産量は、2021年5月の日量148,069バレルから、2021年11月に日量204,000バレル、2022年4月には日量234,000バレルへと、各種機関の生産見通しを上回るペースで増加した。特に、Loma Campana(YPF、Chevronが開発、生産中)、La Amarga Chica(YPF、Petronasが開発、生産中)、Cruz de Lorena(Shellが開発、生産中)、Bajo del Choique-La Invernada(ExxonMobilが開発、生産中)の4鉱区が生産増を牽引した。

同時期に、Neuquén州の石油生産量は日量189,199バレルから236,784バレル、264,000バレルに、アルゼンチン全体の石油生産量は日量512,485バレルから、546,700バレル、578,000バレルに増加した。そして、Neuquén州の石油生産量に占めるシェールオイルの割合は78%、86%、89%、アルゼンチンの石油生産量に占めるシェールオイルの割合も29%、37%、40%と高まった。

(図3)Neuquén州主要鉱区図
(図3)Neuquén州主要鉱区図
(出所:各種資料を基にJOGMEC作成)
(図4)Vaca Muertaシェール石油生産量推移(単位:日量万バレル)
(図4)Vaca Muertaシェール石油生産量推移(単位:日量万バレル)
(出所:各種資料を基にJOGMEC作成)

生産増に伴い、Neuquén州からの石油輸出量も増加している。2021年1月から9月には石油生産量の10%にあたる500万バレル(日量18,000バレル)程度を輸出していたが、2022年第1四半期の石油輸出量は生産量、日量254,877バレルの17%、日量43,300バレルとなった。3月について見てみると、石油輸出量130万バレル(日量41,900バレル)のうち、Pan American Energyが482,000バレル、Vista Oil & Gasが347,500バレル、YPF/Chevronが345,700バレルを輸出した。主な輸出先は、北米、欧州、アジアとなっている。

アルゼンチンの天然ガス生産量は2021年4月に日量1億1,400万立方メートルまで落ち込んだが、政府が打ち出した奨励策「Gas Plan 4」により井戸元価格が3.50ドル/MMBtu前後と採算の取れる水準に上昇したことで、遅ればせながらも増加に転じるようになった。直近のピーク生産量である2019年4月の1億4,440万立方メートルや冬季のガス需要、日量1億8,000万立方メートルにはまだ及ばないものの、2021年後半以降は日量1億3,000万立方メートル程度で推移している。2022年4月の天然ガス生産量は日量1億2,700万立方メートルで、このうち53%に相当する日量6,700万立方メートルがVaca Muertaシェールとタイトプレイによるものとなっている。

2021年後半からは天然ガス生産増加に伴い、ガス輸出量が増加するようになった。国内需要が減少する夏季(10月初旬から4月末)を中心にチリ、ブラジル、ウルグアイへガスが輸出された。

このうちチリ向けには、年間を通してのガス供給が開始される予定だ。アルゼンチンは2006年に、年間を通してのチリ向けガス供給を停止、その後、チリへのガス輸出は夏季を中心に再開された。アルゼンチンは、夏季だけでなく、年間を通してチリへのガス輸出を再開することを目指していたが、ついに2022年6月、同月から2023年9月までの間、チリにVaca MuertaシェールLoma La Lata鉱区より天然ガス、日量30万立方メートルを供給する契約を締結した。2022年の価格は7ドル/MMBtuまたはブレント原油価格の6.5%のいずれか高い方となる。ガスはPacíficoパイプラインを通じて、主に人口の多いChillán、Concepción、Los Ángelesを中心としたチリ中南部に送られる。

一方で、ボリビアからのパイプラインガス輸入は継続されており、国内生産で需要を満たすことができない冬季にはLNGの輸入も行われている[2]。2020年は日量1,990万立方メートル(うちLNG日量510万立方メートル)、2021年は日量2,260万立方メートル(同日量970万立方メートル)のガスを輸入した が、政府は、生産量や輸入量に関する数値を示さずに、Vaca Muertaシェールのガス生産増加により、2022年はガス輸入量を削減できると見ているとしている。また、ロシアのウクライナ侵攻に伴う世界的なガス供給逼迫でLNG価格が高騰しているため、政府は輸入を減らすための複数の方策を検討しているとしている。国営エネルギー企業Integración Energética Argentina SA(IEASA)によると、2021年はLNGを輸入するために7〜13ドル/MMBtuを支払ったが、2022年は35~45ドル/MMBtuを支払う可能性があるという。

 

3. 主要石油会社のVaca Muertaシェール開発状況

2020年以降、Schlumberger、ConocoPhillips、Wintershall DeaがVaca Muertaシェールから撤退したが、Shell、Equinor、Vista Oil & Gas等がこれを取得し、開発を継続している。これらの企業は、YPFやChevron等と併せてVaca Muertaシェールでの生産拡大に努めている。

(1) YPF:Vaca Muertaシェール開発により5年間で石油生産量倍増を目指す

YPFはアルゼンチン最大の石油・ガス生産者であり、同社の生産量は、アルゼンチンの原油生産量の39%、ガス生産量の32%を占めている。同社の石油・ガス生産量(石油換算)は2016年の日量577,000バレルから2020年の467,000万バレルまで減少を続けていたが、2021年は日量47万バレルとわずかながらも前年を上回り、生産減少に歯止めをかけた。2022年に入ってもこの傾向は続いており、2022年第1四半期までの1年間の生産量は日量487,000バレルとなっている。

YPFは現在の石油生産量、日量22万バレルを5年間で日量45万バレルに倍増させることを計画している。そのために、同社は、2022年の投資額を2021年の27億ドルから40%増やし37億ドルとし、うち75%を上流に投じるという。上流投資のうち16億ドルは非在来型の開発に充てるが、このうち50%以上をLoma Campana、Bandurria Sur(パートナー:Equinor、Shell)、La Amarga Chica、Aguada del Chanarの4鉱区に投じるとしている。残りはManantiales Behr等在来型鉱区の生産減退を食いとめるために投じるという。

YPFが保有するVaca Muertaシェールの鉱区の中で最も開発が進んでいるのが、Chevronとジョイントベンチャーを組み開発、生産中のLoma Campana鉱区だ。同鉱区の原油生産量は、2021年1月に初めて日量6万バレルを上回った。2022年第1四半期の同鉱区の原油生産量は日量62,000バレルとなっており、同社の石油生産量、日量222,000バレルの28%に相当するという。

YPFは2021年11月3日に、Vaca MuertaシェールBajada de Añelo鉱区をShellと共同で開発すると発表した。両社は、開発の第1段階では、3億ドルを投じ、2023年までに原油を日量15,000バレル生産し、ガスを日量200万立方メートル処理する能力を持つ初期生産システムを構築し、新たに16坑の坑井を掘削することを計画している。両社は、パイロットプロジェクトの段階で12坑の掘削を成功裏に終了し、同鉱区の理解を深めることができたことから、開発への移行を決定したという。

YPFは、同年11月17日にはEquinorとともに、Vaca MuertaシェールBajo del Toro鉱区のパイロットプロジェクトを開始すると発表した。両社は、Bajo del Toro鉱区を2分割し、北側のBajo del Toro Norte鉱区でパイロットプロジェクトを実施する。投資額は1億1,700万ドルで、水平坑井14坑を掘削、処理施設など関連施設を建設するという。並行してBajo del Toro鉱区全体での探鉱を4年間継続し、同鉱区南部の開発の可能性についても探るとしている。パイロットプロジェクト開始前に、両社はNeuquén州政府とBajo del Toro鉱区のコンセッション契約(契約期間35年)を締結した。パイロットプロジェクト成功時には商業規模の生産に移行するとしている。

YPFはこれまで、Neuquén州内のVaca Muertaシェールでシェール開発を進めていたが、Vaca Muertaシェールでの開発を拡大し、長期的な生産増を目指すために、Vaca Muertaシェール北部、Mendoza州でもシェール開発を進めると2022年5月31日に発表した。10月より、1,700万ドルを投じ、Mendoza州南部のNeuquén州との境界に近いCN-VII鉱区およびPaso de las Bardas Norte鉱区で坑井2坑を掘削する計画である。結果が良好な場合には、両鉱区において150坑の掘削を予定しているという。

YPFはまた、2021年10月にSanta Cruz州San Jorge basinのD-129シェールでも非在来型掘削キャンペーンを開始、Cañadón Seco付近で水平坑井を掘削しているという。YPFは、2014年に隣接するChubut州側のD-129シェール、El Trébol 914鉱区で非在来型資源を確認したが、この地域を開発するにはインフラを構築する必要があるとしていた。

 

(2) Shell:権益取得やパイプライン建設により増産を図る

ShellはVaca Muertaシェールの7鉱区に権益を保有、うち4鉱区でオペレーターを務めている。

2016~2021年にアルゼンチンへ15億ドルを投じた結果、Shellは2021年第1四半期の同国の生産量を前年同期比200%増の日量15,000バレルに引き上げた。Shellは2021年下半期から2022年にかけてVaca Muertaシェールで100坑以上の坑井を掘削するとしている。

Shellは2020年1月に、EquinorとともにSchlumbergerよりBandurria Sur鉱区の権益49%を3億5,500万ドルで買収したが、その後もVaca Muertaシェールの鉱区権益拡張を進めている。

2021年6月、ShellはVista Oil & GasよりCoirón Amargo Sur Oeste鉱区の権益10%を2,150万ドルで取得したと発表した。これにより、Shellはオペレーターを務めている同鉱区の権益保有比率を90%とした。Shellは、2019年に同鉱区のパイロットプロジェクトを終了し、現在、本格開発を進めているところで、これにより、Vaca Muertaシェールの石油生産量を2022年末までに日量42,000バレルに引き上げる計画である。

Shellはまた、Shellが60%、Pan American Energyが25%、Pluspetrolが15%の割合で参加するジョイントベンチャーを設立、Sierras Blancas鉱区とRío Negro州Allenの間に全長105キロメートル、口径16インチ、輸送能力日量12万バレルの原油パイプラインを敷設し、幹線パイプラインに接続して、ボトルネックの解消を図る計画だ。Shellは、2021年7月にこのパイプラインの建設をTechintとIngeniería Simaに発注、現在、建設中で、2022年末に試運転を実施する予定だ。

(表1)Shellが権益を保有するVaca Muertaシェールの鉱区
鉱区 オペレーター Shellの権益保有比率
Sierras Blancas Shell 90%
Cruz de Lorena Shell 90%
Coirón Amargo Sur Oeste (CASO) Shell 90%
Bajada de Añelo Shell 50%
La Escalonada TotalEnergies 45%
Rincón la Ceniza TotalEnergies 45%
Bandurria Sur YPF 30%

(出所:Shell websiteを基にJOGMEC作成)

 

(3) Chevron:El Trapial Este鉱区でパイロットプロジェクトを開始

Chevron は、YPFのパートナーとしてLoma Campana鉱区の権益50%を保有している。同じくパートナーとして権益の50%を保有するNarambuena鉱区でも2020年11月に生産を開始した。

Chevronは2022年4月に、権益100%を保有するEl Trapial Este鉱区でパイロットプロジェクトを開始した。3年間に7,870万ドルを投じるが、このうちの6,570万ドルで掘削長2,500〜3,000メートルの水平井5坑を掘削、1,300万ドルでインフラ整備を行うという。パイロットプロジェクト終了後に、本格的な開発に移行することを検討するという。

 

(4) Vista Oil & Gas:Bajada del Palo Oeste鉱区を中心に開発、撤退する企業から権益取得

YPFの元CEOであるMiguel Galuccio氏が設立した石油会社Vista Oil & Gasは、2021年6月にShellにCoiron Amargo Sur Oeste鉱区の権益10%を売却して得た資金2,150万ドルにより、Bajada del Palo Oeste鉱区でのシェールオイル開発の加速に注力するとともに、このうちの650万ドルをVistaの操業に必要なShell所有のCruz de Lorena鉱区の取水インフラ拡張のために使用するとした。この時点で、Vista Oil & Gasは、Bajada del Palo Oeste鉱区で、28坑の生産井から日量24,000バレルの原油を生産していた。

同じく2021年6月には、Trafiguraが、Vista Oil & Gasが開発中のBajada del Palo Oeste鉱区の坑井20坑の開発に7,500万ドルを投資することが明らかになった。Trafiguraが投資する7,500万ドルのうち、2,500万ドルはBajada del Palo Oeste鉱区の生産井20坑の権益20%を取得するため、残りの5,000万ドルは20坑の開発費に対するTrafiguraの拠出分であるという。Vista Oil & Gasは権益の80%を保持する。TrafiguraはVista Oil & Gasから18ヶ月間にわたりBahia Blanca製油所向けに月38万バレルの原油の供給を受けることでも合意した。TrafiguraはBahia Blanca製油所(精製能力、日量31,500バレル)、 Campana燃料ターミナルおよびPuma Energyの350のサービスステーションネットワークを所有、運営している。

Vista Oil & Gasは、Bajada del Palo Oeste鉱区の東に隣接するBajada del Palo Este鉱区でも水平坑井2坑を掘削、2022年4月には1坑あたり石油換算、日量2,400バレル以上を生産した。うち1坑はBajada del Palo Este鉱区の西側境界付近で掘削されており、Bajada del Palo Oeste鉱区で確認されている地質と連続性を示しているという。

Vista Oil & Gasは2021年9月には、ConocoPhillipsのアルゼンチン子会社の株式を買い取り、Vaca MuertaシェールのAguada Federal鉱区とBandurria Norte鉱区の権益50%を取得した。Vista Oil & Gasは契約締結にあたって支払いは行わず、両鉱区に対する投資額7,700万ドルを引き受けた。両鉱区の残りの権益はオペレーター、Wintershall Deaが保有するとされた。

しかし、その後、2022年1月にWintershall Deaが、現在ポートフォリオの約70%を占める天然ガスへの戦略的移行を進めるとして、ブラジルから撤退、アルゼンチンの石油事業を終了すると発表した。アルゼンチンについては、Tierra del Fuego州とNeuquén州でのガスプロジェクト等があり、Wintershall Deaのガス生産にとって重要な中核国であり続けるとする一方で、Vaca MuertaシェールのAguada Federal鉱区とBandurria Norte鉱区の権益50%をVista Oil & Gasに売却した。なお、ブラジルについては、保有していたCampos、Santos、Ceará、Potiguar盆地の9鉱区は探鉱中であるが、未実施の探鉱作業義務はなく、事務所を閉鎖し、完全に撤退するとした。

Vista Oil & Gasは、2022年4月、原油価格上昇とパイプライン拡張計画を受けて、4億ドルを投じVaca Muertaシェールでの掘削を増やし、生産量を2021年の石油換算、日量38,845バレルから2022年は日量46,000~47,000バレルに20%増加させるという計画を発表した。同社は、2022年第1四半期の生産量を前年同期(石油換算、日量34,100バレル)比29%増やし石油換算、日量43,900 バレルとした。うち、石油生産量は前年同期(日量26,400 バレル)比35%増加し日量35,600バレル、ガス生産量は前年同期(日量114万立方メートル)比9%増加し日量124万立方メートルであった。

Vistaは2021年12月に23億ドルを投じ2026年に生産量を石油換算、日量8万バレルに増やす計画だとしていた。

 

4. アルゼンチンおよびVaca Muertaシェールの生産見通し

Neuquén州のOmar Gutierrez知事は2022年4月11日に、Vaca Muertaシェールの開発、生産増に牽引され、2030年までに同州の原油と天然ガスの生産量が現在の2倍以上に急増する見込みだと、発表した。

Gutierrez知事は、同州の原油生産量を2022年1月の日量247,000バレルから2022年末までに日量308,000バレル、2023年末には日量42万バレルに引き上げることを最初の目標としているとした。そして、2030年には同州の原油生産量が日量70万バレルに達する見通しであると語った。天然ガス生産量については、1月の日量6,200万立方メートルから2030年には日量1億4,000万立方メートルに増加し、国内需要を満たすとともにブラジル、チリ、ウルグアイへの輸出も増加すると見ているとした。そして、この生産目標を達成するためには、Vaca Muertaシェールへの投資額を2022年の約50億ドルから、年間100億ドルに増やす必要があるとした。

一方、連邦政府は、2026年には、同国の石油生産量を2022年4月の日量578,000バレルから71%増の日量100万バレル近くに、天然ガス生産量を日量1億2700万立方メートルから30%増の日量1億6,300万立方メートルに引き上げるという目標を掲げている。そして、現在、日量10万バレルに満たない原油輸出量を日量50万バレル以上にするとしている。また、ガスについても、アルゼンチンはLNG市場においてオーストラリアやカタールに匹敵する存在になれるかもしれないとした。連邦政府は、石油、ガスともにパイプライン新設プロジェクトが進んでおり、国内販売と輸出の増加の見通しが立っていることがこの見通しの背景にあるとした。

YPFも、パイプラインの輸送能力を日量100万バレルまで増加させ、上中流に年間90億ドルを投じることにより、アルゼンチンは2026年に原油生産量を日量100万バレルに増やし、原油輸出量を2022年の日量12.5万バレルから2026年には日量60万バレルに増やすことができるとしている。

政府やYPFの見通しは楽観的なものとなっているが、その実現可能性はどの程度のものなのだろうか。

連邦政府は2018年8月に、「アルゼンチンのエネルギーの過去・現在・未来(Pasado, presente y futuro de la energía en Argentina)」と題するレポートを発表した。連邦政府はこの中で、5年間で石油、天然ガス生産量を当時の日量48.8万バレル、1億3,200万立方メートルから倍増させ、それぞれ日量100万バレル、2億3,800万立方メートルとし、石油日量50万バレル、天然ガス日量1億立方メートルを輸出すること等を目標に掲げた。石油会社の生産計画に基づいて作成された目標であったが、生産量は計画通りに増加しなかった。このような過去の経緯があり、今後の生産状況については、見通し通りに増加しない可能性も考えられ、注視していく必要があろう。

 

5. パイプライン輸送能力不足緩和を目指す動き

Vaca Muertaシェールの開発を促進し、石油、ガス生産量を増加させ、政府やYPFの見通しを現実のものとするには、パイプラインの輸送能力を増強することが必須となるだろう。

Oleoductos del Valle(Oldelval)システムはNeuquén州Puesto HernándezからBahía Blanca近郊のPuerto Rosalesまで口径14インチのパイプライン2本で原油を輸送している。Vaca Muertaシェールで生産される原油もこのパイプラインで輸送されている。同パイプラインの輸送能力は日量213,000バレルであったが、原油生産量の増加に対応するため、2021年末から2022年にかけ5,000万ドルを投じてポンプ能力を向上させるプロジェクトが実施された。その結果、輸送能力は日量265,000バレルまで増強された。Oldelvalは2022年末までに輸送能力をさらに日量15,000~20,000バレル増やすとともに、2024年までに新たなパイプラインを建設することも計画しているという。なお、同パイプラインを運営するOldelval社はYPF(37%)、Petrobras Energía(23.1%)、Chevron(14%)、Pan American Energy (11.9%)、Pluspetrol(11.9%)、Tecpetrol(2.1%)が出資する合弁会社で、1993年にYPFからこのパイプラインを購入した。

石油に関しては、すでに生産量が国内需要、日量45~50万バレルを上回っており、生産増のためには輸出用のパイプラインの充実が重要となる。

アルゼンチンとチリの間には、Neuquén州Puesto HernándezとSantiagoの南に位置するBio Bio製油所およびConcepción港を結ぶ全長425キロメートル、口径16インチ、送油能力、日量10万バレルのTrasandinoパイプライン(Oleoducto Trasandino Estenssoro-Pedrals:OTA)がある。1994年に敷設され、1996年に操業を開始したが、アルゼンチンの原油生産量減少により送油量がピーク時の日量115,000バレルから日量35,000バレル程度に減少したため、2000年10月に稼働を停止し、放置されていた。Vaca Muertaシェールの生産増で同パイプラインへの注目が高まり、2019年にアルゼンチンとチリは、同パイプラインの操業を再開し、チリへの石油輸出を再開する計画を発表した。チリ側では2020年2月までにパイプライン再開の準備が完了したが、アルゼンチン側では資金不足と新型コロナウイルス感染拡大からパイプライン改修が進まず、操業は停止したままとなっていた。両国は2021年1月26日に同パイプラインの改修に合意、Vaca Muertaシェールの生産急増もあって、アルゼンチン側でもパイプライン再開のための計画が進行するようになった。同パイプラインは2022年末から2023年初めに送油能力、日量35,000バレルで再稼働する予定となっている。さらに、Vaca Muertaシェール中心部まで同パイプラインを150キロメートル延長し、2023年末には日量10万バレル以上の原油をチリに輸送する計画であるという。

ガスについては、パイプライン輸送能力不足がVaca Muertaシェール生産増のボトルネックとなっており、パイプラインの輸送能力拡張は急務となっている。また、ボリビアのガス生産量減少懸念からもVaca Muertaシェールからのパイプライン輸送能力拡張は必要とされている。

(図5)アルゼンチンの主要な天然ガスパイプライン
(図5)アルゼンチンの主要な天然ガスパイプライン
(出所:各種資料を基にJOGMEC作成)

政府は2022年2月、IEASAにNestor Kirchnerガスパイプラインの建設を許可した。このパイプラインは、第1期でNeuquén州Vaca MuertaシェールとBuenos Aires州Salliquelo間558キロメートル、第2期でSalliqueloとSanta Fe州San Jeronimo間484キロメートルのパイプラインを建設するものだ。政府は2023年半ば頃までに第1期の建設を終了予定で、第1期が完了するとガス輸送能力がこれまでより日量2,400万立方メートル増加する見込みとなっている。第2期は2024年までに建設終了予定で、これにより消費量の多い首都圏へのガス供給を増やすことが可能となる他、ブラジルやチリへの輸出を促進する役割も期待されている。輸送能力は最終的に日量4,400万立方メートルとなり、アルゼンチンの天然ガス輸送能力を25%拡大することになる。また、総工費は34億ドルとされており、うち第1期分が15.7億ドルとされている。IEASAはYPFにパイプラインの輸送能力を優先的に利用させ、残りを他の生産者に利用させる予定であるという。アルゼンチンは、もともと、2019年7月にこのパイプラインに関する入札プロセスを開始したが、経済状況の悪化から、入札期限を2020年3月下旬まで延長した後、プロジェクトを中断していた。

IEASAはすでに、同パイプライン第1期分のパイプを入手するための入札を実施、Techint子会社のSIAT から1件の入札を受けた。そして、SIATと口径36インチのパイプライン582キロメートルと、口径30インチのパイプ74キロメートルの購入契約を締結した。IEASAは、同パイプライン第1期の建設の入札を6月に開始、その他の部品等の入札も開始した。

順調に建設が進み、パイプライン輸送能力が拡張されれば、Vaca Muertaシェールは、アルゼンチンを南米南部へのガス供給国に変貌させ、冬季もガス輸出国とすることができると見られており、動向が注目されている。しかし、同パイプラインのパイプ調達入札に関して不正疑惑が浮上[3]しており、これを指摘したMatías Kulfas工業生産・開発大臣が6月4日に解任された。入札に関しての捜査が行われており、同パイプライン建設が遅延する可能性がある。

2021年後半には、約50億ドルを投じ2023年末までに、Vaca MuertaシェールとブラジルのRio Grande do Sul州Porto Alegre間に全長1,430キロメートル、輸送能力、日量1,000万立方メートルの天然ガスパイプラインを完成させる計画が浮上したが、2022年に入りNestor Kirchnerガスパイプラインの建設計画が具体化すると、同パイプラインに関する情報は見られなくなった。

一方、Martin Guzman経済相は2022年4月27日、欧州に向けてガスを輸出する可能性を狙って、政府が大西洋岸に大規模な天然ガス液化施設を建設するプロジェクトを検討していることを明らかにした。アルゼンチンは、2019年にアジア市場をターゲットとして50億ドルを投じてLNG輸出プロジェクトを立ち上げようとしていたが、経済状況悪化により保留とされた。ロシアのウクライナ侵攻によりガス供給減少懸念に直面している欧州を対象としたプロジェクトとしてこれが再浮上してきたのだ。政府は、液化施設建設の候補地としてBuenos Aires州Bahia Blanca港をあげ、総工費100億ドル以上を投じて、早ければ2026年に操業開始が見込まれるとした。

5月には、Eduardo de Pedro内務大臣が、Vaca Muertaシェールからの天然ガス生産量を増加させ、Rio Negro州に建設するLNG輸出施設を通じて輸出を行うために、Nestor Kirchnerガスパイプラインを上回る輸送能力のパイプラインをVaca MuertaシェールとRio Negro州間に建設することを検討していると語った。

パイプラインや液化設備を複数立ち上げるための資金調達はうまくいくのか、また、年間を通して需要を上回るガス生産が可能となるのか、今後の動向に注目したい。

 

6. 資本規制緩和

アルゼンチンでは、急激な資本流出等を防ぎ、為替レートと物価を安定させるために、長年にわたり資本規制が行われてきた。厳格な為替管理体制が取られ、企業は資金を持ち込むことはできても、配当金の支払いや設備の輸入、債務の返済のためであっても、それを持ち出すことができなかった。この資本規制が外国企業の投資意欲を減退させる要因の一つとなっているとの指摘がなされており、石油会社は、資本規制の緩和を求め、ロビー活動を展開してきた。

2015年12月に大統領に就任したMauricio Macri前大統領は、一旦は資本規制を廃止したが、アルゼンチンが金融危機に陥ったため、2019年8月にこれを復活させた。

その後、政府は2021年4月7日に、1億ドル以上の新規投資を行う石油・ガス会社に対し、輸出代金の20%を自由に使用することを認める優遇措置を開始した。資本規制が一部緩和されたものの、輸出を行っている企業のみを対象とした制度である上に、「自由に」と言いながらも、政府は、対外債務と配当の支払いに直ちに使用するか、その目的に使われるまでアルゼンチン国内または国外の銀行に預けなければならないとした。そのため、効果は限られたものとなった。

政府は、2022年5月27日に法令第277/2022号を発効、石油・ガス会社が生産量を増加させた場合、増産分から得た収益の一部を公式レートでドルに交換し、債務の返済、配当金の支払い、利益の分配等を行うことを認めた。同法令に基づき、石油に関してはRADPIP、天然ガスに関してはRADPIGNという外貨優遇制度が設けられ、2021年の生産量と過去12カ月間の生産量を比較し、生産量増加分の、石油は20%、天然ガスは30%にブレント原油の価格(過去12カ月の平均値)を乗じた額をドルに交換できるようになった。法令発効から30日後より、同制度が利用可能になる。

この石油・ガス部門の資本規制緩和に関して、政府は5月24日、企業がより多くの外貨を獲得して、リグ等の設備を輸入し、生産を拡大することを可能にしたと発表した。そして、この資本規制緩和により、石油・ガス会社は2026年までに約400億ドルの投資を行い、今後5年間で原油生産が71%、ガス生産が30%増加し、年間最大180億ドルの輸出が可能になるとの試算を発表した[4]

しかし、増産分の一定割合のみを闇市場の半分程度の公式レートでドルに交換できるにすぎず、ガスに関してはパイプラインインフラの不足、石油に関しては国内価格がバレル当たり60ドル程度に抑えられていること等と併せて、大幅な投資増や開発加速には結びつかないとの見方をする向きもある。

 

7. Vaca Muertaシェール以外での探鉱・開発状況

(1) 粛々と開発・生産が続く南部Tierra del Fuego州

アルゼンチン最南端のTierra del Fuego州では、天然ガスを中心に開発、生産が続けられている。特に、Cuenca Marina Austral(CMA-1)鉱区では、生産井260坑より、アルゼンチンの天然ガス生産量の約16%に相当する日量2,000万立方メートルのガスが生産されている。

TotalEnergiesは2022年3月に、CMA-1鉱区沖合Fenixガス田フェーズ1の開発について2022年中の最終投資決定を目指すと発表した。TotalEnergiesは水深72メートルの海域で水平坑井3坑を掘削、沖合プラットフォームと全長77キロメートルの海底パイプラインを建設する計画だ。Fenixガス田フェーズ1では、石油換算2.7億バレルのガスを開発し、日量、石油換算6万バレルを生産する予定だ。開発コストは石油換算1バレル当たり6ドルとされている。CMA-1鉱区では1989年に生産が始まり、現在、7油ガス田(Antares-Ara-Cañadón Alfa、Hidra、Ara South、Kaus、Carina、Aries、Vega-Pléyade)で生産が行われている。パートナーのWintershall Deaは、Vega Pléyadeガス田の生産減退を、Fenixガス田フェーズ1とCarinaガス田の追加開発で補う計画であるとした。同鉱区の権益保有比率は、TotalEnergiesとWintershall Deaがそれぞれ37.5%、Pan American Energyが25%となっている。

この3社は、CMA-1鉱区について、「沖合での炭化水素開発の複雑さと高コストから、より長い時間軸が必要である」として開発ライセンスを10年間延長するよう要請していた。2022年4月、Tierra del Fuego州政府および連邦政府はこの要請を受け入れ、同鉱区の開発ライセンスを2031年から2041年まで延長することを決定した。これを受けて、TotalEnergies、Wintershall Dea、Pan American Energyは、同鉱区の天然ガス生産量を日量2,000万立方メートルで維持するため、2031年から2041年の間に同鉱区に7億ドルを投じるとした[5]

 

(2) ナミビアでの油田発見で期待高まるも、沖合での掘削は遅延か

約30年間にわたり、アルゼンチン政府が深海鉱区の入札を実施してこなかったため、これまでのところTierra del Fuego州沖合を除いて、沖合での探鉱に大きな進展は見られていない。

そのような状況下で、政府は2019年4月にWestern Malvinas Basin、Austral Marina Basin、Northern Argentine Basinの沖合38鉱区を対象に鉱区入札を実施した。未探鉱エリアを広く公開したり、契約期間の最初の4年間は掘削義務を設けなかったりする等、政府が石油会社の参入しやすい条件を設定したことから、高い技術力と十分な資金を持つメジャー等の国際石油会社(IOC)が入札に参加し、13社が18鉱区を落札するという好結果が得られた。

(図6)アルゼンチン沖合鉱区図
(図6)アルゼンチン沖合鉱区図
(出所:各種資料を基にJOGMEC作成)
(表2)2019年沖合鉱区落札結果
鉱区 落札企業
CAN 102 YPF、Equinor
CAN 107 Shell、Qatar Petroleum
CAN 108 Equinor
CAN 109 Shell、Qatar Petroleum
CAN 111 Total、BP
CAN 113 Total、BP
CAN 114 Equinor、YPF
AUS 105 Equinor
AUS 106 Equinor
MLO 113 ExxonMobil、Qatar Petroleum
MLO 114 Tullow、Pluspetrol、Wintershall
MLO 117 ExxonMobil、Qatar Petroleum
MLO 118 ExxonMobil、Qatar Petroleum
MLO 119 Tullow、Pluspetrol、Wintershall
MLO 121 Equinor
MLO 122 Tullow
MLO 123 Total、YPF、Equinor
MLO 124 Eni、Mitsui、Tecpetrol

(出所:各種資料を基にJOGMEC作成)

 

ExxonMobil、Total、Equinor、BP、Eni、Mitsui等落札企業は2020年に環境影響調査を連邦政府に提出した。政府は環境評価アセスメントのプロセスを進めていたが、漁業関係者からのコメントや意見を分析するため2021年初めにこれを一時中断することとした。しかし、2021年12月末に政府は、CAN-100鉱区、CAN-108鉱区、CAN-114鉱区についての環境評価アセスメントのプロセス中断を解除し、YPF/Equinor/ShellにCAN-100鉱区、YPF/EquinorにCAN-114鉱区、EquinorにCAN-108鉱区で3D地震探鉱を行うことを承認した。

これらの鉱区のうち、CAN-100鉱区はIOCの関心が高かったものの、2019年に実施された沖合鉱区入札の対象とはされず、2019年5月にYPFに付与された鉱区だ。2019年10月にEquinorがYPFより同鉱区の権益50%を取得し、オペレーターとなった。2021年1月には、ShellがCAN-100鉱区の権益30%をYPFとEquinorより取得、EquinorとYPFの権益保有比率をそれぞれ35%とすることで合意した。同鉱区の面積は15,000平方キロメートルで、アルゼンチン北部で最大の鉱区である。YPF、Shell、EquinorはCAN-100鉱区での探鉱・開発に60億ドルを投じる計画で、YPFは同鉱区において最大で日量20万バレルを生産できる可能性があるとしている。入札で付与された鉱区よりも探鉱が進んでおり、Equinorは2022年末より同鉱区で試掘を行う計画であるとしていた。

ところが、環境保護団体がこのCAN-100鉱区の探鉱・開発に反対し、Buenos Aires州Mar del Plataでたびたび抗議デモを実施、探鉱停止を求め訴訟を提起した。これに対して、2022年2月、Mar del Plata連邦司法裁判所が、環境破壊のリスクを理由にYPF、Shell、Equinorによる探鉱を停止するように命じる判決を下した。政府は、この判決は国際基準を無視しており、探鉱を中止することは同国の石油と天然ガス生産の潜在的成長を阻害することになるとし、これを不服として、控訴するとした。

一方、大西洋を挟んでアルゼンチンの対岸となるナミビア沖Orange堆積盆地では、同じく2022年2月にShellがGraff-1試掘井で石油システムの存在を示す有望な結果を得たことを、TotalEnergiesがVenus-1X試掘井で軽質油と随伴ガスを発見したことを、それぞれ発表した[6]

このOrange堆積盆地での探鉱成功を受け、アルゼンチン沖合での掘削への期待が高まっているが、今後の訴訟の状況次第では今年末の試掘は遅延する可能性があると見られている。

 


[1] 石油
・天然ガス資源情報:アルゼンチン:Vaca Muertaシェール、石油生産回復もガス生産は停滞 
https://oilgas-info.jogmec.go.jp/info_reports/1008924/1009000.html

[2] アルゼンチンは、2004年から既存のパイプラインを利用しボリビアからガスの供給を受け始めた。2008年に最初のFSRU、2011年に2基目のFSRUを設置、LNG輸入を開始した。国内生産増が見込めるとして、2018年にFSRUの1基を手放す等輸入を縮小したが、2021年に入り、景気回復により需要が復活したため、ExcelerateのFSRUを短期リースで確保、Bahia BlancaでのLNG輸入を再開した。2022年も5月18日から8月31日まで、Bahia BlancaにFSRUを設置。

[3] 一般的に使用されている厚さ31mmのパイプではなく、Techintのみが製造している33mmのパイプの入札であったため、Techintが単独で落札した。

[4] BNamericas, 2022/5/31

[5] https://www.eleconomista.com.mx/empresas/Energeticas-invertiran-700-mdd-para-extraer-gas-natural-en-Argentina-20220420-0172.html

[6] 石油・天然ガス資源情報:ナミビア産油国への道 ―アフリカ最大の石油・天然ガス生産国となるか― https://oilgas-info.jogmec.go.jp/info_reports/1009226/1009373.html

 

以上

(この報告は2022年6月27日時点のものです)

アンケートにご協力ください
1.このレポートをどのような目的でご覧になりましたか?
2.このレポートは参考になりましたか?
3.ご意見・ご感想をお書きください。 (200文字程度)
下記にご同意ください
{{ message }}
  • {{ error.name }} {{ error.value }}
ご質問などはこちらから

アンケートの送信

送信しますか?
送信しています。
送信完了しました。
送信できませんでした、入力したデータを確認の上再度お試しください。