ページ番号1009402 更新日 令和4年7月6日
ウルグアイ:鉱区入札でShellおよびApaが沖合3鉱区を落札 ―大西洋を挟んだ対岸、ナミビアでの油田発見により関心高まる―
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概要
ウルグアイ国営石油会社ANCAPが沖合6鉱区と陸上5鉱区を対象に実施した2022年の第1次鉱区入札で、Shellが沖合2鉱区、Apa(旧社名Apache)が沖合1鉱区を落札した。探鉱期間の最初の4年間に、ShellおよびApaは3鉱区へ合計で約2億ドルを投じ、Shellは3D地震探鉱を実施、Apaは試掘井を掘削する計画となっている。
Totalが2016年にウルグアイ沖合で掘削したRaya 1号井がドライであったことから、ウルグアイ沖合での探鉱は停滞していたが、大西洋を挟んで対岸となるナミビア沖Orange堆積盆地で油田が発見されたことをきっかけに、同様の地質を持つと見られているウルグアイ沖合での探鉱・開発への関心が高まっている。
ウルグアイ国営石油会社ANCAP(Administración Nacional de Combustibles, Alcohol y Pórtland)は2022年6月、沖合6鉱区(OFF-2、OFF-3、OFF-4、OFF-5、OFF-6、OFF-7)と陸上5鉱区(ON-1、ON-2、ON-3、ON-4、ON-5)を対象に実施した2022年の第1次鉱区入札(Uruguay Open Round)の結果を発表した。ShellとApa(旧社名Apache)が入札参加資格を取得し、ShellがOFF-2およびOFF-7鉱区、ApaがOFF-6鉱区を落札した。OFF-2鉱区についてのみ、ShellとApaの両社が競合したという。探鉱期間の最初の4年間に、ShellおよびApaはOFF-2、OFF-6およびOFF-7の3鉱区へ合計で約2億ドルを投じ、ShellはOFF-2およびOFF-7鉱区で新たに3D地震探鉱を実施、ApaはOFF-6鉱区において試掘井を掘削する計画となっている。
沖合/陸上 | 鉱区 | 堆積盆地 | 面積(平方キロメートル) | 落札企業 |
---|---|---|---|---|
沖合 | OFF-2 | Pelotas | 11,155 | Shell |
OFF-3 | Pelotas | 13,252 | ― | |
OFF-4 | Pelotas | 10,003 | ― | |
OFF-5 | Pelotas | 16,836 | ― | |
OFF-6 | Pelotas | 16,494 | Apa | |
OFF-7 | Pelotas | 18,227 | Shell | |
陸上 | ON-1 | Chaco-Parana | 5,018 | ― |
ON-2 | Chaco-Parana | 4,420 | ― | |
ON-3 | Chaco-Parana | 6,699 | ― | |
ON-4 | Chaco-Parana | 5,464 | ― | |
ON-5 | Chaco-Parana | 4,215 | ― |
(出所:各種資料を基にJOGMEC作成)

(出所:各種資料を基にJOGMEC作成)
炭化水素資源の豊富なブラジルとアルゼンチンの間に位置しているにもかかわらず、ウルグアイでは、商業規模の油・ガス田の発見がなく、石油やガスは生産されていない。
陸上では、1940年代からANCAPを中心に地震探鉱や試掘が行われてきたが、成果が上がっていなかった。
2012年2月にChaco-Parana堆積盆地のPiedra Sola鉱区およびSalto鉱区について探鉱契約を締結した米国のSchuepbach Energyは、2014年に両鉱区で2D地震探鉱を終了し、2017年にPiedra Sola鉱区でCerro Padilla-P2号井、Salto鉱区でCerro de Chaga-P3号井を掘削した。このうち、Cerro Padilla-P2号井では同国初となる油層を確認した。しかし、資金調達の問題から、さらに掘削を行うことができなくなり、探鉱を中断し、Salto鉱区を返還した。
沖合については、Chevronが1976年にPunta del Este BasinでLobo-1号井(掘削長2,713メートル)とGaviotín-1号井(同3,631メートル)を掘削し、ANCAPが2006~2011年に地震探鉱を行った以外、探鉱は行われていなかった。
しかし、2009年に実施された第1次ライセンスラウンドでPetrobras/YPF/Galpコンソーシアムが対象とされた11鉱区中2鉱区を、2012年に実施された第2次ライセンスラウンドではBP、Total、BG、Tullow Oilが対象鉱区17鉱区中8鉱区を落札、各鉱区で地震探鉱が行われるようになった。第1次ライセンスラウンドで付与された鉱区は2014年と2016年に放棄され、2015年にはBPが3鉱区をウルグアイ政府に返還したが、2015年から2016年にかけては、ExxonMobilやStatoilがTotalやTullow Oilから鉱区権益を取得、ファームインする等、ウルグアイ沖合への石油会社の関心は引き続き高かった。
Totalは2016年に2億ドルを投じMaersk Venturaのドリルシップを用いてArea14の水深3,400メートルの海域でRaya 1号井を掘削した。ウルグアイ沖合で40年ぶりに掘削された坑井であり、また、世界で最も水深の深い海域での掘削であったことから、同井の掘削は注目を集めたが、試掘結果はドライであった。同じく商業規模の石油・ガスが発見されておらず、生産も行われていなかったガイアナでも同じ時期に試掘が行われたが、ガイアナでは油田が発見され、開発が進み、生産が増加しているのとは対照的に、その後、ウルグアイ沖合での探鉱は停滞した。

(出所:各種資料を基にJOGMEC作成、企業名はオペレーター)
政府は2017年9月に、沖合17鉱区を対象に第3次ライセンスラウンドを開始したが、石油会社の関心は低く、入札は成立せずに2018年4月に終了した。
その後、ANCAPは、鉱区入札制度を変更、Uruguay Open Roundを実施することとした。探鉱期間は最長11年とされ、最初の6年(第1フェーズと第2フェーズ)は掘削義務が課されていない。開発期間は30年で、10年の延長が可能である。入札は年に2回、毎年5月と11月の月末に実施される。入札に参加を希望する企業は、入札締め切り日の1ヶ月前までに参加資格を取得し、最初の探鉱期間の作業計画案、ウルグアイ政府との石油利益配分比率、ANCAPの参加比率等を記載した入札書を提出することとされている。商業規模の油・ガス田が発見された場合、ANCAPは最大で権益の20%を取得することができるという。
ANCAPは、2022年5月末に英国のChallenger Energyと、同社が2020年5月のUruguay Open Roundで落札したOFF-1鉱区について探鉱・開発契約を締結した。OFF-1鉱区は、水深20~1,000メートルの海域に広がる鉱区面積が約15,000平方キロメートルの鉱区だ。Challenger Energyは、探鉱期間の最初の4年間に過去に取得された2D地震探鉱のデータ再処理と再解釈を行う。その後、3D地震探鉱を実施する計画であるが、3D地震探鉱の実施時期を早めることも検討しているという。Challenger Energyは、同鉱区には原油換算で10億バレルを超える資源ポテンシャルがあるとしている。
2022年2月には、ウルグアイと大西洋を挟んで対岸となるナミビア沖Orange堆積盆地で、Shellが試掘井Graff-1号井で石油システムの存在を示す有望な結果を得たことを、TotalEnergiesが試掘井Venus-1X号井で軽質油と随伴ガスを発見したことを、それぞれ発表した。これにより、同様の地質を持つと見られているアルゼンチンやウルグアイの沖合での探鉱に期待が高まっており、アルゼンチン側ではYPF、Shell、Equinor等が探鉱を進めようとしている[1]。このナミビア沖での油田発見が契機となり、ShellとApaはウルグアイ沖合の鉱区取得に動いたと見られている。
なお、ANCAPは、今回入札がなかった沖合3鉱区、陸上5鉱区を対象として、11月末に2022年の第2次鉱区入札を実施するとしている。
[1] 石油・天然ガス資源情報:アルゼンチン:Vaca Muertaシェールの石油・ガス生産量急増 ―昨今のウクライナ情勢により開発加速への期待高まる― https://oilgas-info.jogmec.go.jp/info_reports/1009226/1009400.html
以上
(この報告は2022年7月4日時点のものです)