ページ番号1009424 更新日 令和4年8月9日

米国LNG開発に第2波か

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レポートID 1009424
作成日 2022-08-09 00:00:00 +0900
更新日 2022-08-09 11:14:58 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 天然ガス・LNG
著者 高木 路子
著者直接入力
年度 2022
Vol
No
ページ数 11
抽出データ
地域1 北米
国1 米国
地域2
国2
地域3
国3
地域4
国4
地域5
国5
地域6
国6
地域7
国7
地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 北米,米国
2022/08/09 高木 路子
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概要

  • 2016年から2019年に生産移行した米国LNG輸出事業(第1波)は、2022年において、その多くが欧州に向かっている。しかし、長期的には欧州の購買力は不透明である。
  • 2022年に入り、米国での新規LNG事業に対して合計3,000万トン/年を超えるLNG長期契約者が現れている。主なLNG購入相手は、欧州の需要家よりも、アジア(特に中国)需要家、GunvorやVitorといったトレーダー、またExxonMobil、Chevron等の石油メジャーである。
  • 過去数年間、米国LNG事業の新たな計画はほとんど進展しなかったが、ロシア‐ウクライナ問題をきっかけに資金手当てに目途が立ち一気に事業化する可能性があり、米国LNG開発事業の第2波が近づいている。
  • 新規案件の中には、LNGの長期契約の販売価格が従来の米国のガス価格(HH)や原油価格リンクではなく、輸出先価格リンク、つまり需要地のスポット価格ベースの契約が登場している。
  • 米国産LNGは、生産稼働までに様々なハードルはあるとみられるが、転売が自由なLNGの購入は将来にわたりバイヤーにとって魅力があるとみられ、足元、多くの資金が集まっている。

 

1. はじめに

本稿では、2022年前半の欧州エネルギーの脱ロシアの動きをきっかけに、加速する米国産LNG開発計画について取りまとめた。

 

2. 米国産LNGの欧州向け急増

ロシアがウクライナに侵攻して5か月が経過、紛争状態の長期化が見られる。そうした中でも一つ明らかになってきているのが欧州におけるエネルギーの脱ロシア依存ではないだろうか。2021年、EUは、ロシア産の天然ガスに年間およそ155bcmを依存しており、単純にLNGに換算すれば約1億1,400万トン/年規模である。

9,000万トン/年の生産能力を有す米国LNGは、バイデン政権とEUとの外交的の後押しもあり、2022年3月以降、輸出量の約7割が欧州に振り向けられており以前に比べて大幅に増加している(図1)。その一方で、ほかのLNG大国のオーストラリアとカタールからの輸出は、ロシアーウクライナ紛争後も欧州向けの量的変化はみられず、あらかじめ決まった仕向け地に輸出されているとみられる。

では、長期的に欧州におけるLNGの購買力は高いままなのだろうか。そこは不透明である。EUは、一時的に従来化石燃料依存に回帰するようだが、長期的には既定の脱炭素社会に向けエネルギー転換していく方針で、長期的なLNGニーズはさほど高くない。

10年先のLNG需要が根強いのはアジア太平洋市場である。足元、すでに長期のLNG売買契約を締結し量的な確保を済ませているが、2020年代後半になると徐々に既存契約が終了し、新たな調達先の確保に動いている。米国LNG新規案件においても、アジア市場を念頭に多くのバイヤーとの間で長期購入のLNG契約が締結されており、新規の米国LNG開発事業が前進している。

(図1)米国LNG輸出の仕向け地別
(図1)米国LNG輸出の仕向け地別
出所:Kpler社データよりJOGMEC作成

3. 第1波の米国LNG案件

2000年頃、米国では将来的に天然ガスが大幅に不足すると予想されていたため、カタールで建設中であった大規模なLNG事業の主要な輸出先は米国を想定し、メキシコ湾沿岸にいくつかのLNG受け入れ基地が建設された。

しかし実際には、その後のシェール革命によって一転、天然ガスの大増産が進み、建設された受入基地を液化施設に転用され、皮肉にも、2016年からの輸出開始以降、米国産はカタール産とアジア及び欧州の市場で競合している。

米国メキシコ湾からのLNG生産の開始は、2016年のCheniere社のSabine, Pass基地に始まる。2014年から2016年にかけて複数の後続のLNG建設計画が最終投資決定され、2018年から2019年にかけて順次生産を開始、2022年初めにSabine Pass基地の第6トレインの生産が開始され、現在、第1波の米国LNG事業案件がほぼ生産段階に入った(表1、図2、図3)。これらのLNG事業においては、多くの欧州需要家(Centrica、Endesa、Edison、Naturgy等)、日本及び韓国の東アジア需要家(JERA、東京ガス、Kogas等)、および石油メジャー(Shell、TotalEnergies)が長期のLNG購入契約を締結し、LNG引き取りまたは転売を行っている(詳細[1])。

近年は、2019年にQatar Energy/ExxonMobilのGolden Pass液化事業とGlobal VentureによるCalcasieu Pass LNGが最終投資決定に至り、後者はモジュール型の液化施設をオフサイトで製造して現地に設置する手法で工期を大幅に短縮させ、本年2022年初めに生産を開始した。

2022年7月現在、米国では7基地あわせて生産能力約9,000万トン/年を誇り、カタールの生産能力7,700万トン/年を超える規模である。米国でのLNG生産量は2016年以降徐々に増加しており、2021年の9.8bcf/d(7,500万トン/年)の実績であった(図2)。仕向け地別でみると、2016年から2022年4月までのこれまでの全体期間では欧州向けが全体の37%、東アジア・東南アジア向けが同35%、中南米向けが同18%、南アジア向けが同6.6%であり、前出の足元の欧州向け7割は非常に高い水準にあることが分かる。

米国エネルギー省統計局(EIA)の短期見通し[2](2022年7月時)によれば、2022年は10.9bcf/dと予測、2023年はFreeportの操業再開や稼働案件のランプアップ分を踏まえて同12.7bcf/dに増加するとの予測である。

(表1)米国本土LNG輸出基地
基地 生産能力
(万トン/年)
生産開始年 受け入れ併設 拡張計画の有無/
追加能力(万トン/年)
Sabine Pass ルイジアナ州 500×6トレイン 2016  
Cove Point メリーランド州 525 2018  
Corpus Christi テキサス州 500×3トレイン 2019   有 +1,000
Cameron LNG テキサス州 400×3トレイン 2019 有 +675
Elba Island ジョージア州 250 2019  
Freeport[3] テキサス州 500×3トレイン 2019 有 +500
Calcasieu Pass ルイジアナ州 1,000 2022   有 +2,000(CP2)

出所:各種資料に基づきJOGMEC作成

 

(図2)LNG輸出量の推移(基地別)
(図2)LNG輸出量の推移(基地別)
出所:https://www.energy.gov/fecm/listings/lng-reports (2022年4月号LNGレポート)
(図3)LNG基地の位置
(図3)LNG基地の位置
出所:JOGMEC調査部 天然ガス・LNGデータハブ2022

2022年7月現在、建設中の案件は3件あるが、次の生産開始までしばらく時間がある。Qatar Energy/ExxonMobilのGolden Pass LNG基地は、2024年の生産開始を予定。また、2022年5月に第1フェーズ(1,300万トン分)の最終投資決定が行われたVenture Global社のPlaqueminesも、前出のCalcasieu Passと同じ手法で全体工期は短いが2024年の生産開始を予定する。一方、2022年6月に最終投資決定を行ったCheniere社のCorpus Christi拡張(Stage 3)は、3年後の2025年の生産開始を予定。これら3件であわせて3,500万トン/年を超えることから、2025年過ぎには米国全体の生産能力は1億2,000万トン/年を超える見通し。

(表2)LNG建設中の案件
基地 生産能力(万トン/年) 生産開始年予定 受け入れ併設
Golden Pass テキサス州 520×3トレイン 2024
Plaquemines(Ph1) ルイジアナ州 1,300(Ph1)

2024

 
Corpus Christi拡張(Stage 3) テキサス州 +1,000 2025  

出所:各種資料よりJOGMEC作成

 

4. 米国のLNG事業の特徴

米国のLNG事業の特徴は、特定の上流のガス田を供給ソースとして液化施設で生産を行う従来型のLNG事業とは少し異なる。米国のLNG事業の特徴は、世界のLNG需要(高く売れるところがあれば)に応じて米国内の天然ガスを基地で液化し、上流側からの仕向け地制限がなく、出荷される仕組みである。主に、メキシコ湾岸部では内陸部に広がるシェール賦存エリアから天然ガスが供給され、既設あるいは新設されたパイプライン網を通じて沿岸のある液化基地まで送られる。したがって、各基地に液化する能力が備わっていたとしても、長期LNG購入者は経済的に見合う輸出先がなければキャンセル料を支払って引き取りしないことも可能である。

常に米国産のLNGは他のLNGとの競争力が求められ、それゆえに、需給に応じて増減するスイングプロデューサーであるともいえる。

ご承知の通り、現在、国際天然ガスの市場は、米国の国内ガス価格は6ドル~8ドル/百万btuに対して、欧州のスポット価格(TTF)とアジアのスポット価格(JKM)は30ドル~50ドル/百万btu台で非常に高い状況が続いている(詳細[4])。今回のような、欧州地域で緊急にガスが必要な状況ないし価格が高い状態においては米国では機動的に増産され、生産能力の限界まで引き上げられ輸出される。

 

5. 新規事業に買い手が続々

現在、米国のLNG事業は、安価で環境にやさしい天然ガスを世界どこへでも供給できることを売りにして、国内外の多くのバイヤーを引き付けている。

過去数年間、米国メキシコ湾岸での新規のLNG開発事業は数多く提案されていたものの買い手が見つからずにほとんど進展していなかったが、2021年から2022に入って欧州市場やアジア市場でのスポットLNG価格の高騰またガス不足を受けて、中国需要家、トレーダーや欧米メジャーらが関心を示して、長期売買契約が相次ぎ成立している。2022年3月以降、事業者4社(LNG事業5案件)において長期(15年以上)の販売契約だけでも2,600万トン/年を超す(表3)。これら以外にも、2022年に入って、沖合LNG事業Delfin LNGやメキシコ太平洋側のMexico Pacific LNGといった別案件でも顧客が見つかっており、合計すると全体3,000万トン/年以上に達する。

(表3)2022年3月以降の米国LNG事業での長期供給契約の締結
事業者/LNG事業名 販売相手 販売相手業種 引取り規模MMT 販売開始年 契約年数 販売価格指標 引渡し 発表月

Cheniere(Cheniere Marketing)

Corpus Christi Stage3 POSCO 韓 メーカー 0.4 2026 20 HH FOB 5月
Sabine Pass Chevron 米 メジャー 1.0 2026 15 HH FOB 6月
Corpus Christi Stage3 Chevron 米 メジャー 1.0 2027 15 HH FOB 6月
Corpus Christi Stage3 Equinor ノルウェー NOC 0.88 2026 15 HH FOB 6月
Corpus Christi PetroChina 中 NOC 1.8 2026 25 HH FOB 7月
Corpus Christi PTT タイ NOC 1.0 2026 20 HH ex-ship 7月
Energy Transfer
Lake Charles ENN 中 需要家 2.7 早くて2026 20 HH FOB 3月
Lake Charles Gunvor トレーダー 2.0 早くて2026 20 HH FOB 5月
Lake Charles SK 韓 需要家 0.4 早くて2026 18 HH FOB 5月
Lake Charles China Gas 中 需要家 0.7 早くて2026 25 HH FOB 6月
NextDecade
Rio Grande LNG ENN 中 需要家 1.5 早くて2026 20 HH FOB

4月

Rio Grande LNG ENGIE 仏 需要家 1.75 早くて2026 15 HH FOB 5月
Rio Grande LNG Guangdong Energy Group 中 需要家 1.0 (+0.5opt) 早くて2026 20 HH ex-ship 7月
Rio Grande LNG(第2T) China Gas 中 需要家 1.0 早くて2027 20 HH FOB 7月
Venture Global
Plaquemines Shell 英 メジャー 2.0   20     3月
Plaquemines New Fortress Energy 米 事業者 1.0   20     3月
Plaquemines ExxonMobil 米 メジャー 1.0   20     5月
Plaquemines Petronas マレーシア NOC 1.0   20     5月
Plaquemines Chevron 米 メジャー 1.0   20     6月

(注)上記のShellの契約分は、第1フェーズの最終投資決定(1,300万トン分)済みからの供給。その他New Fortress Energy, ExxonMobil, Petronas, Chevronの契約分は最終投資決定前の第2フェーズ。

CP 2 LNG New Fortress Energy 米 LNG事業者 1.0   20     3月
CP 2 LNG ExxonMobil 米 メジャー 1.0   20     5月
CP 2 LNG Chevron 米 メジャー 1.0   20     6月

CP 2 LNG / Plaquemines

EnBW ドイツ需要家 1.5   20     6月

米国ガス価格HH=Henry Hub価格、FOB=Free on Board

出所:各社発表資料等よりJOGMEC作成

 

6. 動き出すLNG開発事業

このような2022年以降の販売契約締結のラッシュを追い風に、新たにLNG投資決定がいくつか予想される(表4)。既存LNG生産事業(表1)の中でも建設中のCorpus Christi(Stage3)拡張事業以外に、日本企業が参画しているFreeport LNGやCameron LNGについて追加のプラント建設の早期開発移行を目指している。

新規案件としては、NextDecadeのRio Grande LNGは2019年にShellと200万トン/年の20年間の長期契約(Brent価格とHH価格のMix)を締結したほか、2022年に入って中国需要者3件、フランス需要者1件との契約締結を発表しており、あわせて725万トン/年の長期販売先が見つかった。2022年後半の最大3トレインの最終投資決定を目指す。

(表4)近く開発移行される可能性のある新規案件
基地 生産能力(万トン/年) 受け入れ併設 拡張計画の有無
Rio Grande LNG(Ph1) テキサス州 540×2トレイン  
Lake Charles ルイジアナ州 550×3トレイン(2トレインに縮小計画)  
Plaquemines(Ph2) ルイジアナ州 700    
Driftwood LNG(Ph1) ルイジアナ州 1,100  

出所:各種資料よりJOGMEC作成

 

また、Energy Transferが計画するLake Charles LNGは、Shellが2020年にポートフォリオの見直しで撤退して以降、共同事業者のEnergy Transferが事業を引き継ぎ、2トレイン(1,100万トン/年)にサイズダウンの再設計が行われた。2022年に入って、中国と韓国の需要家らとの長期販売契約の締結が連続して発表され、あわせて契約数量580万トン/年に達している。

Venture GlobalのPlaqueminesは生産能力2,000万トン/年の計画に対して、既に建設段階に入った第1フェーズ(1,300万トン分)以外に、ExxonMobil、Chevron、PetronasといったLNGメジャーとの間で長期契約でのLNG販売を済ませ、次フェーズの最終投資決定が行われる可能性がある。なお、Venture GlobalのLNG販売に関しては個別発表では販売の基準価格や引き渡し方式に関する情報が公表されていないものの、各種情報によれば他と同様のHH価格リンクとみられる。

 

7. 新たな販売価格モデルの提示

また、Charif Souki創業者兼CEOのTellurianが推進するDriftwood LNG(第1、第2フェーズ合わせて2,760万トン/年)も進展し、2022年4月に先行して建設開始を宣言した。

Charif Souki氏は、最初の液化基地であるSabine Pass LNGを推進したCheniereの創業者であり、原油価格連動の伝統的なLNG市場に、米国天然ガス価格連動かつ転売自由なLNGをもたらした人物でもある。

今回のTellurianのDriftwood LNGにおいては、上流から販売までを一手に行うIntegrated business modelを提案している(表5)。このIntegrated business modelは、自ら実現させた米国産のHenry Hub(HH)価格プラスサービスフィー(cost-of-service model)の販売方法ではなく、需要地着の価格を指標に販売するものである。Tellurian側からみれば、このモデルはみずからが天然ガスの上流開発からLNG生産までを行い、それを消費地のスポット価格(輸送費差し引く)で販売するフォーミュラーで、ネットバックでのマージンを得る仕組みである。現在のような、販売市場の価格が高い状況では利益が得やすい。すでにTellurian社は、2021年にトレーダーのVitol、Gunvor、また欧州メジャーのShellの3社とそれぞれ、この価格モデルに基づき欧州TTF価格と東アジアJKM価格連動の販売価格で10年間の販売契約を締結している。買い手側にとってみると、現状はこのモデルによる利幅が薄いものの、いくつかの点で利点が考えられる。たとえば、LNG購入者は、需要地のガス需給を反映した価格で長期購入できる上に、これまでの原油価格や米国ガス価格を指標したLNGでもない、需要地スポット価格指標という新たな指標を採用できる点、また売り手が米国の価格変動のリスクを引き受けてくれるといった点である。

Tellurianは、Integrated business modelとして上流ではHaynesville Shallのガス田生産権益を取得し増産する計画で、すでに第1フェーズ分のLNG長期販売は終了したと発表している。同社の発表によれば、2022年4月、LNG基地建設を先行開始したという。

(表5)Tellurian社のIntegrated business mode


8. 様々なリスクと集まる資金

米国では、次の新規稼働は2024年のGolden Passまで待たなければならない。また現在最終投資決定が近い案件では生産開始は2026年以降である。その時天然ガス市場およびLNG市場がどうなっているかは不明である。過去10年間、米国内の天然ガス価格は1百万Btu当たり2ドル~3ドル台の低水準であったが、現在、上昇しており同6ドル~8ドル台で推移している。また、国内のガス価格がこのまま高いのか、さらに高くなるのか、以前のように低調に戻るのか不透明である。

国内の天然ガス価格が高くなれば、国内生産量の1割程度であれ、国外に輸出することに対して天然ガスを多く消費する業界や政治家から反発や批判もさらに増すことが予想される。

また、エネルギーのみならず、資機材コストの上昇も生じている。物価高やエネルギー高とともにシェール開発投資が増加するも労働力不足やコストアップでボトルネックも見受けられる。LNG開発事業においても資機材等のインフレ圧力の影響を受けやすく開発が集中すればなおさらである。それに伴って基準価格に上乗せされる液化コスト(施設利用料)が上昇しているとの情報もある。

また、バイデン政権はガス開発等の化石燃料ではなく、環境重視の脱炭素エネルギーや再生エネルギーへの開発投資を促進させて大気に排出されるGHG排出量の削減・低減の政策を掲げている。そうした政府や行政機関との折り合いも必要となる。

他方で、多くの買い手の登場で米国産LNGの魅力は依然大きいことも明らかになった。単に、欧州やアジアで価格が高騰している中で安価なガスを供給できるという面だけでなく、前述したように、その自由転売できるという販売先の柔軟さは最大の魅力とみられる。欧州やアジアの需要家だけでなく、トレーダーや石油メジャー事業者が、2026年以降の先15年から20年間の長期のLNG購入を約束し、米国LNG開発に資金を投じる。

米国の上流ガス生産者にとっても同様である。米国のガス価格で生産したガスを販売するよりも、現在であれば、欧州のガス価格(TTF)あるいはアジアのスポット価格(JKM)で売るほうが利益は大きい。上流専業のApacheは、2019年2月に、Cheniereとの間でLNG向けのガス供給契約においてアジアスポット価格のJKMにリンクした価格で供給することで合意、同じく上流専業のEOG Resourcesも、2022年2月に、生産した天然ガスをLNG基地に供給する代わりにJKM価格連動で代金を受け取ることに合意したと発表した。同7月には、ガス生産・販売を行う上中流事業者(ConocoPhillips)がLNG事業(計画中のPort Arthur LNG事業)に参画しようとする動きもみられる。

カタールLNGの拡張事業の進展と並行して、今後5年後以降のLNG市場を見据えて多くの事業者が米国LNGに再び注目している。第1波では、自由度の高い米国LNGが国際市場に流入しゲームチェンジャーとなった。第2波が来ればさらに多くの米国産LNGが流入可能になるが、これが次のゲームチェンジャーになるのだろうか。

 

9. まとめ

第1波(2013年~2016年に開発移行)のLNG開発案件が生産段階に移行している。現在、生産される米国産LNGの多くが緊急的に欧州に向かうが、長期的には欧州需要家のLNG購買力はそれほど高くない。2022年に入って米国の新規LNG事業に対して契約総量3,000万トン/年以上の買い手が見つかったが、それらは、欧州需要家というより、アジア(特に中国)需要家、またGunvorやVitorといったトレーダーやExxonMobil、Chevron等の石油メジャーである。資金手当ての目途が立ったことでしばらく進展が見られなかった米国LNG開発事業は大きく前進していく可能性が高い。ロシア‐ウクライナ問題の長期化と欧州のエネルギー危機を端緒に、米国LNG開発の第2波が近づいている。

また、新規案件の中には、LNGの販売価格が米国のガス価格(HH)でも原油価格リンクでもない、輸出先のガスのスポット価格リンクのLNG事業も登場した。すでに初期計画分は売約済みである。今後のLNG市場の流動性を見越しLNG事業者とバイヤーとの思惑が一致したのだろう。米国産LNGは、生産稼働までに様々なハードルは想定されるものの、自由転売できるLNGは将来にわたりバイヤーにとって魅力的とみられ、資金が集まっている。

 


[1] 天然ガス・LNGデータハブ2022 https://oilgas-info.jogmec.go.jp/nglng/datahub/dh2022/1009162.html を参照。Ⅲ. LNG, 2. 世界のLNGプロジェクト・契約 のエクセルシートの米国欄を参照。

[2] 米国エネルギー省統計局Short-Term Energy Outlook 2022年7月 https://www.eia.gov/outlooks/steo/(外部リンク)新しいウィンドウで開きます

[3] 2022年6月8日発生のパイプライン爆発及び火災事故により、現在生産停止中。

 

以上

(この報告は2022年7月31日時点のものです)

 

参考文献

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