ページ番号1009432 更新日 令和4年8月4日

原油市場他:OPEC及び一部非OPEC(OPECプラス)産油国が2022年9月の原油生産目標を前月比で日量10万バレル拡大する旨決定(速報)

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レポートID 1009432
作成日 2022-08-04 00:00:00 +0900
更新日 2022-08-04 10:46:13 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 市場
著者 野神 隆之
著者直接入力
年度 2022
Vol
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ページ数 14
抽出データ
地域1 グローバル
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国・地域 グローバル
2022/08/04 野神 隆之
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概要

  1. OPEC及び一部非OPEC(OPECプラス)産油国は2022年8月3日に閣僚級会合を開催し、2022年9月の原油生産目標を前月比で日量10万バレル拡大する旨決定した。
  2. 次回OPECプラス産油国閣僚級会合は9月5日に開催される予定である。
  3. 6月30日に開催された前回のOPECプラス産油国閣僚級会合後、米国のバイデン大統領が、7月に予定している中東諸国訪問の際原油生産拡大を要請する旨表明したことにより、OPECプラス産油国による原油生産拡大と石油需給緩和期待が市場で醸成された。
  4. また、中国の上海市を含む一部都市で、新型コロナウイルス感染が拡大する兆候が見られたこと、米国の物価上昇が加速する結果同国金融当局関係者が金融引き締め政策を強化するとの見方が市場で発生したこと、欧米諸国経済が減速している旨示唆する経済指標類が発表されたこと等、この先石油需要の伸びが鈍化するとの懸念が市場で増大した。
  5. このため、前回の閣僚級会合開催直前の6月29日に1バレル当たり109.78ドルであった原油価格(WTI)は今次閣僚級会合開催直前の8月2日には94.42ドルとなるなど下落傾向となった。
  6. 他方、足元ロシアからの石油供給も大幅に減少しているようには見受けられなかった。
  7. さらに、米国では夏場のドライブシーズンに伴うガソリン需要期に突入していたにもかかわらず、7月22日までの4週間平均の同国ガソリン需要が前年同期比で7.1%減少するなど、必ずしも石油需要が旺盛であるわけではなかったうえ、今後9月初頭以降の秋場の石油不需要期に向け製油所の原油購入意欲が低下するとともに、この面で原油相場にさらなる下方圧力が加わりうることが想定された。
  8. このように、この先の石油需給の緩和感が感じられうる様な状況下において、原油供給を大幅に拡大すれば、石油需給緩和感が市場で増大する他、OPECプラス産油国が石油需給緩和に対し寛容な姿勢を見せ始めたと市場関係者が受け取ることにより、原油相場に一層の下方圧力が加わる恐れがあった。
  9. これにより、OPECプラス産油国の重要な構成国であるロシアの石油収入が減少する可能性が高まるとともに、OPECプラス産油国間の結束に問題が生じることを懸念された。
  10. 以上のような要因により、OPECプラス産油国は原油生産政策につき慎重に対処した結果、今回の閣僚級会合では、9月の原油生産目標を前月から小幅の拡大にとどめる旨決定したものと考えられる。
  11. バイデン大統領を初めとする米国政権関係者による、サウジアラビアを初めとするOPECプラス産油国への増産働きかけにもかかわらず、今回の閣僚級会合で決定した増産規模が限定的であったことにより、かえって石油需給引き締まり感が市場で醸成された結果、閣僚級会合終了直後である8月3日朝(米国東部時間)の原油価格は一時前日終値比で1バレル当たり2.15ドル上昇の同96.57ドルに到達する場面が見られた。

(OPEC、IEA、EIA他)

 

1. 協議内容等

 (1)  2022年8月3日にOPEC及び一部非OPEC(OPECプラス)産油国は閣僚級会合を開催した。

 (2)  同会合では、石油市場が絶えずかつ急速に変化することから、その状況を継続的に評価する必要があることに留意した。

 (3)  また、会合では、大幅な供給途絶に対応するための大規模な緩衝として利用する必要がある余剰生産能力が限られていること、石油部門での慢性的な投資不足により石油産業各部門(石油探鉱・開発・生産、輸送、及び精製・販売)における余剰能力が低減していることにも注目した。

 (4)  さらに、会合では、石油探鉱・開発・生産部門での投資不足が、2023年以降の需要増加を満たすための、一部OPECプラス産油国及び非OPECプラス産油国における、時機を得た適切な石油供給に影響を与えるであろうことを特に懸念する旨強調した。

 (5)  会合では、OECD諸国の商業石油在庫が2022年6月時点で27.12億バレルとなり、前年同月を1.63億バレル、2015~19年平均を2.36億バレル、それぞれ下回る他、緊急時石油備蓄が30年超ぶりの低水準に到達していることに留意した。

 (6)  また、会合では、一部OPECプラス産油国の自主的な貢献により、2020年5月以降OPECプラス産油国の減産遵守率が平均で130%となったことに注目した。

 (7)  そして、OPECプラス産油国結束のために不可欠な意思統一の維持の価値と重要性を重視するとともに、最近の石油市場の状況に照らし合わせ、2022年9月の原油生産目標を前月比で日量10万バレル拡大する旨決定した(表1及び参考1(巻末)参照)。

 (8)  さらに、生産目標の完全遵守に固執すること、及び(これまで生産目標を達成できていない産油国が生産目標を完全に達成するための)追加生産調整を実施することが極めて重要であることを当会合で再確認し、(これまで生産目標を達成できていない産油国は生産目標を完全に達成するための)追加生産調整計画を速やかに提出するよう、会合で要請された。

 (9)  次回のOPECプラス産油国閣僚級会合は9月5日に開催される予定である。

(10)  なお、今回の閣僚級会合では、10月以降の原油生産方針については、協議されなかったとされる。

(11) ロシアのノバク副首相は、新型コロナウイウル感染状況や西側諸国等による対ロシア制裁等の不透明感が足元の石油市場に存在するため、今回の閣僚級会合においては慎重な決定を行った旨8月3日に明らかにしている。

(12) 他方、今回の閣僚級会合終了後、米国国務省のホクスタイン(Hochstein)上級顧問(エネルギー安全保障担当)は、閣僚級会合での決定は、正しい方向への一歩であるとの認識を明らかにしたものの、米国での燃料価格にはそれほどの影響は与えないであろう旨示唆した他、引き続き(燃料)価格低下に向け努力する意向である旨明らかにした。

表1 OPECプラス産油国の減産幅


2. 今回の会合の結果に至る経緯及び背景等

 (1)  6月2日に開催された、前々回のOPECプラス産油国閣僚級会合以降、石油市場では、中国上海市等で新型コロナウイルス感染が拡大する兆候が見られたことに加え、6月14~15日に開催された米国連邦公開市場委員会(FOMC)において政策金利の0.75%の引き上げ(1994年11月15日開催のFOMC以来の大幅な引き上げ)が決定されたうえ、その後もしばしば米国連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が物価上昇沈静化に向けた方策実施に対する確固たる姿勢を示唆したため、政策金利引き上げ等による世界経済成長減速に伴う石油需要の伸びの鈍化懸念が市場で増大したことが、原油相場に下方圧力を加えた。

 (2)  このようなことから、前回のOPECプラス産油国閣僚級会合直前の6月29日の原油価格(WTI)は1バレル当たり109.78ドルと前々回のOPECプラス産油国閣僚級会合直前である6月2日の同116.87ドルから下落した(図1参照)。

図1 原油価格の推移(2021~22年)

 (3) また、原油及び石油製品を含む物価上昇を通じ、世界経済成長が減速することもあり、2023年の世界石油需要の伸びが日量200万バレル以下へと鈍化する(因みに2022年は日量336万バレルの増加と予想されていた)旨OPECが認識していると6月14日に報じられた。

 (4) さらに、2022年についても、従来の日量140万バレルの石油供給過剰予想を日量100万バレルへと縮小したものの、依然として、世界石油需給バランスはそれなりに供給過剰となる可能性がある旨6月28日に開催されたOPECプラス産油国合同専門委員会(JTC: Joint Technical Committee)向けの資料で示唆されたと6月27日に報じられた。

 (5) 加えて、2022年1月には日量1,007万バレルであったロシアの原油生産量(コンデンセートを除く)が2022年4月に日量915万バレルへと落ち込んだものの、5月には同930万バレルへと若干ではあるが増加、さらに、6月30日には、ロシアのノバク副首相が、6月のロシアの原油生産が日量990万バレルに到達した他、2022年夏場には同国はOPECプラス産油国で定められる目標に沿った生産水準へ回復できるものと確信している旨明らかにした。

 (6) このようなことから、この先ロシアの原油生産及び輸出等が減少を継続することにより、世界石油需給が引き締まる方向に向かうという見通しが足元成り立ちにくい旨示唆された。

 (7) このようなこともあり、7月に米国のバイデン大統領がサウジアラビア等中東諸国を訪問することを控え、6月30日に開催された前回の閣僚級会合において、サウジアラビアを含むOPECプラス産油国は、7月同様8月についても前月比で日量64.8万バレルと従来想定された規模(日量43.2万バレル)の1.5倍の減産措置縮小を図ることにより、夏場のドライブシーズンに伴うガソリン需要期への突入とともにガソリン小売価格高騰等に苦慮する米国に配慮する一方、石油需給引き締まりに対する将来展望が必ずしも描き切れない石油市場関係者の石油需給緩和に対する心理面での影響を最小限にとどめるべく、OPECプラス産油国は減産措置縮小ペースのさらなる加速を見送ることにより、石油収入確保の面から原油価格の下落を必ずしも好ましいものとは考えていないと見られるOPECプラス産油国主要構成国のロシアの意向を考慮する格好となったものと考えられる。

 (8) 前回のOPECプラス産油国閣僚級会合開催後の同日、米国のバイデン大統領が、7月の中東諸国訪問の際中東湾岸産油国に対し原油生産拡大を要請する旨表明したことにより、これら産油国による原油生産拡大と世界石油需給緩和期待が市場で醸成された。

 (9) また、7月19日時点の中国の新型コロナウイルス感染者数が935人と5月21日(この時は824人)以来の高水準となった他、7月20日時点の感染者数も826人と概ね高水準を維持している旨7月21日に中国当局が明らかにするとともに、同国深圳市の一部地域で新型コロナウイルス感染抑制のための都市封鎖措置が実施された旨7月21日に報じられるなど、同国での新型コロナウイルス感染拡大が示唆されたことにより、同国経済成長減速と石油需要の伸びの鈍化懸念が市場で増大した。

(10) 加えて、米国の物価上昇が加速する結果同国金融当局関係者による金融引き締め政策が強化されるとの見方が市場で発生したこと、欧米諸国経済が減速していることを示唆する経済指標類が発表されたこと等により、これら諸国等の経済が減速するとともに石油需要の伸びが鈍化するとの懸念が市場で増大した。

(11) 以上のような要因等が原油相場に下方圧力を加えたことにより、原油価格は前回のOPECプラス産油国閣僚級会合開催直前である6月29日の1バレル当たり109.78ドルから今回の閣僚級会合開催直前である8月2日には同94.42ドルへと下落傾向となった。

(12) また、6月13日には1ガロン当たり5.107ドルと、1993年4月以降の米国エネルギー省エネルギー情報局(EIA)による週間統計史上最高水準に到達した全米平均ガソリン小売価格は8月1日時点では同4.304ドルとなるなど、下落傾向となった(図2参照)こともあり、7月29日に米国ミシガン大学が発表した7月の消費者信頼感指数の中で1年先の期待インフレ率(確定値)が5.2%と6月の同5.3%から若干ながら低下するなど、同国のインフレ懸念が頭打ちとなる兆候が見られるようになったことにより、ガソリン価格、そしてその原料となる原油価格の抑制に対する米国バイデン政権への圧力は相対的に低減する格好となった。

図2 米国ガソリン平均小売価格(2019~22年)

(13) また、米国では夏場のドライブシーズンに伴うガソリン需要期に突入していたにもかかわらず、7月22日までの4週間平均の同国ガソリン需要は前年同期比で7.1%の減少となるなど、石油需要が必ずしも旺盛でない旨示されたうえ、9月3~5日の労働祭(レイバー・デー)の休日(9月5日)に伴う連休を以て米国の夏場のドライブシーズンに伴うガソリン需要期が終了した後の秋場の石油不需要期に向け、製油所の稼働が低下することにより原油購入意欲が低下するとともに、この面で原油相場にさらなる下方圧力が加わりうることが予想された。

(14) 他方、7月のロシアの原油生産量(コンデンセートを含む)は6月比で2%程度増加の日量146.8万トン(推定日量1,082万バレル)である旨8月1日に報じられたが、同水準は、ロシアのウクライナへの事実上の侵攻開始直後の2022年3月時点の7月のロシアの原油生産量(同)見込み(国際エネルギー機関(IEA)による)である同828万バレルを同254万バレル程度上回るなど、足元ロシアの石油供給が当初見込みほど減少してないことが示された(図3参照)。

図3 ロシア産原油生産量(2022年)

(15) このように、この先少なくとも短期的には石油需給の緩和感が醸成されうるような不透明な状況下において、原油供給を拡大すれば、世界石油需給緩和感が市場で醸成される他、OPECプラス産油国が石油需給緩和に対し寛容な姿勢を見せ始めたと市場関係者が受け取ることにより、原油相場に一層下方圧力が加わる結果、OPECプラス産油国の原油収入に負の影響が及ぶ恐れがあった。

(16) このようなこともあり、7月中旬に米国のバイデン大統領の中東諸国訪問時においても、OPECプラス産油国の主要構成国であるサウジアラビア政権幹部は増産加速に対ししばしば慎重な姿勢を示唆した。

(17) 米国のバイデン大統領は7月15日にサウジアラビアのサルマン国王及びムハンマド皇太子と会談、両者は安定した世界エネルギー市場に対する確約を再確認し、今後定期的に世界エネルギー市場につき協議する旨合意したと7月16日に伝えられた他、石油供給拡大が喫緊の課題である旨サウジアラビアも理解しており、サウジアラビアからの石油供給が一層拡大することを期待している旨7月15日にバイデン大統領は明らかにした。

(18) また、7月16日に米国と湾岸協力会議(GCC)加盟国との間で開催された拡大首脳会議は閉会に際し、エネルギー供給安全保障の確保を確約することを確認した旨の声明を発表した。

(19) しかしながら、7月16日にサウジアラビアのファイサル外相は、当該首脳会議では米国側から増産要請は行われなかった明らかにした(一方、米国を含む消費国とサウジアラビアとの間での(エネルギー問題に関する)協議は常時行われている旨付言した)他、同外相は、消費国を含む世界中の関係者からの意見は聞き置くものの、最終的にはOPECプラス産油国としては、市場の状況に従い、必要に応じてエネルギーを供給する方針である旨表明したと7月16日に伝えられる。

(20) 他方、ロシアのプーチン大統領はサウジアラビアのムハンマド皇太子との間で電話会談を実施、その中で両者はOPECプラスの枠内でのさらなる協力が肝要であることで意見が一致した旨7月21日に報じられた。

(21) また、7月29日には、ロシアのノバク副首相がサウジアラビアのリヤドを訪問し、アブドルアジズ エネルギー相と会談、両国の協力の機会につき協議した他、OPECプラス産油国の合意と安定的な石油市場を約束することで合意した旨同日伝えられる。

(22) 米国の要請に応じてサウジアラビア等が原油生産をさらに拡大すれば、西側諸国等による制裁発動対象であり、かつOPECプラス産油国の重要な構成国であるロシアの原油等の収入が原油価格下落により減少する可能性が高まる結果、OPECプラス産油国間での結束に影響が生じる恐れがあることが懸念された。

(23) そして、原油及びガソリン小売価格のさらなる高騰による物価上昇の展望が開けにくくなっていたこともあり、OPECプラス産油国による原油生産拡大に対する米国のバイデン大統領の要請に対しては、サウジアラビア等は、再び米国のエネルギー価格と物価が上昇する兆候が見られるまで、慎重に対処しようとした一方、この先発生する恐れもある石油需給緩和観測の増大による原油価格の下落を抑制することにより、ロシアに配慮した結果、今回の閣僚級会合においては、9月の原油生産目標を前月比での小幅に引き上げる旨決定したものと考えられる。

(24) 8月1日にOPEC事務局長に就任したアルガイス(al-Ghais)氏は、就任直前の7月31日に、OPECプラス産油による原油生産調整措置において、ロシアの参加は不可欠である旨発言するなど、ロシアとの関係維持を重視することを示唆していたが、今回の閣僚級会合において示された増産規模に関するOPECプラス産油国による慎重な姿勢は、そのようなロシアとの関係重視を反映する格好となった。

 

3. 原油価格の動き等

 (1) 今般米国のバイデン大統領が自ら中東を訪問、7月15日にサウジアラビア指導者と会談し、さらに、7月16日に米国とGCC加盟国との間で開催された拡大首脳会議に出席したにもかかわらず、今回の閣僚級会合においては9月の原油生産目標拡大を前月比日量10万バレルと限定的な規模で決定したことにより、石油市場関係者は米国によるサウジアラビア等主要OPECプラス産油国に対する働きかけが十分功を奏する形にならなかったと受け取るとともに、この先もOPECプラス産油国は原油価格の下落(及び各産油国の原油収入減少)を抑制すべく、慎重な原油生産政策を遂行していくであろうとの観測が増大したことから、閣僚級会合終了直後である8月3日朝(米国東部時間)の原油価格は一時前日終値比で1バレル当たり2.15ドル上昇の同96.57ドルに到達する場面が見られた。

 (2) しかしながら、その後発表されたEIAによる米国石油統計(7月29日の週分)で原油在庫が前週比で447万バレル、ガソリンが同16万バレルの、それぞれ増加と市場の事前予想(原油在庫同60万バレル、ガソリン在庫同160万バレルの、それぞれ減少)に反して増加していた旨判明した(原油在庫の増加は、米国原油輸入の増加、原油輸出の減少、及び製油所の原油精製処理量の減少が背景にある他、ガソリン在庫の増加は需要減少が一因となっている)。

 (3) また、米国及びイラン両政府高官がイラン核合意正常化に向けた協議再開(6月28~29日にカタールのドーハで開催された間接協議以降当該協議は中断状態となっていた)のためオーストリアのウイーンに向かう旨明らかにしたと8月3日に伝えられた。

 (4) 加えて、8月3日に米国供給管理協会(ISM)から発表された7月の同国非製造業景況感指数(50が当該部門好不況の分岐点)が56.7と6月の55.3から上昇、4月(この時は57.1)以来の高水準に到達したうえ、市場の事前予想(53.5)を上回ったことや、米国セントルイス連邦準備銀行のブラード総裁が大幅な政策金利引き上げを前倒しして実施することを支持する旨示唆したと8月3日に報じられたこともあり、米ドルが上昇した。

 (5) 以上のような要因等が、原油相場に下方圧力を加えた結果、この日の終値は1バレル当たり90.66ドルと前日終値比で3.76ドル下落した他、この日の終値は2022年2月10日(この時は同89.88ドル)以来の低水準なものとなった。

 (6)  米国では、9月3~5日の労働祭(レイバー・デー)の休日に伴う連休を以て夏場のドライブシーズンに伴うガソリン需要期は終了することにより、それ以降の秋場の石油不需要期(冬場の暖房シーズンに伴う暖房用石油製品需要期は11月1日からである)とメンテナンス作業の実施を視野に入れつつ、製油所は稼働を低下、原油精製処理量を減少させるとともに、原油購入を不活発にしてくることから、季節的な石油需給の緩和感が市場で醸成されやすくなる。

 (7)  加えて、7月28日に米国商務省から発表された2022年4~6月期同国国内総生産(GDP)増加率(速報値)が前期比年率0.9%の減少と2四半期連続で減少を示すなど、物価上昇抑制のための政策金利引き上げ等を通じ、同国経済が減速するとともに石油需要の伸びが鈍化する兆候が見られる。

 (8)  さらに、中国でも新型コロナウイルス感染が収束する明確な兆候が必ずしも見られるわけでもなく、従って今後も都市封鎖を含む当該感染の徹底した抑制策の実施により同国経済が減速するとともに石油需要の伸びが鈍化する可能性があるとの懸念が払拭し切れていない。

 (9)  他方、米国に加え欧州連合(EU)加盟国は、2023年2月5日を以てロシアから供給される石油の購入を原則禁止(原油は2022年12月5日を以て原則禁止)する旨の制裁を6月3日に発動したものの、石油購入禁止までにはなおそれなりの期間を要することに加え、世界のエネルギー安全保障面への負の影響を回避するため、ロシア国営企業からのロシア産石油の第三国への輸送を巡る取引への、EU加盟国を拠点とする企業の関与に対し、それを禁止する制裁を免除する旨7月21日にEUが発表するなどしており、ロシアからの石油供給が短期的に急激に減少するとは考えにくい状態となっている。

(10)  このように、少なくとも短期的には世界石油需給が急速に引き締まるとの観測が市場では発生しにくい中、季節的に石油需給の引き締まり感が後退するとともに、そのような要因により原油相場に下方圧力が加わりやすくなることもあり、米国の働きかけにもかかわらず、OPECプラス産油国としては、石油需給が一層緩和することにより原油価格が下落することを通じ産油各国の原油収入が減少することに繋がりうるような、原油生産の拡大加速に対するインセンティブが働きにくいことに加え、西側諸国等から制裁を受けるロシアとの関係に配慮するものと見られることから、9月5日に開催される予定である次回OPECプラス産油国閣僚級会合でも、慎重に原油生産方針を決定するものと考えられる。

(11)  他方、大西洋圏ではハリケーン等の暴風雨シーズンに突入しており(暴風雨シーズンは例年6月1日~11月30日である)、特に8月後半以降10月前半迄は1年で最もハリケーン等の暴風雨が発生しやすい時期となる。

(12)  ハリケーン等の暴風雨は、進路やその勢力によっては、米国メキシコ湾沖合の石油等生産関連施設に影響を与えたり、湾岸地域の石油受入及び積出港湾関連施設や製油所の活動に支障を発生させたり(実際に製油所が冠水し操業が停止することもあるが、そうでなくても周辺の送電網が暴風で切断されることにより、製油所への電力供給が遮断されることを通じ操業が停止するといった事態が想定される)、さらには、メキシコの沖合油田や原油輸出港の操業を停止させたりすること等により米国のメキシコからの原油輸入に影響を与えたりする(2021年には米国メキシコ湾岸地域はメキシコから日量52万バレル程度の原油を輸入した)。

(13)  5月24日に発表された米国海洋大気庁(NOAA)及び7月7日時点のコロラド州立大学の見通しによると、2022年の大西洋圏でのハリケーンシーズンは平年よりも活発な暴風雨の発生が予想されている。

(14)  最近では米国の原油生産に占める陸上の割合が上昇してきているものの、それでも米国メキシコ湾沖合でもそれなりの量の原油が生産されている(2021年は当該地域で日量170万バレルの原油を生産しており、同年の米国の原油生産量全体の約15%を占めた)他、米国メキシコ湾岸は引き続き同国の精製活動の中心地域である(2021年の当該地域の原油精製処理能力は日量817万バレルと米国原油精製処理能力全体の約47%を占めた)こともあり、今後のハリケーン等の実際の発生状況やその進路、そしてその予報等によっては石油市場関係者間で石油供給に対する懸念が強まるとともに、その影響が原油価格に織り込まれる場面が見られることもありうる。

(15)  他方、6月8日午前11時40分(現地時間)には、米国テキサス州にあるフリーポートLNG出荷基地(操業者:フリーポートLNG社、出荷能力年間1,500万トン)で火災が発生した(安全バルブに問題があり、圧力過多となったことにより破損したパイプからLNG及びメタンが漏洩し爆発炎上したものと米国運輸省パイプライン有害物質安全局(PHMSA: Pipeline and Hazardous Materials Safety Administration)は暫定的に報告したと6月30日に伝えられる)が、当初少なくとも3週間程度当該施設の操業が停止する旨6月8日にフリーポートLNG社が発表したものの、その後当該施設は2022年末までに全面的な操業再開を目指す旨6月14日に同社が発表するなどしており、これにより、欧州方面他への米国産LNG供給が長期的に減少するとの懸念が市場で増大した。

(16)  また、ノルド・ストリーム1パイプライン(天然ガス輸送能力日量53億立方フィート)が年次メンテナンス作業(7月11~21日)を完了し、当該メンテナンス作業実施前の輸送水準である推定日量21億立方フィート相当の天然ガス輸送量に回復した(このため、当該パイプラインの稼働率は約40%となった)旨7月21日に確認されたものの、カナダでメンテナンス作業中であった(また、カナダの対ロシア制裁(ロシアの石油・天然ガス産業への支援の禁止)に抵触するとしてロシアへの返送が事実上困難となっていた)当該パイプラインのガス圧送用タービン1基につき、カナダ連邦政府が一時的に対ロシア制裁適用を停止することにより、ドイツに返送される旨7月10日に同国連邦政府が発表、7月17日には当該タービンはカナダからドイツに向け空輸された。

(17)  しかしながら、7月27日にガスプロムは当該タービンが本来稼働すべき場所であるロシアのポルトバヤ(Portovaya)の天然ガス圧送基地には到着していない旨主張した反面、タービンのメンテナンス作業主体であるドイツのシーメンス社は、ガスプロム側からの税関関連書類が未着であることが、タービンを返送できない理由であると7月27日に説明した(当該タービンは8月3日時点においてもポルトバヤの天然ガス圧送基地には到着していない)。

(18)  他方、天然ガス圧送基地に未到着となっているタービンとは別に、ノルド・ストリーム1パイプラインのガス圧送用タービン1基の修理を実施することにより、7月27日より天然ガス輸送量を日量3,300万立方メートル(同12億立方フィート)と平常時の20%程度にまで削減する旨7月25日にガスプロムが明らかにした(また、7月26日にはロシアのペスコフ大統領報道官が、稼働中のタービン1基に不具合が発生している旨説明した)ことにより、欧州での天然ガス需給引き締まり懸念が市場で強まった(もっとも、欧州方面向け天然ガス供給削減の実際の理由は、対ロシア制裁を発動するとともにウクライナを支援する欧州諸国を翻意させるべくロシア政府が圧力を加えることであり、タービン返送を巡る問題は表向きの理由に過ぎない旨ロシア政府指導部に近い関係者が明らかにしたと7月26日に報じられる)。

(19)  このようなことから、6月8日には100万Btu当たり推定24.938ドルの終値であったオランダTTF天然ガス先物価格は上昇傾向となり、7月27日には同61.348ドルと、3月8日(この時は同68.532ドル)以来の高水準の終値となったが、この先も、冬場の暖房シーズンに伴う暖房用燃料需要期に向かう中で、欧州諸国等での天然ガス需給引き締まり懸念が市場で増大することを通じ、欧州等の天然ガス価格に上方圧力が加わる展開となりやすいことにより、結果として、天然ガスから石油への燃料転換が発生する(ドイツのミュンヘンではこれまで休止していた石油火力発電所の稼働を再開した旨8月1日に明らかになった)ことを通じ、石油需要増加及び石油需給引き締まり観測が市場で増大することにより、原油価格が上昇する場面が見られるといった展開となる可能性も想定される。

(20)  その他、中国における新型コロナウイルス感染抑制のための都市封鎖措置を含む対策状況と同国経済及び石油需要への影響、イラン核合意正常化を巡る西側諸国等とイランとの協議状況(協議が再開する方向である旨8月3日に示唆されるものの、足元協議は事実上膠着状態であり、8月1日には米国財務省及び国務省は、イラン産石油及び石油化学製品の東アジア諸国及び地域向け販売に関与したとして中国、シンガポール及びUAE企業系6社に対し、米国内での資産凍結及び米国企業との取引禁止を内容とする制裁を発動している)、米国における金融引き締めペースを巡る同国金融当局関係者の発言等によっても、原油相場が変動することがありうる。

(21)  加えて、イラクでは、2021年10月10日に実施した国会議員選挙により国会議員が新規に選出されて以降行われていた、連立政権樹立に向けた交渉が不調であったことにより、議会多数派であったイスラム教シーア派指導者サドル師(但し同師は親イランではない)を支持する73人の議員が6月12日に辞表を提出して辞職した後、繰り上げ当選により議会内での勢力を拡大した親イランのイスラム教シーア派議員が首相選出手続きを進めようとしたことに反発したデモ隊が、議会の解散及び国会議員選挙の再実施を求め、7月27日に加え、7月30日に同国国会を占拠したうえ、8月3日時点でも退去していない(要求が受け入れられるまで選挙を継続する旨デモ隊は明らかにしている)など、政権幹部の選出がもたつくとともに政治的空白が長期化することが懸念される中、老朽化したパイプラインや港湾施設の更新及び能力拡張が遅延しつつあることもあり、2022年4~7月の同国の原油生産が推定日量443~445万バレル程度と伸び悩み気味である他、ナイジェリア(2022年1月の原油生産量日量138万バレルが7月には推定同113万バレルへと減少)、アンゴラ(2022年1月以降原油生産量が推定日量114~119万バレルの範囲で推移)を含む一部OPECプラス産油国の増産が順調に行われていないように見受けられることから、この面でも原油相場は下支えされやすいものと考えられる。

 

(参考1:2022年8月3日開催OPECプラス産油国閣僚級会合時声明)

31st OPEC and non-OPEC Ministerial Meeting

No 23/2022
Vienna, Austria
3 August 2022

The 31st OPEC and non-OPEC Ministerial Meeting was held via videoconference on 3 August 2022.

The Meeting noted the dynamic and rapidly evolving oil market fundamentals, necessitating continuous assessment of market conditions.

The Meeting noted that the severely limited availability of excess capacity necessitates utilizing it with great caution in response to severe supply disruptions.

The Meeting noted that chronic underinvestment in the oil sector has reduced excess capacities along the value chain (upstream/midstream/downstream).

The Meeting highlighted with particular concern that insufficient investment into the upstream sector will impact the availability of adequate supply in a timely manner to meet growing demand beyond 2023 from non-participating non-OPEC oil-producing countries, some OPEC Member Countries and participating non-OPEC oil-producing countries.

It noted that preliminary data for OECD commercial oil stocks level stood at 2,712 mb in June 2022, which was 163 mb lower than the same time last year, and 236 mb below the 2015-2019 average, and that emergency oil stocks have reached their lowest levels in more than 30 years.

The Meeting also noted that Declaration of Cooperation conformity has averaged 130% since May 2020, supported by voluntary contributions of some participating countries.

Emphasizing the value and importance of maintaining consensus as essential to the cohesion of OPEC and participating non-OPEC oil-producing countries, and in view of the latest oil market fundamentals, the Participating Countries decided to:

  1. Reaffirm the decision of the 10th OPEC and non-OPEC Ministerial Meeting on 12 April 2020 and further endorsed in subsequent meetings including the 19th OPEC and non-OPEC Ministerial Meeting on the 18 July 2021.
  2. Adjust upward the production level for OPEC and non-OPEC Participating Countries by 0.1 mb/d for the month of September 2022 as per the attached table. This adjustment does not affect the baselines decided on the above-mentioned Meeting on 18 July 2021.
  3. Reiterate the critical importance of adhering to full conformity and to the compensation mechanism. Compensation plans should be submitted in accordance with the statement of the 15th OPEC and non-OPEC Ministerial Meeting.
  4. Hold the 32nd OPEC and non-OPEC Ministerial Meeting on 5 September 2022.

 

以上

(この報告は2022年8月4日時点のものです)

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