ページ番号1009440 更新日 令和4年8月10日

期待されるパプアニューギニアにおける新規ガス田およびLNG開発

レポート属性
レポートID 1009440
作成日 2022-08-10 00:00:00 +0900
更新日 2022-08-10 14:38:49 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 天然ガス・LNG探鉱開発
著者 加藤 望
著者直接入力
年度 2022
Vol
No
ページ数 12
抽出データ
地域1 大洋州
国1 パプアニューギニア
地域2
国2
地域3
国3
地域4
国4
地域5
国5
地域6
国6
地域7
国7
地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 大洋州,パプアニューギニア
2022/08/10 加藤 望
Global Disclaimer(免責事項)

このwebサイトに掲載されている情報は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、機構が作成した図表類等を引用・転載する場合は、機構資料である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。機構以外が作成した図表類等を引用・転載する場合は個別にお問い合わせください。

※Copyright (C) Japan Oil, Gas and Metals National Corporation All Rights Reserved.

PDFダウンロード1.4MB ( 12ページ )

概要

パプアニューギニアにおける、ExxonMobil主導のPNG LNGの供給ガス田としてのP’nyangガス田開発およびTotalEnergiesのPapua LNG(2 Train)の新設および供給ガス田のElk/Antelopeガス田開発に関わる契約は政府と2019年に合意していたが、政変による首相交代後数年に及ぶ追加交渉を経て2022年2月にようやく合意に達し、プロジェクトの実現に向け動き出したところである。しかし、当初計画されていたExxonMobilのPNG LNG の拡張計画(Train3)は政府から第三者利用を求められ、白紙撤回となった可能性がある。

本報告では、パプアニューギニアの新規天然ガス開発およびLNG拡張計画および当初計画変更の背景について述べる。

 

はじめに

パプアニューギニアは、世界で二番目に大きな島であるニューギニア島の東経141度から東側を占めている。東経141度の西側はインドネシア領である(注)。1884年に北東部がドイツ保護領(ニューギニア、アフリカのギニア人に似ていることから16世紀にスペインの探検家によって付けられた名称)、南東部が英国保護領(パプア、マレー語で縮れ毛を意味する)となった。南東部の英国保護領は1906年に豪州が引継ぎ、第一次大戦勃発に伴い豪州がドイツ保護領を占領した後、国際連盟の発足と同時に豪州が委任統治した。

(注)ニューギニア島西半分(約42万5千平方キロメートル)はインドネシア領ニューギニア(イリアンジャヤ)と呼ばれ、2022年6月30日付でパプア州から、中パプア州、南パプア州および山岳パプア州が分離され、従来からの西パプア州とパプア州を含め5州が分立した。

第二次世界大戦で日本軍が侵攻し、ポートモレスビーを攻略、占領しようとしたが失敗。1945年に日本軍降伏。その後1946年に豪州を施政権者とする国連の信託統治地域となったが、1975年に独立した。

パプアニューギニアの基礎情報をまとめたものを次表に示す。

(表1) パプアニューギニアの基礎情報
国名 パプアニューギニア独立国(Independent State of Papua New Guinea)
面積 46万平方キロメートル(日本の約1.25倍)
人口 895万人(2020年、世界銀行)
首都 ポートモレスビー
民族 メラネシア系
言語 英語(公用語)の他、ピジン英語、モツ語等
宗教 主にキリスト教、祖先崇拝等伝統信仰
独立 1975年9月16日、1946年から豪州を施政権者とする信託統治地域
政体 立憲民主制
元首 エリザベス二世英国女王、代行ボブ・ダダイ総督(2017年2月~)
議会 一院制、111名、任期5年
首相 ジェームス・マラぺ(2019年5月~)
GDP 247億ドル(2020年、世界銀行)
一人当たりGNI 2,720ドル(2020年、世界銀行)
通貨 キナ(Kina), 1キナ=38.31円(2022/8/9)

(出所 外務省HP他を基にJOGMEC作成)

 

1. パプアニューギニアにおける石油・ガス上流開発

パプアニューギニアにおける油・ガス田の特徴は、そのほとんどが内陸部のハイランド地方と呼ばれる標高1,000~2,000メートルの山岳地帯に点在することである。パプア湾に臨む地域では1911年に少量の軽質油が見つかっていたが、BPの前身であるAnglo-Iranian Oil Companyは、オーストラリア政府から委託を受けてパプアの地質調査に挑み、1928年に調査結果が報告された。この結果に基づき、1929年にOil Search社が、オーストラリア、パプアおよびニューギニアの探鉱を目的として設立された。同社には後にBPとStanvac(Mobil)も資本参加した。

Oil Search社は、設立から40年間小規模なガス田しか発見できなかったが、1950年代から大型ヘリコプターが利用できるようになり、さらに1960年代後半にHighlands Highway(総延長700キロメートル、片側一車線の二車線道路)が開通し探鉱が進み、1986年にようやく最初の油田(lagifu oil field)を発見した。1992年には、Oil SearchがオペレーターのKutubu油田およびHidesガス田で最初の原油と天然ガスの生産が開始された。90年代にはさらにGobeとMoranの各油田が発見された。300キロメートルの陸上および海上原油パイプライン、山上の原油処理施設、海上出荷設備等の建設・設置を行っている。同社は、1998年にBPおよび2003年にChevronのパプアニューギニアの上流権益を買い取り、パプアニューギニアで最大の企業となりオーストラリア証券取引所およびパプアニューギニア証券取引所に上場した。なお、2021年12月に豪州のSantosと合併した。また、1997年に設立されたカナダ法人のInterOil社は、パプアニューギニアに特化した上流開発会社であり主たる事務所をポートモレスビーとシンガポールに置いた。InterOilは後述するElkおよびAntelopeの大型ガス田を2006年と2008年にそれぞれ発見した。同社は、2017年にExxonMobilに買収されている。

ExxonMobilが操業するPNG LNGの液化施設は、首都ポートモレスビーの北西20キロメートルの海岸に位置する。

一方、オフショア開発については、PandoraおよびPascaのガス田がKumul Petroleum(NOC)によって探鉱が始まるところである。また、TotalEnergiesは、Papua湾の浅海を探鉱すると発表しており、今後が期待される。

(図1) パプアニューギニアの鉱区とパイプライン図 (Petroleum Projects Map)
(図1) パプアニューギニアの鉱区とパイプライン図 (Petroleum Projects Map)
(出所 Papua New Guinea Chamber of Mines and Petroleum)

2. 既存LNG液化設備と供給ガス田について

パプアニューギニアにおけるLNG液化設備は、Highland地方において1983年以降次々と油ガス田が発見されたことによって計画された。特に大型のHidesガス田は1987年にBPによって発見され、1991年にはGTE(Gas to Electricity)としてガス火力発電用に生産が開始されたが、ガス供給能力には余力があった。

ExxonMobilが中心となり、2008年5月にパプアニューギニア政府と7つの供給ガス田開発の財務条件を中心にLicense契約が締結された。契約調印後FEED(Front End Engineering Design)を開始し、PNG LNG液化設備建設の最終投資決定(FID)は2009年12月に行われ、建設および試運転期間を経て2014年5月に最初のLNG Cargoが出荷された。次の表2は、PNG LNG設備概要である。

(表2) PNG LNG既存液化設備の概要
名称 Train数 設計生産能力
(万トン/年)
操業開始年 プロセス LNG所有者 供給ガス田
PNG LNG Train 1 & Train 2 690(345 each) 2014 C3MR (APCI) ExxonMobil* 33.2%, Santos 42.5%, Kumul Petroleum Holdings(NOC)19.6%, Nippon Papua New Guinea LNG LLC (JX石油開発79%, 丸紅21%) 4.7% Juha, Kutubu Area (Gas), Hides, SE Hidenia, Angore, Gobe Main(Gas), Moran(Gas)

(出所 JOGMEC 天然ガス・LNGデータハブ 2022)

 

最近の実際の生産量は、設計能力(Nameplate Capacity)を超え、125%の約860万トン/年のLNGを生産している。

7つの供給ガス田の内、現時点で供給しているのは3フィールド、即ちHidesガス田、KutubuおよびGobe油田の随伴ガスであり、残りはbackfillガス田として順次投入される予定である。表3は、現在の供給ガス田からの供給量の推移を示す。また、表4「PNG LNGへの7つの供給ガス田」は、2008年のGas Agreementでカバーしているすべての供給ガス田を網羅した。それぞれ権益比率は異なるが保有者の顔ぶれは同じである。従い、LNG液化に関する使用料の調整は生じているだろう。

(表3) PNG LNG供給ガス田ごとの供給量推移 単位: mmcfd(百万立方フィート/日)
ガス田/年 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021
Hides Gas 501 887 926 971 887 1,025 1,063 1,025
Kutubu Gas 30 70 70 70 70 70 70 70
Gobe Main Gas 5 35 45 45 45 40 40 35
Total (mmcfd) 536 992 1,041 1,086 1,002 1,135 1,173 1,130

(出所 Wood Mackenzie)

注:mmcfd x 20.81 x 365 = 年間LNG生産量(トン)。 1,130 x 20.81 x 365 = 8,583,000 トン/年

 

(表4) PNG LNGへの7つの供給ガス田(2008年Gas Agreement対象)
フィールド名 鉱区 発見年 権益保有者 初期埋蔵量、Bcf(2P) 1/2022埋蔵量、Bcf(2P) 備考
Juha PDL (Petroleum Development License) 9 1983 ExxonMobil* 43.39%, Santos 24.42%, Kroton Equity Holdings (Kumul Petroleum as NOC) 20.5%, Nippon PNG LNG (ENEOS) 9.69%, Mineral Resources Development Co., Ltd. (MRDC owned by the Government) 2.0% 417 417 Backfill
(2037~)
Kutubu Area(Gas) PDL 2 1986 Santos* 60.1%, ExxonMobil 14.5%, Merlin Petroleum (Marbeni 21.0%, JX Nippon 79.0%) 12.7%, MRDC 12.7% 975 785 供給ガス田
Hides PDL 1, PDL 7 (a)& (b) 1987 ExxonMobil* 36.81%, Santos 40.69%, Kroton Equity 20.5%, MRDC 2.0% 5,804 3,184 主力供給ガス田, Gas Conditioning Plant
SE Hedinia PDL 2 1987 Santos* 60.1%, ExxonMobil 14.5%, Merlin Petroleum (Marubeni 21.0%, ENEOS 79.0%) 12.7%, MRDC 12.7% 134 134 Backfill
(2028~)
Angore PDL 8 1990 ExxonMobil*36.81%, Santos 40.69%, Kumul Petroleum 20.5%, MRDC 2.0% 936 936

backfill
(2024~)

Gobe Main (Gas) PDL 3, PDL 4 1993 Santos* 52.28%, Kumul Petroleum 45.72%, MRDC 2.0% 164 22 供給ガス田
Moran (Gas) PDL2, PDL 5 and PDL 6 1996 ExxonMobil* 36.81%, Santos 40.69%, Kumul Petroleum 20.5%, MRDC 2.0% 850 850

backfill
(2027~)

9,280 6,328  

(出所 Wood Mackenzie)

注1:政府保有率は、基本的に法令により22.5%。その内2%は、地方政府および開発地域の地権者の取分である。地方政府および地権者から信託を受けて財産管理を行っているのが、100%政府保有のMineral Resources Development(MRDC)である。

2: Kroton Equity Holdingsは、2015年にNOCであるKumul Petroleumに統合された。

 

3. PNG LNGの売買契約(SPA:Sales Purchase Agreement)締結状況

LNG SPAの締結状況は以下のとおりである。長期契約で、設計能力である生産量690万トン/年をほぼ確保している。

 

(1) 長期SPA

LNGの販売契約は、以下のとおり。年間計650万トンが長期契約の対象である。

  • 2009年12月 Sinopec 200万トン/年、20年間(LNG生産開始の2014年5月~)
  • 2009年12月 東京電力 180万トン/年、20年間(同上)
  • 2009年12月 大阪ガス 150万トン/年、20年間(同上)
  • 2009年12月 CPC 120万トン/年、20年間(同上)

 

(2) 中期SPA

中期のSPAは、現在以下のとおりである。

  • 2018年8月  bp 最初の3年間45万トン/年、次の2年間90万トン/年、
  • 2019年4月  Unipec(Sinopec)45万トン/年、4年間

 

4. LNG Expansion Projectと新規ガス田の開発計画

LNG Expansion Projectとは、2018年にTotalEnergiesとExxonMobilが共同で3 Train(TotalEnergies が新設Papua LNG 2トレインおよびExxonMobil がPNG LNG 1トレイン増設)を建設し、並行して新規ガス田を順次開発することによってLNGを新たに年間830万トン生産する計画を提案したものである。既設PNG LNGと併せてパプアニューギニアは、LNGを年間1,500万トン以上生産することになり、LNG生産国としての地位を確保できると思われた。これは現在のインドネシアの生産能力(Tangguh Train 3含む)に匹敵する。これらLNG新設計画の概要は、次の表5に掲載した。

(表5) 新設LNG液化設備建設計画
名称 Train数 設計生産能力 (万トン/年) 操業開始年 プロセス LNG所有者 供給ガス田
Papua LNG Train 1 & Train 2 560(280 each) 2027 Opt. Cascade (ConocoPhillips) TotalEnergies* 31.1%, ExxonMobil 28.7%, Kumul Petroleum 22.5%, Santos 17.7% Elk、Antelope
PNG LNG Train 3
(キャンセル)
267(計画) 未定(Opt. Cascadeで計画) P’nyang, Murukが中心となる予定であった

(出所 JOGMEC天然ガス・LNGデータハブ2022等)

 

Papua LNGは、既設のPNG LNGの敷地内に建設する予定であり、ユーティリティなどインフラ設備はコスト軽減の目的でPNG LNGと共同使用され、ExxonMobilがすべてのLNGトレインの操業を担当、TotalEnergiesは出荷等の運転に責任を負うことになっていた。

LNG液化プロセスは、ConocoPhillipsのOptimized Cascade(Opt. Cascade)が選定された。PNG LNGの既設Train 1およびTrain 2は、Air Products and Chemicals Inc.(APCI)のC3MRプロセスが採用されていることから、異なるプロセスの選定には若干違和感を覚える。

International Gas Unionの「2022 World LNG Report」によれば、APCI社のプロセスは世界の既設液化プラントの68%を占める。一方、Opt. Cascadeプロセスの市場占有率は23%である(12液化プラント、27トレイン)。同じ敷地内でトレインによって液化プロセスが異なるのは、運転上支障はないのだろうか?少なくとも熱交換器等の予備品のストックが増えるのではないだろうか。同一敷地内に異なる液化プロセスが存在する例は、豪州西海岸WoodsideのPluto Train 2がTrain 1のC3MRではなくOpt. CascadeでFIDされた例があるだけである。

当初計画では2025年に操業開始予定であったLNG Expansion計画は、2025年を中心に操業を開始する予定であったMozambiqueやQatar増設など大型プロジェクトと時期的に重なった。世界で大型LNG液化プラントのFEED段階からEPCまでを完工できるエンジニアリング会社は、APCIプロセスでは日揮、千代田化工建設、McDermott、Saipem、Technip Energiesなどに限られる。推測だが、Opt. Cascadeを選択した背景には、Opt. CascadeでLNG液化プラントの施工実績を唯一持つBechtelに余力があったのかもしれない。なお、LNG液化プラントの完成ピークは、コロナの影響で約2年ずれ込み、現在は2027年と見込んでいる。次の表6は、上記新設LNGへの供給ガス田開発計画である。特にP’nyangガス田およびElk/Antelopeガス田の埋蔵量は大型である。

(表6) 新設液化トレインに供給する新規ガス田
(表6) 新設液化トレインに供給する新規ガス田
(出所 各種データよりJOGMEC作成)

注1:今後P’nyangガス田の権益比率はパプア政府への譲渡で大幅に変更となり、政府の保有分は法定の22.5%+12%の最大34.5%になる見通しである。

2:PPLは開発段階のLicenseで基本6年+延長5年の開発ライセンスである。

 

5. LNG Expansion計画の紆余曲折

ExxonMobil、TotalEnergiesおよびOil Searchは、2019年4月にピーター・オニール前首相率いる政権と契約に合意した。ところが翌月2019年5月にオニール首相に内閣不信任決議が突き付けられ同首相は辞職するという政変が起きた。新たに就任したジェームズ・マラぺ首相はパプアニューギニアにとってより良い条件を勝ち取ることに意欲的で、追加交渉が行われた。TotalEnergiesとExxonMobilは、個別にパプアニューギニア政府とガス田開発に関わるGas Agreementの交渉を行うことになった。

 

(1) TotalEnergiesの場合

Elk/Antelopeガス田開発の再交渉にあたって問題となったのは”Stabilization”(安定化)条項である。これは、Gas Agreement発効以降の税額変動や適用法令の変更などでコスト増になっても、生産者側には最初の契約条件が適用され、これによるコスト変動はすることはないというリスク回避条項である。EPCなど3年から4年で完了する場合においてStabilization条項はよく見受けられるが、20年から30年の操業を見込むLNG液化プラントの場合、論点となることが多い。しかし、プロジェクトファイナンスで投資家が生産物の売上から投下資本を回収する場合、法人税等が定まっていないと回収率や利益率が見えないことになり、ファイナンスが成り立たず、Stabilization条項は必須であると思われる。なお、PNG LNGに関わる2008年Gas Agreementに同条項はあるとされているが詳細は確認されていない。

今回、TotalEnergiesはStabilization条項を交渉で勝ち得たが、代償として政府取分として2%が追加された。新型コロナの影響もあり交渉に2年を費やし、2019年4月締結の2019 Gas Agreementは、2021年3月にStabilizationに関する合意書締結と共に、遡及して発効した。その後、Total Energiesは、2022年7月にガス田既発とLNG液化設備のFEEDを同時に開始し、2023年末までにはFIDを予定している。FEEDコントラクターは現時点で明らかにされていないが、上流ガス田開発からLNG液化および出荷設備までの下流に至るまでをスコープ毎に分割し、FEEDコントラクターを選定し、TotalEnergiesがそれらを統合してFIDに臨むものと思われる。

(2) ExxonMobilの場合

2020年初めに、パプアニューギニア政府は、ExxonMobilのP’nyangガス田生産ガスをPNG LNG Train 3のみに使用する提案を拒絶し、さらにPNG LNGの輸出設備を第三者が利用できることおよび政府取分を34.5%とすることを要求した。ExxonMobilのP’nyangガス田開発については、パプアニューギニア政府は、TotalEnergiesよりもExxonMobilに厳しい条件を突き付けたと言える。交渉は一時膠着状態に陥り止まったが、2022年2月に以下の開発の方向性について合意した。

  • PNG LNGおよびパイプラインを第三者に使用させること
  • 政府権益保有率を34.5%に引き上げること
  • TotalEnergiesと同様、生産されたガスから国内支給分として5%の供給義務確があること
  • 同じく、Stabilization条項として政府取分2%とすること

このうち、第三者にパイプラインやPNG LNG液化設備を使用させることは、結局PNG LNGが従来のExxonMobil主体の上流ガス田からLNG液化・出荷までを扱う垂直統合型ビジネスから一部Tolling(使用料)を徴収するビジネスに変わるのを容認することである。かつ、第三者は現時点では見えていないが、鉱区図から見て取れるが、今後第三者がハイランド地方で探鉱を進めれば新たなガス田を発見する可能性はあるだろう。即ち、将来のビジネスの見通しは不透明になった。

この過程で、ExxonMobilは、LNG Expansion ProjectのPNG LNG Train 3の新設計画を諦めたようだ。同社公式発表では一言も触れていないが、キャンセルと捉えられてよいだろう。

政府法定で22.5%まで権益を保有することが出来る。内2%相当は開発地の地権者と地方自治体の取分となる。パプアでは、操業までに要した探鉱開発費用は政府も負担義務があるが、遡って負担するか、また地方自治体や地権者も負担するかどうかは不明である。

法定の政府取り分22.5%は、Partnerが応分して政府に拠出することになるだろう。Santosがパプアニューギニア資本のOil Searchを合併したことにより、Oil Search分38.51%がそのままSantos権益分となったが、パプア国内では、パプア国民の声が権益に反映されなくなったという批判があり、12%の積み増し要求が出されたようだ。この12%は、ExxonMobilから捻出されるのか、そうなればExxonMobilの保有権益は、25.97%と小さくなりSantosの29.84%も下回り、パプア政府が34.5%と筆頭となる。この権益譲渡の交渉はまだ始まっておらず、またStabilization条項も決着がついていないと聞く。今後の交渉は紆余曲折が予想される。

(表7) ガス田開発に伴うFiscal Terms(財務条件)の変遷
Fiscal Terms PNG LNG
(2008 gas agreement)
Papua LNG
(2019 gas agreement)
P'nyang
(2022 gas agreement)
Royalty (%) 2 2 2
Social development levy 2 2 2
Production levy n.a. 2 3
国内供給義務 (DMO) n.a. Up to 5% at a fixed price ($4.5/mmBtu) Up to 5% at a discounted price
法人税率 (%) 30 30 30
追加税 7.5%(内部収益率が17.5%を超えた場合)、10%(同20%を超えた場合) 30%(内部収益率が17.5%を超えた場合) 30%(内部収益率が17.5%を超えた場合)
Fiscal stability 現状で固定 2% 2%(予想)
パプア政府取分 (%) 19.6 22.5 34.5(法定22.5+12 from Exxon Mobil)
その他 第三者のLNG設備へのアクセス許容(どの程度か不明)

(出所 Rystad Energy 2022年2月 Upstream Analyticsを基にJOGMEC追加)

注:サインボーナス、Extension ボーナス等は一切なし。2019年にLicenseからPSC(生産物分与契約) に移行したが内容は不明で、かつモデル契約も未公表。

アジア全体で見た場合、2022年Gas Agreementの財務条件(政府取分)は決してコントラクター(またはLicensee)にとって悪くはなく、平均よりコントラクターにとって有利な条件となっている。

ExxonMobilは、P’nyangガス田の開発期間を約4年と見積もり、Papua LNGの完成後の2028年頃に開発を開始し、操業開始時期を2032年に遅らせると共にP’nyangガス田をPNG LNG 全体のbackfillの位置付けとした。もっとも、他に新規大型ガス田の発見がなく現状のガス田の生産状況が今後推移すると仮定すると2033年頃からガス生産量の減退が始まることからP’nyangガス田の生産が2032年から開始されることは理にかなっている。他方、ExxonMobilが新規ガス田の探鉱に取り組む姿勢が弱まったことは否めず、パプアニューギニアは、Nameplate CapacityでPNG LNG 690万トン/年プラスPapua LNG 560万トン/年、計1,250万トン/年のLNG生産で満足するということであろうか。

 

6. 今後の開発スケジュール

PNG LNGおよびPapua LNGの今後の開発スケジュールは以下のとおりと予定されている。

 

(1) PNG LNGの場合

以下のとおり、Backfillガス田から順次PNG LNGへの追加供給が予定。

2024-Angore、2021年10月FID済

2027-Associated gas expansion project *注:Kutubu Area複数油田からの随伴ガスの増産

2028-Juha

2032-P’nyang(Papua LNG 完成後、2028年から開発開始)

2040-Muruk

  • Train 3 開発(キャンセル、新規大型ガス田が発見されない限り復活はおそらくないだろう)

 

(2) Papua LNGの場合

  • Elk/Antelope開発

2022-FEED開始

2023-FID、3本の生産井を2024年~26年に掛けて毎年掘削

2027-生産開始

  • Papua LNG Train 1 and Train 2

2022-FEED開始

2023-FID

2027-LNG Train 1 およびTrain 2操業開始

(表8) パイプライン仕様について
パイプライン名 総延長(km) 口径(インチ)
Hides – PNG LNG(既存) 699 34
Elk/Antelope – Papua LNG(予定) 320 40
P’nyang – Kutubu(予定) 220 30

(出所 Wood Mackenzie)

 

下の図は、パプアニューギニアの2040年までのガス生産見通しである。

(図2) パプアニューギニアのガス生産見通し
(図2) パプアニューギニアのガス生産見通し
(出所 Rystad Energy 2022年2月 Upstream Analytics)

大型のP’nyangガス田とElk/Antelopeガス田が生産を開始すると一挙に生産が拡大することが分かる。

 

7. 補足(総選挙)

パプアニューギニアでは、5年ぶりの総選挙の投票が2022年7月4日に行われた。開票作業は7月29日から始まると伝えられており、結果の判明は8月中旬になるだろう。今回のパプアニューギニアの選挙は、小選挙区96議席と21州各1議席と首都圏1議席の22議席、計118議席を約3,500人(53の政党や無所属)が争う。なお、各州1議席の当選者は州知事も担う。

開票結果に時間が掛かるのは、交通網の未発達によるものおよび有権者は投票時に候補者に1位から3位まで順位をつけ投票し、一回目の投票でいずれの候補者も過半数に満たない場合は、最下位の候補が落選し、落選者に対する投票用紙2位の人物に落選者の票がカウントされるという、Limited Preferring Votingが行われるためである。

選挙結果が判明すると、英国国王の代理である総督が最大議席を獲得した政党に対し政権樹立を指示し(過半数を獲得する政党がない場合)、最大政党を中心とする連立による議会与党が形成され、最大政党から首相が選ばれる。

2019年5月に内閣不信任決議を避け辞任したオニール前首相の後に議会で選出されたマラペ首相にとって、その政権の信を国民に問う初めての選挙となる。

今回の選挙では、マラペ首相率いるパング党とオニール前首相のPNC党のいずれが最大政党になるのかが注目されている。第三極が現れる可能性も否定できない。

オニール前首相は経済開発優先でパプアニューギニアのマクロ経済は発展させたものの、富が国全体に行きわたらず、国内の開発格差や経済格差を広げ、またUnion Bank of Swissからの不正融資に係る問題が指摘されていた。辞任時は汚職や低開発から脱け出せない状態をめぐり激しい非難を受けてきた。一方で、マラペ首相はTaking Back PNGを掲げ、都市部の発展ではなく、国全体の発展を描き、富を国民に分配する考えを掲げる。中国の王毅外相は、2022年5月26日から6月4日まで南太平洋の8カ国を訪問し、中国との安全保障や経済連携で影響力の拡大を狙った。豪州は、中国のパプアニューギニアへの接近の動きに神経を尖らせている状況であり、歴代豪州首相と良好な関係を築いてきたオニール前首相の当選を期待していると思われる。

選挙結果により、パプアニューギニアのガス田開発、あるいはPNG LNG Expansion計画に影響が出るかもしれない。

 

8. まとめ

パプアニューギニアにおける探鉱活動がどの程度拡がりを持って行われているか不明だが、ニューギニア島北東部およびインドネシア領ニューギニアの山岳地帯は、正にフロンティアであり、潜在的な油ガス田発見の可能性は残されており今後が楽しみな地域である。

なお、ガス田から排出されるCO2については、TotalEnergiesがパプア湾にCCSを設け貯留することを検討しているようだ。

 

以上

(この報告は2022年8月10日時点のものです)

アンケートにご協力ください
1.このレポートをどのような目的でご覧になりましたか?
2.このレポートは参考になりましたか?
3.ご意見・ご感想をお書きください。 (200文字程度)
下記にご同意ください
{{ message }}
  • {{ error.name }} {{ error.value }}
ご質問などはこちらから

アンケートの送信

送信しますか?
送信しています。
送信完了しました。
送信できませんでした、入力したデータを確認の上再度お試しください。