ページ番号1009445 更新日 令和4年8月17日
このウェブサイトに掲載されている情報はエネルギー・金属鉱物資源機構(以下「機構」)が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、機構が作成した図表類等を引用・転載する場合は、機構資料である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。機構以外が作成した図表類等を引用・転載する場合は個別にお問い合わせください。
※Copyright (C) Japan Organization for Metals and Energy Security All Rights Reserved.
概要
2021年5月24日に就任したGuillermo Lasso大統領は、自らの任期が終了する2025年までに原油生産量を日量100万バレルに倍増させることを計画し、炭化水素法等の改正、現行のサービス契約の生産分与契約への移行等により、エクアドルの探鉱・開発部門への民間企業の参入を推し進め、資金や技術の不足を補おうとしている。しかし、地滑りによるパイプラインの破損や先住民等による抗議行動により、2020年、2021年のエクアドルの原油生産量は日量50万バレルを下回り、2022年に入ってもその状況は続いている。また、中国やタイとの“融資買油(Oil-backed loan)”契約等については再交渉が行われることとなっており、欧州系金融機関によるエクアドルで生産される原油取引に対する融資の停止に直面するなど問題は山積している。Lasso大統領は原油生産量倍増計画実現にあたりこれらの課題を乗り越えなければならない。
新たに締結する契約の形態を生産分与契約とすることで増産を図ったMoreno前大統領
エクアドルでは、2007年に就任したRafael Correa元大統領の下、2010年に探鉱・開発に関する契約の形態が生産分与契約からサービス契約に変更されることとなり、国営石油会社Petroamazonasがオペレーターを務めることとなった。その結果、契約形態の変更を拒んだPetrobras、Occidental、Perenco、ConocoPhillips等がエクアドルから撤退し、新たにエクアドルの探鉱・開発に興味を示す石油会社はなくなった。そのため、石油生産量は日量50万バレルを切るところまで落ち込んだ。
しかし、その後、エクアドルは中国やタイから“Oil-backed loan”(探鉱・開発あるいは社会インフラ向け資金の融資を得て返済を原油・石油製品など現物で行う)等により探鉱・開発資金を確保し、Petroamazonasが直接サービス会社(Schlumberger、Halliburton等の大手ならびに中国系企業)とサービス契約を結び、2011年以降、原油生産量を増加させた。中国やタイから得た融資の返済用に石油を確保する必要があったことも増産に寄与した。
2014年中ごろからは、原油価格下落を受けて、サービス会社へのサービスフィーの支払いが滞るようになった。政府は、原油価格がサービスフィーを下回った場合には、その差額はサービスを提供する企業に対するPetroamazonasの債務として計上され、原油価格が上昇するまで支払いを繰り延べるとした。そして、期間満了時に債務が残っていた場合は、国営石油会社ならびに国の債務は消滅するとした。2015年後半にはサービスフィーの支払い滞納により操業に影響が生じるようになり、2016年1月以降、政府はサービス契約の見直し交渉を行い、一部のサービスフィーを引き下げた。
2017年に就任したLenín Moreno前大統領は、外国企業を参入させ、探鉱・開発を活発にし、原油埋蔵量、生産量を増加させる方針へと政策を転換した。Moreno前大統領は、2018年7月には、新たに締結する契約の形態を生産分与契約に変更、2019年3月には、北東部、Oriente Basin、Sucumbíos県の8鉱区を対象にIntracampos XII入札ラウンドを実施した。この入札ラウンドでは19社が入札資格を得、7社が7鉱区に合計で16件の札を入れ、7鉱区が落札されるという良好な結果が得られた。
Moreno前政権は、Block43のIshipingo Tambococha Tiputini(ITT)油田やSacha油田の生産拡大により、同政権が終了する2021年までに原油生産量を日量70万バレルまで引き上げることを計画したが、一方で、OPEC及び一部非OPEC産油国の減産合意を尊重するとした。実際には、原油生産量はITT油田の生産増と既存油田の生産減退が相殺しあう形で推移することとなった。
政府は、2019年8月に、2021年までに原油生産量を日量70万バレルに引き上げる計画を変更、生産目標を日量58万バレルに引き下げた。Block43、Ishpingo油田の開発をYasuní国立公園の緩衝地帯の外から傾斜掘りにて行うこととしたこと、先住民への影響を懸念し南東部のBlock86等での探鉱・開発を見合わせたこと等が、その要因とされた。

(出所:bp Statistical Review of World Energy June 2022を基にJOGMEC作成)
燃料補助金廃止に対する抗議行動激化(2019年10月)で原油生産量激減
2019年10月、政府が取り組むとしていた燃料補助金廃止に反対する抗議行動が激化し、治安が悪化、複数の油田に抗議グループが侵入し、エクアドルの主要油田であるSacha、Libertador、Shushufindi、Auca油田をはじめとする多数の油田の生産が停止した。抗議グループはSOTEパイプライン[1]の設備にも侵入し、また、油田の生産停止により原油の供給量が減少したこともあって、SOTEパイプラインの運転が度々停止することになった。油田の占拠とパイプラインの操業停止により、原油生産量は10月1日の日量53.8万バレルから同月9日には日量22.3万バレルまで落ち込んだ。さらに、アマゾンの数か所の発電所でもトラブルが発生し、電力供給ができなくなり、これもPetroamazonasの操業に影響を及ぼした。このような事態に、政府は、いったんは60日間の非常事態宣言を発令したが、10月13日夜に燃料費への補助金廃止を中止すると発表、抗議行動の中心となっていた先住民グループと11日間続いた抗議行動の終結で合意した。これを受けて、Petroamazonasは10月14日、20か所の油田で操業を再開した。
この抗議行動は、一時的な原油生産量減少やSacha、Libertador、Shushufindi油田等の機材損壊を招いただけでなく、アマゾンでの石油開発に外国企業を招致するとするMoreno前大統領の計画に反対する先住民グループのその後の活動を活発化させることとなったと見られている。

(出所:各種資料を基にJOGMEC作成)
OPEC脱退(2020年1月)で生産増を目指すが、生産伸び悩みの要因は資金や技術の不足
政府は、2019年11月末に、日量55万バレルである原油生産量を2020年には日量60万バレル近くにまで増大させる方針を明らかにした。そして、OPECによる調整後のエクアドルの2019年の原油生産量が日量52.8万バレルであるのに対し、日量55万バレルの生産はそれを上回るものであり、OPECの取り決めを尊重するために、OPECから脱退することとしたと発表、2020年1月1日付でOPECを脱退した。
政府は、OPEC脱退により生産制限がなくなり、また、Block43のITT油田等の開発が進むことで、2020年は原油増産が可能であるとした。しかし、エクアドルが生産目標を達成できずにいるのは、OPECの生産枠のせいではなく、資金や技術が十分でないことが原因であるとの見方がなされている。
例えば、今後、開発が進められ、生産の伸びが期待されるITT油田については、2019年8月と11月に生産量が日量8万バレルを超えたが、これを維持することができていない。2019年の同油田の生産量は日量12.5万バレルが期待されていたが、実際には日量7.5万バレルに終わってしまった。その原因として、Petroamazonasには増進回収を行う資金がないこと、生産した液分の87%は水であること、専門の民間企業と契約する必要があるがそれに関する政策がないこと、根本的解決を図る代わりに、水と油を分離させるための化学品に多額の資金を費やしていること等が挙げられている。
随伴水が増え原油生産量が減っているという問題は、ITT油田に限られるものではなく、重質油を生産する油井の約半分がこの随伴水の問題で閉鎖されているという。Sacha、Shushufindi、Auca油田では随伴水の問題がそれほど大きくないために生産量の目だった減少はなく、エクアドルは現在の生産量を維持できているが、これらの油田は成熟油田で、さらに投資や油井掘削を実施する余地はないという。
2020年はパイプライン破損と新型コロナウイルス感染拡大により、原油生産量減少
2020年4月7日、北東部Sucumbíos県とNapo県の県境に位置するSan Rafael地区の地盤が陥没したことにより、SOTE、OCP[2]原油パイプライン、そして、Shushufindi-Quito間のLPGパイプライン(輸送能力:日量9,600バレル)の一部が破損した。SOTEパイプラインとOCPパイプラインのポンプ機能も停止し、Napo川とCoca川に原油が流出した。政府は、この事故により原油の生産と輸出に関する契約の不履行で罰金が生じることを回避するため、4月10日に、不可抗力の事由による原油生産の一時停止を宣言した。Petroamazonasも不可抗力を宣言、少なくとも16鉱区での原油生産を停止した。同国の原油生産量は、2020年第1四半期の日量53.7万バレルから、4月は日量20.8万バレルにまで減少した。特に4月27日はわずか日量7.1万バレルとなった。5月7日から8日にパイプラインが復旧し、政府は5月9日に不可抗力宣言を解除した。5月25日には民間企業の生産量が日量9万バレルまで、28日にはPetroamazonasの生産量が日量42.3万バレルまで回復したことが明らかにされた。
その後も、地滑りによりパイプラインが再び破損するリスクが生じたり、迂回パイプラインの建設が行われ、その際にパイプラインが停止したりして、政府が不可抗力を宣言することがあった。
また、Coca川とNapo川の流域に暮らす先住民グループは、大量の原油流出により地元の川が汚染されて飲み水を奪われたとして、国と複数の石油会社を相手取って訴訟を起こした。
さらに、2020年は、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、就業規則が厳格化されたり、移動が規制され、それに伴い、探鉱・開発にあたる人員が削減されたり、入材や物資の輸送に必要以上の時間がかかったことで、探鉱・開発に遅延が生じたり、事業が縮小されたりするケースが生じた。例えば、7月26日から9月4日の45日間、Block43での活動が30%に縮小され、同鉱区のTambococha油田における22坑の新規油井の掘削に遅滞が生じた。また、新型コロナウイルス感染拡大に伴う需要減退による原油価格の下落も生産に影響を及ぼした。
その結果、2020年の原油生産量は2019年の日量53.1万バレルから9.8%減少し日量47.9万バレルとなった。原油生産量は、その後、徐々に回復し、2021年に入ると日量50万バレルをわずかに上回る程度で推移するようになった。
国営石油会社PetroecuadorとPetroamazonasの合併
行政令第723号に基づき、2020年12月31日に国営石油会社Petroecuadorが同じく国営石油会社のPetroamazonasを吸収、合併し、新会社が2021年1月1日に操業を開始した。
国営石油会社Petroecuadorは2010年にPetroecuadorとPetroamazonasに分割され、Petroecuadorが精製、輸送、貯蔵、輸出、そして、LPG、ディーゼル、ハイオクガソリン等派生品の輸入を、Petroamazonasが炭化水素およびその関連物質の探鉱・生産を行ってきた。今回の合併は、エクアドル政府が官僚機構の削減と公共支出の削減を目的として実施している4年計画の一環として行われた。これにより、PetroamazonasはPetroecuadorの探鉱・生産部門となった。
なお、隣国コロンビアの国営石油会社Ecopetrolの従業員が9,000名であるのに対し、合併前のPetroamazonasの従業員数は6,784名、Petroecuadorの従業員数は3,732名となっている。一方、生産量はEcopetrolが日量87万バレル、Petroamazonasが日量41.3万バレルとなっており、生産量に対する従業員数はエクアドル側が圧倒的に多く、合併後には人員整理が行われると見られている。
Lasso大統領、原油生産量倍増を目指す
エクアドルでは2021年2月16日に大統領選挙第1回投票が実施された。Correa元大統領が推薦する左派のAndrés Arauz氏とGuayaquil出身で約20年にわたりGuayaquil銀行の頭取を務めた中道右派のGuillermo Lasso氏が上位2名となり、4月11日の決選投票に進出した。決選投票ではLasso氏が勝利し、5月24日にエクアドル大統領に就任した。
Guillermo Lasso大統領は、同年7月7日、炭化水素政策を定めた大統領令第95号に署名した。Lasso大統領は、この大統領令第95号で、炭化水素法およびその規則の改正、生産分与契約の変更、現行のサービス契約の生産分与契約への移行、石油セクター全体における透明性の向上等の石油政策を示した。また、Petroecuadorについては、プロセスの最適化と収益の向上を目指すと同時に、油田、パイプライン、製油所等資産へ民間投資を呼び込むとした。さらに、東部や南東部の鉱区入札を実施するとした。そして、これにより、2021年中に日量約4万バレルの増産を目指し、同大統領の任期が終了する2025年までに原油生産量を日量50万バレルから日量100万バレルに倍増させるとした。合理的かつ環境的に持続可能な方法で炭化水素生産を増加させ、それにより、国家収入の安定を図っていきたいとする政府の意向が示された。
その後も、大統領令が発出され、政策実現に向け制度が整えられていった。例えば、2022年2月15日の大統領令第342号では、炭化水素法に新規則が導入され、現行のサービス契約からPS契約への移行についての道筋が明確化された。現行のサービス契約をPS契約に変更することを望む企業は炭化水素入札委員会(COLH)の審査を経たうえで、契約条件を交渉、PS契約を締結することとなる。また、民間企業はこれまでは探鉱段階から参入しなくてはならなかったが、生産油田の入札に参加することが可能となった。
2022年4月には、サービス契約から生産分与契約への変更を希望するとの23件の申請があり、炭化水素入札委員会とRepsol、CNPC、Eni、ENAP等の石油会社との交渉が開始されることになった。
Lasso大統領は、2022年中にPetroecuadorの製油所、パイプライン、油田の権益を民間企業に付与し、ガソリンスタンドをすべて売却し、さらに、ブラジルのPetrobrasやコロンビアのEcopetrol同様にPetroecuadorの株式を売却することを提案している。
先住民の抗議行動激化
エクアドルでは、この時期に、先住民の抗議行動が劇化していった。
2021年3月には、Pastaza県の先住民族の共同体が、Pluspetrolが10の鉱区で行っている探鉱・開発に反対してこれらの鉱区の一部を占拠した。
同年4月にはOrellana県Block55のArmadillo油田で、Petroecuadorと2015年にサービス契約を締結したEcuaservoil(筆頭株主はベルラーシのBelorusneft)が雇用するWaorani Dikapari族の労働者が、2020年の報酬を巡りEcuaservoilと対立した。Waorani Dikapari族は油田施設を占拠し、オペレーションスタッフの他、警備にあたっていた兵隊たちを退去させた。
5月10日には、同じくOrellana県にてQuichua族El Edén共同体がBlock12のEdén-Yuturi油田へのアクセス道を封鎖した。Quichua族El Edén共同体は、2019年6月22日に失効した同共同体の領域内での石油開発を許可する20年間の協定を更新し、住宅200軒の建設、飲料水と電力供給を含む有効期間5年の協定を新たに締結することを求めていた。この抗議行動により、労働者の出勤、Block12の運営に必要な食料や物資の供給、その他の施設の管理・運営に支障をきたした。そこで、Petroecuadorは、6月3日に、Edén-Yuturi油田の原油生産について不可抗力を宣言した。6月25日、PetroecuadorとEl Eden共同体の代表者は、Block12、Eden-Yuturi油田へのアクセスの封鎖を解除し、関係を強化することを目的とした新たな協定を締結した。
9月には、環境保護団体と共同体が、探鉱・開発を開始する前に共同体との事前協議が行われなかったとして、Petroecuadorが操業するOrellana県Block60、Sacha油田での生産増のための5坑の掘削に反対した。Moreno前政権は2020年末に事前協議に関する法案を提出したが、審議されないままの状態となっていた。両者の合意が成立し、10月20日に、坑井数を1坑減らし4坑の掘削が開始された。Petroecuadorは、2021年中に4坑を掘削したのち、2022年に21坑を掘削し、生産量、日量6.5万バレルを日量2万バレル増やす計画だ。
そして、10月18日、エクアドル先住民連盟(CONAIE)、エクアドル・アマゾン先住民連盟(CONFENIAE)、エクアドル・アマゾン流域先住民組織(COICA)、その他アマゾン地方の先住民組織は、大統領令第95号と鉱物に関する大統領令第151号は資源搾取とアマゾン地方先住民の土地の略奪を増加させ違憲であるとして憲法裁判所に提訴した。
また、10月には、燃料価格に対する抗議行動が激化した。Moreno前大統領は、2019年10月の暴動を抑えるため、燃料に対する補助金を継続することとしたが、2020年に新型コロナウイルス感染拡大により原油価格が下落すると、国内の燃料価格を国際市場の価格に応じた変動価格制とすることとした。しかし、2021年に入り、原油価格が上昇すると、燃料価格が上昇し、抗議行動が激化することになったのだ。Lasso大統領は、燃料価格の凍結を発表し、これを抑えた。
パイプライン操業停止(2021年12月)で、原油生産量減少
2021年に入っても、地滑りに対処するため、また、暴風雨や自然災害による破損を防ぐため、OCPパイプライン、SOTEパイプライン、Shushufindi-Quito間のパイプラインの新たな迂回パイプラインの建設が続けられた。そのため、生産や輸送への影響のない範囲でパイプラインの操業が度々停止した。2021年8月時点で、パイプライン迂回ルートの敷設に2,000万ドル以上が投じられたという。Napo県では、パイプライン敷設工事に地元の労働者をもっと雇うように要求して住民が抗議行動を起こし、工事が数週間中断したこともあった。
2021年12月8日には、Coca川の浸食による損傷を防ぐために、再びSOTE、OCP、Shushufindi-Quito間のパイプラインが操業停止に追い込まれた。Lago Agrioにある原油貯蔵設備の貯蔵容量は、SOTEが150万バレル、OCPが120万バレル、合計で270万バレルとなっているが、これが満杯となってしまい、油田の生産を継続することができず、15の油田で操業が停止した。原油の供給が行われないためEsmeraldas製油所(精製能力:日量11万バレル)とLa Libertad製油所(同:日量4.5万バレル)も操業停止に追い込まれた。12月12日にはパイプラインの操業に関連するすべての契約について不可抗力が宣言された。原油生産量は12月19日には日量12.5万バレル、12月25日には日量3.6万バレルまで減少した。迂回パイプラインの建設により、SOTEは12月30日に、OCPは12月31日に再稼働となり、両パイプラインによる送油が通常に戻ったことから、2022年1月5日、政府は不可抗力宣言を解除することを決定し、翌6日にこれを発表した。原油生産量は1月6日には、不可抗力発動前の日量48.5万バレルの93%に相当する日量44.9万バレル(うち、Petroecuadorが77%にあたる日量34.6万バレル、民間企業が23%にあたる日量10.3万バレル)に回復した。原油輸出も再開された。製油所も1月18日にフル稼働に戻った。
ところが、1月28日夜、Napo県東部Piedra Finaで、雨で落下した岩石によりOCPパイプラインが破損、原油が漏洩した。Petroecuadorは通油を停止し、修復作業を実施、2月7日に通油が再開した。
その後も、5月にNapo県San Luis地区で河川侵食が進んだことから、PetroecuadorがSOTEおよびShushufindi-Quito間パイプラインのバイパスを2本、全長422メートルを建設することとなる等、パイプラインを巡る問題は継続している。
政府の方針に沿い生産増を目指すPetroecuador
Petroecuadorは23の鉱区で原油を生産しており、その生産量はエクアドル全体の約80%を占めている。Petroecuadorの主力油田は、Auca、Sacha、Shushufindi、ITT、Apaika、Edén等の油田で、中でも、Sacha油田とITT油田については、2021年後半にも生産性向上を目的とした油井の掘削が実施された。
2022年3月、PetroecuadorのÍtalo Cedeño CEOは、民間企業と提携し、コンソーシアムを設立、資本と技術の提供を受け、同社のアマゾンや沖合の油田を共同開発することにより、今後5年間で同社の生産量を倍増させ、日量40万バレルから2026年には日量80.4万バレルに引き上げる計画であることを明らかにした。そして、総投資額は約120億ドルで、野心的な目標ではあるが、民間投資を呼び込み、原油と天然ガスの生産量を徐々に増やしていくつもりだとした。さらに、民間企業の資本参加を促すための法的保障を提供するために、あらゆる国家機関の支援を得て法律と規範を整備していくことを目指していると語った。加えて、増産は国の義務であり、今実行しなければチャンスはないと語った。
具体的なプロジェクトとしては、Block43、31、16、Pungarayaku油田、Amistadガス田の評価と開発等が挙げられた。Block43、31、16については、4億ドルを投じて全長150キロメートルのパイプラインを建設し、相互に接続、メガブロック化する計画だという。Block43は日量5.7万バレル、Block31は日量4,000バレル、Block16は日量1.5万バレルを生産しているが、メガブロック化することで日量25万バレルの生産が可能になるという。
Petroecuadorは、2022年については、Ishpingo、Sacha等6油田で68坑を掘削、2022年末までに、生産量を現在の日量39.8万バレルから日量49.5万バレル(日量50.9万バレルとする報道もある)に28%増加させる計画であるとした。Petroecuadorは、この計画には、現在アマゾンの油田でフレアされている随伴ガス、日量1.1億立方フィート(石油換算、日量1.4万バレル)を生産量に組み込むことが含まれているとした。Ishpingo油田では、4月から14坑の掘削を開始、ITT鉱区の生産量、日量5.5万バレルを日量2.8万バレル増加させるという。また、Orellana県とSucumbíos県のOso-Yuralpa、Auca、Shushufindiの3油田で33坑を掘削、日量1.5万バレルの増産を見込んでいる。Sacha油田でも現在の生産量、日量6.8万バレルを年末までに日量8.3万バレルに引き上げるとしている。さらに、Block31のApaikaとNenke油田でも掘削を行い、日量3.9万バレルの増産を図る。Cedeño CEOによれば、2022年の増産には4億3,700万ドルが必要となるという。
また、Petroecuadorは、2年間に2億ドルを投じ、浸食によって被害を受けたSOTEとShushufindi-Quito間のパイプラインの代替ルートの建設に取り組んでいるとした。
さらに、同年3月末にPetroecuadorは、原油生産量倍増を目指す政府の計画の一環として、同社が保有するアマゾンの鉱区内にある1,000坑を超える閉鎖井の改修について入札を実施することを明らかにした。Petroecuadorはまず、各40坑を対象とするサービス契約5件を締結するとし、この最初の契約が対象とする坑井は、平均で日量200バレルを生産する可能性があるとした。しかし、実際には、各25坑を対象とするサービス契約4件について入札が行われた。推定投資額は8,000万ドルで、8か月間で日量1.5万バレルの増産が見込まれるという。5月中旬までに、国内外の70社が入札説明書をダウンロードした。
Petroecuadorは6月に、Guayaquil湾のAmistadガス田の開発パートナーを求める入札とEsmeraldas製油所の近代化を行うための入札を開始した。Amistadガス田については、発電や肥料製造用等のために日量2,400万立方フィートから日量1億立方フィートへの増産を目指す。Esmeraldas製油所に関しては、27億ドルを投じて製油所残渣を処理する高度転換ユニットを建設し、その立上げと操業を行う民間企業を募集する。国内消費向けにより高品質な石油製品供給を目指すという。
生産増の期待がかかるITT油田開発
ペルーと国境を接するBlock43に位置するIshipingo Tambococha Tiputini(ITT)油田は、1990年代初めに発見されたが、ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)から生物圏保存地域の指定を受けているYasuní国立公園内にあるため、環境破壊への懸念等の理由で長らく開発が行われなかった。Correa元大統領の時代には、エクアドルがITT油田の開発を中止する代わりに、同油田を開発した場合に得られる見込みの収入72億ドルの半分にあたる総額36億ドルをエクアドルに寄付するよう国際社会に求めたが、寄付金は集まらず、2013年8月15日、エクアドル政府は同油田の開発を決定した。
同油田の開発は、環境政策を守り、影響地域の共同体に配慮しつつ、憲法と現行規範に則って進められることになった。まず、Sinopecとサービス契約が締結され、これに基づきTiputini油田で掘削が開始され、2016年9月7日に同油田の生産が始まった。続いて、2017年11月より、CNPCの系列企業CCDC(Chuanqing Drilling Engineering Company Limited)とのサービス契約に基づき、Tambococha油田の開発が始まり、2018年1月に同油田の生産開始が報じられた。生産量は両油田併せて日量6万バレル弱となっている。
Ishpingo油田にはITT油田の埋蔵量4億5,800万バレルのうち4億バレルが賦存するとされ、最も生産ポテンシャルが高いと見られているが、環境ライセンスの交付が遅れ、2019年に予定されていた生産開始が遅延した。Petroamazonasは2020年中に生産を開始しようと、同年2月よりアクセス道やパイプライン他の施設の建設を始めた。しかし、コロナウイルス感染拡大や5,000万ドルの資金調達ができなかったことから開発が中断された。Ishpingo油田では10か所より掘削、生産を行うことが計画されていたが、8か所はYasuní国立公園の緩衝地帯内にあったため、2か所からそれぞれ20坑、計40坑の掘削が行われることとなった。
CCDCとサービス契約を締結したPetroecuadorはIshpingo油田Ishpingo 5号井の掘削を開始し、2022年4月13日に同井の生産を開始した。そして、これら40坑からはそれぞれ日量2,000バレルの生産が期待されており、2022年に掘削予定の14坑により日量2.8万バレルが生産される可能性があるとした。生産開始後1週間でIshpingo 5号井の生産量は日量3,000バレル以上となった。しかし、その後、随伴水の割合が生産開始時の1%から24%に高まり、生産は期待されたようには増加していない。Petroecuadorは生産量を日量2,000バレルに維持し、これ以上随伴水を増やさないようにしており、それによって原油生産の減少を回避しようとしているという。Block43の油田では随伴水の割合が89%で、残りが重質油というのが平均であるという。5月にはIshpingo油田2番目の坑井Ishpingo 6号井が生産を開始し、生産量は日量2,000バレルとなっている。なお、Ishpingo油田で生産される原油はAPI比重14.5度の重質油である。
PetroecuadorのCedeño CEOは、2022年1月に、Ishpingo油田では日量15万バレルの生産が可能であるが、100坑の掘削が必要となると語った。しかし、これに対して憲法裁判所は、さらに100坑を掘削することになれば、それはYasuní国立公園の緩衝地帯での掘削となるが、緩衝地帯での掘削、生産は禁じられており、認められないとの判決を下した。一方、Petroecuadorが進めている40坑の掘削、生産は緩衝地帯の外側で行われており、環境ライセンスも所持しており、活動に影響はないという。
なお、Petroecuadorは、同鉱区の開発により影響を受けるKawymenoのWaorani共同体と、法規と環境ライセンスに従い、対話や共同作業などを1年かけて行った結果、2021年3月に、Ishpingo油田の開発と生産のための社会的補償協定を結んだ。協定の有効期間は6年間で、Petroecuadorは、42家族および居住者162人のインフラ、保健、教育、公共サービス、交通手段などにおける生活の質向上に資金を投じることになった。
2022年6月、先住民の抗議行動拡大
2022年6月13日、燃料価格高騰に対する不満から、CONAIEがLasso大統領の政策に反対する抗議行動を開始した。抗議グループには、CONFENIAE等の先住民組織や社会活動グループ、市民団体等が加わり、2021年10月の暴動に際して、Lasso政権が燃料価格を大統領就任前よりも高い水準で凍結し、先住民等との交渉に応じることで、抗議行動を終結させたが、それ以降、彼らの訴えに耳を傾けていないと訴えた。そして、燃料価格の現行水準以下での凍結に加え、探鉱・開発を拡大する計画の中止、小規模農家の銀行への返済期限の延長等を政府に求めた。抗議行動が激化した17日以降、Chimborazo、Tungurahua、Cotopaxi、Pichincha、Pastaza、Imbaburaの6県を対象に、非常事態宣言が発令された。
油田の操業に関しても、油田に対する直接的な破壊行為に加え、パイプラインや油田に電力を供給する複数の発電所等インフラへの破壊、設備の盗難や妨害行為、道路封鎖等が行われ、1,000坑以上の油井が閉鎖されることとなり、原油生産量はほぼ半減した。特に、Sacha、Lago Agrio、Auca、Libertador、Coca Payamino-Yuralpa、Cuyabeno、Shushufindi、Indianの各油田は抗議グループの絶え間ない攻撃を受け続け、影響が大きいとされた。6月18日にはPetroecuadorが探鉱・生産、輸送、精製、輸出に関して、19日には政府が炭化水素の探鉱・開発事業者および同国の炭化水素産業の全段階に対して、不可抗力を宣言した。PetroecuadorのCedeño CEOは、不可抗力宣言は生産活動停止を意味するものではなく、販売契約に基づいた出荷を履行できない場合のペナルティを回避するための措置であるとした。Petroecuadorは、治安部隊による警護を受けながら、タンクローリーを使って燃料供給を実施したが、警護により攻撃を避けることができたとしても、道路が封鎖されていて先に進めないことも少なくなく、複数の県において燃料の欠乏が深刻化した。また、20~25日には、Esmeraldas製油所拡張、閉鎖油井の改修、アマゾンでフレアされている随伴ガス採取のためにPetroecuadorが開始した入札プロセスに関心を示したカナダの企業家グループがエクアドル訪問を予定していたが、これをキャンセルした。
6月25日および29日に、政府は非常事態宣言を解除した。30日には、政府とCONAIEが和平協定を締結し、大統領令95号の撤廃を受け入れ、抗議グループは抗議行動を終了した。和平協定では、水保護区域、無形文化財地域、先住民先祖伝来のテリトリー、考古学的重要地域においては鉱業および原油の探鉱・開発を実施しないことが規定された。ただし、大統領は、議会が事前にその活動を国益に適うと宣言すれば、憲法で定められた例外的な権限を行使して、この禁止を回避する権利を保持しているとされた。しかし、Lasso大統領はこの権限を行使しないことを明らかにした。また、この協定の影響が及ぶのは将来のプロジェクトに対してのみで、既存のプロジェクトは対象外とされる。大統領はまた、エネルギー・鉱山省に対して、非再生可能天然資源の生産を伴う新たなプロジェクトを提示したり、承認したりしないよう指示した。さらに大統領は、環境・エネルギー・鉱山省と大統領府法務局に対し、事前協議法の草案と環境協議の適用に関する環境規制の改正案を作成するよう命じた。加えて、Lasso大統領は、ガソリンとディーゼルの価格を1ガロンあたり10セント引き下げると発表した。
抗議行動の終結を受け、Petroecuadorの原油生産量は、7月1日には日量20.9万バレルに、7月3日には抗議行動以前の生産量、日量40万バレルの90%にあたる日量36.2万バレルまで回復した。当初は8日間で90%まで生産量を増加させる計画だったが、3日間でこれを達成した。
なお、大統領令95号は撤廃されたが、大統領令95号の規定の多くは2021年11月に承認された経済開発法に、生産分与契約についても既存の制度に組み込まれているという。PetroecuadorのCedeño CEOは、大統領令95号撤廃は2025年までに生産量を倍増させるための投資の妨げにはならないが、目標の達成はより困難になるだろうとした。
CONAIEは引き続き石油生産地域拡大への反対を示しており、エクアドルでは今後、Block43、31、16やPungarayaku油田、Amistadガス田等成熟油田での生産を引き上げることに力が注がれるとの見方もある。
7月5日には、Sucumbíos県Cofán-Dureno共同体が、大統領令95号の撤廃により先住民テリトリーでの石油採掘はできないとし、Petroecuadorの機材持ち込みと人員の立ち入りを拒んだ。
欧州の銀行が相次いでアマゾンで生産される原油の取引に対する融資を停止
BNP Paribasは2020年12月、気候、生物多様性、先住民族にとって敏感な地域であるエクアドルのEsmeraldas地域で生産される原油の海上輸出に関する金融取引を除外するとした。2021年1月には、Credit SuisseとING Groep NVが、気候変動とアマゾンの熱帯雨林および先住民族への懸念を理由に、アマゾンで生産される原油の輸出に関する新規取引を除外すると発表した。さらに、同年4月に、Natixisが2022年4月までにエクアドル産原油取引に対する融資を停止する意向を示した。Natixisは、2020年半ば以降、このような取引への関与を減らしてきたが、2021年から2022年初頭にかけて、エクアドル産原油への融資をさらに減らすつもりだと強調した。
エクアドルのアマゾンまたはオリエンテ地域の先住民の地域組織、CONFENIAEを拠点とする環境保護団体Stand.earthとAmazon Watchは、2020年8月、エクアドルから米国の製油所まで1億5,500万バレル以上の原油を供給するにあたり、欧州の銀行が100億ドルの融資を行ったことを明らかにした。Stand.earthとAmazon Watchは、評価対象とした19の銀行のうち、特に上位6行がこれらの融資の85%を占めており、石油流出やアマゾンの熱帯雨林破壊等の共犯者だと非難し、アマゾン川上流の生態系や先住民のコミュニティに脅威を与えていると指摘した。BNP Paribas、Credit Suisse、ING Groep NV、Natixisは、Stand.earthとAmazon Watchが指摘した6行に含まれており、これを受けて、原油取引への融資を停止することとしたと見られている。
Petroecuadorは、欧州銀行が相次いでアマゾンで生産される原油の取引に対する融資を停止したことに対し、同社はエクアドル国内での探鉱、生産、輸送、精製、販売、国際的な炭化水素事業を、エクアドルの法律、安全、健康、環境に厳密に準拠していると発表した。
Lasso大統領が原油生産量を倍増させる計画を実現するには、発電において再生可能エネルギーが大きな割合を占めていることをアピールしたり、随伴ガスのフレア停止に期限を設けたり、石油流出の際の汚染処理に対する計画を策定したりする等エクアドルが気候変動に対して取った行動を広く知らしめることによって、Amazon Watch等によるキャンペーンに対抗していく必要があろう。
中国、タイとの“融資買油(Oil-backed loan)”等について再交渉へ
エクアドルはCorrea政権時代に、対外債務の支払いを拒み、その結果、国際金融市場から締め出されたことから、資金を調達するため、中国やタイと原油での返済を約束した融資契約等を締結するようになった。これらの契約は、国際市場価格よりも低い石油価格に基づくうえに、高金利[3]、短い返済期間等、エクアドル側に不利な条件となっていた。さらに、正確な金額と条件があまりにも不透明なために、担当閣僚でさえも全条件を把握しているわけではないとされている。
これらの契約を締結したことで、エクアドルは輸出原油のほぼ全量を中国およびタイに出荷することとなったが、2020年11月にはPetroChinaと4件、Sinopecの子会社Unipecと2件、PTTの子会社Petrotailandiaと2件の合計8件であった“融資買油(Oil-backed loan)”等が、期限を迎える等により、2021年には5件と減少し、また、契約を履行していくにつれて自由に輸出できる量が漸次増加していくこととなった。しかし、エクアドルは2024年まで原油による融資の返済を継続しなければならず、その量は2021年4月時点で中国PetroChinaとSinopec傘下のUnipecに1億6,800万バレル、Petrotailandiaに6,820万バレルとされた。また、2020年には原油価格が下落したことで、より多くの原油を中国とタイに送ることになり、純粋な輸出が減少したという。これらの契約のために、石油収入のわずかな部分しか国庫に入らず、エクアドルの財政は長年にわたって圧迫され続けた。
2022年に入りエクアドルは、これらの契約の支払い期限を延長する等、条件を改善し、契約をより透明性のあるものにすることを求め、中国およびタイと再交渉を行っている。
中国とは、PetroChinaと2件、Unipecと1件の計3件の契約が残っており、3件とも満期は2024年で、2022年から2024年に合計1億2,140万バレルを引き渡さなければならない。中国は話し合いに応じる姿勢を見せ、契約期間の延長、原油価格計算方法の変更等について、交渉が行われている。
一方、Petrotailandiaとは2021年4月にも契約の再交渉を行い、2022年満了の予定だった原油による融資の返済を2024年まで延長することで合意し、正式に契約を修正している。PetroecuadorはPTTと、2022年3月以降、引き渡し期間の延長、価格計算方法の変更、輸送条件(SuezmaxやVLCCのような大型船での混載を認めること等)について協議を行っているという。
エクアドル初の小規模LNG受け入れプロジェクト計画
Oil & Gas Journalによると、エクアドルの2021年初の天然ガス確認埋蔵量は3,850億立方フィート、2020年の天然ガス生産量は120億立方フィートとなっている。石油に比べ、天然ガスには十分な投資が行われてきておらず、生産、輸送インフラも不十分である。天然ガス生産の中心となっているGuayaquil湾のAmistadガス田はすでに衰退期にあり、十分な掘削も行われていないため、国内で生産される天然ガスでは需要を満たすことができなくなることが懸念され、LNG輸入が検討されるようになった。
2021年4月、米国のSycarは、Jambeli LNGプロジェクトの環境影響評価について、環境・水資源省より最終承認を得た。Jambeli LNGプロジェクトは、浮体式貯蔵・再ガス化装置(FSRU、再ガス化能力年間40万トン)を建造し、これをEl Oro州Bajo Alto港の水深11メートルのJambeli運河に設置し、LNGを輸入するという計画だ。2024年の稼働開始が計画されている。
再ガス化されたガスは、Bajo Altoの発電所、Machala TPP(発電容量130MW)等、エクアドル南部の火力発電所や産業施設等に供給される計画だ。また、地元の運送会社にLNGを供給できるよう、港にトラック用のLNG充填ステーションを建設する計画もあるという。さらに、Sycarは、より大量のガスを地元市場に供給するために、ターミナルの近くに陸上貯蔵基地を建設する可能性もあるとしている。
2021年12月末には、Sycarが米国のAESとTotalEnergiesの合弁会社Colon LNG Marketingと、Jambeli LNGプロジェクト向けのLNGの供給契約を締結した。AESがパナマColónに保有するCosta Norte LNGターミナルは、再ガス化能力が年間150万トンで、その約半分を敷地内の火力発電所(発電能力381MW)に供給し、残りを一般市場で販売することを計画していたが、この一部がJambeli LNGプロジェクトに供給されることになるという。
なお、Sycarは2022年1月と2月に、Guayaquil市のDeep Waters Smart PortでISOタンクを用いてLNGを輸入している。
終わりに
2022年1月、カナダのFrontera EnergyとパートナーのGeoParkが、Perico blockで探鉱井Jandaya-1号井を掘削長3,345メートルまで掘削し、23.8メートルの炭化水素を含む貯留層を確認、石油換算で日量925バレルの出油に成功した。今後、追加的な評価作業が実施されることになるが、6年ぶりの原油発見にエクアドルは沸いた。エクアドルでは十分な探鉱は行われない期間が続いたが、このように、民間企業の技術と資金が導入されれば、さらに原油生産量を増加させ、当初より、実現可能性を疑う声が出ていたLasso大統領の計画実現に近づく可能性もあるというのだ。Lasso大統領も、自らが推し進めてきた民間企業による探鉱の結果の油田発見であり、「エクアドルは原油生産量を倍増させるという目標に向かって前進している」と述べた。
しかし、原油生産量を倍増させるというLasso大統領の目標の達成には、最大で70億ドルの投資が必要と試算されている。Correa政権時代に一方的に諸外国との二国間投資保護協定を破棄し、生産分与契約をサービス契約に変更した他、投資紛争解決国際センターからも脱退したことから、エクアドルに対する信頼は大きく揺らぎ、外国企業はエクアドルの法的安定性の欠如や政策予見性の低さを印象付けられてしまっている。さらに、ここまで見てきたように、脆弱なパイプラインや過激化、長期化する先住民等による抗議行動等、エクアドルの探鉱・開発は多くの問題を抱えている。エネルギートランジションへの取り組みを強めている石油会社が、エクアドルでの探鉱・開発にどこまで関心を示すのだろうか。今後の動向を注目していきたい。
[1] SOTE(Sistema Oleducto Trans–Ecuatoriano)パイプラインは、1972年にLago AgrioとEsmeraldas製油所間に敷設された全長503キロメートルのパイプライン。石油輸送能力は日量36万バレルで、エクアドルの原油生産量の70%を輸送している。
[2] OCPパイプラインはオリエンテ地域の産油地帯と太平洋岸エスメラルダス近郊の積出港Balaoを結ぶ、全長485キロメートルのパイプライン。SOTEにほぼ並行する形で、2001年に建設を開始し、2003年10月に完成した。SOTEがAPI25度の石油を輸送するのに対し、API18~20度の石油を輸送することから、スペイン語で重質原油パイプラインを意味するOleoducto de Crudos Pesadosの頭文字を取ってOCPパイプラインと呼ばれている。輸送能力は日量45万バレルである。東部で石油を生産するAndes Petroleum、Repsol等からなるOCPエクアドルによって運営されている。Occidental、Perenco、Petrobras等は、エクアドルの上流事業から撤退したものの、依然として同パイプラインのパートナーとなっている。
[3] これらの契約の金利は6%から7.25%で、Fernando Santos元エネルギー大臣によると、同様の契約であれば金利は2%から3%であるという。
以上
(この報告は2022年8月15日時点のものです)