ページ番号1009449 更新日 令和4年8月31日

実際の亀裂を見たい その一言から始まったプロジェクトとその歩み

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レポートID 1009449
作成日 2022-08-31 00:00:00 +0900
更新日 2022-08-31 10:00:03 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 技術非在来型
著者
著者直接入力 黒澤 功 株式会社地球科学総合研究所 加藤 政史
年度
Vol
No
ページ数 7
抽出データ
地域1 グローバル
国1
地域2 アジア
国2 日本
地域3
国3
地域4
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地域5
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地域6
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地域7
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地域8
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地域9
国9
地域10
国10
国・地域 グローバルアジア,日本
2022/08/31 黒澤 功 株式会社地球科学総合研究所 加藤 政史
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概要

JOGMECは、北米シェールガス・オイル開発プロジェクトに参画する本邦企業との共同研究から、シェールガス・オイル開発の効率化に必要な技術として、坑井デザイン・生産操業の最適化の研究を実施しています。その中でも特に水圧破砕亀裂の伸展メカニズムの解明を目的に、亀裂の可視化を最重要項目の一つとして取り組んでいます。

本記事では、2013年度から実施している亀裂の可視化技術に焦点を当て、その歩みについて紹介します。

 

1. シェール開発における課題

シェール開発において、水平坑井の掘削や水圧破砕等の仕上げ作業には、莫大な費用がかかりますが、実際に回収できるシェールガスは地下に埋まっている量に対して約20-25%、シェールオイルについては10%以下となり、かなり取り残しがあるとされています。もし、亀裂の伸び方や複雑さを予測し、適切に開発を進めることが可能になれば、坑井や地域的な取り残し分の回収率の増大により、経済的なインパクトは計り知れないものになると考えられます。そんなことが現実に可能なのでしょうか。その問題解決の一つとして、我々が取り組んでいることが亀裂を可視化することです。

 

2. 既存技術の課題

実際のシェールガス・オイルの開発の現場では、地下1,500-3,000メートルに眠るシェールオイル・ガスを人工的に高水圧等で岩盤に亀裂を生成させることで回収しています。どのような形の亀裂ができているかを知る方法として、人工亀裂を生成した際に発生する微小地震(マグニチュード約-3から-1)が用いられており、微小地震の発生場所を特定することで3次元(幅・長さ・高さ)的におおよその亀裂の形が推定されています。

亀裂が生成されている範囲の体積はStimulated Reservoir Volume(SRV)と呼ばれ、生産量の初期予測に用いられますが、微小地震から想定された範囲は実際の生産量から推定される値と合わないという報告もあります。亀裂の形や体積を推定することは可能になったのですが、果たしてその推定は正しいのかという疑問がここで湧いてきます。もし地下の亀裂を可視化し、微小地震から推定されたSRVと比較できたならば、我々が感じている疑問の1つは解決できます。ただ、どうしたら亀裂を可視化できるかが最大の問題となります。

 

3. 室内水圧破砕実験

2014年度よりJOGMECは亀裂可視化プロジェクトを京都大学と進めてきました[1]-[7]。第一歩として、現場のスケール感(キロメートル規模)は大きすぎるため、小さいサイズ(センチメートル規模)までスケールダウンし、室内実験という制御された環境下で研究を実施することになりました。次に、可視化するための方法として、生成された亀裂内に蛍光塗料入りの熱硬化性樹脂を注入し、紫外線照射をする方法を試すことにしました(蛍光エポキシ樹脂含浸法)[8]。実験内容としては、岩石試料(縦6.5 センチメートル×横6.5 センチメートル×高さ13.0 センチメートル)と熱硬化性樹脂を使った室内実験(一軸載荷条件)を行い、亀裂の可視化および破砕に伴い発生する微小地震(Acoustic Emission: AE)を使った亀裂のモニタリングを実施しました(図1)。実験当初は、水を使用して破砕した後に熱硬化性樹脂の入った容器に岩石試料を漬けていました。生成された亀裂の中に熱硬化性樹脂を入れることには成功しましたが、破砕した後で樹脂に漬けることによって試料の粒子内に樹脂が混入してしまい、薄片を紫外線照射して亀裂を観察すると亀裂以外も光ってしまい見にくいという問題点が浮き彫りになりました。試行錯誤の結果、破砕流体に熱硬化性樹脂を使うことで粒子内への樹脂の混入を防ぐことに成功しました(図2)。

また、直接観察した亀裂とAEの震源位置を比較したところ、ずれが生じることが判明しました。こちらも試行錯誤した結果、一般的な手法だけでは震源位置決定の精度において不足があるためにDouble-Difference法(近接する地震ペアの同一観測点における観測走時差と、計算走時差との差(double difference)を最小にするように震源を推定する手法)やMatched Filter Analysis(震源が近い地震の波形が類似することを利⽤して、ノイズの中に埋もれた地震を検出する⼿法)などの高度な解析を実施することで可視化亀裂とAEの震源位置の誤差を小さくすることに成功しました[9]。

更に、モーメント・テンソルインバージョン(地震の震源メカニズムから、その地震が引き起こした応力場を推定する手法)による破砕メカニズムの解明を試みてきました。

現在までに、複数の岩石(黒髪島花崗岩、井内頁岩、イーグルフォード頁岩、モントニー頁岩等)で実験を実施してきており、亀裂伸展が岩石性状の違いに起因している可能性を示唆する結果を得ております。

 

4. 露頭水圧破砕実験

室内水圧破砕実験での亀裂の可視化については成功しましたが、問題点も見えてきました。室内実験用に岩石試料をスケールダウン(センチメートル規模)したことから、一瞬で亀裂が岩石試料を突き抜けてしまうために、亀裂伸展の様子が見えないことが判明しました。ここで、亀裂伸展を理解するために実験試料のサイズを大きいものに変える必要がでてきました。そこで現場スケールと実験室スケールの差を埋めるべく、より現場の規模に近づけた露頭スケール(地表付近での小規模な水圧破砕)で可視化実験を試みることにしました。

2018年度、国内の代表的なシェール層である女川層の模式地とされる秋田県男鹿半島鵜ノ崎の海岸付近(図3)に、水圧破砕坑およびAE観測坑を掘削して、予備試験を実施することにしました。

実験室スケールから一段階大きなスケールでの水圧破砕試験と亀裂伸展のモニタリングを目指して、秋田県鵜ノ崎海岸で女川層を対象に水圧破砕試験の予備試験を実施しました(図4)。その結果、女川層に付随的なコンクリーション部分では水圧破砕とAEの検知には成功しましたが、本来対象としていた女川層珪質泥岩部では水圧破砕による亀裂の生成ができませんでした。理由としては、今回試験した場所の女川層が予想よりも浸透率が高かったことと、コア観察・ボアホールカメラでは捉え切れなかった天然亀裂を通じて圧入した水が漏れてしまったことが原因と考えられました。また、仮に女川層で水圧破砕が成功してAEが発生したとしても、強い減衰のため観測坑のAEセンサーアレイで観測出来ない、あるいは観測出来たとしても1つか2つのセンサーのみでAE震源決定には不十分であることが分かりました。

2019年度には前年度の課題であった水圧破砕で亀裂が生成できなかった女川層珪質泥岩部の複数区間に対し、破砕区間を前年度(40センチメートル)より短く(24センチメートル)にすることで天然亀裂が存在する箇所を避けて水圧破砕をするだけではなく、坑内圧力を前年度より上げるために2つの送水ポンプ(一定の送水量を送るシリンジポンプと高流量ポンプ)を使用しました。更に圧入流体についても、3つの異なるタイプ((1)シリンジポンプと水(2)高流量ポンプと水(3)シリンジポンプと粘性流体)を試みました。結果として4つの区間で水圧破砕に成功しました。

一方、事前予測で天然亀裂等が存在しないと考えていた均質な岩石の区間(健岩区間)で、水圧破砕による亀裂の生成が確認できなかった区間があり、改めて地層条件が複雑な女川層においては、事前に水圧破砕試験に最適な区間を推定することが難しい事を確認しました。

 

5. 数値シミュレーション

実験室スケール、露頭スケールの実験までは亀裂が生成された岩石を直接確認することが可能ですが、直接亀裂を確認できない実際の現場で亀裂伸展を予測する際は、数値シミュレーションを用いる必要があります。JOGMECは海外研究機関に亀裂伸展シミュレーションを委託し、Bourdin et al. [11]により提案されたフェーズフィールド法に基づく新しいシミュレータの開発に取り組んでいます[12]。フェーズフィールド法は、弾性体のエネルギー釣り合い式について有限要素法を用いて解く中で、岩石と亀裂ならびに遷移領域を表現するパラメータ(フェーズフィールド変数)を導入することで、亀裂伸展に伴う計算メッシュの再計算を必要とせずに複雑な亀裂伸展を表現することができます。

実験室スケールで可視化された亀裂画像によると、亀裂は必ずしも鉱物粒子の境界を通って伸展するわけではなく、粒子を貫通して直進するケースも見られます。もし、亀裂が必ず粒子境界を伸展するのであれば、シェールオイル・ガス層における亀裂の広がりは、岩石の粒子配置や分布から推定することができるかもしれません。しかしながら、粒子を貫通して直進するケースも確認されるため、亀裂伸展は非常に複雑なメカニズムによって成り立っていると考えられます。JOGMECは、新しいシミュレーション技術の開発によって、この複雑なメカニズムの解明に繋がる手がかりが得られつつあります(図5)。

一方で、実験室スケールで観察される粒子境界は、より大きなスケールの亀裂に与える影響が小さい可能性もあるため、実際の現場スケールの亀裂をシミュレーションするためには更なる研究が必要になります。今後も、現場における亀裂伸展の最適化技術確立を目標に、各実験とシミュレーション技術開発に取り組んで行きます。

 

6. まとめと今後の計画

実際の亀裂を見たいという目標から、JOGMECは2013年度より室内水圧破砕実験を開始し、様々な岩種(黒髪島花崗岩、井内頁岩、イーグルフォード頁岩、モントニー頁岩等)にて直接的手法(可視化)と間接的手法(AE解析)の比較実験を行ってきました。この研究によって、可視化の実験手法を確立し、AE解析の精度も飛躍的に向上させることに成功しました。

また、2018-2019年度には、秋田の女川層での露頭水圧破砕実験を実施しました。2018年度は一部区間で水圧破砕とAEのモニタリングに成功しましたが、本来対象としていた女川層珪質泥岩部では成功しませんでした。その為、2019年度には破砕区間を前年度の約半分にすることで天然亀裂が存在する箇所を避けるだけではなく、破砕箇所を増やすことで成功率を向上させました。これにより、露頭スケールでの水圧破砕実験には成功しましたが、肝心の可視化については試験場所が国定公園内であり、室内実験で使用した可視化のための樹脂を圧入することは難しいことが判明したため、断念しました。

更に、2020年度から亀裂伸展を数値シミュレーションによって予測するために、新たに亀裂の伸展度合を表現するパラメータを追加し計算メッシュの修正を必要としないシミュレータ開発を実施しています。今後は樹脂を圧入できる露頭もしくは鉱山の坑道等にて破砕実験を実施すべく、候補地の選定を実施しております。

 

謝辞

秋田県にて実施した露頭水圧破砕実験においては、同県庁および同県水産振興センター並びに地元の皆様のご理解とご協力をいただきました。ここに感謝を申し上げます。

 

図1 実験設備(左)と実験結果の一例(右)
図1 実験設備(左)と実験結果の一例(右)
(右図:青色の領域:破砕が生じて蛍光塗料が侵入したエリア、黄色の点:AE発生箇所)岩種の違いより蛍光塗料の侵入エリアに明白な違いが見られる。花崗岩は染み出すように広範囲に見えるが井内頁岩は一本の線のように見える[3]。
図2 可視化された亀裂(イーグルフォード頁岩)
図2 可視化された亀裂(イーグルフォード頁岩) (平成29年度委託研究[4]の成果の一部)
図3 予備実験実施場所(秋田県男鹿半島鵜ノ崎海岸) 
図3 予備実験実施場所(秋田県男鹿半島鵜ノ崎海岸) (出所 JOGMEC)
図4 予備実験概念図(左)[10]、水圧破砕坑と観測坑の位置関係(右)[10]で撮影した写真に加筆 
図4 予備実験概念図(左)[10]、水圧破砕坑と観測坑の位置関係(右)[10]で撮影した写真に加筆
図5 (a)可視化された亀裂の一例[12]、(b)接着力の弱い粒子であっても、破砕坑(Wellbore)の近傍であれば亀裂は粒子を貫通して直進するというシミュレーション結果、(c)接着力が強い粒子であっても、破砕坑からある程度離れた場所では、亀裂は粒子の境界に沿って曲がるというシミュレーション結果(令和元年度委託研究[12]の成果の一部) 
図5 (a)可視化された亀裂の一例[12]、(b)接着力の弱い粒子であっても、破砕坑(Wellbore)の近傍であれば亀裂は粒子を貫通して直進するというシミュレーション結果、(c)接着力が強い粒子であっても、破砕坑からある程度離れた場所では、亀裂は粒子の境界に沿って曲がるというシミュレーション結果(令和元年度委託研究[12]の成果の一部)

参考文献

[1] 長野優羽, 赤井崇嗣, 2015: 平成26年度シェールガス・オイルに関する研究委託事業, 独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構平成26年度石油開発技術本部年報, p. 125-128.

[2] 赤井崇嗣, 黒澤功, 2016: 平成27年度シェールガス・オイルに関する研究委託事業:頁岩内における水圧破砕亀裂可視化のための研究, 独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構平成27年度石油開発技術本部年報, p. 93-94.

[3] 赤井崇嗣, 黒澤功, 田中浩之, 2017: 水圧破砕の可視化実験, 独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構平成29年度石油開発技術本部年報, p. 41-42.

[4] 田中浩之, 有馬雄太郎,北村重浩, 兵藤大祐, 2018: 水圧破砕の可視化研究, 独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構平成29年度石油開発技術本部年報, p. 65-67.

[5] 有馬雄太郎, 伊藤義治, 田中浩之, 北村重浩, 兵藤大祐, 2019: 水圧破砕の可視化実験とAE観測, 独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構平成30年度石油開発技術本部年報, p. 87-90.

[6] 有馬雄太郎, 伊藤義治, 下田直之, 2020: 水圧破砕の可視化実験とAE観測, 独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構令和元年度石油開発技術本部年報, p. 47-48.

[7] 有馬雄太郎, 下田直之, 黒澤功, 竹内傳, 伊藤義治, 2021: モントニー露頭サンプル等を用いた水圧破砕の可視化実験とAE観測, 独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構令和2年度石油開発技術本部年報, p. 75-77.

[8] Chen, Y., Naoi, M., Tomonaga, Y., Akai, T., Tanaka, H., Takagi, S., and Ishida, T., 2018: Method for visualizing fractures induced by laboratory-based hydraulic fracturing and its application to shale samples, Energies, 11, p. 1976, doi:10.3390/en11081976.

[9] Naoi, M., Chen, Y., Nishihara, K., Yamamoto, K., Yano, S., Watanabe, S., Morishige, Y., Kawakata, H., Akai, T., Kurosawa, I., Ishida, T., 2018: Monitoring hydraulic-induced fracture in the laboratory using acoustic emission and the fluorescent method, Int. J. Rock Mech. Mining Sci., 104, p. 53-63, doi: 10.1016/j.ijrmms.2018.02.015.

[10] 有馬雄太郎, 高木是, 伊藤義治, 田中浩之, 角野弘明, 北村重浩, 兵藤大祐, 2019: 鵜ノ崎海岸女川層での水圧破砕およびAE観測(小規模水圧破砕現場試験を目指して), 独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構令和2年度石油開発技術本部年報, p. 83-86.

[11] Bourdin, B., Francfort, G., and Marigo, J-J., 2000: Numerical experiments in revisited brittle fracture, J. Mech. Phys. Solid, 48. 797-826, doi: 10.1016/S0022-5096(99)0028-9.

[12] 加藤政史, 田村浩平, 有馬雄太郎, 伊藤義治, 2021: 水圧破砕亀裂伸展シミュレーションの新たな試み, 独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構令和2年度石油開発技術本部年報, p. 78-80.

 

以上

(この報告は2022年8月31日時点のものです)

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