ページ番号1009457 更新日 令和4年9月6日

原油市場他:OPEC及び一部非OPEC(OPECプラス)産油国が2022年10月の原油生産目標を前月比で日量10万バレル削減する旨決定(速報)

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レポートID 1009457
作成日 2022-09-06 00:00:00 +0900
更新日 2022-09-06 10:16:47 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 市場
著者 野神 隆之
著者直接入力
年度 2022
Vol
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ページ数 16
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地域1 グローバル
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国・地域 グローバル
2022/09/06 野神 隆之
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概要

  1. OPEC及び一部非OPEC(OPECプラス)産油国は2022年9月5日に閣僚級会合を開催し、2022年10月の原油生産目標を前月比で日量10万バレル削減する旨決定した。
  2. 次回OPECプラス産油国閣僚級会合は10月5日に開催される予定である。
  3. 8月3日に開催された前回のOPECプラス産油国閣僚級会合以降、石油市場では、米国ガソリン需要低迷を巡る懸念の増大が、原油価格に下方圧力を加えた。
  4. また、中国での新型コロナウイルス感染抑制のための一部都市における封鎖措置等の実施及び中国経済が減速しつつあることを示唆する指標類の発表も、原油価格を押し下げた。
  5. さらに、物価上昇を抑制するための政策金利引き上げを支持する旨の欧米金融当局者等の発言により、この先の世界経済減速に伴う石油需要の伸びの鈍化懸念が市場で増大したことでも、原油価格は下振れした。
  6. このようなことから、前回閣僚級会合直前の8月2日には1バレル当たり94.42ドルの終値であった原油価格(WTI)は今次閣僚級会合直前の9月2日には同86.87ドルの終値と下落したうえ、8月16日には同86.53ドルの終値と、ロシアによるウクライナへの事実上の侵攻開始(2月24日)以前の1月25日以来の低水準に到達する場面も見られた他、特に8月29日から9月1日にかけては、1バレル当たり10.40ドル下落するなど、原油価格の下げ足が速まる兆候が見られた。
  7. 他方、米国では、9月3~5日の連休を以て夏場のドライブシーズンに伴うガソリン需要期が終了することもあり、全米平均ガソリン小売価格は6月13日に到達した1ガロン当たり5.107ドルの史上最高水準から折り返し、8月29日には同3.938ドルと、依然として低水準ではないものの、沈静化しつつあったことから、ガソリン小売価格引き下げのための米国のサウジアラビア等OPECプラス産油国に対する原油価格引き下げを巡る働きかけも相対的に弱まるものと見られた。
  8. このようなことから、サウジアラビアを含むOPECプラス産油国は、さらなる原油価格の下落による原油収入減少を防止するために先制的に行動することを優先させ、市場での石油需給緩和感の抑制を図るべく、10月の原油生産量を前月比で減少させる旨決定したものと考えられる。
  9. 今次閣僚級会合において決定した、OPECプラス産油国による減産措置強化は、規模としては日量10万バレルと限定的であったものの、必要に応じて機動的にOPECプラス産油国閣僚級会合開催をOPECプラス産油各国に呼びかけられるようOPECプラス議長(サウジアラビアのアブドルアジズ エネルギー相)に要請したことから、原油価格下落抑制に対する毅然とした姿勢をOPECプラス産油国が市場に対して示した格好となったこともあり、この先の石油需給引き締まり感を市場が意識したことが、原油相場に上方圧力を加えた結果、既にOPECプラス産油国閣僚級会合開催前の段階において前週末終値比で上昇していた原油価格は、当該会合後さらに上昇幅を拡大し、前週末終値比で1バレル当たり3.52ドル上昇の同90.39ドルに到達する場面も見られた。

(OPEC、IEA、EIA他)

 

1. 協議内容等

 (1) 2022年9月5日にOPEC及び一部非OPEC(OPECプラス)産油国は閣僚級会合を開催し、2022年10月のOPECプラス産油国の原油生産量を前月比で日量10万バレル削減する旨決定した(表1及び参考1(巻末)参照)。

表1 OPECプラス産油国の減産幅

 (2) 従って、OPECプラス産油国の原油生産目標は2022年8月時点と同水準に戻ることになる。

 (3) また、同会合では、OPECプラス議長(サウジアラビアのアブドルアジズ エネルギー相)に対し、必要な時には(次回のOPECプラス閣僚級会合開催予定日を待たずして)OPECプラス産油国閣僚級会合開催を呼びかける旨考慮するよう要請した。

 (4) さらに、生産目標の完全遵守に固執することが極めて重要であることを当会合で再確認し、(これまで生産目標を達成できていない産油国は生産目標を完全に達成するための)追加生産調整計画を速やかに提出するよう、会合で要請された。

 (5) 次回のOPECプラス産油国閣僚級会合は10月5日に開催される予定である。

 (6) 9月5日の今次閣僚級会合開催後、ロシアのノバク副首相は、世界経済成長減速に伴いエネルギー市場を巡る不透明性が強まっていることを背景として、今回の減産措置強化が決定された旨明らかにした。

 (7) また、閣僚級会合開催後、今回の閣僚級会合での日量10万バレルの減産強化の決定は規模としては限定的であるが、OPECプラス産油国が石油市場安定化のためには如何なる手段も利用するという意志を示すという意味では重要なものであり、必要であれば石油市場を安定化させるために介入するOPECプラス議長を信用している旨報じられた。

 (8) 他方、今回の閣僚級会合開催後、米国のバイデン大統領は、米国及び世界の消費者のために経済成長と(エネルギー)価格低下を支持すべく、エネルギー供給は需要を満たすべきであるということを明確にしてきたとして、エネルギーの供給拡大及び価格低下のために必要な全ての方策を実施することを確約する旨、ジャン-ピエール報道官を通じて表明したと伝えられる。

 

2. 今回の会合の結果に至る経緯及び背景等

 (1) 6月30日に開催された前々回のOPECプラス産油国閣僚級会合においては、2022年8月の原油生産量につき、7月同様前月比で日量64.8万バレルと従来想定された規模(日量43.2万バレル)の1.5倍の減産措置縮小を実施することを決定した。

 (2) 前々回のOPECプラス産油国閣僚級会合開催後、米国のバイデン大統領が、7月の中東諸国訪問の際中東湾岸産油国に対し原油生産拡大を要請する旨表明したことにより、これら産油国による原油生産拡大と世界石油需給緩和期待が市場で醸成されたこと、中国の一部地域で新型コロナウイルス感染拡大が示唆されたことにより同国経済成長減速と石油需要の伸びの鈍化懸念が市場で増大したこと、米国の物価上昇が加速する結果同国金融当局関係者による金融引き締め政策が強化されるとの見方が市場で発生したこと、欧米諸国経済が減速していることを示唆する経済指標類が発表されたこと等により、これら諸国等の石油需要の伸びが鈍化するとの懸念が市場で増大したこと等が、原油相場に下方圧力を加えたことにより、原油価格は前々回のOPECプラス産油国閣僚級会合開催直前である6月29日の1バレル当たり109.78ドルから前回の閣僚級会合開催直前である8月2日には同94.42ドルへと下落した(図1参照)。

 (3) また、7月のロシアの原油生産量(コンデンセートを含む)は6月比で2%程度増加の日量146.8万トン(推定日量1,082万バレル)である旨8月1日に報じられたが、同水準は、ロシアのウクライナへの事実上の侵攻開始直後の2022年3月時点の7月のロシアの原油生産(同)見通し(国際エネルギー機関(IEA)による)である同828万バレルを同254万バレル程度上回るなど、足元ロシアの石油供給が当初見込みほど減少してないことが示された。

図1 原油価格の推移(2021~22年)

 (4) 米国のバイデン大統領は7月15日にサウジアラビアのサルマン国王及びムハンマド皇太子と会談、両国は安定した世界エネルギー市場に対する確約を再確認し、今後定期的に世界エネルギー市場につき協議する旨合意したと7月16日に伝えられた他、石油供給拡大が喫緊の課題である旨サウジアラビアも理解しており、サウジアラビアからの石油供給が一層拡大することを期待している旨7月15日にバイデン大統領は明らかにした。

 (5) しかしながら、原油価格が下落傾向となっているうえ、この先少なくとも短期的には石油需給の緩和感が醸成されうるような不透明な状況下において、米国の働きかけに応じてサウジアラビア等が原油生産を大幅に拡大すれば、世界石油需給緩和感が市場でさらに強まる他、OPECプラス産油国が石油需給緩和に対し寛容な姿勢を見せ始めたと市場関係者が受け取ることにより、原油相場に一層下方圧力が加わる結果、原油価格が下落することによりOPECプラス産油国の原油収入に負の影響が及ぶとともに、西側諸国等による制裁発動対象であり、かつOPECプラス産油国の重要な構成国であるロシアの原油等の収入も減少する可能性が高まる結果、OPECプラス産油国間での結束が乱れる恐れがあることが懸念された。

 (6) このようなこともあり、サウジアラビアを初めとするOPECプラス産油国は、この先発生する恐れのある石油需給緩和観測の増大による原油価格の下落を未然に防止しようとすることにより、ロシアに配慮した一方、米国のバイデン大統領による増産への働きかけに対しては、実際に原油価格上昇の証拠が見られるまで、慎重に対処すべく、前月比で日量10万バレルという小幅の増産にとどめる(しかも、増産枠をサウジアラビア等実際に増産が可能な産油国に集中させるのではなく、増産能力に乏しい産油国を含め、減産措置に参加するOPECプラス産油国全体に幅広く割り当てることにより、実質的な増産幅は日量10万バレルを相当程度下回ると見られた)旨決定したものと考えられる。

 (7) 8月3日に開催された前回のOPECプラス産油国閣僚級会合以降、石油市場では、米国のガソリン需要低迷(8月26日までの4週間平均で米国のガソリン需要は前年同期比で6.4%の減少となっていた、図2参照)が、原油価格に下方圧力を加えた。

図2 米国ガソリン需要(2022年、4週平均)

 (8) また、8月15日に中国国家統計局から発表された7月の同国鉱工業生産が前年同月比3.8%の増加と6月の同3.9%の増加を下回った他、市場の事前予想(同4.6%の増加)に届かなかったうえ、同日中国国家統計局発表の7月の同国小売売上高が前年同月比2.7%の増加と6月の同3.1%の増加を下回った他市場の事前予想(同5.0%増加)に届かなかったことに加え、7月の中国原油精製処理量が5,321万トン(推定日量1,256万バレル)と6月の5,490万トン(同1,340万トン)から減少した他、日量としては2020年3月(この時は5,004万トン、推定日量1,182万バレル)以来の低水準に到達した旨判明した。

 (9) さらに、8月31日中国国家統計局発表の7月の同国製造業購買担当者指数(PMI)も49.4と7月(49.0)に続き当該部門拡大と縮小の分岐点である50を下回るなどした。

(10) 加えて、中国深圳市、大連市、広州市及び成都市等の一部地区において、8月30日以降新型コロナウイルス感染抑制のための都市封鎖措置等が実施された他、その後新型コロナウイルス感染者増加のため深圳市は個人の外出規制及び経済活動の制限をさらに強化した旨9月1日に伝えられるなどした。

(11) このような中国経済が減速しつつあることを示唆する指標類の発表により、中国の石油需要の伸びの鈍化懸念が市場で広がったことによっても、原油価格は押し下げられた。

(12) 他方、ロシアのウクライナへの事実上の侵攻等による欧州経済減速懸念でユーロが下落した他、政策金利の大幅引き上げを支持する旨の米国金融当局者の発言等により、米ドルが上昇したことでも、原油価格は下振れした。

(13) さらに、米国ニューヨーク連邦準備銀行のウイリアムズ総裁、リッチモンド連邦準備銀行のバーキン総裁、アトランタ連銀のボスティック総裁が、同国物価上昇沈静化に向けた政策金利引き上げに前向きな姿勢を示唆した旨8月30日に報じられた他、欧州中央銀行理事会委員であるオランダのクノット中央銀行総裁、ドイツのナーゲル連邦銀行総裁、エストニアのミュラー中央銀行総裁、及びベルギーのウンシュ中央銀行総裁が、物価上昇抑制のため積極的な政策金利の引き上げを支持する旨8月30日に示唆したことにより、欧米諸国等の経済減速と石油需要の伸びの鈍化懸念が市場で増大したことも、原油価格を押し下げた。

(14) このようなことから、前回閣僚級会合直前の8月2日には1バレル当たり94.42ドルの終値であった原油価格は今次閣僚級会合直前の9月2日には同86.87ドルの終値へと下落したうえ、8月16日には同86.53ドルの終値と、ロシアによるウクライナへの事実上の侵攻開始(2月24日)以前の1月25日(この時の終値は同85.60ドル)以来の低水準に到達するなどした。

(15) また、8月29日に国際エネルギー機関(IEA)のビロル事務局長が、今後西側諸国等による対ロシア制裁の影響で西側諸国企業による技術等の支援が得られなくなるようであれば、ロシアの原油生産は減退する恐れがある旨示唆したものの、8月のロシアの原油生産量(コンデンセートを含む)は7月比で2%程度減少の日量144.5万トン(推定日量1,065万バレル)である旨8月30日に報じられており、同水準は、ロシアのウクライナへの事実上の侵攻開始直後の2022年3月時点の8月のロシアの原油生産量(同)見通し(国際エネルギー機関(IEA)による)である同830万バレルを同235万バレル程度上回るなど、足元ロシアの石油供給が当初見込みほど減少してないことが示された(図3参照)。

図3 ロシア原油生産量(2022年)

(16) 他方、2022年9月に前月比日量10万バレルの増産を実施した(但し実際に増産が可能である産油国はサウジアラビア等に限られるため、実質的な増産規模はその半分程度とみられる)うえ、10月以降は増産を実施しなかったと仮定した場合でも、2022年世界石油需給バランスは日量16万バレル程度と小幅の供給過剰となるものと見られた(表2参照)。

表2 世界石油需給バランスシナリオ(2022年)(2022年9月5日OPECプラス産油国閣僚級会合開催直前時点)

(17) また、米国では、9月3~5日の連休を以て夏場のドライブシーズンに伴うガソリン需要期が終了することもあり、全米平均ガソリン小売価格は6月13日に到達した1ガロン当たり5.107ドルの統計史上最高水準から折り返し、8月29日には同3.938ドルと、依然として低水準ではないものの、沈静化しつつあった(図4参照)ことにより、米国バイデン政権に対する国内ガソリン小売価格沈静化を巡る圧力は後退する格好となったと見られ、その結果、原油価格を引き下げるためのサウジアラビア等OPECプラス産油国に対する増産への働きかけを米国が積極化する必要性も低減した。

図4 米国ガソリン平均小売価格(2019~22年)

(18) このため、米国のサウジアラビア等OPECプラス産油国に対する増産の働きかけも相対的に弱まりつつあったものと見られる反面、2022年の世界石油需給バランスが、10月以降の増産を実施しなくても極度に石油需給が引き締まるわけではないと見られる他、中国の新型コロナウイルス感染抑制のための都市封鎖措置等の実施や欧米諸国の金融引き締め政策実施等によるそれら地域の経済減速と石油需要の伸びの鈍化懸念が市場で広がることにより原油価格が下振れする恐れがある中でOPECプラス産油国が増産を決定することは、石油需給の緩和感を市場で拡大させるとともに、市場の弱気心理を増強することにより、原油価格がさらに下落することを通じ、サウジアラビアのみならず、OPECプラス産油国の重要な構成国であるロシアの原油収入の減少を招くことになる可能性があった。

(19) このようなことから、原油価格下落に伴いロシアを含むOPECプラス産油各国の原油収入が減少することを回避させるとともに、原油収入の減少によりウクライナへの侵攻のための費用捻出に支障が発生する可能性のあるロシアに配慮することを含めOPECプラス産油国の結束を維持すべく、サウジアラビアを含むOPECプラス産油国は市場での石油需給緩和感を抑制する必要があった。

(20) そのような状況下において、サウジアラビアのアブドルアジズ エネルギー相が、原油先物価格が下落しつつあることから、9月5日に開催される予定である次回OPECプラス産油国閣僚級会合では、減産措置強化を行う必要があるかもしれない旨明らかにしたと8月22日午前遅く(米国東部時間)に報じられた他、UAEもサウジアラビアの考えに同調する旨関係筋がロイター通信に明らかにした旨8月26日に伝えられた。

(21) アブドルアジズ エネルギー相の発言が伝えられたこともあり、8月19日には1バレル当たり90.77ドルであった原油価格の終値は、8月29日には同97.01ドルの終値へと回復した。

(22) しかしながら、欧米金融当局関係者による積極的な政策金利引き上げへの支持の表明、及び中国の一部都市における新型コロナウイルス抑制のための都市封鎖措置等の強化により、欧米諸国及び中国等の経済減速と石油需要の伸びの鈍化懸念が市場で拡大したこともあり、原油価格は9月1日には1バレル当たり86.61ドルの終値になるなど、同価格は3日間で合計同10.40ドル下落、原油価格は下げ足を速める兆候が見られた。

(23) 9月2日には、今次OPECプラス産油国閣僚級会合において2022年10月の原油生産目標を前月から横這いとする旨決定する方向で検討がなされつつある旨報じられたが、原油価格の反発力は弱く、同日(9月2日)の原油価格の終値は前日終値比1バレル当たり0.26ドルの上昇にとどまった。

(24) このため、2022年10月のOPECプラス産油国原油生産目標を前月比で横這いとするだけでは、原油価格下落抑制が困難であるものと判断したサウジアラビアを含むOPECプラス産油国は、石油需給緩和感を意識する石油市場関係者の心理の転換を図るべく、減産措置を強化する(とともに、この先においても石油市場の状況によっては減産措置を強化する)姿勢を示すことにより、原油価格下落抑制(及び原油価格の反転)を試みたものと考えられる。

(25) ただ、OPECプラス閣僚級会合開催前に開催されたOPECプラス産油国行動閣僚監視委員会(JMMC: Joint Ministerial Monitoring Committee、OPECプラス産油国閣僚級会合に対し原油生産方針等を進言する諮問機関)直前時点の原油価格が9月2日の終値から1バレル当たり2.80ドル強上昇するなど、価格が回復基調となったこともあり、今回のOPECプラス産油国閣僚級会合では日量10万バレルと限定的な規模での減産措置強化となったものと思われる。

 

3. 原油価格の動き等

 (1) 今次閣僚級会合においては、OPECプラス産油国により決定した減産措置強化規模は日量10万バレルと限定的であったものの、必要に応じて機動的にOPECプラス産油国閣僚級会合開催をOPECプラス産油各国に呼びかけられるようOPEC議長に要請することにしたことから、原油価格下落抑制に対し毅然とした姿勢をOPECプラス産油国が市場に対して示した格好となったこともあり、この先の石油需給引き締まり感を市場が意識したことが、原油相場に上方圧力を加えた結果、既にOPECプラス産油国閣僚級会合開催前の段階において前週末終値比で上昇していた原油価格は、当該会合後さらに上昇幅を拡大し、前週末終値比で1バレル当たり3.52ドル上昇の同90.39ドルに到達する場面も見られた。

 (2) しかしながら、米国バイデン政権がエネルギーの供給拡大及び価格低下のために必要な全ての方策を実施することを確約する旨表明したこともあり、原油価格はその後上昇幅を縮小、前週末終値比で1バレル当たり1.95ドル上昇の同88.82ドルで取引を中断した(なお、米国労働者の日(レイバー・デー)の休日に伴い、この日の終値は計上されなかった)。

 (3) 米国では、9月5日の労働者の日の休日を以て夏場のドライブシーズンに伴うガソリン需要期が終了したが、通常冬場の暖房シーズン到来に伴う暖房用石油製品需要期が市場の視野に入り始めるのは10月中旬頃以降となるため、それまではガソリン需要が低下する反面、暖房用のLPGや留出油需要期にはまだ早いとの意識が市場関係者の心理を支配する他、秋場のメンテナンス作業の実施に伴い製油所の稼働及び原油精製処理活動が低下する結果原油の購入が不活発となることにより、季節的な需給の緩和感が市場で意識されることを通じ、例年この時期は原油価格の上昇が抑制されやすい。

 (4) また、8月26日に米国ワイオミング州ジャクソンホールで開催された米国カンザスシティ連邦準備銀行による年次シンポジウムにおける同国連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長の講演で、パウエル議長が物価上昇沈静化を図るべく高水準の政策金利を継続する意向である旨明らかにするとともに、その過程では経済成長が下振れする可能性がある旨示唆した他、他の複数の米国金融当局関係者も、物価上昇沈静化を重視する姿勢を見せていることもあり、9月20~21日に開催される予定である米国連邦公開市場委員会(FOMC)において0.75%の金利引き上げが決定される確率が9月5日現在60.0%となっており(残りの40.0%は0.50%の引き上げ)となっており、高水準の政策金利引き上げ継続による経済減速に伴う石油需要の伸びの鈍化懸念が市場で存続するとともに、原油価格の上昇を抑制しやすい状況が続くものと見られる。

 (5) さらに、中国の新型コロナウイルス感染抑制のための個人の外出規制及び経済活動制限等の実施もあり、中国等の経済減速とともに石油需要の伸びの鈍化懸念が拡大することにより、原油相場に下方圧力が加わるといった展開も想定されうる。

 (6) ただ、世界石油需給緩和感が市場で意識されることにより、原油の下落が継続する、もしくは原油が急落し始める兆候が見られるようであれば、必要に応じて機動的にOPECプラス産油国閣僚級会合が開催されることにより、市場関係者の心理が急速に冷え込むことにより原油相場下落が制御不能になる前に、サウジアラビアを初めとするOPECプラス産油国は、先制的に減産措置の強化へと動くこと可能性があることを今回のOPECプラス産油国閣僚級会合での決定を通じて市場関係者に認識させる格好となったこともあり、この面で当面原油相場は下支えされやすいものと考えられる。

 (7) 他方、ロシアから欧州方面に天然ガスを輸送するノルド・ストリーム1・パイプライン(天然ガス輸送能力日量53億立方フィート)において、唯一稼働していた天然ガス送出用タービンのメンテナンス作業実施により、8月31日から9月2日にかけ停止する旨ロシア国営ガス会社ガスプロムが発表した(メンテナンス作業終了時に、技術的な不具合が見当たらないようであれば、足元の天然ガス輸送量(輸送能力の約20%に当たる約12億立方フィート)の輸送を再開する意向である旨併せてガスプロムが明らかにした)が、同タービンでオイル漏洩が発見されたことにより、当該タービン改修のため操業再開を延期する(再開時期未定)旨9月2日にロシア国営ガス会社ガスプロムが明らかにしたことにより、欧州での天然ガス需給引き締まり観測が市場で発生した。

 (8) また、フランスの原子力発電所の総発電能力6,137万kW中、3,330万kWが稼働停止となった結果、稼働中の発電能力は2,807万kWである旨8月2日に伝えられたが、その後も計画外のものを含め原子力発電稼働停止が拡大している他、既に稼働を停止している発電能力についても、稼働停止期間が延長されるものが見られていることもあり、9月2日には3,560万kWが停止中であるとともに稼働している発電能力が2,577万kWへと低下するなどしているうえ、今後も原子力発電の稼働停止が見込まれることから、発電部門での原子力の代替燃料として天然ガスの需要が増加するとの観測が市場で増大している。

 (9) さらに、6月8日午前11時40分(現地時間)には、米国テキサス州にあるフリーポートLNG出荷基地(操業者:フリーポートLNG社、出荷能力年間1,500万トン)で火災が発生した(安全バルブに不具合があり、圧力過多となったことにより破損したパイプからLNG及びメタンが漏洩し炎上したものと米国運輸省パイプライン危険物安全局(PHMSA: Pipeline and Hazardous Materials Safety Administration)が暫定的に報告したと6月30日に伝えられる)が、当初少なくとも3週間程度当該施設の操業が停止する旨6月8日にフリーポートLNG社が発表していたものの、その後9月までに部分的に操業を再開、2022年末までに全面的な操業再開を目指す旨6月14日に同社が発表したことにより、当初見込みよりも長期に渡り米国からのLNG輸出が相当程度(同国の通常のLNG輸出量である約8,400万トンの約20%弱程度)減少する旨判明した。

(10) 加えて、8月3日にはフリーポートLNG社は、PHMSAとの間でフリーポートLNG施設事故を巡る是正措置に関する同意書を締結、それに従ってフリーポートLNG社は作業を実施し、当該作業が完了しPHMSAが操業再開を承認すれば、10月上旬にはほぼ1,500万トン相当のLNG生産を再開できるものとフリーポートLNG社は考えている旨同日同社は明らかにしたが、8月23日に同社は、11月下旬までにLNG施設の稼働を85%に到達させるものの、能力通りの稼働は2023年3月を目標とする旨発表するなど、当該施設のLNG輸出再開展望については不安定な状態が続いている。

(11) 他方、2022年初頭以降、欧州の天然ガス需要は産業部門を中心として前年を10%程度下回ると指摘されるなど不振であるものの、冬場の暖房用需要増加に伴う天然ガス需給引き締まり(と天然ガス価格高騰)懸念から、そのような市場心理を前倒しで織り込んで欧州での天然ガス価格は上昇基調にあり、例えば6月8日には100万Btu当たり推定24.938ドルの終値であった欧州オランダTTF先物価格は9月2日には100万Btu当たり推定62.623ドル(原油換算1バレル当たり375.74ドル)の終値となった他、8月26日には同99.071ドルの史上最高水準の終値に到達した(図5参照)。

図5 天然ガス先物価格の推移(2018~22年)

(12) 従って、価格の高騰する天然ガスから相対的に安価な石油へ燃料転換が促進される(IEAは精製事業を含む産業部門での天然ガスからの燃料転換等で、2022年8月から2023年3月にかけ軽油日量14万バレル及び重油同15万バレル、合計日量30万バレル程度の石油製品需要増加が見込まれるとの見解を8月11日に明らかにしている)との観測が市場で増大することを通じ原油相場に上方圧力が加わる可能性がある。

(13) ただ、欧州での天然ガスを含むエネルギー価格高騰により、当該地域での経済が失速する(また、このまま欧州の天然ガス(及びLNG)価格が高水準を維持するようであれば、欧州地域における天然ガスを含むエネルギー多消費産業を中心として欧州から製造拠点等が移転する(その場合、移転先の有力候補の一つは天然ガスを含めエネルギー価格が相対的に低廉である米国になろう)リスクが増大すると見る向きもある)との不安感から、ユーロが下落する反面米ドルが上昇することにより、原油相場が抑制される場面が見られることもありうる。

(14) また、2月24日にロシアがウクライナへの事実上の侵攻を実施して以降、欧米諸国等による対ロシア制裁及びロシア産石油を購入することを巡る西側諸国等の企業に対する評判リスクへの懸念から、欧州諸国等のロシア産石油輸入は減少傾向となったものの、なお、オランダ、イタリア及びトルコ等の諸国がロシア産原油を相当量引き取っているうえ、ロシア産原油価格がブレント原油価格を相当程度下回るようになったこともあり、西側諸国等が引き取らなくなった原油を中国及びインドが引き取るようになった結果、ロシアの石油供給はそれほど減少していない。

(15) しかしながら、9月2日に開催された主要7ヶ国政府(G7)財務相会合で、ロシア産原油に対し12月5日に、同国産石油製品に対し2023年2月25日に、それぞれ価格に上限を設定する措置を実施することで合意(価格水準等は各種情報等をもとに追って決定する意向)したことに対し、9月2日の当該会合前にロシア大統領府のペスコフ報道官が石油価格上限を設定する企業に対し石油を販売することはないとして、原油販売を拒否する姿勢を示唆したことから、今後、ロシアからの欧州諸国等への石油供給が減少していくという展開となることも想定されうるが、反面中国、インド等といった消費国がロシア産原油等を引き取ることにより供給がどの程度円滑に平準化していくか(これまでのところ平準化は円滑に進行しているように見受けられる)に市場関係者が注目するものと見られる。

(16) 他方、イラン核合意正常化に向けた西側諸国等とイランとの間での協議妥結のために、8月8日に米国及びイランに向け欧州連合(EU)が提示した最終草案に対し、8月15日にイランが行った回答に対する意見書を米国が提出した旨8月24日に米国国務省のプライス報道官が発表したが、米国国家安全保障会議(NSC)のカービー報道官が、当該協議は妥結に向け一層接近しているものの、なお意見の相違は残っている旨明らかにしたと8月24日に報じられた。

(17) その後、イランが米国に対し建設的な提案を行った旨9月1日午後遅く(米国東部時間)に報じられたものの、イランの提案は建設的ではない旨米国が明らかにしたと9月1日夜遅く(同)に伝えられるなど、本件はなお紆余曲折を経る状況となっている。

(18) このようなイラン核合意正常化に向けた協議状況も、米国の対イラン制裁緩和とイランの原油供給拡大への市場の観測を左右する結果、原油相場へ圧力を加える可能性がある(なお、イランは現在洋上を中心として9,300万バレル程度の貯蔵原油を保有していると8月29日に伝えられているところからすると、イラン核合意正常化に向けた協議が妥結し米国の対イラン制裁が緩和されれば、貯蔵されている原油の払い出しにより同国の供給が比較的早い時期に拡大する可能性がある)。

(19) 他方、リビアでは、首都トリポリを拠点とする、国連及びトルコが支援する国民合意政府(GNA: Government of National Accord)及びGNAと動きを一にする暫定国民統一政府(GNU: Government of National Unity))と、エジプト、UAE及びロシア等が支援する、東部トブルクを拠点とする代表議会(HoR: House of Representative)及びHoRを支援するリビア国民軍(LNA: Libya National Army)との間での対立が解消されたわけではなく、8月27日にも両勢力を支援する民兵組織間で衝突が発生、32人が死亡するなどしており、今後も両勢力の対立が高まるようであれば、油田等石油生産関連施設が占拠されることにより、同国の原油生産量が減少する結果、原油価格が上振れすることも想定されるため、注意が必要であろう。

(20) 他方、大西洋圏ではハリケーン等の暴風雨シーズンに突入しており(暴風雨シーズンは例年6月1日~11月30日である)、特に8月後半以降10月前半迄は1年で最もハリケーン等の暴風雨が発生しやすい時期となる。

(21) ハリケーン等の暴風雨は、進路やその勢力によっては、米国メキシコ湾沖合の石油等生産関連施設に影響を与えたり、湾岸地域の石油受入及び積出港湾関連施設や製油所の活動に支障を発生させたり(実際に製油所が冠水し操業が停止することもあるが、そうでなくても周辺の送電網が暴風で切断されることにより、製油所への電力供給が遮断されることを通じ操業が停止するといった事態が想定される)、さらには、メキシコの沖合油田や原油輸出港の操業を停止させたりすること等により米国のメキシコからの原油輸入に影響を与えたりする(2021年には米国メキシコ湾岸地域はメキシコから日量52万バレル程度の原油を輸入した)。

(22) 8月4日に発表された米国海洋大気庁(NOAA)及び同日時点のコロラド州立大学の見通しによると、2022年の大西洋圏でのハリケーンシーズンは平年よりも活発な暴風雨の発生が予想されている(表3参照)。

表3 2022年の大西洋圏でのハリケーン等発生個数予想

(23) 最近では米国の原油生産に占める陸上の割合が上昇してきているものの、それでも米国メキシコ湾沖合でもそれなりの量の原油が生産されている(2021年は当該地域で日量170万バレルの原油を生産しており、同年の米国の原油生産量全体の約15%を占めた)他、米国メキシコ湾岸は引き続き同国の精製活動の中心地域である(2021年の当該地域の原油精製処理能力は日量817万バレルと米国原油精製処理能力全体の約47%を占めた)こともあり、今後のハリケーン等の実際の発生状況やその進路、そしてその予報等によっては石油市場関係者間で石油供給に対する懸念が強まるとともに、その影響が原油価格に織り込まれる場面が見られることもありうる。

 

(参考1:2022年9月5日開催OPECプラス産油国閣僚級会合時声明)

32nd OPEC and non-OPEC Ministerial Meeting

No 25/2022
Vienna, Austria
5 September 2022

The 32nd OPEC and non-OPEC Ministerial Meeting was held via videoconference on 5 September 2022.

The OPEC and non-OPEC Ministerial Meeting noted the adverse impact of volatility and the decline in liquidity on the current oil market and the need to support the market’s stability and its efficient functioning.

The Meeting noted that higher volatility and increased uncertainties require the continuous assessment of market conditions and a readiness to make immediate adjustments to production in different forms, if needed, and that OPEC+ has the commitment, the flexibility, and the means within the existing mechanisms of the Declaration of Cooperation to deal with these challenges and provide guidance to the market.

The Meeting decided to:

  1. Reaffirm the decision of the 10th OPEC and non-OPEC Ministerial Meeting on 12 April 2020 and further endorsed in subsequent meetings including the 19th OPEC and non-OPEC Ministerial Meeting on 18 July 2021.
  2. Revert to the production level of August 2022 for OPEC and non-OPEC Participating Countries for the month of October 2022 as per the attached table, noting that the upward adjustment of 0.1 mb/d to the production level was only intended for the month of September 2022.
  3. Request the Chairman to consider calling for an OPEC and non-OPEC Ministerial Meeting anytime to address market developments, if necessary.
  4. Reiterate the critical importance of adhering to full conformity and to the compensation mechanism. Compensation plans should be submitted in accordance with the statement of the 15th OPEC and non-OPEC Ministerial Meeting.
  5. Hold the 33rd OPEC and non-OPEC Ministerial Meeting on 5 October 2022.

 

以上

(この報告は2022年9月6日時点のものです)

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