ページ番号1009468 更新日 令和4年9月20日

原油市場他: 米国等の積極的な政策金利引き上げ姿勢、及び中国での新型コロナウイルス感染抑制のための都市封鎖措置実施等により変動領域を切り下げる原油価格

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レポートID 1009468
作成日 2022-09-20 00:00:00 +0900
更新日 2022-09-20 13:19:42 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 市場
著者 野神 隆之
著者直接入力
年度 2022
Vol
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ページ数 39
抽出データ
地域1 グローバル
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国・地域 グローバル
2022/09/20 野神 隆之
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概要

  1. 米国では、夏場のドライブシーズンに伴うガソリン需要期が終了に向かったことにより製油所の稼働が低下傾向となったこともあり、石油製品製造活動が不活発化しつつあったことから、ガソリン在庫は減少傾向となったが、平年幅上限を超過する量となっている。他方、ガソリン製造に併せて生産された留出油は需要を上回る格好となったこともあり、留出油在庫は増加傾向となったが、平年幅下限付近に位置する量となった。また、米国戦略石油備蓄(SPR)から原油が供給されたこともあり、原油在庫は増加傾向となり、平年幅上限を超過する状態は維持されている。
  2. 2022年8月末のOECD諸国推定石油在庫量の対前月末比での増減に関しては、原油については、欧州ではガソリン製造利幅が縮小しつつあったことから製油所の稼働が上昇することなく安定的に推移するとともに、それに見合った量の原油供給がなされたものと見られることから、在庫はほぼ横這いとなった。しかしながら、米国では原油在庫は減少した他、日本においても夏場のガソリン需要の盛り上がりを見据えて製油所の原油精製処理量が増加したこともあり、原油在庫は減少した。この結果、OECD諸国全体では原油在庫は減少となったが、平年幅上限を超過する状態は継続している。石油製品については、欧州では製油所の稼働抑制とともに石油製品製造活動が不活発化したものと見られる結果、在庫は減少した。しかしながら、米国では、暖房シーズンではないことによりプロパン在庫が増加したこと等により、石油製品在庫は増加した。日本においても、行楽のための乗用車向けガソリン需要がどちらかというと低調であったこと等もあり、石油製品在庫は増加した。このため、OECD諸国全体の石油製品在庫は増加となったものの、平年幅下方付近に位置する量となっている。
  3. 2022年8月中旬から9月中旬にかけての原油市場においては、9月5日に開催される予定であるOPECプラス産油国閣僚級会合で減産強化を行う必要があるかもしれない旨サウジアラビアのアブドルアジズ エネルギー相が明らかにしたと8月22日に報じられたこと等が原油相場に上方圧力を加えた結果、8月12日に1バレル当たり92.09ドルであった原油価格(WTI)は8月29日には97.01ドルへと上昇した。しかしながら、その後は米国金融当局関係者が積極的な政策金利引き上げ姿勢を示唆したこと等により、米国等での経済減速に伴う石油需要の伸びの鈍化懸念が市場で強まったこと等が、原油相場に下方圧力を加えたことにより、9月上旬から中旬にかけ原油価格は1バレル当たり80~90ドルを中心とする領域で変動した。
  4. 今後も、欧米諸国等の金融当局による積極的な金融引き締め政策の推進姿勢の維持や、中国での新型コロナウイルス感染抑制のための都市封鎖措置等の実施方針継続に伴う、これら諸国等の経済減速と石油需要の伸びの鈍化懸念が原油相場に下方圧力を加えやすいものと考えられる。しかしながら、西側諸国等によるロシア産石油価格上限設定に対しロシアが石油販売を拒否する姿勢を見せていることに伴う石油供給混乱懸念、OPECプラス産油国による原油価格維持を企図した慎重な原油生産方針等が、原油相場に上方圧力を加える可能性もある。従って当面原油価格はこのような上方及び下方圧力に挟まれる格好となりやすいものと考えられる。

(出所 IEA、OPEC、米国DOE/EIA他)

 

1. OPEC及び一部非OPEC(OPECプラス)産油国が2022年10月の原油生産目標を前月比で日量10万バレル削減する旨決定

(1) 協議内容等

2022年9月5日にOPEC及び一部非OPEC(OPECプラス)産油国は閣僚級会合を開催し、2022年10月のOPECプラス産油国の原油生産量を前月比で日量10万バレル削減する旨決定した(表1参照)。従って、OPECプラス産油国の原油生産目標は2022年8月時点と同水準に戻ることになる。

表1 OPECプラス産油国の減産幅

また、同会合では、OPECプラス議長(サウジアラビアのアブドルアジズ エネルギー相)に対し、必要な時には(次回のOPECプラス閣僚級会合開催予定日を待たずして)OPECプラス産油国閣僚級会合開催を呼びかける旨考慮するよう要請した。さらに、生産目標の完全遵守に固執することが極めて重要であることを当会合で再確認し、(これまで生産目標を達成できていない産油国は生産目標を完全に達成するための)追加生産調整計画を速やかに提出するよう、会合で要請された。なお、次回のOPECプラス産油国閣僚級会合は10月5日に開催される予定である。

9月5日の今次閣僚級会合開催後、ロシアのノバク副首相は、世界経済成長減速に伴いエネルギー市場を巡る不透明性が強まっていることを背景として、今回の減産措置強化が決定された旨明らかにした。また、閣僚級会合開催後、今回の閣僚級会合での日量10万バレルの減産強化の決定は規模としては限定的であるが、OPECプラス産油国が石油市場安定化のためには如何なる手段も利用するという意志を示すという意味では重要なものであり、必要であれば石油市場を安定化させるために介入するOPECプラス議長を信用している旨中東湾岸産油国関係者が明らかにしたと報じられた。

他方、今回の閣僚級会合開催後、米国のバイデン大統領は、米国及び世界の消費者のために経済成長と(エネルギー)価格低下を支持すべく、エネルギー供給は需要を満たすべきであるということを明確にしてきたとして、エネルギーの供給拡大及び価格低下のために必要な全ての方策を実施することを確約する旨、ジャン-ピエール報道官を通じて表明したと伝えられる。

 

(2) 今回の会合の結果に至る経緯及び背景等

6月30日に開催された前々回のOPECプラス産油国閣僚級会合においては、2022年8月の原油生産量につき、7月同様前月比で日量64.8万バレルと従来想定された規模(日量43.2万バレル)の1.5倍の減産措置縮小を実施することを決定した。

前々回のOPECプラス産油国閣僚級会合開催後、米国のバイデン大統領が、7月の中東諸国訪問の際中東湾岸産油国に対し原油生産拡大を要請する旨表明したことにより、これら産油国による原油生産拡大と世界石油需給緩和期待が市場で醸成されたこと、中国の一部地域で新型コロナウイルス感染拡大が示唆されたことにより同国経済減速と石油需要の伸びの鈍化懸念が市場で増大したこと、米国の物価上昇が加速する結果同国金融当局関係者による金融引き締め政策が強化されるとの見方が市場で発生したこと、欧米諸国経済が減速していることを示唆する経済指標類が発表されたこと等もあり、これら消費国等の石油需要の伸びが鈍化するとの懸念が市場で増大したこと等が、原油相場に下方圧力を加えたことにより、原油価格は前々回のOPECプラス産油国閣僚級会合開催直前である6月29日の1バレル当たり109.78ドルから前回の閣僚級会合開催直前である8月2日には同94.42ドルへと下落した(図1参照)。

図1 原油価格の推移(2021~22年)

また、7月のロシアの原油生産量(コンデンセートを含む)は6月比で2%程度増加の日量146.8万トン(推定日量1,082万バレル)である旨8月1日に報じられたが、同水準は、ロシアのウクライナへの事実上の侵攻開始直後の2022年3月時点の7月のロシアの原油生産(同)見通し(国際エネルギー機関(IEA)による)である同828万バレルを同254万バレル程度上回るなど、足元ロシアの石油供給が当初見込みほど減少していないことが示された。

米国のバイデン大統領は7月15日にサウジアラビアのサルマン国王及びムハンマド皇太子と会談、両国は安定した世界エネルギー市場に対する確約を再確認し、今後定期的に世界エネルギー市場につき協議する旨合意したと7月16日に伝えられた他、石油供給拡大が喫緊の課題である旨サウジアラビアも理解しており、サウジアラビアからの石油供給が一層拡大することを期待している旨7月15日にバイデン大統領は明らかにした。

しかしながら、原油価格が下落傾向となっているうえ、この先少なくとも短期的には石油需給の緩和感が醸成されうるような不透明な状況下において、米国の働きかけに応じてサウジアラビア等が原油生産を大幅に拡大すれば、世界石油需給緩和感が市場でさらに強まる他、OPECプラス産油国が石油需給緩和に対し寛容な姿勢を見せ始めたと市場関係者が受け取ることにより、原油相場に一層下方圧力が加わる結果、原油価格が下落することによりOPECプラス産油国の原油収入に負の影響が及ぶとともに、西側諸国等による制裁発動対象であり、かつOPECプラス産油国の重要な構成国であるロシアの原油等の収入も減少する可能性が高まる結果、OPECプラス産油国間での結束が乱れる恐れがあることが懸念された。

このようなこともあり、サウジアラビアを初めとするOPECプラス産油国は、この先発生する恐れのある石油需給緩和観測の増大による原油価格の下落を未然に防止しようとすることにより、ロシアに配慮した一方、米国のバイデン大統領による増産への働きかけに対しては、実際に原油価格上昇の証拠が見られるまで、慎重に対処すべく、前月比で日量10万バレルという小幅の増産にとどめる(しかも、増産枠をサウジアラビア等実際に増産が可能な産油国に集中させるのではなく、増産余力に乏しい産油国を含め、減産措置に参加するOPECプラス産油国全体に幅広く割り当てることにより、実質的な増産幅は日量10万バレルを相当程度下回ると見られた)旨決定したものと考えられる。

8月3日に開催された前回のOPECプラス産油国閣僚級会合以降、石油市場では、米国のガソリン需要低迷(8月26日までの4週間平均で米国のガソリン需要は前年同期比で6.4%の減少となっていた、図2参照)が、原油価格に下方圧力を加えた。

図2 米国ガソリン需要増減率(2022年、4週平均)

また、8月15日に中国国家統計局から発表された7月の同国鉱工業生産が前年同月比3.8%の増加と6月の同3.9%の増加を下回った他、市場の事前予想(同4.6%の増加)に届かなかったうえ、同日中国国家統計局発表の7月の同国小売売上高が前年同月比2.7%の増加と6月の同3.1%の増加を下回った他市場の事前予想(同5.0%増加)に届かなかったことに加え、7月の中国原油精製処理量が5,321万トン(推定日量1,256万バレル)と6月の5,490万トン(同1,340万トン)から減少した他、日量としては2020年3月(この時は5,004万トン、推定日量1,182万バレル)以来の低水準に到達した旨判明した。さらに、8月31日に中国国家統計局から発表された7月の同国製造業購買担当者指数(PMI)も49.4と7月(49.0)に続き当該部門拡大と縮小の分岐点である50を下回るなどした。加えて、中国深圳市、大連市、広州市及び四川省成都市等の一部地区において、8月30日以降新型コロナウイルス感染抑制のための都市封鎖措置等が実施された他、その後新型コロナウイルス感染者増加のため深圳市は個人の外出規制及び経済活動の制限をさらに強化した旨9月1日に伝えられるなどした。このような中国経済が減速しつつあることを示唆する指標類の発表等により、中国の石油需要の伸びの鈍化懸念が市場で広がったことによっても、原油価格は押し下げられた。

他方、ロシアのウクライナへの事実上の侵攻等による欧州経済減速懸念でユーロが下落した他、政策金利の大幅引き上げを支持する旨の米国金融当局者の発言等により、米ドルが上昇したことでも、原油価格は下振れした。また、米国ニューヨーク連邦準備銀行のウイリアムズ総裁、リッチモンド連邦準備銀行のバーキン総裁、アトランタ連銀のボスティック総裁が、同国物価上昇沈静化に向けた政策金利引き上げに前向きな姿勢を示唆した旨8月30日に報じられた他、欧州中央銀行理事会委員であるオランダのクノット中央銀行総裁、ドイツのナーゲル連邦銀行総裁、エストニアのミュラー中央銀行総裁、及びベルギーのウンシュ中央銀行総裁が、物価上昇抑制のため積極的な政策金利の引き上げを支持する旨8月30日に示唆したことにより、欧米諸国等の経済減速と石油需要の伸びの鈍化懸念が市場で増大したことも、原油価格を押し下げた。

このようなことから、前回閣僚級会合直前の8月2日には1バレル当たり94.42ドルの終値であった原油価格は今次閣僚級会合直前の9月2日には同86.87ドルの終値へと下落したうえ、8月16日には同86.53ドルの終値と、ロシアによるウクライナへの事実上の侵攻開始(2月24日)以前の1月25日(この時の終値は同85.60ドル)以来の低水準に到達するなどした。

また、8月29日に国際エネルギー機関(IEA)のビロル事務局長が、今後西側諸国等による対ロシア制裁の影響で西側諸国企業による技術等の支援が得られなくなるようであれば、ロシアの原油生産は減退する恐れがある旨示唆したものの、8月のロシアの原油生産量(コンデンセートを含む)は7月比で2%程度減少の日量144.5万トン(推定日量1,065万バレル)である旨8月30日に報じられており、同水準は、ロシアのウクライナへの事実上の侵攻開始直後の2022年3月時点の8月のロシアの原油生産量(同)見通し(国際エネルギー機関(IEA)による)である同830万バレルを同235万バレル程度上回るなど、足元ロシアの石油供給が当初見込みほど減少してないことが示された(図3参照)。

図3 ロシア原油生産量(2022年)(2022年8月30日時点)

他方、2022年9月に前月比日量10万バレルの増産を実施した(但し実際に増産が可能である産油国はサウジアラビア等に限られるため、実質的な増産規模はその半分程度とみられる)うえ、10月以降は増産を実施しなかったと仮定した場合でも、この時点での2022年世界石油需給バランスは日量16万バレル程度と小幅の供給過剰となるものと見られた(表2参照)。

表2 世界石油需給バランスシナリオ(2022年)(2022年9月5日OPECプラス産油国閣僚級会合開催直前時点)

また、米国では、9月3~5日の連休を以て夏場のドライブシーズンに伴うガソリン需要期が終了することもあり、全米平均ガソリン小売価格は6月13日に到達した1ガロン当たり5.107ドルの統計史上最高水準から折り返し、8月29日には同3.938ドルと、依然として低水準ではないものの、沈静化しつつあった(図4参照)ことにより、米国バイデン政権に対する国内ガソリン小売価格沈静化を巡る圧力は後退する格好となったと見られ、その結果、原油価格を引き下げるためのサウジアラビア等OPECプラス産油国に対する増産への働きかけを米国が積極化するための動機も低減した。

図4 米国ガソリン平均小売価格(2019~22年)

このため、米国のサウジアラビア等OPECプラス産油国に対する増産の働きかけも相対的に弱まりつつあったものと見られる反面、2022年の世界石油需給バランスが、10月以降の増産を実施しなくても極度に石油需給が引き締まるわけではないと見られる他、中国の新型コロナウイルス感染抑制のための都市封鎖措置等の実施や欧米諸国の金融引き締め政策実施等によるそれら地域の経済減速と石油需要の伸びの鈍化懸念が市場で広がることにより原油価格が下振れする恐れがある中でOPECプラス産油国が増産を決定することは、石油需給の緩和感を市場で拡大させるとともに、市場の弱気心理を刺激することにより、原油価格がさらに下落することを通じ、サウジアラビアのみならず、OPECプラス産油国の重要な構成国であるロシアの原油収入の減少を招くことになる可能性があった。

このようなことから、原油価格下落に伴いロシアを含むOPECプラス産油各国の原油収入が減少することを回避するとともに、原油収入の減少によりウクライナへの侵攻のための費用捻出に支障が発生する可能性のあるロシアに配慮することを含めOPECプラス産油国の結束を維持すべく、サウジアラビアを含むOPECプラス産油国は市場での石油需給緩和感を抑制する必要があった。

そのような状況下において、サウジアラビアのアブドルアジズ エネルギー相が、原油先物価格が下落しつつあることから、9月5日に開催される予定である次回OPECプラス産油国閣僚級会合では、減産措置強化を行う必要があるかもしれない旨明らかにしたと8月22日午前遅く(米国東部時間)に報じられた他、UAEもサウジアラビアの考えに同調する旨関係筋がロイター通信に明らかにした旨8月26日に伝えられた。そして、アブドルアジズ エネルギー相の発言が伝えられたこともあり、8月19日には1バレル当たり90.77ドルであった原油価格の終値は、8月29日には同97.01ドルの終値へと回復した。

しかしながら、欧米金融当局関係者による積極的な政策金利引き上げへの支持の表明、及び中国の一部都市における新型コロナウイルス抑制のための都市封鎖措置等の強化により、欧米諸国及び中国等の経済減速と石油需要の伸びの鈍化懸念が市場で再燃したこともあり、原油価格は9月1日には1バレル当たり86.61ドルの終値になるなど、3日間で合計同10.40ドル下落、原油価格は下げ足を速める兆候が見られた。

9月2日には、今次OPECプラス産油国閣僚級会合において2022年10月の原油生産目標を前月から横這いとする旨決定する方向で検討がなされつつある旨報じられたが、原油価格の反発力は弱く、同日(9月2日)の原油価格の終値は前日終値比1バレル当たり0.26ドルの上昇にとどまった。

このため、2022年10月のOPECプラス産油国原油生産目標を前月比で横這いとするだけでは、原油価格下落抑制が困難であるものと判断したサウジアラビアを含むOPECプラス産油国は、石油需給緩和感を意識する石油市場関係者の心理の転換を図るべく、減産措置を強化する(とともに、この先においても石油市場の状況によっては減産措置を強化する)姿勢を示すことにより、原油価格下落抑制(及び原油価格の反転)を試みたものと考えられる。

ただ、OPECプラス閣僚級会合開催前に開催されたOPECプラス産油国共同閣僚監視委員会(JMMC: Joint Ministerial Monitoring Committee、OPECプラス産油国閣僚級会合に対し原油生産方針等を進言する諮問機関)直前時点の原油価格が9月2日の終値から1バレル当たり2.80ドル強上昇するなど、価格が回復基調となったこともあり、今回のOPECプラス産油国閣僚級会合では日量10万バレルと限定的な規模での減産強化となったものと思われる。

 

(3) OPECプラス産油国閣僚級会合開催当日の原油価格の動き等

今次閣僚級会合においては、OPECプラス産油国により決定した減産強化規模は日量10万バレルと限定的であったものの、必要に応じて機動的にOPECプラス産油国閣僚級会合開催をOPECプラス産油各国に呼びかけられるようOPEC議長に要請することにしたことから、原油価格下落抑制に対し毅然とした姿勢をOPECプラス産油国が市場に対して示した格好となったこともあり、この先の石油需給引き締まり感を市場が意識したことが、原油相場に上方圧力を加えた結果、既にOPECプラス産油国閣僚級会合開催前の段階において前週末終値比で上昇していた原油価格は、当該会合後さらに上昇幅を拡大し、前週末終値比で1バレル当たり3.52ドル上昇の同90.39ドルに到達する場面も見られた。

しかしながら、米国バイデン政権がエネルギーの供給拡大及び価格低下のために必要な全ての方策を実施することを確約する旨表明したこともあり、原油価格はその後上昇幅を縮小、前週末終値比で1バレル当たり1.95ドル上昇の同88.82ドルで取引を中断した(なお、米国労働者の日(レイバー・デー)の休日に伴い、この日の終値は計上されなかった)。

 

2. 原油市場を巡るファンダメンタルズ等

2022年6月の米国ガソリン需要(確定値)は日量913万バレルと、5月の当該需要である同911万バレルからは上振れしたものの、前年同月比で2.5%程度の減少と5月の同0.3%程度の増加とは対照的であった(図5参照)。なお、当該需要は速報値(前年同月比3.9%程度減少の日量900万バレル)から上方修正されている。6月の同国からのガソリン最終製品輸出量が速報値段階では日量96万バレル程度と推定されたところ、確定値では同85万バレルへと下方修正されたことにより、この部分が同国ガソリン需要の速報値から確定値への移行段階で輸出から国内需要へ振り替えられたことが、当該需要の上方修正の一因となったものと見られる。5月28~30日の米国戦没将兵追悼記念日(メモリアル・デー)(5月30日)に伴う連休を以て夏場のドライブシーズンに伴うガソリン需要期に突入したこともあり、個人の乗用車を利用した外出が活発化したことが、6月の米国ガソリン需要の前月比での増加の背景にあるものと考えられるが、6月13日には米国エネルギー省エネルギー情報局(EIA)の調査による全米平均ガソリン小売価格が1ガロン当たり5.107ドルと、1993年4月以降の週間統計史上最高水準に到達した他、6月の同国消費者物価指数(CPI)が、前年同月比で9.1%の上昇と、1981年11月(この時は同9.6%の上昇)以来の大幅な伸びとなったこともあり、実質個人可処分所得が前年同月比で3.2%程度減少したことが、同月のガソリン需要の前年同月比での減少をもたらしたものと考えられる。なお、2022年6月の同国ガソリン需要は2019年6月の当該需要(日量970万バレル)(確定値)を5.9%程度下回っている。他方、2022年8月の同国ガソリン需要(速報値)は日量882万バレル、前年同月比で3.9%程度の減少となっており、7月の需要量である同864万バレルから増加したうえ、前年同月比の減少率も7月の7.0%程度の減少から縮小している。8月1日時点では1ガロン当たり4.304ドルであった全米平均ガソリン小売価格が8月29日には同3.938ドルへと下落したうえ、同月の当該価格は7月の同4.440~4.879ドルを下回ったこともあり、8月の米国CPIは前年同月比で8.3%の上昇と、7月の同8.5%の上昇から伸びが鈍化、8月の米国実質個人可処分所得も前年同月比3.5%程度の減少と7月の同3.8%程度の減少から減少率が縮小したことが、8月の米国ガソリン需要の前年同月比での減少幅を縮小させたものと考えられる。なお、2022年8月の米国ガソリン需要は2019年同月の当該需要(日量983万バレル)(確定値)を10.3%程度下回っている。ただ、8月の同国ガソリン需要の前年同月比での減少率が7月から縮小したとはいえ、依然相当程度の減少となったこともあり、ガソリン製造を巡る利幅が低下したうえ、9月3~5日の米国労働者の日(レイバー・デー)の休日(9月5日)の連休を以て夏場のドライブシーズンに伴うガソリン需要期が終了するとともに秋場の不需要期に突入することが視野に入りつつあった米国の製油所は原油精製処理量を減少させた(図6参照)。そしてそれとともに、製油所等でのガソリン製造活動も不活発化した(ガソリン最終製品生産量は図7参照)ことが、同国のガソリン需要の低迷を相殺して余りあったことにより、8月上旬から9月上旬にかけ同国ガソリン在庫は減少傾向となったが、平年幅上限を上回る量は継続している(図8参照)。

図5 米国ガソリン需要の伸び(2006~22年)

図6 米国の原油精製処理量(2009~22年)

図7 米国のガソリン(最終製品)生産量(2009~22年)

図8 米国ガソリン在庫推移(2003~22年)

2022年6月の米国留出油需要(確定値)は日量399万バレルと前年同月比で1.2%の増加となり(図9参照)、5月の日量387万バレル(前年同月比0.7%程度の減少)から需要量が増加するとともに前年同月比でも減少から増加へと転換した。また、当該需要は速報値(前年同月比2.7%程度減少の日量384万バレル)から上方修正されている。6月は全米平均ガソリン小売価格が週間統計史上最高水準に到達したり、実質個人可処分所得が落ち込んだりするなど、米国の経済情勢は必ずしも良好ではなかったものの、例えば2022年4月の米国新築住宅着工件数が年率181万戸と2006年5月(この時は同194万戸)以来の高水準に到達するなどしたことから、6月は建築中の住宅等向けのセメントやガラス等を含む資材の製造及び建築現場への輸送(そして活発化した建築活動を支援する製造業及び製造品等の輸送)活動が活発化したと見られること等が、6月の同国留出油需要の伸びに寄与したものと考えられる(なお、6月の米国物流活動は前年同月比で3.2%の増加と2022年3月(同3.5%の増加)以来の高水準の増加となった)。また、2022年6月の米国留出油需要は2019年6月の当該需要(日量399万バレル)(確定値)比でほぼ横這いとなっている。他方、2022年8月の留出油需要(速報値)は日量375万バレルと前年同月比で5.9%程度の減少となり、7月の当該需要量(速報値)の日量368万バレルを若干上回ったものの、前年同月比の伸び率は7月の0.1%程度の増加から8月は減少に転じた。6月14~15日及び7月26~27日に、それぞれ開催された米国連邦公開市場委員会(FOMC)において、各々0.75%の大幅な政策金利の引き上げが決定されたこともあり、米国の経済活動が減速に向かうとともに(8月の米国鉱工業生産指数は前年同月比3.5%の増加と7月の同3.9%の増加から増加率が縮小した)他、2022年8月の米国輸送担当者指数(LMI: Logistics Manager Index、50が当該部門拡大と縮小の分岐点)が59.7と7月の60.7から低下するなど、物流活動が不活発になりつつあったと見られることが、8月の同国留出油需要の伸びを抑制する形で作用したものと推定される。なお、2022年8月の米国留出油需要は2019年同月(日量403万バレル)(確定値)を6.9%程度下回っている。このように米国の留出油需要は低調であったものの、9月初頭までは夏場のドライブシーズンに伴うガソリン需要期であったこともあり、製油所ではガソリン製造活動がそれなりに行われるとともに併せて留出油も製造されたこと(図10参照)から、8月上旬から9月上旬にかけ米国の留出油在庫は増加傾向となったが、平年幅下限付近に位置する量となっている(図11参照)。

図9 米国留出油需要の伸び(2006~22年)

図10 米国の留出油生産量(2009~22年)

図11 米国留出油在庫推移(2003~22年)

2022年6月の米国石油需要(確定値)は、前年同月比で0.9%程度増加の日量2,077万バレルとなり(図12参照)、5月の同2,008万バレル、前年同月比0.1%程度の増加から、需要量及び増加率ともに上振れした。留出油及びその他の石油製品の需要が前月比で増加したことが、石油製品需要の増加幅拡大に寄与する格好となっている。また、ガソリン、留出油及びその他石油製品等の需要が速報値から確定値に移行する段階で上方修正されたことにより、同国石油需要も速報値(前年同月比2.7%程度減少の日量2,003万バレル)から確定値に移行する段階で上方修正されている。なお、2022年6月の米国石油需要は、2019年6月の当該需要(日量2,065万バレル)(確定値)を0.6%程度上回っている。他方、2022年8月の米国石油需要(速報値)は日量2,005万バレルと前年同月比で2.5%程度の減少となった。ガソリン及び留出油等の需要が前年同月比で減少となったことが同国石油需要の減少に影響しているものと考えられる。また、7月の日量1,987万バレル、前年同月比1.5%程度の減少から、石油需要量は増加する一方、前年同月比の減少率は拡大しているが、これは8月のガソリン及び留出油需要量が7月からは増加したものの、8月の留出油需要は前年同月を相当程度下回ったことによるものである。なお、2022年8月の米国石油需要は、2019年8月の当該需要(日量2,116万バレル)(確定値)を5.2%程度下回っている。他方、夏場のドライブシーズンに伴うガソリン需要期の終了が視野に入るとともに、米国製油所での原油精製処理量が減少傾向となった一方、同国の戦略石油備蓄(SPR)から原油が供給され続けた(8月5日の週から9月9日の週にかけ1週当たり340~841万バレルの原油が供給されており、9月9日の週の841万バレルのSPRからの原油供給は1982年8月以降の同国SPR統計史上最高水準であった)こともあり、8月上旬から9月上旬にかけ原油在庫は総じて増加傾向となり、平年幅上限を上回る状態は継続している(図13参照)。そして、留出油在庫が平年幅下限付近に位置する量となったものの、原油及びガソリン在庫が平年幅上限を超過する量となったことから、原油とガソリンを合計した在庫、そして原油、ガソリン及び留出油を合計した在庫は、いずれも平年幅上限を超過する状態となっている(図14及び15参照)。

図12 米国石油需要の伸び(2006~22年)

図13 米国原油在庫推移(2003~22年)

図14 米国原油+ガソリン在庫推移(2003~22年)

図15 米国原油+ガソリン+留出油在庫推移(2003~22年)

2022年8月末のOECD諸国推定石油在庫量の対前月末比での増減に関しては、原油については、欧州では、主要ガソリン輸出先である米国において7月以降ガソリン需要が不振であったことを一因として、ガソリン製造利幅が縮小しつつあったことから、軽油製造に伴う利幅は維持されていたにもかかわらず、製油所の稼働が上昇することなく安定的に推移するとともに、それに見合った量の原油供給がなされたものと見られることから、在庫はほぼ横這いとなった。しかしながら、米国の原油在庫は減少となった他、2019年以来の個人の外出制限のない夏場のドライブシーズンを迎えた日本においてもガソリン需要の盛り上がりを見据えて製油所の原油精製処理量が増加したこともあり、原油在庫は減少した。この結果、OECD諸国全体では原油在庫は減少となったが、平年幅上限を超過する状態は継続している(図16参照)。石油製品については、欧州では米国のガソリン需要不振から製油所の稼働が抑制されるとともに石油製品製造活動が不活発化したものと見られる結果、かえって中間留分を中心として在庫は減少した。しかしながら、米国では、暖房シーズンではないことによるプロパン需要の低下に伴い当該製品在庫が増加したり、冬用ガソリンの利用時期終了に伴いガソリンに混入していたブタンの需要減少によりその他の石油製品在庫等が増加したりしたことにより、石油製品在庫は増加した。また、日本においても、西日本を中心として降雨量が多いなど天候が不順であったこともあり、新型コロナウイルス感染抑制のための個人の外出規制等が緩和されていたにもかかわらず、行楽のための乗用車向けガソリン需要が新型コロナウイルス感染拡大前である2019年8月の水準を相当程度下回ったものと見られるなど、どちらかというと低調であったことに加え、冬場の暖房シーズンに伴う灯油需要期に向けた灯油在庫の積み上げが進んだこともあり、石油製品在庫は増加した。そして、欧州の石油製品在庫減少が米国及び日本の石油製品在庫増加で相殺されて余りあったことにより、OECD諸国全体の石油製品在庫は増加となったものの、平年幅下方付近に位置する量となっている(図17参照)。そして、原油在庫が平年幅上限を超過する量となっている一方、石油製品在庫が平年幅下方付近に位置する量となっていることから、原油と石油製品を合計した在庫は平年幅上方付近に位置する量となっている(図18参照)。なお、2022年8月末時点のOECD諸国推定石油在庫日数は58.4日と7月末の推定在庫日数(58.2日)から増加している。

図16 OECD諸国原油在庫推移(2005~22年)

図17 OECD諸国石油製品在庫推移(2005~22年)

図18 OECD諸国石油在庫(原油+石油製品)推移(2005~22年)

8月10日に1,700万バレル台後半程度の水準であったシンガポールのガソリンを含む軽質留分在庫は、8月17日には1,600万バレル台後半程度の量へと減少した。8月24日には1,700万バレル台前半程度の水準へと回復したものの、8月31日には1,600万バレル台前半程度、9月7日及び14日には1,500万バレル台後半程度の、それぞれ量となるなど、8月中旬から9月中旬にかけ、当該在庫は減少傾向となった。中国では、石油製品輸出補助枠(ガソリン、ジェット燃料及び軽油で合計450万トン)が付与された(当該輸出枠付与は同国一部都市での新型コロナウイルス感染抑制のための封鎖措置実施に伴う石油需要低迷による国内在庫の積み上がりを緩和するためのものであったと指摘する向きもある)旨6月7日に伝えられた(なお、別途低硫黄重油輸出枠も付与されたと同日報じられた(推定325万トンが付与されたものと見られる))他、7月6日にはガソリン、軽油及びジェット燃料等の石油製品輸出枠500万トン、及び低硫黄重油輸出枠250万トンが、それぞれ追加で付与された旨7月7日に伝えられたこともあり、7月下旬を中心として中国からのシンガポール向けのガソリン輸出が一時持ち直したものの、それ以降は中国からシンガポールへの石油製品輸出の主流が軽油等の中間留分に移行した(後述)一方、中国からシンガポールへのガソリン輸出は低調となった。加えて、5月28~30日の米国戦没将兵追悼記念日(メモリアル・デー)を以て米国では夏場のドライブシーズンに伴うガソリン需要期に突入するとともに季節的なガソリン需給引き締まり観測が市場で拡大したことにより米国からのガソリン輸出が減少した。このため、しばしば米国からガソリンを輸入していたアフリカ諸国が、相対的に安価なシンガポールを含むアジア諸国等からのガソリン輸入を活発化させる場面が見られた。このようなこともあり、シンガポールのガソリンを含む軽質留分在庫が減少傾向となったものと考えられる。しかしながら、6月13日時点の全米平均ガソリン小売価格がEIA週間統計史上最高水準に到達したこと等もあり、特に7月に入って以降米国のガソリン需要が前年同期を顕著に下回るようになったことに加え、8月に入って以降は夏場のドライブシーズンに伴うガソリン需要期の終了が市場関係者の視野に入り始めたこと、中国政府が新たに150万トンの石油製品(ガソリン、ジェット燃料及び軽油が対象となるものと見られる)輸出枠を石油会社に対し付与する予定である旨9月14日に伝えられた他、9月15日には中国政府が自国の経済回復のため石油会社に対し別途1,500万トン相当の石油製品輸出枠の付与を検討している旨報じられたことが、アジア市場でのガソリン価格を抑制する形で作用した結果、8月中旬から9月中旬にかけてのガソリンとドバイ原油との価格差(この場合従来ガソリン価格がドバイ原油価格を上回っていた)は縮小する傾向を示したうえ、一時ドバイ原油価格がガソリン価格を上回る場面も見られた。

また、3月28日以降新型コロナウイルス感染抑制のために都市封鎖措置を実施した中国の上海市では6月1日に当該措置が解除されたが、8月29日以降、深圳市、大連市、広州市、及び四川省成都市等を含めた、中国の一部都市において新型コロナウイルス感染抑制のため都市封鎖措置等が実施されるなどしたうえ、気温の上昇による家計部門での空調のための電力需要増加と干魃による水力発電量低下の影響で8月15~30日において中国四川省と重慶市が産業及び商業部門での電力供給を制限したことにより、地域の製造活動に支障が発生したこともあり、同国経済が軟調に推移した(8月31日に中国国家統計局から発表された8月の同国製造業購買担当者指数(PMI)は49.4と7月(49.0)に続き当該部門拡大と縮小の分岐点である50を下回った)こともあり、同国等でのプラスチックを含む石油化学製品需要が不振であったことが、原料となるナフサ需要に負の影響を与えたと見られる他、8月末以降に実施される予定である日本や韓国を含むアジア諸国等におけるナフサ分解装置のメンテナンス作業に伴うナフサ需要の下振れ可能性を市場関係者が意識しつつあったことが、アジア市場でのナフサ価格に下方圧力を加えた一方、原油価格の下落にナフサ価格の下落が追い付かない場面が見られたこととから、8月中旬から9月中旬にかけてのナフサとドバイ原油との価格差(この場合ナフサ価格がドバイ原油価格を下回っている)は比較的限られた範囲内で推移した。

8月10日には700万バレル台半ば程度の水準であったシンガポールの中間留分在庫は、8月17日には700万バレル台後半程度の量へと増加した。8月24日には700万バレル台前半程度の水準へと低下したものの、8月31日には700万バレル台後半程度、9月7日には800万バレル台前半程度、9月14日には850万バレル台半ば程度の、それぞれ量となるなど、8月中旬から9月中旬にかけ、当該在庫は増加傾向となった。2022年初頭以降シンガポールや欧州での軽油を含む中間留分在庫が総じて低水準で推移したことにより、ガソリンに比べ軽油の価格が堅調に推移したこともあり、付与された石油製品輸出枠を利用して中国の精製業者が軽油等をシンガポール方面に輸出したことが、シンガポールでの中間留分増加の一因となっているものと考えられる。このように、シンガポールにおける中間留分在庫が増加傾向となったことが、アジア市場での軽油価格を抑制する形で作用したものの、当該在庫は9月14日時点で依然前年同期を22%程度下回る状態となっていた他、ロシアのウクライナへの事実上の侵攻実施に伴う西側諸国等による対ロシア制裁の実施やロシアから石油を輸入する欧州諸国等の石油会社に対する評判リスク(Reputation Risk)への懸念から欧州が消費する石油製品の中心である軽油のロシアからの購入を欧州諸国等の石油会社が敬遠したと見られることもあり、欧州での中間留分在庫も8月中旬から9月中旬にかけ増加傾向とはなったものの、前年同期を大幅に下回ったままの状態(9月15日時点で前年同期比21%程度減少)となるなど、世界的に軽油需給の引き締まり感が意識されやすい状況となっていたことが、軽油価格を下支えしたことから、8月中旬から9月中旬初頭頃にかけては、アジア市場での軽油とドバイ原油の価格差(この場合軽油価格がドバイ原油価格を上回っている)は比較的限られた範囲で変動した。しかしながら、中国政府が石油会社に対し150万トンの石油製品輸出枠を付与する予定である旨9月14日に伝えられた他、9月15日には、中国政府が石油会社に対し1,500万トン相当の石油製品輸出枠付与を検討している旨報じられたことにより、中国から石油製品輸出が促進されるとの観測が市場で増大したことが、アジア市場での軽油価格に下方圧力を加えた結果、9月中旬初頭以降は軽油とドバイ原油の価格差は縮小する傾向を示した。

8月10日に1,700万バレル強程度の水準であったシンガポールの重油在庫は、8月17日には1,800万バレル台後半程度、8月24日には2,100万バレル強程度、そして8月31日には2,200万バレル台後半程度の、それぞれ量へと増加した。しかしながら、9月7日には2,000万バレル弱程度、9月14日には1,900万バレル台半ば程度の、それぞれ量へと減少した。それでも、8月中旬から9月中旬にかけ、シンガポールの重油在庫は増加傾向を示した。8月から9月にかけ、世界各地域では気温が低下傾向となるとともに、夏場の空調向け電力供給のための発電部門での重油需要が頭打ちになりつつあったものと見られることが、シンガポールでの重油在庫増加傾向の背景にあるものと考えられる。そしてこのように重油在庫が増加傾向を示したことに加え、9月14日には中国政府が275万トンの低硫黄重油輸出枠を石油会社に対し付与した旨報じられたことが、重油価格に下方圧力を加えたこともあり、8月中旬から9月中旬にかけアジア市場での高硫黄重油とドバイ原油との価格差(この場合高硫黄重油価格がドバイ原油価格を下回っている)は拡大する傾向を示した一方、同時期低硫黄重油とドバイ原油との価格差(この場合低硫黄重油価格がドバイ原油価格を上回っている)は縮小する傾向を示した。

 

3. 2022年8月中旬から9月中旬にかけての原油市場等の状況

2022年8月中旬から9月中旬にかけての原油市場においては、9月5日に開催される予定であるOPECプラス産油国閣僚級会合で減産措置強化を行う必要があるかもしれない旨サウジアラビアのアブドルアジズ エネルギー相が明らかにしたと8月22日に報じられたことに加え、ロシアからの欧州向け天然ガス供給減少による天然ガスからの燃料転換に伴う石油需要増加観測や、イラン核合意正常化に向けた西側諸国等とイランとの協議を巡る不透明感の増大等が原油相場に上方圧力を加えた結果、8月12日に1バレル当たり92.09ドルであった原油価格(WTI)は8月29日には97.01ドルへと上昇した。しかしながら、その後は米国金融当局関係者が積極的な政策金利引き上げ姿勢を示唆したり、中国で新型コロナウイルス感染抑制のための都市封鎖措置等が実施されたりしたこと等により、米国や中国等での経済減速に伴う石油需要の伸びの鈍化懸念が市場で強まったこと等が、原油相場に下方圧力を加えたことにより、9月上旬から中旬にかけ原油価格は1バレル当たり80~90ドルを中心とする領域で変動した(図19参照)。

図19 原油価格の推移(2003~22年)

8月8日に欧州連合(EU)により提示された、イラン核合意正常化のための西側諸国等とイランとの間での協議妥結に向けた最終草案に対し、要求する主要事項が充足されているのであればイランは受諾可能である旨8月12日に国営イラン通信(IRNA)が報じたことで、当該協議妥結に伴う米国の対イラン制裁緩和によるイランからの原油供給拡大期待が増大した流れを8月15日の市場が引き継いだことに加え、8月15日に中国国家統計局から発表された7月の同国鉱工業生産が前年同月比3.8%の増加と6月の同3.9%の増加から伸びが鈍化した他、市場の事前予想(同4.6%の増加)を下回ったうえ、併せて中国国家統計局から発表された7月の同国小売売上高が前年同月比2.7%の増加と6月の同3.1%の増加から伸びが鈍化した他市場の事前予想(同5.0%増加)を下回ったこと、また、同日中国国家統計局から発表された7月の同国原油精製処理量が5,321万トン(推定日量1,256万バレル)と6月の5,490万トン(同1,340万バレル)から減少した他、日量としては2020年3月(この時は5,004万トン、推定日量1,182万バレル)以来の低水準に到達したことにより、中国の経済及び石油需要回復に対する悲観的な見方が市場で増大したこと、8月15日に米国ニューヨーク連邦準備銀行から発表された8月のニューヨーク地区製造業景況感指数(ゼロが当該部門拡大と縮小の分岐点)が、マイナス31.2と7月のプラス11.1から低下した他、市場の事前予想(プラス5.0)を下回ったことで、同国経済減速と石油需要の伸びの鈍化に対する懸念が市場で増大したこと、8月15日に発表された中国経済指標類で同国経済が減速しつつある旨示唆されたこともあり、安全資産としての米ドル購入が進んだことにより、米ドルが上昇したことから、この日の原油価格は前週末終値比で1バレル当たり2.68ドル下落し、終値は89.41ドルとなった。8月16日も、8月15日に発表された7月の中国鉱工業生産及び小売売上高が市場の事前予想を下回った他、7月の中国原油精製処理量が日量ベースで2020年3月以来の低水準に到達したことにより、中国経済及び石油需要回復に対する悲観的な見方が市場で増大した流れを引き継いだことに加え、8月16日に米国商務省から発表された7月の同国新築住宅着工件数が年率144.6万戸と、6月の同159.9万戸から減少、2021年2月(この時は同143.0万戸)以来の低水準に到達した他、市場の事前予想(同152.7~154.0万戸)を下回ったことで、米国経済減速と石油需要の伸びの鈍化観測が市場で増大したことから、この日の原油価格の終値は1バレル当たり86.53ドルと前日終値比で2.88ドル下落した。この結果原油価格は8月15~16日の2日間で1バレル当たり合計5.56ドルの下落となった。しかしながら、8月17日には、これまでの原油価格下落に対し値頃感から原油を買い戻す動きが市場で発生したことに加え、8月17日に米国エネルギー省エネルギー情報局(EIA)から発表された同国石油統計(8月12日の週分)で、原油在庫が前週比706万バレル、ガソリン在庫が同464万バレルの、それぞれ減少と、市場の事前予想(原油在庫同28万バレル程度の減少~同80万バレル程度の増加、ガソリン同100~110万バレル程度の減少)に反し、もしくは事前予想を上回って減少している旨判明したことにより、米国の石油需給引き締まり感を市場が意識したことから、この日の原油価格の終値は1バレル当たり88.11ドルと前日終値比で1.58ドル上昇した。8月18日も、これまでの原油価格下落に対し値頃感から原油を買い戻す動きが市場で発生した流れを引き継いだことに加え、8月17日にEIAから発表された米国石油統計で、原油及びガソリン在庫が市場の事前予想に反し、もしくは事前予想を上回って減少している旨判明したことに伴い、同国石油需給引き締まり感を市場が意識した流れを引き継いだこと、8月18日に米国労働省から発表された同国新規失業保険申請件数(8月13日の週分)が25.0万件と前週比で2,000件減少したうえ、市場の事前予想(26.4~26.5万件)を下回ったことから、この日の原油価格は前日終値比で1バレル当たり2.39ドル上昇し、終値は90.50ドルとなった。また、8月19日も、米国の政策金利引き上げは同国経済への影響と均衡させる必要がある旨この日米国リッチモンド連邦準備銀行のバーキン総裁が明らかにしたことにより、米国金融当局による金融引き締め政策実施に伴う同国経済減速に対する市場の悲観的な見方が後退したことに加え、ロシアから欧州方面に天然ガスを輸送するノルド・ストリーム1・パイプライン(天然ガス輸送能力日量53億立方フィート)を、現在唯一稼働している天然ガス送出用タービンのメンテナンス作業実施により、8月31日から9月2日にかけ停止する旨ロシア国営ガス会社ガスプロムが発表した(メンテナンス作業終了時に、技術的な不具合が見当たらなければ、足元の天然ガス輸送量(輸送能力の約20%に相当する12億立方フィート程度)による輸送を再開する意向である旨併せてガスプロムは明らかにした)ことで、ロシアから欧州方面への天然ガス供給減少に伴う欧州での天然ガス需給引き締まり懸念が市場で強まったことにより、オランダTTF天然ガス先物価格が大幅に上昇したこともあり、欧州を中心として天然ガスから石油への燃料転換が促進されるとの観測が市場で増大したことから、この日の原油価格の終値は1バレル当たり90.77ドルと前日終値比で0.27ドル上昇した。この結果原油価格は8月17~19日の3日間で1バレル当たり合計4.24ドルの上昇となった。

また、中国四川省での渇水による水力発電量低下と気温上昇による空調稼働のための電力需要増加に伴い電力需給が逼迫したこともあり、8月15~20日に実施されていた同省内の企業の操業制限を、8月25日まで延長する旨8月21日に報じられたため、中国経済混乱に伴う石油需要下振れ観測が市場で発生したことに加え、イラン核合意正常化に向けた西側諸国等とイランとの協議において、8月8日に欧州連合(EU)から提示された協議妥結のための最終草案に対し、8月15日にイランが提出した意見は妥当であると思われることから、米国の肯定的な対応を期待する旨8月22日にEUのボレル外交安全保障上級代表が明らかにしたことにより、当該協議妥結に伴う米国の対イラン制裁緩和とイランからの原油供給拡大観測が市場で増大したこと、8月26日に米国ワイオミング州ジャクソンホールにおいて開催される予定であるカンザスシティ連邦準備銀行主催年次シンポジウムで予定される米国連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長の講演で、パウエル氏が政策金利の引き上げを含む積極的な金融引き締め方針を表明するとの観測が市場で広がったこともあり、米国株式相場が下落したこと、欧州天然ガス価格が大幅に上昇した(機材点検のため8月31日~9月2日にノルド・ストリーム1・パイプラインの操業を全面停止する旨ロシア国営ガス会社ガスプロムが8月19日午後遅く(中央ヨーロッパ時間)に発表したことに対し、9月2日以降も操業が再開しないのではないかとの懸念が市場で増大した流れを8月22日に引き継いだことによる)こともあり、欧州経済減速懸念が市場で増大したことを反映し、ユーロが下落したうえ、ジャクソンホールで予定される講演でパウエルFRB議長が積極的な金融引き締め方針を表明するとの観測が市場で強まりつつあることにより、米ドルが上昇したことから、8月22日の原油価格の終値は1バレル当たり90.23ドルと前週末終値比で0.54ドル下落した(なお、この日を以てNYMEXの2022年9月渡し原油先物契約は取引を終了したが、10月渡し原油先物契約のこの日の終値は1バレル当たり90.36ドル(前日終値比0.08ドルの下落)であった)。8月23日には、原油の現物価格から乖離して先物価格が下落しつつあることから、9月5日に開催される予定である次回OPECプラス産油国閣僚級会合では、減産措置強化を決定する必要があるかもしれない旨サウジアラビアのアブドルアジズ エネルギー相が明らかにしたと8月22日午前遅く(米国東部時間)に報じられたことにより、この先の石油需給引き締まり感を市場が意識したことに加え、カスピ海パイプラインコンソーシアム(CPC、原油輸送能力日量140万バレル)のロシアの黒海沿岸都市ノボロシイスク近郊にあるユジュナヤ・オゼレエフカ(Yuzhnaya Ozereyevka)原油出荷ターミナルでタンカーに原油を積載する際に使用される1点係留装置(SPM:Single Point Mooring)3基のうち2基(SPM-1及びSPM-2)が、浮力タンクに接続するホースの付属部品に亀裂が発生したことにより操業を停止した(8月5日にはSPM-1の稼働停止がCPC株主に通知された他、SPM-2も8月17日から稼働が停止しているとされ、修理までには最大2ヶ月を要すると8月23日に報じられた)ことに加え、唯一稼働していたSPM-3係留装置についても、8月26日までに点検を開始するため、同装置からの原油の船積みを遅延させるよう原油輸送業者に要請された旨CPCが明らかにしたと8月23日に伝えられたことにより、カザフスタンからの原油供給減少懸念が市場で増大したこと、8月24日にEIAから発表される予定である米国石油統計(8月19日の週分)で原油及びガソリン在庫が前週比で減少している旨判明するとの観測が市場で発生したこと、8月23日に米国大手金融情報サービス会社S&Pから発表された8月の同国総合購買担当者指数(PMI)(50が景気拡大と縮小の分岐点)(速報値)が45.0と7月の47.7から低下、2020年5月(この時は37.0)以来の低水準に到達した他、同日米国商務省から発表された7月の同国新築住宅販売件数が年率51.1万戸と前月比で12.6%減少、2016年1月(この時は同50.5万戸)以来の低水準に到達した他、市場の事前予想(同57.5万戸)を下回ったことにより、米国経済減速を市場が意識したこともあり、米ドルが下落したことから、この日の原油価格は前日終値比で1バレル当たり3.51ドル上昇し、終値は93.74ドルとなった。8月24日も、この日EIAから発表された米国石油統計で、原油在庫が前週比で328万バレルの減少と市場の事前輸送(同93~250万バレル程度の減少)を上回って減少している旨判明したことに加え、イラン核合意正常化に向けた西側諸国等とイランとの間での協議妥結のために、8月8日に米国及びイランに向けEUが提示した最終草案に対し、8月15日にイランが送付した意見書に対する返答を米国が送付した旨8月24日に米国国務省のプライス報道官が発表したが、米国国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官が、当該協議は妥結に向け一層接近しているものの、なお両国間で意見の相違は残っている旨明らかにしたと8月24日に報じられたことにより、当該協議妥結に伴う米国の対イラン制裁緩和とイランからの原油供給拡大に対する市場の楽観的な見方が後退したことから、この日の原油価格の終値は1バレル当たり94.89ドルと前日終値比で1.15ドル上昇した。この結果原油価格は8月23~24日の2日間で1バレル当たり合計4.66ドルの上昇となった。8月25日には、これまでの原油価格上昇に対し利益確定の動きが市場で発生したことに加え、8月24日にEIAから発表された米国石油統計で、8月19日の週の米国ガソリン需要が前週比で日量91万バレル程度減少した他、前年同期比で11.9%減少(4週平均でも7.0%の減少)した旨判明したことにより、米国石油需給緩和感を市場が意識した流れを引き継いだこと、8月26日に予定される米国ワイオミング州ジャクソンホールでの米国カンザスシティ連邦準備銀行開催の年次シンポジウムでのパウエルFRB議長の講演を控えた原油先物契約の持ち高調整が市場で発生したことから、この日の原油価格の終値は1バレル当たり92.52ドルと前日終値比で2.37ドル下落した。しかしながら、8月25日の原油価格下落に対し値頃感から原油を買い戻す動きが8月26日の市場で発生したことに加え、原油の現物価格から乖離して先物価格が下落しつつあることから、9月5日に開催される予定である次回OPECプラス産油国閣僚級会合では減産措置強化を決定する必要があるかもしれない旨サウジアラビアのアブドルアジズエネルギー相が明らかにしたと8月22日午前遅く(米国東部時間)に報じられたことに対し、UAEはサウジアラビアの考えに同調する旨関係筋がロイター通信に明らかにしたと8月26日に伝えられたことにより、OPECプラス産油国の減産措置強化に伴う石油需給引き締まり感を市場が意識したことから、この日の原油価格は前日終値比で1バレル当たり0.54ドル上昇し、終値は93.06ドルとなった。

また、8月27日には、リビア国内で対立する2つの政府(首都トリポリを拠点とする、国連、トルコが支援する国民合意政府(GNA: Government of National Accord)と、エジプト、UAE及びロシア等が支援する、東部トブルクを拠点とする代表議会(HoR: House of Representative))を支援する民兵組織間で衝突が発生、23人が死亡するなどしたことにより、同国の政情不安に伴う原油供給減少懸念が8月29日の市場で増大したことに加え、イラン核合意正常化に向けた西側諸国等とイランとの協議の妥結(8月8日にEUが最終草案を米国及びイランに提示していた)を巡り、8月24日に米国がイランに対し送付した意見書に対するイラン側回答提出が9月2日以降となる見込みである旨8月28日に伝えられたことにより、イラン核合意正常化に伴う米国の対イラン制裁緩和及びイラン原油供給拡大の時期が遅延するとの観測が市場で増大したこと、8月31日にEIAから発表される予定である米国石油統計(8月26日の週分)で原油、ガソリン及び留出油各在庫が前週比で減少している旨判明するとの観測が市場で発生したことから、8月29日の原油価格の終値は1バレル当たり97.01ドルと前週末終値比で3.95ドル上昇した。しかしながら、8月30日には、米国ニューヨーク連邦準備銀行のウイリアムズ総裁、リッチモンド連邦準備銀行のバーキン総裁及びアトランタ連銀のボスティック総裁が、同国物価上昇沈静化に向けた政策金利引き上げに前向きな姿勢を示唆した旨8月30日に報じられた他、欧州中央銀行(ECB)理事会委員であるオランダのクノット中央銀行総裁、ドイツのナーゲル連邦銀行総裁、エストニアのミュラー中央銀行総裁及びベルギーのウンシュ中央銀行総裁が、物価上昇抑制のため積極的な政策金利の引き上げを支持する旨8月30日に示唆したことにより、欧米諸国等の経済減速と石油需要の伸びの鈍化懸念が市場で増大したことに加え、2021年10月10日に実施されたイラク国会議員選挙の結果議会多数派を占めたものの、その後政権樹立に失敗し、議員が辞職したサドル派勢力の指導者であるサドル師(イスラム教シーア派であるがイランとは距離を置く)の支持者が8月29日に対立する親イラン派勢力と衝突したうえ、首相府の建物に突入するなど、暴動状態に発展しつつあったことに対し、イラクからの原油供給には影響は生じていない旨イラク国営石油販売会社(SOMO: State Organization for Marketing of Oil)の責任者であるヤシリ(Yassiri)氏が8月30日に明らかにした他、8月30日にサドル師が支持者に対し占拠した建物等から退去するよう命令したことにより、イラクの政情不安拡大と同国からの原油供給への支障に対する懸念が市場で後退したことから、この日の原油価格は前日終値比で1バレル当たり5.37ドル下落し、終値は91.64ドルとなった。8月31日も、この日中国国家統計局から発表された8月の同国製造業購買担当者指数(PMI)が49.4と7月(49.0)に続き当該部門拡大と縮小の分岐点である50を下回ったうえ、8月29日に中国の深圳市、8月30日に同国大連市、そして8月31日には中国広州市において、新型コロナウイルス感染抑制のための一部地区における都市封鎖措置等が、それぞれ実施されたことにより、中国経済減速と石油需要の伸びの鈍化懸念が市場で増大したことに加え、米国の政策金利を2023年初頭にかけ4.00%(現在は2.25~2.50%)に引き上げたうえ、その後2023年においては当該金利を同水準で維持する必要がある旨8月31日に米国クリーブランド連邦準備銀行のメスター総裁が明らかにしたことにより、政策金利引き上げに伴う米国経済減速懸念が市場で増大したこともあり、米国株式相場が下落したことから、8月31日の原油価格の終値は1バレル当たり89.55ドルと前日終値比で2.09ドル下落した。さらに、9月1日に中国深圳市において新型コロナウイルス感染抑制のための個人の外出及び経済活動制限が一層強化された(一部地区における娯楽施設の営業停止及び9月1日に予定されていた学校での夏休み後の授業再開の延期等を含む)他、同日同国四川省成都市でも2,100万人の住民を対象として都市封鎖措置が実施されたことにより、中国経済減速と石油需要の伸びの鈍化懸念が市場で増大したことに加え、9月1日に米国労働省から発表された同国新規失業保険申請件数(8月27日の週分)が23.2万件と前週比で0.5万件減少、6月24日の週(この時は23.1万件)以来の低水準となった他、市場の事前予想(24.8万件)を下回ったうえ、同じく9月1日に米国供給管理協会(ISM)から発表された8月の同国製造業景況感指数(50が当該部門拡大と縮小の分岐点)が52.8と前月比で横這いとなった他、市場の事前予想(51.9~52.0)を上回ったことにより、米国金融当局による政策金利引き上げ等のさらなる金融引き締め策実施の観測が市場で増大したこともあり、米ドルが上昇したことから、この日の原油価格は前日終値比で1バレル当たり2.94ドル下落し、終値は86.61ドルとなった。この結果原油価格は8月30日~9月1日の3日間で1バレル当たり合計10.4ドル下落した。ただ、9月2日には、これまでの原油価格下落に対し値頃感から原油を買い戻す動きが市場で発生したことに加え、イラン核合意正常化に向けた西側諸国等とイランとの間での協議妥結に向け、イランが米国に対し建設的な提案を行った旨9月1日午後遅く(米国東部時間)に報じられたことに対し、イランからの提案は建設的ではない旨米国が明らかにしたと9月1日夜遅く(同)に伝えられたことにより、イラン核合意正常化を巡る協議妥結に伴う米国の対イラン制裁緩和とイランからの原油供給拡大に対し悲観的な見方が市場で増大したこと、9月2日に開催された主要7ヶ国政府(G7)財務相会合で、ロシア産原油に対し12月5日に、同国産石油製品に対し2023年2月25日に、それぞれ価格に上限を設定する措置を実施することで合意したこと(価格水準等は各種情報等をもとに追って決定する意向)に対し、9月2日の当該会合前にロシア大統領府のペスコフ報道官が価格上限を設定する企業への石油販売を拒否する姿勢を示唆したことにより、この先の欧州諸国等での石油需給引き締まり感を市場が意識したこと、8月31日から9月3日朝(現地時間)の予定でメンテナンス作業を実施することに伴い操業を停止していた、ロシアから欧州向けに天然ガスを輸送する「ノルド・ストリーム1・パイプライン」が、ロシアのポルトバヤ(Portovaya)天然ガス送出基地において、天然ガス送出のために使用されていた唯一のタービンでオイル漏洩が発見されたことにより、当該タービン改修のため操業再開を延期する(再開時期未定)旨9月2日にロシア国営ガス会社ガスプロムが明らかにしたことにより、欧州での天然ガス需給引き締まりに伴い石油への燃料転換が進むのではないかとの観測が市場で発生したこと、9月5日に開催される予定であるOPECプラス産油国閣僚級会合を前にした持ち高調整が市場で発生したことから、この日の原油価格は前日終値比で1バレル当たり0.26ドル上昇し、終値は86.87ドルとなった。

9月5日は、米国労働者の日(レイバー・デー)に伴う休日に伴い、この日の米国原油先物契約の終値は計上されなかったが、同日開催されたOPECプラス産油国閣僚級会合において、日量10万バレルといった限定的な規模での原油生産目標の引き下げが決定されたものの、必要に応じ機動的にOPECプラス産油国閣僚級会合の開催をOPECプラス産油各国に呼びかけるようOPECプラス議長(サウジアラビアのアブドルアジズ エネルギー相)に要請したことから、原油価格下落抑制に向けた断固たる姿勢をOPECプラス産油国が市場に対して発信した格好となったこともあり、この先の石油需給引き締まり感を市場が意識したことが、原油相場に上方圧力を加えた反面、9月5日に開催されたOPECプラス産油国閣僚級会合での減産措置強化の決定を受け、米国バイデン政権がエネルギーの供給拡大及び価格低下のために必要な全ての方策を実施することを確約する旨表明したことに加え、9月5日に開催されたOPECプラス産油国閣僚級会合で決定した日量10万バレルの原油生産目標の引き下げでは石油需給引き締めの効果は殆どないとの認識が市場で広がったこと、9月1日午後6時(現地時間)より新型コロナウイルス感染抑制のための都市封鎖措置と大規模新型コロナウイルス感染検査を実施している中国四川省成都市で、9月5~7日においても大規模検査(従って併せて都市封鎖措置)を継続する旨9月4日に同市政府が発表するなど、中国における新型コロナウイルス抑制のための個人の外出規制及び経済活動制限等の実施が長期化しつつあることにより、同国経済減速と石油需要の伸びの鈍化懸念が市場で増大したこと、サウジアラビア国営石油会社サウジ・アラムコが10月のアジア向け原油販売価格を引き下げた旨9月6日に伝えられたこと、9月6日に米国供給管理協会(ISM)から発表された8月の同国非製造業景況感指数(50が当該部門拡大と縮小の分岐点)が56.9と7月の56.7から上昇したうえ、市場の事前予想(54.9~55.3)を上回ったことにより、同国経済減速懸念が市場で後退したこともあり、米ドルが上昇したことが、原油相場に下方圧力を加えたことから、この日の原油価格の終値は1バレル当たり86.88ドルと前週末終値比で0.01ドルの上昇にとどまった。また、9月7日には、この日中国税関総署から発表された8月の同国輸出(米ドルベース)が前年同月比7.1%、輸入が同0.3%の、それぞれ増加と、7月(輸出同18.0%、輸入同2.3%の、それぞれ増加)から増加率が縮小、両者とも2022年4月(この時は輸出が前年同月比3.7%、輸入が同0.0%の、それぞれ増加)以来の低水準の増加率となった他、市場の事前予想(輸出が12.8~13.0%、輸入が同1.1%の、それぞれ増加)を下回ったうえ、8月の同国原油輸入量が4,035万トン(推定日量953万バレル)と、前年同月(4,453万トン、同1,052万バレル)比で9.4%の減少となっている旨判明したことにより、同国経済減速と石油需要の伸びの鈍化懸念が市場で増大したことに加え、中国四川省成都市の新型コロナウイルス感染者数が9月6日時点で121人と9月5日の90人から増加したこともあり、同市の大半の地域で実施されている、新型コロナウイルス感染抑制のための都市封鎖措置を9月7日から延長する(期限は未発表)旨同市が明らかにしたと9月7日に伝えられた他、同国の他の一部都市でも個人の外出制限等が実施されている旨9月7日に報じられたことにより、同国の経済減速と石油需要の伸びの鈍化懸念が市場で拡大したこと、物価上昇沈静化達成に必要とされる限り金融政策面での対応を継続する意向である旨9月7日に米国連邦準備制度理事会(FRB)のブレイナード副議長及び米国リッチモンド連邦準備銀行のバーキン総裁が明らかにしたうえ、同日クリーブランド連邦準備銀行のメスター総裁も、住居賃借料の高騰が米国物価指数に反映されていない部分があることにより、今後も物価指数の上昇が継続する可能性がある旨9月7日に指摘したこともあり、米国金融当局の積極的な金融引き締め実施方針が示唆されたことにより、米ドルが上昇したことから、この日の原油価格は前日終値比で1バレル当たり4.94ドル下落し、終値は81.94ドルとなった。しかしながら、9月8日には、これまでの原油価格下落に対し、値頃感から原油を買い戻す動きが市場で発生したことに加え、西側諸国等が(ロシア産の石油や天然ガス)価格に上限を設定するのであれば、石油等のエネルギーの供給を停止する旨9月7日にロシアのプーチン大統領が警告したことにより、西側諸国等における石油需給引き締まり感を市場が意識した流れを9月8日の市場が引き継いだことから、9月8日の原油価格の終値は1バレル当たり83.54ドルと前日終値比で1.60ドル上昇した。9月9日も、これまでの原油価格下落に対し値頃感から原油を買い戻す動きが市場で発生した流れを引き継いだことに加え、9月9日に中国国家統計局から発表された8月の同国の消費者物価指数(CPI)が前年同月比2.5%、生産者物価指数(PPI)が同2.3%の、それぞれ上昇と、市場の事前予想(CPI同2.8%、PPI同3.1~3.2%の、それぞれ上昇)を下回ったこともあり、今後中国政府による景気刺激のための金融緩和措置実施がより容易になることにより、同国経済及び石油需要が回復に向かうとの観測が市場で増大したこと、2022年10月に終了する予定である、米国戦略石油備蓄(SPR)からの原油の供給に対し、以降もSPRからの原油供給を検討している旨9月8日に米国エネルギー省(DOE)のグランホルム長官が表明したことに対し、米国バイデン政権はSPRからのさらなる原油供給は検討していない旨DOE幹部が明らかにしたと9月9日に報じられたことにより、石油需給緩和期待が市場で後退したこと、これまでの下落に対し値頃感から株式を買い戻す動きが市場で発生したことにより、米国株式相場が上昇した他、株式相場上昇に伴い投資家のリスク許容度が拡大したうえ、9月13日に米国労働省から発表される予定である8月の同国CPIを控えた持ち高調整が発生したこともあり、米ドルが下落したことから、9月9日の原油価格は前日終値比で1バレル当たり3.25ドル上昇し、終値は86.79ドルとなった。この結果原油価格は9月8~9日の2日間で1バレル当たり合計4.85ドル上昇した。

また、イラン核合意正常化を巡る西側諸国等との協議に対するイランの姿勢を疑問視する旨の共同声明を英国、フランス及びドイツが9月10日に発表した一方、同日イラン外務省が同声明を非建設的なものであると非難したことにより、イラン核合意正常化による米国の対イラン制裁緩和及びイランからの原油供給拡大に対する市場の期待が後退したことに加え、9月13日に米国労働省から発表される予定である同国消費者物価指数(CPI)発表を控えた持ち高調整が市場で発生したこともあり、米ドルが下落したことから、9月12日の原油価格は前週末終値比で1バレル当たり0.99ドル上昇し、終値は87.78ドルとなった。ただ、9月13日には、この日米国労働省から発表された8月の米国消費者物価指数(CPI)が、前年同月比で8.3%の上昇と7月の同8.5%上昇からは伸び率が縮小したものの、市場の事前予想(同8.1%の上昇)を上回ったことで、米国金融当局による積極的な政策金利引き上げが継続する結果、米国等の経済が減速するとの観測が市場で広がったこともあり、米ドルが上昇するとともに米国株式相場が下落したことから、この日の原油価格の終値は1バレル当たり87.31ドルと前日終値比で0.47ドル下落した。しかしながら、9月1日以降新型コロナウイルス感染抑制のための都市封鎖措置を実施してきた中国四川省成都市が9月15日から段階的に個人の外出規制及び経済活動制限等を緩和する旨9月14日に発表したことにより、中国経済減速と石油需要の伸びの鈍化懸念が市場で後退したことに加え、労働者の待遇改善につき経営側と合意できなければ、9月16日午前0時1分以降米国鉄道会社労働組合がストライキを実施する旨伝えられる中、一部労働組合が暫定合意案受入を拒否した旨9月14日に伝えられたことにより、同国内での石油を含むエネルギー輸送が混乱を来すことへの懸念が市場で増大したことから、9月14日の原油価格は前日終値比で1バレル当たり1.17ドル上昇し、終値は88.48ドルとなった。9月15日には、これまでの原油価格上昇に対し利益確定の動きが市場で発生したことに加え、米国鉄道労働組合と経営者との間で労働条件改善につき暫定合意に至った旨9月15日に同国労働省が発表したため、9月16日からのストライキ実施による燃料輸送への支障に対する市場の懸念が後退したこと、中国が自国の経済回復のため1,500万トン相当の石油製品輸出枠付与を検討している旨9月15日に報じられたことにより世界石油製品需給緩和感を市場が意識したこと、2022年第3四半期は世界経済成長がさらに鈍化する可能性がある旨9月15日に国際通貨基金(IMF)が明らかにしたうえ、各国の金融当局が物価上昇沈静化のために政策金利を引き上げることにより世界的な景気後退局面が到来する恐れがある旨9月15日に世界銀行が指摘したことにより、世界石油需要の下振れ懸念が市場で増大したことから、この日の原油価格の終値は1バレル当たり85.10ドルと前日終値比で3.38ドル下落した。それでも、9月16日には、この日中国国家統計局から発表された8月の同国鉱工業生産が前年同月比で4.2%、小売売上高が同5.4%の、それぞれ増加と、市場の事前予想(鉱工業生産同3.8%、小売売上高が同3.3~3.5%の、それぞれ増加)を上回って増加している旨判明したことにより、新型コロナウイルス感染抑制のための都市封鎖等に伴う同国経済減速と石油需要鈍化懸念が市場で後退したことに加え、9月15日夜(現地時間)(9月16日午前3時20分(同)とする情報もある)にイラク南部のバスラ港にある原油貯蔵施設で原油漏洩が発生したことに伴い、同施設での船積み(日量100万バレル超とされる)作業が停止した他、施設の修理が完了するまで操業停止は継続する(数時間で復旧するとの情報や最大4~5日を要するとの情報等が錯綜した)旨9月16日に報じられたことにより、イラクからの原油供給低下に伴う世界石油需給引き締まり感を市場が意識した(その後原油漏洩は停止したうえ、同施設からの原油出荷は徐々に回復しつつある旨イラクのバスラ・オイル・カンパニーが表明したと9月16日午後(米国東部時間)に伝えられる)ことが、原油相場に上方圧力を加えた一方、9月16日に米国石油サービス会社ベーカー・ヒューズ(Baker Hughes)から発表された同国石油坑井掘削装置稼働数が同日時点で599基と前週比8基増加(同国石油水平坑井掘削装置稼働数は577基と同9基増加)している旨判明したことで、この先の米国原油生産増加期待が市場で増大したことに加え、9月15日夕方(米国東部時間)に発表された米国宅配大手フェデックスの2022年6~8月期業績が市場の事前予想を相当程度下回ったうえ、世界貨物取扱量が減少していることに伴い同社の事業を取り巻く状況が大幅に悪化しつつある旨同社が示唆したことにより、世界経済減速に対する懸念が市場で増大したこともあり、米国株式相場が下落したことが、原油相場に下方圧力を加えたことから、この日の原油価格は前日終値比で1バレル当たり0.01ドルの上昇にとどまり、終値は85.11ドルとなった。

 

4. 原油市場における主な注目点等

原油市場において地政学的リスク要因面で注目すべき点は、まずロシアのウクライナへの事実上の侵攻を巡る情勢であろう。9月2日に開催された主要7ヶ国政府(G7)財務相会合において、2022年12月5日にロシア産原油に対し、2023年2月5日にロシア産石油製品に対し、それぞれ上限を超過する価格での売買については海上輸送への保険付保を禁じること等を内容とする措置を発動することで合意した(上限価格は追って決定するとしているが、9月7日に米国財務省のアデエモ副長官は、ロシアの(石油開発・)生産コスト(1バレル当たり44ドル程度と指摘されるものの、諸説ある)を下回らないことにより、ロシアの石油生産意欲を阻害しない一方、原油等を販売することによりロシアに多額の利益がもたらされないような範囲で価格を設定する意向である旨明らかにした)。しかしながら、G7財務相会合に先立ち、ロシア大統領府のペスコフ報道官は、ロシア産石油価格上限を設定する国及び企業に対しては石油を販売しない旨警告した他、9月7日には、ロシアのプーチン大統領も、西側諸国等が(ロシア産の石油や天然ガス)価格に上限を設定するのであれば、そのような諸国に対し石油等のエネルギー供給を停止する意向である旨表明した。また、9月6日には、ロシアのシュルギノフ エネルギー相は、(価格上限を設定する諸国等に対し、石油の販売を差し止める代わりに、価格上限を設定しない)アジア諸国等への石油輸出を拡大する意向である旨明らかにした。このため、今後ロシアからの欧州諸国等への石油供給が減少する反面、中国、インド等といった消費国がより多くのロシア産原油等を引き取る一方、従来中国やインド等が購入していた非ロシア産石油を引き取らなくなることにより、そのような石油が欧州諸国等に向かうなどすることを通じ、石油供給が平準化される方向に向かうといった展開が想定されるが、そのような平準化がどの程度円滑に行われていくかに市場関係者の注目が集まるものと見られる。この場合、平準化が順調に行われるようであれば、原油相場への影響は最小限にとどまる一方、平準化が行われる過程において輸送面等で支障が発生するようであれば、原油相場が乱高下することも予想される。

また、9月9日には、欧州連合(EU)のエネルギー担当相が臨時会合を開催し、天然ガス火力発電を除く発電事業から得られる収益に上限を設定する他、天然ガス価格の高騰に苦慮する電力会社を支援することや、ロシア産に限定しない形で天然ガス価格に上限を設けることを含めた、緊急対策を打ち出すよう欧州委員会に提案することで合意した。これに対し、9月14日に欧州委員会のフォンデアライエン委員長は、風力、太陽光及び原子力等といった、発電費用が相対的に低廉な発電所に対する収入上限の設定(1メガワット時当たり180ユーロ(約180ドル)と、足元の販売価格の半分以下になるものとされる)、及び2022年度からの石油、天然ガス及び石炭会社に対する超過利潤の33%の拠出要求等を実施する方針である旨表明した(天然ガス価格上限については関係者間で議論が収束しないため引き続き協議するとした)。これに対し、前述の通り9月7日にプーチン大統領は天然ガス価格上限を設定する国等に対しエネルギー供給を停止する意向である旨示唆している。また、ロシアから欧州方面に天然ガスを輸送するノルド・ストリーム1・パイプライン(天然ガス輸送能力日量53億立方フィート)において、唯一稼働していた天然ガス送出用タービンのメンテナンス作業実施により、8月31日から9月2日にかけ操業を停止する旨8月19日にロシア国営ガス会社ガスプロムが発表した(メンテナンス作業終了時に、技術的な不具合が見当たらないようであれば、足元の天然ガス輸送量(輸送能力の約20%に当たる約12億立方フィート)の輸送を再開する意向である旨併せてガスプロムは明らかにした)が、メンテナンス作業実施中に同タービンでオイル漏洩が発見されたことにより、当該タービン改修のためパイプラインの操業再開を延期する(再開時期未定)旨9月2日にガスプロムが明らかにしたことにより、欧州での天然ガス需給引き締まり観測が市場で増大した。

また、6月8日午前11時40分(現地時間)に、米国テキサス州にあるフリーポートLNG出荷基地(操業者:フリーポートLNG社、出荷能力年間1,500万トン)で火災が発生した(安全バルブに不具合があり、圧力過多となったことにより破損したパイプからLNG及びメタンが漏洩し炎上したものと米国運輸省パイプライン危険物安全局(PHMSA: Pipeline and Hazardous Materials Safety Administration)が暫定的に報告したと6月30日に伝えられる)が、当初少なくとも3週間程度当該施設の操業が停止する旨6月8日にフリーポートLNG社が発表していたものの、その後9月までに部分的に操業を再開、2022年末までに全面的な操業再開を目指す旨6月14日に同社が発表したことにより、当初見込みよりも長期に渡り米国からのLNG輸出が相当程度(同国の通常のLNG輸出量である約8,400万トンの約20%弱程度)減少する旨判明した。8月3日にはフリーポートLNG社は、PHMSAとの間でフリーポートLNG施設事故を巡る是正措置に関する同意書を締結、それに従ってフリーポートLNG社は作業を実施し、当該作業完了時にPHMSAが操業再開を承認すれば、10月上旬にはほぼ1,500万トン相当のLNG生産を再開できるものとフリーポートLNG社は考えている旨同日同社は明らかにしたが、8月23日には、同社は、11月下旬までにLNG施設の稼働を85%に到達させるものの、100%の稼働は2023年3月を目標とする旨発表するなど、当該施設のLNG輸出再開展望については不安定な状態となっている。

他方、8月16日には、ドイツ連邦ネットワーク庁のミュラー(Mueller)長官が、足元で目標としている11月1日までに95%の天然ガス貯蔵充填率を達成したとしても、ロシアからの天然ガス供給が全面的に停止してしまうのであれば、ドイツの天然ガス需要の2ヶ月半程度しか賄えない旨警告した。しかしながら、2022年初頭以降、欧州の天然ガス需要は産業部門を中心として前年を10%程度下回ると指摘されるなど不振であり(気温上昇による空調稼働用電力供給のため発電部門での天然ガス使用量が10%程度増加したにもかかわらず、天然ガス価格上昇もあり、民生部門で10%、産業部門で17%、それぞれ消費量が減少していることにより、2022年初頭以降欧州天然ガス需要が前年同期比で11%減少している旨石油・天然ガス市場関係調査機関ウッド・マッケンジーが指摘したと7月15日に報じられている)、このような需要の下振れにより、2022~23年の欧州の冬においては広範な天然ガス不足が発生することにはならないと見る向きもある(ミュラー長官も、地域的な天然ガス不足が発生することはあっても、ドイツ全土に渡り天然ガス不足が発生するわけでは必ずしもない旨示唆したと8月18日に報じられる)。それでも、2022~23年の冬において極端に気温が低下する場面が見られたり、ガス田やLNG出荷施設において装置に不具合が発生することにより供給停止が複数見られたりする等するようであれば、2022~23年の冬において欧州を中心とした地域の天然ガス需給が極度に引き締まったり、2022~23年の冬は乗り切れても、2023~24年以降の冬の天然ガス需給が引き締まる可能性が高まるとのリスクは存在する。

世界天然ガス市場においては、以上のような不透明要因が存在していることもあり、市場がこのような要因を意識することにより、2022~23年の冬場の暖房用天然ガス需要期を控え、供給不安が拡大することを通じ、天然ガス価格が高騰する結果、相対的に安価な石油へ燃料転換が促進されるとの観測(IEAは2022年第4四半期月から2023年第1四半期にかけ日量70万バレルの石油需要増加が見込まれるとの見解を9月14日に明らかにしている)が市場で増大することを通じ原油相場に上方圧力が加わる可能性がある。

ただ、欧州での天然ガスを含むエネルギー価格高騰により、当該地域での経済が失速する(また、このまま欧州の天然ガス(及びLNG)価格が高水準を維持するようであれば、天然ガスを含むエネルギー多消費産業を中心として欧州から製造拠点等が移転する(その場合、移転先の有力候補の一つは天然ガスを含めエネルギー価格が相対的に低廉である米国になろう)リスクが増大すると見る向きもある)との不安感から、ユーロが下落する反面米ドルが上昇することにより、原油相場が抑制される場面が見られることもありうる。

他方、イラン核合意正常化に向けた西側諸国等とイランとの間での協議妥結のため、8月8日に米国及びイランに向けEUが提示した最終草案に対し、8月15日にイランが行った回答への意見書を米国が提出した旨8月24日に米国国務省のプライス報道官が発表したが、米国国家安全保障会議(NSC)のカービー報道官は、当該協議は妥結に向け一層接近しているものの、なお意見の相違は残っている旨明らかにしたと8月24日に報じられた。その後、イランが米国に対し建設的な提案を行った旨9月1日午後遅く(米国東部時間)に報じられたものの、イランの行った提案は建設的なものではなかった旨米国が明らかにしたと9月1日夜遅く(同)に伝えられる。また、9月5日には、イラン外務省が、国際原子力機関(IAEA)によるイラン核関連施設の査察の停止がイラン核合意正常化に向けた協議妥結のための重要条件の一つである旨表明した。これに対し同日EUのボレル外交安全保障上級代表はイラン核合意正常化を巡る西側諸国等とイランとの協議妥結が遠のきつつあることを懸念する旨発言した。さらに、9月7日にはIAEAがイラン核開発活動に関する報告書を取り纏め、その中でイランがIAEAに対し核開発活動実施を申告していない3施設で核開発活動の痕跡が認められたことにつき、IAEAの信頼を得られるような説明をイラン側が行っていない他、イランの濃縮度60%の濃縮ウラン保有量が5月30日の前回報告書作成時から12.5キログラム増加し55.6キログラムに到達した旨指摘した(なお、イラン核合意で規定されるイランの保有可能なウランの濃縮度上限は3.67%である)。9月8日には、イラン核合意正常化に向けた西側諸国等とイランの協議が決裂した場合のために、米国は代替の選択肢を準備する意向である旨同国のバイデン大統領が明らかにしたと9月8日にNSCのカービー氏が発表した。また、9月8日には、ロシア及びイラン革命防衛隊への無人機供与に関与したとして、米国財務省がイランの企業4社及び個人1人に対し、米国内資産凍結等を内容とする制裁を発動した。また、7月15日に発生したアルバニア政府に対するサイバー攻撃にイランが関与していたとして、9月7日にアルバニア(2013年にイラン反体制派組織ムジャヒディン・ハルク(Mujahideen Khalq)の受入をアルバニアが表明、実際に3,000人程度の組織構成員を受け入れたことにより、イランとの関係が悪化していた)がイランとの間での断交を発表、これに伴い9月9日にはバイデン政権がイランのハディブ情報相に対し米国内の資産凍結を内容とする制裁を発動した(イランがサイバー攻撃を実施したとのアルバニア側の主張は根拠がないものであると9月7日にイラン側は反論している)。また、9月10日には、英国、フランス及びドイツがイラン核合意正常化に向けた協議に対するイランの姿勢を疑問視する旨の共同声明を発表したが、これに対し、同日イラン外務省は当該声明を非建設的なものであるとして非難した。また、9月12日には、米国のブリンケン国務長官が、イランが核合意正常化に向けた協議とは関係のない問題につき協議しようとし続けている(イランがIAEAに申告していない施設でのIAEAによる核査察を終了させることを指しているものと見られる)こともあり、短期的には協議が妥結する可能性は高くない旨明らかにした。

このようにイラン核合意正常化に向けた協議は紆余曲折を経る状況となっている。さらに、イラン最高指導者ハメネイ師の健康状態が悪化しているため、同師が行事への出席を全て見合わせている旨9月16日に伝えられたこともあり、イランの核合意正常化に向けた西側諸国等とイランとの早期の協議妥結に伴う米国の対イラン制裁緩和とイランからの原油供給拡大を巡る不透明感が増大していることにより、今後も米国の対イラン制裁緩和とイランの原油供給拡大への市場の懸念が増減することを通じ、原油相場に圧力が加わる可能性がある(なお、イランは現在洋上を中心として9,300万バレル程度の貯蔵原油を保有していると8月29日に伝えられているところからすると、イラン核合意正常化に向けた協議が妥結し米国の対イラン制裁が緩和されれば、貯蔵されている原油の払い出しにより同国の供給が比較的早い時期に拡大する可能性はある)。

リビアでは、地方部族等による抗議行動に伴う同国内石油供給関連施設の封鎖等が解消した結果、同国の原油生産量は日量121万バレルと、直近の平常時の水準程度にまで回復した(因みに2022年7月は日量68万バレルであった)。しかしながら、首都トリポリを拠点とする、国連及びトルコが支援する国民合意政府(GNA: Government of National Accord)及びGNAと行動をともにする暫定国民統一政府(GNU: Government of National Unity))と、エジプト、UAE及びロシア等が支援する、東部トブルクを拠点とする代表議会(HoR: House of Representative)及びHoRを支援するリビア国民軍(LNA: Libya National Army)との間での対立が完全に解消されたわけではなく、8月27日にも両勢力を支援する民兵組織間で衝突が発生、32人が死亡するなどしており、今後も両勢力の対立が高まるようであれば、油田等石油生産関連施設が占拠される等することにより、同国の原油生産量が減少する結果、原油価格が上振れすることも想定されるため、注意が必要であろう。

原油価格に影響を与えうる経済面での要因としては、まず、中国の新型コロナウイルス感染抑制のための都市封鎖を含む個人の外出規制及び経済活動制限等を巡る状況が挙げられよう。中国では8月29日に深圳市、8月30日には大連市に、新型コロナウイルス感染抑制のため一部地区で都市封鎖措置等が実施された他、8月31日には中国広州市で経済活動制限措置が実施された。また、中国深圳市では9月1日からの一部地区における娯楽施設の営業停止及び9月1日に予定されていた学校での夏休み後の授業再開の延期等を含め個人の外出規制及び経済活動制限が強化された他、中国四川省成都市でも、9月1日に2,100万人の住民を対象として都市封鎖措置が実施された(当初9月4日までの予定であったが、その後9月7日までに延長されたとされる)。さらに、9月2日にも、深圳市は、新型コロナウイルス感染抑制のために一部地区に発出されていた経済活動制限を延長した他、9月3日には同市のほぼ全域を対象として都市封鎖を実施した。9月5日には当該都市封鎖は緩和されたものの、なお個人の外出規制や経済発動の制限は実施され続けている。また、中国四川省成都市の新型コロナウイルス感染者数が9月6日時点で121人と9月5日の90人から増加したこともあり、都市封鎖措置を延長する(期限は未発表)旨同市が明らかにしたと9月7日に伝えられた他、同国の他の一部都市でも個人の外出制限等が実施されている旨9月7日に報じられた。さらに、中国北京市にある中国伝媒大学において新型コロナウイルス感染が拡大しつつあることにより、個人の外出規制を強化した旨9月11日に北京市政府が明らかにした(なお、中国四川省成都市では9月15日正午(現地時間)より新型コロナウイルス新規感染者が消滅した約半数の地区で段階的に新型コロナウイルス感染抑制のための規制を解除した他、9月19日には市全域で都市封鎖を解除した)。このように、中国では、拡大した新型コロナウイルス感染に対し徹底した対策(いわゆる「ゼロコロナ政策」)を実施し続けていることもあり、中国政府が余程強力な景気対策を講ずる姿勢を見せる等するようでなければ、新型コロナウイルス感染抑制対策実施に伴う同国経済減速による石油需要の伸びの鈍化への不安感が市場で払拭できない結果、原油相場が抑制されやすいものと考えられる。

8月26日に米国ワイオミング州ジャクソンホールで開催された米国カンザスシティ連邦準備銀行による年次シンポジウムにおける同国連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長の講演で、パウエル議長は、物価上昇沈静化を図るべく高水準の政策金利を継続する意向である旨明らかにするとともに、その過程では経済成長が下振れする恐れがある旨示唆した他、他の複数の米国金融当局関係者も、物価上昇沈静化を重視する姿勢を見せた。そのような中、9月13日に発表された8月の米国CPIは前年同月比で8.3%の上昇と7月の同8.5%上昇からは伸び率が縮小したものの、市場の事前予想(同8.1%の上昇)を上回ったうえ、8月のエネルギー及び食料を除くCPIが前年同月比で6.3%の上昇と、7月の同5.9%の上昇から上昇が加速する兆候が見られた。このようなこともあり、9月20~21日に開催される予定である米国連邦公開市場委員会(FOMC)において、0.75%の政策金利引き上げが決定される確率が、9月5日(前回のOPECプラス閣僚級会合開催時)時点では60.0%(残りの40.0%は0.50%の引き上げ)となっていたものが、9月17日現在では0.75%の金利引き上げが決定される確率が82.0%(残りの18.0%は1.00%の引き上げ)となるなど、米国金融当局の大幅な政策金利引き上げがより積極的になるとの観測が市場で強まるなどしていることから、この面では、米国等の経済減速に伴う石油需要の伸びの鈍化懸念により原油相場に下方圧力が加わる場面が見られうるものと考えられるが、9月20~21日に開催される予定のFOMCにおける政策金利を含む実際の金融政策決定内容とFOMC開催後の金融当局関係者の金融引き締め政策に対する発言等も原油価格に影響を与える可能性もある。

また、9月8日に開催された欧州中央銀行(ECB)理事会では、史上初めて0.75%の政策金利の引き上げが決定された他、景気後退の恐れがあるにもかかわらず、物価上昇沈静化を優先させることにより、さらなる政策金利引き上げの姿勢が示唆された。今後もECBによる政策金利の大幅引き上げ観測が市場で継続することにより、この先の欧州経済の減速と同地域での石油需要の伸びの鈍化懸念が市場で増大することが原油価格の上昇を抑制する形で作用する可能性がある。ただ、反面、政策金利引き上げに伴いユーロが上昇するとともに米ドルの下落が目立つようだと、かえって原油相場に上方圧力が加わる場面が見られることもありうるので注意が必要であろう。

そして、10月に入ると米国主要企業等の2022年7~9月等の業績が発表される予定であるので、それら業績もしくは2022年以降の業績見通し(もしくは見通しの修正)等の内容によっては米国株式相場が変動する結果、原油相場に影響を及ぼすこともありうる。

米国では、9月5日の労働者の日の休日を以て夏場のドライブシーズンに伴うガソリン需要期が終了したが、通常冬場の暖房シーズン到来に伴う暖房用石油製品需要期が市場の視野に入り始めるのは10月中旬頃以降となるため、それまではガソリン需要が低下する反面、暖房用のLPG及び留出油等の需要期にはまだ早いとの意識が市場関係者の心理を支配する他、秋場のメンテナンス作業の実施に伴い製油所の稼働及び原油精製処理活動が低下する結果原油の購入が不活発となることにより、季節的な需給の緩和感が市場で意識されることを通じ、例年この時期は原油相場に下方圧力が加わりやすい。

他方、大西洋圏ではハリケーン等の暴風雨シーズンに突入しており(暴風雨シーズンは例年6月1日~11月30日である)、特に8月後半以降10月前半までは1年で最もハリケーン等の暴風雨が発生しやすい時期となる。ハリケーン等の暴風雨は、進路やその勢力によっては、米国メキシコ湾沖合の石油等生産関連施設に影響を与えたり、湾岸地域の石油受入及び積出港湾関連施設や製油所の活動に支障を発生させたり(実際に製油所が冠水し操業が停止することもあるが、そうでなくても周辺の送電網が暴風で切断されることにより、製油所への電力供給が遮断されることを通じ操業が停止するといった事態が想定される)、さらには、メキシコの沖合油田や原油輸出港の操業を停止させたりすること等により米国のメキシコからの原油輸入に影響を与えたりする(2021年には米国メキシコ湾岸地域はメキシコから日量52万バレル程度の原油を輸入した)。8月4日に発表された米国海洋大気庁(NOAA)及び同日時点のコロラド州立大学の見通しによると、2022年の大西洋圏でのハリケーンシーズンは平年よりも活発な暴風雨の発生が予想されている(表3参照)。最近では米国の原油生産に占める陸上の割合が上昇してきているものの、それでも米国メキシコ湾沖合でもそれなりの量の原油が生産されている(2021年は当該地域で日量170万バレルの原油を生産しており、同年の米国の原油生産量全体の約15%を占めた)他、米国メキシコ湾岸は引き続き同国の精製活動の中心地域である(2021年の当該地域の原油精製処理能力は日量817万バレルと米国原油精製処理能力全体の約47%を占めた)こともあり、今後のハリケーン等の実際の発生状況やその進路、そしてその予報等によっては石油市場関係者間で石油供給に対する懸念が強まるとともに、その影響が原油価格に織り込まれる場面が見られることもありうる。

表3 2022年の大西洋圏でのハリケーン等発生個数予想

また、2022年10月に終了する予定である、米国戦略石油備蓄(SPR)からの原油の供給(5月より6ヶ月間に渡り日量100万バレルの原油をSPRから供給する旨3月30日に米国のバイデン大統領が発表していた)に対し、以降もSPRからの原油供給を検討している旨9月8日に米国エネルギー省のグランホルム長官が表明したことに対し、米国バイデン政権はそのようなことは検討していない旨同国エネルギー省幹部が明らかにしたと9月9日に報じられるなど、10月以降のSPRからの原油供給を巡る取り扱いについては依然流動的な状況であるように見受けられる。それでも、冬場の暖房シーズンに伴う暖房用石油製品需要期突入に向け原油価格の上昇が加速するようであれば、SPRからの原油供給検討につき米国政府等から情報発信がなされることにより、石油需給緩和展望が市場で発生することを通じ、原油相場に下方圧力が加わるといった展開となることもありうる。

OPECプラス産油国は、10月5日に閣僚級会合を開催する予定である。9月5日に開催された前回の閣僚級会合以降、原油価格は1バレル当たり80ドル台を中心とした範囲で上下に変動しているものの、持続的な上昇もしくは下落の傾向を示すことなく、比較的安定して推移している。次回会合で議論するものと見られる原油生産目標の対象期間であると見られる2022年11月は、北半球では冬場の暖房シーズンに伴う暖房用石油製品需要期に突入することにより、季節的な石油需給引き締まり感を市場関係者が意識するとともに原油相場に上方圧力が加わりやすくなる。しかしながら、現時点では2022年11~12月のOPECプラス産油国原油生産目標を同年10月と同水準で据え置いて原油生産を実施したとしても、2022年全体としては世界石油供給が需要を日量28万バレル上回るなど若干の供給過剰となるもの予想される(表4参照)(このシナリオには原油生産の変動の大きいリビアを含んでいることに注意する必要があるが、仮に2022年10~12月にリビアの原油生産量が8月の日量108万バレルからゼロへと落ち込んだとしても、2022年全体の世界石油需給バランスは日量1万バレルの供給過剰とほぼ均衡することが示唆される)。また、欧米諸国等は積極的な政策金利引き上げを含む金融引き締め策を推進する姿勢を示している他、中国は依然として新型コロナウイルス感染拡大に伴い都市封鎖措置を含む個人の外出規制及び経済活動制限を強化する方針を堅持している見られること等により、今後もこれら諸国における経済減速及び石油需要の伸びの鈍化懸念が市場で広がる恐れがあるなど、この先の石油需給バランス(及びそれに対する市場の観測)を巡っては不透明感が漂う。このようなことから、少なくともOPECプラス産油国としては原油生産目標を引き上げる動機が発生し難いものと考えられる。むしろ原油生産目標を不用意に引き上げれば、現時点では日量56万バレルの供給過剰になると見られる2022年第4四半期の石油需給緩和感がさらに強まる結果、原油相場に下方圧力が加わるといった展開にもなりうることから、例えば、この先次回OPECプラス産油国閣僚級会合に向け原油価格が上昇傾向になったとしても、OPECプラス産油国は原油生産目標の引き上げには慎重になるものと見られる。また、次回OPECプラス産油国閣僚級会合に向け、原油価格が下落傾向となったり、特に次回閣僚級会合直前において原油価格が急落する兆候が見られたりした場合には、OPECプラス産油国は原油価格の下落防止のため、原油生産目標を引き下げる決定を下す可能性もある。

表4 世界石油需給バランスシナリオ(2022年)(2022年9月16日時点)

全体としては、米国等での夏場のドライブシーズンに伴うガソリン需要期が終了したことに加え、欧米諸国等の金融当局による積極的な金融引き締め政策の推進姿勢の維持や、中国での新型コロナウイルス感染抑制のための都市封鎖措置等の実施方針継続に伴う、これら諸国等の経済減速と石油需要の伸びの鈍化懸念が原油相場に下方圧力を加えやすいものと考えられる。しかしながら、イラン核合意正常化を巡る西側諸国等とイランの対立によるイランからの原油供給拡大時期の遅延、西側諸国等によるロシア産石油価格上限設定に対しロシアが石油販売を拒否する姿勢を見せていることに伴う石油供給混乱懸念、OPECプラス産油国による原油価格維持を企図した慎重な原油生産方針等が原油相場を少なくとも下支えするか、事態の展開具合によっては、原油相場に上方圧力を加える可能性もある。従って当面原油価格はこのような上方及び下方圧力に挟まれる格好となりやすいものと考えられる。

 

以上

(この報告は2022年9月20日時点のものです)

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