ページ番号1009470 更新日 令和4年9月20日

天然ガス需要の増加とLNG価格高騰によりメキシコでのLNG開発に弾み

レポート属性
レポートID 1009470
作成日 2022-09-20 00:00:00 +0900
更新日 2022-09-20 13:19:42 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 天然ガス・LNG
著者 舩木 弥和子
著者直接入力
年度 2022
Vol
No
ページ数 6
抽出データ
地域1 中南米
国1 メキシコ
地域2
国2
地域3
国3
地域4
国4
地域5
国5
地域6
国6
地域7
国7
地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 中南米,メキシコ
2022/09/20 舩木 弥和子
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概要

  1. アジアを中心とする天然ガス需要の増加とLNG価格高騰により、既存および今後敷設予定のパイプラインを利用して、比較的安価な米国産ガスを確保して、メキシコでLNG輸出プロジェクトを立ち上げる取り組みが活発化している。
  2. Sempraは、Energía Costa Azul(ECA)LNG受入・貯蔵・再ガス化ターミナルに液化設備を追加する計画を進めており、2024年に操業を開始する予定である。Sempraは、連邦電力委員会Comisión Federal de Electricidad(CFE)と協力して、Vista Pacifico LNGプロジェクト、Salina Cruz LNGターミナル等の共同開発も推進する。
  3. New Fortress Energy(NFE)はCFEと、Altamira沖に新たなLNGハブを構築することで協力協定を締結、液化設備にモジュール式のFast LNGプロジェクトを導入することで、コストを削減しつつ、早期稼働を目指す。
  4. Mexico Pacific Limitedは、Sonora州Puerto LibertadでSaguaro Energíaプロジェクトを推進しており、20年間にわたり年間260万トンのLNGを供給する売買契約をShellと締結した。
  5. LNG Allianceは、2022年後半にAmigo LNGプロジェクトの建設を開始する予定だ。
  6. 過去3年間に、米国からのガス輸出量、ガス輸送能力が増強されたことが、メキシコからのLNG輸出プロジェクトの立ち上げを後押ししており、メキシコ政府からも支援が得られると考えられる。ただし、メキシコと米国、カナダの間で進行中の貿易紛争が、これらのプロジェクトに影響を与える可能性が懸念されている。

 

1. はじめに

アジアを中心とする天然ガス需要の増加とLNG価格高騰により、複数のLNGプロジェクト開発業者が、既存および今後敷設予定のパイプラインを利用して、比較的安価な米国産ガスを確保して、メキシコの太平洋岸および大西洋岸でLNG輸出プロジェクトを立ち上げる取り組みを加速している。

(図1)LNGプロジェクト等関連地図
(図1)LNGプロジェクト等関連地図
出所:JOGMEC調査部 天然ガス・LNGデータハブ2022に加筆、修正

 

(表1)メキシコで計画中、建設中のLNGプロジェクト
プロジェクト名 場所 会社および参加者 液化能力(万トン/年) 状況 備考
Energía Costa Azul Baja California州 Sempra、IEnova、TotalEnergies 325+950

建設中

(2024年稼働予定)
2020年11月、最終投資決定。
Vista Pacífico LNG Sinaloa州Topolobampo Sempra、IEnova 400 計画中 2022年7月、Sempraはこれらプロジェクトの共同開発を推進するためCFEと契約を締結。
Salina Cruz LNGターミナル Oaxaca州Salina Cruz CFE、Sempra 300 計画中
Tamaulipas州Altamira NFE、CFE 140×複数トレイン 計画中 2022年7月、NFEとCFEが協力協定締結。
Saguaro Energía Sonora州Puerto Libertad Mexico Pacific Limited 1,410 計画中

2022年7月、20年間にわたり年間260万トンのLNGをShellが引き取る売買契約を締結。

Amigo LNG Cortez海沿岸 LNG Alliance 700 計画中 2022年後半に建設開始予定。

出所:各種資料に基づきJOGMEC作成

 

2. SempraとCFE、Vista Pacifico LNGプロジェクトとSalina Cruz LNGターミナルを共同開発へ

Sempraは、Baja California州Ensenadaにある既存のEnergía Costa Azul(ECA)LNG受入・貯蔵・再ガス化ターミナルに天然ガスの液化能力を追加する計画を進めている。ECA LNGは必要な許認可を全て取得し、2020年11月に最終投資決定を行い、現在、液化能力、年間325万トンのフェーズ1を建設中だ。海上バース、防波堤、LNGタンク(貯蔵容量各16万立方メートル)2基、パイプラインなど、既存のインフラを活用する計画だ。フィードガスは、TC PipeLinesが米国に所有するNorth BajaガスパイプラインとIEnovaがBaja California州に保有する全長300キロメートルのRosaritoパイプラインを経由して供給される。2024年に操業を開始する予定とされている。

ConocoPhillipsは2022年7月に、SempraよりPort Arthur LNGプロジェクトの権益30%を取得する仮契約を結んだが、ECA LNGプロジェクトのフェーズ2に関しても、オフテイクと権益を購入するオプションを保有するとしている。

Sempraはまた、2022年7月末、メキシコ国内のエネルギー関連インフラプロジェクトの共同開発を推進するために、複数の契約を連邦電力委員会Comisión Federal de Electricidad(CFE)と締結した。両者が共同で開発を進めるプロジェクトには、Sinaloa州TopolobampoのVista Pacifico LNGプロジェクト、Sonora州のGuaymas-El Oroパイプラインの再稼働、Oaxaca州のSalina Cruz LNGターミナルが含まれる。

Vista Pacífico LNGについては、2020年11月18日に、米国からメキシコへ2,400億立方フィートの天然ガスを輸出し、年間400万トンを再輸出する申請をSempraが米国エネルギー省(DOE)に提出、DOEは2021年4月にVista Pacífico LNGのこの申請を承認した。液化能力は年間400万トンで、Sempraは2025年に同プロジェクトの稼働を計画している。しかし、同プロジェクトがガスの供給を受ける予定のSempra保有のGuaymas-El Oroパイプラインは、地元の反対運動により現在、稼働を停止している。Vista Pacífico LNGプロジェクトの操業を開始するには同パイプラインが稼働することが必要であり、稼働開始に向け協議が行われてきた。SempraとCFEは、同パイプラインの一部を迂回させ、日時は未定ながらも操業を開始できるようにするとしている。

Salina Cruz LNGターミナルに関しては、CFEが液化能力、年間300万トンの施設を建設する計画だ。現在、米国Texas州から、あるいは、Pemexがメキシコ国内で生産したガスがTC EnergyのSur de Texas-Tuxpanガスパイプラインにより、Veracruz州Tuxpanまで輸送されている。CFEは8月に入り、メキシコ中部および南東部における天然ガスインフラの整備を加速させるため、TC Energyと戦略提携を行い、その一環として、Tuxpanと同じくVeracruz州のCoatzacoalcosを結ぶTGNH Southeast Gatewayパイプライン(総工費45億ドル、総ガス能力:日量13億立方フィート)の共同開発、建設について最終投資決定を行った。Southeast Gatewayパイプラインは2025年中頃までの稼働開始を見込んでおり、これが完成することにより、Salina Cruz LNGターミナルへのガス供給を強化できるとしている。ガスはさらに、メキシコ湾岸と太平洋岸を結ぶJaltipan-Salina Cruzガスパイプラインを経由してSalina Cruz LNGターミナルへ輸送されるが、CNPはJaltipan-Salina Cruzガスパイプラインの拡張も計画している。

 

3. New Fortress Energy、Fast LNGプロジェクトの採用により早期稼働、輸出開始を目指す

New Fortress Energy(NFE)は2022年7月5日、7月1日にCFEと、Tamaulipas州Altamira沖に新たなLNGハブを構築するという内容の協力協定を締結したことを明らかにした。同協定には、生産能力が1トレインあたり140万トン/年の液化設備を少なくとも2トレイン導入し、既存のTC Energy-IEnova Marinoパイプラインを利用して、この液化設備へフィードガスを供給することも含まれている。また、CFEは、ガスの液化やLNGの販売にも参画する予定である。

NFEは、同プロジェクトにより、米国産ガスを迅速にAltamiraに輸送し、液化、欧州に輸出できるようにすることを目指しているという。NFEのWes Edens会長兼CEOはAndrés Manuel López Obrador(AMLO)大統領の継続的な支援に感謝すると述べており、輸出ハブをできるだけ早く稼働させるためにAMLO政権から必要な許認可を迅速に得られる見通しのようだ。

なお、同協定には、NFEが保有するLa Paz市Pichilingue港のLNG再ガス化ターミナルから、CFE所有のBaja California Sur州の複数の発電施設に対する天然ガス供給の拡大、延長についても含まれている。NFEは2021年7月にPichilingue港でLNG再ガス化ターミナルの操業を開始した。同ターミナルは、同地域のCFEの発電設備へ天然ガスを供給してきたが、今回の合意により、Baja California Sur州のCFEの発電設備へのNFEのガス供給契約期間が延長され、天然ガス供給量が増加されることになった。

さらに、NFEが最近建設したBaja California Sur州La Paz市の天然ガス火力発電所(発電容量135MW)をCFEに売却することも同協定に含まれている。同発電所がCFEの発電設備に加わることで、システムの信頼性向上や発電コストの削減が期待される他、CFEが同地域で進めている再生可能エネルギーの利用拡大や温室効果ガス排出量削減のための取り組みを補完することができるという。

NFEは、液化設備について、モジュール式のFast LNGプロジェクトを導入するとしている。これは、沖合の着床式プラットフォームやジャッキアップ・リグ上にガス処理・液化設備(液化能力:年間140万トン)を設置する方式だ。従来のFLNGに比べ稼働開始までの期間が短く、コストも削減できるという。NFEはすでに米国Louisiana州でFast LNGプロジェクトを採用し、開発を進めており、メキシコの案件は2件目の採用となる。同社はすでに、Fluorに建造を発注した[1]

この協定に関しては、これまでLNG輸出の経験がないCFEにLNG輸出に参加する機会を与え、Marinoパイプラインの余剰輸送能力を活用、収益化することができ、CFEがBaja California Sur州で必要とするガスを確保できるといった利点があるとされている。

NFEはまた7月5日に、Lakachガス田開発の資金をPemexに提供し、Pemexが過去に掘削した7坑の坑井を海底インフラに接続し、2023年より生産を開始する計画であると発表した。

Pemexは2007年に、Veracruzから95キロメートル、Coatzacoalcosから131キロメートルの水深1,000メートルの海域でLakachガス田を発見した。2008年後半に天然ガス価格が暴落したことから、経済性の観点からすぐには開発が行われなかった。しかし、Pemexは2012年4月に、国家炭化水素委員会(CNH)がPemexと第三者認証機関から提供された埋蔵量データが一致しないことやPemexがガス価格を過大評価していること等から、同プロジェクトを推進しないよう勧告したにもかかわらず、2016年までに生産を開始することを決定した。開発井6坑が掘削されたが、そこで、作業が中断していた。

Lakachガス田の生産量は日量4億立方フィートと見込まれているが、このうち約半分の日量1億8,600万立方フィート(年140万トン)がAltamira沖のLNGハブとは別に設置されるFast LNG方式の液化設備で液化され、残りはメキシコ国内市場に供給することになるという。

NFEはLakachガス田開発の投資額について言及していないが、Pemexによると、NFEとPemexはLakachガス田の開発に合計15億ドルを投資するとしている。

ただし、同プロジェクトに関しては、CNHとPemexの間で引き続き対立があり、開発が停滞する恐れがある。CNHの承認には、技術的・経済的に実行可能なプロジェクトであることが必要とされているが、Lakachガス田は深海のプロジェクトであることや高コストのプロジェクトであることから、CNHはPemexがこのプロジェクトを引き受けられるか疑問を呈しているというのだ。また、PemexはNFEとサービス契約を締結し、Lakachガス田を開発することを提案しているが、サービス契約では、ガス価格が下落した場合、Pemexが大きな財政的負担を負う可能性があることも懸念されている。

 

4. Mexico Pacific Limited、ShellとSaguaro EnergíaプロジェクトのLNG売買契約締結

Mexico Pacific Limitedは、Sonora州Puerto Libertadでアジア市場向けLNG輸出プロジェクト、Saguaro Energíaを推進している。フェーズ1では液化能力、年間470万トンの液化トレイン2基、タンク2基、バースを、フェーズ2では液化能力、年間470万トンの3番目の液化トレインを建設予定だ。米国Permian Basinから、Sempraが所有するSásabe-Puerto Libertadパイプライン経由でフィードガスが供給される計画となっている。Saguaro Energíaプロジェクトには、メキシコ湾のLNGプロジェクトと比較して、パナマ運河を避けることができ、アジアのエンドユーザーにとって大幅な輸送コストの削減が可能となる他、航路が広く大型LNG船を受け入れることができる、天候の影響を受けにくい、混雑のない専用港であるという利点がある[2]

ShellとMexico Pacific Limitedは2022年7月12日、20年間にわたりSaguaro Energíaから年間260万トンのLNGをShellが引き取る売買契約を締結したことを発表した[3]。同プロジェクトは2026年に商業運転を開始する予定で、México Pacific LimitedのCFO、Sarah Bairstow氏は7月末に、最終投資決定後、すぐに建設を開始する予定であると語った。また、8月上旬には、AMLO大統領が、同政権はこのプロジェクトを支持すると述べている。

 

5. LNG Alliance、2022年後半にAmigo LNGプロジェクトの建設開始を予定

シンガポールのLNG Allianceは、Cortez海沿岸でAmerican Mexican Integrated Gas Operations(Amigo)LNGプロジェクトを開発中で、アジアのLNG市場向けに年間700万トンのLNGを輸出する計画だ。フィードガスは、Sempraが所有し、現在稼働中のSásabe-Puerto LibertadおよびPuerto Libertad-GuaymasパイプラインによりPermian Basinから供給される。LNG Allianceは、同プロジェクトの建設許可を待っているところで、2022年後半には建設を開始する予定だという。

 

6. 終わりに

米国エネルギー省エネルギー情報局(EIA)によると、2022年5月の米国Texas州西部からメキシコへの天然ガス輸出量は日量16億立方フィートと過去最高を記録した。過去3年間、米国からメキシコ中部と南西部にガスを輸送するパイプラインが数多く稼働したことで、2019年には日量6億立方フィートであった米国Texas州西部からメキシコへの天然ガス輸出量は2022年1月から5月には日量14億立方フィートまで増加した[4]。このように、米国からのガス輸出量、ガス輸送能力が増強されたことが、メキシコからのLNG輸出プロジェクトの立ち上げを後押ししていると考えられる。

AMLO大統領も「米国の投資家と共に、液化プラントや肥料プラントの設立、太陽光発電パークの建設を引き続き推進する」と発言しており、メキシコ政府からも支援が得られると考えられる。

ただし、メキシコと米国、カナダの間で進行中の貿易紛争が、これらのプロジェクトに影響を与える可能性がある。米国とカナダは、AMLO政権がPeña Nieto前政権下で行われたエネルギー改革を逆行させ、CFEとPemexに有利な政策を採用しようとしていることを非難している。AMLO大統領は、この紛争が仲裁レベルにまで発展しないようにと、関係する民間企業と直接交渉を行う等対応をとっているというが、民間投資家の投資意欲が減退することが懸念されている。今回、CFEやPemexとパートナーシップを組んで開発を目指すLNGプロジェクトが増加していたが、両者と組むことでプロジェクトをうまく進めようとしたのかもしれない。

また、太平洋岸の各州は犯罪組織の活動が活発で、治安の面で問題がある地域も多く、投資リスクに加え、安全保障リスクも考慮しなければならない。

 

[1] https://splash247.com/new-fortress-energy-contracts-flour-for-second-fast-lng-facility/

[2] https://mexicopacific.com/

[3] https://www.shell.com/business-customers/trading-and-supply/trading/news-and-media-releases/shell-and-mexico-pacific-sign-long-term-lng-sales-and-purchase-agreement.html

[4] https://www.eia.gov/todayinenergy/detail.php?id=53499

 

以上

(この報告は2022年9月20日時点のものです)

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