ページ番号1009471 更新日 令和4年9月26日

ロシア情勢(2022年8月 モスクワ事務所)

レポート属性
レポートID 1009471
作成日 2022-09-22 00:00:00 +0900
更新日 2022-09-26 10:00:02 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 基礎情報
著者 豊島 厚二小松 弘希
著者直接入力
年度 2022
Vol
No
ページ数 15
抽出データ
地域1 旧ソ連
国1 ロシア
地域2
国2
地域3
国3
地域4
国4
地域5
国5
地域6
国6
地域7
国7
地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 旧ソ連,ロシア
2022/09/22 豊島 厚二 小松 弘希
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1. 政治・経済情勢

(1) 国内

政治・経済

LNG生産設備の研究開発に10億ルーブルの予算を割当
  • ミシュスチン首相は、8月17日、ロシア連邦政府令第2289-r号により、国内のLNG生産設備向けの研究開発に10億ルーブルの予算を割り当てることを承認した。予算は政府の準備金から産業商務省に対して配賦され、2021年10月に承認された「2030年までの社会経済発展イニシアティブリスト」のうち、「30.LNG市場のブレイクスルー」の枠組みの中で、当該設備の技術開発等を行うロシア企業に対して資金提供される。
  • 10億ルーブルの内訳は、中規模及び大規模のLNG生産設備を製造する4プロジェクトが対象に含まれている。これにより、これらのプロジェクトの2022年中の立ち上げと一部資金調達が確保される。
  • 政府の公表情報によると、現在ロシアにおいては、合計18件のLNGプロジェクトが実施されている。2021年3月に政府が承認した「長期LNG生産開発計画」によると、これらプロジェクトを通じて、2035年までに年間8,000万トン~1億4,000万トンへの生産量の拡大を見込んでいる。

 

(2) 対外関係

1) トルコ

エルドアン大統領と対面での会談で黒海の穀物輸出問題やエネルギー・貿易関係を議論

  • プーチン大統領は、8月5日、ソチにおいて、トルコのエルドアン大統領と会談し、黒海の穀物輸出の再開に関するトルコ・国連の仲介やウクライナを巡る問題、両国のエネルギー・貿易等に係る関係強化について議論を行った。
  • プーチン大統領は、冒頭ロシアからトルコ経由で欧州に天然ガスを供給するTurk Streamパイプラインに言及し、同パイプラインを通じて、欧州に向けて途切れることなく天然ガスが供給されていることに関し、欧州がトルコに感謝すべきであると指摘した。
  • また、エルドアン大統領と国連の仲介により、黒海経由でのウクライナの穀物輸出の問題が解決され、輸出が再開されたことを紹介し、感謝を表明した。
  • トルコのエルドアン大統領は、ロシアの協力の下で建設が進められるアックユ原子力発電所について言及し、作業は計画通りに進捗しており、将来の稼働開始後は、トルコの電力需要の10%が同発電所から供給される見込みであると紹介した。
エルドアン大統領との会談の様子
エルドアン大統領との会談の様子
写真出典:http://kremlin.ru/events/president/news/69119

2) インドネシア

ジョコ大統領と電話会議で食糧安全保障の問題や次回G20サミットの準備について議論

  • プーチン大統領は、8月18日、インドネシアのジョコ大統領と電話会議を行い、世界の食糧安全保障の問題や本年11月にバリ島において開催予定の次回G20サミットの準備、二国間の貿易・経済協力について議論を行った。
  • プーチン大統領は、トルコ及び国連の仲介の下で進めている穀物輸出の安定化に関する取組状況について、ジョコ大統領に対し説明を行った。
  • 会議後、ジョコ大統領は、プーチン大統領のG20サミットへの参加の意向について明らかにしたものの、本件についてロシア政府からの公式見解は未発表となっている。

 

3) カザフスタン

  • トカエフ大統領と対面での会談で二国間協力や次回CISサミットの開催について議論
  • プーチン大統領は、8月19日、ソチにおいて、カザフスタンのトカエフ大統領と会談し、二国間協力の状況や次回カザフスタンが議長を務めるCISサミットについて議論を行った。また両者は、2022年が両国の外交関係樹立30周年であることを祝福し、本年10月に予定される複数の外交行事について確認した。
  • トカエフ大統領は、ロシアとカザフスタンが世界で最長の陸域国境により隣接している一方、同国境により両国が完全に区切られていることを強調し、両国の将来的な協力を悲観視する必要はないと主張した。
トカエフ大統領との会談の様子
トカエフ大統領との会談の様子
写真出典:http://kremlin.ru/events/president/news/69182

4) インド

マントゥロフ副首相(産業商務大臣)とドバル国家安全保障補佐官が二国間協力を議論

  • マントゥロフ副首相兼産業商務大臣は、8月18日、インドのドバル国家安全保障補佐官と対面で会談し、両国の貿易経済関係の発展と宇宙空間の平和利用等の協力について議論を行った。両者は、貿易、経済、科学技術、文化協力に関する政府間委員会の委員長を務めている。
ドバル国家安全保障補佐官との会談の様子
ドバル国家安全保障補佐官との会談の様子
写真出典:http://government.ru/news/46273/

5) イラン

マントゥロフ副首相(産業商務大臣)とアミン産業鉱山貿易大臣が二国間協力を議論

  • マントゥロフ副首相兼産業商務大臣は、8月22日、イランのアミン産業鉱山貿易大臣と対面で会談し、自動車、造船、鉄道、農業、電気機器、製薬分野の協力について議論を行った。

 

2. 石油ガス産業情勢

(1) 原油・石油製品輸出税

  • 2021年6月15日から2022年7月14日までのモニタリング期間におけるウラル原油の平均価格はUSD84.421/バレルとなり、8月の原油輸出税はUSD7.3/バレルに引き下げられた。
  • 8月の石油製品輸出税はUSD15.9/トン、ガソリンについてはUSD29.1/トンに設定された。
<参考:原油及び石油製品輸出税の推移>
参考:原油及び石油製品輸出税の推移

(2) 原油生産・輸出

(「ロシア情勢(2022年1月 モスクワ事務所)」以降の最新情報)

注1 原油生産量は2022年4月以降のデータ、原油輸出量は2022年2月以降のデータについて非公開となっている。

注2 原油生産量及び輸出量はエネルギー省の公表データに基づき、今後更新される可能性あり。原油輸出量は、(4)原油輸出先に記載の連邦税関庁の公表データに基づく数値とは異なる。

  • 3月、原油、ガス・コンデンセート生産量は4,640万トン(約3億3,872万バレル、平均日量1,093万バレル)で、前年同月比6.9%増。

原油生産量に占める輸出量の平均割合


(3) 天然ガス生産・輸出

(「ロシア情勢(2022年1月 モスクワ事務所)」以降の最新情報)

注1 天然ガス生産量は2022年6月以降のデータ、天然ガス輸出量は2021年11月以降のデータについて非公開となっている。

注2 天然ガス生産量はエネルギー省の公表データ、天然ガス輸出量は連邦税関庁の公表データに基づき、今後更新される可能性あり。

  • 5月、天然ガス生産量は566億立方メートル(約2.0CF)で、前年同月比で10.4%減。

天然ガス生産量に占める輸出量の平均割合


(4) 原油輸出先

(「ロシア情勢(2022年1月 モスクワ事務所)」以降の最新情報)

注 原油輸出先に関する連邦税関庁の公表データは2022年2月以降のデータについて非公開となっている。

  • 1月、主な原油輸出先は、欧州1,021万トン(約7,452万バレル、全輸出量に占める割合57.5%)、中国608万トン(約4,435万バレル、同割合34.2%)、韓国69万トン(約502万バレル、同割合3.9%)となった。
  • 前年同月比で欧州が19.8%増、中国が7.8%増、日本が4.5%増となった一方、韓国が43.0%減、ベラルーシが62.4%減となった。
<参考:原油輸出先シェアの推移>
参考:原油輸出先シェアの推移

(5) 天然ガス輸出先

(「ロシア情勢(2022年1月 モスクワ事務所)」以降の最新情報)

注 天然ガス輸出先に関する連邦税関庁の公表データは、LNGは2022年2月以降のデータ、パイプラインガスは2021年11月以降のデータについて非公開となっている。

  • 1月、主なLNG輸出先は、日本76万トン(全輸出量に占める割合26.5%)、中国73万トン(同割合25.3%)、欧州66万トン(同割合22.9%)であり、前年同月比でアジア向け輸出量が3.7倍増となった一方、欧州向け輸出量が34.7%減となった。
<参考:LNG輸出先シェアの推移>
参考:LNG輸出先シェアの推移
  • 1月、北極海航路を経由した主なLNG輸出先は、アジア58万トン(全輸出量に占める割合52.7%)、欧州52万トン(同割合47.3%)で、前年同月比で中国が約5倍増、スペインが2.2倍増となり、主に中国向けの増加により、アジア向けシェアが拡大した。
<参考:LNG輸出先(北極海航路経由)シェアの推移>
参考:LNG輸出先(北極海航路経由)シェアの推移

(6) 減産合意

2022年9月の増産(減産措置縮小)について日量10万バレルの小幅増産に合意

  • OPECプラスは、8月3日、第31回閣僚会合をテレビ会議形式で開催した。これに先立ち、本年6月に行われた第29回会合において、昨年7月18日に開催された第19回会合における合意に基づき、昨年8月以降実施されている増産(減産措置縮小)(毎月日量40万バレル)について、本年7~9月の3か月分の増産を同7、8月に前倒しして行うことを決定していた。
  • このため市場では、減産措置縮小が8月に終わるとの認識が広がっていたが、今回の会合では、日量10万バレルの小幅増産となった。OPECプラスは、次回の第32回閣僚会合を9月5日に開催する。

 

(7) 法令・税制(欧米制裁への対抗措置を含む)

注 2022年2月24日以降に発動された対抗措置は別添の時系列表を参照。

サハリン2案件の新事業会社(ロシア法人)が設立

  • ミシュスチン首相は、8月2日、ロシア連邦政府令第1369号により、サハリン2案件の権利・義務等を新設する事業会社(ロシア法人)に移管する旨を定めた2022年6月30日付の大統領令第416号を実施するための措置について承認した。
  • 同政府令は、サハリン2案件の新事業会社となる有限責任会社「サハリンスカヤ・エネルギヤ」社(ロシア法人)の設立について規定している。同社は、政府令の規定に従い、8月5日に統一国家登録簿に登記され、設立された。
参考:有限責任会社「サハリンスカヤ・エネルギヤ」社の設立概要
設立日 2022年8月5日
所在地 サハリン州ユジノサハリンスク
授権資本 10,000ルーブル
株主構成

Gazprom 50.00000001378317%

政府管理  49.99999998621683%

 → 設立日~1か月以内に外国株主が受け入れ同意通知

   その後、3日以内にロシア政府が引き渡しの可否を決定

代表 Andrey Alexandrovich Oleynikov
権利・義務

1994年6月22日付けの生産分与協定(PSA)の権利・義務を継承

同協定に基づき活動を行う
PSA法との関係 PSA法第2条第7項(グランドファーザリング条項)に基づき、同法の施行前に締結された協定と見なされる

出典:政府令第1369号よりJOGMEC作成

 

サハリン1案件を含む資源開発案件等の「非友好国」保有持ち分の取引が禁止

  • プーチン大統領は、8月5日、大統領令第520号「複数の外国及び国際機関の非友好的な行動に関連する燃料・エネルギー分野における特別経済措置の適用について」により、2022年12月31日までの間、非友好国と関わりのある外国人及びそのコントロール下にある者が保有する、ロシア法人の有価証券や参加持ち分(所有権・処分権等)の取引の禁止を決定した。
  • 同大統領令により、具体的には以下の取引が禁止される。
  1. 2004年8月4日付大統領令第1009号により承認された「戦略企業及び戦略株式会社のリスト」に含まれる株式会社の定款資本を構成する株式、持ち分(出資金)
  2. 上記a. に記載されている株式会社が直接または間接的に株式、持ち分(出資金)を保有している事業体の定款資本を構成する株式、持ち分(出資金)
  3. サハリン1案件及びハリヤガ案件における生産物分与契約(PSA)の締結者が保有する参加持ち分、権利及び義務
  4. 燃料エネルギー産業の事業体向けの資機材の製造事業者であり、当該資機材のメンテナンス・修理サービスを提供する事業者、熱・電力生産・供給事業者、石油、石油原料の精製・加工事業者の定款資本を構成する株式、持ち分(出資金)
    →別途ロシア政府から10日以内に提出される上申に基づき、大統領が承認する。
  5. ロシアの金融機関の定款資本を構成する株式、持ち分(出資金)
    →別途ロシア中央銀行との調整の上、ロシア政府から10日以内に提出される上申に基づき、大統領が承認する。
  6. 下記鉱区の利用者である事業者の定款資本を構成する株式、持ち分(出資金)
  • ロシア連邦領内の炭化水素資源(可採埋蔵量:原油2,000万トン以上、天然ガス20BCM以上、石炭3,500万トン以上)、ウラン、高純度石英原料、イットリウム系希土類、ニッケル、コバルト、タンタル、ニオブ、ベリリウム、銅鉱床が賦存する地下資源鉱区
  • ロシア連邦領内のダイアモンドの一次鉱床、金、リチウム、白金族金属の一次鉱床である地下資源鉱床
  • ロシア連邦の内海、領海、大陸棚にある地下資源鉱床
  • なお上記は、2022年6月30日付大統領令第416号及び同7月14日付連邦法第320-FZ号に基づく権利関係、取引には適用されない。

制裁対象のロシアの金融機関による法人顧客向け外貨建て債務履行が停止可能に

  • プーチン大統領は、8月8日、大統領令第529号「銀行口座に関する外貨建ての債務及び外国機関が発行した債券に関する債務の暫定的な履行手順について」により、非友好国による対露制裁により外貨建て債権の行使が事実上不可能となったロシアの金融機関が、法人顧客向けの外貨建て債務履行を停止可能とすることを決定した。
  • 同大統領令により、制裁が解除されるまでの間、以下を行うことが可能となる。
    • 制裁対象のロシアの金融機関は、外国の金融機関に保有しており、制裁により凍結されている自身の銀行口座にある外貨建て債権の範囲内で、金融機関を含む法人顧客に対する外貨建ての債務の履行を停止する。この停止期間中の利息や罰則金は発生しない。
    • 制裁対象のロシアの金融機関は、上記顧客が同意する場合、外国の金融機関に保有している自身の銀行口座にある外貨建て債権について、その請求権を顧客に譲渡することにより、顧客への債務を履行したと見なすことができる。
    • ロシア法人は、外国機関が発行した外国債券(ユーロ債)に関する債務の履行について、ロシアの金融機関に、ユーロ債の保有者(非居住者及び外国の証券決済機関を通じて債権を保有する居住者)の立ち合いなく、同者名義の「D」型特別口座を開設し、ロシア中央銀行の為替レートに基づいて算出する金額で、ルーブル建てで行うことが可能となる。

モスクワ証券取引所が日本円の取引を停止

  • モスクワ証券取引所(MOEX)は、7月25日、外国為替市場での日本円の取引を8月8日から一時停止すると発表し、同日から取引が停止された。対象となる取引は、「日本円・ロシアルーブル」及び「日本円・米ドル」のスポット取引及びスワップ商品とされる。
  • 同取引所の公表情報によると、取引停止の理由は、欧米による対露制裁による潜在的なリスクと円建て決済の困難性によるものとされている。

無機肥料向けの硫黄輸出に110万トンの輸出上限を設定

  • ミシュスチン首相は、8月6日、ロシア連邦政府令第1392号により、無機肥料の生産に必要な硫黄の輸出に割当量による上限を設けることを決定した。
  • 同割当量は、2022年8月10日から8月31日までの措置であり、ユーラシア経済連合以外の国への輸出は、110万トンが上限となる。
  • ロシア政府の公表情報によると、同措置は、欧米による対露制裁の中で、ロシア経済の回復力を高めるため、国内の無機肥料の生産業者に対し、十分な原材料を供給することを目的としている。

 

(8) 北極海航路

2035年までの北極海航路の開発計画を承認

  • ミシュスチン首相は、8月1日、ロシア連邦政府令第2115-r号により、2035年までの北極海航路の開発計画を承認した。
  • 同計画の目標は、北極圏の住人向けの安全な商品の輸送経路を確保し、同地域への投資プロジェクトを実施するための条件を策定することとされる。
  • 同計画には、150件以上のプロジェクトが含まれており、ギダン半島ウトレニエLNG・ガスコンデンセートターミナルや、タイムィール半島セーヴェル・ベイ原油出荷ターミナル、エニセイ石炭ターミナルの建設が含まれている。また、カムチャツカ・ムルマンスクLNG積替えターミナルの建設や、ウラジオストク・トランジットハブ港の整備も含まれる。
  • 計画に含まれる総事業規模は、約1.8兆ルーブルに相当する。

 

(9) 脱炭素・環境対応

サハリン島に実験施設付きの水素エンジニアリングセンターが創設予定

  • チェルヌィシェンコ副首相は8月8日、サハリン州リマレンコ知事とともに、サハリン州立大学の新キャンパス「サハリンテック」の建設現場及びロシア科学アカデミー極東支部の海洋研究自動化特別設計局(SKB SAMI)を訪問した。
  • 同キャンパスには、科学教育の複合施設が含まれており、講義室に加えて、テクノロジーパーク、図書館、スポーツ施設、カフェテリアなどが新設され、一般開放されるオープンエリアにもなる予定。更に、世界の海洋、新エネルギー、エコロジー分野が同キャンパスの主要分野となる計画。
  • また同副首相は、SKB SAMIを訪問した際、サハリン島に水素エンジニアリングセンターが設立されることに言及した。将来同センターには、2021年8月5日付ロシア連邦政府令第2162-r号「水素エネルギー開発コンセプト」に基づき、東部地域の水素クラスターの一部を構成する実験サイトが設置される予定であり、同センターのノウハウを、極東地域、北極圏を中心としたロシアの他地域に展開していく方針であることを強調した。

経済発展省が持続可能な開発に関する第3回専門家会合を開催

  • レシェトニコフ経済発展大臣は、8月3日、2022年11月6日(日)~同年11月18日(金)にエジプトのシャルム・エル・シェイクにおいて開催予定の第27回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP27)に先駆けて、持続可能な開発に関する第3回専門家会合を開催した。
  • 同大臣は、現在の状況下においても、持続可能な開発アジェンダにおける取組は、依然として世界経済の発展にとって重要な要素の1つであり、ロシア経済にとっても重要な議題であると強調した。その上で、ロシア政府が2021年11月に承認した「2050年までの温室効果ガス排出量の少ないロシアの社会・経済発展戦略」を引き続き順守していくことを示した。
  • また既に気候変動対策のための規制枠組みを整備しており、「温室効果ガス排出量登録簿」もまた、作成済みであり、2023年初頭には大企業による情報の登録作業が開始される予定であることを紹介した。加えて、自主的に行われる「気候変動対策プロジェクト」の実施に向けた準備も進行しており、早ければ、2022年9月1日から気候変動対策プロジェクトの登録が可能となり、カーボンクレジットの登録も開始される。
  • 更に、2022年秋には、サハリン州における2025年末までのカーボンニュートラル達成のための実証実験が開始される見込み。既に、2022年3月2日付連邦法第34-FZ号「ロシア連邦の特定の構成主体における温室効果ガス排出量の抑制に関する実験の実施」が採択されている。
  • 同大臣は、会合の総括において、持続可能な開発の原則の導入と気候変動アジェンダの統合は、いまや期待されるものではなく、差し迫った必要性を要するものであり、ロシアは、その中でも国際レベルの競争力を獲得するために、認証機関の信頼度向上を行うこと、大企業の参加を促すことが重要であると述べた。

 

3. ロシア石油ガス会社の主な動き

(1) ガスプロム

2022年8月15日までの生産・輸出実績を発表

  • ガスプロムは、8月16日、2022年8月15日までの同社の生産量及び輸出量の実績を発表した。
  • 2022年1月1日から2022年8月15日までの同社の生産量は、前年比13.2%(41.7BCM)減の274.88BCMとなった。
  • 国内向けの天然ガス供給量は、前年比2.3%(3.6BCM)減少した。
  • CISを除く海外向けの輸出量は、前年比36.2%(44.6BCM)減の78.5BCMとなった一方、中国向けのガス輸出は、数値は非公表であるものの、CNPCとの間での長期契約に基づき増加していることを明らかにした。

ベラルーシへの天然ガス供給について議論

  • ガスプロム・ミレル会長は、8月19日、サンクトペテルブルクにおいて、ベラルーシのカランケヴィッチ・エネルギー大臣と、クルトイ在ロシア大使との間で会議を行い、天然ガス供給に関する問題について議論を行った。両者は、2022年末までの契約に基づき、2022年の秋冬期の天然ガス輸送システムの準備作業の進捗状況を確認し合った。

 

(2) Novatek

無人航空機(UAV)を利用したメタン漏洩検知システムを導入

  • Novatekは、8月1日、同子会社NOVATEK-Yurkharovneftegas社が無人航空機(UAV)を使用したメタン漏洩監視プロジェクトを開始したことを発表した。同プロジェクトは、同社の包括的な環境・気候変動目標プログラムの一部に位置づけられるもの。
  • 同社は、メタン漏洩検知にUAVを利用することで、より正確かつ効率的な測定とコスト削減を実現可能としている。今回、同社ポートフォリオの中で最大のYurkharovskoye油田及び約100ヘクタールに広がる西Yaroyakhinskiy鉱区の施設、全長50キロメートルの天然ガスパイプラインを対象にシステムを導入する。UAVは、超高感度ガス分析器を搭載しており、最大50キロメートルの範囲において遠隔で動作し、リアルタイムで動画を撮影する。

 

(3) ロスネフチ

米ExxonMobilによるサハリン1案件の運営権の譲渡に関する報道に対する声明

  • ロスネフチは、8月4日、米ExxonMobilがサハリン1案件の事業活動を別の事業者に譲渡したという報道に関連して声明を公表した。
  • 同社公表情報によると、ExxonMobilは、4月26日、サハリン1案件の他の参加者との合意なしに、一方的に生産の段階的な停止を開始した。5月6日、石油を積載した最後のタンカーがデカストリターミナルから出荷され、同15日以降、プロジェクトの生産活動は事実上停止している。現在デカストリターミナルの石油タンクは95%充填されており、石油の出荷は停止している状態にある。
  • ロシア政府、エネルギー省、サハリン州政府は、他のプロジェクト株主とともに、生産活動の再開に向けた努力を行っている。Exxon Neftegaz LimitedからRosneftに対し、オペレーター機能の譲渡に関する決定の通知はなされていないとのこと。

ロシア初のガス貯留層4Dモデルを開発

  • ロスネフチは、8月1日、同社チュメニ石油研究センターの専門家が、Kharampur石油ガスコンデンセート油田の3か所のガス貯留層について、独自の4Dモデルを開発したことを発表した。
  • 同モデルにおいては、岩石の地力学的特性が考慮されており、ロシア国内初の取組であるとのこと。同社は、Rosneft-2030戦略の重要な要素の一つに、分野横断的なデジタル技術の導入を掲げている。
ガス貯留層4Dモデルの図
ガス貯留層4Dモデルの図
写真出典:https://www.rosneft.ru/press/news/item/211375/

(別添)

ロシアに対して発動された各国制裁に対する主なロシアの対抗措置(時系列表)

1. 金融措置
  主な措置の概要
2月28日 対外経済活動により取得した外貨80%の強制換金(3日以内)が義務付け
3月1日 ロシアからの外貨の持ち出し・国外送金が1万USD相当以下に制限
3月9日 ロシアにおける外貨の引き出しが1万USD相当以下に制限
3月18日 ロシアからのルーブルの持ち出し・国外送金についてもロシア中銀が制限可能に
8月8日 欧米制裁対象のロシア銀行による法人顧客向けの外貨業務の停止が可能に

 

2. ルーブル支払いの強制
  主な概要
3月5日 1千万ルーブル/暦月を超える債務をロシア国内銀行のルーブル口座に返済可能に
3月31日 ガスプロムから「非友好国」の需要家に対するパイプライン経由での天然ガス販売代金について、Gazprombankルーブル口座への支払いに限定
5月4日 1千万ルーブル/暦月を超える配当金/債務保証金をロシア国内のルーブル口座に支払い可能に

5月7日

「非友好国」の保有する知的財産の利用料等をロシア国内銀行のルーブル口座へ支払い可能に
6月22日 外貨建てのロシア国債等をロシア証券保険振替機関のルーブル口座に返済可能に
8月8日 ロシア法人発行のユーロ債についてロシア国内銀行のルーブル口座に返済可能に

 

3. 経済強硬措置
  主な概要
3月4日 ロシア人の権利を侵害する外国の個人に対する入国禁止、資産没収、取引禁止
3月6日 国民の生活・健康、軍事に必要な「非友好国」の特許権の無償利用を可能に
3月7日 EU、米、英、日、豪等の西側諸国を「非友好国」に指定するリストが公表
→7月23日に英国王室属領ガーンジー島等やバハマを対象に追加
4月4日

EU+欧州5か国とのVISA簡素化協定を停止

また、外務省の独断による外国人の入国禁止・滞在制限が可能に
5月3日

「制裁対象リスト」に掲載される法人・個人との(1)新規契約の締結、(2)既存契約の履行、(3)金融取引、(4)同者へのロシア産製品・原材料の輸出を禁止

5月11日 「制裁対象リスト」にガスプロム欧州マーケティング子会社31法人が登録
6月28日 改正地下資源法により、地下資源利用ライセンスの外国の法人・個人への新規発給、同社による既存ライセンスの保有を禁止
6月30日 サハリン2案件の資産・権利義務を新設のロシア法人に強制移管し、外国株主が応じない場合にそのシェアを売却可能に
7月14日 地下資源利用ライセンス又はガス輸送施設を保有する外国法人の子会社・駐在員事務所をロシア法人に強制転換可能に
8月3日 サハリン2案件の権利・義務等の移管先となるロシア法人・有限責任会社「サハリンスカヤ・エネルギヤ」の設立条件・定款が公表
8月5日 2022年12月31日までの間、非友好国と関わりのある外国人(個人・法人)等が保有する、ロシア法人の持分に関する取引が禁止

 

4. 情報統制
  主な概要
3月4日

ロシア軍に関する「偽情報」の拡散を最長15年の実刑で処罰可能に

3月25日 ロシア政府機関の活動に関する「偽情報」の拡散を最長15年の実刑で処罰可能に
7月14日 「外国のエージェント」の登録対象が、メディア、NGO、個人から一般企業まで拡大
7月14日 「違法な情報」を拡散した場合または、外国で活動するロシアメディアへの活動禁止の報復措置として、外国メディアの権限はく奪、活動停止が可能に
7月14日 ロシアの金準備高と外貨準備高が非公開の国家機密情報に指定

 

5. 軍事関係・刑事罰
  主な概要
5月28日 改正兵役法により、軍事動員の年齢上限(ロシア国民 40歳、外国人 30歳)が撤廃
7月14日 外国の武力紛争や軍事作戦、諜報・防諜活動への加担、ロシア当局の安全保障に関する活動への妨害や反対活動の扇動を最長20年の実刑で処罰可能に
8月25日 ロシア軍の総兵力について追加13万7,000人の増員を大統領が指示

 

以上

(この報告は2022年9月22日時点のものです)

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