ページ番号1009515 更新日 令和4年10月27日

メタンハイドレートの事前掘削調査と掘削調査井データの活用について

レポート属性
レポートID 1009515
作成日 2022-10-27 00:00:00 +0900
更新日 2022-10-27 10:00:02 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 技術
著者
著者直接入力 今井 利矩
年度 2022
Vol
No
ページ数 8
抽出データ
地域1 アジア
国1 日本
地域2
国2
地域3
国3
地域4
国4
地域5
国5
地域6
国6
地域7
国7
地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 アジア,日本
2022/10/27 今井 利矩
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概要

メタンハイドレートの研究開発でも、従来の石油・天然ガスにおける探鉱と同様、そこにメタンハイドレート濃集帯が存在しているのか、またどれくらいの量(埋蔵量)があるのかを調べるための事前掘削調査(調査井掘削)を実施します。

反射法地震探査データを解釈することにより、海洋産出試験の実施に向けたメタンハイドレート濃集帯候補を抽出することは可能ですが、事前調査井を掘削するまで、メタンハイドレートが存在するのか、どれくらいの量のメタンハイドレートが胚胎しているかはわかりません。

本コラムでは、メタンハイドレート濃集帯の調査概要に触れた後、事前調査井で得られる情報について紹介します。

 

1. メタンハイドレートとは、どうやって調査しているのか

メタンハイドレートは、メタン分子の周りを低温・高圧環境下で「かご」状の構造を作る水分子に取り囲まれた水和物であり、固体の状態で存在します(図1)。ハイドレートとして安定して存在するためには低温・高圧の環境が必要であり、自然環境ではシベリアやアラスカなどの陸上における永久凍土帯、もしくは海洋の水深500メートル以深の海底面下といった場所で安定して存在しています。日本に大規模な永久凍土層は存在しないため、国内のメタンハイドレートは海洋に存在しています。海洋では、海底面近傍やその泥層内に塊状にて存在するほか、砂層の隙間中にも存在します。これらのうち、JOGMECが参画しているMH21-S研究開発コンソーシアムでは、資源量の評価が可能であり、従来からの石油生産技術が使え、かつ効率的な生産手法が実証されている砂質孔隙充填型(砂層型)メタンハイドレートの研究開発に取り組んでいます。現在は、2024年度以降の次フェーズで海洋産出試験を実施する目的で、試験候補地となる有望濃集帯の絞り込みを実施しています。その有望濃集帯を絞り込むためには、次のステップを踏む必要があります(図2)。

(図1)メタンハイドレートの結晶構造
(図1)メタンハイドレートの結晶構造
緑三角はメタン分子、赤球は水分子、水分子がカゴ構造を作り、その中にメタン分子が含まれる
(出典:MH21-S研究開発コンソーシアム)
(図2)有望濃集帯選定に向けた調査概念図
(図2)有望濃集帯選定に向けた調査概念図
(出典:MH21-S研究開発コンソーシアム)

1-1 反射法地震探査を用いた調査

砂層型メタンハイドレートは、主に反射法地震探査を用いて調査します(図3)。反射法地震探査とは、人工的に発生させた音波(=弾性波)の地下からの反射を捉えることによって、地下構造や地下物性を明らかにする探査手法です。

反射法地震探査によって得られたデータは「地震探査断面」といい、人工的に発生させた弾性波が、発震されてから地下で反射して受振されるまでの時間(往復走時)と反射波の大きさ(振幅)が記録された時系列データのことをいいます。地震探査断面をよく観察すると、縞模様が見て取れます。これは、波形(反射波)が連続しているため縞のよう見えており、この連続する波形を「反射面」といい、基本的には地層の境界面(層理面)に対応しています。反射面の色の強さ(濃さ)は、反射強度を示しており、地層の物性差が大きいほど反射が強くなります。例えば、柔らかい地層を伝わった弾性波が固い地層にぶつかったとき、その物性差は大きいため、反射波も強く記録されます。記録された結果は、二次元調査では地下を断面として表示した探査断面図として、三次元調査では調査エリア下の三次元データボリュームとして得られます。近年は三次元反射法地震探査が主体となってきており、海上の三次元反射法地震探査では、複数個の震源と複数本のストリーマー・ケーブルを用いて一度に面的なエリアのデータを取得し、調査海域を往復しながら調査域全域をカバーしていきます。

(図3)反射法地震探査の概念図
(図3)反射法地震探査の概念図
(出典:MH21-S研究開発コンソーシアム)

反射法地震探査では、地層の重なり方を把握することができ、そこに石油や天然ガスなどの特異な物質(流体)があると、特有の反射記録を示すので、石油や天然ガスの探査に用いられます。メタンハイドレートを探す際も、この反射法地震探査が有効と考えられており、研究開発が進められています。これまでの研究結果からメタンハイドレートが濃集しているところは、地震探査断面上で(1)BSR(海底疑似反射面:Bottom Simulating Reflector)が存在し、(2)強振幅反射面であり、(3)弾性波速度が大きく(高速度異常)、(4)タービダイト(砂岩泥岩互層)の砂層であるという特徴があることが判明しています(図4)。MH21-S研究開発コンソーシアムでは、これらの指標を用いてメタンハイドレート濃集帯を調査しています。

(図4)4つの指標を用いたメタンハイドレート濃集帯の抽出例
(図4)4つの指標を用いたメタンハイドレート濃集帯の抽出例
(出典:MH21-S研究開発コンソーシアム)

1-2 事前調査井掘削

二次元・三次元地震探査データを利用し、これらの指標を用いてメタンハイドレート濃集帯を調査した結果、事前調査井掘削候補地点を抽出することができます。地震探査データだけでも、間接的にメタンハイドレート資源量を計算することはできますが、本当にそこにメタンハイドレートの濃集帯はあるのか(地震探査断面上にて解釈した結果が正しいか)、どれだけのメタンハイドレートが濃集しているのかまではわかりません。そこで、濃集帯に坑井を掘削し、メタンハイドレートが濃集している地層(貯留層)の直接的な情報を得る、事前調査井掘削がおこなわれます。

一般的に、地下の地層の情報を得るためには、坑井の中に各種計測器(検層器)を降下させ、検層器から得られる物理量を用いて地層中の地質情報を連続的に計測します。この調査手法を「検層(Logging:ロギング)」といいます。検層にはいろいろな検層種目がありますが、いずれも坑井内で地層の物理的な性質を調査するため、検層のことを総称して物理検層とも表現されます。検層には大きく2つの取得方法が存在し、掘削された坑井に測定器をたらし検層データを取得するWireline Loggingと、坑井を掘り進めるためのドリルビットに測定器を取り付け、掘削しながら検層データを取得する掘削同時検層(LWD:Logging While Drilling)があります。

メタンハイドレートの調査では、固結があまり進んでいない浅い地層をターゲットにすることが多く、坑壁が崩れるなど掘削後に坑内状況が悪化することも多いため、掘削と同時に検層データを取得できるLWDを主に使用します。また、事前調査井では海底面付近や浅い地層の地盤調査のためのコアを採取(ジオテクホール掘削)することもあります。

 

1-3 簡易生産実験を含む試掘

海洋産出試験候補地点選定に関する目安の1つに、原始資源量(そこに存在するメタンハイドレートから得られるメタンガスの総量)100億立方メートル以上があります。事前調査井にてこの条件を満たし得る濃集帯を確認できた場合、貯留層の地質特性の詳細を調査し、生産区間の確認を行った上で、短期間の簡易的な生産実験によりメタンハイドレート分解・ガス生産特性を調査していきます。そしてこれらの結果を総合的に検討し、次フェーズの海洋産出試験実施地点を選定することになります。

 

2. 事前調査井では具体的に何を調査しているのか

2-1 掘削同時検層(LWD)

検層では、様々な計測器を使用することによって坑井内における連続的な情報を計測することができます。鉛直方向の解像度は、三次元地震探査データでは十数メートル程度ですが、検層の場合、測定器にもよりますが数十センチメートル程度になり、より詳細なデータを取得できます。一方、検層にて測定できる距離は坑壁から数センチメートル程度に過ぎず、水平方向の広がりをほとんど持たない一次元的なデータになるため、測定結果が海域全ての情報を示しているわけでない点に注意が必要です。

検層種目は、大きく次の6つに分けられます。

検層種目 何を測り、何がわかるか メタンハイドレートが地層に存在する場合
自然ガンマ線 地層内の粘土鉱物に付着しているカリウム・ウラン・トリウム由来の自然ガンマ線を受動的に計測する。
砂だと弱く、泥だと強いことから、砂と泥の割合を調べられる。
ほとんど影響しない
ガンマ線
(密度検層)
線源からガンマ線を能動的に発し、地層から散乱したガンマ線を計測する。
散乱効率は地層密度と比例することから、孔隙率(地層の隙間の大きさ)を調べられる。
ほとんど影響しない
中性子線 線源から中性子線を能動的に発し、地層によって減衰した中性子線を計測する。
減衰効率は水素原子量と比例することから、孔隙率(地層の隙間の大きさ)を調べられる。
ほとんど影響しない
電気抵抗
(比抵抗)
地層に直接電流を流すか、または電磁誘導を用いて地層に電流を発生させることで、地層の電気抵抗を計測する。
油・ガス・メタンハイドレートは電気抵抗が大きいため、孔隙中の流体・メタンハイドレートの推定に用いられる。
大きくなる
音波
(ソニック)
震源から音波を発し、坑壁近傍の地層で屈折するP波・S波の到達時間を計測する。
孔隙率(地層の隙間の大きさ)地層の弾性率(やわらかさ)と関係する。
小さくなる
(音波速度が大きくなる)
核磁気共鳴 原子核のジャイロ磁気的性質を利用して孔隙中を自由に移動できる水分子量を測定する。
地層中の自由に移動できる水分子(自由に移動ができる水分子のみを測定するので、Free Fluid Index(自由流体指数: FFI)と測定値を呼ぶ)の量を推定でき、孔隙中の自由流体の量、浸透率、不動飽和率、残留飽和率に用いられる。
中性子線検層と併用することにより、メタンハイドレートの存在を評価できる

 

メタンハイドレートは電気抵抗が大きく、胚胎する地層も全体的に電気抵抗(比抵抗)が大きくなるため、検層による電気抵抗の測定はメタンハイドレートが胚胎しているかどうかの推定に大きく役立ちます。図5は、実際にメタンハイドレートが濃集している層を測定した検層結果の一例で、メタンハイドレートが濃集している区間では電気抵抗が大きくなっていることがわかります。

また、メタンハイドレートが地下水に代わって砂層の隙間(孔隙中)を充填している場合、他の地層と比較して音波速度が大きくなります。そのため、音波の測定もメタンハイドレートの胚胎を推定するために役立ちます。

(図5)検層結果の例
(図5)検層結果の例
(出典:MH21-S研究開発コンソーシアム)

2-2 コア試料の分析

事前調査井では、海洋産出試験を実施する際の海底面への機器設置を想定して、浅い部分の地盤安定性を評価するためにコア試料の回収(ジオテクホールの掘削)を行うこともあります。ジオテクホールでは、海底に設置するコンダクターパイプの区間(深度)をカバーするように、力学試験・応力評価用のコアを採取します。また、力学試験用のコア以外にも、地質調査用のコア試料も一緒に採取します。

採取されたコア試料は、室内にて力学試験を実施し、圧密の影響や力学強度の把握、実際に坑口装置等を設置する際に必要となる耐震設計に必要な情報等を評価します。また、力学試験だけでなく浸透性や熱伝導率といった物性も計測し、もっと深い所にあるメタンハイドレート濃集帯の特性推定に役立てます。

さらに、コア試料中に含まれる化石を分析し、メタンハイドレート濃集帯が確認された海域にはどの地質年代の堆積物が堆積したのかを解析したり、古水深などの古環境の解析や、メタンを生成している微生物はコア試料中に含まれているかなども分析したりといった、地質学的な考察を行います。

 

3. おわりに(まとめ)

事前調査井掘削にてメタンハイドレート濃集帯の存在を確認したのち、検層区間は地震探査断面図上ではどのように見えているのか、検層データは採取したコアの物性や地質特性などの分析結果と整合的かを評価する必要があります。また、三次元的な広がりをもつ地震探査データと、一次元的な分布しかない検層データやコア試料の分析結果を統合的に解析し、数値解析モデルを用いてメタンハイドレートの原始資源量把握や生成メカニズムに関する解析を進めていく必要があります。

MH21-S 研究開発コンソーシアムでは、国の「第3期海洋基本計画」(平成30年5月15日閣議決定)および経済産業省の「海洋エネルギー・鉱物資源開発計画(平成31年2月15日改定)」に基づき、将来の商業生産を目指した技術開発を進めています。そして、2027年度頃に民間企業が主導する商業化に向けたプロジェクトが開始されることを目指して、2019~2023年度を「フェーズ4」として研究開発事業を引き続き実施していく予定です。

 

参考:

 

以上

(この報告は2022年10月27日時点のものです)

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