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ロシア情勢(2022年9月 モスクワ事務所)

レポート属性
レポートID 1009521
作成日 2022-11-01 00:00:00 +0900
更新日 2022-11-17 09:49:13 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 基礎情報
著者 豊島 厚二小松 弘希
著者直接入力
年度 2022
Vol
No
ページ数 26
抽出データ
地域1 旧ソ連
国1 ロシア
地域2
国2
地域3
国3
地域4
国4
地域5
国5
地域6
国6
地域7
国7
地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 旧ソ連,ロシア
2022/11/01 豊島 厚二 小松 弘希
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1. 政治・経済情勢

(1) 国内

政治・経済

東方経済フォーラムの開催
  • 9月5日から8日にかけて、ウラジオストクで東方経済フォーラム2022がオンラインと対面のハイブリッド方式で開催された。新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて中止された2020年を除き、2015年から毎年開催されており、今回で7回目の開催となる。トルトネフ副首相の発言によると、今年の参加者は68ヶ国から7,000名以上となり、フォーラム会場での署名文書数は、過去最大であった前年に比較して84件減少し、296件(合計3兆2,720億ルーブル)となった。今回のフォーラムは「ポストコロナ」における最初のフォーラムであり、同副首相は、欧米諸国による制裁や圧力にもかかわらず、極東地域の発展が継続していると強調した。
  • プーチン大統領は、「多極化する世界」と題した全体会合における自身の講演の中で、新型コロナウイルスに代わり、全世界にもたらされている他の脅威として、西側諸国の制裁を取り上げ、これは他国に行動原理を押し付け、主権を奪い、自らの意思に従わせる試みであると欧米諸国に対する独自の批判を展開した。またロシアは、欧米諸国による経済、金融、技術制裁に対処しており、ロシアの通貨及び金融市場は安定し、インフレ率は低下し、失業率は4%以下という歴史的な低水準にあると強調した。
  • 更に、アジア太平洋諸国の多くは、制裁による論理を受け入れていないとして、ロシアは今後GDPの伸びが世界平均の3%、米国の2%、EUの1.2%と比較して、5%と高い水準にあるアジア諸国との経済協力を推進していく考えを述べた。欧米諸国が自ら、ドル、ユーロ、ポンドといった通貨に対する国際的信頼を手放した一方で、ロシアはドルの外貨準備を徐々に減らしていると主張。9月6日にガスプロムと中国CNPCが、天然ガス輸入代金の支払いについて、ルーブルと中国人民元に50対50の割合で移行することを決定したと明らかにした。
  • 資源エネルギーについて、(「非友好国」の)敵対行為から鉱業部門を保護しており、現在はロシア企業だけが地下資源を開発する権利を持っていると強調(※注釈:6月28日付け地下資源法の改正を示唆)。また、天然資源環境省と産業商務省が、主要ビジネス団体とともに、ロシア経済の戦略的鉱物資源需要を特定しており、ロシアの鉱物資源開発戦略の基礎となると述べた。特に、金属精錬、医療、化学、マイクロエレクトロニクス、航空機製造、エネルギー貯蔵/輸送のための新技術等に必要な希少金属(チタン、マンガン、リチウム、ニオブ等)の地質探査・加工に対しては、特別な注意を払う必要があると指摘した。
  • プーチン大統領は、講演の後に行われた質疑応答セッションにおいて、2月24日以降にロシアは国家として何を得て、何を失ったのかを問われ、「我々は何も失っていないし、これからも何も失うことはない。」と強気の姿勢を表明した。更に、天然ガスについては、ロシアが欧州に対して、長年、長期契約により低価で安定した供給を行ってきたのに対し、欧州自らがスポット価格連動を望み、米国から高価なLNGを購入しているとし、欧州がロシア産天然ガスを必要としないのであれば、ロシアは中国等の他国に供給するだけであると主張した。
  • 同フォーラムには、アルメニアのパシニャン首相、モンゴルのオヨーンエルデネ首相、中国の栗戦書全国人民代表大会常務委員長、ミャンマーのミン・アウン・フライン国軍司令官などの各国首脳クラスの要人が対面で参加した。オンラインでは、インドのモディ首相、マレーシアのサブリ首相、ベトナムのファム・ミン・チン首相など、各国の首脳が参加し、講演を行った。一般参加では、ロシアからの参加が中心であったが、同フォーラムのプレスリリースによると、ロシアに加えて、中国、ミャンマー、モンゴル、インド、アルメニア、韓国などからの参加者が中心であったとされている。
東方経済フォーラム全体会合の様子
東方経済フォーラム全体会合の様子
写真出典:http://kremlin.ru/events/president/news/69299
「海外におけるロシアの人道政策コンセプト」が承認
  • プーチン大統領は、9月5日、「海外におけるロシアの人道政策コンセプト」を承認する大統領令に署名した。同コンセプトは、31ページに及ぶ文書にまとめられ、全6章で構成されており、2月24日以降のウクライナ侵攻をはじめ、海外のロシア系住民の保護・支援を名目とした干渉行為を正当化するための根拠としている「ルースキー・ミール(ロシア世界)」の概念を明文化したもの。
  • 海外におけるロシアの人道的な利益として、伝統的な価値観の保護や、ロシアの人々の歴史・文化に対する国際社会での理解醸成、人道協力の発展などを掲げている。特に中国、インドとの協力拡大や、中東欧諸国におけるロシアの文化的プレゼンスの向上、バルト三国やモルドバ、ジョージアにおける「ロシア語の普及促進」や「ロシアへの前向きな姿勢の形成」を行うとしている。更に、ロシアが一方的に承認しているアブハジア自治共和国や南オセチア自治共和国、ドネツク人民共和国、ルガンスク人民共和国との関係深化が必要であると明記された。
  • 日本については、「日本社会におけるロシア文化への大きなニーズを鑑み、幅広い人道外交の可能性を見出すことができる。」と言及されている。
ロシア国民の部分動員令が発令/ウクライナ4州の一方的な併合を宣言
  • プーチン大統領は、9月21日モスクワ時間9時から約14分間の国民向けの演説を行い、ロシア国民の部分動員の発令に関する大統領令に署名した。また、同演説において、ウクライナ4州(ドネツク州、ルハンスク州、へルソン州、ザポリッジャ州)のロシアへの併合に関する住民投票を行うことへの支持を表明した。
  • 同大統領令により、同日21日から、ロシア国民のロシア軍への部分動員が開始された。その後、ショイグ国防相による演説において、ロシアの動員能力は莫大(2,500万人)であり、部分動員の対象はその約1%強の約30万人であることや、軍務を経て軍事的な専門性を有する者が対象であり、学生の動員はない等の口頭説明がなされた。しかし、同大統領令の第7条は、業務上の理由により非公開となっている他、具体的な動員対象や期間、人数等が規定されていないことから、ロシア人の海外出国が相次いだ。その後、国防省による部分動員の対象外となる条件に関する公式見解が一部発表され、対象外の者を明らかにする大統領令が署名されている。
  • また、プーチン大統領は、9月24日、動員への参加拒否や脱走、自発的に投降(捕虜となる)行為を行った場合に処罰する刑法等の改正法及び、ロシア軍に少なくとも1年間従事した外国人に対しロシア国籍を付与する法律に署名した。これに先立ち、9月20日には、モスクワ市の移民局において、外国人向けの兵士募集窓口が設置されている。
  • 更に、プーチン大統領は、9月29日、ウクライナ・へルソン州及びザポリッジャ州の2州について、それぞれ一方的に「独立領」として承認する大統領令に署名した。2月21日に一方的に「独立国家」として承認したウクライナ・ドネツク州及びルハンスク州の2州に加えて、ウクライナ4州の一方的な併合に向けた手続きの一環で行われたもの。
  • 翌9月30日には、モスクワ時間15時から約40分間の演説を行い、ウクライナ・ドネツク州、ルハンスク州、へルソン州、ザポリッジャ州について、一方的にロシア併合を認める条約に調印した。ロシア憲法裁判所は、10月2日、一方的な併合条約について合憲との判断を下し、プーチン大統領は、10月5日、9月30日付けのウクライナ4州の一方的なロシア併合を認める条約4件の批准に関する連邦法4件、ウクライナ4州のロシア併合を認める憲法的法律4件に署名し、ロシア国内における手続きを一方的に完了した。また、同日ウクライナ・ザポリッジャ原子力発電所を一方的に国有化する大統領令に署名した。
参考:ロシアによるウクライナ4州の一方的な併合までの時系列
2月21日
  • ウクライナ・ドネツク州及びルハンスク州の2州について、それぞれ一方的に「独立国家」として承認
9月21日
  • ロシア国民の部分動員令が発令
  • プーチン大統領が演説において、ウクライナ4州併合に関する住民投票への支持を表明
9月24日
  • プーチン大統領が、動員への参加拒否や脱走、自発的に投降(捕虜となる)行為を行った場合に処罰する刑法等の改正法、ロシア軍に少なくとも1年間従事した外国人にロシア国籍を付与する法律に署名
9月29日
  • ウクライナ・へルソン州及びザポリッジャ州の2州について、それぞれ一方的に「独立領」として承認
9月30日
  • プーチン大統領が再び演説
  • ウクライナ・ドネツク州、ルハンスク州、へルソン州、ザポリッジャ州について、一方的にロシア併合を認める条約が調印
10月2日
  • ロシア憲法裁判所が、9月30日の一方的な併合条約について合憲判決
10月5日
  • プーチン大統領が、9月30日付けのウクライナ4州の一方的なロシア併合を認める条約4件の批准に関する連邦法4件、ウクライナ4州のロシア併合を認める憲法的法律4件に署名
  • ウクライナ・ザポリッジャ原子力発電所を一方的に国有化

出典:ロシア大統領府HP・政府HPをもとにJOGMEC作成

 

2023年~2025年の政府予算案を下院に提出
  • ロシア政府は、9月28日、ミシュスチン首相が承認した2023年の政府予算案及び2024年、2025年の計画期間における政府予算案を下院に提出した。歳入は増加する計画となっており、2023年に26.13兆ルーブル、2024年に27.24兆ルーブル、2025年に27.98兆ルーブルとされている。歳出は、2023年に29兆ルーブル、2024年に29.43兆ルーブル、2025年に29.24兆ルーブルと計画されている。
  • 国家プログラムには、2023年に20.64兆ルーブル、2024年に20.86兆ルーブル、2025年に20.29兆ルーブルが割り当てられている。
  • 予算案は、経済発展省が9月21日の政府会合において発表した社会経済発展の中期予測の基本シナリオに基づいて策定されている。これによると、ロシアの経済成長率は、2022年に2.9%のマイナス成長となるが、2023年はマイナス幅が縮小し0.8%のマイナス成長、2024年~2025年の2年間で毎年2.6%のプラス成長と予測されており、2022年のGDPは146.1兆ルーブル、2023年には149.9兆ルーブル、2024年には159.7兆ルーブル、2025年には170.6兆ルーブルとなるとされている。レシェトニコフ経済発展大臣は、ロシア経済は、世界的な困難の中でも、2022年7月のGDPの減少が4.3%と、6月と比較して低い水準に留まるなど、抵抗力があることが証明されたと強調した。消費者需要については、2022年第2四半期に底を打ち、回復し始めており、更に、2022年上半期の投資活動が高水準であったと述べた。またインフレ率は4月の17.8%をピークとして、2022年末までには12.4%まで低下する予測であるとし、これら要因により、景気後退は2022年第4四半期に底を打ち、持ち直していく見込みだとした。これらは、ロシア経済を「新しい現実」に適応させるプロセスを開始した優先行動計画の実施の成果だと自信を見せた。
  • 経済対策の最優先事項は、輸送及び物流インフラの開発であり、特に港湾への鉄道網の接続及び港湾インフラの開発に注力し、アゾフ海や黒海への物流量の増加、カスピ海沿いの都市(アストラハン、マハチカラ、ダゲスタン)を経由する自動車バイパスの建設、ヴォルガ川・カスピ海輸送運河の開発、カスピ海の港湾インフラの整備を行っていくと指摘した。
  • 2番目の優先事項として、輸入代替政策を掲げている。生産活動を止めないために、「非友好国」以外の国からの輸入関税を撤廃し、輸入手続きの簡素化等の措置を行うとともに、国内生産による代替のため、短い投資サイクルで400件以上の多数のプロジェクトを実施していくと述べた。
  • 3番目の優先事項として、技術開発とデジタル化の加速を掲げている。技術開発においては、リペツク州における電気自動車の生産プロジェクトを一例として挙げ、翌週にも生産が開始される予定であると紹介した。
参考:社会経済発展の中期予測
  2021年 2022年 2023年 2024年 2025年
  実績 予測
GDP(前年比、%) 4.7 -2.9 -0.8 2.6 2.6
GDP(10億ルーブル) 131,015 146,065 149,949 159,714 170,598
鉱工業生産(前年比、%) 6.4 -1.8 -1.3 2.2 2.3
投資(前年比、%) 7.7 -2.0 -1.0 3.9 3.7
小売売上高(前年比、%) 7.8 -6.1 2.7 3.7 3.1
実質賃金(前年比、%) 4.5 -2.0 2.6 2.9 2.8
失業率(前年比、%) 4.8 4.2 4.4 4.3 4.1

輸出(10億US$)

494.4 578.6 529.0 522.0 530.4
  石油天然ガス(10億US$) 244.3 324.6 266.5 246.9 242.6
  その他(10億US$) 250.1 254.0 262.5 275.1 287.8
輸入(10億US$) 304.0 276.2 303.3 317.5 330.3

ルーブル/ドルレート

73.6 68.1 68.3 70.9 72.2
(参考条件)
ウラル原油価格(米ドル/バレル) 69.1 80.0 70.1 67.5 65.0
天然ガス価格(米ドル/千CM)
(CIS諸国を含む平均契約価格)
274.3 691.2 592.2 477.1 400.1
天然ガス価格(米ドル/千CM)
(CIS諸国以外の外国)
304.6 829.5 700.3 550.3 449.9
インフレ率(%) 8.4 12.4 5.5 4.0 4.0

出典:経済発展省資料よりJOGMEC作成

 

輸入代替、工業生産の近代化・拡大プロジェクトに82億ルーブルの予算を割当
  • ミシュスチン首相は、9月15日、ロシア連邦政府令第2634-r号により、国内の輸入代替、工業生産の近代化・拡大プロジェクトの実現のために82億ルーブルの予算を割り当てることを承認した。予算は政府の準備金から産業商務省に対して配賦され、2014年12月に承認された「ロシア技術開発基金」の追加資金として提供される。
  • 82億ルーブルの内訳は、既に稼働中のプロジェクトにおける生産の自動化・デジタル化の促進や合計17件の新規プロジェクトの立ち上げに充当される。政府の公表情報によると、これらプロジェクトへの資金提供により、約20億ルーブルの民間投資を呼び込み、少なくとも500人の雇用が創出される見込み。
天然ガス液化設備の研究開発及び化学製品の生産に60億ルーブルの予算を割当
  • ミシュスチン首相は、9月29日、ロシア連邦政府令第2848-r号により、国内の天然ガス液化設備向けの研究開発及び化学製品の生産に60億ルーブルの予算を割り当てることを承認した。予算は政府の準備金から産業商務省に対して配賦され、国家プロジェクト「民間産業における研究開発活動の促進」の枠組みで提供される。
  • 60億ルーブルの内訳は、20億ルーブルが中規模・大規模な天然ガス液化設備のプロトタイプ製造に、残りの40億ルーブルが化学製品の生産技術の開発に充当される。2022年中に合計11件のLNG設備の開発プロジェクトが開始される。政府の公表情報によると、これらプロジェクトへの資金提供を通じて、2035年までに年間8,000万トン~1億4,000万トンへのLNG生産量の拡大を見込んでいる。また、最新の化学技術に基づく製品の生産のため、合計30件のプロジェクトが開始される予定とされている。

 

(2) 対外関係

1) 日本

ノヴァク副首相、三井物産幹部と対面での会談でサハリン2案件の権益維持等を議論
  • ノヴァク副首相は、9月1日、三井物産の野崎常務執行役員と会談し、ロシア政府発表によると、日本との間でのエネルギービジネス上の協力や、サハリン2案件の事業継続に関連する問題、ロシア・北極圏Arctic LNG2案件及びYamal LNG案件について議論を行った。
  • 同副首相は、サハリン2案件には、三井物産は、1986年の開発開始当初から参画しており、現在では当初参画メンバーのうち、唯一の企業になったと述べ、今後の相互協力の強化への期待を表明した。
  • サハリン2案件は、2022年6月30日付けの大統領令第416号により、その権利・義務等が新設する事業会社(ロシア法人)に移管されることが規定され、8月2付の政府令第1936号により、8月5日付けで登記された有限責任会社「サハリンスカヤ・エネルギヤ」社に移管された。その後、同案件に参画する三井物産(12.5%)と三菱商事(10%)は、新会社への参画をロシア政府に申請し、それぞれ政府指令第2442-r号(8月26日)、政府指令第2474-4号(8月31日)により、ロシア政府から参画への承認を受けている。
ノヴァク副首相と三井物産の会談の様子
ノヴァク副首相と三井物産の会談の様子
写真出典:http://government.ru/news/46414/

2) 上海協力機構

プーチン大統領、ウズベキスタン主催の上海協力機構の第22回首脳会議に対面参加
  • プーチン大統領は、9月15日、16日、ウズベキスタン・サマルカンドにおいて開催された上海協力機構の第22回会議に出席した。会議には加盟国とオブザーバー国の11か国、招待国3か国の首脳が出席した。
  • 会議では、世界的な技術力格差やデジタル格差の拡大、国際金融市場の継続的な混乱、世界的な投資減少、物流不安定化、保護主義の台頭、国際貿易に対する障壁など、世界経済の不安定化や不確実性の増大を焦点にした議論が行われた。また、気候変動対策や新型コロナウイルスの感染拡大への対策における国際協力や持続可能な経済発展の促進のための新たな取組の必要性について指摘された。これらに加え、「多極的な世界秩序の形成」へのコミットメントを盛り込んだ共同宣言である「サマルカンド宣言」が採択された。またイランが、正式加盟に向けた覚書に署名し、次回2023年の首脳会議において加盟国として参加することとなった。ベラルーシの加盟手続きも開始された。
  • プーチン大統領は、上海協力機構が世界最大の地域統合組織であり、かつ、世界人口の半数以上、世界のGDPの約4分の1を占める組織であり、ユーラシア全体の平和、安全、安定を維持する上で重要な役割を担っていると強調した。また、国際政治経済においては根本的な構造変化が起こっており、「新たな権力の中心地」の役割が大きくなっていると主張した。その上で、EUによるロシア産肥料に対する制裁解除が、世界の最貧国・発展途上国を除外し、EU加盟国に対してのみを対象として行われた利己主義的なものであるとの独自の批判を展開した。一方で、ロシアが国際市場への穀物輸出を、2022年は3,000万トン、2023年は5,000万トンに増加させ、そのうち、90%がアジア、アフリカ、中南米向けに供給される見込みであると主張した。
  • また同大統領は、首脳会議の開催期間中に参加国の各首脳との対面会談を実施した。中国の習近平国家主席との会談は、2月の北京五輪における会談以来であり、ロシアのウクライナ侵攻開始以降では初めてであった。プーチン大統領は、10月に開催される第20回中国共産党大会の成功を祈願するとともに、「One China(一つの中国)」政策の原則に基づき、台湾海峡の問題を巡って米国・台湾他に対抗する中国の姿勢への支持を表明した。
  • 他方、インドのモディ首相との会談では、同首相から、今は戦争の時代ではなく、平和に向けた道を話し合うべきだとウクライナ侵攻の早期終結を促される一幕もあった。
上海協力機構第22回首脳会議の様子
上海協力機構第22回首脳会議の様子
写真出典:http://kremlin.ru/events/president/news/69361

3) ボスニア・ヘルツェゴビナ

ドディック大統領評議会議長と対面での会談で二国間協力について議論
  • プーチン大統領は、9月20日、クレムリン宮殿において、ボスニア・ヘルツェゴビナのドディック大統領評議会議長と会談し、二国間協力の状況について議論を行った。
  • ドディック議長は、セルビア系住民が中心の同国スルプスカ共和国において、10月2日に選挙が行われることに触れ、同共和国の大統領に立候補していると伝えた。また、11月19日にサンクトペテルブルクにおいて予定されている、国際サッカー連盟(FIFA)の出場禁止となっているロシア代表とボスニア・ヘルツェゴビナ代表とのサッカー親善試合開催に対し、サラエボ市長や選手からの反発が上がっている問題について、予定通り行う意向を示した。これに対し、プーチン大統領は、スポーツが人々を分断させるのではなく、団結させるべきだとして、同親善試合の開催への期待を表明した。
ドディック議長との会談の様子
ドディック議長との会談の様子
写真出典:http://kremlin.ru/events/president/news/69384

4) ベラルーシ

ルカシェンコ大統領と対面での会談で安全保障や軍事動員の問題について議論
  • プーチン大統領は、9月26日、ソチにおいて、ベラルーシのルカシェンコ大統領と会談し、安全保障や経済問題、9月21日にロシアで発動された部分動員令の状況について議論を行った。
  • プーチン大統領は、国際市場へのベラルーシ産肥料の供給が遮断されていることに言及し、これら製品を必要としている発展途上国への供給のため協力していく必要があると述べた。
  • ルカシェンコ大統領は、9月21日のロシアにおける部分動員令の発令後に、ロシア国民の出国が増加している問題について、2020年のベラルーシにおける反政府デモにより、数千人がベラルーシを出国した際、自身が特に心配していなかったことを話題に上げつつ、ロシアには2,500万人の動員能力がある中で、3~5万人が出国したところで気にする必要はないとの独自の見解を述べ、プーチン大統領を激励した。
ルカシェンコ大統領との会談の様子
ルカシェンコ大統領との会談の様子
写真出典:http://kremlin.ru/events/president/news/69434

2. 石油ガス産業情勢

(1) 原油・石油製品輸出税

  • 2022年7月15日から2022年8月14日までのモニタリング期間におけるウラル原油の平均価格はUSD83.06/バレルとなり、9月の原油輸出税はUSD7.1/バレルに引き下げられた。
  • 9月の石油製品輸出税はUSD15.6/トン、ガソリンについてはUSD28.6/トンに設定された。
参考 原油及び石油製品輸出税の推移
参考:原油及び石油製品輸出税の推移

(2) 原油生産・輸出

注1 原油生産量は2022年4月以降のデータ、原油輸出量は2022年2月以降のデータについて非公開となっている。

注2 原油生産量及び輸出量はエネルギー省の公表データに基づき、今後更新される可能性あり。原油輸出量は、(4)原油輸出先に記載の連邦税関庁の公表データに基づく数値とは異なる。

原油生産量に占める輸出量の平均割合


(3) 天然ガス生産・輸出

注1 天然ガス生産量は2022年6月以降のデータ、天然ガス輸出量は2021年11月以降のデータについて非公開となっている。

注2 天然ガス生産量はエネルギー省の公表データ、天然ガス輸出量は連邦税関庁の公表データに基づき、今後更新される可能性あり。

天然ガス生産量に占める輸出量の平均割合


(4) 原油輸出先

注1 原油輸出先に関する連邦税関庁の公表データは2022年2月以降のデータについて非公開となっている。

参考 原油輸出先シェアの推移
参考:原油輸出先シェアの推移

(5) 天然ガス輸出先

注 天然ガス輸出先に関する連邦税関庁の公表データは、LNGは2022年2月以降のデータ、パイプラインガスは2021年11月以降のデータについて非公開となっている。

参考 LNG輸出先シェアの推移
参考:LNG輸出先シェアの推移
参考 LNG輸出先(北極海航路経由)シェアの推移
参考:LNG輸出先(北極海航路経由)シェアの推移

(6) 減産合意

2022年10月の増産(減産措置縮小)を打ち止め日量10万バレルの小幅減産に合意

  • OPECプラスは、9月5日、第32回閣僚会合をテレビ会議形式で開催した。昨年7月18日に開催された第19回会合における合意に基づき、昨年8月以降実施していた増産(減産措置縮小)(毎月日量40万バレル)について打ち止めとし、10月の生産目標を日量10万バレル減産し、日量4,385万バレルとすることを決定した。
  • 同会合に参加するノヴァク副首相は、世界経済の成長予測が調整されており、市場に未だ多くの不確実性が存在していると述べた。特に、ロシアに関しては、欧米諸国による石油価格上限の設定の動きがあると指摘した。一方でロシアは、増産と減産の双方に柔軟に対応できると強調した。また、OPECプラスの減産合意にもかかわらず、世界の原油需要は回復を続けており、2023年初頭には、日量1億バレルを超える見込みであると述べた。
  • OPECプラスは、次回の第33回閣僚会合を10月5日に開催する。

 

(7) 法令・税制(欧米制裁への対抗措置を含む)

注 2022年2月24日以降に発動された対抗措置は別添(本ページ最下)の時系列表を参照。

サハリン2案件の新事業会社(ロシア法人)への参画基準が公表

  • ミシュスチン首相は、9月6日、ロシア連邦政府令第1566号により、サハリン2案件の新事業会社(ロシア法人)である有限責任会社「サハリンスカヤ・エネルギヤ」の定款資本における株式売却を目的とする入札への参加基準を承認した。
  • 同政府令は、以下(1)から(5)を参画基準としており、同基準は、同日時点で新会社への参画の意向を表明していない英蘭シェルの保有持ち分である27.5%マイナス一株の株式について、新たな参画者を募集する手続きの一環で設定されたものと考えられる。
  • 現時点で参画基準を満たすのは、サハリン2案件の参画企業(ガスプロム、三井物産、三菱商事)及びYamal LNG案件の参画企業(Novatek、仏TotalEnergies、中国CNPC及びシルクロード基金)である。また、以下の②から⑤の基準については、ロシア国内の経験に限定されないため、ロシア国内のLNG案件に参画していない外国企業も、ロシア法人を新規に設立する、或いは、既に保有していることで、同法人経由での入札参加が認められる可能性があると解釈ができる。

参考:有限責任会社「サハリンスカヤ・エネルギヤ」社への参画基準

  1. ロシア法人であること
  2. LNG生産案件の年間生産量400万トン以上、累計生産量で少なくとも4,000万トンを実現すること
  3. LNG生産プラント(年間生産量400万トン以上)の操業経験を有すること
  4. 有効なLNG運搬船の定期用船契約(総貨物容積量400万立方メートル以上、有効期間少なくとも10年間)を有すること
  5. LNG供給契約(5年以上有効)、LNGの国際取引実績(累計で少なくとも4,000万トン)を有すること

出典:政府令第1566号よりJOGMEC作成

資格のない(一般)投資家からの「非友好国」の有価証券に関する注文の実行が停止

  • ロシア中央銀行は、9月6日、ブローカーに対して、資格のない(一般)投資家(注)からの「非友好国」の有価証券に関する実行停止を指示したことを公表した。
  • 当該措置は、次の通り、段階的に停止される。
施行日 対象となる投資家
2022年10月1日 ポートフォリオにおける「非友好国」証券シェア 15%以上
2022年11月1日

ポートフォリオにおける「非友好国」証券シェア 10%以上

2022年12月1日 ポートフォリオにおける「非友好国」証券シェア   5%以上
2023年1月1日 資格のない全投資家

(注) 資格のある投資家のステータスは、ブローカー経由で申請の後、ロシア中央銀行が設定する基準(年間取引高600万ルーブル以上、証券会社での就業経験、その他資格保有等の条件)を満たしている場合にのみ割り当てられる。資格のある投資家は、ロシア取引所に上場していない外国証券等の売買が可能となる。

有限責任会社の持ち分について、「非友好国」が関与する許可無しの取引が禁止

  • プーチン大統領は、9月8日、大統領令第618号「特定の者との間での特定の取引実施に関する特別措置について」に署名した。
  • 同大統領令により、主に以下の措置が適用される。
    • (金融機関を除く)有限責任会社の定款資本における持ち分の所有権、使用権、処分権の直接又は間接的な確立、変更、終了を伴う次の者の間での取引について、外国投資管理委員会の許可制とする。
      1. 居住者と「非友好国」の法人・個人(及びその支配下にある者)との間
      2. 「非友好国」の法人・個人(及びその支配下にある者)同士
      3. 「友好国」の法人・個人と「非友好国」の法人・個人(及びその支配下にある者)との間
      なお、上記は2022年6月30日付けの大統領令第416号及び8月5日付けの大統領令第520号に基づく取引には適用されない。
    • 「非友好国」による制裁対象となっている金融機関は、居住者である法人顧客との間での銀行口座契約に基づく、外貨建て債務の履行について、ロシア中央銀行の為替レートに基づいて、ルーブル建てで行う場合も適切に履行したとみなされる。
    • ロシア領内の地下資源の利用者であり、2004年8月4日付けの大統領令第1009号により承認された「戦略企業及び戦略株式会社のリスト」に含まれる法人が直接又は間接的に定款資本における持ち分を保有している有限責任会社は、同社に参画する「非友好国」法人・個人に対して、自身の活動に関する情報を開示しない権利を与えられる。

ロシアに対し国際貨物自動車輸送に関する制裁を行う外国への同様の報復措置を導入

  • プーチン大統領は、9月29日、大統領令第681号「国際貨物自動車輸送の実施におけるいくつかの問題について」により、ロシアに対する国際貨物自動車輸送に関する制裁を行う外国に対し、同国に登記される運送会社が保有する貨物輸送手段によってロシア領内の国際貨物自動車輸送を行うことを禁止する権限をロシア政府に与えることを決定した。
  • ロシア政府は、これに基づき、ロシア領内を通行禁止とする期間、対象となる外国のリスト、対象となる貨物輸送の種類、対象外となる貨物輸送の条件について決定する。

資源開発案件等の「非友好国」保有持ち分の取引禁止に関する数件の例外措置が適用

  • プーチン大統領は9月5日付けの大統領指令第273-rp号及び第274-rp号、9月30日付けの大統領指令第305-rp号及び第307-rp号により、2022年8月5日付けの大統領令第520号により2022年12月31日までの間、禁止される取引に関する例外措置を承認した。
参考 大統領令第520号の例外として認められた取引
参考:大統領令第520号の例外として認められた取引

(8) 脱炭素・環境対応

サハリン州における温室効果ガス排出規制の実証実験が開始

  • サハリン州政府は、9月1日、2022年3月6日付け連邦法第34-FZ号「ロシア連邦の特定の構成主体における温室効果ガスの排出量の制限に関する実験の実施」に基づき、サハリン州における温室効果ガス排出規制の実証実験を開始したことを発表した。同実験は、2028年12月31日まで実施される予定。
  • サハリン州気候・持続可能な開発省のミリチ大臣は、サハリン州は実証実験の実施中にカーボンニュートラルを実現する計画であり、ロシアにおいて最初に達成目標を設定した地方自治体であると強調した。
  • また同州においては、経済発展省と共同で、温室効果ガスの排出規制枠組み、サハリン州におけるガス化、省エネ、再エネ転換等の分野に関する包括的な気候変動対策プログラムの草案が策定されていると明らかにした。この中には、37,000世帯以上の家庭及び企業157社のガス化や、廃棄物リサイクルインフラの立ち上げ、水素燃料電池列車による鉄道旅客サービスの開始、2024年以降に年間3万トンの水素生産を行うことなどが含まれている。また、EV充電スタンドの拡充を行っていくとし、既に100件以上のEVスタンドが設置されており、うち10件は容量50キロワットの高速充電スタンドであると紹介した。サハリン州エネルギー省の情報によると、EV充電スタンドは、今後6か月以内に500件に増加する予定であり、ミリチ大臣は、このうち容量150キロワットの急速充電スタンドを35件設置する計画があることに加え、ユジノサハリンスク市におけるEVタクシーサービス、EVカーシェアリングへの取組も進めていると明らかにした。
参考:サハリン州における温室効果ガス排出規制の実証実験の概要
参考:サハリン州における温室効果ガス排出規制の実証実験の概要
出典:2022年3月6日付け連邦法第34-FZ号よりJOGMEC作成

ロシア初のカーボンクレジット登録簿への気候変動対策プロジェクトの登録が開始

  • Gazprombankは、9月6日、ロシアで初めての取組であるカーボンクレジット登録簿に登録される最初の気候変動対策プロジェクトに関する契約が締結されたと発表した。
  • カーボンクレジット登録簿は、温室効果ガスのオフセットを行うプロジェクトである、「気候変動対策プロジェクト」の管理、当該プロジェクトによる温室効果ガスの削減或いは吸収分のカーボンクレジット化及びそのクレジットの管理を行うシステムである。同登録簿の運営者は、2022年3月1日付け政府命令第367-r号により、Kontur社(モスクワ取引所、ロシア開発対外経済銀行(VEB)、ガスプロムバンクによる共同出資会社)が担っている。Gazprombankによると、2022年から2031年にかけて、カーボンクレジットを1,832ユニット発行する見込み。
  • 企業は、カーボンクレジット登録簿に登録されることを通じて、ボランタリークレジット市場への参加が可能となる。これにより、気候変動対策プロジェクトによる温室効果ガス削減・吸収分をカーボンクレジットとして収益化したり、カーボンクレジットを購入して企業毎に設定される温室効果ガス排出割当量と相殺したりすることができる。
  • また、2022年3月6日付け連邦法第34-FZ号「ロシア連邦の特定の構成主体における温室効果ガスの排出量の制限に関する実験の実施」に基づき、9月1日から開始されたサハリン州における温室効果ガス排出規制の実証実験において、サハリン州の企業が自身に割り当てられた温室効果ガス排出割当量に対して、排出量を削減した場合に、割当量達成クレジットとして同登録簿に計上され、カーボンクレジットを取得できるようになる。更に、サハリン州の企業は、2024年末までに温室効果ガス排出割当量に対する最初の実績に関する報告書を提出する必要があるが、カーボンクレジットを利用して割当量を達成することも可能となる。
  • Gazprombankによると、最初の気候変動対策プロジェクトは、DalEnergoInvest社が実施するプロジェクトであり、サハリン州において、250キロワットの発電容量を持つ648枚のソーラーパネルからなる太陽光発電所を建設し、ミニグリッドで接続する。レシェトニコフ経済発展大臣は、9月21日、同プロジェクトに対し、カーボンクレジットが96ユニット発行されたと明らかにした。同プロジェクトは、カーボンクレジット登録簿への登録に先立ち、気候変動対策プロジェクトの「認証機関」として認可されているタタルスタン共和国のイノポリス大学により検証され、認定を受けている。
参考:カーボンクレジット登録簿への登録までの流れ
参考:カーボンクレジット登録簿への登録までの流れ
出典:2022年5月11日付け経済発展省令第248号よりJOGMEC作成

ロシア初の電気自動車「Evolute」シリーズの量産が開始

  • 産業商務省は、9月28日、Motorinvest社が、リペツク州Rozhestvo工業団地における電気自動車の生産工場において、電気自動車「Evolute」シリーズの量産を開始したと公表した。同工場における組立ラインから出荷される最初のモデルは、「Evolute i-Pro」セダンである。
  • 「Evolute i-Pro」セダンは、バッテリー容量53キロワット、航続距離420km、出力150馬力、トルク260Nmの能力を備えている。2022年10月から正規販売店における受注販売が開始される見込み。
  • 産業商務省、Motorinvest社、リペツク州は、2022年3月、電気自動車の生産技術を導入するために、ロシアで最初の特別投資契約(SPIC2.0)を締結し、プロジェクトを進めてきた。同契約は、11年間の契約であり、年間10万台以上の電気自動車の生産能力を持つフルサイクルの組立工場が含まれ、投資額は130億ルーブル以上を見込んでいる。
  • マントゥロフ産業商務大臣は、多くの外国メーカーが撤退した後、ロシアの自動車産業は完全に再稼働を遂げたと自信を見せた。また「Evolute」シリーズは、産業商務省の優遇車ローンプログラムに組み込まれており、コストの35%分の高率割引価格が適用されると述べた。
  • リペツク州のアルタモノフ知事は、「Evolute」シリーズの生産プロジェクトは、同州にとって、約130億ルーブルの投資、約1,300人の新規雇用を生み出す重要なプロジェクトであると伝えた。同工場は、制裁等の複数の困難が生じている時期に操業開始することとなったが、ロシアの経済発展や輸入代替が着実に進んでいることを示す事例となったと称賛した。
  • Motorinvest社レズニコフ社長は、同プロジェクトを化石燃料から再生可能エネルギーへの移行、内燃エンジン車からゼロカーボンな電気自動車への移行の代表的な事例であるとし、同社の自動車事業における25年の経験を生かして、独自のエコシステムを構築していく方針であると述べた。
  • 「Evolute」シリーズは、年末までに「Evolute i-Joy」クロスオーバーと、「Evolute i-Van」ミニバンをラインナップに加え、2,000台を生産する計画である。更に、2023年には、「Evolute i-Jet」クロスクーペを市場投入する予定。
生産開始された「Evolute i-Pro」セダン
生産開始された「Evolute i-Pro」セダン
写真出典:https://minpromtorg.gov.ru/press-centre/news/#!pravitelstvo_podderzhit_biznes_v_chasti_razvitiya_otechestvennogo_po

3. ロシア石油ガス会社の主な動き

(1) ガスプロム

LNG生産及びLNG輸送設備の建設に関する契約を調印

  • ガスプロムは、9月15日、サンクトペテルブルク国際ガスフォーラムにおいて、LNG生産及びLNG輸送設備の建設に関する複数の文書に署名した。
  • このうち、RusChemAlliance社、Gazprom Linde Engineering社との間で、ガスコンプレッサーステーション「Portovaya」エリアにおけるLNG生産、貯蔵、出荷施設の拡張(年間LNG生産量150万トンから200万トンに拡大)に関する検討を行う協力協定に署名した。
  • また、Gazprom Helium Service社及びアストラハン州政府、Geliimash社、ContainerRemService社との間で、3つの協力協定に署名した。Gazprom Helium Service社及びアストラハン州政府との間では、アストラハン州の経済特区「Lotus」において、自動車、水上交通、特殊機器向けのスモールLNGインフラの整備に関する検討を行う。Geliimash社との間では、マイナス269度の液体ヘリウム輸送のための特殊コンテナの連続生産に関する検討を行う。ContainerRemService社との間では、液体炭化水素ガスの輸送と貯蔵のためのコンテナ供給に関する検討を行う。
RusChemAlliance社、Gazprom Linde Engineering社との署名式の様子
RusChemAlliance社、Gazprom Linde Engineering社との署名式の様子
写真出典:https://www.gazprom.ru/f/posts/43/806864/

2022年9月30日までの生産・輸出実績を発表

  • ガスプロムは、10月3日、2022年9月30日までの同社の生産量及び輸出量の実績を発表した。
  • 2022年1月1日から2022年9月30日までの同社の生産量は、前年比17.1%(64.8BCM)減の313.3BCMとなった。
  • 国内向けの天然ガス供給量は、前年比4.1%(7.2BCM)減少した。
  • CISを除く海外向けの輸出量は、前年比40.4%(58.9BCM)減の86.9BCMとなった。一方、中国向けのガス輸出は、数値は非公表であるものの、CNPCとの間での長期契約に基づく日量契約量を超えて供給が行われており、9月中に2回、過去最大の日量供給量を記録したことを明らかにした。

 

(2) ロスネフチ

ズヴェズダ造船所において、アフラマックス型石油タンカー2隻の命名式を実施

  • ロスネフチは、9月5日、第7回東方経済フォーラムにあわせて、ズヴェズダ造船所において、RosnefteflotとSovcomflot向けに建造されたアフラマックス型石油タンカー2隻の命名式を行った。命名式には、マントゥロフ産業商務大臣、Sovcomflotトンコヴィドフ社長、ズヴェズダ造船所ツェルイコ社長が出席した。
  • 石油タンカーはそれぞれ、「ヴラジーミル・モノマフ」号と「ヴラジーミル・ヴィノグラドフ」号と名付けられた。ズヴェズダ造船所は、同クラスの石油タンカー12隻を受注しており、うち10隻がRosnefteflot向けに、残り2隻がSovcomflot向けに建造される。
  • 同タンカーは、航行制限のない海域での原油及び石油製品の輸送用に設計されており、全長250メートル、幅44メートル、積載容量11万4,000トン、航行速度14.6ノットとされる。
命名されたアフラマックス型石油タンカー2隻
命名されたアフラマックス型石油タンカー2隻
写真出典:https://www.rosneft.ru/press/news/item/211589/

4. 新規LNG・P/L事業

(1) 「極東」ルートでの中国向け天然ガスパイプライン供給について議論

  • ガスプロム・ミレル社長は、9月6日、第7回東方経済フォーラムにあわせて、中国CNPC戴会長との間でオンライン形式での会議を行い、「極東」ルートでの中国向け天然ガスパイプライン供給について議論を行った。両者は、ロシアにおけるシベリアの力2パイプラインと、Soyuz Vostokパイプライン(シベリアの力2のモンゴル通過部分)について特に検討を行った。更に、「極東」ルートでの天然ガスの長期供給契約について、決済通貨をルーブルと人民元で行うことに追加合意した。
  • ガスプロムの公表情報によると、イルクーツク州コヴィクタガス田からチャヤンダガス田までを繋ぐ、シベリアの力パイプラインの延伸部の建設は、ほぼ100%完成しており、2022年末までに、コヴィクタガス田から同パイプライン経由での中国向けの天然ガス供給が開始される見込みである。

 

(2) Soyuz Vostokパイプライン(シベリアの力2のモンゴル通過部分)のFSが完了

  • ガスプロム・ミレル社長は、9月7日、第7回東方経済フォーラムにあわせて、モンゴルのオヨーンエルデネ首相との間で対面での会議を行い、Soyuz Vostokパイプラインの建設に関するプロジェクトのフィージビリティスタディ(FS)の完了後、その結果を両者が承認し、実行段階に移行したことを確認した。現在、パイプラインの設計作業が行われている。
オヨーンエルデネ首相との会談の様子
オヨーンエルデネ首相との会談の様子
写真出典:https://www.gazprom.ru/f/posts/51/515310/

 

別添 ロシアに対して発動された各国制裁に対する主なロシアの対抗措置(時系列表)

1. 金融措置
  主な措置の概要
2月28日 対外経済活動により取得した外貨80%の強制換金(3日以内)が義務付け
3月1日 ロシアからの外貨の持ち出し・国外送金が1万USD相当以下に制限
3月9日 ロシアにおける外貨の引き出しが1万USD相当以下に制限
3月18日 ロシアからのルーブルの持ち出し・国外送金についてもロシア中銀が制限可能に
8月8日 欧米制裁対象のロシア銀行による法人顧客向けの外貨業務の停止が可能に

 

2. ルーブル支払いの強制
  主な概要
3月5日 1千万ルーブル/暦月を超える債務をロシア国内銀行のルーブル口座に返済可能に
3月31日 ガスプロムから「非友好国」の需要家に対するパイプライン経由での天然ガス販売代金について、Gazprombankルーブル口座への支払いに限定
5月4日 1千万ルーブル/暦月を超える配当金/債務保証金をロシア国内のルーブル口座に支払い可能に
5月7日 「非友好国」の保有する知的財産の利用料等をロシア国内銀行のルーブル口座へ支払い可能に
6月22日 外貨建てのロシア国債等をロシア証券保険振替機関のルーブル口座に返済可能に
8月8日 ロシア法人発行のユーロ債についてロシア国内銀行のルーブル口座に返済可能に
9月8日 制裁対象の金融機関は、居住者法人に対する外貨建て債務をルーブル建てで返済可能に

 

3. 経済強硬措置
  主な概要
3月4日 ロシア人の権利を侵害する外国の個人に対する入国禁止、資産没収、取引禁止
3月6日 国民の生活・健康、軍事に必要な「非友好国」の特許権の無償利用を可能に
3月7日 EU、米、英、日、豪等の西側諸国を「非友好国」に指定するリストが公表
  →7月23日に英国王室属領ガーンジー島等やバハマを対象に追加
4月4日 EU+欧州5か国とのVISA簡素化協定を停止
また、外務省の独断による外国人の入国禁止・滞在制限が可能に
5月3日 「制裁対象リスト」に掲載される法人・個人との(1)新規契約の締結、(2)既存契約の履行、(3)金融取引、(4)同者へのロシア産製品・原材料の輸出を禁止
5月11日 「制裁対象リスト」にガスプロム欧州マーケティング子会社31法人が登録
  →9月30日にErdgasspeicher Peissen GmbHを対象に追加し全32法人に
6月28日 改正地下資源法により、地下資源利用ライセンスの外国の法人・個人への新規発給、同社による既存ライセンスの保有を禁止
6月30日 サハリン2案件の資産・権利義務を新設のロシア法人に強制移管し、外国株主が応じない場合にそのシェアを売却可能に
7月14日 地下資源利用ライセンス又はガス輸送施設を保有する外国法人の子会社・駐在員事務所をロシア法人に強制転換可能に
8月3日 サハリン2案件の権利・義務等の移管先となるロシア法人・有限責任会社「サハリンスカヤ・エネルギヤ」の設立条件・定款が公表
8月5日 2022年12月31日までの間、非友好国と関わりのある外国人(個人・法人)等が保有する、ロシア法人の持分に関する取引が禁止
9月8日 有限責任会社の持ち分について、「非友好国」が関与する外国投資管理委員会の許可無しの取引が禁止

 

4. 情報統制
  主な概要
3月4日 ロシア軍に関する「偽情報」の拡散を最長15年の実刑で処罰可能に
3月25日 ロシア政府機関の活動に関する「偽情報」の拡散を最長15年の実刑で処罰可能に
7月14日 「外国のエージェント」の登録対象が、メディア、NGO、個人から一般企業まで拡大
7月14日 「違法な情報」を拡散した場合又は、外国で活動するロシアメディアへの活動禁止の報復措置として、外国メディアの権限はく奪、活動停止が可能に
7月14日 ロシアの金準備高と外貨準備高が非公開の国家機密情報に指定
9月8日 ロシア領内の地下資源利用者/戦略企業が参加する有限責任会社に対し「非友好国」株主へ自身の活動に関する情報を開示しない権利が付与

 

5. 軍事関係・刑事罰
  主な概要
5月28日 改正兵役法により、軍事動員の年齢上限(ロシア国民 40歳、外国人 30歳)が撤廃
7月14日 外国の武力紛争や軍事作戦、諜報・防諜活動への加担、ロシア当局の安全保障に関する活動への妨害や反対活動の扇動を最長20年の実刑で処罰可能に
8月25日 ロシア軍の総兵力について追加13万7,000人の増員を大統領が指示
9月21日 ロシア国民のロシア軍への「部分動員」令が発動
9月24日 動員への参加拒否や、脱走、自発的に投降行為を行った場合に処罰可能に
9月24日 ロシア軍に少なくとも1年間従事した外国人にロシア国籍を付与可能に

 

以上

(この報告は2022年10月28日時点のものです)

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