ページ番号1009530 更新日 令和4年11月30日

原油市場他: 中国の新型コロナウイルス感染抑制策転換及び米国物価上昇沈静化の兆しにより、上向く原油価格

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レポートID 1009530
作成日 2022-11-14 00:00:00 +0900
更新日 2022-11-30 10:00:02 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 市場
著者 野神 隆之
著者直接入力
年度 2022
Vol
No
ページ数 38
抽出データ
地域1 グローバル
国1
地域2
国2
地域3
国3
地域4
国4
地域5
国5
地域6
国6
地域7
国7
地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 グローバル
2022/11/14 野神 隆之
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概要

  1. 米国では、冬場の暖房シーズンに伴う暖房用石油需要期到来に向け製油所の稼働は上昇したものの、輸出が好調であったことから、ガソリン在庫は減少傾向となった結果、平年並みの量となっている。また、堅調な需要の一方石油製品製造活動活発化もあり、留出油在庫は限られた範囲内で変動したが、平年幅下限を割り込む量となっている。他方、米国戦略石油備蓄(SPR)からの原油供給もあり、原油在庫は増加傾向となった他、平年幅上限を超過する状態は継続している。
  2. 2022年10月末のOECD諸国推定石油在庫量の対前月末比での増減に関しては、原油については、米国では増加となったものの、欧州及び日本ではストライキ実施や装置不具合の発生等に伴う製油所の操業停止により原油精製処理量が減少したことに併せ原油調達が調整されたものと見られる結果、原油在庫は欧州では微増、日本では微減にとどまった。この結果、OECD諸国全体では原油在庫は増加となり、平年幅上限を超過する状態は継続している。石油製品については、米国では、ガソリン、留出油及びその他の石油製品を中心として在庫は減少した。ただ、欧州では、製油所に加え石油化学工場がストライキにより操業を停止したこともあり、双方の施設向けの原燃料である重油及びナフサの需要が減退するとともに両製品を中心として石油製品在庫が増加した。また、日本では、冬場の暖房シーズンに伴う暖房用の灯油需要期到来に向け灯油在庫の積み上げが進んだこと等により、石油製品在庫は増加した。この結果、OECD諸国全体の石油製品在庫は増加となったものの、平年幅下方付近に位置する量となっている。
  3. 2022年10月中旬から11月中旬にかけての原油市場においては、真偽不明のものを含め、中国での新型コロナウイルス感染抑制のための厳格な個人の外出規制及び経済活動の制限を緩和することを示唆する情報や動きが見られたことに加え、10月の米国消費者物価指数(CPI)上昇率が縮小した他市場の事前予想を下回ったこともあり、米国金融当局による政策金利引き上げペースが減速する可能性が増大したことにより、米国や中国の経済と石油需要の回復に対する期待が市場で拡大したことが、原油相場に上方圧力を加えた結果、原油相場は概して上昇基調となった。
  4. 米国等で冬場の暖房シーズンに突入したことにより、季節的な石油需給の引き締まり感が市場で意識されるとともに、この先も原油相場が支持される可能性がある。また、冬場の暖房シーズン到来に伴う天然ガス需給引き締まり感から暖房向けもしくは空調のための発電向け天然ガス価格が上昇するとともに、相対的に安価な石油製品への燃料転換が発生する結果、石油製品及び原油の価格に上方圧力が加わるといった展開となることも否定できない。他方、中国の新型コロナウイルス感染抑制のための都市封鎖措置等の対策、もしくは米国等の政策金利引き上げを含む金融引き締め策の転換への期待が強まれば、石油需要増加観測から原油相場が上振れするといった場面が見られることも想定されうる。また、原油相場の下落継続もしくは急落の兆候に対しては、サウジアラビア等を含むOPECプラス産油国が口先介入を含め、原油価格下落抑制を試みるものと見られることから、この面では原油相場の下落局面はあったとしても、期間的にも規模的にも限定的なものになりやすいものと考えられる。

(出所 IEA、OPEC、米国DOE/EIA他)

 

1. 原油市場を巡るファンダメンタルズ等

2022年8月の米国ガソリン需要(確定値)は日量908万バレル、前年同月比1.1%程度の減少と、7月の当該需要である同875万バレル、同5.9%程度の減少から、需要量が上振れしたうえ前年同月比での減少率も縮小した(図1参照)。また、当該需要は速報値(前年同月比3.9%程度減少の日量882万バレル)から上方修正されている。8月の同国からのガソリン最終製品輸出量が速報値段階では日量109万バレル程度と推定されるところ確定値では同96万バレルへと下方修正されたことで、この分がガソリン需要の速報値から確定値への移行段階で輸出から国内需要へと振り替えられたことが、当該需要の上方修正の一因となったものと見られる。6月13日に米国エネルギー省エネルギー情報局(EIA)から発表された同国のガソリン小売価格が1ガロン当たり5.107ドルと、1993年4月以降のEIA週間統計史上最高水準に到達したものの、その後は原油価格とともに同国ガソリン小売価格が下落傾向となったこともあり、同国の自動車運転距離数が回復した(6月に前年同月比で1.6%、7月に同3.2%の、それぞれ減少であった当該距離数は8月には同0.7%の増加となった)ことが、ガソリン需要の持ち直しに反映しているものと考えられる。ただ、2022年8月の同国ガソリン需要は2019年8月の当該需要(日量983万バレル)(確定値)を依然7.7%程度下回っている。他方、2022年10月の同国ガソリン需要(速報値)は日量870万バレル、前年同月比で3.7%程度の減少となっており、9月当該需要である同876万バレル(速報値)から需要量が下振れしたうえ、9月の前年同月比の当該需要減少率である2.0%程度から減少率が拡大している。9月の同国ガソリン小売価格は1ガロン当たり3.771~3.859ドルであった反面、10月は同3.857~4.034ドルと、当該価格は上振れする傾向が見られたことから、10月の同国自動車運転距離数も1日当たり91.9億マイルと9月の当該距離数である同92.3億マイルからわずかながらではあるが減少していることが、10月のガソリン需要に影響しているものと見られる。また、10月の同国自動車運転距離数は、前年同月(1日当たり92.2億マイル)から0.3%の僅かな減少にとどまっているが、2021年9月の自動車運転距離数が1日当たり92.7億マイルと同年8月と同水準であったにもかかわらず、同年9月のガソリン需要が前月比で落ち込んだ反動が同年10月に現れたと見られることにより、その反動で2022年10月のガソリン需要の減少率が大きくなった可能性がある。なお、2022年10月の米国ガソリン需要は2019年同月の当該需要(日量931万バレル)(確定値)を6.6%程度下回っている。そして、9月上旬以降夏場のドライブシーズンに伴うガソリン需要期が終了するとともに秋場の不需要期に突入したこともあり、同国の複数の製油所がメンテナンス作業を実施したり、製油所の装置に不具合が発生したりしたことにより、原油精製処理量が一時低迷したものの、10月下旬にはメンテナンス作業が終了するとともに原油精製処理量が上向く(図2参照)とともに、石油製品の製造活動も回復したものと見られる(ガソリン最終製品生産量は図3参照)。しかしながら、米国からのガソリン輸出が活発に行われた(フランスの製油所ストライキ等に伴うガソリン製造活動不活発化による供給低下懸念が市場で増大したことが影響している可能性がある)ことが影響し、10月上旬から11月上旬にかけ同国ガソリン在庫は減少傾向となり、平年並みの量となっている(図4参照)。

図1 米国ガソリン需要の伸び(2006~22年)

図2 米国の原油精製処理量(2009~22年)

図3 米国のガソリン(最終製品)生産量(2009~22年)

図4 米国ガソリン在庫推移(2003~22年)

2022年8月の米国留出油需要(確定値)は日量387万バレルと前年同月比で2.8%の減少となり(図5参照)、8月の同372万バレル(前年同月比1.2%程度の増加)から需要量は増加したものの前年同月比の増減率は一転して減少となった。ただ、当該需要は速報値(前年同月比5.9%程度減少の日量375万バレル)からは上方修正されている。8月の同国からの留出油輸出量が速報値段階では日量156万バレル程度と推定されるところ確定値では同142万バレルへと下方修正されたことで、この分が同国留出油需要の速報値から確定値への移行段階で輸出から国内需要へと振り替えられたことが、当該需要の上方修正の一因となったものと見られる。8月の米国鉱工業生産は前年同月比で3.7%の増加と7月の同3.8%の増加から増加率が微減にとどまった他、8月の同国物流活動は前年同月比で5.2%の増加と2021年6月(この時は同5.7%の増加)以来の大幅な伸びとなっていたことから、同国の留出油需要自体は堅調に推移したものと考えられる。ただ、2021年7月の同国鉱工業生産の前年同月比での伸び率(6.9%増加)が同年6月の鉱工業生産の前年同月比での伸び率(10.2%増加)から低下した以上に、同年7月の留出油需要の前年同月比での伸び(1.2%程度の増加)が同年6月の伸び(前年同月比12.7%)から大幅に縮小した反動で、同年8月の留出油需要が上振れした(同月の留出油需要は日量398万バレルと7月の368万バレルから相当程度増加した)ことが、かえって2022年8月の留出油需要を前年比で減少させる形で作用したものと考えられる。なお、2022年8月の米国留出油需要は2019年8月の当該需要(日量403万バレル)(確定値)比で4.9%程度の減少となっている。また、2022年10月の留出油需要(速報値)は日量414万バレルと前年同月比で4.3%程度の増加となり、9月の当該需要量(速報値)の日量373万バレル、前年同月比7.6%の減少から、需要量が相当程度増加したうえ前年同月比でも増加に転じた。9月の同国鉱工業生産は前年同月比5.1%程度の増加と8月の同3.7%の増加から増加率が拡大した他、同月の物流活動が前年同月比で4.8%の増加と堅調に推移したものの、9月の同国留出油需要が日量373万バレルと前月から減少した他前年同月比でも7.6%の減少となった反動で、10月の留出油需要が跳ね上がった格好となったものと考えられる。なお、2022年10月の米国留出油需要は2019年の当該需要(日量422万バレル)(確定値)を2.0%程度下回っている。そして、10月の米国留出油需要が堅調に推移した一方、米国の製油所では冬場の暖房シーズンに伴う軽油・暖房油需要期突入(11月1日以降)を控え、留出油の生産を活発化させた(図6参照)ことから、同国の留出油在庫は概ね限られた範囲内で推移したが、平年幅下限を割り込む量となっている(図7参照)。

図5 米国留出油需要の伸び(2006~22年)

図6 米国の留出油生産量(2009~22年)

図7 米国留出油在庫推移(2003~22年)

2022年8月の米国石油需要(確定値)は、前年同月比0.1%程度増加の日量2,060万バレルとなり(図8参照)、7月の同2,035万バレル、前年同月比0.9%程度の増加から、需要量は増加したものの増加率は縮小した。需要量の前月比での増加はガソリン需要等が寄与する格好となっている。また、その他の石油製品の需要が前年同月比で日量12万バレルと若干増加するなどしたものの、ガソリンや留出油の需要が前年同月比で減少したことにより相殺されたことから、前年同月比では若干の増加にとどまった。さらに、ガソリン及び留出油等の需要が速報値から確定値に移行する段階で上方修正されたことにより、同国石油需要も速報値(前年同月比2.5%程度減少の日量2,005万バレル)から確定値に移行する段階で上方修正されている。なお、2022年8月の米国石油需要は、2019年8月の当該需要(日量2,116万バレル)(確定値)を2.6%程度下回っている。他方、2022年10月の米国石油需要(速報値)は日量2,044万バレルと前年同月比で0.3%程度の増加となり、9月の同国石油需要(速報値)である日量1,994万バレルから増加した他、9月の前年同月比1.0%の減少から増加に転じている。留出油需要が前月比及び前年同月比で増加したことが、同国石油需要の前月比及び前年同月比での増加の一因になっているものと見られる。なお、2022年10月の米国石油需要は、2019年10月の当該需要(日量2,071万バレル)(確定値)を2.5%程度下回っている。他方、欧州の代表的な原油指標であるブレントの価格が米国の代表的な原油指標であるWTIの価格を相当程度上回っていたこともあり(ロシアのウクライナに対する事実上の侵攻実施に伴う、ロシア産を中心とする原油供給減少による欧州での石油需給引き締まり懸念の強まりが背景にあるものと見られる)、米国から欧州方面等に向け原油が高水準で輸出されたものの、夏場のドライブシーズンに伴うガソリン需要期が終了するとともに米国の製油所での原油精製処理量が減少したうえ、同国の戦略石油備蓄(SPR)から原油が供給され続けた(10月7日の週から11月4日の週にかけ1週当たり193~769万バレルの原油が供給された)ことにより相殺される格好となったことから、10月上旬から11月上旬にかけ原油在庫は比較的限られた範囲内での変動となり、平年幅上限を上回る状態は継続している(図9参照)。そして、原油在庫が平年幅上限を超過する量、ガソリン在庫が平年並みの量、留出油在庫が平年幅下限を割り込む量となったが、原油とガソリンを合計した在庫、そして原油、ガソリン及び留出油を合計した在庫は、いずれも平年幅上限を超過する状態となっている(図10及び11参照)。

図8 米国石油需要の伸び(2006~22年)

図9 米国原油在庫推移(2003~22年)

図10 米国原油+ガソリン在庫推移(2003~22年)

図11 米国原油+ガソリン+留出油在庫推移(2003~22年)

2022年10月末のOECD諸国推定石油在庫量の対前月末比での増減に関しては、原油については、米国では増加となったものの、欧州では9月22日以降フランスで給与水準引き上げ等の労働条件改善を要求した労働者によるストライキが拡大、10月4日時点で同国の原油精製能力(2021年時点で日量114万バレルとされる)の65%程度に相当する日量74万バレル程度の原油精製能力を保有する製油所の稼働が停止した(10月19日以降同国での製油所ストライキは収束に向かい初め、11月8日の同国フェイザン(Feyzin)製油所(操業者:トタルエナジーズ、原油精製処理能力日量11万バレル)の操業再開を以て、全ての製油所でのストライキは終了したとされる)ため、また、日本においても10月半ばに装置不具合により一部製油所で稼働を停止したことにより、それぞれの地域で10月は原油精製処理量が減少する場面が見られたものの、それに併せて原油調達が調整されたものと考えられる結果、原油在庫は欧州では微増、日本では微減にとどまった。この結果、OECD諸国全体では原油在庫は増加となり、平年幅上限を超過する状態は継続している(図12参照)。石油製品については、米国では、ガソリン、留出油及びその他の石油製品(冬用ガソリンに混入するブタンの需要が増加しつつあることによるものと見られる)を中心として在庫は減少した。ただ、欧州では、製油所に加え石油化学工場がストライキにより操業を停止したこともあり、双方の施設向けの原燃料である重油及びナフサの需要が減退するとともに両製品を中心として石油製品在庫が増加した。また、日本では、冬場の暖房シーズンに伴う暖房用の灯油需要期到来に向け灯油在庫の積み上げが進んだこと等により、石油製品在庫は増加した。この結果、OECD諸国全体の石油製品在庫は増加となったものの、平年幅下方付近に位置する量となっている(図13参照)。そして、原油在庫が平年幅上限を超過する量となっている一方、石油製品在庫が平年幅下方付近に位置する量となっていることから、原油と石油製品を合計した在庫は平年幅上方付近に位置する量となっている(図14参照)。なお、2022年10月末時点のOECD諸国推定石油在庫日数は59.9日と9月末の推定在庫日数(58.8日)から増加している。

図12 OECD諸国原油在庫推移(2005~22年)

図13 OECD諸国石油製品在庫推移(2005~22年)

図14 OECD諸国石油在庫(原油+石油製品)推移(2005~22年)

10月12日に1,600万バレル台半ば程度の水準であったシンガポールのガソリンを含む軽質留分在庫は、10月19日には1,500万バレル台前半程度、10月26日には1,500万バレル強程度、11月2日には1,400万バレル台前半程度、そして、11月9日には1,300万バレル台半ば程度の量へと、それぞれ減少した。北半球における夏場のドライブシーズンに伴うガソリン需要期の終了後の秋場のガソリン不需要期の到来に加え、物価上昇等からインドネシアを含む東南アジア諸国経済が減速しつつあるものと見られることにより、同地域でのガソリン需要がもたつき気味となったことが一因となり、ガソリン価格に下方圧力が加わった結果、アジア諸国での製油所のガソリン製造を巡る利幅が低迷した。この結果、韓国等での秋場のメンテナンス作業実施による製油所の稼働低下と併せ、製油所でのガソリン製造活動が不活発化したことが、シンガポールでの軽質留分在庫を押し下げる形で作用したものと考えられる。ただ、中国での新型コロナウイルス感染抑制策に伴う都市封鎖措置を含む個人の外出規制の強化等により、同国国内でのガソリン需要不振とともに在庫が積み上がっているものと見られ、同国での新規石油製品輸出枠の付与(ガソリン、ジェット燃料、軽油及び低硫黄重油で合計1,500万トン(うち175万トンが低硫黄重油と見られる)の輸出枠付与を中国政府が最終決定した旨9月30日に報じられていた)に伴い、この先中国からガソリンを含む石油製品輸出が活発化するとの観測が市場で広がったことが、アジア市場でのガソリン価格を抑制する格好となったこともあり、10月中旬から11月中旬にかけてのガソリン価格とドバイ原油価格(従来ガソリン価格がドバイ原油価格を上回っていた)は両者概ね等価となる水準近辺で推移した。

また、中国国内一部都市においては、依然として新型コロナウイルス感染抑制のための経済活動制限等が実施されていることもあり、同国経済が減速したままになるとともに、石油化学製品需要がその影響を受けた他、台湾塑膠工業(台湾プラスチック工業: Formosa Petrochemical)の麦寮(Mailiao)にあるナフサ分解装置2号機(エチレン生産能力年産103万トン)のメンテナンス作業実施が長期化しつつある(当初7月11日から9月30日までの予定であったが、11月30日まで延長されたうえ、さらなる延長がなされる可能性があると見る向きもある)ことを含め、アジア諸国及び地域において複数のナフサ分解装置がメンテナンス作業実施等により操業を停止したことにより、アジア市場でのナフサの需要が下振れしたと見られることが、同市場でのナフサ価格に下方圧力を加えた一方、9月22日以降フランスで給与水準引き上げ等の労働条件改善を要求した労働者によるストライキが拡大、10月4日時点で同国の原油精製能力(2021年時点で日量114万バレルとされる)の65%程度に相当する日量74万バレル程度の原油精製能力を保有する製油所の稼働が停止した(なお、10月19日以降同国での製油所ストライキは収束に向かい初め、11月8日の同国フェイザン(Feyzin)製油所(操業者:トタルエナジーズ、原油精製処理能力日量11万バレル)の操業再開を以て、全ての製油所でのストライキは終了したとされる)他、10月27日夜(現地時間)に台湾中油(CPC)の大林(Dalin)製油所(原油精製処理能力日量40万バレル)で火災が発生し同製油所の稼働が停止した(操業再開までに5~6ヶ月程度を要すると予想される旨伝えられる)など、アジア諸国及び地域の複数の製油所で装置の不具合等が発生したことに伴い操業が停止したことにより、ナフサを含む石油製品の製造に支障が発生するとの懸念が市場で拡大したことが、アジア市場でのナフサ価格を下支えする格好となったことから、10月中旬から11月中旬にかけてのナフサとドバイ原油との価格差(この場合ナフサ価格がドバイ原油価格を下回っている)は比較的限られた範囲で推移した。

10月12日には800万バレル台前半程度の水準であったシンガポールの中間留分在庫は、10月19日及び26日には700万バレル弱程度、11月2日には600万バレル台後半程度の、それぞれ量へと減少した。11月9日には700万バレル台前半程度の水準へと回復したものの、なお10月12日の量を下回る状態となっている。ロシアのウクライナへの事実上の侵攻実施に伴う、ロシア産石油を引き取ることによる評判リスク発生への懸念等から欧州等の石油会社がロシア産石油を敬遠する動きが拡大したこと、及びフランスの製油所ストライキにより同国製油所での石油製品の製造に大きな支障が発生したこと等により、冬場の暖房用シーズンに伴う需要期を控えて、欧州の石油需要の中心である留出油の需給引き締まり感が市場で強まったことが、同地域での軽油価格に上方圧力を加えるとともに、欧州の軽油価格がアジアの軽油価格よりも割高となったことにより、アジアから欧州方面への軽油輸出が活発化した一方、アジア諸国及び地域からシンガポール方面への軽油の流れが鈍化した。加えて、アジアの一部諸国及び地域において、製油所が秋場のメンテナンス作業を実施したり、装置に不具合等が発生したりした結果石油製品製造活動が不活発化した。以上のような要因が、シンガポールでの中間留分在庫減少傾向の背景にあるものと考えられる。そしてこのように在庫減少を含めアジア地域での軽油需給引き締まり感が市場で増大したことが、軽油価格に上方圧力を加える格好となったことから、10月中旬から11月中旬にかけては、アジア市場での軽油とドバイ原油の価格差(この場合軽油価格がドバイ原油価格を上回っている)は、総じて9月中旬から10月中旬にかけての当該価格差から拡大する傾向が認められた。しかしながら、例えば11月初頭には、原油価格の上昇に軽油価格の上昇が追い付かなかった結果、軽油とドバイ原油との価格差が縮小する場面も見られた。

10月12日に2,000万バレル台前半程度の水準であったシンガポールの重油在庫は、10月19日には2,100万バレル強程度、10月26日には2,100万バレル台前半程度の、それぞれ量へと増加したが、11月2日には1,900万バレル弱程度の水準へと低下した。ただ、11月9日には2,100万バレル台半ば程度の量へと回復したことにより、10月12日の水準を上回る状態となっている。欧州で引き取りが敬遠されたロシア産重油に加え、フランスでの製油所ストライキに伴う操業停止により製油所での燃料として利用されなかった重油等がシンガポールに流入しているものと見られることが、シンガポールでの重油在庫を下支えしているものと考えられる。ただ、特に10月中旬から下旬にかけてはシンガポールの重油在庫が総じて小幅の増加にとどまっていたことから、当該期間のアジア市場での高硫黄重油とドバイ原油との価格差(この場合高硫黄重油価格がドバイ原油価格を下回っている)は概ね限られた範囲で変動した。しかしながら、11月初頭以降は原油価格の下落に高硫黄重油のそれが追い付かなかったことにより、高硫黄重油とドバイ原油との価格差は縮小する場面が見られた。また、北東アジア地域が総じて温暖であり空調向けの電力供給のための発電部門、及び暖房のための民生部門における低硫黄重油需要が低調であったものと見られることが、アジア市場での低硫黄重油価格に下方圧力を加えた結果、10月中旬から11月中旬にかけてのアジア市場での低硫黄重油とドバイ原油との価格差(この場合低硫黄重油価格がドバイ原油価格を上回っている)は縮小する傾向を示した。

 

2. 2022年10月中旬から11月中旬にかけての原油市場等の状況

2022年10月中旬から11月中旬にかけての原油市場においては、真偽不明のものを含め、中国での新型コロナウイルス感染抑制のための厳格な個人の外出規制及び経済活動の制限を緩和することを示唆する情報や動きが見られたことに加え、10月の米国消費者物価指数(CPI)上昇率が縮小した他市場の事前予想を下回ったこともあり、米国金融当局による政策金利引き上げペースが減速する可能性が増大したことにより、米国や中国の経済と石油需要の回復に対する期待が市場で拡大したことが、原油相場に上方圧力を加えた結果、原油相場は概して上昇基調となった(図15参照)。

図15 原油価格の推移(2003~22年)

米国政策金利の迅速な引き上げを支持する旨10月15日に同国セントルイス連邦準備銀行のブラード総裁が示唆したこともあり、同国経済減速懸念が市場で拡大したことに加え、2022年11月の米国のパーミアン盆地(同国テキサス州とニューメキシコ州に位置しシェールオイル生産の中心地域の一つ)での原油生産量が日量545万バレルと史上最高水準に到達することを含め同月の同国主要7シェール地域における原油生産量が前月比で日量10万バレル程度増加する見込みであるとの見解を10月17日に米国エネルギー省エネルギー情報局(EIA)が示したことにより、この先の米国石油需給緩和感を市場が意識したこと、10月17日に発表される予定であった中国小売売上高及び鉱工業生産や、10月18日に発表される予定であった2022年第3四半期の同国国内総生産(GDP)等の統計類の発表を無期延期する(理由は明らかにされず)旨中国国家統計局が10月17日に発表したことにより、同国経済減速と石油需要の伸びの鈍化懸念が市場で発生したことから、この日(10月17日)の原油価格は前週末終値比で1バレル当たり0.15ドル下落し、終値は85.46ドルとなった。また、10月18日も、10月17~18日に発表される予定であった中国経済指標類の発表を無期延期する旨同国国家統計局が10月17日に発表したことにより、同国経済減速と石油需要の伸びの鈍化懸念が市場で発生した流れを引き継いだことに加え、10月19日にEIAから発表される予定である同国石油統計(10月14日の週分)で原油在庫が増加している旨判明するとの観測が市場で発生したこと、米国バイデン政権が既存の1.8億バレルの戦略石油備蓄(SPR)からの原油供給の一環で1,000~1,500万バレル程度の原油をこの先供給する方向で検討している旨10月17日夜(米国東部時間)以降に伝えられたことにより、石油需給緩和感を市場が意識したことから、この日(10月18日)の原油価格の終値は1バレル当たり82.82ドルと前日終値比で2.64ドル下落した。この結果原油価格は10月17~18日の2日間で1バレル当たり合計2.79ドルの下落となった。しかしながら、10月19日には、これまでの原油価格下落に対し値頃感から原油を買い戻す動きが市場で発生したことに加え、10月19日にEIAから発表された米国石油統計で原油在庫が前週比173万バレルの減少と市場の事前予想(同140万バレル程度の増加)に反し減少している旨判明したことから、この日の原油価格の終値は1バレル当たり85.55ドルと前日終値比で2.73ドル上昇した。10月20日も、中国への入国者の隔離期間を現行の10日間から7日間に短縮することを中国政府が検討している旨10月20日にブルームバーグ通信が報じたことにより、同国経済と石油需要の回復に対する期待が市場で増大したことから、この日の原油価格は前日終値比で1バレル当たり0.43ドル上昇し、終値は85.98ドルとなった(なお、この日を以てNYMEXの2022年11月渡し原油先物契約は取引を終了したが、12月渡し原油先物契約のこの日の終値は1バレル当たり84.51ドル(前日終値比0.01ドルの下落)であった)。この結果原油価格は10月19~20日の2日間で1バレル当たり合計3.16ドル上昇した。そして、10月21日の原油価格は、前日終値比で1バレル当たり0.93ドル下落し、終値は85.05ドルとなったが、12月渡し米国原油先物契約間では、前日終値比1バレル当たり0.54ドルの上昇であった。これは、中国への入国者の隔離期間を短縮することを同国政府が検討している旨10月20日に報じられたことにより、同国経済と石油需要の回復に対する期待が市場で増大した流れを引き継いだことに加え、米国の政策金利引き上げペースの減速を検討すべきである旨、米国セントルイス連邦準備銀行のブラード総裁及びサンフランシスコ連邦準備銀行のデーリー総裁が10月21日に明らかにしたこともあり、同国金融当局による金融引き締め政策推進ペースの減速による米国経済回復期待が市場で発生したこともあり、同国株式相場が上昇するとともに米ドルが下落したことによる。

また、中国の習近平国家主席が、それまでの同国の指導者の定年(中国共産党大会開催時点で68歳以上であれば引退、習氏は現在69歳)及び2期10年間の在任期間の慣例を覆し、同氏による政権が3期目へと突入する旨10月23日に中国共産党大会で決定された他、次期政権を習氏の側近で固める旨10月23日に示唆されたことにより、同国経済成長及び石油需要の増加に対する不安感が10月24日の市場で発生したことに加え、10月24日に中国国家統計局から発表された9月の同国原油輸入量が4,024万トン(推定日量982万バレル)と前年同月比で2.0%の減少となった他、新型コロナウイルス感染抑制のため中国広東省広州市の中心部で個人の外出規制及び経済活動制限が10月24日より強化される旨同日報じられたことにより、同国経済及び石油需要回復に対する懸念が市場で拡大したことから、この日の原油価格の終値は1バレル当たり84.58ドルと前週末終値比で0.47ドル下落した。しかしながら、10月25日には、この日発表された米国自動車製造大手ゼネラル・モーターズ(GM)及び同国飲料製造大手コカ・コーラの2022年7~9月期業績が市場の事前予想を上回ったこともあり米国株式相場が上昇したことに加え、10月25日に米国金融情報サービス会社S&Pから発表された8月の全米住宅価格指数が前年同月比で13.0%の上昇と市場の事前予想(同14.0~14.4%程度の上昇)を下回っている旨判明したうえ、同日米国非営利民間調査機関コンファレンスボードから発表された10月の同国消費者信頼感指数(1985年=100)が102.5と9月の107.8から低下した他市場の事前予想(105.9~106.5)を下回ったこともあり、米国金融当局による金融引き締め策が効果を発揮しつつあるとともに今後政策金利引き上げペースが鈍化するとの見方が市場で発生したこともあり、米ドルが下落したことから、この日の原油価格は前日終値比で1バレル当たり0.74ドル上昇し、終値は85.32ドルとなった。10月26日も、この日EIAから発表された米国石油統計(10月21日の週分)で原油及び石油製品輸出量が日量1,143万バレルと、1991年2月以降の同国週間輸出統計史上最高水準に到達したことにより、米国の石油需給引き締まり感を市場が意識したことに加え、10月26日に米国商務省から発表された9月の同国新築住宅販売戸数が年率換算で60.3万戸と前月比で10.9%減少したこともあり、米ドルが下落したことから、この日の原油価格の終値は1バレル当たり87.91ドルと前日終値比で2.59ドル上昇した。10月27日も、この日米国商務省から発表された2022年7~9月の同国国内総生産(GDP)が前期比で年率2.6%の増加と市場の事前予想(同2.4%の増加)を上回ったことにより、同国経済成長に伴う石油需要増加期待が市場で発生したことから、この日の原油価格は前日終値比で1バレル当たり1.17ドル上昇し、終値は89.08ドルとなった。この結果原油価格は10月25~27日の3日間で1バレル当たり合計4.50ドル上昇した。ただ、新型コロナウイルス感染が拡大しつつあることにより、中国湖北省武漢市等で新型コロナウイルス感染抑制のための個人の外出規制及び経済活動制限が強化されつつある旨10月28日に報じられたこともあり、同国経済減速及び石油需要の伸びの鈍化懸念が市場で拡大したことに加え、10月28日に米国商務省から発表された9月の同国個人消費支出(PCE: Personal Consumption Expenditures)が8月比で0.6%の増加と市場の事前予想(0.4%の増加)を上回って増加している旨判明したこともあり、11月1~2日に開催される予定である米国連邦公開市場委員会(FOMC)において0.75%の政策金利引き上げが決定するとの観測が市場で強まったことが一因となって、米ドルが上昇したことから、この日(10月28日)の原油価格は前日終値比で1バレル当たり1.18ドル下落し、終値は87.90ドルとなった。

また、10月31日に中国国家統計局から発表された10月の同国製造業購買担当者指数(PMI)(50が当該部門拡大と縮小の分岐点)が49.2と9月の50.1から低下した他市場の事前予想(49.8~50.0)を下回ったうえ、同日中国国家統計局から発表された10月の同国非製造業PMIも48.7と9月の50.9から低下した他市場の事前予想(50.1)を下回った旨判明したことにより、同国の経済減速と石油需要の伸びの鈍化懸念がこの日の市場で増大したことに加え、2022年8月の米国原油生産量が日量1,198万バレルと2020年3月(この時は同1,280万バレル)以来の高水準に到達した旨10月31日にEIAが明らかにしたことにより、この先の同国の原油生産拡大に対する期待が市場で増大したことから、10月31日の原油価格の終値は1バレル当たり86.53ドルと前週末終値比で1.37ドル下落した。ただ、11月1日には、中国共産党の王滬寧(Wang Huning)中央政治局委員が組織した委員会が新型コロナウイルス感染抑制策を3月に緩和すべく検討している旨同国のエコノミストである洪灝(Hao Hong)氏が11月1日に発信した(ただ、同日中国外務省はそのような事実を認識していない旨表明しており、当該情報の真偽は不明)ことにより、同国経済及び石油需要回復期待が市場で発生したことから、この日の原油価格は前日終値比で1バレル当たり1.84ドル上昇し、終値は88.37ドルとなった。また、11月2日も、この日EIAから発表された米国石油統計(10月28日の週分)で、原油在庫が前週比312万バレルの減少と市場の事前予想(同37万バレル程度の増加)に反し減少している旨判明したことに加え、10月のOPEC産油国原油生産量が日量2,971万バレルと9月に比べ同2万バレル減少している旨判明したと11月2日にロイター通信が報じたことにより、足元の石油需給の引き締まり感を市場が意識したことから、この日の原油価格の終値は1バレル当たり90.00ドルと前日終値比で1.63ドル上昇した。この結果原油価格は11月1~2日の2日間で1バレル当たり合計3.47ドルの上昇となった。しかしながら、中国は厳格な新型コロナウイルス感染抑制策(いわゆる「ゼロコロナ政策」)を堅持すべきである旨11月2日に同国国家衛生健康委員会が発表した流れを11月3日の市場が引き継いだうえ、11月3日時点の同国の新型コロナウイルス感染者数が3,200人と8月17日以来の3,000人超となった旨同日明らかになったことにより、同国の新型コロナウイルス感染抑制のための都市封鎖措置を含む個人の外出規制及び経済活動制限の強化が行われることに伴う同国経済減速と石油需要の伸びの鈍化懸念が市場で増大したことに加え、11月1~2日に開催された米国連邦公開市場委員会(FOMC)開催後の記者会見において、パウエルFRB議長が、政策金利引き上げ終了を検討するのは非常に時期尚早である他、最終的には政策金利はこれまで考えられていた水準を超過する可能性がある旨発言した流れを11月3日も引き継いだうえ、11月3日に発表された米国新規失業保険申請件数が21.7万件と前週比で0.1万件減少した他市場の事前予想(22.0万件)を下回ったことにより、労働市場における物価上昇圧力が後退していない旨示唆されたこともあり、この先の積極的な金融引き締め政策継続に対する観測が市場で強まったこともあり、米ドルが上昇するとともに米国株式相場が下落したことから、この日の原油価格の終値は1バレル当たり88.17ドルと前日終値比で1.83ドル下落した。それでも、11月4日には、中国疾病予防抑制センターの元首席疫学科学者である曽光(Zeng Guang)氏が、都市封鎖を含む同国の厳格な新型コロナウイルス感染抑制策が今後5~6ヶ月の間に大幅に修正される旨11月4日に明らかにした他、航路経由で新型コロナウイルス感染者を入国させた航空会社に対し一部路線の運航停止措置を実施する方策の終了を中国当局が検討している旨11月4日にブルームバーグ通信が報じたことにより、この先中国の新型コロナウイルス感染抑制のための都市封鎖措置を含む個人の外出規制や経済活動制限が緩和されることにより、同国経済及び石油需要が回復するとの期待が市場で増大したことに加え、今後は米国政策金利引き上げペースをより慎重に検討すべきである旨、リッチモンド連邦準備銀行のバーキン総裁及び同国シカゴ連邦準備銀行のエバンズ総裁が示唆したと11月4日に報じられたことにより、米国金融引き締め策の緩和期待が市場で増大したこともあり、米ドルが下落するとともに米国株式相場が上昇したことから、この日の原油価格は前日終値比で1バレル当たり4.44ドル上昇し、終値は92.61ドルとなった。

ただ、11月4日の原油価格上昇に対し利益確定の動きが11月7日の市場で発生したことに加え、厳格な新型コロナウイルス感染抑制策を堅持する方針である旨11月5日に中国国家衛生健康委員会疾病予防管理局の胡翔(Hu Xiang)氏が示唆したことにより、新型コロナウイルス感染抑制策の転換に伴う中国経済及び石油需要の回復に対する市場の楽観的な見方が後退したこと、11月7日に中国税関総署から発表された10月の同国米ドル建輸出が前年同月比で0.3%、米ドル建輸入が同0.7%の、それぞれ減少と市場の事前予想(輸出4.3~4.5%、輸入0.0~0.1%の、それぞれ増加)に反し減少している旨判明したことにより、同国経済減速と石油需要の伸びの鈍化懸念が市場で増大したことから、11月7日の原油価格の終値は1バレル当たり91.79ドルと前週末終値比で0.82ドル下落した。また、11月8日も、11月4日の原油価格上昇に対する利益確定の動きが市場で継続したことに加え、11月7日時点の中国国内の新型コロナウイルス感染者数が7,475人と11月6日の5,496人から増加、5月1日以来の高水準に到達した旨11月8日に伝えられたことにより、都市封鎖措置を含む個人の外出規制及び経済活動制限の強化に伴う同国経済減速と石油需要の伸びの鈍化懸念が市場で再燃したことから、11月8日の原油価格は前日終値比で1バレル当たり2.88ドル下落し、終値は88.91ドルとなった。さらに、11月9日も、この日EIAから発表された米国石油統計(11月4日の週分)で原油在庫が前週比で393万バレルの増加と市場の事前予想(同140万バレル程度の増加)を上回って増加していた他、在庫量が4.41億バレルと2021年6月2日(この時は4.45億バレル)以来の高水準に到達したうえ、ガソリン在庫が同90万バレルの減少と市場の事前予想(同110万バレル程度の減少)程減少していなかった旨判明したことに加え、新型コロナウイルス感染拡大のため中国広東省広州市で都市封鎖措置を実施する地区が増加しつつある他北京市でも11月9日の新型コロナウイルス新規感染者数が78人と5月22日以来の高水準に到達したことに伴い一部地区で都市封鎖措置が実施されている旨11月9日に報じられたことにより、同国の新型コロナウイルス感染抑制のための個人の外出規制及び経済活動制限の強化を通じた、同国経済減速と石油需要の伸びの鈍化懸念が市場で増大したこと、11月8日夕方(米国東部時間)に発表された米国娯楽大手ウォルト・ディズニーの2022年7~9月期業績が市場の事前予想を下回ったうえ、11月8日に実施された米国中間選挙の開票に際し、共和党の圧倒的優勢との事前予想に反して民主党が善戦している旨11月9日に報じられていることにより、この先米国企業等に有利な政策を米国政府が遂行するとの期待が市場で後退したこともあり、同国株式相場が下落するとともに投資家のリスク許容度が縮小した結果米ドルが上昇したことから、11月9日の原油価格の終値は1バレル当たり85.83ドルと前日終値比で3.08ドル下落した。この結果原油価格は11月7~9日の3日間で1バレル当たり合計6.78ドルの下落となった。しかしながら、11月10日には、この日米国労働省から発表された10月の同国消費者物価指数(CPI)上昇率が前年同月比で7.7%と9月の同8.2%から縮小した他、市場の事前予想(同8.0%)を下回ったことにより、米国金融当局による政策金利引き上げペースが減速する可能性が増大することにより、米国経済減速に対する懸念が市場で後退したこともあり、米国株式相場が上昇するとともに米ドルが下落したことから、この日の原油価格の終値は1バレル当たり86.47ドルと前日終値比で0.64ドル上昇した。また、11月11日も、中国への渡航者の隔離期間を従来の10日間から8日間へと短縮する他、濃厚接触者の濃厚接触者(いわゆる「二次接触者」)の特定作業も取り止めるうえ、航路により新型コロナウイルス感染者を渡航させた航空会社に対し一部路線の運行停止を義務付ける措置を廃止する旨11月11日に同国国家衛生健康委員会が発表したことにより、同国の新型コロナウイルス感染抑制のための個人の外出規制及び経済活動制限に伴う同国経済減速と石油需要の伸びの鈍化懸念が市場で後退したことに加え、11月10日に米国労働省から発表された10月の同国CPI上昇率が9月から縮小した他、市場の事前予想を下回ったことにより、米国金融当局による政策金利引き上げペースが減速するとの期待が市場で増大した流れを11月11日も引き継いだことにより、米ドルが下落したことから、11月11日の原油価格は前日終値比で1バレル当たり2.49ドル上昇し、終値は88.96ドルとなった。この結果原油価格は11月10~11日の2日間で1バレル当たり合計3.13ドル上昇した。

 

3. 原油市場における主な注目点等

足元石油市場に影響を与えうる地政学的リスク要因としては、当面ウクライナ、イラン及びイエメンを巡る情勢が挙げられよう。2022年12月5日を以てロシア産原油の、また、2023年2月5日を以てロシアから供給される石油製品の、それぞれ購入を原則禁止する旨の方策を含む第6次対ロシア制裁を、6月3日に欧州連合(EU)は発動した。他方、別途12月5日までにはロシアから供給される石油(海上輸送によるものとされる)購入につき、保険付保等の面で制約を加えることを通じ、購入価格に上限を加える旨9月2日に開催された主要7ヶ国政府(G7)財務相会合において決定された(詳細については作業中である旨11月4日に伝えられる)。また、9月30日のロシアによるウクライナ東部4地域の一方的なロシア編入実施に対し、10月6日には、EUが閣僚理事会を開催し、ロシアから海上輸送で供給される石油に対し価格上限を設定する等の制裁を発動することを承認(価格上限の具体的な設定方法等はG7と同様のものとなるとされる)、12月5日以降に実施されるロシア産原油等の購入禁止に際しては、上限価格以下で販売された場合には原油等の購入を認めることとした(但し、当該制裁を実効性のあるものとして機能させるためには、さらなる作業が必要であるとした)。ただ、9月7日には、ロシアのプーチン大統領が、西側諸国等が(ロシア産の石油や天然ガス)価格に上限を設定するのであれば、そのような諸国に対し石油等のエネルギー供給を停止する意向である旨表明した。また、9月6日には、ロシアのシュルギノフ エネルギー相は、(価格上限を設定する諸国等に対する石油販売を差し止める代わりに、価格上限を設定しない)アジア諸国等への石油輸出を拡大する意向である旨明らかにした。10月12日には、米国のアデエモ財務副長官が、ロシア産石油に上限を課さない消費国がロシア産の石油を引き取ることに際し(米国等から当該消費国に対する)二次制裁を発動することはない旨明らかにした他、10月31日には、インドのプーリー(Puri)石油・天然ガス相が、インドがロシア産石油を引き取ることに対しては特に道徳的な矛盾は発生しない旨明らかにしているなどしている。このようなことから、制裁を発動した西側諸国等が引き取らなかったロシア産原油等が、対ロシア制裁を発動していないアジア等の消費国に輸出されることを通じ、世界的に原油等の供給が平準化される結果、西側諸国等によるロシア産原油購入制限等の方策の原油相場への影響は限定的なものとなる可能性がある。しかしながら、それまでロシアから欧州に石油を輸送していたタンカーがアジア諸国等へのより遠距離の輸送に利用されることに伴う追加のタンカー確保、もしくは西側諸国等が保険を付保しないことによる代替の保険付保等における隘路の発生により、例えばロシアからアジア方面への石油供給が円滑に行われないことに伴い、消費国間でロシア産石油の代替供給源を巡る競合が強まる結果、少なくとも短期的には原油相場に上方圧力が加わる場面が見られることもありうる。また、この先ロシア側が原油価格を引き上げることを意図して原油等の供給を制限することにより、原油相場に上方圧力が加わるといった展開となることも否定はできない。

なお、9月26日に、デンマーク沖合の海底において、ロシアからドイツに天然ガスを輸送する「ノルド・ストリーム1」及び「ノルド・ストリーム2」パイプラインで天然ガス漏洩が発生して以降、欧州等の石油及び天然ガスインフラに対する新たな破壊行為等は伝えられていない。また、北半球の気候が全般的に穏やかであることや、世界各国及び地域における金融当局による政策金利引き上げの実施に伴う経済減速(もしくは経済減速懸念)等により、民生部門や産業部門を中心として天然ガス需要が軟調であることもあり、欧州及びアジア地域等においては天然ガス及びLNG需給緩和感が醸成されていることにより、安価とは言えないものの天然ガス及びLNG価格は落ち着いた状態で推移している(後述)。しかし、欧州及びアジア地域等において今後気温が大幅に低下することにより、暖房用の天然ガス需要が喚起されたり、欧州等での石油・天然ガス生産、出荷及び輸送施設等に対し破壊行為が行われようとした場合、もしくは実際に行われることにより、欧州等への天然ガス等の供給途絶懸念が高まったりした場合には、天然ガス需給引き締まり感が市場で強まることにより、天然ガス価格が上昇するとともに、天然ガスから石油への燃料転換促進を含め、石油需給引き締まり感を市場関係者がより強く意識することを通じ、原油価格が押し上げられるといった展開となることもありうる。

また、イランは最大300機の無人機(ドローン)をロシアに供与する方針である旨7月18日にニューヨーク・タイムスが報じて以降、イラン側はしばしば当該疑惑を否定してきた。しかしながら、11月5日にイランのアブドラヒアン外相は、一転してロシアに対し少数の無人機の供与を行った旨明らかにした(但し、イランが2022年末までにロシアに短距離用弾道ミサイルを供与すべく準備をしている旨11月1日になされた報道に対し、弾道ミサイルの供与は行っていない旨同外相は説明している)。このようなこともあり、イラン核合意正常化に向けた西側諸国等とイランとの協議は停滞気味となっており、10月20日には、米国国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官及び同国国務省のプライス報道官は、ともに米国はイラン核合意正常化に向けたイランとの交渉には注力しておらず、従って、近いうちに協議が妥結する可能性は高くない旨示唆した。むしろ米国はイラン産原油等の供給に関与した当事者に対し米国内資産凍結及び米国人等との取引禁止等を内容とする制裁を発動するなどしており、11月3日にも、イラン革命防衛隊の精鋭部隊である「コッズ部隊」が実施する原油の密輸事業に関係したとして、アラブ首長国連邦(UAE)を拠点とする法人及び個人に対し米国内資産凍結を内容とする制裁を発動した。また、10月22日時点でイランが濃縮度60%の濃縮六フッ化ウランを62.3キログラム所有しており(2015年7月14日に到達したイラン核合意で許容されているウラン濃縮度上限は3.67%である)、8月21日時点から6.7キログラム増加した旨の報告書を11月10日にIAEAが取り纏めるなど、イランの核合意逸脱がさらに進んでいることが示唆される。このようなことから、イランと米国との関係は、核合意正常化に向けた協議に加え、それ以外の分野においても複雑化する様相を呈しており、少なくとも当面は、イラン核合意正常化による米国の対イラン制裁の緩和に伴うイランからの石油供給の拡大が実現する可能性はそれほど高くないものと見られ、従って、この面では原油相場に有意にかつ持続的に下方圧力が加わるといった展開とはなりにくいものと考えられる。

イエメンについては、ハディ暫定大統領派勢力(及び同政権を支援するサウジアラビアが主導する有志連合軍)とフーシ派武装勢力(イランが支援しているとされる)との間での、国連の仲介による停戦(4月2日より2ヶ月間の予定で実施、6月2日に2ヶ月間延長)につき、さらに2ヶ月間延長する旨8月2日に国連が発表したものの、新たな期限とされた10月2日までに、両当事者はさらなる停戦延長につき合意できなかった(国連の仲介による交渉はなお継続しているとされる)。そして、フーシ派武装勢力はサウジアラビアの石油関連施設等に対する攻撃を再開する旨警告したと10月2日に伝えられた。その後、フーシ派武装勢力がイエメン南部ハドラマウト(Hadramaut)県ダッバ(Dabba)にある石油積出港を無人機で攻撃した旨10月21日にイエメンのハディ暫定大統領派勢力が明らかにした他、11月9日にも、フーシ派武装勢力が同国南部シャブワ(Shabwa)県ケナ(Qena)にある石油積出港を無人機で攻撃した旨ハディ暫定大統領派勢力が声明を発表した旨11月10日に報じられた。このように、イエメンにおいては、フーシ派武装勢力による攻撃が散発的に行われるようになっており、今後も、フーシ派武装勢力がイエメン国内の施設、及びサウジアラビアを含む中東湾岸産油国の石油施設を含む施設に向け無人機等による攻撃を行うことにより、中東産油国からの石油供給途絶懸念が市場で高まる結果、原油相場に上方圧力が加わる可能性がある。

原油相場に影響を与えうる経済面での要因としては、中国の新型コロナウイルス感染対策と米国金融当局における金融引き締め方針を巡る動向であろう。11月2日には、中国は厳格な新型コロナウイルス感染抑制策(いわゆる「ゼロコロナ政策」)を堅持すべきである旨同国国家衛生健康委員会が発表した他、11月5日に中国国家衛生健康委員会の疾病予防管理局の胡翔氏が厳格な新型コロナウイルス感染抑制策を堅持する方針である旨示唆するなどしている。このような中、11月11日時点の同国の新型コロナウイルス感染者数が11,950人と11月10日の10,729人から増加した(これは2022年4月以来の高水準であるものと推定される)。このようなこともあり、今後も都市封鎖措置を含む個人の外出規制及び経済活動の制限が強化されることにより、同国経済減速と石油需要の伸びの鈍化懸念が市場で拡大することを通じ、原油相場に下方圧力が加わる場面が見られるといった展開も想定される。

しかしながら、中国の習近平国家主席の要請により、同国共産党の王滬寧(Wang Huning)中央政治局委員が組織した委員会が10月30日に会合を開催、新型コロナウイルス感染抑制政策を3月に緩和すべく検討している旨の真偽不明の文書が10月31日夜(現地時間)に会員制交流サイト(SNS)を通じて拡散し始めるとともに、同国著名エコノミストとされる洪灝(Hao Hong)氏も同趣の内容を11月1日に発信した(ただ、同日中国外務省はそのような事実を認識してないと表明している)うえ、中国疾病予防抑制センターの元首席疫学科学者である曽光(Zeng Guang)氏が、都市封鎖を含む同国の厳格な新型コロナウイルス感染抑制策は今後5~6ヶ月間で大幅に修正される旨11月4日に明らかにした他、航路経由で新型コロナウイルス感染者を入国させた航空会社に対し一部路線の運航停止措置を命令する方策の停止を当局が検討している旨11月4日にブルームバーグ通信が報じた。そして、中国への渡航者の隔離期間を従来の10日間から8日間へと短縮する他、濃厚接触者の濃厚接触者(いわゆる「二次接触者」)の特定作業も取りやめるうえ、航路により新型コロナウイルス感染者を渡航させた航空会社に対し一部の路線の運行停止を義務づける措置を廃止する旨11月11日に同国国家衛生健康委員会が発表した。このようなこともあり、この先のいずれかの時点で中国の新型コロナウイルス感染抑制策を巡る方針が転換されることによる、中国経済及び石油需要回復に対する市場の期待が煽られる格好となっており、原油相場が下支えされやすい状況となっている他、今後も真偽の定かでない新型コロナウイルス感染抑制策の修正や国内外での移動の自由化に向けた中国政府の動向に関する情報が流布することにより、同国の個人の往来の活発化や経済回復に伴う石油需要の増加期待が市場で一層拡大する結果、原油相場に上方圧力が加わる場面が見られることもありうる。

11月1~2日に開催された米国連邦公開市場委員会(FOMC)においては0.75%の政策金利引き上げが決定された。また、11月2日のFOMC開催後の記者会見において、パウエルFRB議長は、政策金利引き上げ終了を検討するのは非常に時期尚早である他、最終的には政策金利はこれまで考えられていた水準を超過した水準にまで到達する可能性がある旨発言した。しかしながら、11月10日に米国労働省から発表された10月の同国消費者物価指数(CPI)上昇率が前年同月比7.7%と9月の同8.2%から縮小した他、市場の事前予想(同8.0%)を下回ったことにより、この先米国金融当局による金融引き締めペースが鈍化するとの観測が市場で発生しており、この面で米ドルが下落するとともに原油相場に上方圧力が加わる格好となっている。現在のところ、12月13~14日に開催が予定されている次回のFOMCにおいて0.50%の政策金利引き上げが決定される確率が11月11日時点で81%、0.75%の政策金利引き上げが決定される確率が同日時点で19%となっており、0.50%の政策金利引き上げ(つまり政策金利引き上げペースは従来に比べ鈍化する)が決定される可能性が高い状況となっている。ただ、今後の米国経済や物価上昇を巡る状況等事態が流動的な側面もあり、この先発表される予定である同国経済指標類(12月13日には11月のCPIが発表される予定である)の内容、及びそれ等に基づく米国金融当局関係者等の発言によって、次回FOMCでの政策金利引き上げに関する観測が市場で変化するとともに、米ドルや米国株式相場の変動等を通じ、原油相場にその影響が及ぶ可能性もあるので、注意が必要であろう。

米国では、既に冬場の暖房シーズンに突入し(暖房シーズンは通常11月1日~翌年3月31日である)、製油所の稼働が上昇するとともに原油精製処理量が増加、その結果原油購入が活発化するとともに季節的な石油需給の引き締まり感が市場で増大、このような市場心理が原油相場を下支えしやすくするものと思われる。また、その際市場が考慮するのは足元の気温及び気温予報(特に米国の暖房用石油製品需要の中心地である北東部の気温及び気温予報)である。11月10日には、米国海洋大気庁(NOAA)が、ラニーニャ現象(日付変更線付近から南米沿岸にかけての太平洋赤道域で海面の水温が平年より低くなる現象)が発生する確率が、2022年12月~2023年2月は76%、2023年2~4月は57%となると予想される旨発表した(NOAAは9月8日及び10月13日にも同趣の発表を行っている)。前年同期の2021年9月9日にNOAAから発表された予報では2021~22年の冬の期間中のラニーニャ現象発生確率は70~80%、前々年同期の2020年9月10日に発表された予報では2020~21年の冬の期間中のラニーニャ現象発生確率は75%程度とされており、次の冬場も概ね過去2年と同様の確率で以てラニーニャ現象が発生するものと予想されており、この面では石油市場関係者が気温の低下に伴う暖房用燃料需要の盛り上がりに関し神経質になりやすい。そして、例えば、足元の気温が大幅に低下する、もしくは今後3ヶ月間の気温が平年を下回る寒冷なものとなる旨の予報が発表される、ということになれば、暖房用石油製品需給の引き締まり感が市場で意識されることにより、軽油及び暖房油等の価格が上昇、それに原油価格が引きずられる、といった展開となることも想定される。

また、欧州及びアジア諸国の気温が大幅に低下すれば、暖房向け石油製品(日本や韓国では灯油が利用されるが、他の地域では暖房油(品質的には軽油に近い)が使用される)需要が増加したり、空調のための電力供給用に発電部門、そして暖房用に民生部門での天然ガス需要が拡大しようとしたりするが、既に天然ガス価格は石油製品価格を上回る水準となるなどしている(また、スポットLNGタンカーの利用可能性が低下するとともに傭船料も高騰しており、LNGを入手しようとしても、それを消費国に持ち込むための輸送面で支障が生じるといった展開もありうる)ことから、この場合天然ガスからより相対的に安価に入手できる軽油や重油(発電部門で利用されることになる)等の石油製品への燃料転換が発生しやすくなるものと考えられる。この結果、石油需給の引き締まり感が市場で増大することを通じ、原油相場に上方圧力が加わる可能性がある。

特に、2月24日以降のロシアのウクライナへの事実上の侵攻実施に伴い、ロシアから欧州に向けた軽油輸出が影響を受けつつあるように見受けられる他、9月22日以降フランスで給与水準引き上げ等の労働条件改善を要求した労働者によるストライキが拡大、10月4日時点で同国の原油精製能力(2021年時点で日量114万バレルとされる)の65%程度に相当する日量74万バレル程度の原油精製能力を保有する製油所の稼働が停止したことより、欧州における石油製品需要の中心である軽油の需給引き締まり感が強まった(なお、10月19日以降同国での製油所ストライキは収束に向かい初め、11月8日の同国フェイザン(Feyzin)製油所(操業者:トタルエナジーズ、原油精製処理能力日量11万バレル)の操業再開を以て、全ての製油所でのストライキは終了したとされる)。加えて、米国やシンガポールでも軽油(もしくは留出油及び中間留分)在庫が低迷することにより、当該製品需給の引き締まり感が感じられるようになっていることから、この面で軽油及び原油価格が上振れしやすい状況となっており、冬場の暖房用軽油需要期に向かいつつある中、気温が低下するようであれば、軽油及び原油価格にさらなる上方圧力が加わる結果、原油相場が上昇するといった展開となることも否定できない。

さらに、12月末にかけ、米国メキシコ湾岸の主要製油所に通じるヒューストン運河(Houston Ship Channel)等における濃霧発生の影響で原油輸送タンカーの航行にしばしば支障が生じることに伴い当該製油所での原油在庫の積み上げに影響が及ぶことにより、結果として原油相場が変動することがありうる。また、年末の課税対策から精製業者等が原油在庫等を相当程度減少させる可能性がある(米国のテキサス州やルイジアナ州では年末の石油在庫評価額に対し固定資産税等が課税されることから、課税額を低減させるために精製業者等は必要以上の在庫保有を敬遠することに伴い在庫が減少に向かいやすくなるとされる)。このようなことから、年末にかけて発表される米国石油統計で同国メキシコ湾岸地域での原油在庫等が相当程度減少傾向を示す場面が見られることにより、これが市場で石油需給の引き締まりの兆候と受け取られ、原油価格に上方圧力が加わる、といった展開となることも予想される。ただ、このような在庫減少が見られた場合、1月以降は製油所等での原油等の受け入れが再開されることから、反動で相当程度原油在庫等が増加する可能性もあり、これにより原油相場を押し下げる場面が見られることもありうる。

OPEC及び一部非OPEC(OPECプラス)産油国は12月4日に閣僚級会合を開催する予定である。原油及び天然ガスを含む物価の上昇、そして世界各国及び地域における政策金利の大幅引き上げ政策の推進に伴い、世界経済は減速しつつあり、その結果、特に2023年の世界石油需要が相当程度下振れする形となっている(例えば、IEAは10月13日に発表した「オイル・マーケット・レポート」においては、2023年全体の世界石油需要見通しをそれまでから日量55万バレル下方修正した他、特に2023年前半は同60~70万バレル下方修正している)。このようなことに加え、11月以降OPECプラス産油国が日量200万バレルの減産措置強化を実施したとしても、実際に減産が実施可能な産油国が限られる結果、実質的な減産規模は日量100万バレル程度と見られる(2022年11月から2023年12月にかけ日量200万バレルの減産措置強化を決定した、10月5日に開催された前回のOPECプラス産油国閣僚級会合後の記者会見においては、サウジアラビアのアブドルアジズ エネルギー相も実質的な減産規模は日量100~110万バレルであると説明していた)こともあり、2022年第4四半期には日量27万バレルの供給過剰となるものと見られる世界石油需給バランス(表1参照)は、2023年前半においても日量12~24万バレルの供給不足と限定的な規模の供給不足にとどまる(表2参照)。さらに、世界各国及び地域の政策金利引き上げ措置継続により、この先世界経済成長がさらに下振れするとともに石油需要の伸びが鈍化するといった展開も否定できないなど、世界石油市場を巡っては不透明感が強い状況が続く可能性もあり、サウジアラビア等を初めとするOPECプラス産油国は減産措置の緩和(つまり増産)には消極的な姿勢を示しやすいものと考えられる。OPECプラス産油国が減産措置を緩和するとすれば、例えば、中国の新型コロナウイルス感染抑制のための厳格な都市封鎖を含む個人の外出規制や経済活動制限措置が大幅に緩和される方向に転換されたり、米国金融当局関係者による政策金利引き上げペースの減速等の姿勢が明確になったりすることにより、世界経済とともに石油需要の回復が明確に認められる時点と言うことになるものと見られ、そのような事象が12月4日に開催される次回OPECプラス閣僚級会合開催時点までに実現する可能性はそれほど高くはないものと見られる。また、原油価格がこの先下落傾向を示す他、特に次回のOPECプラス閣僚級会合直前において急落する兆候が見られるようであれば、サウジアラビアを初めとするOPECプラス産油国は、石油市場を牽制すべく、先制的に原油生産目標引き下げの可能性に言及する(つまりいわゆる「口先介入」を行う)場面が見られる他、実際に次回OPECプラス産油国閣僚級会合等に際しては原油生産目標のさらなる引き下げが検討及び決定する可能性も否定できないものと考えられる。このようなこともあり、原油相場の下落局面はあったとしても、期間的にも規模的にも限定的なものになりやすいものと見られる。なお、米国は自国のガソリン及び暖房油価格抑制のため(冬場の暖房シーズンに突入したため、これからの時期は特に、11月6日現在1ガロン当たり5.333ドルと、1994年3月以降のEIA週間全米平均小売価格統計史上最高水準に到達した6月20日時点の同5.810ドルに接近しつつある軽油価格が注目を集めることになろう)、サウジアラビアを初めとするOPECプラス産油国に対し原油価格を抑制すべく行動するようにとの働きかけを(引き続き)行うものと見られるが、西側諸国等による制裁等の影響で増産余地が乏しいこともあり、原油価格の下落が国家収入減少に直結しやすい(そして国家収入の一部はウクライナへの事実上の侵攻に際し戦費として使用されているものと見られる)ロシアに配慮しつつ、また、2023年前半に向けての石油需給の過度の緩和感の発生防止による原油価格維持を意識すると思われる、サウジアラビア等のOPECプラス産油国は、原油生産目標の引き上げには慎重に対処するものと考えられる。

表1 世界石油需給バランスシナリオ(2022年)(2022年11月14日時点)

表2 世界石油需給バランスシナリオ(2023年)(2022年11月14日時点)

全体としては、米国等で冬場の暖房シーズンに突入したことにより、暖房用石油製品製造のために製油所での原油精製処理量が増加するとともに原油購入が活発化することで、季節的な石油需給の引き締まり感が市場で意識されるとともに、この先も原油相場が支持される可能性がある。また、冬場の暖房シーズン到来に伴う天然ガス需給引き締まり感から暖房向けもしくは空調のための発電向け天然ガス価格が上昇するとともに、相対的に安価な石油製品への燃料転換が発生する結果、石油製品及び原油の価格に上方圧力が加わるといった展開となることも否定できない。他方、中国の新型コロナウイルス感染抑制のための都市封鎖措置等の対策、もしくは米国等の政策金利引き上げを含む金融引き締め策の転換への期待が強まれば、石油需要増加観測から原油相場が上振れするといった場面が見られることも想定されうるため、今後の中国及び米国関係者から発信される内容には注意する必要があろう。また、原油相場の下落継続もしくは急落の兆候に対しては、サウジアラビア等を含むOPECプラス産油国が口先介入を含め、原油価格下落抑制を試みるものと見られることから、この面では原油相場の下落局面はあったとしても、期間的にも規模的にも限定的なものになりやすいものと考えられる。

 

4. 世界天然ガス市場動向

2022年8月の米国の民生部門の天然ガス需要は前年同月比でほぼ同水準であったが、9月半ばから10月にかけ同国一部地域では気温がしばしば平年及び前年同期を下回って低下した(図16参照)こともあり、暖房用の天然ガス消費が喚起された側面があったものと見られることから、9~10月の同部門での天然ガス需要は前年同月を上回るようになった。また、2022年8~10月において米国鉱工業生産が前年同月を上回るなどしていたことが同国産業部門の天然ガス需要を押し上げる形で作用したと見られる反面、この時期の米国天然ガス価格が前年を相当程度上回っていたことが、同部門での天然ガス需要を抑制する格好となったこともあり、この期間中の当該部門における天然ガス需要は前年同月比で微増にとどまった。発電部門においては、夏場が過ぎ去ることに伴い気温の低下とともに冷房向けの空調機器稼働用電力供給のための発電部門での天然ガス需要は抑制される格好となったものの、米国では老朽化した石炭火力発電所の廃止に伴い、相対的に天然ガス火力発電量が増大するとともに発電部門での天然ガス消費が増加したことにより、特に冷房のための空調機器稼働に向けた電力需要が旺盛であった8~9月の当該部門での需要は前年同月を相当程度上回る状態となった。結果として、8~9月は発電部門が、10月は民生部門が牽引する形となり、同国の天然ガス需要は前年同月比で増加となった(図17参照)。

図16 米国(シカゴ)気温(2022年)

図17 米国天然ガス消費増加量(前年同月比)(2015~22年)

他方、米国からメキシコへのパイプラインを経由した天然ガス輸出量は8~10月においては前年同月を割り込む状態が続いた(図18参照)が、これは米国の天然ガス価格上昇が一因となっていると指摘する向きもある。また、6月8日午前11時40分(現地時間)に、米国テキサス州にあるフリーポートLNG出荷基地(操業者:フリーポートLNG社、出荷能力年間1,500万トン)で火災が発生した(安全バルブに不具合があり、圧力過多となったことにより破損したパイプからLNG及びメタンが漏洩し炎上したものと米国運輸省パイプライン危険物安全局(PHMSA: Pipeline and Hazardous Materials Safety Administration)が暫定的に報告したと6月30日に伝えられる)が、当初少なくとも3週間程度当該施設の操業が停止する旨6月8日にフリーポートLNG社が発表していたものの、その後、9月までに部分的に操業を再開、2022年末までに全面的な操業再開を目指す旨6月14日に同社が発表した。なお、8月3日にはフリーポートLNG社はPHMSAと、フリーポートLNG施設事故を巡る是正措置に関する同意書を締結、それに従って作業を実施、当該作業が完了しPHMSAが操業再開を承認すれば、10月上旬にはほぼ1,500万トン相当のLNG生産を再開できるものとフリーポートLNG社は考えている旨同日同社が明らかにした。しかしながら、8月23日にフリーポートLNG社は、11月上旬から中旬にかけ稼働率85%程度での操業再開を、そして、2023年3月に操業全面再開を、それぞれ予定する旨発表した。そして、フリーポートLNG出荷施設の操業再開のために提出が必要とされる、事故に関する「根本原因分析(RCA: Root Cause Analysis)」をフリーポートLNG社がPHMSAに提出した旨PHMSAが11月4日に明らかにしたものの、同じく操業再開のために提出が必要とされる「再稼働計画」はまだ提出されてない旨同日PHMSAが明らかにしている。このようなことから、11月中旬にかけ、フリーポートLNG施設からLNGは出荷されていないことにより、この分(同国の通常のLNG輸出量である約8,400万トンの約20%弱程度)だけ米国からのLNG輸出が減少する格好となる(図19参照)とともに、輸出されなかった天然ガスが同国内に滞留するようになった。

図18 米国のメキシコへのパイプラインによる天然ガス輸出(2012~22年)

図19 米国からのLNG輸出量(2016~22年)

また、2022年初頭以降原油価格(WTI)が1バレル当たり76~124ドル程度の範囲(終値ベース)で推移するなどしたこともあり、シェールオイルのための石油水平坑井稼働数が11月11日現在で601基と、2020年3月27日(この時は603基)以来の高水準に到達するなど、同国でのシェールオイル開発・生産活動が活発化しつつあったことにより、シェールオイルとともに随伴で産出される天然ガスの生産も増加したものと見られることから、2022年10月の同国の推定天然ガス生産量は日量1,003億立方フィートと8月時点における10月の同国天然ガス生産見通し(日量980億立方フィート)から上振れした(図20参照)。

図20 米国国内天然ガス生産量及び見通し(破線部分)(2009~23年)(EIA発表時期別)

このように、米国における天然ガス生産が堅調に推移する一方、メキシコへのパイプラインによる天然ガス輸出及びLNG輸出が抑制される中、夏場は気温の上昇とともに冷房用空調機器稼働のための電力供給向けの発電部門を中心として堅調な天然ガス需要が発生していたものの、夏場が過ぎ去り気温が低下するとともに、発電部門での天然ガス需要が減少傾向となったことから、相対的に米国の天然ガス需給は緩和する方向に向かい、8月12日時点では過去5年平均を12.7%下回っていた同国の天然ガス貯蔵量は、過去5年平均を下回る率を縮小させ続けた結果、11月4日時点では過去5年平均を2.1%下回る状態となった(図21参照)。そして、米国の天然ガス需給の相対的な緩和感が強まったことが、同国の天然ガス価格に下方圧力を加えたことから、8月12日には100万Btu当たり8.768ドルであった米国天然ガス価格は11月11日には同5.879ドルと下落傾向となった(図22参照)。

図21 米国天然ガス貯蔵量(2017~22年)

図22 天然ガス先物価格の推移(2018~22年)

他方、9月9日には、欧州連合(EU)のエネルギー担当相が臨時会合を開催し、天然ガス火力発電を除く発電事業から得られる収益に上限を設定する他、天然ガス価格の高騰に苦慮する電力会社を支援することや、ロシア産に限定しない形で天然ガス価格に上限を設けることを含めた、緊急対策を打ち出すよう欧州委員会に提案することで合意した。これに対し、9月14日に欧州委員会のフォンデアライエン委員長は、風力、太陽光及び原子力等といった、発電費用が相対的に低廉な発電所に対する収入上限の設定(1メガワット時当たり180ユーロ(約180ドル)と、足元の販売価格の半分以下になるものとされる)、及び2022年度からの石油、天然ガス及び石炭会社に対し超過利潤の33%の拠出を要求する等の方策を実施する方針である旨表明した(天然ガス価格上限については関係者間で議論が収束しないため引き続き協議するとした)。これに対し、9月7日にプーチン大統領は天然ガス価格上限を設定する国等に対しエネルギー供給を停止する意向である旨示唆した。また、ロシアから欧州方面に天然ガスを輸送する「ノルド・ストリーム1」パイプライン(天然ガス輸送能力日量53億立方フィート)において、唯一稼働していた天然ガス送出用タービンのメンテナンス作業実施により、8月31日から9月2日にかけ操業を停止する旨8月19日午後遅く(中央ヨーロッパ時間)にロシア国営ガス会社ガスプロムが発表した(メンテナンス作業終了時に、技術的な不具合が見当たらないようであれば、足元の天然ガス輸送量(輸送能力の約20%に当たる約12億立方フィート)の輸送を再開する意向である旨併せてガスプロムは明らかにした)が、メンテナンス作業実施中に同タービンでオイル漏洩が発見されたことにより、当該タービン改修のためパイプラインの操業再開を延期する(再開時期未定)旨9月2日にガスプロムが明らかにしたことにより、欧州での天然ガス需給引き締まり観測が市場で増大した。

加えて、9月26日には、デンマーク沖合の海底において、ロシアからドイツに天然ガスを輸送する「ノルド・ストリーム1」及び「ノルド・ストリーム2」パイプラインで天然ガス漏洩が発生した(当初2ヶ所での漏洩とされたが、9月27日には3ヶ所から漏洩が発生している旨伝えられた他、9月29日には4ヶ所目の天然ガス漏洩箇所が発見された旨報じられた)が、過去天然ガスパイプラインの天然ガス漏洩が複数箇所においてほぼ同時に発生するような事例は見られなかったことにより、当該事故は破壊行為によるものであると欧州当局等では推測された(一方で当該破壊行為には西側諸国が関与している旨9月30日にロシア対外情報庁のナルイシキン(Naryshkin)長官が表明している)。また、ノルウェー沖合では、石油・天然ガス生産関連施設周辺に所属不明の無人機が飛来する例があることが報告されており、ノルウェー政府は当該施設における警備を強化する方針を明らかにしたと9月30日に伝えられる。

しかしながら、「ノルド・ストリーム1」及び「ノルド・ストリーム2」両パイプラインは、今回の事故が発生する以前から事実上稼働していなかった(図23参照)ことにより、今回の事象によっても、欧州向けの天然ガス供給が新たに途絶するわけではないため、欧州での天然ガス需給が一層引き締まるわけではなかった。また、無人機が飛来する例が見られたノルウェー沖合では、それ以降、石油・天然ガス生産関連施設において無人機による攻撃で実際に石油・天然ガス生産及び輸送に支障が発生したという報告はなされなかった。

図23 ロシアから欧州方面への主要パイプライン経由天然ガス供給(2020~22年)

他方、欧州では、2月24日以降のロシアのウクライナへの事実上の侵攻実施に伴う、欧州を含む西側諸国等による対ロシア制裁の実施後、ロシアが欧州方面への天然ガス供給を削減したことに伴い、欧州の天然ガス需給の引き締まり懸念が増大したことから、欧州はロシアからの天然ガス供給の代替として、米国を中心としてLNG輸入を活発化させる(図24参照)とともに、輸入したLNG由来の天然ガスの域内貯蔵施設への充填を急いだ。それでも当初は、ロシアからの天然ガス供給減少に伴い、2022~23年の冬場に気温が低下した場合欧州での天然ガス需給の引き締まり感が強まるとの観測が市場で増大した。8月16日には、ドイツ連邦ネットワーク庁のミュラー(Mueller)長官が、足元で目標としている11月1日までに95%の天然ガス貯蔵充填率を達成したとしても、ロシアからの天然ガス供給が全面的に停止してしまうのであれば、ドイツの天然ガス需要の2ヶ月半程度しか賄えない旨警告した。しかしながら、天然ガス需給引き締まり懸念から天然ガス価格が大幅上昇したことが、かえって域内の産業部門を中心として需要を抑制する形で作用したことから、気温上昇による空調稼働用電力供給のため発電部門での天然ガス使用量が10%程度増加したにもかかわらず、民生部門で10%、産業部門で17%、それぞれ消費量が減少したことにより、2022年初頭以降欧州天然ガス需要は前年同期比で11%減少している旨石油・天然ガス市場関係調査機関ウッド・マッケンジーが指摘したと7月15日に報じられた他、9月のドイツの産業部門の天然ガス消費量は前年同月比で19%減少した旨の報告書が11月1日に発表されるなどした。加えて、製鉄大手アルセロール・ミッタルは欧州での天然ガス消費量を30%削減したと11月10日に伝えられる。また、2022年1~10月においても、欧州の天然ガス需要は前年同期比で10%程度減少しているものと推測される(図25参照)。このような需要の下振れにより、2022~23年の欧州の冬においては広範な天然ガス不足が発生することにはならないと見る向きもある(ミュラー長官も、地域的に天然ガス不足が発生することはあっても、ドイツ全土に渡り天然ガス不足が発生するわけでは必ずしもない旨示唆したと8月18日に報じられる)。さらに、9月後半は欧州においては気温が平年を下回る地域も見られたものの、それ以降は気温が平年を上回って温暖となったこと(図26参照)もあり、民生用(暖房用)天然ガス需要が低迷した。この結果、欧州での天然ガス貯蔵積み上げが促進され、11月11日時点の欧州の天然ガス貯蔵量は平年(過去5年平均)を8.8%上回った他、充填率も95.4%とほぼ貯蔵能力近辺の充填状態となった(図27参照)。このため、欧州ではこれ以上LNGを受け入れる余地がなくなりつつあり、欧州の洋上では冬場の天然ガス需要増加時期に備えLNGを積載したLNGタンカーが浮游した状態となっている(250万トン(標準規模のLNGタンカーで35隻程度)のLNG在庫が洋上に浮游している旨10月18日に伝えられた)。このようなことから、欧州での天然ガス需給の緩和感が市場で強まった(さらに、2022~23年の欧州の冬場は温暖であるとの予報も発出されたこと(後述)もあり、これもこの先の地域の天然ガス需要のもたつきとともに天然ガス需給緩和に対する観測を市場で拡大させる格好となっている)が、このような要因により、欧州でのLNG価格がアジアのLNG価格を下回る場面が見られたこと(図28参照)もあり、シェル等一部の石油会社がLNGを欧州からアジアへの仕向け直す動きも見られた(その後欧州近海で浮游するLNGタンカーは最大18隻である旨11月8日に報じられるなど、欧州近海で浮游するLNGタンカーに積載されるLNGの量は減少に向かいつつあるものと推測される)。

図24 欧州LNG輸入(2006~22年)

図25 欧州天然ガス需要増加量(前年同月比、2008~22年)

図26 英国(ロンドン)気温の推移(2022年)

図27 欧州天然ガス在庫(2018~22年)

図28 米国メキシコ湾から欧州及び日本/韓国向けLNGネットバック価格差(2022年)

そして、8月31日~9月2日にノルド・ストリーム1パイプラインの操業を全面停止する旨ガスプロムが8月19日に発表したことに対し、9月2日以降も当該パイプラインの操業が再開しないのではないかとの懸念が市場で増大したことに加え、8月25日時点で原子力発電能力6,137万kWのうち3,600万kW相当分が稼働を停止していた(原子炉におけるパイプ腐食が一因であるとされる)フランスにおいて、操業再開までに時間を要する可能性がある旨同日伝えられたことにより、欧州域内の電力価格が上昇するとともに、天然ガス価格に上方圧力を加えたこともあり、欧州の天然ガス価格は上昇基調となり、8月26日にはオランダTTF先物価格は100万Btu当たり推定99.071ドルの史上最高水準に到達する場面が見られた。しかしながら、その後は欧州へのLNGの堅調な供給もあり、ドイツでは11月1日までに自国の天然ガス貯蔵施設を95%充填する目標を10月13日に3週間前倒しで達成したこと、経済減速を一因として産業部門において、及び温暖な気温により民生部門において、それぞれ天然ガス需要が不振であったこと、50~60%の確率で、英国、欧州中央地域及び地中海沿岸地域の大部分で、この先数ヶ月間平年を上回る気温が予想されるとの見方が発生している旨10月14日に伝えられた他、11月10日にもドイツ気象局(DWD)が同国が2022年10月~2023年2月において平年よりも温暖になる可能性がある旨の予報を発表したこと等に伴い欧州天然ガス需給の緩和感が市場で醸成されたことが、天然ガス価格に下方圧力を加えた結果、11月11日のオランダTTF天然ガス先物価格は100万Btu当たり推定29.673ドルと8月12日の同61.969ドルに比べても相当程度低水準にまで下落した。ただ、LNGを積載して浮游していることにより、使用中のLNGタンカー数が相対的に増加した他、冬場の暖房シーズンに伴う天然ガス需要期を控えて、LNGタンカーの傭船が進んだものと見られる結果、スポット調達できるLNGタンカー数が減少、8月中旬には世界中で20隻を超過するLNGタンカーのスポット調達が可能であったものの、11月上旬時点では2隻程度となったこともあり、1日当たりスポットLNGタンカー傭船料が概ね8~9倍程度に上昇した他、11月11日時点では前年同期を1.5~2.3倍程度上回っているように見受けられる。

また、11月10日に、米国海洋大気庁(NOAA)が、ラニーニャ現象が発生する確率が、2022年12月~2023年2月は76%、2023年2~4月は57%となると予想される旨発表した(NOAAは9月8日及び10月13日にも同趣の発表を行っている)。ラニーニャ現象が発生すると、北半球の冬場において気温が平年を相当程度下回るなど厳冬になりやすいとされる(また、夏場となる南米諸国は渇水となりやすいとされる)こともあり、例えば9月20日に日本の気象庁が発表した寒候期(2022年12月~2023年2月)予報は、全般的に寒冷な気候が訪れることを示唆する内容となっている。ただ、既に稼働している九州電力川内原子力発電所1号機(発電能力89万kW)及び2号機(同)、四国電力伊方原子力発電所3号機(同89万kW)に加え、関西電力高浜原子力発電所3号機(同87万kW)(8月19日発表)及び4号機(同87万kW)(11月6日発表)、大飯原子力発電所4号機(同118万kW)(8月12日発表)、美浜原子力発電所の3号機(同82.6万kW)(9月26日発表)が夏場以降に相次いで本格運転を再開した(括弧内の日付は再稼働開始発表日を示す)ことにより、その分だけ、同国の天然ガス火力発電稼働に対する負担が軽減されるとともに相対的にLNG需要が低減されつつある(また、2022年3月16日に発生した福島県沖地震により操業を停止していた相馬共同火力発電新地石炭火力発電所1号機(発電能力100万kW)が11月11日に操業を再開する予定である他、この先九州電力玄海原子力発電所3号機(発電能力118万kW)及び同4号機(出力118万kW)が操業を再開する予定である)うえ、足元では気温が平年を上回る日が多いこともあり、必ずしも天然ガス需要は旺盛というわけではないものと見られ、例えば同国の電力会社の保有するLNG在庫は11月6日時点で252万トンとこの時期の過去5年平均(195万トン)を上回っている(また、日本の電力会社は発電量燃料として豪州産及びベトナム産原油の調達を進めている旨9月27日に伝えられる)。加えて、韓国産業通商資源部(省)は足元34%である同国の天然ガス貯蔵充填率を11月までには90%程度にまで引き上げることを目標とする旨示唆するとともに、韓国ガス公社(Kogas)はエネルギー危機を回避すべく2022年末までに1,000万トン(約4,800万立方フィート)のLNGを購入する必要がある旨8月8日に報じられたこともあり、韓国等でもLNGの調達が進んだものと見られ(図29参照)、同国の天然ガス貯蔵量が増加したうえ、LNGの代替としてLPG及び石炭への燃料転換を図っている旨10月27日に伝えられている。さらに、中国では、新型コロナウイルス感染抑制のための都市封鎖措置を含む厳格な経済活動制限の強化がなされたことや、国内での石炭生産促進(図30参照)により天然ガス需要が伸び悩んだものと見られる一方、国内での天然ガス生産が底堅く推移している(2022年9月の同国天然ガス生産量は日量193億立方フィートと前年同月比4.7%の増加となっている、図31参照)ことや、ロシアからの「シベリアの力(Power of Siberia)」等のパイプライン経由での天然ガス輸入が堅調である(2022年9月の中国のパイプライン経由での天然ガス輸入は日量67億立方フィートと前年同月比で9.7%程度の増加となっている)こともあり、同国国内の天然ガス需給の緩和感が強まるとともに国内天然ガス価格が圧迫されたことにより、中国のLNG輸入が抑制された(図32参照)他、同国の一部国営石油会社等はLNGを売却する動きも見られた(但し、中国国家発展改革委員会は冬場の国内利用向け天然ガス供給を確保するため、LNGを他のアジア諸国や欧州の購買者に対して転売することを禁止する旨同国国営石油会社(ペトロチャイナ、中国石油化工、及び中国海洋石油)に通知した旨10月17日に報じられる)。インドにおいても、製油所や石油化学産業等の産業部門を中心として相対的に安価な国産天然ガス、重油、及びLPGの利用が促進される一方、LNG輸入を敬遠する動きが発生したこともあり、同国石油会社等によるLNGの購買活動は低迷した。他方、6月8日以降賃金等の労働条件改善を求めて労働者がストライキを実施したことにより操業を停止していた豪州プレリュードLNG生産施設(操業者:シェル、LNG生産能力年産390万トン)において、8月24日に経営者側と労働者側で妥結が成立、8月31日に同施設は操業を再開した。さらに、中国の殆どの地域で12月から2月にかけ気温が平年並みか平年を上回る程度に上昇する(但し、中国北部の一部では寒波が発生する可能性する)旨の予報が11月3日に伝えられたことが、LNG需給緩和感を市場で拡大させる格好となった。そのような中、アジアのLNG価格は欧州の天然ガス価格の影響を受けたことにより、オランダTTF天然ガス先物価格が史上最高水準に到達した8月26日の前日である8月25日にはアジア天然ガス先物価格も100万Btu当たり69.955ドルの史上最高水準に到達する場面が見られたものの、その後当該価格は欧州及びアジアにおける天然ガス需給緩和感とともに下落傾向になり、11月11日には同27.225ドルと8月12日の同45.390ドルを相当程度下回る水準となっている。

図29 日本及び韓国のLNG輸入増減量(前年同月比)(2008~22年)

図30 中国石炭生産(2016~22年)

図31 中国天然ガス生産(2016~22年)

図32 中国、台湾及びインドのLNG輸入増減量(前年同月比)(2016~22年)

以上

(この報告は2022年11月14日時点のものです)

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