ページ番号1009534 更新日 令和4年11月15日

エネルギートランジションへの動きが活発化する米国 ―インフレ削減法はその動きを加速するかー

レポート属性
レポートID 1009534
作成日 2022-11-15 00:00:00 +0900
更新日 2022-11-15 11:25:57 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 環境エネルギー一般
著者 中島 学
著者直接入力
年度 2022
Vol
No
ページ数 21
抽出データ
地域1 北米
国1 米国
地域2 欧州
国2
地域3
国3
地域4
国4
地域5
国5
地域6
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地域7
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地域8
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地域9
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地域10
国10
国・地域 北米,米国欧州
2022/11/15 中島 学
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概要

  • コロナ禍・ポストコロナの試練を経た世界のエネルギーシステムはロシアによるウクライナ侵攻に端を発した世界規模でのエネルギー危機を受け、「エネルギーの安定供給、安価なエネルギーへのアクセス、持続可能性」というトリレンマの真っただ中にある。エネルギー安全保障を担保しながら、如何にエネルギートランジションを着実に進め軟着陸させるかは、人類共通の課題となっている。
  • 一方米国のバイデン政権は政権発足以来気候変動枠組条約締約国会議(CoP)への復帰、2050年までのカーボンニュートラル宣言等気候変動・脱炭素対策に向けた政策を積極的に打ち出しているが、2021年11月に成立したインフラ投資・雇用法(Infrastructure Investment and Jobs Act)、2022年8月に成立したインフレ削減法(Inflation Reduction Act)はそれらの指針に更に具体的な実行性を持たせる効果が期待されている。
  • また米国内では前政権下においても再生可能エネルギーやCCS事業といった形でエネルギートランジションに向けた動きが進行しており、現在様々なクリーンエネルギーセクターにおいて積極的な事業展開が観察される。インフレ削減法がそれらの事業活動に対する「呼び水」となり、米国におけるエネルギートランジションが一気に加速することが今後予想されている。
  • 本稿では主にインフレ削減法が米国内のエネルギートランジションに与える影響について焦点を絞り解説していく。詳しいインフレ削減法の内容について関心をお持ちの方は弊機構の石油・天然ガス資源情報「米国インフレ削減法成立と石油・天然ガス上流開発産業に対する影響(2022/9/26)」を是非ご参考頂きたい。

 

1. はじめに

米国で2021年11月に成立したインフラ投資・雇用法(Infrastructure Investment and Jobs Act)[1]、2022年8月に成立したインフレ削減法(Inflation Reduction Act)[2]は10年間の支出総額3.5兆ドルとされるビルドバックベター法案から党内調整を経たある意味妥協の産物ではあるが、バイデン政権の目指す、2030年までに温室効果ガス排出量を2005年比50~52%削減、2050年までのカーボンニュートラルを実現するための切り札と期待される。特にエネルギー安全保障・気候変動対策向けに3,690億ドルもの歳出予算を割いたインフレ削減法は米国におけるエネルギートランジション、脱炭素の動きに大きな影響を与えるものと予想される。インフレ削減法では新たにクリーン水素に対する税額控除(新設Sec. 45V credit for production of clean hydrogen (§13204))が加わり、更にメタン排出に対する過料制度が導入された。この「Methane Fee」と呼ばれるメタンガス排出に対する過料制度はサプライチェーン上の全事業者を対象にメタン排出量が一定の割合を超えた場合、段階的に過料を科す(2024年から1トン当り900ドル、2025年1,200ドル、2026年以降1,500ドル)というもので、米国では初めての炭素税となる。クリーン水素に対する税額控除とメタン排出量に対する過料制度は党内調整の難航から2021年のインフラ投資・雇用法には含めることができず、結果としてインフレ削減法に持ち越された。また改定となったCCS(二酸化炭素の分離・回収・貯留技術)に関する税額控除、Sec. 45Q Credit For Carbon Oxide Sequestration (§13104)では今回初めてDAC(二酸化炭素を大気中から直接回収・貯留する技術)に対する税額控除が他の手法から独立して盛り込まれた。このことによりDAC事業の経済性が大きく好転し、DAC事業の大幅な拡大が予想されている。またインフレ削減法には直接関係ないが、インフラ投資・雇用法には80億ドルの水素ハブ構想が盛り込まれた。これらの項目は米国のエネルギートランジション、脱炭素を加速する新たな枠組みとなる可能性があり、インフレ削減法における注目点といえる。

またこれらの動きと並行して米エネルギー省(DOE)は2021年6月に気候変動対策における最も困難な課題を克服し、コストを大幅に削減するための革新的技術を支援・促進すべく、エネルギー・アースショット・イニシアチブ(Energy Earthshots Initiative)[3]を公表した。人間を月に送るという1960年代の「ムーンショット計画」になぞらえたネーミングであり、水素ショット、長期蓄電ショット、カーボンネガティブショット、強化地熱開発ショット、浮体式風力発電ショット、産業熱利用ショットを含む。例えば水素ショット(Hydrogen Shot)[4]の場合であれば10年以内にクリーン水素コストを80%削減し、1キログラム当たり1ドルにすることを目指す「111」というプログラムが採用されている。また米エネルギー省(DOE)のLPO(Loan Programs Office)ローン制度[5]は一定の脱炭素へのインパクトはあるものの、商業銀行が足を踏み出せないような次世代の技術、あるいは初めての技術実装といったリスクの高い事業案件を支援する。更に環境省・農務省や州・自治体レベルでも様々な気候変動・脱炭素対策、クリーンエネルギーといった技術のR&Dや事業の立ち上げに関して多くの資金支援・ローン制度が準備されている。

インフレ削減法にはどの項目にも通底する一定の特色が見られる。1点は「環境正義(Environmental Justice)」[6]であり、これは環境負荷に不平等にさらされることなく、誰もが公平にクリーンエネルギーにアクセスでき、安全な環境で暮らせるように配慮されるべき、ということである。インフレ削減法の中に環境・経済的に不利な状況に置かれた地域社会への投資に特化した支援プログラムが組み込まれていたり、従業員に対する給与水準や未経験者への育成制度によって税額控除の大きさに傾斜が付けられているといった点からもその意図がくみ取れる。またもう1点しばしば登場する表現が「技術中立(Technology Neutral)」である。現時点では脱炭素やクリーンエネルギー技術に優劣をつけず、公平に取り扱うという意味と解釈されるが、1つには化石燃料セクターに対しても低炭素技術の導入や燃料転換といった形で社会の脱炭素化を進展させ得る大きな役割があるということ。もう1つは現時点ではまだ多くの革新技術が発展途上の段階にあり、優劣を判断するのは時期尚早ではあるものの、気候変動目標達成までの10年、20年といった長いスパンの中では、社会や経済の脱炭素化を推進し、市場を独占するほどのポテンシャルを持った技術が現れる可能性も否定できず、これから起きることを現時点では結論付けることはできない。現時点では技術の優劣が判断できず、様々な技術にその可能性があることから、より多くの技術や事業にチャンスを与え、それぞれを競わせるという意味が込められているものと解釈する。

 

2. クリーンエネルギー普及のカギ:サプライチェーンの確立

それでは米国のエネルギートランジションは現在どのような状況になっているのだろうか。図1は1949年から2021年までの米国における電源構成の推移をグラフで示したものであるが、石炭火力発電量の急激な減少や原子力発電量の停滞に対し、再生可能エネルギーの大幅な拡大が見て取れる。2021年通年では石炭火力発電量が8987億kWh、原子力発電量が7782億kWhである一方、再生可能エネルギー(水力、バイオマス、地熱、太陽光、風力発電の合計)の発電量は8264億kWhとなり、辛うじて石炭火力発電が2位の座を堅持した。石炭火力発電は2014年から2020年までの間減少が続いていたが、コロナ禍後の電力需要増と天然ガス価格上昇(発電向けの石炭供給コストが対前年比3%増だったのに対し、天然ガス供給コストは約2倍)により、2021年一時的に、対前年比16%増加した。EIAの最新の短期エネルギー見通しによると、2022年に入って天然ガス価格の高止まりにもかかわらず、石炭の供給面での制約により石炭火力発電は再び減少傾向にあり、2022年の米国の石炭火力発電量は対前年比6%の減少が見込まれるとする[7]。2022年前半の発電量では石炭火力発電量が4096億kWh、原子力発電量が3799億kWhとなり、いずれも再生可能エネルギーの4975億kWhよりも低い値となったことから、石炭火力発電所の更なる廃止と再生可能エネルギーの新規発電設備容量の増加を考慮すれば、通年でも再生可能エネルギーが2位の座を確保する可能性が高い。

(図1)米国の電源構成の変化
(図1)米国の電源構成の変化
(2049~2021年、単位:TWh)
(出所:EIA)

図2は2010年から2021年にかけての米国の新規発電設備容量の推移であるが、ここ数年風力・太陽光発電設備の堅調な増加が認められる。したがって少なくとも再生可能エネルギーに限って言えば、米国におけるクリーンエネルギーの拡大は順調と言える。しかしそのような中においても太陽光パネルのサプライチェーンに関しての不安材料が表面化してきている。その点に関しては後段で触れることとする。

(図2)米国の追加発電設備容量の割合:電源別
(図2)米国の追加発電設備容量の割合:電源別
(2010~2021年、単位:%)
(出所:Wood Mackenzie/SEIAデータに基づきJOGMEC作成)

一方再生可能エネルギーの著しい進捗と比べて、従来からの農作物由来のエタノールやその派生品を除くクリーン水素といった新たなクリーン燃料の市場や関連事業はようやくスタートを切ったところである。クリーン水素や新たなクリーン燃料の市場や事業の拡大には、

  • 価格の低減
  • サプライチェーンの確立
  • 事業の大型化・規模の拡大

が不可欠である。急激にコストが低下し、今もそのトレンドが続く再生可能エネルギーと異なり、クリーン水素等のクリーン燃料の価格は高い。例えば水素生産に使用される電解槽も容量が小さく、事業ごとに特化したオーダーメイドで製作されるため、部品の共通化やデザインの標準化によるコスト削減も進んでいない。ただし再生可能エネルギーの例のように確固たるサプライチェーンが確立し、市場がうまく回り始めれば、事業の大型化・規模の拡大や価格の低減は自ずと付いてくることから、如何にサプライチェーンを構築するかが喫緊の課題となって来る(図3)。

(図3)石油産業およびクリーンエネルギー事業におけるサプライチェーン
(図3)石油産業およびクリーンエネルギー事業におけるサプライチェーン
(出所:JOGMEC作成)

石油産業に目を向ければ現在の石油産業とその流通システムが高度で効率的なサプライチェーンを基に構築されているのが分かる(図3)。石油といった主となるエネルギーに求められる「大量供給(abundant)、安定供給(reliable)、低価格(affordable)」の3つの条件は長い時間を掛けて作り上げられた盤石なサプライチェーンがあったからこそ満たされる。過去、現在のエネルギー危機の例を見ても、サプライチェーンの一つの歯車が欠けるだけで、全システムが大きな打撃を受ける。本稿ではサプライチェーンというキーワードを中心に、米国におけるクリーンエネルギーの発展、インフレ削減法による影響について考察していくこととする。

 

3. サプライチェーンにおけるインフレ削減法の役割

図4はインフレ削減法をクリーンエネルギーのサプライチェーンに投影した場合、どのフェーズに影響を及ぼすかを示したイメージ図である(下方の破線囲み)。またインフレ削減法の特徴を示すため新たな欧州のエネルギー政策であるREPowerEUプラン[8]も比較のために示した(上方の破線囲み)。

(図4)クリーンエネルギー・サプライチェーンにおける欧州の制度とインフレ削減法との役割・位置づけについての比較
(図4)クリーンエネルギー・サプライチェーンにおける欧州の制度とインフレ削減法との役割・位置づけについての比較
(出所:JOGMEC作成)

REPowerEUプランはウクライナ情勢とそれに伴う欧州のエネルギー危機に対する解決策として、2022年5月に欧州委員会で承認されたエネルギー政策で、エネルギー安全保障と温暖化対策両面に軸足を置いている。2027年までに官民で2100億ユーロを投下し、2030年における再生可能エネルギーの比率を現行の目標である40%から45%に引き上げ、水素供給量をこれまでの1000万tから2000万t(域内製造1000万t、輸入1000万t)に倍増するといった方針を掲げる。

REPowerEUプランに限らず欧州の気候変動・脱炭素対策関連の施策はそのベースに炭素税・欧州排出量取引制度(EU-ETS)[9]といったカーボンプライシング(Carbon Pricing、以下CPと表記)の存在がある。欧州排出量取引制度(EU-ETS)の場合、排出権市場は暫くt-CO2e 当たり10ユーロを下回る時期が続いたが、2019年頃からt-CO2e 当たり20ユーロを超え始め、2022年8月に98ユーロの史上最高値を付けた後、現在は80ユーロ前後(2022年11月9日時点でt-CO2e 当たり76ユーロ)の高値で推移している。EU-ETS対象国において定められた排出枠を超えた対象事業者は超えた部分をEU-ETS市場から調達する必要がある。排出枠の上限は段階的に下げられるため、温暖化ガス排出量削減が困難な対象事業者にとってCPの負担は大きく、「CO2 = コスト」となる。したがって事業者(エネルギー消費者)にとって化石燃料の代わりに温暖化ガス排出量の少ないクリーンエネルギーを使用することは非常に大きな意味があるが、これは事業者(エネルギー消費者)に対する「負の動機づけ」であり、政府の規制や罰則により気候変動・脱炭素対策を促す、「プッシュファクター」ということとなる。この仕組みの上に欧州における気候変動・脱炭素対策政策の枠組み・設計コンセプトは作られている。

一方でインフレ削減法をサプライチェーンのテールエンド、消費者サイドに対するインセンティブ(動機づけ)という視点で見た場合、欧州のようなインセンティブが存在しない。CP制度が存在しないということが1点であるが、クリーンエネルギーを使用することによる利益、「正の動機づけ」である「プルファクター」(補助金や税額控除といったインセンティブ)もはっきりとは観察できない。クリーン車購入の際様々な条件を基に税額控除が得られる(既存のSec. 30D制度の補強)、またSec. 40Bに新たにSAF(持続可能な航空燃料)の販売・購入に最大で1.75ドル/gal(ガロン、3.78l)の税額控除が設けられた(§13203)といった点が目につく程度で、特に消費者サイドに対しては手厚いインセンティブは設けられていない(他にSec. 40A(g)バイオ燃料、再生可能ディーゼル販売・購入に対するインセンティブもあるが、これまでの延長)。そういう意味でクリーン水素といったクリーンエネルギーを使用することに対する消費者サイドの動機づけが今一つ生まれづらく、如何にクリーンエネルギーの需要を拡大するか、という点が課題となる。

他方原料調達・輸送、製造・販売といった供給側のインセンティブは非常に手厚く整備されており、サプライチェーンを通じて重層的に低炭素化に貢献すればするほど、複数の税額控除の恩恵を受けることも可能である。例えば再生可能エネルギーを基に水素を製造する場合、再生可能エネルギーの生産に関する税額控除、最大1.5セント/kWh(ただし2022年はインフレ率考慮のため2.6セント/kWh)に加えて、クリーン水素生産に関する税額控除、最大3.00ドル/kg-H2(§13204)が設けられているため、水素生産者は原料価格低下の可能性と製品の市場競争力という2重の恩恵を受けられる。また更にそのクリーン水素を使って発電や低炭素輸送用燃料の製造、水素ステーションでの販売を行った場合についてもそれぞれの規定に則った税額控除が受けられる(Clean Energy Production Credit (§13701)、Clean Fuel Production Credit (§13701)、Alternative Fuel Refueling Property Credit (§13404))。このようにサプライチェーンの上・中流側に位置する供給サイドには非常に手厚い支援体制となっている(図4)。

これまで「負の動機づけ」であるCPをベースにクリーンエネルギーの需要拡大を図って来た欧州であるが、欧州委員会はIPCEI(Important Projects of Common European Interest欧州共通利益に適合する重要プロジェクト)[10]の中に22年7月、水素技術の最初の産業展開を支援するIPCEI Hy2Tech (54億ユーロ)[11]を、また同年9月には水素関連インフラの建設や脱炭素の難しい産業分野への水素利用を促進するIPCEI Hy2Use (52億ユーロ)[12] を設立し、サプライチェーンの上流側の支援にも力を入れる。また欧州委員会は22年9月22日、水素経済の規模拡大を確実にするために欧州水素銀行の設立計画を公表し、30億ユーロを準備、水素を既存の化石燃料と入れ替える上で「プルファクター」として需要サイドの資金支援を行う。

ここまで水素といったクリーンエネルギーを普及する上で高価格、サプライチェーンの未整備、十分な需要がないといった点が障害となっていることを解説して来た。またインフレ削減法は供給サイドにとっては大きな力となるが、需要の拡大を政策面で引っ張っていくには更に追加の手段が必要であると述べてきた。本稿の後半では如何にこれらの課題を解決し、クリーンエネルギーの発展を推進していくのか、クリーンエネルギーを普及させるためのいくつかのアプローチについて紹介していきたい。

 

4. 太陽光パネルサプライチェーンの課題

「クリーンエネルギーを普及させるためのアプローチ」についての解説をする前に「2. クリーンエネルギー普及のカギ:サプライチェーンの確立」の項で触れた、「太陽光パネルのサプライチェーンに関しての不安材料」について解説する。いささか本題からは外れるが、米国の気候変動・脱炭素対策全般に影響を及ぼす可能性があることから暫しお付き合い願いたい。

米国の太陽光発電の新規設備容量はここ数年大幅に増加し、太陽光発電事業は活況を呈しているが、インフレによる資機材・人件費の高騰は事業者を直撃し、資機材の納品の遅れも事業の停滞を招いており、仮にそれらのボトルネックが解消されれば、米国における太陽光発電の拡大は更に増幅されるものと見られている。

一方太陽光パネルのサプライチェーンに目を向ければ、太陽光パネルの生産は中国企業が圧倒的なシェアを握っていることが分かる(図5)。中国国内でも再生可能エネルギーの拡大は大きく進み、太陽光発電の新規設備容量は48GWに達しているが、生産量は125 GWあり、その多くが輸出に回っていることが想像される(参考IEAデータ、2020年)。もっとも太陽光パネル自体はここ数年東南アジアにも多くの製造プラントが建設され、ベトナム、マレーシア、タイといった東南アジア諸国の生産増も目立っている。ただし太陽光パネルの材料となるウエハで見ると、その生産量の96%(参考IEAデータ、2020年)は中国に集中しており、中国の寡占状態となっている(図5)。コロナ禍やポストコロナ、多くの激甚化する異常気象、更にはウクライナ危機によりグローバルサプライチェーンは寸断され、物の流れは停滞する。これほどまでにグローバルサプライチェーンにおける脆弱性やリスクが指摘されたことは過去経験が無い。中でも最も懸念すべきリスクは特定の国に生産が集中することであるが、グローバルサプライチェーンが発展すればするほどコスト低減と効率化が求められ、一極集中が益々進展する。太陽光パネルのサプライチェーンにおける課題が不安材料の1点目となる。

(図5)世界の太陽光パネル・ウエハ生産に占める国別割合
(図5)世界の太陽光パネル・ウエハ生産に占める国別割合
(2020年、単位:%)
(出所:IEAデータに基づきJOGMEC作成)

2022年2月、カリフォルニア州の太陽光パネル製造業者であるAuxin Solarが商務省に対し東南アジアから入る太陽光パネルは中国企業が「迂回輸出」を目的に東南アジアから出荷し、米国に輸出している疑いがあるため調査が必要との陳情書を提出した[13]。米国の太陽光パネル市場はベトナム、マレーシア、韓国、タイの4か国が市場の82%を占め、米国のシェアは10%にも満たない(図6)。「迂回輸出」の疑いを持たれた4か国、ベトナム、マレーシア、タイ、カンボジアの米国での市場シェアは2021年で65%に達している。「迂回輸出」と認定されれば最大で250%もの輸入関税の対象となるため、国内の太陽光発電事業者には多大な負担となり、政府の気候変動・脱炭素政策も転換を迫られることとなることから、大きな政治・社会問題へと発展した。既に中国からの太陽光パネルに対してはトランプ政権時代の2018年、セーフガード措置[14]の発動により40%から275%までの関税が課せられていることから、中国から輸出された太陽光パネルの米国市場でのシェアは極少数に留まる。したがってベトナム、マレーシア、タイ、カンボジアからの製品が「迂回輸出」の対象とされれば、米国は代替手段を持ち得ない。最終的に商務省は2022年6月に2年間の関税免除措置を適用し、その間に調査を実施すると結論付け事なきを得たが、いつこの問題が再燃するかも分からず、潜在的なリスクとして残された(2点目の不安材料)。

米国の太陽光パネルの生産量は2018年のセーフガード措置の影響で増加傾向にある一方、セルやウエハといった材料品や関連製品についてはほぼ全量を輸入に頼っている(図7)。

(図6左図)米国における太陽光パネルのシェア/(図7右図)米国のソーラー関連製品生産推移
(図6左図)米国における太陽光パネルのシェア
(2020年、単位:%)
(図6出所:EIAデータに基づきJOGMEC作成)

(図7右図)米国のソーラー関連製品生産推移
(2011年~2021年、単位:MW)
(図7出所:Wood Mackenzie/SEIA)

米SEIA(Solar Energy Industries Association 太陽エネルギー産業協会)とWood Mackenzieの予測では今後インフレ削減法の成立により米国内の太陽光発電事業は大幅に拡大としている(図8)。SEIAは現在5GW弱(2021年)である太陽光パネルの国内生産量を2030年には50GWまで拡大することを目標としている。インフレ削減法による太陽光発電事業の拡大が生産増の主因だが、条件付きながら太陽光パネル製造業者の米国での生産に対する税制控除制度もインフレ削減法に含まれている(改定Sec. 48C製造事業者税額控除)。

(図8)インフレ削減法の有無による米国での新規太陽光発電設備の拡大予想
(図8)インフレ削減法の有無による米国での新規太陽光発電設備の拡大予想
(2022~2027年、単位:GW)
(出所:Wood Mackenzie/SEIAデータに基づきJOGMEC作成)

5. 米国における水素事業

ここからクリーンエネルギーの代表格とも言える水素事業の米国内の現状やインフレ削減法による影響について見ていくこととする。水素市場の拡大にとって需要な点は(1)長期販売契約と(2)競争力のある中流インフラと言われている。米国に限った話ではないが、それらの点からも再生可能エネルギーの急激な発展に比べ、水素市場の確立はまだまだ発展途上の段階である。それならば将来における水素市場の規模はどこまで拡大するのであろうか。

現在産業革命以来の世界の気温上昇を1.5度以内に抑えるネットゼロシナリオの作成が様々な組織で試みられているが、そのどれもが水素を重要な未来のエネルギーとして位置付けている。国際エネルギー機関IEAのWorld Energy Outlook 2022のNZEシナリオ(Net Zero by 2050)[15]によれば2050年における世界の水素の生産量は4.5億トンとされている。多くのネットゼロシナリオでも水素の需要は2050年においてほぼ3億から5億トン程度と予想されている。

一方現在の世界における水素の生産量は年間9,000万トン以上とされているが、米国の場合そのほとんどが石油精製・石油化学(57%)、アンモニア・メタノール製造(38%)、精錬・金属加工(2%)に使用されている[16]。特にその使用が多いとされる石油精製(日本では水素使用量の7割を占める)では水素は精製プロセスの一環である水素化精製(硫黄や窒素、酸素分を除去する工程)や重質油を軽質化する分解工程において石油製品の安定性向上を図るために使用される。また製油所では自ら水素の生産を行っており、水素は軽質ナフサ等から製造される他、接触改質装置から副生水素としても回収される[17]。したがって多くの水素はオンサイトで製造され、自家消費されることから、実際の生産量は統計に表れないものが相当量あると推察される。水素はほとんどが化石燃料から製造され、クリーン水素の割合は極わずかに過ぎない。

将来の需要の拡大はまだ把握できる段階ではないが、1点明確なのは現在米国で年間1,000万トンもの水素需要があり、既に中国に次ぐ世界第2位の水素市場が存在するということである。したがってクリーン水素の市場戦略における最初のステージはクリーン水素の石油精製・石油化学、アンモニア・メタノール製造といった既存市場への供給(化石燃料ベースの水素からクリーン水素への転換)ということになる。需要者側における新規の設備投資が必要なく、既存のインフラや物流網を最大限活用できるため、新たな市場を創造しなくとも既に国内に相当規模の市場があることが米国水素事業の優位性となっている。しかしながら既存の市場のみでは水素の規模拡大には十分とは言えない。次の段階では製鉄・セメント・窯業といったhard to abate(温暖化ガス排出量削減が困難)と呼ばれる産業における「水素還元製鉄」や化石燃料の代替としての水素の利用、火力発電設備における水素やアンモニアの混焼や燃料転換といった需要が水素の次のステージへの拡大のポイントとなってくる。特に水素の消費を爆発的に拡大させるには電化が難しいとされるトラックやバスといった大型輸送車の代替燃料としての水素の利用が欠かせない。この市場規模は他と比べて圧倒的に大きいことから、モビリティー分野への水素の浸透こそが水素が主要なエネルギーとして発展するかどうかのカギを握っている。

 

6. 水素事業の先駆者

まだまだ先が読めず、ようやく発展の途に就いたばかりの水素であるが、そのような状況の中でも水素事業の先駆者として水素事業を大規模に展開する米国企業がある。その中の1社、Air Products(正式にはAir Products and Chemicals, Inc.)[18]について紹介する。

同社はペンシルベニア州に本社を置く米国最大の産業ガス供給者で、LNGプロセス技術と設備の提供、またLNG、CCS、産業ガス、クリーン水素事業等の開発・設計・建設・運営等も行っている。特にここ数年はクリーン水素開発事業に力を入れており、水素開発事業のリーディングカンパニーとして世界的規模で水素事業を展開している。

水素には製造過程により様々なカラーコーディングがあり、それぞれの色がその製造方法を示すが、一般にはグリーン水素(再生可能エネルギー由来の電気により水を電気分解し、水素と酸素を生成、水素を分離・回収したもの)、ブルー水素・グレー水素(化石燃料を水蒸気改質等で水素と二酸化炭素に分解し、水素を分離・回収、更にCCSで二酸化炭素を分離・回収・貯留したものがブルー水素、CCS無しがグレー水素)の3種類に分けられ、グリーン水素およびブルー水素をクリーン水素あるいは低炭素水素と呼ぶ。同社はグレー、ブルー、グリーンの全ての水素を取り扱っているが、新規の事業はクリーン水素を対象としたものである。それらの内代表的な事業計画・事業提携を以下に列記する。

  • 2022年10月、ニューヨーク州、グリーン水素生産計画。年産1300t、2026~27年運転開始。
  • 2022年8月、英港湾グループABPと英Immingham港でのグリーン水素供給拠点整備で提携。
  • 2022年6月、オランダ ロッテルダム、グリーン水素輸入港建設計画、2026年受け入れ開始。
  • 2022年5月、サウジAcwa Power、オマーンOQとオマーンSalalah自由特区で大規模なグリーンアンモニア生産に向けた事業提携に合意。
  • 2022年2月、ドイツ ハンブルグ港、水素サプライチェーンの構築に向け提携。
  • 2021年10月、ルイジアナ州、ブルー水素生産計画。年産70万t、2026年運転開始。
  • 2021年10月、韓国Hyundai Glovisと水素のグローバルサプライチェーンの構築に向け提携。
  • 2021年6月、カナダ アルバータ州、ブルー水素生産計画。年産15万t、2024年運転開始。
  • 2020年7月、サウジアラビア NEOM事業、グリーン水素年産24万t、2025年運転開始。

Air Productsが同社の事業において重視している点は迅速な行動と経営判断である。将来の水素社会到来を念頭にフロントランナーとして黎明期の今こそ市場を確保する好機と捉え、いわばfirst mover advantage(先行者利益) を念頭に、他社に先駆けて市場を占有することを社の方針としている。したがって事業計画の公表からFID(最終投資決定)までの時間が非常に短い。鉱区参入から生産開始までのリードタイムが深海事業であれば7~8年、LNG事業であれば10年というように長期に及ぶことが珍しくない石油・天然ガス開発業界のビジネス手法が彼らには緩慢に映る。また石油・天然ガス開発事業ではリスクヘッジや費用負担の低減、技術・知見の補強のために多くのパートナーとコンソーシアムを組むケースが多いが、彼らは合意形成のために多くの時間が掛かることを嫌い、単独か極少数のパートナーと事業を進めることを好む。ただ一方で水素事業では水素のサプライチェーンのように複雑な要素が絡んだり、高度で専門的な知見が必要な局面も出てくるため、よりプラグマティックなパートナーリング戦略は重要となる。

また「素早い行動・迅速な意思決定」はインフレ削減法との相性を考える上でも理にかなっている。インフレ削減法では多くの税額控除に関して期限設定が付いている。例えば改定Sec. 45Y 再生可能エネルギー(太陽光・風力発電)の生産税額控除の場合は2024年12月31日までに建設を開始することが条件となっている(§13101)。また気候変動・脱炭素対策の政府目標が前倒しで達成されたり、クリーンエネルギーの製造コストが想定以上に低減できた場合、あるいは財政支出の制約等により、税額控除の額が減らされたり、早めに制度が撤廃されることもあり得る。そういう意味でも一刻も早く事業を立ち上げ、インフレ削減法の恩恵を最大限活用しようという動きは同社に限らず、米国クリーンエネルギー市場の潮流となっている。

もう一点同社の事業運営上の特徴は垂直統合型のビジネスモデルにある。高度な分業体制が整った石油産業の視点からはこの点も異例に映るが、クリーンエネルギー市場(特にインフラ企業)においては珍しくないアプローチともいえる。同社は水素の生産だけではなく、輸送・物流もビジネスとして統合している。同社はルイジアナ州ニューオーリンズからテキサス州ヒューストンまで約1,100キロメートルの水素専用のパイプラインを保有し、その沿線に22か所の水素製造所を抱えている。また水素ステーションの建設、自社で所有する2,000台の車両を水素燃料に対応できるよう改造するといった販売やマーケティングについても自らが率先し、開拓している。本稿では水素サプライチェーンの不在について取り上げてきたが、同社には「サプライチェーンが無いのであれば垂直統合型のアプローチによって自分たちで創り出す」という、水素に賭ける熱意と意気込みを感じる。

 

7. インフレ削減法の水素事業への影響

「技術中立」を謳うインフレ削減法の特徴は温暖化排出の度合い(炭素強度、carbon intensity)によって税額控除の割合を定めていることである。地域コミュニティーへの貢献、経済弱者や環境負荷の高い地域の住民への支援、従業員の給与レベルや育成プログラム等の度合いによっても税額控除の額に差異がある。クリーン水素の税額控除では水素生産と開発投資のいずれかを選択できるようになっているが、水素生産に対する税額控除では表1に示すように炭素強度(水素生産1kg当たり排出される温暖化ガス、kg-CO2e)によって税額控除に傾斜が付いている。仮に水素生産に伴う温暖化ガス排出量が0.45kg-CO2e未満であれば水素生産1kgにつき最大で3.00ドルの税額控除が受けられるが、温暖化ガス排出量が2.5kg-CO2e以上、4.0kg-CO2e以下であれば水素生産1kgにつき最大でも0.60ドルの税額控除しか受けられない。更に4.0kg-CO2eを超える温暖化ガス排出がある場合は、税額控除の対象とはならない。要するに水素製造1kgにつき4.0kg-CO2eが閾値となり、それを超える温暖化ガス排出量が生じる製造方法によって製造された水素はクリーン水素として認められないということである。欧州のタクソノミー[19](企業の活動が持続可能かどうかを判定する仕組み)ではクリーン水素の定義を水素製造1kgにつき温暖化ガス排出量が3.0kg-CO2e以内であることとし、更に厳しい設定となっている。したがってグリーン水素であれば原則生産に温暖化ガス排出が伴わないので、最大で3.00ドル/kg-H2の税額控除の要件を満たすことができる。

(表1)クリーン水素生産税額控除およびCCS税額控除の条件
(表1)クリーン水素生産税額控除およびCCS税額控除の条件
(出所:米国インフレ削減法に基づきJOGMEC作成)

米国における水素の製造はその多くが天然ガスの水蒸気改質によって製造される。天然ガスの主成分であるメタンと水を高温下で反応させるとシフト反応を経て、最終的に1個のメタン分子から4個の水素分子と1個の二酸化炭素分子が生成される(図9)。これをモル質量で計算すれば1kgの水素に対して5.5kgの二酸化炭素が発生することとなる。水蒸気改質は吸熱反応であるため大量の熱が必要であり、米国ではその熱を天然ガスの燃焼から得ているため、その過程でも二酸化炭素が発生する。この場合一般に水素製造工程で発生する温暖化ガスの排出量は水素1kg当たり9.5kg-CO2e程度と言われている。

一方インフレ削減法における温暖化ガス排出の適応範囲は「Well to Gate」となっている(図10)。Wellというのは天然ガスの生産坑井のことで、Gateとは製品の出荷を意味する。したがって対象となる経路は天然ガスの生産現場からプロセス・圧縮を経てパイプランを通り、製造工程から出荷まで、ということになる。因みにカリフォルニア州では「Well to Wheel」として消費者までの経路を含む。天然ガスの上流セクターにおける炭素強度(この場合は水素生産量に対する温暖化ガス排出量の値)は水素1kg当たり0.8から3.5kg-CO2e程度とされているが、天然ガスの採集・処理方法によって差がある。炭素強度は天然ガスをLNG(液化天然ガス)として加工するケースが圧倒的に高いが、天然ガス内のCO2含有量、ガスタービンの使用、ベントやフレアーの量や頻度等にも大きく左右され、二酸化炭素の25倍の温暖化効果と言われるメタン漏洩も大きく影響を与える。一般的に陸上鉱区の方が、設備が整い、整備が行き届いている深海鉱区よりも炭素強度は高い。仮に代表値として天然ガス輸送も含む上流セクターにおける温暖化ガス排出量を水素1kg当たり1.8kg-CO2eとすると、「Well to Gate」では合計11.3kg-CO2eと求められる。したがってグレー水素の場合温暖化ガス排出量は水素生産1kg当たり11.3kg-CO2eとなり、当然4.0kg-CO2e以下というクリーン水素の条件を満たすことはできない(図10)。

(図9)天然ガス(メタン)の水蒸気改質による水素と二酸化炭素の生成
(図9)天然ガス(メタン)の水蒸気改質による水素と二酸化炭素の生成
(出所:JOGMEC作成)
(図10)グレー水素製造時の炭素強度とクリーン水素の定義
(図10)グレー水素製造時の炭素強度とクリーン水素の定義
(単位:kg-CO2e/kg-H2)
(出所:JOGMEC作成)

それではブルー水素の場合インフレ削減法の税額控除の対象となるのであろうか。CCSにより製造工程上の温暖化ガスを50%削減したケースと90%削減したケースの2通りで考えてみる。厳密にいえばCCSの二酸化炭素分離・回収プロセスでも大量のエネルギーを使うので、その分の温暖化ガスがオントップで加わることになるが、ここではグレー水素製造工程上の温暖化ガスのみを対象として考えることとする。CCSにより水素製造工程上で発生する二酸化炭素の50%が削減されたケースでは水素1kg当たりの温暖化ガス排出量は上流セクターを加えて6.6kg-CO2e となり、税額控除の対象とはならない。一方で 90%削減したケースでは2.8 kg-CO2eであることから、辛うじて最後の枠、「最大で0.60ドル/kg-H2」の税額控除の対象となる。製造プロセス全体で発生する温暖化ガスを90%分離・回収することは現在のベストプラクティスに近く、それなりの設備の導入や運転コストも伴うため、事業の経済性評価の中で0.60ドル/kg-H2の税額控除がどれほどの意味を持つのかは慎重に見極める必要があるだろう。現在米国でのブルー水素のコストは1~2$/kg程度、グリーン水素のコストは地域や条件によって大きな差があるものの、3~6$/kg程度とされている。インフレ削減法の対象とするのは税額控除でありそれがそのまま販売価格に当てはまる訳ではないが、インフレ削減法によってグリーン水素の価格競争力が大きく上がり、グレーやブルー水素との価格差が相当数縮まることは間違いない。

また6ページで解説したようにインフレ削減法はバリューチェーンとして税額控除の恩恵を最大限活用することも可能である。例えばグリーン水素の場合、その原料である再生可能エネルギーやその水素から製造されるSAF(持続可能な航空燃料)やe-fuel(合成燃料)の販売、水素ステーションでの販売に対しても税額控除の適用が可能であることから、Air Productのような垂直統合型の事業モデルには有利な設計となっている。

ブルー水素の場合水素生産としての税額控除か、あるいはCCSとしての税額控除かどちらかを選択できる。先ほどの例であれば水素1kg生産につき50%の温暖化ガスを削減したケースでは最大0.40$/kg-H2、90%の温暖化ガスを削減したケースでは最大0.73$/kg-H2の税額控除となり、水素としての税額控除よりも多少の改善が見られる(表1)。

 

8. インフレ削減法に対する反応

1) 石油開発企業の反応

インフレ削減法に対する大手の石油開発企業の反応は良好と言える。Shellやbpはインフレ削減法を支持するレターを発出し、Exxon MobileやOccidentalもインフレ削減法を歓迎する声明を出している。

一方で中小の石油事業者の反応は手厳しい。石油・天然ガスリースのローヤルティの値上げ、自社株式購入の際の徴税といった項目に加え、今回米国で初の炭素税と言っても良い「Methane Fee(メタン排出に対する過料)」が導入された。この過料は陸上・洋上石油・天然ガス生産業者、陸上天然ガスプロセス業者、陸上天然ガス圧縮・輸送業者、地下天然ガス貯留業者、LNG貯留業者、LNG輸入・輸出設備所有・操業者、陸上天然ガス集積・加圧業者、陸上パイプラインの運営・所有者というように上・中流事業者全般を対象とする。過料はガス販売についてはメタン排出量の割合が0.2%を超えた分、あるいは石油であれば1バーレルに対し、10トンを超えたものが対象となる。過料の額は制限を超えたメタン排出量トン当たり2024年では900ドル、2025年では1,200ドル、それ以降は1,500ドルとされている。業界のトップクラス企業、Shell、bp、TotalEnergiesといった欧州系だけでなく、ExxonMobileやChevron、Occidentalといった米系もOGCI(Oil & Gas Climate Initiative 石油・ガス気候イニシアチブ)の主要メンバーであり、既に同協会が目標と掲げる、2030年に石油・天然ガス事業からのメタン排出をゼロにするという、Aiming for Zero Initiativeに関して精力的に活動を行っており、メタン漏洩に対する監視・保守点検作業の強化に力を入れている。一方で中小の石油事業者の間ではメタン排出に対する対策が十分進んでいないため、このままでは今後この制度が経営の圧迫要因となってくることが想像される。

 

2) インフレ削減法による脱炭素・クリーンエネルギー事業の推進

インフレ削減法の成立から約3か月であるが、既に同法が追い風となり、多くの脱炭素・クリーンエネルギー事業が立ち上がっている。前述したようにほとんどの税額控除制度は期限の設定があるため、早く事業に取り掛かるほど事業にとっては有利となる。以下にインフレ削減法成立後に事業計画が公表された事業を列記する。いずれもプレスリリースの中に「インフレ削減法の後押しにより事業を開始」といった明確なメッセージが含まれるものを取り上げた。確固たるメッセージが無くともこの時期に米国で公表された脱炭素・クリーンエネルギー事業は全て同法によって得られる恩恵を事業評価の中に織り込み、同法が機関決定の大きな後押しになったことは疑いの余地が無いであろう。

22年10月24日、Bakken Energy、Cummins、Schneider、ノースダコタ州に年産34万トンのブルー水素ハブ、”Heartland Hydrogen Hub”を建設

22年10月6日、Air Product、ニューヨーク州、グリーン水素年産1300t、26~27年運転開始

22年9月27日、ノルウェーEquinorと米国のエネルギーインフラ企業Tallgrass、北米で大規模なクリーン水素/アンモニア事業開発の機会追求/評価で提携

22年9月8日、OCI、テキサス州にブルーアンモニア年産110~220万tのプラントを建設

22年8月25日、Occidental、テキサス州パーミアン盆地にDACプラントを建設、年間100万tのCO2を回収予定(70か所から135か所へ)

特に興味深いのはOccidentalが推進するDAC(二酸化炭素を大気中から直接回収・貯留する技術)事業である(2022年11月に建設開始)。Occidentalが今年の3月にテキサス州パーミアン盆地でDACのプラントを建設し、DAC事業を開始すると公表した時は業界からかなりの驚きをもって受け止められた。DACは実証試験段階では多くの試みがなされているが、カーボンプライシング(CP)制度の無い米国で収益モデルを構築することは困難と考えられていた。しかしながら3月の時点でOccidentalは今後70か所にDACの拠点を拡大すると表明した。3月の段階でSec. 45QにはDACに特化した税額控除制度が無く、最大でもCCSによる二酸化炭素の隔離ではt-CO2e当たり50ドルの税額控除しか無かったが、インフレ削減法により新たに改定Sec. 45QとしてDACに対する税額控除制度が加わった。これにより年間1,000トンの最小回収・貯蔵量を満たせば、DACにEOR(二酸化炭素や天然ガス等を油層に圧入することで石油の増産を図る技術)を組み合わせたケースで従来の35ドル/t-CO2(通常のCCS + EOR)から最大で130ドル/t-CO2に、EORを併用しないDACのみのケースでは50ドル/t-CO2(通常のCCSのみ)から最大180ドル/t-CO2の税額控除を受けられる仕組みが整った(§13104)。これまでのEOR事業者への二酸化炭素販売、炭素クレジットのボランタリークレジット市場での販売といったDACの収益モデルに加えて、破格の税額控除のメリットが加わったことから、Occidentalは今年の8月25日に「DACの拠点を70か所から135か所へ拡大」することを公表した。改定Sec. 45QによりDACの収益性が大幅に向上したことから、DACの事業化を目指す開発事業者が後に続くことが予想される。特にDACの場合は既に大気中に存在する温暖化ガスを削減することから「ネガティブエミッション」として解釈され、炭素クレジットも「質の高い炭素クレジット」としてボランタリークレジット市場から高い評価を受けるため、より高額での取引が想定される。

 

9. 水素ハブ構想

本稿の最後にインフレ削減法には直接関係しないが、2021年に成立したインフラ投資・雇用法の中で定められた水素ハブ構想と候補エリアにおける独自のアプローチについて紹介する。

水素ハブ構想は水素の普及・拡大を図るため、水素の産業拠点(水素ハブ)を米国内の6~10か所に整備し、そのために80億ドルの基金を準備するというものである。現在全米各地で10か所以上の地域が参加の名乗りを上げている。水素ハブ構想はそのエリアの水素の普及・拡大のみならず、それに伴う地域雇用の促進、地域コミュニティーへの貢献、経済弱者への支援といった意味合いも持つ。

今年9月22日にエネルギー省はその水素ハブ構想を受け、70億ドルの基金を対象に水素ハブプログラムの公募を開始した。コンセプトの提出期限は今年11月7日、最終申請書の提出期限は2023年4月7日である。また同時にエネルギー省は国家クリーン水素戦略およびロードマップの原案を提示している。それによればクリーン水素の年間供給量の目標を2030年に1,000万トン、2040年に2,000万トン、2050年に5,000万トンとするとされている。更に水素発展の3つの柱として(1)産業セクター、大型輸送車、送電網の脱炭素化に向けた長期蓄電といった分野での利用を促進し、水素利用規模の拡大を図るとともに、同盟国のエネルギー安全保障を支援、(2)水素ショット構想で示しているように(本稿2ページ参照)新たなイノベーションと規模の拡大、民間投資を喚起し、水素のサプライチェーンを整備することでクリーン水素の生産コストを劇的に低下させる。また重要素材、サプライチェーンの脆弱性についても着目し、効率と耐久性に優れた設計、リサイクルのし易さについても取り組む、(3)地域レベルでの水素ネットワークを重視する。そのエリアにおける大規模な水素の生産と消費のループを完結させること、それによって水素インフラのCritical Mass(水素の爆発的普及のための臨界数量)をクリアし、スケールの拡大を推進。また地域資本、地域参加、サスティナビリティーを推進力とした市場の浮揚の3点を挙げる。

水素ハブ構想はまさに(3)地域レベルでの水素ネットワークの構築、という点に重なるものと考えられる。水素はまだそのネットワークもサプライチェーンも存在しない。まず特定の地域内でネットワークやサプライチェーンを構築・発展させ、その中で水素の原料調達・製造・輸送物流・販売・消費までを完結させ、最適化を図る。各エリアの水素ハブを基点として全米中更には海外への輸出を通して世界規模での水素ネットワークやサプライチェーンの構築を目指すというところに水素ハブ構想における最終的狙いがある。一方でもう一つの意図はこの試みによって次世代のエネルギーシステム構築について壮大な実験を行おうとしているのでは、ということである。まさにインフレ削減法の重要なテーマである「技術中立(Technology Neutral)」に掛かってくる訳であるが、現時点では次世代エネルギーの中に過去の石炭や現在の石油・天然ガスに匹敵するような圧倒的な勝利者はいない。多くのネットゼロシナリオにおいても将来のエネルギーシステムの中身はクリーンエネルギーと化石燃料の混在、エネルギーミックスである。石油といった主となるエネルギーに求められる「大量供給(abundant)、安定供給(reliable)、低価格(affordable)」の3つの条件を満たす万能で、卓越したクリーンエネルギーは現時点では特定されていない。そして今やこれらの要件に加え次世代エネルギーには「持続可能性(sustainability)」が必要不可欠となっている。

また次世代エネルギーについては単に技術や価格の優位性だけではなく、それを社会・経済のエコシステムの中で運用した時に、インフラ・サプライチェーン・需給ネットワークといった既存システムに対する互換性や順応性、総合的なコストも含めた評価が必要となり、そのエコシステム内での評価を抜きに次世代のエネルギーとしての総合価値や優位性は判断できない。

水素ハブ構想の中でも最低1か所はグリーン水素、ブルー水素、イエロー水素(原子力発電由来の電気を使用し水を電気分解、水素を分離)を対象とし、様々な水素の製造方法を含めることを条件としていること、また1か所は天然ガスの生産地であることといった縛りを入れていることからも、「技術中立」の基本原則に沿い、今まさにスタートラインについた様々な技術や事業モデルを競わせ、次世代のエネルギーとして最適な、最終勝利者を選ぼうとしているとの意図が感じ取られる。そういった状況の中、それらの候補地の中からテキサス州とカリフォルニア州の例を挙げて解説する。いずれもそのユニークさと立地条件の確かさから未来の水素ネットワークモデルのプロトタイプとしてうってつけの存在であると考えられる。

 

1) H2ヒューストンハブ

H2ヒューストンハブは目下水素ハブとしての立ち上げに最も適した候補地と言われており、水素の製造事業者、中流事業者やインフラ・水素専用パイプライン、水素の需要家等全ての要件を満たしている(図11)。クリーン水素の製造には安価で安定した原料の入手が欠かせないが、再生可能エネルギーや天然ガスといった水素原料も州内で生産され、安価に手に入れることができる。ブルー水素の場合生産工程で生成された二酸化炭素をCCSとして枯渇油・ガス田に圧入・貯留するか、あるいはCCUSとしてEORに利用する必要があるが、数多くの石油・天然ガス開発・生産のレガシーによって地下構造のデータは豊富でCCSモデリングも容易であり、環境や社会受容性の障壁も低く、既存のインフラ設備も利用可能なため、石油・ガス開発事業から水素事業への転換も進め易い。輸送・物流といった中流事業においても前述したAir Productsのルイジアナ州ニューオーリンズ、テキサス州ヒューストンを結ぶ約1,100キロメートルの水素専用パイプライン等既存の輸送インフラが整備されている。またメキシコ湾沿岸部には石油精製・化学、アンモニア・メタノール製造所等水素の需要家が多く集中している。水素の利用の初期ステージでは新たな市場の形成よりも既存の水素(グレー水素)からクリーン水素への転換が先行することを考えれば、既に多くの水素消費者が集中していることは非常に重要なポイントである。更にメキシコ湾岸は石油・天然ガス事業の中心地であり地元にプラント建設のノウハウや人材が豊富であり、サプライヤーやサービス業者も多いことから、水素事業開始にも良好な環境といえる。既に日本や韓国等海外への輸出も念頭にあり、コーパスクリスティー港が水素輸出の港湾として指定されている。またグリーン水素生産の場合原料としての電力を発電量が不安定な再生可能エネルギーに頼らざるを得ず、専用船を使った輸出ということも考慮に入れれば、生産された水素を一旦保管する貯蔵設備も必要不可欠となる。その点もテキサス州は地下に岩塩ドームが広く分布しており、その地下空洞を貯蔵設備として利用できる。前述したコーパスクリスティー港の背後にもPiedras Pintasと呼ばれる岩塩ドームがあり、50数箇所の地下空洞が存在することから、水素の一時保管場所として構想に含められている(図11)。

(図11)H2ヒューストンハブ
(図11)H2ヒューストンハブ
(出所:Air Productデータ等を参考にJOGMEC作成)

一方H2ヒューストンハブにおけるネックは大型の再生可能エネルギーハブが西部に集中しており、沿岸部とはかなりの距離があることである。グリーン水素の場合沿岸部への原料供給は多大な敷設費用の必要な送電線による電力供給か、水素を再生可能エネルギーの発電サイトで製造し、水素パイプラインで沿岸部へ送ガスするかを選択する必要があり、いずれもインフラ費用が課題である。したがってH2ヒューストンハブにとってのエネルギー省水素ハブプログラムへの期待は、まさにこの輸送インフラ建設の支援という部分にある。

以下にH2ヒューストンハブにおける現在進行中の代表的なクリーン水素事業の例を取り上げる。

Hydrogen Cityプロジェクト(2022年3月3日公表)

Green Hydrogen Internationalが事業を推進するHydrogen Cityプロジェクト。同事業は60GWの再生可能エネルギーとERCOT(テキサス州の独立系統運用事業者)から電力を調達、西テキサス州で年間300万トンのグリーン水素を生産し、水素はPiedras Pintas岩塩ドームへ一時貯留される(6TWh)。グリーン水素はコーパスクリスティー港でグリーンアンモニアに転換され輸出されるが、一部はBrownsvilleにあるグリーンアンモニアプラントに送られ、ロケット燃料として使用される。事業の第一フェーズは2026年に開始予定。

 

2) カリフォルニア水素ハブ

カリフォルニア州は連邦レベルではカーボンプライシング制度がない米国においては非常にユニークな脱炭素政策を実行している州であり、2013年から州独自のカリフォルニア州Cap & Trade Program (排出量取引制度)[20]を運営している(他に米国では州レベルの排出量取引制度として北東部の9州が参加するRGGIの枠組みがある)。現在炭素クレジットの価格はt-CO2e 当たり30ドル近辺(2022年11月9日時点でt-CO2e 当たり29ドル)で推移しており、欧州排出量取引制度(EU-ETS)の炭素クレジット価格、t-CO2e 当たり80ユーロ前後とは大きな開きがあるが、EU-ETSも長らくt-CO2e 当たり10ユーロを大きく下回る時期が続き(5ページ参照)、30ユーロを超えるのも2020年以降、段階的な無償配分(free allowance allocation)の削減と2019年1月からのMSR(Market Stability Reserve、市場安定化リザーブ)制度の導入効果が原因であったことを考えれば、30ドルという数字も排出量取引制度の歴史から見れば決して低い価格ではない。

更にカリフォルニア州の場合はACC2規制により2035年までに州内で販売される新車の全てがEV(電気自動)かPHEV(プラグインハイブリッド)車といったゼロエミ車に統一され、ICE(化石燃料を使った内燃機関)型車両の販売は認められない。大型トラックといった大型輸送車両販売の場合は2045年までに可能な限りゼロエミ車とすることが求められているが、今後この規制が厳格化される可能性も高い。

したがって5ページのREPowerEUを始めとした欧州の政策に通底するカーボンプライシングの制度、そこから生まれる「プッシュファクター」としての誘導要因がカリフォルニア州における需要サイドに生じるということになる。これは現在グレー水素の代替や化石燃料との入れ替えを真剣に検討している需要家だけでなく、EV化の困難な大型トラックを保有する輸送事業者にとっても非常に関心の高い話となる。ことカリフォルニア州に限って言えば、需要家のクリーン水素への強いニーズが水素産業のモメンタムを形成し、水素経済の発展に大きく貢献する可能性がある。したがってインフレ削減法によるクリーン水素の価格低減は需要の喚起に大いに役立つということとなる。

 

以下にカリフォルニア水素ハブにおける現在進行中の代表的なクリーン水素事業の例を取り上げる。

Angeles Linkプロジェクト(2022年2月18日公表)

カリフォルニア州のガスユーティリティ事業者であるSoCalGasが推進するAngeles Linkプロジェクト。SoCalGasはロスアンゼルス近郊の産業地帯に最大規模の水素供給インフラを建設する。既存および新規の風力・太陽光発電から25-35GWを調達。10-20GWの電解設備を設け、250-750 マイル(402-1,207 キロメートル)の新たな水素輸送の幹線・支線を敷設、グリーン水素を供給する計画。

10. まとめ

最後にまとめとしてこれまでの解説を以下に整理する。

  • インフレ削減法はクリーンエネルギーの供給サイドにとって大きな後押しとなり、既に多くの事業立ち上げのきっかけとなっている。一方でサプライチェーンの面的展開・規模の拡大を図る上でカギを握るのは、カーボンプライシング制度が存在しない米国において如何に需要の拡大を図っていくのか、という点。また米国では石油精製等で既に一定規模の水素のニーズが存在し、そこを起点としクリーン水素の市場が拡大していくことになるのであろうが、「脱炭素が困難な産業」やモビリティー分野への適用があって初めてクリーン水素の産業化への道が開ける。しかしながら「必要とされる技術の確立」も含め、現時点での新たな市場形成は道半ば。この点が政策も含めた今後の課題となる。
  • 一方でインフレ削減法の税額控除制度はクリーンエネルギーの価格低減につながることが期待されるため、クリーンエネルギー普及拡大の助けとなる。水素ハブ構想は全米各地にクリーン水素をベースとしたビジネスモデルやサプライチェーンの構築を促し、産業化へのモメンタムを高める。また水素のフロントランナーは垂直統合型のビジネスモデルにより自らの手で水素サプライチェーンの道を切り開く。こういった動きが面的に展開し、新たなエネルギーシステム、更には経済・社会システムが生まれる可能性も否定できない。
  • 製造拠点を米国内に回帰させ、国内の雇用拡大や地域振興、地域コミュニティー支援を図ることはインフラ投資・雇用法やインフレ削減法の掲げるもう一方の重要な政策意図であり、そのためのインセンティブも豊富に盛り込まれている。しかし一方で太陽光パネルのように多くの製品は原材料も含めグローバルサプライチェーンに組み込まれ、コスト低減と高効率を追い求めた結果、「一極集中」という最終形に落ち着いた。このような状況の中海外からの投資も含めインフレ削減法の意図通り国内の製造業の回復が進み、自国調達率を上げることができるのかどうか、今後の展開を注視していく必要がある。
  • エネルギーの安定供給、安価なエネルギーへのアクセス、持続可能性は現在のエネルギーシステムが抱えるトリレンマと言われている。インフレ削減法に触発されたクリーンエネルギーの発展が現状のエネルギーシステムが抱える課題解決の一助となることを期待したい。
 

[1] Infrastructure Investment and Jobs Act
https://www.congress.gov/bill/117th-congress/house-bill/3684/text(外部リンク)新しいウィンドウで開きます

[2] Inflation Reduction Act of 2022
https://www.congress.gov/bill/117th-congress/house-bill/5376/text(外部リンク)新しいウィンドウで開きます

[3] Energy Earthshots Initiative
https://www.energy.gov/policy/energy-earthshots-initiative(外部リンク)新しいウィンドウで開きます

[4] Hydrogen Shot Hydrogen and Fuel Cell Technologies Office
https://www.energy.gov/eere/fuelcells/hydrogen-shot(外部リンク)新しいウィンドウで開きます

[5] Loan Programs Office Department of Energy
https://www.energy.gov/lpo/loan-programs-office(外部リンク)新しいウィンドウで開きます

[6] Environmental Justice Environmental Protection Agency
https://www.epa.gov/environmentaljustice(外部リンク)新しいウィンドウで開きます

[7] U.S. coal-fired generation declining after brief rise last year
https://www.eia.gov/todayinenergy/detail.php?id=54419(外部リンク)新しいウィンドウで開きます

[8] REPowerEU: Joint European action for more affordable, secure and sustainable energy, European Commission, March 8, 2022.
https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_22_1511(外部リンク)新しいウィンドウで開きます

[9] EU Emissions Trading System(EU ETS)
https://climate.ec.europa.eu/eu-action/eu-emissions-trading-system-eu-ets_en(外部リンク)新しいウィンドウで開きます

[10] Important Project of Common European Interest(IPCEI)
https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_22_5676(外部リンク)新しいウィンドウで開きます

[13] White House alarmed that Commerce probe is “smothering” solar industry
https://www.washingtonpost.com/business/2022/05/07/auxin-solar-projects-frozen/(外部リンク)新しいウィンドウで開きます

[14] President Trump Approves Relief for U.S. Washing Machine and Solar Cell Manufacturers January 22, 2018
https://ustr.gov/about-us/policy-offices/press-office/press-releases/2018/january/president-trump-approves-relief-us(外部リンク)新しいウィンドウで開きます

[15] IEA World Energy Outlook 2022
https://www.iea.org/reports/world-energy-outlook-2022(外部リンク)新しいウィンドウで開きます

[16] Distribution of hydrogen consumption in the United States in 2020, by sector
https://www.statista.com/statistics/1179429/us-hydrogen-consumption-share-by-sector/(外部リンク)新しいウィンドウで開きます

[17] 水素エネルギーシステム Vol.33, No.2(2008) 新妻拓弥著 製油所での水素の製造と利用
https://www.hess.jp/Search/data/33-02-026.pdf(外部リンク)新しいウィンドウで開きます

[18] Air Products and Chemicals, Inc.
https://www.airproducts.com/(外部リンク)新しいウィンドウで開きます

[19] EU taxonomy for sustainable activities, European Commission
https://finance.ec.europa.eu/sustainable-finance/tools-and-standards/eu-taxonomy-sustainable-activities_en(外部リンク)新しいウィンドウで開きます

[20] Cap-and-Trade Program, California Air Resources Board
https://ww2.arb.ca.gov/our-work/programs/cap-and-trade-program(外部リンク)新しいウィンドウで開きます

以上

(この報告は2022年11月15日時点のものです)

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