ページ番号1009555 更新日 令和4年11月30日

米国はベネズエラに対する制裁を一部緩和、Chevronに原油生産と米国向け輸出を許可

レポート属性
レポートID 1009555
作成日 2022-11-30 00:00:00 +0900
更新日 2022-11-30 14:10:18 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 市場探鉱開発
著者 舩木 弥和子
著者直接入力
年度 2022
Vol
No
ページ数 5
抽出データ
地域1 中南米
国1 ベネズエラ
地域2
国2
地域3
国3
地域4
国4
地域5
国5
地域6
国6
地域7
国7
地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 中南米,ベネズエラ
2022/11/30 舩木 弥和子
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概要

米国財務省外国資産管理局(Department of the Treasury’s Office of Foreign Assets Control:OFAC)は2022年11月26日、ベネズエラに対する経済制裁を一部緩和し、Chevronに対して2023年5月26日までベネズエラで原油と石油製品を生産することを許可した。生産された原油の米国向け輸出も許可され、希釈剤等を米国から輸入することも認められた。ただし、PDVSAは石油輸出による売却益を受け取ることはできず、収益はChevronに対する債務の返済に充てられる。

米国は、ベネズエラ与野党間の協議が再開され、両者が、凍結されていた資金を人道的な支援とインフラ整備に使うことや、2024年の大統領選挙実施に向けて協議を継続することで合意したことから、Chevronの事業再開を認めたとされている。

しかし、ベネズエラの探鉱・開発部門は、施設の修理、人材の確保、停電や盗難への対応等解決すべき多くの問題に直面している。そのため、短期的には原油生産量が大きく増加する可能性は低く、原油価格の緩和にすぐに役立つことはないだろうとの見方が大勢を占めている。

 

1. 米国は対ベネズエラ制裁を一部緩和、Chevronにベネズエラでの原油生産を許可

米国財務省外国資産管理局(Department of the Treasury’s Office of Foreign Assets Control:OFAC)は2022年11月26日、一般許可証41号(General License No. 41:GL41)を発行、ベネズエラに対する経済制裁を一部緩和し、Chevronに対して2023年5月26日までの6ヶ月間、ベネズエラで原油と石油製品を生産することを許可するとした。Chevronは新たに掘削を行うことは認められていないが、油田の補修やメンテナンスを行うことは可能となる。また、Chevronとベネズエラ国営石油会社PDVSAとの合弁事業により生産された原油の米国向け輸出も許可され、希釈剤等を米国から輸入することも認められた。GL41は毎月1日に自動更新され、有効期間終了後に更新することも可能であるが、Maduro政権が野党側との協議を誠実に行わない場合、米国はいつでも許可を取り消したり、修正したりする用意があるとしている。またGL41は、ベネズエラにおけるChevronの合弁事業に関する活動のみを許可し、PDVSAとのその他の活動を許可しないことが強調されており、PDVSAは石油輸出による売却益を受け取ることはできず、収益はChevronに対する過去の債務の返済に充てられる。大手サービス会社Halliburton、Schlumberger、Baker Hughes、Weatherfordもベネズエラで作業を再開することが認められた。OFACは、ベネズエラに再進出する可能性のある他の石油会社にも門戸を開く可能性があるとしている。

 

2. 経済制裁一部緩和までの経緯

米国は、2018年5月に実施されたベネズエラ大統領選挙は野党を排除して行われており、Maduro政権は適正な選挙を経ていない「非正統」であるとしてきた。そして、ベネズエラ憲法に基づいてJuan Guaido氏こそがベネズエラの暫定大統領であるとして承認、支持している。米国は、Maduro政権への資金流入を阻止し、民主的な選挙で選ばれた政権にベネズエラの石油産業を引き渡せるよう保護するとともに、Maduro大統領が石油産業を運営することを困難にすることを狙って、2019年1月28日にベネズエラの国営石油会社PDVSAを経済制裁の対象に指定した。

米国は制裁緩和の条件として、Maduro政権が2024年のベネズエラの大統領選挙で公正な選挙を実施するための話し合いを野党側と始めることとしてきた。与野党の対話は2021年8月に始まった。しかし、マネーロンダリングなどの容疑で米国の司法当局に訴追されたMaduro大統領に近い実業家が、イランに向かう途中で立ち寄ったアフリカ西部沖合の島国、ガ―ボベルデ共和国政府により米国に引き渡されたことに抗議し、Maduro大統領は同年10月にこの協議を停止した。

2022年5月中旬に、米国が対ベネズエラ制裁の一部緩和に動いた(ChevronとMaduro政権の協議再開を一時的に認めた)ことから、Maduro大統領は野党側との協議を再開するとし、米国は、この協議の進展次第では、制裁を大幅に緩和する可能性があるとしていた。

ただし、協議はすぐに再開されず、OFACは5月27日、Chevronおよび大手サービス会社に、資産維持や設備のメンテナンス等のみを許可するという2020年に付与したのと同条件で、2022年12月1日までベネズエラで活動することを認めた。

Chevronは、8月にベネズエラでの事業の契約更新についてPDVSAと合意し、米国に出資比率引き上げ等を含む事業ライセンスの延長を要請した。しかし、その後、協議再開や制裁緩和に向けての動きが停滞したことから、米国は、中間選挙後に、ベネズエラとの協議をまとめようとタイミングを推し測っており、Chevronが要求する許可が与えられるのは2023年になるのではないかとの見方も出ていた。

そのような中、ノルウェー外務省の仲介により、11月26日にメキシコシティでベネズエラ与野党の協議が再開された。両者は、国連が管理するプログラムのもと、制裁により凍結されていた数十億ドルの資産を教育や健康、食料安全保障、洪水対策などの人道的な支援とインフラ整備に使うことに合意し、また、2024年の大統領選挙実施に向けて協議を継続することでも合意した。

米国は、これによりベネズエラ与野党間の協議が進展したと判断し、Chevron等の事業再開を認めとされている。

なお、米国は、EniとRepsolに未払い債務や配当の決済手段として欧州への原油出荷再開を許可しており、すでに欧州への原油輸出が行われている。

 

3. ベネズエラの原油生産への影響

2015年まで日量250万バレル程度で推移していたベネズエラの原油生産量は、2016年に石油サービス会社が、支払いが行われていないことを理由にベネズエラでの操業を縮小したことで減少を始めた。これがさらに減少するきっかけになったのが、2019年1月のPDVSAに対する米国制裁と同年3月のベネズエラ国内での大規模停電である。一旦は日量50万バレルを切る水準まで減少していたベネズエラの原油生産量であるが、2021年第4四半期にはイランからコンデンセートが供給されたことで急回復し、日量88万バレルとなった。2022年に入ってからは、イランからのコンデンセートの供給、停電、事故、火災の発生、資機材の不足、盗難の頻発、原油輸出の滞りとそれに伴う在庫等の状況により、日量70万バレルを挟んで増減を繰り返しており[1]、2022年10月の原油生産量は日量71万バレルとなっている。

図1 ベネズエラの原油生産量推移(単位:日量万バレル)
図1 ベネズエラの原油生産量推移(単位:日量万バレル)
IEAを基にJOGMEC作成

米国は、対ベネズエラ政策を転換し、Chevronにベネズエラでの原油生産を許可し、さらに、ベネズエラに再進出する可能性のある他の石油会社にも門戸を開く可能性があるとしたが、この決定はベネズエラの原油生産に、ひいては世界の原油供給量にどの程度影響を及ぼすのだろうか。Chevronは、2021年11月に、数カ月以内にベネズエラの原油生産量を日量80万バレルから倍増させることに貢献できるとして、ベネズエラでの生産を拡大できるように制裁を緩和するよう米国議会でロビー活動を開始した。果たして、そのように原油生産量を増やすことは可能なのであろうか。

2021年第4四半期に原油生産量を急回復させるにあたり、PDVSAは最大限の努力で破損した生産設備やパイプライン等の修復にあたったとされる。しかし、その後もこれらの設備の破損や停電などの問題は続いている。

さらに、Maduro政権の失政や米国による制裁の影響で経済破綻に陥ったベネズエラからは700万人が避難したと伝えられているが、技術力のある石油関連の技術者、労働者はベネズエラ国外に移り住んでも、職を見つけることが比較的容易で、その多くが流出したと伝えられている。

また、米国による制裁が強化される中でPDVSAはパートナーへの支払いを禁じられた。その結果、Chevronや合弁事業の他のパートナーに2年以上にわたり石油販売収入のシェアを支払っていない。Chevronは、ベネズエラへ新たな投資を行う前に、PDVSAから40億ドル以上の負債を回収することを希望しており、その債務の回収には2年から3年かかる可能性があるという。

加えて、前述した通り、Maduro政権と野党の間の協議が進展しなかったり、合意に至らなかったりした場合には、Chevronにベネズエラでの原油生産を認める許可が取り消される可能性もある。

Chevronについて考えてみても、技術力や経験のある人材を確保し、壊れた生産設備やパイプラインの修理にあたり、老朽化した油田の技術的な問題を解決し、停電や盗難に対応、負債を回収する必要がある。さらに、生産された原油を米国以外の市場に供給しようとした場合、米国の制裁にも対処しなくてはならない。

このような状況から、米国がChevronのベネズエラでの原油生産を認めたところで、短期的には原油生産量が大きく増加する可能性は低く、原油価格の緩和にすぐに役立つことはないだろうとの見方が大勢を占めている。米国の制裁以前に、ChevronはPDVSAとの合弁事業で日量、約20万バレルの原油を生産、輸出していたが、Chevronが原油生産をこの水準まで回復させるには、少なくとも1年かかると見る向きが多い。ベネズエラの政治リスクおよび石油アナリストで、以前、同国の石油産業に従事していたJosé Chalhoub氏は、ベネズエラの原油生産を回復させるには500億ドルの投資が必要で、Chevronは今後半年ほどで日量2万バレルから日量3万バレルほど増産するかもしれないとしている[2]

図2 Chevronが権益を保有するベネズエラのプロジェクト
図2 Chevronが権益を保有するベネズエラのプロジェクト
Chevronのwebsiteを基にJOGMEC作成
 

[1]石油・天然ガス資源情報:ベネズエラ:原油生産の状況と増産の可能性 ―昨今のウクライナ情勢を踏まえて―
https://oilgas-info.jogmec.go.jp/info_reports/1009226/1009356.html

[2]BNamericas, 2022/11/28

 

以上

(この報告は2022年11月30日時点のものです)

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