ページ番号1009560 更新日 令和4年12月9日

原油市場他:OPEC及び一部非OPEC(OPECプラス)産油国が2022年11月から2023年12月にかけての原油生産目標を2022年10月比で日量200万バレル削減する方針を維持する旨決定(速報)

レポート属性
レポートID 1009560
作成日 2022-12-05 00:00:00 +0900
更新日 2022-12-09 08:31:16 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 市場
著者 野神 隆之
著者直接入力
年度 2022
Vol
No
ページ数 14
抽出データ
地域1 グローバル
国1
地域2
国2
地域3
国3
地域4
国4
地域5
国5
地域6
国6
地域7
国7
地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 グローバル
2022/12/05 野神 隆之
Global Disclaimer(免責事項)

このウェブサイトに掲載されている情報はエネルギー・金属鉱物資源機構(以下「機構」)が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、機構が作成した図表類等を引用・転載する場合は、機構資料である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。機構以外が作成した図表類等を引用・転載する場合は個別にお問い合わせください。

※Copyright (C) Japan Organization for Metals and Energy Security All Rights Reserved.

PDFダウンロード842.4KB ( 14ページ )

概要

  1. OPEC及び一部非OPEC(OPECプラス)産油国は2022年12月4日に閣僚級会合を開催し、前回の閣僚級会合で決定した、2022年11月から2023年12月にかけ原油生産目標を2022年10月比で日量200万バレル削減する旨の方針を維持することで合意した。
  2. 次回のOPECプラス産油国閣僚級会合は2023年6月4日に開催される予定である。
  3. 中国の新型コロナウイルス感染者数が史上最多に到達したこと等により、前回のOPECプラス産油国閣僚級会合開催直前の10月3日には1バレル当たり83.63ドルであった原油価格(WTI)は下落傾向となり、11月25日には76.28ドルと2022年1月3日以来の低水準に到達した。
  4. また、2022年第2四半期から2023年第2四半期にかけては、世界石油市場は供給過剰となるか、供給不足となるにしても限定的な規模にとどまるものと予想される他、中国での新型コロナウイルス感染拡大に伴う経済減速と石油需要の伸びの鈍化懸念が市場で拡大すれば、原油価格がさらに下振れするリスクを抱えていた。
  5. このような要因を考慮すれば、今後減産措置強化を実施することにより、石油市場関係者間で引き締まり感を醸成させるのが、従来のOPECプラス産油国の姿勢だったものと考えられる。
  6. しかしながら、中国で新型コロナウイルス感染抑制措置緩和の兆しが見られ始めたことに加え、12月5日には欧州連合(EU)によるロシア産原油購入(海上輸送分)の原則禁止の実施、及び主要7ヶ国政府(G7)とEU等によるロシア産石油に対する事実上の販売価格上限の設定が予定されるなど、不透明要因が複数存在したため、これら要因の原油価格への影響を見極めるべく、今回のOPECプラス産油国閣僚級会合においては、従来の減産措置方針を維持することにしたものと考えられる。
  7. ただ、今後の石油市場の展開具合によっては、原油相場に下方圧力が加わるといった事態が発生することも排除しきれなかったことにより、必要であれば、いつ何時でも会合を開催し、先制的かつ積極的に追加方策を実施する用意がある旨今次閣僚級会合で表明しており、これにより原油相場の不安定化を回避しようとしたものと見られる。
  8. 今回の閣僚級会合において日量200万バレルの減産措置を維持する旨合意したものの、必要に応じてさらなる対応を行う方針である旨表明されたことにより、市場での石油需給緩和感の醸成が抑制された一方、中国の新型コロナウイルス感染抑制策緩和による同国経済及び石油需要の回復に対する期待が市場で増大した他、12月5日にEUによるロシア産原油購入(海上輸送分)の原則禁止が実施されること、そして12月5日に実施が予定されるG7及びEU等によるロシア産石油販売価格上限の事実上の設定につき、石油販売価格上限を設定する国等に対しては石油供給を停止する方針である旨ロシアが12月4日に示唆したこともあり、日本時間12月5日朝の原油相場には上方圧力が加わっており、午前8時30分現在原油価格は1バレル当たり80.70ドル(前週末終値比同0.70ドル上昇)近辺で推移している。

(OPEC、IEA、EIA他)

 

1. 協議内容等

  1. 2022年12月4日にOPEC及び一部非OPEC(OPECプラス)産油国は閣僚級会合を開催し、10月5日に開催された前回のOPECプラス産油国閣僚級会合において決定された、2022年11月から2023年12月にかけてのOPECプラス産油国の原油生産目標を2022年10月比で日量200万バレル削減する旨の方針を維持することで合意した(表1及び巻末参考1参照)。

表1 OPECプラス産油国の減産幅

  1. 当初今次閣僚級会合は対面形式で開催する予定であったものの、11月30日にテレビ会議形式での開催に変更された他、同閣僚級会合は20分程度で終了した。
  2. さらに、生産目標の完全遵守に固執すること、及び(これまで生産目標を達成できていない産油国が追加生産計画を速やかに提出したうえで2023年3月31日に向け)生産目標を完全に達成する(ために追加減産等を含め生産を調整する)ことが極めて重要であることを当会合で再確認した。
  3. 次回のOPECプラス産油国閣僚級会合は2023年6月4日に開催される予定である。
  4. ただ、積極的かつ先制的な手法に固執しつつ、減産措置参加産油国は、必要であれば、市場における問題を解決し石油市場の均衡を支援するために、いつ何時でも会合を開催し、即時追加方策を実施する用意があることを再確認した。
  5. また、OPECプラス産油国共同閣僚監視委員会(JMMC: Joint Ministerial Monitoring Committee)を2023年2月1日に開催する旨決定したとされる(市場の動向により必要とされる場合にOPECプラス産油国閣僚級会合を含めた追加の会合を開催する権利をJMMCに付与する旨10月5日に開催されたOPECプラス産油国閣僚級会合で決定していた)。
  6. なお、通常OPECプラス産油国閣僚級会合開催前に開催される予定であるOPECプラス産油国共同技術委員会(JTC: Joint Technical Committee)は今般12月2日に開催される予定であったが、取消となったとされる(理由は明らかになっていない)。
  7. また、今回の閣僚級会合及び閣僚級会合開催前日の12月3日にテレビ会議形式で実施されたOPEC産油国による会合においては、12月2日に主要7ヶ国政府(G7)及びEU等の間で合意した、12月5日からのロシア産石油に対する1バレル当たり60ドルの販売上限価格の設定については、議論されなかったものと12月4日に伝えられる。
  8. さらに、OPECプラス産油国関係者は、ロシア産石油に対する販売価格上限の設定の石油市場への影響については判然としない旨明らかにしたと12月4日に報じられる。
  9. 他方、10月5日に開催された前回の閣僚級会合時に比べ原油価格が下落していることもあり、今次会合においてOPECプラス産油国が減産措置をさらに強化するのでなければ、OPECプラス産油国に対し不満を述べることはない旨米国政府関係者は明らかにしていたと12月4日に伝えられる。

 

2. 今回の会合の結果に至る経緯及び背景等

  1. 9月5日に開催された前々回のOPECプラス産油国閣僚級会合においては、10月の原油生産目標を前月比で日量10万バレル引き下げる旨決定されたが、それ以降、米国等での夏場ドライブシーズンに伴うガソリン需要期終了による季節的なガソリン需給の緩和感が石油市場で増大したことが、原油相場に下方圧力を加えた(図1参照)。

図1 原油価格の推移(2022年)

  1. また、9月20~21日に開催された米国連邦公開市場委員会(FOMC)において0.75%の政策金利の引き上げが決定された他、FOMC開催後の記者会見で米国連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が、物価上昇沈静化のため経済成長がある程度犠牲になる恐れがある旨明らかにしたことや、その他の米国金融当局関係者も積極的な金融引き締め政策推進を支持する旨示唆したことにより、米ドルが上昇したり、金融引き締め政策推進による経済減速懸念から米国株式相場が下落したりしたことでも、原油価格は押し下げられた。
  2. さらに、9月22日に英国等の中央銀行が政策金利引き上げを発表したことにより、世界的な景気後退発生に対する不安感が市場で拡大したこと等でも、原油価格は下落した。
  3. このようなことから、前々回の閣僚級会合開催直前の9月2日に1バレル当たり86.87ドルの終値であった原油価格(WTI)は9月26日には同76.71ドルの終値と、ロシアによるウクライナへの事実上の侵攻開始(2月24日)以前である2022年1月3日(この時の終値は同76.08ドル)以来の低水準に到達する場面も見られた。
  4. そのような原油相場下落の兆候に対しOPECプラス産油国による原油価格下落防止のための行動が後手に廻るようだと、OPECプラス産油国が原油価格下落に対し寛容な姿勢を示していると市場に受け取られるとともに、石油需給緩和を巡る市場心理が強まるとともに、原油価格下落の勢いが増すことにより、そうなった段階でOPECプラス産油国が減産措置の強化等原油価格の持ち直しのための行動を開始したとしても、原油価格の制御が困難となる恐れがあった。
  5. 併せて、原油価格の下落により、特にロシアを初めとする原油生産拡大余地の少ないと見られる産油国を含めOPECプラス産油国の原油収入減少懸念が同産油国間で増大した。
  6. このようなことから、10月5日に開催されたOPECプラス産油国閣僚級会合においては、前月比で日量200万バレルの原油生産目標削減を決定することにより、OPECプラス産油国は先制的に市場での石油需給引き締まり感の醸成とともに原油価格の持ち直しを図ろうとしたものとしたもの見られる。
  7. 前回のOPECプラス産油国閣僚級会合以降11月上旬頃にかけての石油市場においては、10月11日に国際通貨基金(IMF)が2023年の世界経済成長率見通しをそれまでの2.9%から2.7%へと下方修正した旨発表したことに加え、中国での新型コロナウイルス感染抑制のための都市封鎖を含む個人の外出規制及び経済活動制限措置を強化する動きが見られたことが、原油相場に下方圧を加えた反面、中国の新型コロナウイルス感染抑制策緩和の兆候が見られたことや、米国消費者物価指数(CPI)の伸びが鈍化したことに伴う、同国金融当局関係者による政策金利引き上げペースの減速観測等が原油相場に上方圧力を加えたことにより、原油価格は1バレル当たり80ドル台後半~90ドル台前半の比較的限られた範囲で変動した。
  8. しかしながら、11月中旬に入ると、中国における新型コロナウイルス感染拡大が報告され続けたことにより、11月25日の原油価格の終値は1バレル当たり76.28ドルと9月26日の終値をも下回る状況となった他、中国の新型コロナウイルス感染者数が11月27日時点で40,347人の史上最高水準に到達した旨11月28日に同国国家衛生健康委員会が発表したこともあり、同国経済減速と石油需要の伸びの鈍化懸念が市場で増大したことが、原油相場にさらなる下方圧力を加えたことから、11月28日夜半過ぎ(米国東部時間)に原油価格は一時1バレル当たり73.60ドルと、2021年12月27日の取引日に到達した安値(1バレル当たり72.57ドル)以来の低水準に到達する場面も見られるなど、原油価格の下落傾向が顕著となる兆候が見られた。
  9. 加えて、12月4日に開催される予定のOPECプラス産油国閣僚級会合において、最大日量50万バレルの増産を検討している旨11月21日にウォール・ストリート・ジャーナルが報じたことにより、同日の原油価格が一時前日終値比で1バレル当たり5.00ドル下落する場面も見られた。
  10. これに対し、サウジアラビアのアブドルアジズ エネルギー相は当該報道を否定したうえ、日量200万バレルの減産措置は2023年12月まで実施される他、必要であれば減産を強化する旨11月21日に表明した(その後UAE、クウェート及びアルジェリアも増産協議実施を否定した)ことにより、11月21日の原油価格は上昇に転じ、この日の終値は前日終値比で1バレル当たり1.22ドルの上昇へと持ち直した。
  11. このようなことから、中国の新型コロナウイルス感染状況によっては、原油価格はさらに下落し続ける恐れがある他、それほど大規模ではない増産の情報が流れただけでも原油相場が急落する場面を見せるなど、世界石油需給バランスを巡る市場心理が脆弱である旨示されたこともあり、サウジアラビアを初めとするOPECプラス産油国としては、原油価格の下落を防止すべく、むしろ先制的に市場での石油需給引き締まり感の醸成を図る必要があることが示唆された。
  12. 11月24日には、サウジアラビアのアブドルアジズ エネルギー相とイラクのアブデルガニ エネルギー相が会談し、その後両エネルギー相は、OPECプラス産油国の減産措置遵守を重要視するとともに、石油市場の均衡と安定達成のため、必要であればさらなる方策を実施する能力がある旨の共同声明で発表したと同日夕方(米国東部時間)に伝えられたことも、原油価格下落防止のために、サウジアラビアを初めとするOPECプラス産油国が対応を迫られていることを想起させる格好となった。
  13. このように、原油価格が下落する可能性を示す兆候が見られる場合、ウクライナへの事実上の侵攻に伴う、西側諸国等による制裁や評判リスクを懸念する西側諸国等によるロシア産石油購入の敬遠等により、石油販売が伸び悩むロシアを含め、原油生産拡大に苦慮するOPECプラス産油国に配慮し、収入を確保すべく原油価格の持ち直しを企図して減産措置を強化することが、サウジアラビアを初めとするOPECプラス産油国の従来の行動様式であった
  14. また、既に2022年第2四半期及び2022年第3四半期の世界石油需給はそれぞれ日量10万バレル及び日量66万バレルの供給過剰となったものと推定される(表2参照)。

表2 世界石油需給バランスシナリオ(2022年)(2022年12月4日OPECプラス産油国閣僚級会合開催時点)

  1. さらに、今後OPECプラス産油国の減産可能性の実情に併せ、中東湾岸OPEC産油国を中心に日量100万バレル程度の追加減産を2022年11月から2023年12月にかけ実施した(「日量200万バレル減産を強化する」旨前回のOPECプラス産油国閣僚級会合で決定されているが、既に原油生産目標を相当程度下回る水準でしか生産できていない産油国も複数あることから、実際の減産量は発表した水準の半分程度の規模になるものと見られる)場合、2022年第4四半期は世界石油供給が需要を日量39万バレル上回る他、次回OPECプラス産油国閣僚級会合が開催され、さらなる原油生産方針が決定されるまでの期間、即ち2023年前半においては、世界石油需要が供給を上回るもののその幅は日量2~40万バレルと限定的なものであると見られる(表3参照)。

表3 世界石油需給バランスシナリオ(2023年)(2022年12月4日OPECプラス産油国閣僚級会合開催時点)

  1. その結果、2022年第2四半期から2023年第2四半期にかけ世界石油市場が日量15万バレル程度の供給過剰になると見られることから、今回のOPECプラス産油国閣僚級会合においては、大規模なものではなくても減産措置強化を発表する(但し、前述の通り実際には目標を下回って原油を生産する産油国が複数あることから、発表する減産措置の規模は実際に望まれる減産規模の倍程度にすることが望ましいものと考えられる)ことが、原油価格の持ち直しのためには有効であるものと思われた。
  2. しかしながら、11月30日に中国広東省広州市及び河南省鄭州市において新型コロナウイルス感染抑制策が緩和されたうえ、新型コロナウイルスオミクロン変異株の感染力が相対的に弱い他、ワクチン接種が進展していること等により、中国の新型コロナウイルス感染対策は新たな段階に入っている旨11月30日に同国の孫春蘭副首相が示唆した他、中国で感染が流行している新型コロナウイルスによる死亡率は低水準である旨同国の習近平国家主席がEUのミッシェル大統領に対し明らかにしたと12月2日午後遅く(米国東部時間)報じられるなど、中国で新型コロナウイルス感染抑制方針に変化の兆しが見られ始めた。
  3. また、12月5日には欧州連合(EU)によるロシアから海上輸送経由で販売される原油購入の原則禁止の実施が予定される他、G7が提案しEUが検討していた、ロシア産石油に対し1バレル当たり60ドルの事実上の販売価格上限を設定することにつき、12月2日にEUが合意したことにより、12月5日にG7及びEU等による事実上のロシア産石油価格上限設定措置が実施に移される運びとなった。
  4. このため、今後明確になるものと見られる中国の新型コロナウイルス感染抑制策、及び西側諸国等によるロシア産石油販売価格に対する事実上の上限設定等の対ロシア制裁の実施により、原油価格が持ち直すのであれば、敢えてOPECプラス産油国による原油生産調整策は必要にならないものと見られることから、これらの要因の原油価格への影響を見極めるべく、今回のOPECプラス産油国閣僚級会合においては、従来の減産措置方針を維持することにしたものと考えられる。
  5. ただ、今後の石油市場の展開具合によっては、原油相場に下方圧力が加わる、もしくは加わる兆候が見られるといった事態の発生も排除しきれないことにより、必要に応じて遅滞なくOPECプラス産油国閣僚級会合を含む協議の場を設け、さらなる原油生産方針を検討、決定及び実施する旨併せて表明することにより、原油相場の不安定化を回避しようとしたものと見られる。

 

3. 原油価格の動き等

  1. 今回の閣僚級会合において、2022年11月から2023年12月にかけ2022年10月比で日量200万バレルの減産措置を維持する旨合意したものの、必要に応じて減産措置の強化等を含めさらなる対応を行う方針である旨示唆されたことにより、石油需給の緩和感の醸成が市場では抑制された格好となった。
  2. また、12月5日を以てロシアから海上輸送経由で販売される原油の購入をEUが原則禁止することに加え、同じく12月5日よりロシア産石油販売価格に上限を設定する旨のG7及びEU諸国等による制裁が実施される方向である一方、ロシア産石油販売価格に上限を設定する国等に対しては、如何なる水準の価格上限であろうと、ロシア産石油の販売を禁止する方向で検討している旨12月4日にロシアのノバク副首相が明らかにした。
  3. さらに、中国で感染が流行している新型コロナウイルスによる死亡率は低水準である旨中国の習近平国家主席がEUのミッシェル大統領に対し明らかにした旨12月2日午後遅く(米国東部時間)に報じられたことにより、同国の新型コロナウイルス感染抑制策の緩和に対する期待が市場で広がった。
  4. 加えて、これまで公共交通機関及び屋外の施設の利用に際し義務付けられていた新型コロナウイルス感染検査を12月5日より取り止める旨12月4日に上海市が発表した他、他の都市でも同様の新型コロナウイルス感染抑制策の緩和が実施されつつある旨12月4日に伝えられたことにより、中国において、より自由な個人の外出及び経済活動が促進されるとともに、同国の経済及び石油需要の回復観測が市場で増大した。
  5. このようなこともあり、日本時間12月5日朝の原油相場には上方圧力が加わっており、同日午前8時30分現在原油価格は1バレル当たり80.70ドル(前週末終値比同0.70ドル上昇)近辺で推移している。
  6. 今後はまず、12月5日に実施が予定される、G7及びEU等によるロシア産石油販売価格に対する事実上の上限設定に対する、ロシアによる対抗措置としての、さらなるロシア産石油供給の停止、及び、同じく12月5日に実施される予定である、EUによるロシアから海上輸送経由で販売される原油購入の原則禁止により、それまで同国産石油の主要供給先であった欧州からアジア等他の地域へ石油供給先が変更されることに対し、世界の石油流通がどの程度円滑に平準化されていくか、ということが、注目点となるであろう。
  7. この先ロシアからの欧州諸国等への石油供給が減少する反面、中国、インド等を含む消費国がより多くのロシア産原油等を引き取る一方、従来中国やインド等が購入していた非ロシア産石油を両国等が引き取らなくなることにより、そのような石油が円滑に欧州諸国等に向かうようであれば、原油相場の乱高下は短期間かつ小規模なものにとどまる可能性があるものと考えられる。
  8. しかしながら、ロシア産石油供給先が変更されることに伴う世界の石油流通の平準化の過程において、例えば船舶に対する保険付保を含む輸送サービス等の面で支障が発生することも否定しきれない。
  9. また、大西洋圏のロシア港湾から欧州への石油輸送に要する期間は数日~数週間程度であったが、中国及びインドに仕向地が変更されれば、輸送期間は数週間~1ヶ月超程度へと長期化することから、石油タンカーはより長期間石油を積載した状態のままとなることにより石油輸送を巡る効率が低下するとともに、新たに石油を積載するために利用可能なタンカー数が減少する結果、タンカー運賃が上昇することにより、石油の円滑な流通に支障が生じることも想定されうる。
  10. このため、地域によっては石油需給の引き締まり感が強まることにより、原油相場が乱高下する場面が見られることも予想される。
  11. さらに、ロシア産石油供給先変更に伴う世界の石油流通平準化が円滑に進むかどうかを巡り不透明感が強いことに伴い、石油需給引き締まり懸念が市場で発生する結果、原油相場が上昇する場面が見られることもありうる。
  12. 他方、北半球では既に冬場の暖房シーズンに突入しているが、これに併せ、暖房用石油製品需要が拡大、製油所も秋場のメンテナンス作業を終了し稼働を上昇、原油精製処理量を増加させるとともに原油購入を活発化させるとの観測が市場で増大しつつあり、このような市場での季節的な需給引き締まり感の醸成が当面暖房用石油製品価格とともに原油相場を下支えするものと考えられる。
  13. また、米国の暖房油消費の中心地である北東部等における気温や気温予報に対しても市場関係者は敏感に反応するものと見られ、当該地域において足元の気温が低下したり、気温が低下するとの予報が発表されたりするようだと、需給の引き締まり感が市場で強まる結果、暖房油価格が上昇、それに引きずられて原油価格に上方圧力が加わる可能性がある。
  14. また、これまで気温が比較的高かった欧州では気温が低下しつつあり、暖房用の天然ガス需要が喚起される一方で、ロシアから欧州に向けたパイプライン経由での天然ガス供給が大幅に落ち込んでいることもあり、天然ガス需給の引き締まり感が市場で増大するとともに天然ガス価格が上昇しやすい状況となっている。
  15. 既に12月2日の時点でオランダTTF天然ガス先物価格は100万Btu当たり推定41.855ドル(原油換算1バレル当たり251ドル)に到達するなど原油価格と比較しても相当程度高い水準となっており、今後もこのような水準が維持されるか、一層価格が上昇するといった展開となるようであれば、天然ガスから石油への燃料転換が促進されるとの観測が市場で発生する結果、原油相場に上方圧力が加わる可能性もある。
  16. 他方、11月14日にEU外相は、スカーフ(ヘジャブ)を適切に着用していなかったとして風紀警察が女性を拘束した後その女性が死亡したことをきっかけとして、イラン国内で発生した抗議活動の弾圧に関与したとの理由により、イランのハビディ内相及び革命防衛隊幹部を含む29人及び3団体に対し、EU域内資産凍結とEUへの渡航禁止を内容とする制裁を発動することで合意した(同日発効)が、これに対し、11月15日にイラン外務省は、発動した制裁措置は根拠がなく、違法行為であるとして、非難した。
  17. また、イランのライシ政権によるロシアに対する無人機供与と前述の抗議活動弾圧のため、イラン核合意正常化に向けた西側諸国等とイランとの間での協議妥結に向けた関心が低下している旨11月14日に米国のマレー・イラン担当特使は示唆した。
  18. さらに、11月15日には、米国財務省が、ロシアがウクライナのインフラ施設等への攻撃に使用している無人機の製造等に関与しているとして、イランの軍用機器製造会社であるシャヘド・アビエーション・インダストリーズ・リサーチ・センター、コッズ・アビエーション・インダストリーズ、ロシアの民間軍事企業ワグネル、及びUAEの企業2社に対し、米国内資産凍結及び米国人との取引禁止を内容とする制裁を発動した。
  19. そして、11月16日から3日の予定で実施されたIAEA定例理事会においては、米国、英国、フランス及びドイツがイランの核開発(IAEAに未申告の施設でウランの痕跡が発見されたことに対しイラン側が適切な説明を行っていないこと)を懸念するとともに技術的に妥当な内容の説明を速やかに行うことが重要である旨の事実上の対イラン非難決議案を提出、17日に決議は賛成多数(ロシア及び中国は反対)採択された。
  20. また、イスラエル企業家が運営に関与するとされる石油製品タンカー「パシフィック・ジルコン(Pacific Zircon)」(石油製品積載能力約5万トン、軽油を輸送していたとされる)が、11月15日午後7時半頃(現地時間)、オマーン沖150マイル付近で爆薬を積載した無人機に攻撃された旨11月16日早朝(米国東部時間)に報じられた(人的被害及び原油漏洩はなく、影響は軽微であったと伝えられる)。
  21. これについて、11月16日には米国バイデン政権のサリバン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)が、当該攻撃はイランの無人機によるものである可能性が高い旨の声明を発表した他、11月22日には米国海軍が、当該攻撃に使用された無人機は、ロシアのウクライナへの事実上の侵攻実施に際しイランがロシアに供給したものと同種のものであった旨発表している。
  22. また、イランは2021年4月以降濃縮度60%の濃縮ウランを製造していた同国中部ナタンズの核開発施設に加え、同国中部にあるフォルドゥにある核開発施設においても濃縮度60%の濃縮ウランの製造を開始した旨11月22日に伝えられるなど、イランの核合意逸脱がさらに進んでいることが示唆された。
  23. このように、従来から焦点となっていた、IAEAに未申告であったイラン国内施設でのウラン関連活動の痕跡に対しイランが西側諸国等を満足させるような説明を行っていないことに加え、イランでのスカーフの着用指導に伴う女性死亡をきっかけとして発生した抗議活動の弾圧、ロシアの無人機使用に対するイランからの支援等を巡り、西側諸国等とイランとの対立が高まりつつあるように見受けられる他、イラン核合意正常化を巡る西側諸国等とイランとの協議が比較的順調に進捗しているように見受けられた時点では見られなかった、イラン産石油関連製品の国外供給に関与した企業等に対する米国政府による制裁発動等が、最近は散見されるようになってきていることから、早期にイラン核合意正常化を巡る関係者間での協議が妥結に到達し、米国によるイラン産石油等の輸出に対する制裁が緩和されるとともに、イランからの原油等の供給が増加する可能性は、少なくとも短期的には低下しており、この面における原油相場への下方圧力は加わり難いものと考えられる。
  24. むしろ、オマーン湾沖合において、無人機で石油タンカーが攻撃される事象が発生し、この攻撃はイランが実施したものと米国側に理解されている旨示唆されるが、今後も類似の事例が見られるとともに、中東情勢の不安定化に伴う当該地域からの石油供給途絶懸念が市場で拡大することを通じ、原油相場に上方圧力が加わる場面が見られることもありうる。
  25. 他方、11月23日に明らかになったFOMC議事録(11月1~2日開催分)で、近いうちに政策金利引き上げペース減速の実施が妥当となると複数の同国金融当局関係者が認識していた旨明らかになったうえ、11月10日に米国労働省から発表された10月の同国消費者物価指数(CPI)上昇率が前年同月比7.7%と9月の同8.2%から伸び率が低下した他、市場の事前予想(同8.0%)を下回った。
  26. 加えて、11月30日に行われた講演で、パウエルFRB議長が、早ければ12月13~14日に開催される予定である次回のFOMCにおいて、同国政策金利引き上げペースの減速が決定される可能性がある旨示唆した。
  27. このようなことにより、同国の金融引き締め政策に伴う経済減速懸念等が市場で後退する格好となっていることが、原油相場を下支えするものと見られるものの、なお、政策金利の引き上げ停止時期については明確になっておらず、従って上昇幅は縮小するものの今後もなお当面政策金利は引き上げられる可能性があり、この面で米ドルが上昇するとともに、米国株式相場が下落する結果、原油相場に下方圧力が加わる場面が見られる可能性も残っているため、今後も、パウエルFRB議長を初めとする米国金融当局関係者による、政策金利引き上げペースに加え、政策金利引き上げ終了時期等に関する発言には注目する必要があろう。
  28. 中国では、同国への渡航者の隔離期間を従来の10日間(宿泊施設等で7日、自宅で3日の、それぞれ隔離)から8日間(宿泊施設等で5日、自宅で3日間の、それぞれ隔離)へと短縮する他、濃厚接触者の濃厚接触者(いわゆる「二次接触者」)の特定作業も終了するうえ、航路により新型コロナウイルス感染者を渡航させた航空会社に対し一部の路線の運行停止を義務づける措置を廃止する旨11月11日に同国国家衛生健康委員会が発表したことに加え、新型コロナウイルスオミクロン変異株の感染力が相対的に弱い他、ワクチン接種が進展していること等により、中国の新型コロナウイルス感染対策は新たな段階に入っている旨11月30日に同国の孫春蘭副首相が示唆する等しており、一部都市における新型コロナウイルス感染抑制策緩和の動きと併せ、中国の新型コロナウイルス感染抑制策の緩和への期待が市場で発生しやすくなっていることから、この面で原油相場が下支えされやすいものと見られる。
  29. また、中国においてさらなる新型コロナウイルス感染抑制策緩和の検討の動きが見られたり、実施されたりするようであれば、そのような緩和を通じて同国経済及び石油需要の回復期待が市場で拡大することにより、原油相場に上方圧力が加わる場面が見られることもありうる。
  30. しかしながら、新型コロナウイルス感染者数が増加し続けるようであれば、都市封鎖を含む、個人の外出規制及び経済活動制限の強化を中国当局が実施する結果、中国の経済減速と石油需要の伸びの鈍化懸念が市場で再燃することにより、原油相場に下方圧力を加える可能性もあることから、中国の新型コロナウイルス感染拡大状況と中国保健衛生当局等の対応には注意する必要があろう。
  31. OPECプラス産油国は次回の閣僚級会合を2023年6月4日に開催することとしており、現時点ではそれまでの6ヶ月間程度は閣僚級会合を開催しない予定である。
  32. しかしながら、12月5日にEU諸国がロシアにより海上輸送経由で販売される原油の購入を原則禁止する予定であることや、12月5日に実施される方向であるところの、G7やEU等によるロシア産石油販売に対する事実上の上限価格設定に対するロシアによる石油販売制限の動き、そしてその後の世界石油需給の平準化に向けたプロセス、及び中国の新型コロナウイルス感染拡大状況と同国保健衛生当局の対応等を含め、原油価格を含む石油市場の動向を巡っては不透明感が当面強い状態が継続するものと考えられる。
  33. そして不透明要因の展開次第では、次回OPECプラス産油国閣僚級会合以前の段階で原油価格が乱高下するといった場面が見られることも否定できないものの、仮に石油需給緩和感が市場で広がることにより、原油価格の下落が持続する、もしくは原油価格が急落する、といった兆候が見られた場合、OPECプラス産油国が原油生産を調整すべく速やかに行動しなければ、OPECは原油価格下落抑制への対応が後手に回るとの印象を市場に与える結果、原油価格が下落し続けるとともに、OPECプラス産油国による原油生産調整方策を以てしても原油価格が制御不能な事態に陥ることにより、ロシアを含め増産に苦慮する産油国を中心として原油収入の減少を招く恐れがあることから、そうなる前にOPECプラス産油国は原油価格下落抑制のために先制的に原油生産目標削減に言及する(いわゆる「口先介入」を行う)他、それでも原油価格の下落が抑制されないようであれば、原油生産目標引き下げの検討を実施、そして、6月4日に開催される予定である次回OPECプラス産油国閣僚級会合を待たずして、臨時でのOPECプラス産油国閣僚級会合開催を含め、原油生産目標引き下げ決定のための会合開催の機会を設け、原油生産目標等の再調整を実施する可能性があるものと考えられる。

 

(参考1:2022年12月4日開催OPECプラス産油国閣僚級会合時声明)

34th OPEC and non-OPEC Ministerial Meeting

No 33/2022
Vienna, Austria
4 December 2022

The 34th OPEC and non-OPEC Ministerial Meeting took place by videoconference on Sunday, 4 December 2022.

In line with the decision of the OPEC and non-OPEC Participating Countries in the Declaration of Cooperation at the 33rd OPEC and non-OPEC Ministerial Meeting on 5 October 2022, which was purely driven by market considerations and recognized in retrospect by the market participants to have been the necessary and the right course of action towards stabilizing global oil markets; and adhering to the approach of being proactive and pre-emptive, the Participating Countries reiterated their readiness to meet at any time and take immediate additional measures to address market developments and support the balance of the oil market and its stability if necessary.

The Participating Countries decided to:

  1. Reaffirm the decision of the 10th OPEC and non-OPEC Ministerial Meeting on 12 April 2020 and further endorsed in subsequent meetings, including the 19th OPEC and non-OPEC Ministerial Meeting on 18 July 2021 and the 33rd OPEC and non-OPEC Ministerial Meeting on 5 October 2022, including the adjustment of the frequency of the monthly meetings to become every two months for the Joint Ministerial Monitoring Committee (JMMC) and the authority of the JMMC to hold additional meetings, or to request an OPEC and non-OPEC Ministerial Meeting at any time to address market developments if necessary.
  2. Reiterate the critical importance of adhering to full conformity and compensation mechanism taking advantage of the extension approved on the 33rd OPEC and non-OPEC Ministerial Meeting.
  3. Hold the 35th OPEC and non-OPEC Ministerial Meeting on 4 June 2023.

 

以上

(この報告は2022年12月5日時点のものです)

アンケートにご協力ください
1.このレポートをどのような目的でご覧になりましたか?
2.このレポートは参考になりましたか?
3.ご意見・ご感想をお書きください。 (200文字程度)
下記にご同意ください
{{ message }}
  • {{ error.name }} {{ error.value }}
ご質問などはこちらから

アンケートの送信

送信しますか?
送信しています。
送信完了しました。
送信できませんでした、入力したデータを確認の上再度お試しください。