ページ番号1009569 更新日 令和4年12月14日
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1. 政治・経済情勢
(1) 国内
政治・経済
Russian Energy Week 2022の開催
- 10月12日から14日にかけて、Russian Energy Week 2022がモスクワにおいて、オンラインと対面のハイブリッド方式で開催された。新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて中止された2020年を除き、2017年から毎年開催されており、今回で5回目の開催となる。今回は、83か国以上から3,000人が参加し、合計で70以上のビジネスセッションに270人の講演者が登壇した。同フォーラムのプレスリリースによると、今回初めて、イエメン、ケイマン諸島、ニカラグア、ルワンダ、チャドからの参加があった。同フォーラムは、石油・天然ガス、石炭、石油化学、電力、原子力、水力、再生可能エネルギー等のあらゆる資源エネルギー分野に関する議論を行うことを目的としているが、今回は、「新たな課題、新たな機会:石油・天然ガス市場において何が待ち受けているか?」をテーマとして、地政学的な課題や、欧米諸国によるエネルギー分野の制裁に関する議題が多く取り上げられた。
- 初日の全体会合には、プーチン大統領、ノヴァク副首相、カザフスタン・アクチュラコフ・エネルギー大臣、トルコ・ドンメズ・エネルギー天然資源大臣、ガスプロム・ミレル社長、アゼルバイジャン・シャフバゾフ・エネルギー大臣が出席し、プーチン大統領がスピーチを行った。前回2022年の全体会合では、プーチン大統領が2060年のカーボンニュートラル目標を宣言するなど、脱炭素色を前面に押し出し、欧米石油メジャーの各社CEOも出席していたが、今回、これとは対照的に、国内関係者や友好国中心の参加者で構成され、欧米諸国との対立が反映された会合となった。
- プーチン大統領は、自身のスピーチにおいて、Nord Stream及びNord Stream 2ガスパイプラインへの破壊工作は、国際テロ行為であると批判し、「その背景にはロシアとEUの関係を断ち切り、欧州の政治的主体性を弱体化させ、産業の可能性を弱め、市場を乗っ取ろうとする者がいる」との独自の主張を展開した。また、現在米国が高値でエネルギー資源を供給していることに触れ、「誰が黒幕で受益者であるかは明らかである」と述べた。Nord Stream 2については、1つのパイプラインは正常に機能しており、ロシアはこのパイプラインを通じて、欧州向けに年間27.5BCMの天然ガス供給を開始する用意があるとして、ボールはEU側にあると強調した。更に、Nord Streamの代替ルートとして、トルコを中継地とした供給ルートを構築できると述べ、今後シベリアの力2やSoyuz Vostokパイプラインを通じて、アジア向けのガス輸送インフラも整備していくと伝えた。
- また、欧州が自らの政策において、ロシアからの長期契約での天然ガス供給ではなく、スポット市場におけるガス価格を形成したことにより、今年だけで3,000億ユーロ以上(欧州のGDPの約2%)の損失を被るとし、結果として、欧州の一般市民が約10%のインフレ、約3倍のガス・電力価格を支払っており、中世のように冬に向けて薪を蓄えることになったと批判した。加えて、ロシア産エネルギー資源に対する価格上限の設定により、エネルギー価格を制限する国々に対して、ロシアはエネルギー資源を供給しないと伝えた。
- ガスプロム・ミレル社長は、スピーチ後のディスカッションにおいて、欧州の天然ガス地下貯蔵率が約90%に達していること、同時にLNG供給が十分に行われていることから、冬季ガス需給見通しについて楽観的な見方がなされている点についての評価を問われ、欧州は、2022年から2023年の冬季は乗り切ることができるが、2023年から2024年の冬季についてはわからないと警告した。また、欧州全体の天然ガス地下貯蔵施設の有効稼働ガス量(ワーキングガス量)を考慮に入れる必要があること、冬季のピーク需要が予測を上回る可能性があることは、また別の議論であると述べ、欧州が安価で安定的なロシアからの天然ガス供給を失うことに注意を促した。

写真出典:http://kremlin.ru/events/president/news/69584
一方的に併合したウクライナ4州への戒厳令/その他地域への防衛・緊急事態措置の導入
- プーチン大統領は、10月19日、大統領令第756号に署名し、9月に一方的に併合したウクライナ4州(ドネツク州、ルハンスク州、へルソン州、ザポリッジャ州)において戒厳令を導入した。同大統領令は、即日発効し、翌20日から同4州において適用される。
- また大統領令第757号に署名し、上記戒厳令導入に関連する措置として、上記4州及びロシア連邦構成主体において、4段階の防衛及び緊急事態からの住民・領土の保護措置を導入した。
段階 | 導入地域 | 権限・措置 |
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ロシアが一方的に併合した「ドネツク人民共和国」・「ルガンスク人民共和国」・「ザポロジエ州」・「ヘルソン州」 | 権限:(1)(2)(3)(4)(5) 措置:戒厳令 |
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「クリミア共和国」・ベルゴロド州・ブリャンスク州・ヴォロネジ州・クルスク州・ロストフ州・「セヴァストーポリ市」 | 権限:(2)(3)(4)(5) 措置:A, B, C, D, E, F |
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上記2.以外の中央連邦管区(モスクワ市を含む)、南連邦管区 | 権限:(3)(4)(5) 措置:A, B, E, F |
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上記以外の地域 | 権限:(3)(4)(5) 措置:A, B |
地方行政府の首長が持つ権限 | 地方行政府の首長が行う措置 |
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出典:ロシア大統領府HPをもとにJOGMEC作成
国際輸出フォーラム「Made in Russia–2022」の開催
- 10月20日から22日にかけて国際輸出フォーラム「Made in Russia-2022」が、モスクワにおいて開催された。同フォーラムは、ロシアと外国との間の貿易経済関係の発展を目的として、2012年から開催されている。
- 同フォーラムにおいて、ミシュスチン首相が、20日に開催された全体会合において、「変化の中の経済:新しい輸出地域の創設」をテーマにスピーチを行った。同首相は、冒頭、非友好国による制裁パッケージにより、ロシアの産業界や金融システムが多くの損害を受け、数千億ドルの外貨準備が盗まれ、ガス輸送インフラがテロ攻撃を受けたと批判した。しかし、こうした行動の結果が、最終的には主導者自身に及ぶことになり、現在、西側諸国は記録的な物価上昇に直面し、更に、グリーン技術を誇っていた先進国が、エネルギー源として石炭に回帰しつつあると指摘した。他方で、ロシアは、国内製造業・サービス業の強化、ロジスティクスの再編成に取り組んでおり、後者のロジスティクスについては、これまでグローバル企業8社によりサービスが提供されていたが、同8社のロシア市場撤退により、ロシア企業による独自の輸送ルートの開拓が可能になったと自信を見せた。
- また、オヴェルチュク副首相が、21日開催された会合において、「変化の中のロジスティクス:サプライチェーン及び輸送・ロジスティクスフローの変革」をテーマにオンラインでのスピーチを行った。
- 同副首相は、冒頭、2021年のロシアを経由する中国と欧州間のコンテナのトランジット輸送量は、2019年比で2.3倍に増加した一方、2022年は、欧米諸国によるロシア・ベラルーシに対する制裁の影響で減少したと指摘し、これにより、欧州、米国、日本との間での伝統的な貿易経済関係の縮小に繋がっていると批判した。その上で、ロシアはこれに対抗し、ユーラシア大陸の南に位置する市場との経済・輸送の相互接続を保証するため、カスピ海、中央アジア、シベリア・極東の3つの地域を経由する国際輸送回廊を開発していくと述べた。
- 一つ目の「カスピ海国際輸送回廊」については、ダゲスタン、アゼルバイジャン、イランを繋ぐカスピ海西海岸ルート、カスピ海沿岸の港湾都市を繋ぐ海上ルート、カザフスタン、トルクメニスタン、イランを繋ぐカスピ海東海岸ルートの3ルートが検討されている。一つ目の西海岸ルートについては、ロシアとアゼルバイジャンの国境検問所の近代化を実施しており、車両検問所の近代化及び処理能力の拡大や、デルベント鉄道検問所の開発が進行している。二つ目の海上ルートについては、ヴォルガ川とカスピ海における航路の浚渫工事や、アストラハン港、オリヤ港、マハチカラ港の開発が進行している。最後の東海岸ルートについては、道路と鉄道の建設と近代化が計画されており、2022年にロシアからの最初の列車が、同ルートを通じて、イランに到着したと強調した。
- 二つ目の「中央アジア国際輸送回廊」は、カザフスタン、ウズベキスタン、アフガニスタン、パキスタン、インドを繋ぐルートが予定されている。しかし、ウズベキスタン・テルメズ、アゼルバイジャン・マザーリシャリーフ、パキスタン・ペシャーワルに沿って、アフガニスタンを横切る約600kmの鉄道を建設する必要があり、長期的な構想であることを認めた。
- 三つ目の「シベリア・極東国際輸送回廊」は、モンゴル、中国を繋ぐ鉄道・道路の建設及び近代化である。主にモンゴルが関心を持っており、ロシアとモンゴルの国境にあるナウシキ検問所の再建、中央鉄道回廊の近代化、ザバイカリエ地方と中国の北東部を繋ぐ東部鉄道回廊の建設、トゥヴァ共和国と中国北部を繋ぐ西武鉄道回廊の建設が計画されている。

写真出典:http://government.ru/news/46836/
第19回「ヴァルダイ」会議の開催
- 10月24日から27日にかけて、第19回国際ディスカッション・クラブ「ヴァルダイ」会議が、モスクワにおいて開催された。会議には、アフガニスタン、ブラジル、ドイツ、エジプト、中国、インド、インドネシア、イラン、カザフスタン、米国、トルコ、フランス、ウズベキスタン、南アフリカを含む40か国から111人の専門家、政治家、外交官、経済学者が参加した。
- プーチン大統領は、最終日27日に開催された全体総括会合に参加し、「覇権後の世界:すべての人のための正義と安全保障」をテーマに、スピーチと質疑応答を行った。
- 冒頭スピーチにおいて、西側諸国が、特に直近数か月において、緊迫化に向けたあらゆる行動をとっており、ロシアから発せられるものはすべて、「クレムリンの陰謀」だと主張しているとして、独自の批判を展開した。また西側諸国は、これまで、統合、金融・技術の独占、あらゆる違いの消去の上に、本質的には新植民地主義的な、西側によるグローバル化のモデルを構築してきたが、多極的世界秩序における新たな中心地との間で、共通の未来について、対等な対話を開始せざるを得なくなると強調した。その上で、国際社会における西側諸国の独占的支配の時代、一極的世界は過去のものになりつつあり、今後10年間は、第二次世界大戦以降、最も危険で予測不能であり、同時に重要な歴史的転換点であるとの自身の見解を述べた。

写真出典:http://kremlin.ru/events/president/news/69695
(2) 対外関係
1) CIS諸国
CIS諸国首脳による恒例の非公式会合がサンクトペテルブルクで開催
- プーチン大統領は、自身の誕生日である10月7日、サンクトペテルブルクにおいて、自身の招待に基づき、事実上恒例となっているCIS諸国首脳との非公式会合を開催した。会合には、アゼルバイジャンのアリエフ大統領、アルメニアのパシニャン首相、ベラルーシのルカシェンコ大統領、カザフスタンのトカエフ大統領、タジキスタンのラフモン大統領、トルクメニスタンのベルディムハメドフ大統領、ウズベキスタンのミルジヨーエフ大統領が出席した。
- プーチン大統領は、ロシアとCIS諸国間の貿易額が、2021年に30%以上増加して960億ドルとなり、2022年上半期には7%増加したことを強調した。他方で、ウクライナでの問題に加えて発生しているCIS諸国間での紛争について、解決策の必要性を指摘した。
- また、カザフスタンのトカエフ大統領が、ロシア語を支援し、促進するための国際機関を設立したことに歓迎と感謝の意を表し、2023年を「CIS諸国の国家間コミュニケーション言語としてのロシア語の年」とする同大統領の提案への支持を表明した。

写真出典:http://kremlin.ru/events/president/news/69551
プーチン大統領、カザフスタン主催のCIS首脳会合に対面参加
- プーチン大統領は、10月14日、カザフスタン・アスタナにおいて開催されたCIS首脳会合に出席した。会合には、アゼルバイジャンのアリエフ大統領、アルメニアのパシニャン首相、ベラルーシのルカシェンコ大統領、カザフスタンのトカエフ大統領、キルギスのジャパロフ大統領、タジキスタンのラフモン大統領、トルクメニスタンのベルディムハメドフ大統領、ウズベキスタンのミルジヨーエフ大統領が出席した。
- 会合において、テロリズム及び過激主義との戦いにおける協力プログラム、汚職との戦いに関する合意、集団安全保障条約(CSTO)におけるCISのオブザーバー資格の取得に関する合意、ロシア語を支援し、促進するための国際機関の創設に関する合意が採択された。
- プーチン大統領は、自身のスピーチにおいて、10月6日にチェコ・プラハで開催された欧州政治共同体(EPC)の初会合の結果に関するフランスのマクロン大統領のコメントの中で、ロシアがアルメニアとアゼルバイジャンとの間の和平プロセスを不安定化させているという発言があったことについて、ナゴルノ・カラバフ紛争の経過への理解がなく、当事者意識を欠いており、受け入れられないと批判した。その上で、マクロン大統領と対話していくと伝えた。
- また、2023年にサンクトペテルブルクをCISの文化首都として宣言するというロシアのイニシアティブについて、CIS諸国の支持に感謝を述べた。更に、カザフスタンの提案により、ロシア語を支援し、促進するための国際機関の創設が行われることについて、あくまでもトカエフ大統領の考えであるという点を強調しつつ、最大限の支持を表明した。

写真出典:http://kremlin.ru/events/president/news/69595
プーチン大統領、第1回ロシア・中央アジア首脳会合に対面参加
- プーチン大統領は、10月14日、カザフスタン・アスタナにおいて開催された第1回ロシア・中央アジア首脳会合に出席した。会合には、カザフスタンのトカエフ大統領、キルギスのジャパロフ大統領、タジキスタンのラフモン大統領、トルクメニスタンのベルディムハメドフ大統領、ウズベキスタンのミルジヨーエフ大統領が出席した。同会合は、ロシアと中央アジア5か国の国交樹立30周年を記念して初開催され、首脳会合後、共同声明が採択された。
- プーチン大統領は、自身のスピーチの中で、ロシアと中央アジア間の貿易額が、過去5年間で2倍の371億ドルとなり、2022年上半期には16%増加したことを強調した。また、ロシアと中央アジア間での契約において、国際銀行間通信協会による国際決済ネットワークシステム(SWIFT)の代わりに、ロシア独自の決済ネットワークシステムの利用に切り替えていると自信を見せた。
- アフガニスタン情勢について、西側諸国、特に米国、英国の諜報機関が、タリバン政権に反対する組織を扇動することで、周辺国であるロシアと中央アジアへのテロ攻撃や過激派イデオロギーの拡散を目指していると独自の批判を展開した。タリバン政権は、経済が衰退する状況において、麻薬密売を含む金儲けを余儀なくされており、外国の諜報機関からの圧力を受けて、アフガニスタン北部のテロリストの出現を黙認していると指摘した。

写真出典:http://kremlin.ru/events/president/news/69598
2) アラブ首長国連邦
ムハンマド大統領と対面での会談で二国間協力について議論
- プーチン大統領は、10月11日、サンクトペテルブルク・コンスタンチノフスキー宮殿において、アラブ首長国連邦(UAE)のムハンマド・ビン・ザーイド・アール・ナヒヤーン大統領と会談し、ウクライナ情勢、二国間協力の状況、エネルギー問題、シリア情勢について議論を行った。
- プーチン大統領は、ウクライナ情勢に関し、UAEによる調停に向けた努力に感謝を述べ、ウクライナ・ザポリッジャ原子力発電所とその周辺で生じている問題へのムハンマド大統領の懸念に対する理解を示した。これを踏まえた上で、同日午後に同じ会場で行われる、国際原子力機関(IAEA)グロッシ事務局長との会談に臨むことを表明した。また、OPECプラスの枠組みの中で、関係者がエネルギー市場に安定をもたらすことを目的に、適切に対応していくよう努めるべきだと伝えた。
- ムハンマド大統領は、新型コロナウイルスの感染拡大の状況においても、両国の貿易売上高が25億ドルから、50億ドルに増加したと強調した。また、2022年には、UAE初のロシア語学校が開校したと述べた。更に、UAEでは、ロシア企業4,000社が事業を行っており、今後も両国のビジネス関係を強化していく意向を示した。

写真出典:http://kremlin.ru/events/president/news/69574
3) 国際原子力機関(IAEA)
グロッシ事務局長と対面での会談でザポリッジャ原発の問題等について議論
- プーチン大統領は、10月11日、サンクトペテルブルク・コンスタンチノフスキー宮殿において、国際原子力機関(IAEA)グロッシ事務局長と会談し、原子力の平和利用、ウクライナ・ザポリッジャ原子力発電所とその周辺で生じている問題について議論を行った。
- プーチン大統領は、これまでロシアは、すべての国が原子力の平和利用による利益に平等にアクセスできるようにすること、軍事的な技術の拡散を制限するためにあらゆる努力を行う必要があることを主張しており、今も同じ認識であると強調した。また、原子力船の建造、原子力推進システム、浮体式原子力発電所など、多くの分野で世界を主導していると伝えた。また、ウクライナ・ザポリッジャ原子力発電所の状況について、対話の機会は開かれていると述べ、協議に応じる姿勢を示した。
- グロッシ事務局長は、ザポリッジャ原子力発電所について、地域全体に悪影響を及ぼしかねない原発事故を回避するために努力を続けており、同会談について、安全性や核のセキュリティに直接的に関係する議題が含まれるため、非常に重要だと述べた。

写真出典:http://kremlin.ru/events/president/news/69578
4) アジア相互協力信頼醸成措置会議(CICA)
プーチン大統領、カザフスタン主催の第6回CICAサミットに対面参加
- プーチン大統領は、10月12日、13日、カザフスタン・アスタナにおいて開催されたアジア相互協力信頼醸成措置会議(CICA)の第6回サミットに出席した。同サミットは、前回2019年以来、3年ぶりの開催となった。会議には、加盟国27か国(アフガニスタンは欠席)とオブザーバー国6か国(日本、ウクライナ、米国は欠席)、オブザーバー機関5機関、パートナー機関5機関、招待国3か国・招待機関5機関の代表が出席した。
- プーチン大統領は、自身のスピーチにおいて、世界は真に多極化しつつあり、「新しい権力の中心地」の影響力が増している中、アジアは非常に注目すべき役割を担っていると述べた。また、アジアの多くのパートナーと同様に、国際金融システムの原則の見直しが必要だと考えており、同システムは、(西側諸国を暗示しつつ、)所謂自称「黄金の十億人」が、何十年もの間、すべての資本の流れと技術を自らに向けて循環させ、他者を犠牲にして生きることを可能にしたものであるとの独自の見解を主張した。この見直しの最初のステップとして、地域間の相互決済における自国通貨の積極的な利用に取り組んでいくと述べた。
- 更に、アフガニスタン情勢について、CICA地域にとって最も深刻な安全保障上の課題の一つであると述べ、アフガニスタンが、米国及びNATOの20年以上にわたる軍事的支配の後、米国及びNATOの失策により、テロの脅威に関連する問題を解決することができなかったと批判した。この一例として、9月5日に発生したカブールのロシア大使館前の爆破テロを挙げ、テロ対策のために、ロシアが設立した国際データバンクへのアジア諸国の連携とを呼びかけた。
- またプーチン大統領は、サミットの開催期間中にカタールのタミーム首長、パレスチナ自治政府のアッバース大統領、トルコのエルドアン大統領との対面での会談を実施した。

写真出典:http://kremlin.ru/events/president/news/69587
5) ギニアビサウ
エンバロ大統領と対面での会談で二国間協力について議論
- プーチン大統領は、10月25日、クレムリン宮殿において、ギニアビサウのウマロ・シソコ・エンバロ大統領兼西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)議長と会談し、二国間及びロシアと西アフリカ諸国の協力の状況、第2回ロシア・アフリカサミットの準備について議論を行った。
- プーチン大統領は、2019年にソチで開催された第1回ロシア・アフリカサミットの成功に触れつつ、2023年7月にサンクトペテルブルクにおいて行われる第2回サミットの開催への期待を表明した。
- エンバロ大統領兼ECOWAS議長は、ロシアとウクライナ間の紛争による問題、これによる穀物・肥料の輸出に関する問題が、世界経済の発展を妨げていると指摘し、両国間での対話を確立する方法を見つけるべきだとの意向を表明した。その上で、アフリカ及び国際社会におけるロシアの貢献は重要であると強調した。

写真出典:http://kremlin.ru/events/president/news/69675
6) カスピ海沿岸諸国
第2回カスピ海経済フォーラムの開催
- ミシュスチン首相は、10月5日、6日、モスクワにおいて開催された第2回カスピ海経済フォーラムに出席した。同フォーラムは、初回であった2019年のトルクメニスタン開催以来、3年ぶりの開催となった。会議には、カスピ海沿岸5か国(ロシア、アゼルバイジャン、イラン、カザフスタン、トルクメニスタン)に加え、ベラルーシ、キルギス、ウズベキスタン等から1,000人以上の代表が出席した。
- ミシュスチン首相は、6日に行われた全体会合においてスピーチを行った。同会合には、アゼルバイジャンのアサドフ首相、カザフスタンのスマイロフ首相、イランのモクバー第一副大統領、トルクメニスタンのゲルディムラドフ副首相が出席した。
- ミシュスチン首相は、自身のスピーチの中で、カスピ海沿岸諸国のGDPが過去20年間で約3倍、域内の貿易売上高が5倍に増加したと述べた。また、ロシアとカスピ海沿岸諸国の貿易売上高が、2021年一年間で3分の1以上増加したと指摘した。また、ロシアは、欧米諸国による制裁への対抗措置に注力しており、カスピ海沿岸諸国との間での独自の決済ネットワークシステムの構築や、決済カード「ミール」の普及促進を行っていくことが重要だと呼びかけた。
- また、ノヴァク副首相は、6日、同フォーラムに合わせて、イランのオウジ石油大臣と会談し、石油・天然ガス市場における両国の強力、イランでの共同プロジェクトの可能性、金融・貿易分野での協力見通しについて議論を行った。
- 同副首相は、現在、ロシアとイランとの間の新たな大規模な国際協定の準備を進めており、最終調整段階にあると述べ、同協定が、多面的な協力関係を戦略的パートナーシップの水準に引き上げることになると強調した。

写真出典:http://government.ru/news/46720/
2. 石油ガス産業情勢
(1) 原油・石油製品輸出税
- 2022年8月15日から2022年9月14日までのモニタリング期間におけるウラル原油の平均価格はUSD72.65/バレルとなり、10月の原油輸出税はUSD6.1/バレルに引き下げられた。
- 10月の石油製品輸出税はUSD13.3/トン、ガソリンについてはUSD24.4/トンに設定された。

(2) 原油生産・輸出
注1 原油生産量は2022年3月までは燃料エネルギー中央流通局(CDU TEK)のデータ、2022年4月以降は国家統計庁(Rosstat)のデータから作成。
注2 原油輸出量は2022年2月以降のデータについて非公開となっている。
注3 原油生産量は上記公表データ、原油輸出量はエネルギー省の公表データに基づき、今後更新される可能性あり。原油輸出量は、(4)原油輸出先に記載の連邦税関庁の公表データに基づく数値とは異なる。
(3) 天然ガス生産・輸出
注1 天然ガス生産量は2022年5月までは燃料エネルギー中央流通局(CDU TEK)のデータ、2022年6月以降は国家統計庁(Rosstat)のデータから作成。
注2 天然ガス輸出量は2021年11月以降のデータについて非公開となっている。
注3 天然ガス生産量は上記公表データ、天然ガス輸出量は連邦税関庁の公表データに基づき、今後更新される可能性あり。
(4) 原油輸出先
注 原油輸出先に関する連邦税関庁の公表データは2022年2月以降のデータについて非公開となっている。

(5) 天然ガス輸出先
注 天然ガス輸出先に関する連邦税関庁の公表データは、LNGは2022年2月以降のデータ、パイプラインガスは2021年11月以降のデータについて非公開となっている。


(6) 減産合意
2022年11月から日量200万バレルの大幅減産に合意
- OPECプラスは、10月5日、オーストリア・ウィーンにおいて、第33回閣僚会合を対面で開催した。対面開催は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により停止される前の2020年3月以来、初めてとなった。9月5日に開催された第32回会合における合意に基づき、2022年8月の生産水準まで戻す減産を行うことを決定していたが、今回、同月の要求生産水準から、2022年11月以降、更に日量200万バレル減産することを決定した。
- 同会合に参加するノヴァク副首相は、市場の需給バランスにおけるボラティリティが高まっており、今回は、2023年のEUや米国を含む主要需要国における景気後退の予測を踏まえ、市場動向を注意深く分析した結果、減産合意に至ったと述べた。他方、ロシアの2023年の原油生産量は、2022年の93~94%の水準になる見通しであり、減少幅は重大な影響を及ぼさないと指摘した。
- 更にOPECプラスは、毎月開催されていた共同閣僚監視委員会(JMCC)の開催頻度を2か月に1回、閣僚会合の開催頻度を半年に1回とすることに合意した。次回の第34回閣僚会合を12月4日に開催する。

写真出典:http://government.ru/news/46716/
(7) 法令・税制(欧米制裁への対抗措置を含む)
注 2022年2月24日以降に発動された対抗措置は別添の時系列表を参照。
ロシア中銀の公式外国為替レートの設定において代替ソースを参照可能に
- ロシア中央銀行は、10月3日、ルーブルに対する公式外国為替レートを確立するための追加の手順を策定したと発表した。これまで公式レートは、モスクワ取引所(MOEX)における取引に基づいて設定されていた。
- 同銀行によると、外国為替市場の状況をより正確に反映することを目的として、今後追加的に、金融機関における取引レートや、デジタルプラットフォーム上でのOTC取引レートを参照して、公式レートを設定することが可能となる。また同銀行は、公式レートの計算・公表手順の変更に関するロシア中央銀行指令案を策定し、政令案ポータルサイトにおいて公表した。
サハリン1案件の権利・義務が新設のロシア法人に強制移管
- プーチン大統領は、10月7日、大統領令第723号「特定の外国及び国際機関の非友好的な行動に関連する燃料・エネルギー分野における追加的な特別経済措置の適用について」に署名した。
- これにより、サハリン1案件の生産物分与契約(PSA)で規定される権利・義務について、事業形態を現行の非法人型JVからロシア法人に変更した上で、ロシア政府の所有として移管され、残りの資産及びすべての権利・義務が、政府が新たに設立するロシア法人(有限責任会社)に移管される。新設の有限責任会社は、PSAに規定される期間、政府に移管された資産の利用が可能。
- ロスネフチ子会社であるSakhalinmorneftegaz-Shelf社及びRN-Astra社に対しては、有限責任会社の設立と同時に、サハリン1案件のシェア配分と同じく、それぞれ同社の11.5%、8.5%が移管される。またロシア政府は、有限責任会社の管理者としてSakhalinmorneftegaz-Shelf社を指名する。同社は、有限責任会社設立日から、唯一の執行機関としての全権を得る。その後、すべてのシェアに対する所有権が移管された日から10日以内に、株主総会において、新たな唯一の執行機関を選出するか、Sakhalinmorneftegaz-Shelf社の権限を延長するかを決定する。
- 他方、外国企業は、次の移管プロセスを経る必要がある。
参考:新法人である有限責任会社「サハリン-1」への移管プロセス
- 有限責任会社の設立から1か月以内に、サハリン1案件における外国側の参加者は、ロシア政府に対して、現在の保有権益比率に応じて、有限責任会社のシェアを自身の所有として受け入れることに対する同意を通知しなければならない。通知には権益保有を証明する書類等を添付しなければならない。
- 上記通知の受領から3日以内に、ロシア政府は提出書類を確認し、有限責任会社のシェアを外国側の参加者に供与するか否かについて決定する。
- 政府がシェアの供与拒否を決定してから、或いは1か月の通知期間の終了から4か月以内に、ロシア政府は、供与されなかった有限責任会社のシェアの査定を行い、政府が定める方式で、基準を満たすロシアの法人に売却する。
- PSA第XX条(非公開)に基づき、外国側の参加者或いはその委託者は、自身が蓄積している資金と同額の資金を、有限責任会社の口座に振り込まなければならない。
- 売却により得られた資金は、外国側の参加者のために有限責任会社が開設した「C」型特別口座に入金される。この際、政府により、損失補償義務を課せられる者に指定される場合、当該資金からは、ロシア政府が実施する財務、環境、技術面、その他の要因に関する監査の結果、計算される損失金額及び外国側の参加者が蓄積している資金を有限責任会社の口座に振り込まないことにより生じた損失金額が差し引かれる。
出典:大統領令第723号よりJOGMEC作成
- 同大統領令においては、PSA第XXXX条及びXXXXⅠ条(非公開)で定められた対象海域での地下資源鉱区の開発に必要なものをはじめとする、各ライセンスとその他の許認可文書は、有限責任会社に公布されたものとみなされ、有限責任会社とその参加者に対し、PSAで規定される特別な税制、関税制度、関税率調整方式、ガスの独占的輸出権の維持が認められている。
- ミシュスチン首相は、10月12日、ロシア連邦政府令第1808号により、サハリン1案件の権利・義務等の移管先となる有限責任会社「サハリン-1」の設立に関する措置を承認した。同社は、同政府令の規定に従い、10月14日に統一国家登録簿に登記され、設立された。
- その後11月9日、外国側の参加者のうち、サハリン石油ガス開発株式会社(SODECO)及びインドのONGC Videsh Ltd.については、それぞれロシア連邦政府指令第3387-r号、第3388-r号により、従来の権益比率(それぞれ30%、20%)に応じて、有限責任会社「サハリン-1」社のシェアを取得することを承認された。このため、既に同案件からの撤退の意向を示しているExxonMobil社の子会社Exxon Neftegas Ltd.の権益のみ、所有権の扱いが未定となっている。
設立日 | 2022年10月14日 |
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所在地 | サハリン州ユジノサハリンスク |
定款資本金 | 10,000ルーブル |
株主構成 | Sakhalinmorneftegaz-Shelf 11.5% RN-Astra 8.5% 政府管理 80% → 設立日~1か月以内に外国側の参加者が受け入れ同意通知 |
権利・義務 | 1995年6月30日付けの生産分与契約(PSA)の権利・義務を継承 同契約に基づき活動を行う |
PSA法との関係 | PSA法第2条第7項及びガス輸出法第2条第2項に基づき、これらの法律の施行前に締結された契約とみなされる |
出典:政府令第1808号よりJOGMEC作成
「非友好国」が関与する許可無しの株取引禁止/会社清算に伴う支払いがルーブル建てに
- プーチン大統領は、10月15日、大統領令第737号「特定の者との間での特定の取引実施に関する追加措置について」に署名した。
- 同大統領令により、主に以下の措置が適用される。
- ロシアの金融機関、保険会社、非政府系年金基金、マイクロファイナンス会社、株式投資ファンド、投資信託又は非政府系年金基金の管理会社の定款資本金を構成する株式や持ち分について、1%を超えて、所有権、使用権、処分権を直接或いは間接的に確立、変更、或いは終了することに繋がる取引について、外国投資管理に関する政府委員会の許可制とする。
なお、上記は2022年8月5日付けの大統領令第520号に基づく取引には適用されない。 - 居住者は、1千万ルーブル/暦月を超える法人の定款資本金の減少や、清算に伴う「非友好国」の個人・法人に対する支払いについて、ロシア国内の銀行にその「非友好国」の個人・法人名義の「C」型特別口座を開設し、ロシア中央銀行の為替レートに基づいて算出する金額で、ルーブル建てで行うことが可能。
- 2022年9月8日付け大統領令第618号の対象を「(金融機関を除く)有限責任会社」に加え、「(金融機関を除く)株式会社」」に適用される。
- 2022年3月1日付け大統領令第81号によるロシアからの現金での外貨の持ち出し制限について、ロシア中央銀行が1万ドルを超える外貨の持ち出しに許可を与えることを可能とする。
- ロシアの金融機関、保険会社、非政府系年金基金、マイクロファイナンス会社、株式投資ファンド、投資信託又は非政府系年金基金の管理会社の定款資本金を構成する株式や持ち分について、1%を超えて、所有権、使用権、処分権を直接或いは間接的に確立、変更、或いは終了することに繋がる取引について、外国投資管理に関する政府委員会の許可制とする。
「友好国」を中心とした国際金融機関を制裁対抗措置の適用対象から除外
- プーチン大統領は、10月15日、大統領令第738号により、欧米諸国の制裁に対するロシアの対抗措置について、「友好国」を中心に構成される国際金融機関を適用対象外とすることを承認した。
大統領令(署名日) | 主な措置の内容 |
適用除外対象となる国際金融機関 |
第79号(2022年2月28日) |
居住者から非居住者への外貨送金の禁止等 | アジアインフラ投資銀行(AIIB)、国際経済協力銀行(IBEC)、国際投資銀行(IIB)、新開発銀行(NDB)、ロシア-キルギス開発基金 |
第81号(2022年3月1日) |
外国人との取引制限 | アジアインフラ投資銀行(AIIB)、国際経済協力銀行(IBEC)、国際投資銀行(IIB)、新開発銀行(NDB) |
第95号(2022年3月1日) |
債務ルーブル返済(注) | アジアインフラ投資銀行(AIIB)、国際経済協力銀行(IBEC)、国際投資銀行(IIB)、新開発銀行(NDB)、ロシア-キルギス開発基金 |
第126号(2022年3月18日) |
ロシア中銀の送金制限 | アジアインフラ投資銀行(AIIB)、国際経済協力銀行(IBEC)、国際投資銀行(IIB)、新開発銀行(NDB)、ロシア-キルギス開発基金 |
外貨購入制限 | アジアインフラ投資銀行(AIIB)、国際経済協力銀行(IBEC)、国際投資銀行(IIB)、新開発銀行(NDB)、ロシア-キルギス開発基金 | |
第254号(2022年5月4日) |
債務保証ルーブル払い | アジアインフラ投資銀行(AIIB)、国際経済協力銀行(IBEC)、国際投資銀行(IIB)、新開発銀行(NDB)、ロシア-キルギス開発基金 |
(注) 2022年3月1日以降、「非友好国」の債権者から、上記金融機関に対して譲渡された債権は、引き続きルーブル建てでの返済が可能。
出典:大統領令第738号よりJOGMEC作成
2022年末まで株式・持ち分の取引が禁止される外資系金融機関のリストが公表
- プーチン大統領は、10月26日、大統領指令第357-rp号により、2022年12月31日までの間、株式・持ち分の取引が禁止される金融機関のリストを承認した。同リストは、2022年8月5日付け大統領令第520号第2条に基づき、策定されたもの。
- 同大統領指令により、次の45金融機関の株式・持ち分の取引が禁止される。
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出典:大統領指令第357-rp号よりJOGMEC作成
「非友好国」に対するロシア製品・原材料の禁輸期間が2023年末まで延長
- プーチン大統領は、10月26日、大統領令第773号により、2022年3月8日付け大統領令第100号に基づく、ロシア製品・原材料の輸出入の禁止・制限措置の適用期間について、現在の2022年12月31日までから、2023年12月31日までに延長することを決定した。
- 現在、禁輸リストにおいては、木材やステンレス・スクラップ、タングステンスクラップ等の品目が指定されている。
「非友好国」リストに英国王室属領及び英国の海外領土が追加
- ミシュスチン首相は、10月29日、政府指令第3216-r号により、2022年3月5日付け大統領令第95号の対象となる「非友好国」のリストの拡大を承認した。
- これにより、2022年3月5日付け政府指令第430-r号及び2022年7月23日付け政府指令第2018-r号により、既に対象とされていたジャージー島及びガーンジー島、マン島以外の英国王室属領及び英国の海外領土が新たに「非友好国」に指定された。
資源開発案件等の「非友好国」保有持ち分の取引禁止に関する2件の例外措置が適用
- プーチン大統領は、10月11日付け大統領指令第330-rp号、10月17日付け大統領指令第341-rp号により、2022年8月5日付け大統領令第520号により、2022年12月31日までの間、禁止される取引に関する例外措置を承認した。

(8) 北極海航路
ノヴァク副首相、北極海航路の開発に関する会議を実施
- ノヴァク副首相は、10月25日、関係省庁、ロスアトム、海運会社の代表者が出席する北極海航路の開発に関する会議を開催した。同会議では、2022年の貨物輸送量及び2035年までの計画について議論を行った。
- 同副首相は、欧米諸国による制裁下において、BAM(バイカル・アムール)鉄道及びシベリア鉄道の輸送能力が限られている中、アジアへの最短ルートとしての北極海航路の重要性は何倍にも増していると指摘した。また、北極海航路の状況を監視・コントロールするための人工衛星の打ち上げについて、ロスコスモスと協力して、その達成期限を守るように指示をした。
- ロスアトムは、2022年の北極海航路を通じた輸送量について、年間3,100~3,200万トンとする目標を達成し、2022年末までに3,380万トンになる見通しであると述べた。

写真出典:http://government.ru/news/46888/
(9) 脱炭素・環境対応
「ESG-(R) Evolution」責任あるビジネス第2回会議が開催
- 経済発展省のトロソフ次官は、10月25日、「ESG-(R) Evolution」責任あるビジネス第2回会議において、ロシアのエネルギー・トランジッションは、国際情勢にかかわらず、継続して行われると述べた。
- 同次官は、持続可能な開発、ESGアジェンダは、少なくとも今後10年間は継続する長期的な傾向であり、経済発展省においても、気候変動対策に関する取り組みが継続していると伝えた。また、2022年には、温室効果ガスの排出制限に関する13件の政省令が採択され、サハリン州における温室効果ガス排出規制の実証実験が開始され、これに関連して、既に8件の政省令が採択されたことを紹介した。この結果、2023年からは、サハリン州とロシア全土の温室効果ガス排出量に関するデータを受け取ることが可能となると強調した。
- また、2021年9月に政府が承認したグリーンプロジェクトの選定基準及び検証システムの要件について、現在更新中であり、大気からの温室効果ガスの直接回収(DACCS)や、潮力発電等を新たな基準として導入する予定であると明らかにした。
- グリーン金融市場について、2022年に、新たに2件のグリーンボンドが、ロシアの取引所で発行され、市場価値がグリーンボンドだけで1,850億ルーブル、ソーシャルボンドと合計して約2,500億ルーブルに達していると述べた。

写真出典:https://economy.gov.ru/material/news/ilya_torosov_energoperehod_v_rossii_ostaetsya_v_sile.html
水素エネルギー開発に関する作業部会が開催
- ノヴァク副首相は、10月26日、関係省庁、研究者、企業の代表者が出席する水素エネルギー開発に関する作業部会を開催した。同会議では、欧米諸国による制裁等の新たな経済的課題が発生する状況下での2035年までの水素エネルギー開発について議論を行った。
- 同副首相は、欧米諸国による制裁は、水素エネルギー分野のプロジェクトにも影響を与えているが、水素技術の開発は依然として最優先事項の一つであると述べた。この観点から、国産技術の割合を増やし、水素の輸出計画を削減する方向で、水素に関するプログラム目標を調整する必要があると指摘した。その上で、2022年末までに、2035年までのロシアにおける低炭素水素エネルギー産業の発展に関する包括的プログラムの作成を完了すること、また、水素エネルギー分野のプロジェクトに対する政府の支援措置について、企業及び研究機関の提案を更新することを指示した。
- 同会議では、ロスアトム、AFK Sistema社、Gazprombankが、水素製造、貯蔵、輸送プロジェクトについて発表を行った。これらのプロジェクトには、サハリンにおける水素燃料電池列車、タタルスタン共和国における商用車向け水素燃料電池、モスクワ州における水素輸送用コンテナの製造、クラスノヤルスク途方における水素燃料補給インフラの開発等が含まれている。
- また、新たな経済的課題が発生する状況下での水素エネルギー開発の優先事項として、国内外市場向けの水素製造、貯蔵、輸送のための国産技術の開発、国家水素認証システムの創設、水素を利用した一連の工業製品の量産体制の整備、水素エネルギーの実証サイトの設置が提示された。更に、水素プロジェクトの分野のおける国際協力を発展させることが、課題に設定された。

写真出典:http://government.ru/news/46899/
3. ロシア石油ガス会社の主な動き
(1) ガスプロム
ロシアの天然ガス地下貯蔵量が史上最大の72.662BCMを記録
- ガスプロムは、10月27日、ロシアの天然ガス地下貯蔵量が史上最大の72.662BCMに達したと発表した。同社によると、ベラルーシ及びアルメニアの天然ガス地下貯蔵量を含めると、73.859BCMとなる。
- また、ロシアの天然ガス地下貯蔵施設の1日当たりの最大引き出し能力は、8億5240万CM、ベラルーシ及びアルメニアの天然ガス地下貯蔵施設を含めると、8億9,240万CMとなる。
2022年10月31日までの生産・輸出実績を発表
- ガスプロムは、11月1日、2022年10月31日までの同社の生産量及び輸出量の実績を発表した。
- 2022年1月1日から2022年10月31日までの同社の生産量は、前年比18.6%(78.8BCM)減の344BCMとなった。
- 国内向けの天然ガス供給量は、前年比5.6%(11.1BCM)減少した。
- CISを除く海外向けの輸出量は、前年比42.6%(67.6BCM)減の91.2BCMとなった。一方、中国向けのガス輸出は、数値は非公表であるものの、CNPCとの間での長期契約に基づく日量契約量を超えて供給が行われていると発表した。
(2) Novatek
ロスアトムとの間で脱炭素化分野の協力での覚書に署名
- Novatekは、10月12日、Russian Energy Week 2022において、ロスアトムとの間で、脱炭素化分野での覚書に署名した。
- 同覚書は、Novatekのグループ会社、特に、ウスチ・ルガガスコンデンセート分離・積替コンプレクスが、ロスアトムの風力発電所において発電された電力を購入することを想定している。同社は、グリーンエネルギーの購入により、二酸化炭素の排出量削減に取り組む。
- また両者は、北極圏の過酷な環境における風力発電の開発において協力していく意向であり、更に、LNG、低炭素水素・アンモニアの生産、発電及び蓄電において、ロスアトムのエンジニアリングソリューションの実装機会について検討する予定。
4. 新規LNG・P/L事業
(1) シベリアの力延伸部の稼働開始に向け、コヴィクタ・ガス田における試運転が開始
- ガスプロム・ミレル社長は、10月25日、シベリアの力天然ガスパイプラインの延伸部の稼働開始に向けて、イルクーツク州コヴィクタ・ガス田における試運転開始のイベントに参加した。
- 同社長は、コヴィクタ・ガス田からチャヤンダ・ガス田までを繋ぐ、シベリアの力パイプラインの延伸部の建設により、同パイプラインの全長が3,000kmに達したと述べた。また、同パイプラインの延伸部は、コヴィクタ・ガス田における試運転の開始後、2022年12月に稼働が開始する予定であると明らかにした。

写真出典:https://www.gazprom.ru/press/news/2022/october/article558271/
別添 ロシアに対して発動された各国制裁に対する主なロシアの対抗措置(時系列表)
主な措置の概要 | |
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2月28日 | 対外経済活動により取得した外貨80%の強制換金(3日以内)が義務付け |
3月1日 | ロシアからの外貨の持ち出し・国外送金が1万USD相当以下に制限 |
3月9日 | ロシアにおける外貨の引き出しが1万USD相当以下に制限 |
3月18日 | ロシアからのルーブルの持ち出し・国外送金についてもロシア中銀が制限可能に |
8月8日 | 欧米制裁対象のロシア銀行による法人顧客向けの外貨業務の停止が可能に |
主な概要 | |
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3月5日 | 1千万ルーブル/暦月を超える債務をロシア国内銀行のルーブル口座に返済可能に |
3月31日 | ガスプロムから「非友好国」の需要家に対するパイプライン経由での天然ガス販売代金について、Gazprombankルーブル口座への支払いに限定 |
5月4日 | 1千万ルーブル/暦月を超える配当金/債務保証金をロシア国内のルーブル口座に支払い可能に |
5月7日 | 「非友好国」の保有する知的財産の利用料等をロシア国内銀行のルーブル口座へ支払い可能に |
6月22日 | 外貨建てのロシア国債等をロシア証券保険振替機関のルーブル口座に返済可能に |
8月8日 | ロシア法人発行のユーロ債についてロシア国内銀行のルーブル口座に返済可能に |
9月8日 | 制裁対象の金融機関は、居住者法人に対する外貨建て債務をルーブル建てで返済可能に |
10月15日 | 1千万ルーブル/暦月を超える法人の定款資本金の減少や清算に伴う「非友好国」の個人・法人に対する支払いをロシア国内のルーブル口座に実施可能に |
主な概要 | |
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3月4日 | ロシア人の権利を侵害する外国の個人に対する入国禁止、資産没収、取引禁止 |
3月6日 | 国民の生活・健康、軍事に必要な「非友好国」の特許権の無償利用を可能に |
3月7日 | EU、米、英、日、豪等の西側諸国を「非友好国」に指定するリストが公表 →7月23日に英国王室属領ガーンジー島等やバハマを対象に追加 |
4月4日 | EU+欧州5か国とのVISA簡素化協定を停止 また、外務省の独断による外国人の入国禁止・滞在制限が可能に |
5月3日 | 「制裁対象リスト」に掲載される法人・個人との(1)新規契約の締結、(2)既存契約の履行、(3)金融取引、(4)同者へのロシア産製品・原材料の輸出を禁止 |
5月11日 | 「制裁対象リスト」にガスプロム欧州マーケティング子会社31法人が登録 →9月30日にErdgasspeicher Peissen GmbHを対象に追加し全32法人に |
6月28日 | 改正地下資源法により、地下資源利用ライセンスの外国の法人・個人への新規発給、同社による既存ライセンスの保有を禁止 |
6月30日 | サハリン2案件の資産・権利義務を新設のロシア法人に強制移管し、外国株主が応じない場合にそのシェアを売却可能に |
7月14日 | 地下資源利用ライセンス又はガス輸送施設を保有する外国法人の子会社・駐在員事務所をロシア法人に強制転換可能に |
8月3日 | サハリン2案件の権利・義務等の移管先となるロシア法人・有限責任会社「サハリンスカヤ・エネルギヤ」の設立条件・定款が公表 |
8月5日 | 2022年12月31日までの間、非友好国と関わりのある外国人(個人・法人)等が保有する、ロシア法人の持分に関する取引が禁止 |
9月8日 | 有限責任会社の持ち分について、「非友好国」が関与する外国投資管理委員会の許可無しの取引が禁止 |
10月7日 | サハリン1案件の権利・義務を新設のロシア法人に強制移管し、外国参加者が応じない場合にそのシェアを売却可能に |
10月12日 | サハリン1案件の権利・義務等の移管先となるロシア法人・有限責任会社「サハリン-1」の設立条件・定款が公表 |
10月15日 | 「非友好国」が関与する外国投資管理委員会の許可無しの株取引及び1%を超える金融機関等の株式・持ち分取引が禁止 |
主な概要 | |
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3月4日 | ロシア軍に関する「偽情報」の拡散を最長15年の実刑で処罰可能に |
3月25日 | ロシア政府機関の活動に関する「偽情報」の拡散を最長15年の実刑で処罰可能に |
7月14日 | 「外国のエージェント」の登録対象が、メディア、NGO、個人から一般企業まで拡大 |
7月14日 | 「違法な情報」を拡散した場合又は、外国で活動するロシアメディアへの活動禁止の報復措置として、外国メディアの権限はく奪、活動停止が可能に |
7月14日 | ロシアの金準備高と外貨準備高が非公開の国家機密情報に指定 |
9月8日 | ロシア領内の地下資源利用者/戦略企業が参加する有限責任会社に対し「非友好国」株主へ自身の活動に関する情報を開示しない権利が付与 |
主な概要 | |
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5月28日 | 改正兵役法により、軍事動員の年齢上限(ロシア国民 40歳、外国人 30歳)が撤廃 |
7月14日 | 外国の武力紛争や軍事作戦、諜報・防諜活動への加担、ロシア当局の安全保障に関する活動への妨害や反対活動の扇動を最長20年の実刑で処罰可能に |
8月25日 | ロシア軍の総兵力について追加13万7,000人の増員を大統領が指示 |
9月21日 | ロシア国民のロシア軍への「部分動員」令が発動 |
9月24日 | 動員への参加拒否や、脱走、自発的に投降行為を行った場合に処罰可能に |
9月24日 | ロシア軍に少なくとも1年間従事した外国人にロシア国籍を付与可能に |
以上
(この報告は2022年12月14日時点のものです)