ページ番号1009574 更新日 令和5年1月11日

原油市場他: 中国の新型コロナウイルス感染拡大及び米国金融当局による政策金利引き上げ継続の姿勢により、下落傾向となる原油価格

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レポートID 1009574
作成日 2022-12-19 00:00:00 +0900
更新日 2023-01-11 09:07:16 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 市場
著者 野神 隆之
著者直接入力
年度 2022
Vol
No
ページ数 35
抽出データ
地域1 グローバル
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国・地域 グローバル
2022/12/19 野神 隆之
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概要

  1. 米国では、冬場の暖房シーズンに伴う軽油及び暖房油等の需要期に突入したこともあり、製油所での石油製品製造活動が活発化した一方、ガソリン及び留出油需要がもたつき気味であったこともあり、両製品在庫は増加した結果、ガソリンは平年幅上限を超過する、留出油は平年幅下限付近に位置する、それぞれ在庫水準となっている。また、製油所の原油精製処理量増加に加え、輸出が高水準であったことにより、原油在庫は減少したものの平年幅上限を超過する量となっている。
  2. 2022年11月末のOECD諸国推定石油在庫量の対前月末比での増減に関しては、原油については、米国の在庫が相当程度減少したことにより、OECD諸国全体でも原油在庫は減少となったが、平年幅上限を超過する状態は継続している。石油製品については、米国ではガソリン及び留出油を中心として在庫は増加した。また、ロシア産石油購入が事実上禁止される旨の制裁実施を前にしてEU諸国における石油製品調達活動が活発化したことにより、欧州での石油製品在庫も増加した。日本でも、冬場の気温がそれほど低下しなかったこともあり、灯油在庫が増加したこと等により、石油製品全体の在庫は増加した。この結果、OECD諸国全体の石油製品在庫は増加となり、平年幅下方付近に位置する量となっている。
  3. 2022年11月中旬から12月中旬にかけての原油市場においては、中国で新型コロナウイルス感染が拡大したことや、米国の金融当局が政策金利引き上げを当面継続する姿勢を見せるなどしたことにより、世界経済減速に伴う石油需要の伸びの鈍化に対する懸念が市場で拡大したことが、原油相場に下方圧力を加えた結果、原油価格は下落傾向となり、12月9日には終値が1バレル当たり71.02ドルと2021年12月20日以来の低水準に到達する場面も見られた。
  4. 既に北半球では冬場の暖房用燃料需要期に突入していることから、季節的な石油需給の引き締まり感が市場で意識されやすく、この面では原油相場が下支えされる他、気温が低下したり低下するとの予報が発表されたりするようであれば、原油相場に上方圧力が加わる場面が見られることもありうる。また、中国の新型コロナウイルス感染抑制策の緩和による個人の外出と経済活動の促進に伴う石油需要の回復に対する期待も原油相場に上方圧力を加えやすいものと考えられるが、同国では新型コロナウイルス感染が拡大するとともに個人の外出が敬遠されつつあるように見受けられることにより、石油需要に負の影響が及ぶ恐れもあることから、同国の新型コロナウイルス感染を巡る状況については注意する必要があろう。さらに、海上輸送によるロシア産石油供給を制限する西側諸国等の制裁を巡っては、輸送サービス等の面での混乱及びロシアによる石油供給削減の報復措置等の実施による石油需給引き締まり感が市場で増大することにより、原油相場が上振れするといった展開もありうる。また、原油価格が下落し続ける、もしくは原油価格が急落する兆候を見せる場合には、OPECプラス産油国が減産措置を強化する姿勢を示唆すること等により、原油相場の下落抑制を図ろうとするものと考えられる。そして、米国金融当局による政策金利引き上げを含む金融引き締め政策の減速は原油価格を上向かせる形で作用すると見られるものの、金融引き締め政策の終了時期を巡っては不透明感が強いことから、この面では原油価格が乱高下しやすいものと考えられる。

(出所 IEA、OPEC、米国DOE/EIA他)

 

1. OPEC及び一部非OPEC(OPECプラス)産油国が2022年11月から2023年12月にかけての原油生産目標を2022年10月比で日量200万バレル削減する方針を維持する旨決定

(1) 協議内容等

2022年12月4日にOPEC及び一部非OPEC(OPECプラス)産油国は閣僚級会合を開催し、10月5日に開催された前回のOPECプラス産油国閣僚級会合において決定された、2022年11月から2023年12月にかけてのOPECプラス産油国の原油生産目標を2022年10月比で日量200万バレル削減する旨の方針を維持することで合意した(表1参照)。当初今次閣僚級会合は対面形式で開催する予定であったものの、11月30日にテレビ会議形式での開催に変更された他、同閣僚級会合は20分程度で終了した。

表1 OPECプラス産油国の減産幅

また、生産目標の完全遵守に固執すること、及び(これまで生産目標を達成できていない産油国が追加生産計画を速やかに提出したうえで2023年3月31日に向け)生産目標を完全に達成する(ために追加減産等を含め生産を調整する)ことが極めて重要であることを当会合で再確認した。さらに、積極的かつ先制的な手法に固執しつつ、減産措置参加産油国は、必要であれば、市場における問題を解決し石油市場の均衡を支援するために、いつ何時でも会合を開催し、即時追加方策を実施する用意があることを再確認した。

そして、次回のOPECプラス産油国閣僚級会合を2023年6月4日に開催される旨決定したが、併せてOPECプラス産油国共同閣僚監視委員会(JMMC: Joint Ministerial Monitoring Committee)を2023年2月1日に開催する旨決定したとされる(市場の動向により必要とされる場合にはOPECプラス産油国閣僚級会合を含めた追加の会合を開催する権利をJMMCに付与する旨10月5日に開催されたOPECプラス産油国閣僚級会合で決定していた)。

なお、通常OPECプラス産油国閣僚級会合開催前に開催される予定であるOPECプラス産油国共同技術委員会(JTC: Joint Technical Committee)は今般12月2日に開催される予定であったが、取消となったとされる(理由は明らかになっていない)。また、今回の閣僚級会合及び閣僚級会合開催前日の12月3日にテレビ会議形式で実施されたOPEC産油国による会合においては、12月2日に主要7ヶ国政府(G7)及び欧州連合(EU)等の間で合意した、12月5日からのロシア産石油に対する1バレル当たり60ドルの販売上限価格の設定については議論されなかったものと12月4日に伝えられる。OPECプラス産油国関係者は、ロシア産石油に対する販売価格上限の設定の石油市場への影響については判然としない旨明らかにしたと12月4日に報じられる。

他方、10月5日に開催された前回の閣僚級会合時に比べ原油価格が下落していることもあり、今次会合においてOPECプラス産油国が減産措置をさらに強化するのでなければ、OPECプラス産油国に対し不満を述べることはない旨米国政府関係者は明らかにしていたと12月4日に伝えられる。

 

(2) 今回の会合の結果に至る経緯及び背景等

9月5日に開催された前々回のOPECプラス産油国閣僚級会合においては、10月の原油生産目標を前月比で日量10万バレル引き下げる旨決定されたが、それ以降、米国等での夏場ドライブシーズンに伴うガソリン需要期終了による季節的なガソリン需給の緩和感が石油市場で増大したことが、原油相場に下方圧力を加えた(図1参照)。

図1 原油価格の推移(2022年)

また、9月20~21日に開催された米国連邦公開市場委員会(FOMC)において0.75%の政策金利の引き上げが決定された他、FOMC開催後の記者会見で米国連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が、物価上昇沈静化のため経済成長がある程度犠牲になる恐れがある旨明らかにしたことや、その他の米国金融当局関係者も積極的な金融引き締め政策推進を支持する旨示唆したことにより、米ドルが上昇したり、金融引き締め政策推進による経済減速懸念から米国株式相場が下落したりしたことでも、原油価格は押し下げられた。さらに、9月22日に英国等の中央銀行が政策金利引き上げを発表したことにより、世界的な景気後退発生に対する不安感が市場で拡大したこと等でも、原油価格は下落した。このようなことから、前々回の閣僚級会合開催直前の9月2日に1バレル当たり86.87ドルの終値であった原油価格(WTI)は9月26日には同76.71ドルの終値と、ロシアによるウクライナへの事実上の侵攻開始(2月24日)以前である2022年1月3日(この時の終値は同76.08ドル)以来の低水準に到達する場面も見られた。

そのような原油相場下落の兆候に対しOPECプラス産油国による原油価格下落防止のための行動が後手に廻るようだと、OPECプラス産油国が原油価格下落に対し寛容な姿勢を示していると市場に受け取られ、石油需給緩和を巡る市場心理が強まるとともに、原油価格下落の勢いが増すことにより、そうなった段階でOPECプラス産油国が減産措置の強化等原油価格の持ち直しのための行動を開始したとしても、原油価格の制御が困難となる恐れがあった。併せて、原油価格の下落により、特にロシアを初めとする原油生産拡大余地が少ないと見られる産油国を含めOPECプラス産油国の原油収入減少懸念が同産油国間で増大した。

このようなことから、10月5日に開催されたOPECプラス産油国閣僚級会合においては、前月比で日量200万バレルの原油生産目標削減を決定することにより、OPECプラス産油国は先制的に市場での石油需給引き締まり感の醸成とともに原油価格の持ち直しを図ろうとしたものとしたものと見られる。

前回のOPECプラス産油国閣僚級会合以降11月上旬頃にかけての石油市場においては、10月11日に国際通貨基金(IMF)が2023年の世界経済成長率見通しをそれまでの2.9%から2.7%へと下方修正した旨発表したことに加え、中国での新型コロナウイルス感染抑制のための都市封鎖を含む個人の外出規制及び経済活動制限措置を強化する動きが見られたことが、原油相場に下方圧を加えた反面、中国の新型コロナウイルス感染抑制策緩和の兆候が見られたことや、米国消費者物価指数(CPI)の伸びが鈍化したことに伴う、同国金融当局関係者による政策金利引き上げペースの減速観測等が原油相場に上方圧力を加えたことにより、原油価格は1バレル当たり80ドル台後半~90ドル台前半の比較的限られた範囲で変動した。

しかしながら、11月中旬に入ると、中国における新型コロナウイルス感染拡大が報告され続けたことにより、同国の経済減速と石油需要の伸びの鈍化懸念が市場で増大したことから、11月25日の原油価格の終値は1バレル当たり76.28ドルと9月26日の終値をも下回る状況となった他、中国の新型コロナウイルス感染者数が11月27日時点で40,347人の史上最高水準に到達した旨11月28日に同国国家衛生健康委員会が発表したこともあり、同国経済減速と石油需要の伸びの鈍化懸念が市場で一層増大したことが、原油相場にさらなる下方圧力を加えたことから、11月28日夜半過ぎ(米国東部時間)に原油価格は一時1バレル当たり73.60ドルと、2021年12月27日の取引日に到達した安値(1バレル当たり72.57ドル)以来の低水準に到達する場面も見られるなど、原油価格の下落傾向が顕著となる兆候が見られた。

加えて、12月4日に開催される予定のOPECプラス産油国閣僚級会合において、最大日量50万バレルの増産を検討している旨11月21日にウォール・ストリート・ジャーナルが報じたことにより、同日の原油価格が一時前日終値比で1バレル当たり5.00ドル下落する場面も見られた。これに対し、サウジアラビアのアブドルアジズ エネルギー相は当該報道を否定したうえ、日量200万バレルの減産措置は2023年12月まで実施される他、必要であれば減産を強化する旨11月21日に表明した(その後UAE、クウェート及びアルジェリアも増産協議実施を否定した)ことにより、11月21日の原油価格は上昇に転じ、この日の終値は前日終値比で1バレル当たり1.22ドルの上昇へと持ち直した。

このようなことから、中国の新型コロナウイルス感染状況によっては、原油価格はさらに下落し続ける恐れがある他、それほど大規模ではない増産の情報が流れただけでも原油相場が急落する場面を見せるなど、世界石油需給バランスを巡る市場心理が脆弱である旨示されたこともあり、サウジアラビアを初めとするOPECプラス産油国としては、原油価格の下落を防止すべく、むしろ先制的に市場での石油需給引き締まり感の醸成を図る必要があることが示唆された。

11月24日には、サウジアラビアのアブドルアジズ・エネルギー相とイラクのアブデルガニ・エネルギー相が会談し、その後両エネルギー相は、OPECプラス産油国の減産措置遵守を重要視するとともに、石油市場の均衡と安定達成のため、必要であればさらなる方策を実施する能力がある旨の共同声明を発表したと同日夕方(米国東部時間)に伝えられたことも、原油価格下落防止のために、サウジアラビアを初めとするOPECプラス産油国が対応を迫られていることを想起させる格好となった。

このように、原油価格が下落する可能性を示す兆候が見られる場合、ウクライナへの事実上の侵攻に伴う、西側諸国等による制裁や評判リスクを懸念する西側諸国等によるロシア産石油購入の敬遠等により、石油販売が伸び悩むロシアを含め、原油生産拡大に苦慮するOPECプラス産油国に配慮し、収入を確保すべく原油価格の持ち直しを企図して減産措置を強化することが、サウジアラビアを初めとするOPECプラス産油国の従来の行動様式であった。

また、既に2022年第2四半期及び2022年第3四半期の世界石油需給はそれぞれ日量10万バレル及び日量66万バレルの供給過剰となったものと推定される(表2参照)。さらに、今後OPECプラス産油国の減産可能性の実情に併せ、中東湾岸OPEC産油国を中心に日量100万バレル程度の追加減産を2022年11月から2023年12月にかけ実施した(「日量200万バレル減産を強化する」旨前回のOPECプラス産油国閣僚級会合で決定されているが、既に原油生産目標を相当程度下回る水準でしか生産できていない産油国も複数あることから、実際の減産量は発表した水準の半分程度の規模になるものと見られる)場合、2022年第4四半期は世界石油供給が需要を日量39万バレル上回る他、次回OPECプラス産油国閣僚級会合が開催され、さらなる原油生産方針が決定されるまでの期間、即ち2023年前半においては、世界石油需要が供給を上回るもののその幅は日量2~40万バレルと限定的なものであると見られた(表3参照)。

表2 世界石油需給バランスシナリオ(2022年)(2022年12月4日OPECプラス産油国閣僚級会合開催直前時点)

表3 世界石油需給バランスシナリオ(2023年)(2022年12月4日OPECプラス産油国閣僚級会合開催直前時点)

その結果、2022年第2四半期から2023年第2四半期にかけ世界石油市場が平均で日量15万バレル程度の供給過剰になると見られることから、今回のOPECプラス産油国閣僚級会合においては、大規模なものではなくても減産措置強化を発表する(但し、前述の通り実際には目標を下回って原油を生産する産油国が複数あることから、発表する減産措置の規模は実際に必要とされる減産規模の倍程度にすることが望ましいものと考えられる)ことが、原油価格の持ち直しのためには有効であるものと思われた。

しかしながら、11月30日に中国広東省広州市及び河南省鄭州市において新型コロナウイルス感染抑制策が緩和されたうえ、新型コロナウイルスオミクロン変異株の感染力が相対的に弱い他、ワクチン接種が進展していること等により、中国の新型コロナウイルス感染対策は新たな段階に入っている旨11月30日に同国の孫春蘭副首相が示唆したことに加え、中国で感染が流行している新型コロナウイルスによる死亡率は低水準である旨同国の習近平国家主席がEUのミッシェル大統領に対し明らかにしたと12月2日午後遅く(米国東部時間)報じられるなど、中国で新型コロナウイルス感染抑制方針に変化の兆しが見られ始めた。

また、12月5日にはEUによるロシアから海上輸送経由で販売される原油購入の原則禁止の実施が予定される他、G7が提案しEUが検討していた、ロシア産石油に対し1バレル当たり60ドルの事実上の販売価格上限を設定することにつき、12月2日にEUが合意したことにより、12月5日にG7及びEU等による事実上のロシア産石油価格上限設定措置が実施に移される運びとなった。

このため、今後明確になるものと見られる中国の新型コロナウイルス感染抑制策、及び西側諸国等によるロシア産石油販売価格に対する事実上の上限設定等の対ロシア制裁の実施により、原油価格が持ち直すのであれば、敢えてOPECプラス産油国による原油生産調整策は必要にならないものと見られたことから、これらの要因の原油価格への影響を見極めるべく、今回のOPECプラス産油国閣僚級会合においては、従来の減産措置方針を維持することにしたものと考えられる。

ただ、今後の石油市場の展開具合によっては、原油相場に下方圧力が加わる、もしくは加わる兆候が見られるといった事態の発生も排除し切れないことにより、必要に応じて遅滞なくOPECプラス産油国閣僚級会合を含む協議の場を設け、さらなる原油生産方針を検討、決定及び実施する旨併せて表明することにより、原油相場の不安定化を回避しようとしたものと見られる。

 

(3) 原油価格の動き等

今回の閣僚級会合においては、2022年11月から2023年12月にかけ2022年10月比で日量200万バレルの減産措置を維持する旨合意されたものの、必要に応じて減産措置の強化等を含めさらなる対応を行う方針である旨示唆されたことにより、石油需給の緩和感の醸成が市場では抑制された格好となった。

また、12月5日を以てロシアから海上輸送経由で販売される原油の購入をEUが原則禁止することに加え、同じく12月5日よりロシア産石油販売価格に上限を設定する旨のG7及びEU諸国等による制裁が実施される方向である一方、ロシア産石油販売価格に上限を設定する国等に対しては、如何なる水準の価格上限であろうと、ロシア産石油の販売を禁止する方向で検討している旨12月4日にロシアのノバク副首相が明らかにした。

さらに、中国で感染が流行している新型コロナウイルスによる死亡率は低水準である旨中国の習近平国家主席がEUのミッシェル大統領に対し明らかにした旨12月2日午後遅く(米国東部時間)に報じられたことにより、同国の新型コロナウイルス感染抑制策の緩和に対する期待が市場で広がった。

加えて、これまで公共交通機関及び屋外の施設の利用に際し義務付けられていた新型コロナウイルス感染検査を12月5日より取り止める旨12月4日に上海市が発表した他、他の都市でも同様の新型コロナウイルス感染抑制策の緩和が実施されつつある旨12月4日に伝えられたことにより、中国において、より自由な個人の外出及び経済活動が促進されるとともに、同国の経済及び石油需要の回復観測が市場で増大した。

このようなこともあり、原油相場に上方圧力が加わった結果、12月5日朝(米国東部時間)には原油価格は1バレル当たり82.72ドル(前日終値比同2.74ドルの上昇)に到達した。しかしながら、この日米国供給管理協会(ISM)から発表された11月の同国非製造業景況感指数(50が当該部門拡大と縮小の分岐点)が56.5と10月の54.4から上昇した他市場の事前予想(53.3~53.5)を上回ったことにより、米国金融当局が物価上昇抑制のための政策金利引き上げを継続するとの観測が市場で発生したこともあり、米ドルが上昇するとともに米国株式相場が下落したことが、原油相場に下方圧力を加えた結果、この日の終値は1バレル当たり76.93ドルと前週末終値比で3.05ドルの下落となった。

 

2. 原油市場を巡るファンダメンタルズ等

2022年9月の米国ガソリン需要(確定値)は日量881万バレル、前年同月比1.3%程度の減少と、8月の当該需要である同908万バレル、同1.1%程度の減少から、需要量が減少した一方、前年同月比での減少率は小規模ながら拡大した(図2参照)。ただ、当該需要は速報値(前年同月比2.0%程度減少の日量876万バレル)からは若干ではあるが上方修正されている。9月3~5日の米国労働者の日(レイバー・デー)の休日(9月5日)に伴う連休を以て夏場のドライブシーズンに伴うガソリン需要期が終了したこともあり、季節的にガソリン需要が低下したことが、前月比での需要量の減少の背景にあるが、7月には1ガロン当たり4.668ドルであった全米平均ガソリン小売価格が8月には1ガロン当たり4.087ドルへと相当程度下落したことにより、消費者によるガソリン購入が刺激された結果、8月のガソリン需要が上向いた格好となったものの、その反動で9月のガソリン需要がもたつき気味となった結果、9月の前年同月比での減少率が8月の当該減少率から拡大した可能性もある(ただ、ガソリン小売価格が下落し続けたこともあり、9月の米国自動車運転距離数は前年同月比で1.0%の増加と8月の同0.7%の増加から増加率が上振れしていることから、その影響が10月に及ぶといった展開も想定されうる)。なお、2022年9月の米国ガソリン需要は2019年同月の当該需要(日量920万バレル)(確定値)を4.2%程度下回っている。他方、2022年11月の同国ガソリン需要(速報値)は日量850万バレル、前年同月比で5.8%程度の減少となっており、10月の当該需要である同870万バレル(速報値)から需要量が下振れしたうえ、10月の前年同月比の当該需要減少率である3.7%程度から減少率が拡大している。例年11月は気温が低下することもあり10月に比べ個人の外出が敬遠されるようになるとともに自動車運転距離数が落ち込みやすく、このため2022年11月の推定自動車運転距離数も1日当たり88億マイルと10月(同92億マイル)に比べ減少しており、これが11月の同国ガソリン需要の前月比での落ち込みとなって現れているものと考えられる。また、2021年は同国の1日当たりの新型コロナウイルス新規感染者数が9月7日に301,138人で頭打ちとなった後、同年11月にかけ感染が沈静化していったことにより同国での個人の外出が促進されたことが、11月の同国ガソリン需要を加速させる格好となった(同月の自動車運転距離数は前年同月比で12.4%程度、ガソリン需要は同12.8%程度の、それぞれ増加と、10月の自動車運転距離数の同7.2%、ガソリン需要の同8.6%程度の、それぞれ増加から伸びが拡大した)反動で、2022年11月の同国の推定自動車運転距離数が前年同月比で1.7%程度の減少と10月の同0.4%程度の減少から減少率が拡大したことを反映し、ガソリン需要の前年同月比での減少幅も拡大する側面があったものと見られる。さらに、米国消費者物価が上昇し続けていることに加え、3月15~16日に開催されたFOMCにおいて、それまで0.00~0.25%であった政策金利を0.25%引き上げて以降、現在に至るまで政策金利を合計で4.25%引き上げてきたことにより、家計での財政的な負担が増大してきたことも、自動車運転距離数及びガソリン需要を抑制した一因となっているものと考えられる。他方、北半球が冬場の暖房シーズンに突入する一方で、欧州では、12月5日を以て海上輸送によるロシア産原油の、2023年2月5日を以て海上輸送によるロシア産石油製品の、それぞれ購入を原則禁止とすることにより、ロシア産石油供給の低下懸念が市場で広がっていたことに加え、9月22日以降フランスで給与水準引き上げ等の労働条件改善を要求した労働者によるストライキが拡大、10月4日時点で同国の原油精製能力(2021年時点で日量114万バレルとされる)の65%程度に相当する日量74万バレル程度の原油精製能力を保有する製油所の稼働が停止した(10月19日以降同国での製油所ストライキは収束に向かい初め、11月8日の同国フェイザン(Feyzin)製油所(操業者:トタルエナジーズ、原油精製処理能力日量11万バレル)の操業再開を以て、全ての製油所でのストライキは終了したとされる)ことから、欧州における石油需給引き締まり感が強まったこともあり、欧州などに軽油等を輸出している米国での石油製品製造を巡る利幅が拡大したことにより、同国の製油所の原油精製処理量が増加傾向となった(図3参照)。そして、ガソリン需要期は終了していたことによりガソリン製造は抑制された(その分留出油の生産が優先された)ものの、それでも原油精製処理量の増加に従ってガソリン生産はそれなりに行われた(ガソリン最終製品生産量は図4参照)。このようにもたつき気味であったガソリン需要に比してガソリン生産は堅調であったことにより、11月上旬から12月上旬にかけ同国ガソリン在庫は増加傾向となり、平年幅上限を超過する量となっている(図5参照)。

図2 米国ガソリン需要の伸び(2006~22年)

図3 米国の原油精製処理量(2009~22年)

図4 米国のガソリン(最終製品)生産量(2009~22年)

図5 米国ガソリン在庫推移(2003~22年)

2022年9月の米国留出油需要(確定値)は日量401万バレルと前年同月比で0.6%の減少となり(図6参照)、8月の同387万バレル(前年同月比2.8%程度の減少)から需要量は増加した他、前年同月比での減少率は縮小した。また、当該需要は速報値(前年同月比7.6%程度減少の日量373万バレル)から上方修正されている。9月の同国鉱工業生産は前年同月比5.0%程度の増加と8月の同3.5%の増加から増加率が拡大した。また、9月の同国物流活動は前年同月比4.6%の増加と、2021年6月(この時は同5.7%の増加)以来の高水準である8月の同5.2%の増加には及ばなかったものの依然高水準を維持した。このような要因が米国留出油需要を下支えしたものと考えられる(また、8月は物流活動が好調であったにもかかわらず、留出油需要が前年同月比で2.8%の減少となった反動で、9月の当該需要が上振れした部分もあるものと思われる)。しかしながら、6月には1ガロン当たり5.754ドルであった全米平均軽油小売価格が9月には同4.993ドルへと下落したものの、なお前年同月(同3.384ドル)を大きく上回っていたことが、留出油需要を抑制する形で作用した結果、当該需要は若干ながらも前年割れしたものと見られる。なお、2022年9月の米国留出油需要は2019年同月の当該需要(日量392万バレル)を2.3%程度上回っている。また、2022年11月の留出油需要(速報値)は日量378万バレルと前年同月比で9.8%程度の減少となり、10月の当該需要量(速報値)の日量414万バレル、前年同月比4.3%の増加から、需要量が相当程度減少したうえ前年同月比でも減少に転じた。11月の同国鉱工業生産は前年同月比2.5%程度の増加と10月の同3.3%程度の増加から増加率が縮小したこともあり、11月の米国輸送担当者指数(LMI: Logistics Manager Index、50が当該部門拡大と縮小の分岐点)が53.6と10月の57.5から低下するなど、物価の大幅上昇及び政策金利の継続的な大幅引き上げ等の影響もあり米国物流活動が鈍化しつつあることを、同国の留出油需要が反映しているものと考えられる。なお、2022年11月の米国留出油需要は2019年の当該需要(日量420万バレル)(確定値)を9.6%程度下回っている。そして、米国の同国の製油所では11月1日の冬場の暖房シーズンに伴う軽油・暖房油需要期突入もあり留出油の生産を活発化させた(図7参照)一方、留出油需要はむしろ不振気味であったことから、同国の留出油在庫は増加傾向となったが、平年幅下限付近に位置する量となっている(図8参照)。

図6 米国留出油需要の伸び(2006~22年)

図7 米国の留出油生産量(2009~22年)

図8 米国留出油在庫推移(2003~22年)

2022年9月の米国石油需要(確定値)は、前年同月比1.6%程度増加の日量2,047万バレルとなり(図9参照)、8月の同2,060万バレルからは需要量は減少したものの、同月の前年同月比0.1%程度の増加から、増加率は拡大した。需要量の前月比での減少はガソリン需要の減少が影響している。他方、その他の石油製品が前年同月比で日量25万バレルの増加と8月の同12万バレルの増加から増加幅が拡大したことが、同月の米国石油需要の前年同月比での伸びの加速の一因となっているものと考えられる(米国ペンシルバニア州モナカ(Monaca)において建設中であった石油化学工場(操業者:シェル、エタン分解能力年間160万トン)が2022年8月上旬に工事を完了(8月8日に建設施行者であるベクテルが発表)したこともあり、操業開始(実際には11月15日に行われた)に向け、原料在庫積み増しのためエタンの購入が活発化したことが寄与した可能性が考えられる)。またガソリン及び留出油等の需要が速報値から確定値に移行する段階で上方修正されたことにより、同国石油需要も速報値(前年同月比1.0%程度減少の日量1,994万バレル)から確定値に移行する段階で上方修正されている。なお、2022年9月の米国石油需要は、2019年9月の当該需要(日量2,025万バレル)を1.1%程度下回っている。他方、2022年11月の米国石油需要(速報値)は日量2,021万バレルと前年同月比で1.8%程度の減少となり、10月の同国石油需要(速報値)である日量2,044万バレルから減少した他、10月の前年同月比0.3%の増加から減少に転じている。留出油需要が前月比及び前年同月比で相当程度減少したことが、同国石油需要の前月比及び前年同月比での減少の一因になっているものと見られる。なお、2022年11月の米国石油需要は、2019年11月の当該需要(日量2,074万バレル)(確定値)を2.3%程度下回っている。他方、欧州の代表的な原油指標であるブレントの価格が米国の代表的な原油指標であるWTIの価格を相当程度上回っていたこともあり(ロシアのウクライナに対する事実上の侵攻実施に伴う、海上輸送によるロシア産原油の購入禁止を12月5日に控え、ロシア産原油供給減少による欧州での石油需給引き締まり懸念の強まりが背景にあるものと見られる)、米国から欧州方面等に向け原油が高水準で輸出された他、米国における製油所の原油精製処理量が増加したこと等により、11月上旬から12月上旬にかけ原油在庫は減少傾向となったが、平年幅上限を上回る状態は継続している(図10参照)。そして、原油及びガソリン在庫が平年幅上限を超過する量、留出油在庫が平年幅下限付近に位置する量となったが、原油とガソリンを合計した在庫、そして原油、ガソリン及び留出油を合計した在庫は、いずれも平年幅上限を超過する状態となっている(図11及び12参照)。

図9 米国石油需要の伸び(2006~22年)

図10 米国原油在庫推移(2003~22年)

図11 米国原油+ガソリン在庫推移(2003~22年)

図12 米国原油+ガソリン+留出油在庫推移(2003~22年)

2022年11月末のOECD諸国推定石油在庫量の対前月末比での増減に関しては、原油については、9月22日以降フランスの労働者による製油所ストライキが拡大、10月4日時点で日量74万バレル程度の原油精製能力を保有する製油所の稼働が停止したものの、10月19日以降同国での製油所ストライキは収束に向かい初め、11月8日には全ての製油所でのストライキが終了したとされることもあり、欧州における製油所の原油精製処理活動が回復したことに併せ、また、日本においては冬場の暖房シーズンに伴う暖房用石油製品需要期到来に向け灯油在庫を積み上げるべく(10月末時点の当該在庫は前年同期を約8.0%下回っていた)製油所での原油精製処理活動を推進するため、それぞれの地域で原油調達活動が活発化したことにより、両地域の原油在庫は若干ながら増加した。しかしながら、米国において原油在庫が相当程度減少したことで相殺されて余りあったことにより、OECD諸国全体では原油在庫は減少となったが、平年幅上限を超過する状態は継続している(図13参照)。石油製品については、米国では、その他石油製品の在庫が減少した(冬用ガソリンに混入するため、その他の石油製品に分類されるブタンの需要が増加しつつあることが寄与しているものと見られる)ものの、ガソリン及び留出油の両製品在庫が相当程度増加したことにより相殺されて余りあったことから、同国の石油製品全体の在庫は増加した。また、12月5日を以て海上輸送により供給されるロシア産原油、及び2023年2月25日を以て海上輸送により供給されるロシア産石油製品の、それぞれ購入が事実上禁止される旨のEUによる対ロシア制裁実施を前にして、軽油等の中間留分を中心として石油製品調達活動が活発化したことにより、欧州における石油製品在庫は増加した。日本においても、冬場の暖房需要期到来のため、製油所での製造や国外からの輸入等を通じ灯油の調達が活発化した一方、冬場の気温がそれほど低下しなかったことにより需要が低調だったこともあり、灯油在庫が増加した他、製油所の稼働上昇により製造が活発化した一方、高水準の小売価格維持から出荷がもたつき気味となったガソリンや軽油の在庫が積み上がったことにより、石油製品全体の在庫も増加した。この結果、OECD諸国全体の石油製品在庫は増加となり、平年幅下方付近に位置する量となっている(図14参照)。そして、原油在庫が平年幅上限を超過する量となっている一方、石油製品在庫が平年幅下方付近に位置する量となっていることから、原油と石油製品を合計した在庫は平年幅上方付近に位置する量となっている(図15参照)。なお、2022年11月末時点のOECD諸国推定石油在庫日数は59.6日と10月末の推定在庫日数(59.7日)から若干ながら減少している。

図13 OECD諸国原油在庫推移(2005~22年)

図14 OECD諸国石油製品在庫推移(2005~22年)

図15 OECD諸国石油在庫(原油+石油製品)推移(2005~22年)

11月9日に1,300万バレル台半ば程度の水準であったシンガポールのガソリンを含む軽質留分在庫は、11月16日には1,300万バレル台前半程度、11月23日には1,300万バレル弱程度の、それぞれ量へと減少した。ただ、11月30日には1,400万バレル台半ば程度の水準へと回復した。12月7日には1,300万バレル台前半程度の量へと減少したものの、12月14日には1,300万バレル台後半の水準へと回復しており、結果として11月9日の量からは微増にとどまっている。中国において新型コロナウイルス感染拡大(11月27日には40,347人の史上最多感染者を記録した旨11月28日に同国国家衛生健康委員会が発表した)による当該感染抑制のための都市封鎖措置を含む個人の外出規制の強化等により、同国国内でのガソリン需要が不振になるとともに在庫が積み上がったこともあり、新規石油製品輸出枠が付与された(ガソリン、ジェット燃料、軽油及び低硫黄重油で合計1,500万トン(うち175万トンが低硫黄重油と見られる)の輸出枠付与を中国政府が最終決定した旨9月30日に報じられていた)ことに伴い、12月末までの輸出枠利用期限を前にして輸出枠を消化するため中国からシンガポール方面へのガソリン輸出が活発化したことが、シンガポールでの軽質留分在庫を押し上げる形で作用した。しかしながら、年末の休暇シーズンに向けフィリピンやベトナムを含む東南アジア諸国がシンガポール等からのガソリンの調達を活発化させる場面が見られたことが、シンガポールでの軽質留分在庫を押し下げる格好となった。この結果、当該在庫は比較的限られた範囲での変動となり、明確な増加もしくは減少傾向を示すことなく推移した。そして、中国からの堅調なガソリン輸出に加え、11月24日より韓国においてガソリンを輸送するタンクローリーを含むトラック運転手が労働条件の改善を求め無期限の大規模ストライキを実施した(12月9日に当該ストライキ終了が決定された)ことにより、韓国国内市場へのガソリンの出荷体制に支障が発生した結果、余剰となったガソリンを輸出する動きが発生したことが、アジアでのガソリン価格に下方圧力を加えたものの、東南アジア諸国のガソリン需要が堅調となる場面が見られたうえ、2023年初頭以降の中国における石油製品輸出枠付与を巡る情報が得られてないこともあり、同国からのガソリン輸出減少懸念が市場で発生したことが、ガソリン価格を下支えした。さらに、ドバイ原油価格の下落にガソリン価格の下落が追い付かなかい展開となった結果、11月上旬から12月中旬にかけてはガソリン価格がドバイ原油価格を上回る状態を維持した他、その価格差は、一時拡大する場面も見られたものの、期間全体としては概ね限定的な幅で推移した。

また、11月末頃にかけ中国において新型コロナウイルス感染が拡大し続けたことにより、同国経済減速に伴う石油化学製品需要低迷懸念が市場で広がったことに加え、韓国でのトラック運転手のストライキ実施により石油化学製品の出荷に支障が発生した結果同国でのナフサ分解装置の稼働が低調となったこと等もあり、アジアでのナフサ需要が抑制された。加えて、欧米諸国等での経済混乱もありガソリン需要が低調であったことにより、ガソリンに混入するナフサ需要が影響を受けたことが世界的なナフサ需給の緩和観測を市場で発生させたことが、アジアのナフサ価格を抑制する形で作用した。しかしながら、ドバイ原油価格の下落にナフサ価格の下落が追い付かない場面が見られたことに加え、11月下旬以降中国での新型コロナウイルス感染者数が減少傾向となったうえ、中国の一部都市において、個人の外出規制及び経済活動の制限を緩和する動きが見られ始めたことにより、同国経済の持ち直しに伴う石油化学製品需要の拡大期待が市場で増大するとともに、原料となるナフサ需要の増加観測が市場で発生したこともあり、従来ナフサ価格がドバイ原油価格を下回っていたナフサとドバイ原油の価格差は11月上旬から12月中旬にかけ縮小する傾向を示したうえ、12月上旬にはナフサ価格がドバイ原油価格を上回る場面が見られるようになった。しかしながら、12月中旬に入るとドバイ原油価格の上昇にナフサ価格の上昇が追い付かない格好となったことから、この時期は再びドバイ原油価格がナフサ価格を上回るようになっている。

11月9日には700万バレル台前半程度の水準であったシンガポールの中間留分在庫は、11月16日には700万バレル弱程度の量へと減少した。その後11月23日には700万バレル台前半程度、11月30日には700万バレル台後半程度の、それぞれ水準へと増加した。それでも、12月7日には700万バレル強程度、12月14日には700万バレル弱程度の量へと、それぞれ減少した結果、11月9日の水準を下回る状態となっている。年末の休暇シーズンに向け東南アジア諸国で軽油を調達する動きが見られたことが、シンガポールにおける中間留分在庫の増加を阻む格好で作用した。しかしながら、2023年2月5日のロシア産石油製品の事実上の輸入禁止に向け相当量の軽油(欧州の石油製品需要の中心でもある)がロシアから欧州に流入したうえ、欧州の製油所が秋場のメンテナンス作業を終了し稼働を上昇するとともに軽油の製造を活発化させた一方、欧州の気候が一時温暖であったこともあり暖房向けの軽油需要が低調であったことにより当該地域での軽油在庫が増加するとともに、欧州での軽油価格の割高感が後退したことが、アジア方面から欧州に向けた軽油の流れを一時抑制した形となった。それでも、欧州での気温が低下傾向となったことにより、シンガポールから欧州方面への輸出が促進される場面も見られた。このため、中国において追加の石油製品輸出枠を付与されたことに伴い、同国からシンガポール方面に軽油が輸出されたものの、シンガポールにおける中間留分在庫は増減しつつも減少傾向となったものと見られる。そのような中で、ドバイ原油価格の下落に軽油価格の下落が追い付かなかった結果、アジアの軽油とドバイ原油との価格差(この場合軽油価格がドバイ原油価格を上回っている)が拡大する場面が見られた。そして、欧米諸国において軽油在庫が増加傾向となったことにより、世界的な軽油需給引き締まり感が後退したことが、アジアでの軽油価格にも下方圧力を加えたことから、11月上旬から12月上旬にかけては、軽油とドバイ原油の価格差は総じて縮小する傾向を示したものの、シンガポールでの中間留分在庫が減少したこともあり、12月中旬には当該価格差は拡大する様相を呈している。

11月9日に2,100万バレル台前半程度の水準であったシンガポールの重油在庫は、11月16日も2,100万バレル台前半程度の量であった。しかしながら、11月23日及び30日には1,900万バレル台後半程度の量へと減少した。12月7日には2,000万バレル台前半程度の量へと回復したものの、12月14日には2,000万バレル強の水準へと減少しており、この結果、11月9日の水準を下回ることとなった。ロシアのウクライナへの事実上の侵攻実施に伴う西側企業等のロシア産石油購入を巡る評判リスクの懸念から欧州で引き取りが敬遠されたロシア産重油に加え、9月22日以降フランスで給与水準引き上げ等の労働条件改善を要求した労働者によるストライキが拡大、10月4日時点で同国の原油精製能力の65%程度に相当する日量74万バレル程度の原油精製能力を保有する製油所の稼働が停止したことから、フランスでの製油所ストライキに伴う操業停止により製油所で燃料として利用されなかった重油等がシンガポールに流入したものと見られることが、シンガポールでの重油在庫を下支えたものと考えられる。ただ、秋場の製油所メンテナンス作業実施等もあり石油製品製造が不活発化した韓国がしばしばシンガポールから重油を輸入した他、価格が高水準であるためLNGの代わりに重油を利用していると見られるバングラデシュ等へもシンガポールから重油が輸出された。また原油価格とともに重油価格が下落したこともあり、船舶用の重油需要が刺激された側面もあった。この結果、シンガポールにおける重油在庫水準は増減しながらも、減少傾向となった。そしてこのようにシンガポールにおける重油在庫の増加もしくは減少傾向が不明確であった一方、原油価格の下落に高硫黄重油価格の下落が追い付かなかった結果、11月中旬から12月上旬にかけてのアジア市場での高硫黄重油とドバイ原油との価格差(この場合高硫黄重油価格がドバイ原油価格を下回っている)は縮小する傾向を示した。しかしながら、12月中旬には原油価格の上昇に高硫黄原油価格の上昇が追い付かなかったこともあり、価格差は拡大する場面が見られた。また、原油価格の下落に低硫黄重油価格の下落が追い付かなかったことから、11月中旬から12月上旬にかけての低硫黄重油とドバイ原油との価格差(この場合低硫黄重油価格がドバイ原油価格を上回っている)は拡大する傾向を示した。しかしながら、11月を中心にして北東アジア等においては気候が温暖であったことがLNG価格を抑制したことにより、発電部門において天然ガスの利用が優先されたことに伴い当該部門での重油の利用が劣後したことが、低硫黄重油価格を抑制したうえ、原油価格の下落に重油価格の下落が追い付かなかったことから、12月中旬において、低硫黄重油とドバイ原油の価格差は縮小する傾向を示した。

 

3. 2022年11月中旬から12月中旬にかけての原油市場等の状況

2022年11月中旬から12月中旬にかけての原油市場においては、中国での新型コロナウイルス感染拡大に伴う同国経済減速と石油需要の伸びの鈍化懸念が市場で拡大したことに加え、ペースは低下したものの、なお米国の金融当局が政策金利引き上げを当面継続する姿勢を見せるなどしたことにより、米国を初めとする世界の経済減速に伴う石油需要の伸びの鈍化に対する不安感が市場で拡大したことが、原油相場に下方圧力を加えた結果、原油価格は下落傾向となり、12月9日には終値が1バレル当たり71.02ドルと2021年12月20日以来の低水準に到達する場面も見られた(図16参照)。

図16 原油価格の推移(2003~22年)

11月14日時点の中国の新型コロナウイルス新規感染者数が16,072人と4月25日以来の高水準に到達した旨同日同国国家衛生健康委員会が報告したことにより、同国経済減速と石油需要の伸びの鈍化懸念が市場で再燃したことに加え、新型コロナウイルス抑制策、経済情勢及び地政学的リスク要因を巡る不透明性により、2022年の世界石油需要を日量10万バレル、2023年の同需要を同20万バレル、それぞれ下方修正した旨、11月14日にOPEC事務局から発表された月刊オイル・マーケット・レポートで明らかになったこと、11月14日に米国エネルギー省エネルギー情報局(EIA)から発表された掘削生産性報告(Drilling Productivity Report)において、2022年12月の同国主要7シェール地域の原油生産量が前月比で日量90,931バレル増加し、同919万バレルと2020年3月(この時は同919万バレル)以来の高水準に到達する旨の見解が披露されたことで、この先の世界石油需給緩和感を市場が意識したことから、11月14日の原油価格は前週末終値比で1バレル当たり3.09ドル下落し、終値は85.87ドルとなった。ただ、11月15日に米国労働省から発表された10月の同国生産者物価指数(PPI)が前年同月比で8.0%の上昇と2021年7月(この時は同8.0%の上昇)以来の低水準の上昇率となった他、市場の事前予想(同8.3%の上昇)を下回ったことにより、米国金融当局による政策金利引き上げペースが減速するとの観測が市場で増大した結果、米ドルが下落するとともに米国株式相場が上昇したことに加え、ロシアから欧州方面へ原油を輸送する「ドルジバ(Druzhba)パイプライン」(原油輸送能力は全体で日量120~140万バレル程度とされる)経由の原油輸送が、輸送圧力の低下により停止した旨11月15日に伝えられたことにより、欧州での石油需給引き締まり感を市場が意識したこと、ポーランドのウクライナ国境に近い地点がミサイル攻撃を受け、2人が死亡した旨11月15日午後早い時間(米国東部時間)に報じられたことにより、ロシアの攻撃激化に伴う欧州等での石油供給混乱に対する懸念が市場で増大したことから、11月15日の原油価格の終値は1バレル当たり86.92ドルと前日終値比で1.05ドル上昇した。しかしながら、「ドルジバ・パイプライン」が稼働を再開した旨ハンガリーのシーヤールトー(Szijjarto)外務貿易相が明らかにしたと11月16日朝(米国東部時間)に報じられたことにより、欧州石油需給引き締まり懸念が市場で後退したことに加え、ポーランドのウクライナ国境に近い地点にミサイルが着弾したことに対し、11月15日夜(同)以降、米国のバイデン大統領を初めとした関係者が、当該ミサイルがロシアから発射された可能性は低い旨示唆したことにより、ロシアと西側諸国等との対立激化による、ロシアからの石油供給減少に対する不安感が市場で緩和したこと、11月15日時点の中国における新型コロナウイルス感染者数が19,609人と4月後半以来の高水準に到達している旨11月16日に伝えられたことにより、同国経済減速と石油需要の伸びの鈍化懸念が市場で増大したこと、11月16日に発表された米国小売大手ターゲットの2022年8~10月期業績が市場の事前予想を下回った他、同年11月~2023年1月期は事業が苦戦するとの見通しを同社が示唆したこともあり、米国株式相場が下落したことから、11月16日の原油価格は前日終値比で1バレル当たり1.33ドル下落し、終値は85.59ドルとなった。さらに、11月16日時点の中国の新型コロナウイルス感染者数が23,132万人と4月以来の高水準に到達した旨11月17日に明らかになったことにより、同国経済成長減速と石油需要の伸びの鈍化懸念が市場で増大したことに加え、米国の足元の3.75~4.00%の政策金利は年率2.00%の物価上昇目標達成のために必要な水準を下回っており、この先政策金利は5.00~7.00%へと引き上げる必要がある旨、11月17日に同国セントルイス連邦準備銀行のブラード総裁が示唆したことにより、米ドルが上昇したことから、11月17日の原油価格の終値は1バレル当たり81.64ドルと前日終値比で3.95ドル下落した。さらに、11月17日時点の中国の新型コロナウイルス感染者数が、25,353人と前日から増加している旨11月18日に中国国家衛生健康委員会が発表したことにより、同国経済成長減速と石油需要の伸び鈍化懸念が市場で増大したことに加え、米国物価上昇抑制のためには政策金利のさらなる引き上げが必要であり、12月13~14日に開催される予定であるFOMCでは、0.75%の政策金利引き上げが決定される可能性もある旨、11月18日に同国ボストン連邦準備銀行のコリンズ総裁が明らかにしたことにより、米ドルが上昇したことから、11月18日の原油価格は前日終値比で1バレル当たり1.56ドル下落し、終値は80.08ドルとなった。この結果原油価格は11月16~18日の3日間で1バレル当たり合計6.84ドル下落した。

また、11月20日に中国の北京市で新型コロナウイルス感染による死者が確認された(前回同国で新型コロナウイルス感染による死者が確認されたのは5月26日の上海市においてであった)ことにより、同日以降同市の個人の外出規制及び経済活動制限が強化された旨11月20日以降伝えられたことにより、同国経済減速と石油需要の鈍化懸念が市場で増大したことに加え、中国での新型コロナウイルス感染拡大に伴う同国石油需要の下振れと、足元のロシアからの石油供給維持を理由として、2022年第4四半期のブレント原油価格予想をこれまでより1バレル当たり10ドル引き下げ同100ドルとする旨米国大手金融機関ゴールドマン・サックスが報告したと11月20日に報じられたことから、11月21日の原油価格は前週末終値比で1バレル当たり0.35ドル下落し終値は79.73ドルとなった(なお、この日を以てNYMEXの2022年12月渡し原油先物契約は取引を終了したが、2023年1月渡し原油先物契約のこの日の終値は80.04ドル(前日終値比0.07ドルの下落)であった)。11月22日には、これまでの原油価格下落に対し値頃感から原油を買い戻す動きが市場で発生したことに加え、12月4日に開催される予定であるOPECプラス産油国閣僚級会合において、最大日量50万バレルの増産を検討している旨11月21日にウォール・ストリート・ジャーナルが報じたことに対し、サウジアラビアのアブドルアジズ エネルギー相が当該報道を否定したうえ、日量200万バレルの減産措置は2023年12月まで実施される他、必要であれば減産措置を強化する旨11月21日に表明した(その後UAE、クウェート及びアルジェリアも増産協議実施を否定した)ことにより、石油需給引き締まり感を市場が意識した流れを引き継いだこと、11月22日朝(米国東部時間)に発表された米国家電量販大手ベスト・バイの2022年8~10月期業績が市場の事前予想を上回っていたうえ、2023年1月通期業績における既存店売上高が前期比10%の減少と、これまでの見通しである同11%減少から上方修正される旨明らかになったこともあり、米国経済減速懸念が市場で後退するとともに米国株式相場が上昇した他、投資家のリスク許容度が拡大したことにより米ドルが下落したことから、この日の原油価格の終値は1バレル当たり80.95ドルと前日終値比で1.22ドル上昇した。しかしながら、中国の1日当たり新型コロナウイルス新規感染者数が11月22日時点で28,183人と11月21日時点の27,307人から増加、4月に到達した新型コロナウイルス感染流行開始以降の最高水準である28,973人に肉薄した状況となった他、同国北京市や上海市等の一部都市において、個人の外出規制が強化された旨11月23日に報じられたこともあり、同国の経済減速と石油需要の伸びの鈍化懸念が市場で増大したことに加え、11月23日にEIAから発表された米国石油統計(11月18日の週分)で、ガソリン在庫が前週比306万バレル、留出油在庫が同172万バレルの、それぞれ増加と、市場の事前予想(ガソリン在庫同38万バレル程度の増加、留出油在庫同55万バレル程度の減少)に反し、もしくは事前予想を上回って増加している旨判明したことにより、米国石油需給緩和感を市場が意識したこと、G7が、1バレル当たり65~70ドルの水準でロシア産石油価格上限を設定すべく協議している旨EUの外交関係者が明らかにしたと11月23日に伝えられ、足元のロシア産原油販売価格(ロッテルダム渡し価格で1バレル当たり60~70ドル程度)と同等か、それを上回る程度となっている旨判明したことにより、原油価格上限設定のロシア産石油供給への影響が限定的になるのではないかとの観測が市場で発生したことから、この日の原油価格は前日終値比で1バレル当たり3.01ドル下落し、終値は77.94ドルとなった。11月24日には、米国感謝祭(サンクスギビング・デー)の休日に伴いこの日の終値は計上されなかったが、11月24日時点の中国の1日当たり新型コロナウイルス新規感染者数が32,695人と新型コロナウイルス感染流行開始以降の最多水準に到達した旨11月25日に同国国家衛生健康委員会が発表、中国各都市で感染が拡大するとともに、個人の外出規制が一層強化されつつあり、一部都市では個人の生活等に混乱が発生し始めている旨11月25日に伝えられたこともあり、同国経済減速と石油需要の伸びの鈍化懸念が市場で増大したことに加え、ロシア産石油販売価格に対し上限を設定するとのG7の提案を協議していたEU加盟国間で意見の相違が解消されなかったことに伴い、11月25日夜(現地時間)に予定されていた会合が翌週へと延期された旨11月25日に伝えられたことにより、当該価格上限設定に伴う、ロシア産石油供給の混乱と石油需給引き締まりの可能性に対する懸念が市場で後退したことから、この日の原油価格の終値は1バレル当たり76.28ドルと前取引日終値比で1.66ドル下落した。この結果原油価格は11月23~25日の2取引日間で1バレル当たり合計4.67ドルの下落となった。

しかしながら、11月28日には、これまでの原油価格下落に対し値頃感から原油を買い戻す動きが市場で発生したことに加え、12月4日に開催される予定であるOPECプラス産油国閣僚級会合で原油生産目標の削減が決定される可能性があるとの観測が市場で発生している旨11月28日にブルームバーグ通信が報じたことから、この日の原油価格の終値は1バレル当たり77.24ドルと前週末終値比で0.96ドル上昇した。また、11月29日も、高齢者に対する新型コロナウイルスワクチン接種を強化する方針である旨この日中国国家衛生健康委員会が発表したことが、この先同国の個人の外出規制及び経済活動制限の緩和に向けた動きと受け取られたことにより、同国経済及び石油需要回復に対する期待が市場で増大したことから、この日の原油価格は前日終値比で1バレル当たり0.96ドル上昇し、終値は78.20ドルとなった。11月30日も、この日中国広東省広州市及び河南省鄭州市等において新型コロナウイルス感染抑制策が緩和されたうえ、新型コロナウイルスオミクロン変異株の感染力が相対的に弱い他、ワクチン接種が進展していること等により、中国の新型コロナウイルス感染対策は新たな段階に入っている旨11月30日に同国の孫春蘭副首相が示唆したことにより、新型コロナウイルス感染抑制のための個人の外出規制及び経済活動制限の緩和に伴う同国経済及び石油需要回復への期待が市場で増大したことに加え、11月30日にEIAから発表された米国石油統計(11月25日の週分)で、原油在庫が前週比で1,258万バレルの減少と2019年6月21日の週(この時は前週比で1,279万バレルの減少)以来の大幅な減少となった他市場の事前予想(同276~312万バレル程度の減少)を上回って減少している旨判明したこと、11月30日に行われた講演で、FRBのパウエル議長が、早ければ12月13~14日に開催される予定である次回の連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利引き上げペースの減速が決定される可能性がある旨示唆したことにより、米ドルが下落するとともに、米国金融当局による金融引き締め政策緩和に伴う同国経済回復期待が市場で増大したこともあり、米国株式相場が上昇したことから、この日の原油価格の終値は1バレル当たり80.55ドルと前日終値比で2.35ドル上昇した。さらに、11月30日現在の中国の1日当たり新型コロナウイルス新規感染者数が36,061人と前日の37,828人から減少した旨12月1日に同国国家衛生健康委員会が発表した他、同国での新型コロナウイルス感染者の一部につき隔離施設ではなく自宅での隔離を認める方針である12月1日に報じられたことにより、同国の新型コロナウイルス感染抑制策の緩和継続に対する期待感が市場で増大したことに加え、11月30日に行われた講演で、パウエルFRB議長が、早ければ次回のFOMCで政策金利引き上げペースの減速が決定される可能性がある旨示唆した流れを引き継いだことにより、米ドルの下落が継続したことから、この日の原油価格は前日終値比で1バレル当たり0.67ドル上昇し、終値は81.22ドルとなった。この結果原油価格は11月28日~12月1日の4日間で1バレル当たり合計4.94ドル上昇した。ただ、12月2日には、これまでの原油価格上昇に対する利益確定の動きが市場で発生したことに加え、12月4日に開催が予定されるOPECプラス産油国閣僚級会合を控えた持ち高調整が市場で発生したことから、この日の原油価格は前日終値比で1バレル当たり1.24ドル下落し、終値は79.98ドルとなった。

12月5日には、この日米国供給管理協会(ISM)から発表された11月の同国非製造業景況感指数(50が当該部門拡大と縮小の分岐点)が56.5と10月の54.4から上昇した他市場の事前予想(53.3~53.5)を上回ったことにより、米国金融当局が物価上昇抑制のための政策金利引き上げを継続するとの観測が市場で発生したこともあり、米ドルが上昇するとともに米国株式相場が下落したことから、この日の原油価格の終値は1バレル当たり76.93ドルと前週末終値比で3.05ドル下落した。また、景気後退や、それに伴う業績の悪化の可能性に関し、米国大手金融機関ゴールドマン・サックス、バンク・オブ・アメリカ及びJPモルガンの経営幹部が懸念を明らかにした旨12月6日に報じられたこともあり、同国株式相場が下落したことから、この日の原油価格は前日終値比で1バレル当たり2.68ドル下落し、終値は74.25ドルとなった。12月7日には、この日EIAから発表された米国石油統計(12月2日の週分)で、ガソリン在庫が前週比で532万バレル、留出油在庫同616万バレルの、それぞれ増加と、市場の事前予想(ガソリン在庫同270万バレル程度、留出油在庫同220万バレル程度の、それぞれ増加)を上回って増加している旨判明したことにより、同国石油需給緩和感を市場が意識したことから、この日の原油価格の終値は1バレル当たり72.01ドルと前日終値比で2.24ドル下落した。12月8日も、12月7日にEIAから発表された米国石油統計でガソリン及び留出油在庫が市場の事前予想を上回って増加している旨判明したことにより同国石油需給緩和感を市場が意識した流れを引き継いだことから、この日の原油価格は前日終値比で1バレル当たり0.55ドル下落し、終値は71.46ドルとなった。また、米国のキーストーン・パイプライン(操業者:TCエナジー、カナダ・アルバータ州ハーディスティ~米国オクラホマ州クッシング他、原油輸送能力日量86万バレル)がカンザス州内における14,000バレルの原油漏洩により12月7日午後9時頃(米国東部時間)稼働を停止したものの、12月10日には部分的に操業を再開する見通しである旨12月9日に報じられたことにより、当該パイプライン停止の長期化に伴う米国石油需給引き締まり感が市場で後退したことに加え、12月9日に米国労働省から発表された11月の同国生産者物価指数(PPI)が前月比で0.3%、前年同月比で7.4%の、それぞれ上昇と、市場の事前予想(前月比0.2%、前年同月比7.2%の、それぞれ上昇)を上回っている旨判明したことにより、米国金融当局による政策金利引き上げが継続する結果米国経済が減速するとの観測が市場で増大したこともあり、米国株式相場が下落したことから、12月9日の原油価格の終値は1バレル当たり71.02ドルと前日終値比で0.44ドル下落した他、この日の終値は2021年12月20日の終値(1バレル当たり68.23ドル)以来の低水準に到達した。また、この結果原油価格は12月5~9日の5日間で1バレル当たり合計8.96ドルの下落となった。

しかしながら、12月12日には、これまでの原油価格下落に対し値頃感から原油を買い戻す動きが市場で発生したことに加え、米国キーストーン・パイプラインの原油漏洩に伴う操業停止につき、原因が特定できておらず操業再開時期も未定である旨操業者であるTCエナジーが示唆したことにより、米国での石油需給引き締まり感を市場が意識したこと、12月12日にEIAから発表される予定である米国石油統計(12月9日の週分)で原油在庫が前週比で減少している旨判明するとの観測が市場で発生したことから、この日の原油価格の終値は1バレル当たり73.17ドルと前週末終値比で2.15ドル上昇した。また、中国は新型コロナウイルス感染抑制策の緩和を進めることにより将来的には国外からの渡航者の受入をより容易にする方針である旨同国の秦剛駐米大使が12月12日に示唆したとこの日の午後遅く(米国東部時間)に報じられたことにより、同国経済及び石油需要回復期待が12月13日の市場で増大したことに加え、12月13日に米国労働省から発表された11月の同国消費者物価指数(CPI)が前年同月比で7.1%の上昇と10月の同7.7%上昇から上昇率が低下した他市場の事前予想(同7.3%の上昇)を下回ったことにより、米国金融当局による金融引き締め政策の減速に対する観測が市場で広がったこともあり、米ドルが下落したこと、米国キーストーン・パイプラインの原油漏洩に伴う操業停止につき、悪天候及び地形(修復現場付近に河川が存在すること)を理由として作業が遅延しつつあるとともに、操業再開まで数週間を要すると予想される旨の関係者の見解が12月13日に報じられたことにより、同国石油需給引き締まり感を市場が意識したことから、12月13日の原油価格は前日終値比で1バレル当たり2.22ドル上昇し、終値は75.39ドルとなった。12月14日も、この日IEAから発表されたオイル・マーケット・レポートにおいて、中国の新型コロナウイルス感染抑制策緩和に伴う個人の往来及び経済活動の活発化を一因として、2023年の世界石油需要を日量25万バレル上方修正したうえ、2023年第2四半期に向け石油需給が引き締まることにより原油価格が上昇する可能性を排除できない旨の見解を、IEAが披露したことにより、この先の世界石油需給引き締まり感を市場が意識したことから、この日の原油価格の終値は1バレル当たり77.28ドルと前日終値比で1.89ドル上昇した。この結果原油価格は12月12~14日の3日間で1バレル当たり合計6.26ドルの上昇となった。ただ、12月15日には、この日中国国家統計局から発表された11月の同国鉱工業生産が前年同月比で2.2%の増加と10月の同5.0%の増加から伸びが鈍化した他市場の事前予想(同3.6%の増加)を下回ったうえ、同月の同国小売売上高が同5.9%の減少と10月の同0.5%の減少から減少率が拡大した他、減少率が市場の事前予想(同3.7%の減少)を上回ったことにより、同国の経済減速と石油需要の伸びの鈍化懸念が市場で増大したことに加え、原油漏洩のため操業を停止していた米国キーストーン・パイプラインの一部区間につき操業を再開する旨操業者であるTCエナジーが規制当局及び顧客に対し通知したと12月14日夜(米国東部時間)に同社が発表したことにより、米国石油需給引き締まり感が市場で後退したこと、12月15日に開催された欧州中央銀行(ECB)理事会及び同じく同日に開催された英国イングランド銀行(中央銀行)金融政策委員会において、ともに0.5%の政策金利引き上げが決定された他、12月13~14日に開催されたFOMCにおいて、0.50%の政策金利の引き上げを決定、これまでの0.75%の政策金利引き上げから引き上げ幅が縮小したものの、今回のFOMC開催の際に示された2023年末の政策金利予想が5.1%と、9月20~21日のFOMC開催の際に示された前回予想である4.6%から上方修正された旨判明したうえ、FOMC開催後FRBのパウエル議長が大幅な政策金利引き上げの終了は当面ない旨示唆したことにより、米国金融当局の金融引き締め政策継続観測が市場で増大した流れを引き継いだこと、さらに、12月15日に米国商務省から発表された11月の同国小売売上高が前月比で0.6%の減少と減少率が市場の事前予想(同0.1~0.2%の減少)を上回ったこともあり、米国株式相場が下落したこと、米国金融当局が当面相当程度の政策金利引き上げを継続するとの観測が市場で増大したこともあり米ドルが上昇したことから、12月15日の原油価格の終値は1バレル当たり76.11ドルと前日終値比で1.17ドル下落した。また、足元で米国の物価上昇ペース鈍化の兆候が見られるものの、なおこの先相当の期間政策金利の引き上げ継続及び高水準の政策金利維持が必要となるとの見解を同国ニューヨーク連邦準備銀行のウイリアムズ総裁及びサンフランシスコ連邦準備銀行のデーリー総裁が12月16日に明らかにしたことにより、米国金融当局による積極的な金融引き締め政策が推進し続けられることに伴い同国経済が減速する可能性に対する懸念が市場で増大したこともあり、米国株式相場が下落したことから、12月16日の原油価格は前日終値比で1バレル当たり1.82ドル下落し、終値は74.29ドルとなった。この結果原油価格は12月15~16日の2日間で1バレル当たり合計2.99ドル下落した。

 

4. 原油市場における主な注目点等

今後の石油市場を見る上での地政学的リスク要因面での主な注目点は、ロシアのウクライナへの事実上の侵攻実施、及びイランを巡る情勢であろう。12月5日に実施された、G7及びEU等によるロシア産石油販売価格に対する事実上の上限設定(2023年1月19日最終目的地陸揚げまでの猶予期間あり)と、ロシアによる対抗措置によるさらなるロシア産石油供給の停止の可能性、及び、同じく12月5日にEUにより実施されたロシアから海上輸送経由で販売される原油の原則購入禁止に伴う世界石油供給の平準化の進展具合が、石油市場関係者の注目を集めることとなろう。12月5日よりロシア産石油販売価格に上限を設定する旨のG7及びEU諸国等による制裁が実施されることに対しては、如何なる水準の価格上限であろうと、ロシア産石油の販売を禁止する方向で検討している旨12月4日にロシアのノバク副首相が明らかにした。そして、この先ロシアからの欧州諸国等への石油供給が減少する反面、中国及びインドを含む消費国等がより多くのロシア産原油等を引き取る一方、従来購入していた非ロシア産石油を中国及びインドを含む消費国等が引き取らなくなることにより、そのような石油が円滑に欧州諸国等に回り込むようであれば、原油相場の乱高下は短期間かつ小規模なものにとどまる可能性があるものと考えられる。ロシアからの原油販売価格が上限価格を超過しても、ロシア及び中国は西側諸国等による制裁を回避するため、ロシア及び中国により独自に用意されるタンカーと独自に付保される保険等を利用してロシア産原油を購入する可能性があると指摘する向きもある。また、インドについても、西側諸国等によるロシア原油販売価格上限設定にかかわらず、西側諸国等以外の国により提供される輸送サービスを利用してロシア産原油を調達する意向である旨同国政府高官が明らかにしたと12月2日及び5日に伝えられる。但し、西側諸国以外の国により提供される輸送サービス、特に保険(及び再保険)付保は提供規模が限られる結果、必要とされる保険付保等の輸送関連サービスの利用が困難になることにより、石油輸送上の支障が発生するとの見方もある。また、バルト海沿岸港等大西洋圏に位置するロシア港湾から欧州諸国等への石油輸送に要する期間は数日~数週間程度であったが、中国及びインド等に仕向地が変更されれば、輸送期間は数週間~1ヶ月超程度へと延長することから、石油タンカーはより長期間石油を積載した状態のままとなることにより、石油輸送を巡る効率が低下するとともに、新たに石油を積載するために利用可能なタンカー数が減少する結果、タンカー運賃が相当程度上昇することに伴い、石油の円滑な流通に支障が生じることも想定されうる。このようなことから、ロシア産石油供給先変更に伴う世界の石油流通平準化が円滑に進むかどうかを巡り不透明感が強いことにより、石油需給引き締まり懸念が市場で発生する結果、原油相場が上昇する場面が見られることもありうる。

さらに、トルコ海運当局がボスポラス(及び近隣のダーダネルス)海峡を通過する石油タンカーに対し保険付保に関し、より大幅に詳細な書類の提出を要求したことに伴い、11月29日以降同海峡付近で石油を輸送するタンカーの航行が停止、18隻が滞船している旨12月9日にトルコ海運当局が明らかにしたこともあり、石油流通の混乱に対する懸念が市場で発生した。ただ、西側諸国等がトルコ側と協議等したこともあり、12月10日時点で27隻に上った石油タンカー滞船隻数は12月11日には19隻に減少するなど、タンカーが同海峡を通過し始めていることが示唆される。それでも、今後もロシア産石油の輸送に対し、西側諸国等による制裁を巡る不透明な展望に伴い制裁条件に抵触する恐れがあることを懸念する余り、輸送サービス関連業者等がサービスの提供に過度に消極的になる結果、ロシア産石油の供給が円滑に行われなくなることにより、少なくとも一部地域において石油需給の引き締まり感が発生するとともに、原油相場に上方圧力が加わる場面が見られる可能性もある。

11月14日にEU外相は、スカーフ(ヘジャブ)を適切に着用していなかったとしてイランの風紀警察が同国西部クルディスタン州出身の女性を拘束した後その女性が死亡したことをきっかけとして、イラン国内で発生した抗議活動の弾圧に関与したとの理由により、イランのハビディ内相及び革命防衛隊幹部を含む29人及び3団体に対し、EU域内資産凍結とEUへの渡航禁止を内容とする制裁を発動することで合意した(同日発効)が、これに対し、11月15日にイラン外務省は、発動した制裁措置は根拠がなく、違法行為であるとして、非難した。また、11月14日にはイラン革命防衛隊が、イラク北部のクルド人自治区の都市であるアルビル及びスレイマニヤ郊外の反イラン武装勢力の拠点等を無人機及びミサイルで攻撃した(1人死亡、10人負傷)旨同日報じられた(スカーフ着用を巡るイランでの抗議活動の激化に対し、イラクのクルド人勢力が関与している旨イラン側が主張していることが背景にある)。さらに、イランのライシ政権によるロシアに対する無人機供与と前述の抗議活動弾圧のため、イラン核合意正常化に向けた西側諸国等とイランとの間での協議妥結に向けた関心が低下している旨11月14日に米国国務省のイラン担当特使であるマレー氏は示唆した。そして、11月15日には、米国財務省が、ロシアがウクライナのインフラ施設等への攻撃に使用している無人機の製造等に関与しているとして、イランの軍事機器製造会社であるシャヘド・アビエーション・インダストリーズ・リサーチ・センターとコッズ・アビエーション・インダストリーズ、ロシアの民間軍事企業ワグネル、及びUAEの企業2社に対し、米国内資産凍結及び米国人との取引禁止を内容とする制裁を発動した。そして、11月16日から3日の予定で実施された国際原子力機関(IAEA)定例理事会においては、米国、英国、フランス及びドイツがイランの核開発(IAEAに未申告の施設でウランの痕跡が発見されたことに対しイラン側が適切な説明を行っていないことを指す)を懸念するとともに技術的に妥当な内容の説明を速やかに行うことが重要である旨の事実上の対イラン非難決議案を提出、17日に決議は賛成多数採択された(ロシア及び中国は反対した)。他方、イスラエル企業家が運営に関与するとされる石油製品タンカー「パシフィック・ジルコン(Pacific Zircon)」(石油製品積載能力約5万トン、軽油を輸送していたとされる)が、11月15日午後7時半頃(現地時間)、オマーン沖150マイル(240キロメートル)付近で爆薬を積載した無人機に攻撃された旨11月16日早朝(米国東部時間)に報じられた(人的被害及び原油漏洩はなく、影響は軽微であったと伝えられる)。これについて、11月16日には米国バイデン政権のサリバン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)が、当該攻撃はイランの無人機によるものである可能性が高い旨の声明を発表した他、11月22日には米国海軍が、攻撃に使用された無人機は、ロシアのウクライナへの事実上の侵攻実施に際しイランがロシアに供給したものと同種のものであった旨発表している。また、11月17日には米国財務省が、イラン産石油化学製品輸出に関与したとして、中国及びUAE等の企業13社に対し、米国内資産凍結及び米国人との取引禁止を内容とする制裁を発動した。他方、イランは2021年4月以降濃縮度60%の濃縮ウランを製造していた同国中部ナタンズの核開発施設に加え、同国中部にあるフォルドゥにある核開発施設においても濃縮度60%の濃縮ウランの製造を開始した旨11月22日に伝えられるなど、イランの核合意逸脱がさらに進んでいることが示唆された。12月8日に米国財務省は、イランの革命防衛隊コッズ部隊が実施する石油輸出及び資金洗浄に関わったことを理由として、英領ジブラルタルを拠点とする30程度の個人及び法人に対し、米国内資産の凍結及び米国人との取引を禁止することを内容とする制裁を発動する旨決定した。また、12月9日には、米国国家安全保障会議のカービー戦略広報調整官が、ロシアの無人機生産にイランが協力している他、イランがロシアに対して数百発のミサイルを供与しようとしている旨示唆した(英国のウッドワード国連大使も12月9日に同趣の発言をしている)。このように、従来から焦点となっていた、IAEAに未申告であったイラン国内施設でのウラン関連活動の痕跡に対しイランが西側諸国等を満足させるような説明を行っていないことに加え、イランでのスカーフの着用指導に伴う女性死亡をきっかけとして発生した抗議活動の弾圧、ロシアの無人機使用に対するイランによる支援等を巡り、西側諸国等とイランとの対立が高まりつつあるように見受けられる他、イラン核合意正常化を巡る西側諸国等とイランとの協議が比較的順調に進捗しているように見受けられた時点では見られなかった、イラン産石油関連製品の国外への供給に関与した企業等に対する米国政府による制裁発動等が、最近は散見されるようになってきていることから、早期にイラン核合意正常化を巡る関係者間での協議が妥結に到達し、米国によるイラン産石油等の輸出に対する制裁が緩和されるとともに、世界石油市場に向けたイランからの原油等の供給が増加する可能性は、少なくとも短期的には低下しており、この面において世界石油需給緩和感の醸成による原油相場への下方圧力は加わり難いものと考えられる。むしろ、オマーン湾沖合において、無人機で石油タンカーが攻撃される事象が発生し、この攻撃はイランが実施したものと米国側に理解されている旨示唆されており、今後も類似の事例が見られるとともに、中東情勢の不安定化に伴う当該地域からの石油供給途絶懸念が市場で拡大することを通じ、原油相場に上方圧力が加わる場面が見られることもありうる。

経済面での要因は、米国政策金利の引き上げを含む金融引き締め政策等を巡る動向、及び中国の新型コロナウイルス感染等を巡る状況となろう。11月10日に米国労働省から発表された10月の同国消費者物価指数(CPI)上昇率は前年同月比7.7%と9月の同8.2%から伸び率が低下した他、市場の事前予想(同8.0%)を下回った。また、11月23日に明らかになったFOMC議事録(11月1~2日開催分)では、近いうちに政策金利引き上げペースの減速が妥当となると複数の同国金融当局関係者が認識していた旨明らかになった。加えて、11月30日に行われた講演で、パウエルFRB議長が、早ければ12月13~14日に開催される予定である次回のFOMCにおいて、同国政策金利引き上げペースの減速が決定される可能性がある旨示唆した。果たして実際、12月13~14日に開催されたFOMCでは、それまでの政策金利引き上げ幅である0.75%ではなく、0.50%の引き上げを実施することで合意した。このようなことにより、同国の積極的な金融引き締め政策に伴う経済減速懸念等が市場で後退する格好となったことが、原油相場を下支えする側面があるものと見られる。しかしながら、12月2日に米国労働省より発表された、11月の同国非農業部門雇用者数が前月比で26.3万人の増加と市場の事前予想(同20.0万人の増加)を上回った他、11月の同国の時間当たり平均賃金が前月比で0.6%、前年同月比で同5.1%の、それぞれ上昇と、10月の前月比0.5%、前年同月比4.9%の、それぞれ上昇から、伸びが加速したことに加え、12月5日に米国供給管理協会(ISM)から発表された11月の同国非製造業景況感指数(50が当該部門拡大と縮小の分岐点)が56.5と10月の54.4から上昇した他市場の事前予想(53.3~53.5)を上回るなど、依然米国経済が堅調である結果、物価上昇が継続する余地があることが示唆された。そして、12月13~14日のFOMC開催の際に示された、金融当局関係者による2023年末の政策金利予想が5.1%と、9月20~21日のFOMC開催の際に示された前回の予想である4.6%から上方修正された旨判明した他、FOMC開催後FRBのパウエル議長が大幅な政策金利引き上げの終了は当面ない旨示唆した。また、なおこの先相当の期間政策金利の引き上げの継続及び高水準の政策金利の維持が必要となるとの見解を同国ニューヨーク連邦準備銀行のウイリアムズ総裁、サンフランシスコ連邦準備銀行のデーリー総裁及びクリーブランド連邦準備銀行のメスター総裁が12月16日に明らかにした。従って、上昇幅は縮小するものの今後も当面政策金利は上昇し続ける可能性があり、この面で米ドルが上昇するとともに、12月15日に開催されたECB理事会及び同じく同日に開催された英国イングランド銀行(中央銀行)金融政策委員会において、ともに0.5%の政策金利引き上げが決定されるなどしていることと併せ、今後も欧米諸国等の金融当局により政策金利の引き上げを含め比較的積極的な金融引き締め政策の推進が継続することにより、世界経済減速懸念が市場で増大するとともに米国株式相場が下落する結果、原油相場に下方圧力が加わる場面が見られる可能性も残っている。このようなこともあり、今後も米国等の経済指標類の内容に加え、パウエルFRB 議長を初めとする米国金融当局関係者等による、政策金利引き上げペースや、政策金利引き上げ終了時期等に関する発言には注目する必要があろう。

中国では、同国への渡航者の隔離期間を従来の10日間(宿泊施設等で7日間、自宅で3日間の、それぞれ隔離)から8日間(宿泊施設等で5日間、自宅で3日間の、それぞれ隔離)へと短縮する他、濃厚接触者の濃厚接触者(いわゆる「二次接触者」)の特定作業も終了するうえ、航路により新型コロナウイルス感染者を渡航させた航空会社に対し一部の路線の運行停止を義務付ける措置を廃止する旨11月11日に同国国家衛生健康委員会が発表した。加えて、新型コロナウイルスオミクロン変異株の感染力が相対的に弱い他、ワクチン接種が進展していること等により、中国の新型コロナウイルス感染対策は新たな段階に入っている旨11月30日に同国の孫春蘭副首相が示唆した。また、中国の習近平国家主席等も新型コロナウイルスオミクロン変異株の人体への影響は限定的である旨明らかにしている(中国で感染が流行している新型コロナウイルスによる死亡率は低水準である旨習近平国家主席はEUのミッシェル大統領に対し明らかにした旨12月2日午後遅く(米国東部時間)報じられた)他、同国各都市では新型コロナウイルス感染抑制策や検査態勢の緩和が行われつつある。ただ、現時点では、検査態勢縮小の影響もあり、かえって感染規模の把握が困難となった他中国において新型コロナウイルス感染が拡大しつつあるととともに、新型コロナウイルスに感染したために、もしくは感染を回避するために、同国の個人が外出を敬遠するようになっており、個人の外出及び経済活動の回復の兆しは必ずしも明確には見られないと伝える向きもある。それでも、今後新型コロナウイルス撲滅から新型コロナウイルスとの共生へと中国政府が方針を転換することにより同国の個人の外出及び経済活動が回復に向かう結果石油需要が持ち直すとの期待、そして実際に同国経済が持ち直しつつあることを示唆する経済指標類の発表等により、同国の石油需要の伸びの加速期待が市場で広がることを通じ、原油価格が上振れする可能性も存在する。そして、この先中国において新型コロナウイルス感染抑制策緩和もしくは景気刺激策の検討の動きが見られたり(既に、12月15~16日に開催された、2023年の同国経済政策方針につき検討することを主目的とする中国中央経済工作会議においては、新型コロナウイルスとの共生を図りつつ、経済成長を促進すべく金融及び財政面からの景気刺激策を推進する旨の方針を打ち出した)、実際に実施されたりするようであれば、そのような方策を通じ同国経済及び石油需要の回復に対する期待が市場で拡大することにより、原油相場に上方圧力が加わる場面が見られることもありうる。しかしながら、新型コロナウイルス感染者数が増加し続けることにより、都市封鎖を含む、個人の外出規制及び経済活動制限を中国当局が再び強化する(実際感染拡大に伴い、12月19日より上海市の大部分の学級が閉鎖される旨12月17日に伝えられる)ようであれば、中国の経済減速と石油需要の伸びの鈍化懸念が市場で再燃することにより、原油相場に下方圧力を加える可能性もある。このようなことから、中国の新型コロナウイルス感染拡大状況と中国保健衛生当局等の対応などには引き続き十分注意する必要があろう。

北半球では既に冬場の暖房シーズンに突入しているが、これに併せ、暖房用石油製品需要が拡大、製油所も秋場のメンテナンス作業を終了し稼働を上昇、原油精製処理量を増加させるとともに原油購入を活発化させるとの観測が市場で増大しやすくなっており、このような市場での季節的な需給引き締まり感の醸成が当面暖房用石油製品価格とともに原油相場を下支えする格好となるものと考えられる。そして、米国の暖房油消費の中心地である北東部を含め北半球の主要暖房用石油製品消費地域における気温や気温予報に対して市場関係者は敏感に反応するものと見られ、足元の気温が低下したり、気温が低下するとの予報が発表されたりするようだと、需給の引き締まり感が市場で強まる結果、暖房油価格が上昇、それに引きずられて原油価格に上方圧力が加わる可能性がある。ただ、12月8日に米国海洋大気庁(NOAA)から発表された、2022~23年の冬場のラニーニャ現象に関する予報では、足元で発生しているとされるラニーニャ現象(日付変更線付近から南米沿岸にかけての太平洋赤道域で海面の水温が平年より低くなる現象)が、2023年1~3月は50%の確率で、また、2023年2~4月は71%の確率で、それぞれ発生しないという方向に変化している(11月10日時点では、2022年12月~2023年2月は76%の確率でラニーニャ現象が発生する旨予想していた)。ラニーニャ現象が発生すると北半球では気温が低下しやすいため、石油市場関係者が気温の低下に伴う暖房用燃料需要の盛り上がりに関し神経質になりやすいが、この先ラニーニャ現象が後退するということであれば、この面では、暖房用石油製品需給の引き締まり感の強まりに伴う当該製品及び原油価格の上振れに対する心理は抑制される格好となりやすいものと考えられる。それでも、少なくとも足元ではラニーニャ現象は発生していることから、なお寒波が来襲するとともに暖房用石油製品需要が刺激される結果、原油相場が上振れするといった展開となることも否定できないため、当面は米国等の気温の動向等には注意する必要があろう。

なお、12月末にかけ、米国メキシコ湾岸の主要製油所に通じるヒューストン運河(Houston Ship Channel)等において発生する濃霧の影響で原油輸送タンカーの航行にしばしば支障が生じることにより当該製油所への原油供給が影響を受けるとともに原油在庫の積み上げが鈍化することがありうる他、米国のテキサス州やルイジアナ州では年末の石油在庫評価額に対して固定資産税等が課税されることから、課税額を低減させるために精製業者等は必要以上の陸上在庫保有を敬遠することにより原油在庫が相当程度減少する場面が見られる可能性がある(もっとも、その間原油は沖合に停泊するタンカーに貯蔵されていると言われている)。このようなことから、年末にかけ発表される米国石油統計では、特にメキシコ湾岸地域での原油在庫等が相当程度減少傾向を示すことにより、これが市場で石油需給の引き締まりの兆候と受け取られ、原油価格が上振れする可能性もある(ただ、1月以降は製油所等での原油等の受入が再開される(沖合で停泊していた原油貯蔵タンカーが接岸し陸上タンクへと原油を送出し始める)ことから、反動で相当程度の原油在庫増加が見られる結果、原油相場が押し下げられる場面が見られることもありうる)。

他方、米国のキーストーン・パイプライン(操業者:TCエナジー、カナダ・アルバータ州ハーディスティ~米国オクラホマ州クッシング及びイリノイ州パトカ、原油輸送能力日量86万バレルであるが直近の輸送量は日量62.2万バレルであったとされる)がカンザス州内において14,000バレルの原油漏洩が発生したことにより12月7日午後9時頃(米国東部時間)に稼働を停止、12月10日には部分的に操業を再開する見通しである旨12月9日に報じられたものの、全面的な操業再開時期は未定である旨12月11日にTCエナジーが明らかにしている。12月14日には原油漏洩の影響を受けていないイリノイ州パトカ方面への原油輸送については再開したものの、オクラホマ州クッシング方面への原油輸送再開目処は依然立っていないとされる(なお、12月18日現在規制当局に対し操業再開計画が提出されたとの報告はない)。当該パイプラインはカナダ産原油等を米国の原油貯蔵施設集積地であるクッシング及び精製施設中心地であるメキシコ湾岸地域に輸送する主要経路となっていることから、長期間停止するようであれば、米国の石油需給引き締まり感が強まるとともに、特にクッシングで受け渡されるWTI等の原油価格がブレント等他の原油に比べて押し上げられやすくなるものと考えられる。

また、これまで気温が比較的高かった結果暖房のための民生部門での天然ガス需要及び価格が抑制されていた欧州では、最近気温が低下しつつあり、暖房用天然ガス需要が喚起される一方、ロシアから欧州に向けたパイプライン経由での天然ガス供給が大幅に落ち込んでいることもあり、天然ガス需給の引き締まり感が市場で増大するとともに天然ガス価格が上昇しやすい状況となっている。既に12月17日の時点でのオランダTTF天然ガス先物価格は100万Btu当たり推定45.953ドル(原油換算1バレル当たり276ドル)と10月24日時点の同28.698ドルから60%上昇しており、今後も価格がこのような水準を維持するか、一層上昇するといった展開となるようであれば、天然ガスから石油への燃料転換が促進されるとの観測が市場で発生する結果、原油相場に上方圧力が加わる可能性もある。

OPECプラス産油国は次回の閣僚級会合を2023年6月4日に開催することとしており、現時点ではそれまでの6ヶ月間程度は閣僚級会合を開催しない予定である。しかしながら、12月5日を以てロシアにより海上輸送経由で販売される原油の購入をEU諸国が原則禁止したことや、同じく12月5日に実施された、G7やEU等によるロシア産石油販売に対する事実上の上限価格設定に対するロシアによる石油販売制限検討の動き、そしてその後の世界石油需給の平準化に向けたプロセス、及び中国の新型コロナウイルス感染拡大状況と同国保健衛生当局の対応等を含め、原油価格を含む石油市場の動向を巡っては不透明感が強い状態が当面継続するものと考えられる。そして不透明要因の展開次第では、次回OPECプラス産油国閣僚級会合開催以前の段階で原油価格が乱高下するといった場面が見られることも否定できない。しかしながら、仮に石油需給緩和感が市場で広がることにより、原油価格の下落が持続する、もしくは原油価格が急落する兆候が見られる、といった場合、OPECプラス産油国が原油生産を調整すべく速やかに行動しなければ、OPECは原油価格下落抑制への対応が後手に回るとの印象を市場に与える結果、原油価格が下落し続けるとともにOPECプラス産油国による原油生産調整方策を以てしても原油価格が制御不能な事態に陥ることにより、ロシアを含め増産に苦慮する産油国を中心として原油収入の減少を招く恐れがあることから、そうなる前にOPECプラス産油国は原油価格下落抑制のために先制的に原油生産目標削減に言及する(いわゆる「口先介入」を行う)他、それでも原油価格の下落が抑制されないようであれば、原油生産目標引き下げの検討を実施、そして、6月4日に開催される予定である次回OPECプラス産油国閣僚級会合を待たずして、臨時のOPECプラス産油国閣僚級会合を開催することを含め、原油生産目標引き下げ決定のための協議の機会を設け、原油生産目標等の再調整を実施することを通じ、原油相場下落を抑制しようとする可能性があるものと考えられる。

全体としては、既に北半球では冬場の暖房用燃料需要期に突入していることから、季節的な石油需給の引き締まり感が市場で意識されやすく、この面では原油相場が下支えされる他、気温が低下したり低下するとの予報が発表されたりするようであれば、原油相場に上方圧力が加わる場面が見られることもありうる。また、中国の新型コロナウイルス感染抑制策の緩和と個人の外出及び経済活動の促進に伴う石油需要の回復に対する期待も原油相場に上方圧力を加えやすいものと考えられるが、同国では新型コロナウイルス感染が拡大するとともに個人の外出が敬遠されつつあるように見受けられることにより、短期的には石油需要に負の影響が及ぶ可能性もあることから、同国の新型コロナウイルス感染を巡る状況についてはこの先も注意する必要があろう。さらに、ロシア産石油供給に制限を加える西側諸国等による制裁を巡っては、輸送サービス等の面での混乱及びロシアによる石油供給削減の報復措置等の実施による石油需給引き締まり感が市場で増大することにより、原油相場が上振れするといった展開も想定される。また、原油価格が下落し続ける、もしくは原油価格が急落する兆候を見せる場合には、OPECプラス産油国が減産措置を強化する姿勢を示唆すること等により、原油相場の下落抑制を図ろうとするものと考えられる。そして、米国金融当局による政策金利引き上げを含む金融引き締め政策の減速は原油価格を上向かせる形で作用すると見られるものの、金融引き締め政策の終了時期を巡っては不透明感が強いことから、この面では原油価格が乱高下しやすい他、この先発表される経済指標類の内容が原油相場に織り込まれる場面が見られる可能性もあるものと考えられる。

 

以上

(この報告は2022年12月19日時点のものです)

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