ページ番号1009576 更新日 令和4年12月20日

(短報)サハリン2・シェルの権益に対する査定額をロシア政府が発表

レポート属性
レポートID 1009576
作成日 2022-12-20 00:00:00 +0900
更新日 2022-12-20 11:14:03 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 市場
著者 原田 大輔
著者直接入力
年度 2022
Vol
No
ページ数 3
抽出データ
地域1 旧ソ連
国1 ロシア
地域2
国2
地域3
国3
地域4
国4
地域5
国5
地域6
国6
地域7
国7
地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 旧ソ連,ロシア
2022/12/20 原田 大輔
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概要

  • 12月14日、ミシュースチン首相は、シェルが保有する「Sakhalin Energy Investment Company Ltd」における株式(27.49999998621683%)に見合うとロシア政府が認識する「サハリンスカヤ・エネルギヤ」における同数の株式の評価額について、「B1-コンサルト」が査定した額948億ルーブル(約15億ドル)を承認する政府命令書を発表した。
  • サハリン2に参画する三井物産(12.5%)と三菱商事(10%)は、8月25日、新ロシア法人である有限責任会社「サハリンスカヤ・エネルギヤ」に参画することをそれぞれ決定し、ロシア政府は8月30日及び31日に発行された個別の政府令に従って、両社の申請を承認したことを発表。残るシェルは新ロシア法人へは出資しないことをロシア政府に通知したと報じられた。
  • シェルが保有している株式は、6月30日の大統領令に従って、政府により選ばれた独立系監査会社「B1-コンサルト」(元EYのロシア支社)が査定し、ロシア政府が承認した価格で、4カ月以内(9月4日が新ロシア法人への申請期限とすれば、そこを基点に4カ月、つまり2023年1月初旬)にロシアの企業(ロシア法人)に売却されることになっている。また、シェルがもたらした可能性のある損害等についても今後ロシア政府が査定することとなっている。売却先候補としてはNOVATEKが有力視されている[1]
  • 今後注目されるのは、シェルが与えたとする損害に関するロシア政府の発表となる。シェルに対して損害賠償を求めていくのか。今回の査定額との相殺によって、シェルは手ぶらでロシア事業から撤退していくことになるのか。その内容によっては、シェルによるニューヨーク仲裁裁判所への提訴も考えられる。この決着如何によっては、サハリン2プロジェクトは国際係争を抱えることとなり、新ロシア法人におけるシェル分のシェア引き受けを志向するロシア法人の姿勢にも影響を与えていくだろう。

 

<参考>政府命令書(第3910-r号)[2]抄訳

(注)及び太字は筆者加筆。

2022年12月14日付ロシア連邦政府命令書第3910-r号
モスクワ

2022年6月30日付ロシア連邦大統領令「複数の外国及び国際組織の非友好的な行動に関わる燃料エネルギー分野における特別経済措置の適用について」第1項の小項(ク)[3]に従い、2022年6月30日付ロシア連邦大統領令「複数の外国及び国際組織の非友好的な行動に関わる燃料エネルギー分野における特別経済措置の適用について」第1項の小項(ク)の手続きに沿って、2022年11月28日に『B1-コンサルト』(政府登録番号1047797042171/注:国際会計事務所Ernst Youngのロシア撤退後の後継ロシア会計事務所)が作成した有限責任会社「サハリンスカヤ・エネルギヤ」の授権資本27.49999998621683%の評価結果レポートNo.C01626に基づき、その価値を948000百万ルーブルとすることを承認する。なお、この株式は同大統領令第1項の小項(カ)及び(キ)[4]に基づいて、「Sakhalin Energy Investment Company Ltd」の株主に譲渡されなかったものである。

ロシア連邦政府議長 M.ミシュースチン

 

今次政府命令書に関する特記事項

今次政府命令書では、株式対価であるシェル保有株式(約27.5%)に対するロシア政府が承認した査定額948億ルーブルが正当な評価額であるのかどうか、シェルが期待するものとどの程度乖離があるのかどうかが最も注目される。

ロシア事業については、ウクライナ侵攻と欧米制裁の発動によって、その時価評価に対して制裁リスクによるディスカウントならびに下方圧力が掛かっている。

例えば、あるシンクタンクの侵攻前のサハリン2の資産評価では残存可採埋蔵量に基づくLNG生産期間が依然10年以上あることや、拡張ポテンシャルからプロジェクト全体の現在価値を140~150億ドルと試算していた(27.5%分は39~41億ドル)。

シェルは2022年2月28日にGazpromとの合弁事業からの撤退プロセスを開始すると発表しているが、その対象事業は、(1)サハリン2(27.5%)、(2)サルィム油田(50%)、(3)Nord Stream 2への融資(95億ユーロの内、最大10%)、(4)ギダンプロジェクト(50%)の4事業で、また、2021年末時点で30億ドルの固定資産を保有すると述べている[5]。5月5日には2022年第1四半期にロシア事業に係る減損を計上したことを報告した。その額は39億ドルであった[6]。その中でサハリン2については16.14億ドルが計上されていた。

査定額が低いことは、その権益の売却先であるロシア企業(有力視されているNOVATEK)の円滑な参画に働く可能性がある。他方、その売却益を受け取る権利を依然留保するシェルにとっては受け入れがたいことではないか。さらにシェルに対しては損害額の請求も示唆されており、今回の保有権益売却の査定額と今後ロシア政府から出される可能性のある損害査定額の高低・違いは、シェルのロシア撤退に対して、相殺(手ぶら)では済まず、さらなる損害賠償請求という結果に至る可能性もあり得る。

 

 

[1] 拙稿「サハリン2新ロシア法人にシェルは出資しない意向。ロシア政府がシェル分権益の継承資格に関する政府令を発出」(2022年9月13日)を参照されたい。 https://oilgas-info.jogmec.go.jp/info_reports/1009226/1009462.html

[2] ロシア連邦政府命令書(第3910-r号):http://publication.pravo.gov.ru/Document/View/0001202212140026(外部リンク)新しいウィンドウで開きます

[3] ロシア連邦大統領令第416号(抜粋):

(ク)上記(オ)(カ)に従ってCompany株主に移管されなかった会社のシェアは、ロシア政府が査定し、ロシア政府により定められる手順で、ロシア法人に売却される。その査定及び売却は、ロシア政府によって、(カ)に従ってシェアの移管拒否の決定がなされた後、4カ月以内に行われる。あるいは、(エ)に従って通知が提出されない、あるいは通知手順に違反があった場合を含め)移管拒否の決定がなされていない場合、(エ)に規定される期間終了後4カ月以内に行われる。(注)全文は拙稿「サハリン2プロジェクトを対象にロシア法人への移管を求める大統領令を発出」を参照。https://oilgas-info.jogmec.go.jp/info_reports/1009226/1009403.html

[4] ロシア連邦大統領令第416号(抜粋):

(カ)上記(オ)に示される通知を接到する毎に、ロシア政府は3日以内に、

  • 提出書類をチェックする。
  • Companyの定款資本金の中でその者に帰属する株式の数に比例して、会社の定款資本金中の持分を当該のCompanyの株主に引き渡す。または、そのような持分の引渡しを拒否する旨の決定を下す。

(キ)ロシア政府が引き渡すことを決めたシ持分シェアは、(カ)第3項に従って、移管決定がなされた該当者に迅速に移管され、ロシア政府による管理は終了する。(注)全文は拙稿「サハリン2プロジェクトを対象にロシア法人への移管を求める大統領令を発出」を参照。https://oilgas-info.jogmec.go.jp/info_reports/1009226/1009403.html

[6] シェルによるプレスリリース(2022年5月5日):https://www.shell.com/investors/results-and-reporting/quarterly-results/2022/q1-2022.html(外部リンク)新しいウィンドウで開きます

 

以上

(この報告は2022年12月19日時点のものです)

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