ページ番号1009578 更新日 令和4年12月26日
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概要
- QatarEnergyはNorth Field拡張プロジェクトの2段階目であるNFSのパートナーとして9月24日にTotalEnergies、10月23日にShellを、10月30日にConocoPhillipsを発表した。それぞれの権益比率は、9.375%、9.375%、6.25%であり、残りの75%はQatarEnergyが保有している。
- Sinopecは、11月21日にQatarEnergyと年400万トン・史上最長の27年間にわたるLNG売買契約を締結したと発表した。これはSinopecとQatarEnergyの2件目の長期LNG取引かつ、カタールのNorth Field拡張プロジェクトでは初の長期LNG売買契約である。North Field拡張プロジェクトが出荷を開始する2026年から引き渡しが始まる見込みであり、このLNGは、中国にあるSinopecの受入基地に供給される予定である。また、アル・カービ氏は、QatarEnergyは一部の買い手に対してNFEの権益の内、最大5%を提供できると指摘していた。同様に、NFSの権益5%分の提供も考えているとされる。今後の関係性拡大のために、Sinopecあるいは同社を筆頭とする中国勢に“付加価値パートナー”としてNFSの権益5%を提供する可能性がある。
- QatarEnergyとConocoPhillipsは、11月29日に、最低15年以上、最大年間200万トンのLNGをドイツ市場に供給するためのSPAを2件発表した。これによりNFEとNFSから2026年から独Brunsbüttelに建設予定のLNGターミナルへDESベースで受け渡されると考えられる。
- アル・カービエネルギー担当国務大臣兼QatarEnergy CEOは2017年に今後10年間で、QatarEnergyがメジャーズと肩を並べる「国際石油企業(IOC)として認識される」ための計画を語っていた。そのために、国際的な石油上流事業やトレーディング事業の拡大、下流部門の付加価値最大化を行っている。特に、トレーディングにおいて、アル・カービ氏は、「今後5年から10年の間に、我々は世界最大のLNGトレーダーになるだろう」と述べている。
- QatarEnergyはNorth Field拡張計画のパートナー選定につき、国際的コネクション、商業的条件、マーケティング、コンピテンシー、貢献度などにより総合的に判断したと思われる。カタールは天然ガス・LNGの他、エネルギートランジションの中で長期的な視点から太陽光を中心とする再生可能・グリーンエネルギーへの投資を行っているが、豊富な天然ガス資源を活用するブルーアンモニアプロジェクトも動き始めている。今後、カタールとエネルギー事業において良好な関係を築くにはブルーアンモニア、更には太陽光発電における協力体系の構築も重要な要素となるだろう。
1. はじめに
カタールはNorth Field拡張プロジェクトとして、第一段階でNorth Field East(以下、NFE)、第二段階でNorth Field South(以下、NFS)を計画している。当該プロジェクトは同国北東部のRas Laffanに位置し、NFEでは4基のLNGトレイン、NFSでは2基のLNGトレイン(トレイン5~6)を建設する予定である。カタールはこれによって同国のLNG生産能力を現在の年産7,700万トンから1.26億トンにまで引き上げる計画である。NFEにつき、2021年2月にFIDがなされ、これに伴いQatar Energyは2022年6月以降順にメジャーズ5社(TotalEnergies、Eni、ConocoPhillips、ExxonMobil、Shell)とのパートナーシップ合意を発表した。なお、QatarEnergyは当初2019年に上流並びにNorth Field拡張計画のパートナーを指名する予定であったが、COVID-19並びにエネルギートランジションの潮流から企業がLNG液化事業への長期的なコミットメントに消極的であったこと等により選定を延期し、市場の安定性と確実性が高まる時期を待っていたと考えられる。また、NFSについても9月24日以降順にメジャーズ3社(TotalEnergies、Shell、ConocoPhillips)とのパ-トナーシップ合意を発表した。
本稿ではNFEのパートナーシップ合意以降の動向につき、NFSを中心にまとめる。
2. カタールにおけるエネルギー産業の位置づけ
カタールの石油・天然ガス等が輸出総額に占める割合につき、2021年以降は80%を超えて推移し、2022年10月には87%を占めた。このうち、輸出総額におけるLNG等(LNG、コンデンセート、プロパン、ブタン等)の割合は、2021年以降は54%を超えて推移し、2022年10月には703万トン・約254.6億QR(約70億ドル)と67%を占めた。LNG等の輸出総額は前年同月比で約1.4倍に上昇しており、カタールにおけるエネルギー産業、とりわけLNG産業の重要性が見て取れる(図1)。一方で、Kplerのデータによると2021年10月と2022年10月のLNGの輸出量はそれぞれ654万トン、703万トンと大差なく、5月~6月における原油価格の上昇(Brent:2021年5~6月平均70.9ドル/バレル、2022年5~6月平均114.6ドル/バレル)が大きく作用したと考えられる(図2・3)。

(出所:カタール計画統計庁よりJOGMEC作成)

(出所:KplerよりJOGMEC作成)

(出所:各種資料によりJOGMEC作成)
3. North Field Southのパートナー選定
QatarEnergyはNFSのパートナーとして9月24日にTotalEnergies[1][2]、10月23にShell[3][4]、10月30日にConocoPhillips[5]を発表した。それぞれの権益比率は、9.375%、9.375%、6.25%であり、残りの75%はQatarEnergyが保有している(図4)。当該発表ではカタールのLNG事業の盟友であるExxonMobilがパートナーに含まれなかったことが話題となった。カタールのLNG産業はExxonMobilの貢献なしには語ることができない。ExxonMobilは、カタールにある14基のLNGトレインのうち9基に出資し、Q-FlexやQ-Maxなどの27隻のLNG船開発に携わり、かつ、カタールのLNG産業におけるパイオニアとして1935年から信頼関係を築いてきた[6](表1)。また、ExxonMobilは、NFEにおいて6.25%の権益を有する3大国際投資家の1つであるほか(図5)、QatarEnergyと共同でテキサス州の年産1,810万トンのGolden Pass LNGプロジェクト[7]やキプロス、エジプト、アルゼンチンの上流でもQatarEnergyと提携している。
North Field拡張プロジェクトはその規模と低コストのガスに加え、大量の随伴液(NGL)が収益性を高めている(表2)。更に、QatarEnergyは、市場で最も温室効果ガス排出量の少ないLNGを提供するために、二酸化炭素の回収・貯蔵やユーティリティーにおける太陽光発電の利用など、さまざまな脱炭素化技術に2.5億ドル以上を投資しており、同国のLNGは世界で最も低コストかつクリーン(炭素強度が低い)と評される(図6)が、その一方でカタールは、プロジェクトのポテンシャルを活かして投資家から高額の参加費を含む厳しい条件を引き出したと言われている。ExxonMobilは本件につきコメントしていないが、エネルギートランジションの潮流から化石燃料への投資には効率・財務的条件・リターン等を重視し、かつ、モザンビークやパプアニューギニア等の多くのLNGプロジェクトにも参入しているため、NFSのために高額な参加費を支払うことは正当化できないと判断した可能性も考えられる。加えて、NFSはNFEよりもブレイクイーブンが若干高く、NFEへの参加のみで十分と判断した可能性もある。
また、QatarEnergyとExxonMobilは、テキサス州の年産1,810万トンのGolden Pass LNGプロジェクトの販売体制を再構築すると、2022年10月26日に発表した[8]。QatarEnergyとExxonMobilは、2016年に設立されたJVであるOcean LNGを介してGolden Passの生産物を共同で販売することを計画していた。しかし、2022年10月26日の発表より彼らは個別独立的にGolden PassからのLNGを販売することとなり、それに伴いQatarEnergyの完全子会社で2020年に設立されたばかりのQatarEnergy Tradingは、カタールの70%の持ち分を販売する予定である。この動きは、世界の中で真のLNGポートフォリオプレーヤーとなり、QatarEnergy Tradingを世界第1位のLNGトレーダーにするというQatarEnergyの野心と一致する。一方でExxonMobilはカタールとの今後の関係性が試されていると言えるであろう。

(出所:各種資料によりJOGMEC作成)

(出所:JOGMECデータハブ)

(出所:各種資料によりJOGMEC作成)

(Qatar PetroleumによりJOGMEC作成)

(出所:Qatar Petroleum[9])
4. 中国系企業とConocoPhillips(ドイツ向け)のLNG長期売買契約の締結について
(1) QatarEnergyとSinopec
Sinopecは、11月21日にQatarEnergyと年400万トン・史上最長の27年間にわたるLNG売買契約を締結したと発表した[10]。これはSinopecとQatarEnergyの2件目の長期LNG取引かつ、カタールのNorth Field拡張プロジェクトでは初の長期LNG売買契約である。North Field拡張プロジェクトが稼働する2026年からLNGの引き渡しが始まる見込みであり、このLNGは、中国にあるSinopecの受入基地に供給される予定である。
2021年3月、SinopecがQatarEnergyと年200万トン・10年間、2021年9月にCNOOCが年350万トン・15年のLNG売買契約(SPA)を締結[11]、いずれも2022年から引き渡しを開始するなど、中国企業は2021年以降カタールとLNG供給契約を複数結んでいる(表3)。その結果、Kplerによると、カタールの中国向けLNG輸出量は2022年に1,419万トン(1月~11月)に達し、2021年の962万トンを超え記録を更新している(図7)。また、カタール産LNG輸出先割合においても中国は2021年の11.6%から2022年(1~11月)に19.3%に拡大しており、カタールのLNG産業における中国のプレゼンスが高まっている。一方で中国におけるカタール産LNGのプレゼンスも2021年の11.3%から2022年(1月~11月)に26.5%と2倍以上に増加している(図8・9・10)。
2022年6月17日にReutersでは、QatarEnergyとSinopec並びにPetroChina(CNPC)がNFE権益獲得のため交渉中であるとの報道がなされた[12]。これは“付加価値パートナー”として少量の権益を、アジア企業を中心に提供するためのものであり、同時期には日本や韓国の企業との交渉も報じられた。アル・カービエネルギー担当国務大臣兼QatarEnergy CEO(以下、アル・カービ氏)は、QatarEnergyはNFEの75%の権益を保有しており、一部の買い手に権益の最大5%を“付加価値パートナー”として提供するとしてアジアの複数のバイヤーと交渉中とされる。同様に、NFSの権益5%分の提供も考えているとされる。今後の関係性拡大も踏まえ、NFEの長期契約を締結したSinopecあるいは同社を筆頭とする中国勢にNFSの5%の権益を提供する可能性がある。
(2) QatarEnergyとConocoPhillips(ドイツ向け)
QatarEnergyとConocoPhillipsは、11月29日に、最低15年以上、最大年間200万トンのLNGをドイツ市場に供給するためのSPAを2件発表[13][14]した。これによりNFEとNFSから2026年から独Brunsbüttelに建設予定のLNGターミナルへDESベースで受け渡されると考えられる。本契約は、カタールのNFE(3.125%)及びNFS(6.25%)への参画のためにConocoPhillipsがQatarEnergyと設立した合弁会社により供給され、購入者はConocoPhillipsの100%子会社が執り行う予定である。今回の発表では、契約価格に関する詳細は明らかにされなかった。他方、カタール政府は2022年11月29日にドイツにQatarEnergyが他のドイツ企業との契約交渉を進めていることを明らかにしている。
カタールとドイツとのLNG契約にかかる交渉については、数カ月前から報道がなされていた。しかし、カタール側が業界への大規模投資を理由に20年以上の長期契約を求める一方、2045年までのカーボンニュートラルを宣言しているドイツがこれに難色を示しており、交渉は難航していた。ドイツは特に2022年3月以降、ロシア産ガス依存脱却とガス供給先多様化のためLNGを念頭に置いた大規模な投資を行っている。同国のLNG需要は、新たなFSRUターミナル稼働と同時に急増することが予想されるが、需要を満たすだけの供給源確保の目途はたっていない。今回のSPAは2026年に供給開始予定であり、ドイツ側が希望するものより若干遅いものの、ドイツのLNG市場に大きく貢献することになると考えられる。また、カタールはQatar Investment Authorityを通じて2022年10月1日にドイツの電力会社RWEの約9.1%の株式を取得しており[15]、今回の契約により、欧州最大のガス市場のドイツで更に足場を固めることができる。
QatarEnergyはNorth Field拡張計画のパートナー選定につき、国際的コネクション、商業的条件、マーケティング、コンピテンシー、貢献度などにより総合的に判断したと思われるが、ConocoPhillipsはQatarEnergyとドイツとの仲介役を果たし、見事にそのマーケティング能力を発揮したものと思われる。特にConocoPhillipsはNorth Field拡張計画への出資に加え、Port Arthurへの出資にも乗り出しており、LNGポートフォリオの拡大とマーケティング強化に向け、積極的に動いているように見える。

(出所:JOGMECデータハブ)

(出所:KplerよりJOGMEC作成)

(出所:BP統計、KplerよりJOGMEC作成)

(出所:BP統計よりJOGMEC作成)

(出所:KplerよりJOGMEC作成)
5. QatarEnergyのフットプリント拡大
QatarEnergyは会長にタミーム首長、CEOにエネルギー担当国務大臣であるアル・カービ氏を据えていることから、官僚的な障害を最小限に抑えて政策決定を実行できるユニークな立場に位置する。カービ氏は2017年に今後10年間で、QatarEnergyがメジャーズと肩を並べ、「国際石油企業(IOC)として認識される」ための計画を語っていた。そのために、国際的な石油上流事業やトレーディング事業の拡大、下流部門の付加価値最大化を行っている。特に、トレーディングにおいて、「今後5年から10年の間に、我々は世界最大のLNGトレーダーになるだろう」と述べている。
QatarEnergyは近年、大規模なLNG拡張プロジェクトであるNorth Field拡張計画の出資を呼び水に、メジャーズとのパートナーシップのもと、既存鉱区やライセンスラウンドを通じ世界各地で多くの鉱区権益を獲得した。また、獲得鉱区の多くが2027年までに生産を開始する可能性が高い。
現在までにブラジル、ガイアナ、アルゼンチン、メキシコ、コートジボワール、コンゴ、ナミビア、アンゴラ、南アフリカ、モロッコ、オマーン、ケニア、モザンビーク、キプロスにおいて上流権益を保有しているが(図14)、これらの地域は主要企業やホスト政府との関係性強化のため、オフショア並びにフロンティア、特に大西洋海盆や東地中海、サブサハラアフリカを中心に権益を獲得してきたと考えられる。また、この動きは2017年から2018年に勢いを強めており、2017年サウジアラビアとカタールが断交したことやフロンティアを志向する企業が少なかったことも、この傾向を後押ししたと考えられる。また、そのほとんどはメジャーズとの提携によるものであり、TotalEnergiesに続いてExxonMobil、Shellとの提携が多くなされている。特に2022年にはナミビアで2月にPEL-39のGraffプロスペクト(Shell 45%、QatarEnergy 45%、NAMCOR 10%)[16]、Venusプロスペクト(TotalEnergies 40%、QatarEnergy 30%、Impact Oil & Gas20%、NAMCOR10%)[17]で有望な石油システム、軽質油、随伴ガス等の発見があった。また、3月29日にはエジプトのNorth Marakia Offshore Block(ExxonMobil 60%、QatarEnergy 40%)を獲得している[18]。10月31日にブラジル沖のSépia(Petrobras 52%、TotalEnergies 19.2%、QatarEnergy 14.4%、Petronas Petrleo Brasil Ltda 14.4%)での発見を発表した[19]。11月3日には、カナダ・Newfoundland・Labrador州沖のOrphan海盆のParcel 8(ExxonMobil 70%、QatarEnergy 30%)への入札に成功したとの発表があった[20]。南アフリカのBlock 11B/12B(TotalEnergies 45%、QatarEnergy 25%、CNR International 20%、South African consortium Main Street 10%)においては、12月1日に「Draft Scoping Report」[21]を提出するなど生産開始に向けた動きが活発化している。[22]加えて、12月19日にはブラジルのプレソルトエリア11鉱区を対象とする入札において、QatarEnergyを含むコンソーシアム(Petrobras 30%、 TotalEnergies 30%、 Petronas 20%、 QatarEnergy 20%)がAgua Marinhaを落札したと発表した[23]。上記のようにメジャーズと提携している多くの国や鉱区において進展がみられた。
TotalEnergiesがイラクで所有する権益の一部をQatarEnergyに売却する旨の報道の他、QatarEnergyがプレゼンスを拡大する東地中海では、レバノンにおいてBlock9の30%の権益(NOVATEK放棄分20%+TotalEnergies5%+Eni5%分)を取得するためにTotalEnergiesやEniと交渉中である旨報道されている[24]。
現在、NFE、NFSのパートナー選定(“付加価値パートナー”を除く)が完了したが、アル・カービ氏は2022年9月に「今後2年以内North Fieldの更なる拡張についても決定する可能性がある。」と述べていることから、海外での権益確保のペースは落ちる可能性があるものの、当面はこの傾向が続くと考えられる。また、TotalEnergiesのPatrick Pouyanne CEOは、自身が「North Field West」と呼ぶNorth Fieldの更なる拡張に関心があると報道されている[25]。
また、下流事業において、QatarEnergyは、欧州で重要な再ガス化のポジションを占めている。同社は、英South Hook LNG Terminalと伊Adriatic LNG Terminal、米GoldenPass LNGの共同所有者である他、英Isle of Grain、仏Montoir-de-Bretagne、ベルギーZeebruggeでキャパシティ使用権を保有している(表4)。
トレーディング部門の特に海運事業において、QatarEnergy Tradingにおいては第三者割当量(third party volume)を含め年間約500万〜1,000万トンの取引を行っている。また、QatarEnergyによると、同社はすでに中国・韓国を中心に200億ドル以上かけて65〜70隻程度のLNG船の建造契約及び長期定期傭船契約を締結しているという。これによりカタールの長期的なLNGの野心を支え、世界最大の船団を作ることを目指している。Kplerのデータによると、現在QatarEnergy(Qatargasを含む)が100%保有するアクティブなLNG船は35隻・計742万立方メートル、建設中のLNG船は8隻・計139万立方メートルとなっている。
(図11:Qatar Petroleum(現QatarEnergy[26])が所有する海外上流権益)
(出所:Qatar Petroleum)

(出所:JOGMECデータハブ)
6. 最後に
QatarEnergyはパートナー選定につき、国際的コネクション、商業的条件、マーケティング、コンピテンシー、貢献度などにより総合的に判断したと思われる。また、QatarEnergyは同国への投資を見込む企業とのパートナーシップを通じ海外への進出拡大を図っている。そのため、各企業が他国での事業にQatarEnergyを招き入れ、深いコネクションを築いてきたことも同プロジェクトへの参画を後押ししたと考えられる。カタールは天然ガス・LNGの他、エネルギートランジションの中で長期的な視点から太陽光を中心とする再生可能エネルギー・グリーンエネルギーへの投資を行っているが、ブルーアンモニアについては2022年8月31日、世界最大のブルーアンモニアプラント(年産120万トン・プロジェクトコスト10.6億ドル[27])を2026年第一四半期までに稼働させると発表[28]するなど豊富な天然ガス資源を活用するブルーアンモニアプロジェクトが動き始めている。
豊富な天然ガス資源活用に向けた今後、カタールとエネルギー事業において良好な関係を築くにはブルーアンモニア、更には太陽光発電における協力体系の構築も重要な要素となるだろう。
今後もカタールの動向に注目である。
[1] https://totalenergies.com/media/news/press-releases/qatar-totalenergies-selected-qatarenergys-first-partner-north-field-south(外部リンク)
“Qatar: TotalEnergies Selected as QatarEnergy’s First Partner in the North Field South LNG project“, TotalEnergies, September 24, 2022
[2] https://www.qatarenergy.qa/en/MediaCenter/Pages/newsdetails.aspx?ItemId=3724(外部リンク)
“QATARENERGY ANNOUNCES PARTNERSHIP WITH TOTALENERGIES IN THE NORTH FIELD SOUTH EXPANSION PROJECT -“, QatarEnergy September 24, 2022
[3] https://www.shell.com/media/news-and-media-releases/2022/shell-selected-as-partner-in-the-north-field-south-lng-project.html(外部リンク)
“Shell selected as partner in the North Field South LNG project“, Shell, October 23, 2022
[4] https://www.qatarenergy.qa/en/MediaCenter/Pages/newsdetails.aspx?ItemId=3731(外部リンク)
“QATARENERGY ANNOUNCES THE SELECTION OF SHELL AS A PARTNER IN THE NFS EXPANSION PROJECT -“, QatarEnergy, October 23, 2022
[5] https://www.qatarenergy.qa/en/MediaCenter/Pages/newsdetails.aspx?ItemId=3733(外部リンク)
“QATARENERGY SELECTS CONOCOPHILLIPS AS A PARTNER IN THE NFS EXPANSION PROJECT -“, QatarEnergy, October 30, 2022
[6] https://www.exxonmobil.com.qa/en-qa/company/who-we-are/our-history-in-qatar(外部リンク)
“Our history in Qatar“,ExxonMobil, July 7, 2019
[7] https://oilgas-info.jogmec.go.jp/info_reports/1009226/1009443.html
“ウクライナ侵攻により脚光を浴びるカタールのLNG―欧州のロシア代替としてのカタールへの注目とNorth Field East拡張パートナーシップ―“, JOGMEC, August 16, 2022
[8] https://www.qatarenergy.qa/en/MediaCenter/Pages/newsdetails.aspx?ItemId=3732(外部リンク)
“QATARENERGY TRADING TO OFFTAKE AND MARKET 70% OF LNG PRODUCED BY GOLDEN PASS -“, QatarEnergy, October 26, 2022
[9] https://www.jpmorgan.com/content/dam/jpm/global/disclosures/TW/qp_prospectus.pdf(外部リンク)
“U.S.$4,000,000,000 3.300% Bonds due 2051 (the “2051 Bonds”) “, Qatar Petroleum, July 12, 2021
[10] https://www.qatarenergy.qa/en/MediaCenter/Pages/newsdetails.aspx?ItemId=3737(外部リンク)
“QATARENERGY AND SINOPEC SIGN A 27-YEAR 4 MILLION TONS PER ANNUM LNG SUPPLY AGREEMENT TO CHINA –“, QatarEnergy, November 21, 2022
[11] https://www.qatarenergy.qa/en/MediaCenter/Pages/newsdetails.aspx?ItemId=3667(外部リンク)
“QATAR PETROLEUM SIGNS A LONG-TERM SPA TO SUPPLY 2 MTPA OF LNG TO CHINA’S SINOPEC -“, QatarEnergy, 2022年12月15日閲覧
[12] https://www.reuters.com/business/energy/exclusive-china-firms-advanced-talks-with-qatar-gas-field-stakes-lng-offtake-2022-06-17/(外部リンク)
“Exclusive: China firms in advanced talks with Qatar for gas field stakes, LNG offtake“, Reuters, June 17, 2022
[13] https://www.qatarenergy.qa/en/MediaCenter/Pages/newsdetails.aspx?ItemId=3738(外部リンク)
“QATARENERGY, CONOCOPHILLIPS SIGN LONG-TERM SUPPLY AGREEMENT OF QATARI LNG TO GERMANY FOR AT LEAST 15 YEARS -“, QatarEnergy, November 29, 2022
[14] https://www.conocophillips.com/news-media/story/conocophillips-and-qatarenergy-agree-to-provide-reliable-lng-supply-to-germany/(外部リンク)
“ConocoPhillips and QatarEnergy Agree to Provide Reliable LNG Supply to Germany“, ConocoPhillips, November 29, 2022
[15] https://www.rwe.com/en/press/rwe-ag/2022-10-01-qia-invests-to-accelerate-rwe-grow-green-strategy(外部リンク)
“QIA invests EUR 2.43 billion to accelerate RWE’s Growing Green strategy“, RWE, October 1, 2022
[16] https://www.qatarenergy.qa/en/MediaCenter/Pages/newsdetails.aspx?ItemId=3699(外部リンク)
“QATARENERGY AND PARTNERS ANNOUNCE OIL DISCOVERY OFFSHORE NAMIBIA “-, QatarEnergy, February 4, 2022
[17] https://www.qatarenergy.qa/en/MediaCenter/Pages/newsdetails.aspx?ItemId=3700(外部リンク)
“QATARENERGY ANNOUNCES ITS SECOND OIL DISCOVERY IN NAMIBIA -“, QatarEnergy, February 24, 2022
[18] https://www.qatarenergy.qa/en/MediaCenter/Pages/newsdetails.aspx?ItemId=3706(外部リンク)
“QATARENERGY ACQUIRES 40% INTEREST IN EXPLORATION BLOCK OFFSHORE EGYPT -“, QatarEnergy, March 29, 2022
[19] https://www.qatarenergy.qa/en/MediaCenter/Pages/newsdetails.aspx?ItemId=3734(外部リンク)
“QATARENERGY ANNOUNCES HYDROCARBON DISCOVERY IN BRAZIL’S SÉPIA FIELD - “, QatarEnergy, October 31, 2022
[20] https://www.qatarenergy.qa/en/MediaCenter/Pages/newsdetails.aspx?ItemId=3735(外部リンク)
“QATARENERGY WINS OFFSHORE EXPLORATION BLOCK IN ATLANTIC CANADA -“, QatarEnergy, November 3, 2022
[21] https://www.saoga.org.za/web/sites/default/files/2022-12/2.%20221128_TEEPSA_ESIA_Block11B12B_NTS_Brochure_Eng.pdf(外部リンク)
“Draft Scoping Report Non-Technical Summary“, TotalEnergies EP South Africa B.V., 2022年12月15日閲覧
[22] https://www.bloomberg.com/news/articles/2022-12-02/totalenergies-takes-next-step-on-south-african-production-right?leadSource=uverify%20wall(外部リンク)
“TotalEnergies Takes Next Step on South African Production Right Application“, Bloomberg, December 2, 2022
[23] https://www.qatarenergy.qa/en/MediaCenter/Pages/newsdetails.aspx?ItemId=3739(外部リンク)
“QATARENERGY WINS WORKING INTEREST IN NEW BRAZILIAN OFFSHORE EXPLORATION BLOCK -”, QatarEnergy, December 19, 2022
[24] https://www.reuters.com/markets/deals/qatarenergy-talks-30-stake-lebanon-offshore-gas-project-says-ceo-2022-10-30/(外部リンク)
“QatarEnergy in talks for 30% stake in Lebanon offshore gas project, says CEO“, Reuters, October 30, 2022
[25] https://www.energyintel.com/00000183-c2a3-da97-ad9f-d3e3cb580000(外部リンク)
“QatarEnergy Aims to Expand Trading Ambitions“, Energy Intelligence, October 11, 2022
[26] 2021年10月に社名をQatar PetroleumからQatarEnergyに変更した。
[27] https://iq.com.qa/media/u24lezju/iq-press-release-blue-ammonia-project-english.pdf(外部リンク)
“INDUSTRIES QATAR GIVES A GO-AHEAD TO QAFCO FOR A NEW WORLD’s LARGEST BLUE AMMONIA TRAIN“, Industries Qatar, August 31, 2022
[28] https://www.qatarenergy.qa/en/MediaCenter/Pages/newsdetails.aspx?ItemId=3722(外部リンク)
“QATARENERGY RENEWABLE SOLUTIONS & QAFCO LAUNCH THE WORLD’S LARGEST BLUE AMMONIA FACILITY -“, QatarEnergy, August 31, 2022
以上
(この報告は2022年12月19日時点のものです)