ページ番号1009584 更新日 令和4年12月28日

2022年原油市場の波乱と2023年の展望

レポート属性
レポートID 1009584
作成日 2022-12-28 00:00:00 +0900
更新日 2022-12-28 14:21:15 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 企業
著者 鑓田 真崇
著者直接入力
年度 2022
Vol
No
ページ数 9
抽出データ
地域1 北米
国1 米国
地域2
国2
地域3
国3
地域4
国4
地域5
国5
地域6
国6
地域7
国7
地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 北米,米国
2022/12/28 鑓田 真崇
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概要

  1. 2022年における原油価格は値動きの大きい展開となった。年初(2022年1月3日)には、78.98ドル/バレルであったブレント先物価格は、3月8日に127.98ドル/バレルに達する急激な価格高騰を記録。2022年上半期は平均で104.96ドル/バレル、下半期は下落基調にあるものの12月23日までの平均で93.49ドル/バレル、12月23日の終値では83.92ドル/バレルとなった。
  2. 国際エネルギー機関(IEA)加盟国及び米国による協調石油備蓄放出決定を受け、需給は一時緩和する方向に向かうものの、ウクライナ危機を受けた物理的な供給途絶懸念(パイプラインでの送油への影響など)と、ロシア産石油の禁輸決定などにより輸送船舶に対する保険付保や港湾利用に対する影響懸念が広まり、原油需給はひっ迫する方向で推移したほか、OPECプラス産油国の一部が生産枠を下回る状況が継続し、減産措置緩和(実質的な増産決定)が十分になされなかったことも、2022年上半期の原油価格を押し上げる方向で作用した。
  3. 2022年下半期においては、中国における新型コロナウイルス感染症再拡大を受けた都市封鎖などの措置により、同国石油需要の伸びが鈍化するとの懸念や、インフレ抑制を目的とした米国連邦準備制度(FRB)による利上げ等により、米国経済への影響が懸念され原油価格は下落基調となった。
  4. 2023年の原油市場については、引き続き世界経済成長見通しの不確実性はあるものの、中国における新型コロナウイルス感染症関連の規制緩和を受けた経済活動再開とこれに伴う同国石油需要の回復が期待されるほか、OPECプラス産油国による日量200万バレルの大規模減産決定、12月5日から導入されているロシア産原油の禁輸・価格上限設定とこれに対するロシアからの減産可能性(同国原油生産量の5~7%とされる)等に下支えされ、現在の価格水準あるいはそれを上回る水準で推移する可能性があるとみられる。

 

1. はじめに

2022年の原油市場を振り返ると、波乱に満ちた展開であった。本稿執筆時点で、ウクライナに対するロシアの侵攻開始から300日余りが経過するが、2021年から見られた両国の緊張関係の高まりが軍事衝突に発展し、これほどの期間において継続すると当初から予想されていたとは言い難い。ウクライナ危機が、地政学リスクを改めて浮き彫りにし、エネルギー安全保障の概念を多くの国々が抱くこととなった。これにより、需給ひっ迫懸念を市場で発生させ、原油・天然ガス価格が大きく変動した。まず本稿では、1年間を通した原油市場の動きを概観する。

筆者は本年3月に米国ヒューストンで開催されたS&P Global主催のCERAWeek 2022、10月に英国ロンドンで開催されたEnergy Intelligence主催のEnergy Intelligence Forum 2022、11月にアラブ首長国連邦アブダビで開催されたAbu Dhabi International Petroleum Exhibition and Conference 2022(ADIPEC)に参加する機会を得た。これらの国際会議における要人の発言や、出席者との意見交換などを通じて得られたエネルギー市場に対する見方を紹介し、本年のエネルギー市場を総括するとともに、2023年における注目点を紹介することを本稿の目的としたい。

 

2. 原油価格推移

2022年における原油価格は値動きの大きい展開となった。年初(2022年1月3日)には、78.98ドル/バレルであったブレント先物価格は、3月8日に127.98ドル/バレルに達する急激な価格高騰を記録。2022年上半期は平均で104.96ドル/バレル、下半期は下落基調にあるものの12月23日までの平均で93.49ドル/バレル、12月23日の終値では83.92ドル/バレルとなった(図 1)。

図 1:原油価格の推移(2022年)
図 1:原油価格の推移(2022年)
出所:International Oil Dailyを基にJOGMEC作成

以下、時系列で2022年の原油価格に大きく影響を与えたと考えられる事象を概観する。

2021年10月以降、ウクライナ及びロシア間の緊張関係が高まり、軍事衝突に至る可能性が意識されるにつれ、紛争に起因する原油の供給途絶懸念が市場で発生。原油価格は2022年初から上昇基調にあった。そして、ロシアがウクライナに侵攻した2月24日以降、原油価格は大きく上昇した。ブレント先物価格は、侵攻開始時点で99.08ドル/バレルであったものが、米国及び英国によるロシア産禁輸措置の決定を受け、3月8日には終値で127.98ドル/バレルに達した。

こうした状況を受け、国際エネルギー機関(IEA)のビロル事務局長は2月28日、ロシアのウクライナへの侵攻による世界石油供給に与える影響及び市場安定化のための加盟国の対応に関する臨時閣僚会議(Extraordinary Governing Board)を3月1日に開催することを発表。同会議において、6,000万バレルの協調備蓄放出を今後30日間で実施(200万バレル/日相当)すると発表した[1]。放出量はIEA加盟国間の調整の結果、6,266.2万バレルとなった旨3月9日に発表された[2]

その後、国際石油市場における供給途絶懸念が一時後退し、さらに中国における新型コロナウイルス感染症拡大による石油需要鈍化懸念が市場で発生。3月16日には98.02ドル/バレルまで下落したものの、3月23日には再び120ドル/バレルの水準を超えて、121.60ドル/バレルに到達した。2003年以降の原油先物価格推移(図 2)をみると、直近で100ドル/バレルを上回る水準を記録したのは2014年以来となった。

図 2:原油価格の推移(2003~22年)
図 2:原油価格の推移(2003~22年)
出所:International Oil Dailyを基にJOGMEC作成

こうした状況を受け、米国政府は、同国レギュラーガソリン平均小売価格が3月に入り4ドル/ガロンを超える水準で推移し、消費者の不満も高まっていると見られたことから、「プーチンのポンプ価格引き上げに対するバイデン大統領の計画(原題:President Biden’s Plan to Respond to Putin’s Price Hike at the Pump)」を3月31日に発表[3]。当該計画に基づき米国エネルギー省は、過去最大となる総量1億8000万バレルの戦略石油備蓄(SPR)放出(放出発表直前の週次データ[4](3月25日時点)のSPR総量5億6800万バレルの1/3に相当)を5月から10月に実施するための公告を4月1日に発表した。

またIEAは、4月1日にも臨時閣僚会議を開催。加盟国各国は自国内の状況を勘案のうえ、新たな協調備蓄放出に対してどの程度貢献できるか検討を重ね、4月7日に開催された臨時閣僚会議において、IEAによる協調備蓄放出で過去最大となる総量1億2,000万バレルを今後6か月間にわたり放出することを確認した[5]

IEA加盟国による協調石油備蓄放出及び米国によるSPR放出決定を受け、需給は一時緩和する方向に向かうものの、ウクライナ危機を受けた物理的な供給途絶懸念(パイプラインでの送油への影響など)と、ロシア産石油の禁輸決定などにより輸送船舶に対する保険付保や港湾利用に対する影響懸念が広まり、原油需給はひっ迫する方向で推移したほか、OPECプラス産油国の一部が生産枠を下回る状況が継続し、減産措置緩和(実質的な増産決定)が十分になされなかったことも、2022年上半期の原油価格を押し上げる方向で作用した。

OPECプラス産油国は、2021年8月以降2022年4月まで、毎月前月比で日量40万バレル、2022年5月及び6月については前月比で日量43.2万バレル、2022年7月及び8月については同64.8万バレルと、段階的に減産幅を縮小しつつ減産措置を実施してきた。2022年9月については同10万バレルと小幅な原油生産目標拡大を決定したものの、ロシア、ナイジェリア、アンゴラ等の産油国からの生産量が目標を下回るなど、実質的な増産が困難との見方が市場で広まった。

2022年下半期においては、中国における新型コロナウイルス感染症再拡大を受けた都市封鎖などの措置により、同国石油需要の伸びが鈍化するとの懸念や、インフレ抑制を目的とした米国連邦準備制度理事会(FRB)による利上げ等により、米国経済への影響が懸念され原油価格は下落基調となった。こうしたなか、9月5日開催されたOPECプラス産油国閣僚級会合において、2022年10月については、原油生産目標を前月比日量10万バレル削減する旨決定し、原油価格の下落による収入減少を防止するために先制的に行動することを優先させ、市場での石油需給緩和感の抑制を図ったとみられる。

その後、OPECプラス産油国が10月5日開催した閣僚級会合において、2022年11月から2023年12月にかけて、原油生産目標を2022年10月比で日量200万バレル削減する旨決定した。サウジアラビアを含むOPECプラス産油国は、英米の政策金利引き上げによる原油価格の下落傾向を受け、OPECプラスが油価下落に寛容であるという市場での認識を防止するため、長期的に原油生産量を前月比で減少させる旨決定したものと考えられる。12月4日に開催された同閣僚級会合においても、同様の方針が維持された。

FRBは、これまで4回連続で通常の3倍となる0.75%の政策金利引き上げを決定したが、12月13~14日に開催された同国連邦公開市場委員会(FOMC)において上げ幅を0.5%に縮小し、米ドルが下落するとともに米国株式相場が上昇したことにより原油価格は上昇。また、12月5日より導入されたG7及びEU等によるロシア産石油販売価格上限設定に対し、ロシアが対抗措置として日量50~70万バレル程度の石油供給削減を検討している旨12月23日に伝えられた[6]こと等も原油相場に上方圧力を加え、12月下旬の原油価格は上昇基調に転じた。

 

3. エネルギー安全保障の覚醒

エネルギー安全保障の原点は、1970年代の石油危機を受けIEAが創設され、一次エネルギー供給において重要な位置を占める石油の安定的な供給に資するための公共財として、加盟国が協調して原油及び一部石油製品を備蓄していることに求めることができるだろう。IEAによる協調備蓄放出は、1974年のIEA創設以来、本年の2回を除き過去に3回実施された[7]。価格への介入ツールや長期的な供給代替を意図したものではなく、協調備蓄放出は短期的に世界市場に石油を供給することにより、突然の石油供給危機による負の経済的影響を軽減するための手段として実施されたものである。

IEAによる協調備蓄放出が11年ぶりに、2回に亘り実施されたことは、2022年の国際エネルギー市場においてロシアによるウクライナ侵攻が与えた影響の大きさを端的に表しているであろう。原油価格のみならず、ロシア産パイプラインガスへの依存度が高い欧州における天然ガス価格の高騰と、ロシア産天然ガスの代替として引き合いの強まったLNG価格への影響は非常に大きく、より高値で取引される地域に向けLNGカーゴが振り向けられるということも見られた。天然ガスに関する分析は、それを専門とした記事に譲るとし、本稿ではエネルギー安全保障の概念が再び大きく着目され、国際会議等でどのような認識が示されたか紹介することとしたい。

ロシアによるウクライナ侵攻が開始された2月24日のおよそ10日後、筆者は米国ヒューストンで開催されたS&P Global主催CERAWeek 2022(会期は3月7日~11日)の会場にいた。会期中の3月8日、米国バイデン大統領はロシア産原油、LNG、石炭の輸入を直ちに禁止すると発表[8]。ロシアのエネルギー輸入に関する新規取引禁止は直ちに禁止するが、既存の契約を破棄する猶予を45日間認めると述べたほか、英国政府も同日、2022年末までにロシア産原油と石油製品の輸入を段階的に停止すると発表[9]したことを受け、ブレント先物は終値で127.98ドル/バレルに達した。こうした中、多くのセッションでエネルギー安全保障に関する言及がなされた。

エネルギー安全保障に関しては、グランホルム米国エネルギー省長官から、市場を安定させ家計負担を最小化させるために、短期的供給を増やさなければならないとの認識が示され、国産エネルギーの生産の最大化が重要との発言があった。同会合が米国での開催であることに加え、自国で石油・天然ガスを生産しているという要因もあるが、「石油・ガス供給と気候変動問題を解決するために産業界に連携の手を差し伸べたい。アメリカ政府は、困ったときには常にエネルギー産業と手を組んできた。100年以上石油・ガス産業は国を動かしてきたことに感謝し、次の100年も脱炭素技術でこの国を動かしてほしい。」と、同長官が発言。これまで気候変動路線を歩み、エネルギー開発業界とは一定の距離感があったバイデン政権であったが、ウクライナ危機の直後ということでエネルギー安全保障や米国内における生産量増加を進めるなど方向転換が見られた。

また、CERAWeek 2022の各セッションでは、エネルギー安全保障を追究しつつも、エネルギートランジションの重要性は不変であり、これを着実に進める、さらに加速させるという主張が支配的であった。特に、水素、二酸化炭素回収貯留(CCS)、再生可能エネルギー、原子力等に関して、官民の多くが商業化の加速に向けた積極的な取組をアピールしていた。北米ではこれまで議論が低調であった燃料アンモニアに関しても、小規模セッションが設けられたり、輸送面での優位性を指摘したりする声が着実に高まっていると感じられた。また、エネルギートランジションに伴う希少金属鉱物(クリティカルミネラル)の安定供給に関する議論も拡大していたのが印象的であった。

10月4日~6日には、英国ロンドンにおいて、Energy Intelligence主催Energy Intelligence Forum 2022に参加した。ウクライナ危機を受け、ロシア産パイプラインガスの依存低減を進める欧州における開催ということもあり、特にエネルギー安全保障、エネルギートランジションに関する議論が多く聞かれた。そもそも、欧州がロシア産ガスに依存することになった経緯については、複数の要因が存在する。欧州においては、LNG輸入に比べてロシアのパイプラインガスの競争性があり、経済的に優位であったこと。特にドイツにとって競争力を有するガス供給源は重要であった。また、LNG供給者は2005年ごろから需要が旺盛に伸びており、販売価格の面でも優位なアジア市場を重視していたことも一因とされている。このほかにも、欧州における戦後協調主義ともいえるロシア経済の安定性を重視する潮流があったことも、ロシアからパイプラインガスを調達し、対価を支払うという商取引を進める要因となったとの見解が披露された。

また、2021年に国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)が英国グラスゴーで開催され、パリ協定6条(市場メカニズム)の実施指針、第13条(透明性枠組み)の報告様式、国が決定する貢献(NDC)実施の共通の期間(共通時間枠)等の重要議題で合意に至った[10]ものの、エネルギー危機により、エネルギートランジションは減速。石炭需要は2013年がピークとされていたが、2022年がこれを上回るものとみられる。新規投資は引き続きエネルギートランジションを向いているが、現実と野心のギャップが開いている、などとする認識が聞かれ、気候変動対策に先進的な欧州においても困難に直面している様子がうかがえた。

次いで、11月にアラブ首長国連邦アブダビで開催されたAbu Dhabi International Petroleum Exhibition and Conference 2022(ADIPEC:会期10月31日~11月3日)に参加した。ADIPEC2022の開会式において、ジャーベルUAE産業・先端技術大臣は、「エネルギー安全保障は、経済、社会、気候変動の重要な基礎であり、現在の世界が直面しているエネルギーの課題を解決することが、新たな世界を形作る機会となる」との認識を示した。またUAEは、太陽光、風力、水素などの低炭素事業にも注力しているほか、湾岸諸国初となる原子力発電を導入するなど、すべてのエネルギーオプションの重要性を強調。「最大のエネルギー供給を最小の温室効果ガス排出で達成する必要がある(Maximum energy, minimum emission)」と述べた。同国は来年の国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)のホスト国でもあり、気候変動対策とりわけメタン排出低減の重要性、CCS事業や、水素・アンモニア製造事業を追究する姿勢も強調し、「具体的で現実的な(tangible and realistic)」成果を出すとしている。石油・天然ガスの伝統的な産出国であり、相対的に若年人口が多く今後の経済成長が期待できる新興国からエネルギー安全保障、エネルギートランジションをどのようにとらえるのか、多くの要人や識者から見解を聴取でき、大変興味深い機会であった。

 

4. まとめに代えて ―2023年における注目点―

2022年に参加した国際会議等で得られたエネルギー安全保障・エネルギートランジションに関する知見を総括すれば、各国・各地域の経済・政治状況を勘案して、現実的な取り組みを着実に進めるということであろう。すべての国・地域に対応した特効薬の処方箋を即座に見出すことは困難だが、厭世的になり対策に手をこまねいているだけでは事態は打開しない。エネルギーのトリレンマ(Energy Security, Sustainability and Affordability)は、互いに相反する概念だとされるが、これを一つのエネルギー源で解決するのではなく、複数のエネルギー源を異なる時間軸で十分活用していくということが重要である。

日本政府は、12月22日にGX実行会議を開催し、脱炭素社会の実現に向けた「今後10年を見据えたロードマップ」を公表した。気候変動問題への対応は人類共通の喫緊の課題であり、これに加えてロシアによるウクライナ侵攻により一変した国際エネルギー情勢に直面するなか、産業革命以来の化石エネルギー中心の産業構造・社会構造をクリーンエネルギー中心へ転換するとしている。これを実現するためにも、エネルギー供給の面においては、再生可能エネルギーや原子力などエネルギー安全保障に寄与し、脱炭素効果の高い電源を最大限活用しつつ、エネルギー需要の面においては、省エネルギー化や産業の燃料転換推進などに取り組むとしている。周囲を海で囲まれ、賦存するエネルギー資源に乏しい我が国にとって、原子力の利活用推進に向けた政策転換が見られたことは特筆すべき点である。2023年は日本政府がG7の議長国を務める。アジアにおける唯一の加盟国として、また原油及びLNGをはじめとするエネルギー資源の輸入に依存する立場として、エネルギー安全保障とエネルギートランジションを進めるための対話を主導することが期待されるだろう。

世界の人口は2050年に97億人までに増加、エネルギー消費は今日に比べ30%増加するとみられている。他方、いまだに8億人が電力へのアクセスがなく、26億人がクリーンな調理用燃料へのアクセスがない。こうした状況下、伝統的なエネルギーである石炭・石油・天然ガスを活用し、エネルギーアクセスのAffordabilityを確保する喫緊の需要がある。また、経済活動を途切れなく支えるために、信頼できるエネルギー供給を確保するSecurityについては、エネルギートランジションの潮流により性急に化石燃料から再生可能エネルギーに転換するのではなく、CCS等の活用による化石燃料のクリーンな利用や、水素・アンモニアなどの低炭素燃料による代替エネルギーが十分利用可能となりSustainabilityが確保されるなかで、各エネルギーの位置づけも変化していくだろう。

本年11月6日~20日にエジプトのシャルム・エル・シェイクにおいて開催された国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)では、気候変動対策の各分野における取組の強化を求めるCOP27全体決定「シャルム・エル・シェイク実施計画」、2030年までの緩和の野心と実施を向上するための「緩和作業計画」が採択された。加えて、ロス&ダメージ(気候変動の悪影響に伴う損失と損害)支援のための措置を講じること及びその一環としてロス&ダメージ基金(仮称)を設置することを決定した[11]。2023年11月30日~12月12日において、COP28がUAEで開催される予定であり、これまでの先進国における開催から、2会合連続して新興国・途上国による開催となる。これにより、気候変動への多様な見方・課題が提示されることが期待されるほか、ロス&ダメージ基金(仮称)を通じた先進国に対する補償要求の具体化など、気候変動に関する議論の重心が移り変わる年になるだろう。UAEという伝統的には石油・天然ガス、将来的には水素・アンモニアといった低炭素燃料を含むエネルギー供給国においてCOP28が開催されることで、エネルギー供給における気候変動への取組を一層強化する契機となるだろう。

最後に、2023年の原油市場については、引き続き世界経済成長見通しの不確実性はあるものの、中国における新型コロナウイルス感染症関連の規制緩和を受けた経済活動再開とこれに伴う同国石油需要の回復が期待されるほか、OPECプラス産油国による日量200万バレルの大規模減産決定、12月5日から導入されているロシア産原油の禁輸・価格上限設定とこれに対するロシアからの減産可能性(同国原油生産量の5~7%とされる)等に下支えされ、現在の価格水準あるいはそれを上回る水準で推移する可能性があるとみられる。また、石油製品価格についても、ロシア産石油製品の禁輸が2023年2月より導入されることを受け、特に欧州市場における留出油に対する需要が引き続き堅調に推移するとみられることから、価格を下支えするとみられる。

 

[1] IEA, IEA Member Countries to make 60 million barrels of oil available following Russia’s invasion of Ukraine
https://www.iea.org/news/iea-member-countries-to-make-60-million-barrels-of-oil-available-following-russia-s-invasion-of-ukraine(外部リンク)新しいウィンドウで開きます (2022年12月27日閲覧)

[2] IEA, An update on Member Countries’ Contributions to IEA Collective Stock Draw
https://www.iea.org/news/an-update-on-member-countries-contributions-to-iea-collective-stock-draw(外部リンク)新しいウィンドウで開きます (2022年12月27日閲覧)

[3] The White House, FACT SHEET: President Biden’s Plan to Respond to Putin’s Price Hike at the Pump
https://www.whitehouse.gov/briefing-room/statements-releases/2022/03/31/fact-sheet-president-bidens-plan-to-respond-to-putins-price-hike-at-the-pump/(外部リンク)新しいウィンドウで開きます (2022年12月27日閲覧)

[4] EIA, Weekly Petroleum Status Report https://www.eia.gov/petroleum/supply/weekly/(外部リンク)新しいウィンドウで開きます

[5] IEA, IEA confirms member country contributions to second collective action to release oil stocks in response to Russia’s invasion of Ukraine https://www.iea.org/news/iea-confirms-member-country-contributions-to-second-collective-action-to-release-oil-stocks-in-response-to-russia-s-invasion-of-ukraine(外部リンク)新しいウィンドウで開きます (2022年12月27日閲覧)

[6] Reuters, Russia says it may cut oil output up to 7% over price cap, https://www.reuters.com/business/energy/russia-may-cut-oil-output-response-price-caps-report-2022-12-23/(外部リンク)新しいウィンドウで開きます (2022年12月27日閲覧)

[7] 1991年の湾岸戦争時(2,980.5万バレル)、2005年のメキシコ湾におけるハリケーン・カトリーナ及びハリケーン・リタの襲来による海上石油生産施設、パイプライン及び製油所の損傷時(6,000万バレル)、そして2011年のリビア内戦に伴う石油生産停止の長期化への対応(6,000万バレル)である。詳細は拙稿「国際エネルギー機関(IEA)及び米国による石油備蓄放出の市場への影響について」
https://oilgas-info.jogmec.go.jp/info_reports/1009226/1009343.html (2022年4月27日掲載)をご覧頂きたい。

[8] The White House, FACT SHEET: United States Bans Imports of Russian Oil, Liquefied Natural Gas, and Coal, https://www.whitehouse.gov/briefing-room/statements-releases/2022/03/08/fact-sheet-united-states-bans-imports-of-russian-oil-liquefied-natural-gas-and-coal/(外部リンク)新しいウィンドウで開きます (2022年12月27日閲覧)

[9] Gov. UK, UK to phase out Russian oil imports, https://www.gov.uk/government/news/uk-to-phase-out-russian-oil-imports(外部リンク)新しいウィンドウで開きます (2022年12月27日閲覧)

[10] 外務省, 国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)、京都議定書第16回締約国会合(CMP16)、パリ協定第3回締約国会合(CMA3)等 https://www.mofa.go.jp/mofaj/ic/ch/page24_001540.html(外部リンク)新しいウィンドウで開きます (2022年12月27日閲覧)

[11] 外務省, 国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27) 結果概要 https://www.mofa.go.jp/mofaj/ic/ch/page1_001420.html(外部リンク)新しいウィンドウで開きます (2022年12月27日閲覧)

 

以上

(この報告は2022年12月28日時点のものです)

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