ページ番号1009599 更新日 令和5年1月24日
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(本稿は、2022年6月7日に公開したレポート「CPCパイプライン出荷施設の故障と復旧について(https://oilgas-info.jogmec.go.jp/info_reports/1009226/1009380.html)」に、その後12月までに発生したトラブルを追記し、再構成したものである。)
概要
- 2022年3月以降、カザフスタン産の石油をロシアの黒海沿岸に輸送するCPCパイプラインが関係するトラブルが相次いで発生した。CPCパイプラインはカザフスタンの石油輸出の約8割を輸出する同国最大の石油輸出ルートであり、運転に支障が発生すれば上流事業の減産や輸出経路の変更に波及しかねない。
- 一連のトラブルによりパイプラインの出荷能力が断続的に制限される事態が発生したが、上流事業での定期メンテナンスによる生産停止・減産等とタイミングが重なったため、パイプラインの都合による上流事業の操業への直接の影響は限定的だったと見られる。
- しかし、CPCパイプラインに依存してきたカザフスタンの石油輸出体制を見直すきっかけとなり、代替ルートを整備する動きが活発化している。
1. CPCパイプラインの概要
CPC(Caspian Pipeline Consortium)石油パイプラインはカザフスタン産石油輸出の大動脈である。カザフスタンで生産される石油の3分の2、輸出量の約8割がCPCパイプラインで輸送されている。カザフスタン西部にある国内最大の油田プロジェクトTengizからロシアの黒海沿岸ノボロシースク近郊に石油を輸送し、三大プロジェクトの残り2プロジェクト(KashaganとKarachaganak)の輸出ルートが途中で接続している。さらに一部ロシアのカスピ海上油田から生産される石油(約1割)も合わせて、「CPCブレンド」として出荷される。総延長は1,511キロメートル。2001年に運転開始した後、現在の年間輸送能力は2018年の拡張を経て6,700万トン(日量約140-150万バレル)となっており、さらに2019年に開始された拡張計画「デボルネッキングプログラム」によって2023年末には年間8,300万トン(日量約170-180万バレル)となる予定である(表1)。パイプラインオペレーターであるCPCには、ロシア(Transneft(最大株主))、カザフスタン(KazMunayGas)の政府系企業の他に、上流事業に参画するExxonMobilやShellなどの欧米メジャー企業が出資者として名を連ねている(表2)。
本稿では、オペレーターのコンソーシアムを指す場合はCPCと表記し、CPCが操業するTengiz-Novorossiysk間のパイプラインを指すときはCPCパイプラインと表記する。
パイプライン全長 | Tengiz-Novorossiysk(Yuzhnaya Ozereyevka)間1,511キロメートル |
石油年間輸送能力 |
(当初)2004年~ 2,820万トン(日量約60万バレル) 2018年(拡張)~現在 6,700万トン(日量約140-150万バレル) 2023年(予定。デボトルネッキングプログラム実施中)~ 8,300万トン(日量約170-180万バレル) |
ポンプステーション | 15か所 |
貯油タンク容量 | (出荷ターミナル付近陸上)100万トン(10万トン×10基) |
出荷装置 |
一点係留装置(SPM; Single Point Mooring System)3基 (沖合5キロメートルに設置) |
オペレーター | Caspian Pipeline Consortium |
株主構成 | 表2を参照 |
(出所:CPCウェブサイト)

(出所:CPCウェブサイト)
プロジェクト | CPCパイプライン | TENGIZ | KASHAGAN | KARACHAGANAK |
オペレーター |
CPC (-K(カザフ)、-R(ロシア)) Caspian Pipeline Consortium |
TCO Tengizchevroil |
NCOC North Caspian Operation Company |
KPO Karachaganak Petroleum Operating Company |
ロシア政府 | 31%(Transneft) |
- |
- |
- |
KazMunayGas (カザフスタン政府) |
20.75% (KMG 19%、KPLV 1.75%) |
20% | 16.877% | 10% |
Chevron(米) | 15% | 50% |
- |
18% |
Lukoil(露) | 12.5% | 5% |
- |
13.5% |
ExxonMobil(米) | 7.5% | 25% | 6.807% |
- |
Shell(英) | 7.5%(Rosneft-Shell) |
- |
16.807% | 29.25% |
Eni(伊) | 2% |
- |
16.807% | 29.25% |
他 |
BG(英)2% Oryx(英)1.75% |
- |
TotalEnergies(仏)16.807% CNPC(中)8.333% INPEX(日)7.563% |
- |
生産量(日量) |
(輸送能力) 150万バレル (年間6700万トン。2023年を目標に170万バレル(年間8300万トン)に拡張予定) |
65万バレル (2023年頃に85万バレルに拡張予定) |
40万バレル (2023年目標に50万バレルに拡張予定。さらに2030年頃までに70万バレルに拡張する計画もある) |
25万バレル (ガス田プロジェクトであり、ガスコンデンセートを生産・出荷) |
(出所:各社ウェブサイト等からJOGMEC作成)

(出所:Yandex MapからJOGMEC作成)
CPCパイプラインの終点は、黒海北東部のロシア連邦ノボロシースクから西に約15キロメートル離れたユージュナヤ・オゼレエフカにあり、陸から5キロ離れた海上に設置している3基の一点係留出荷装置(Single Point Mooring System:SPM)からタンカーに石油が出荷される。2014年からSPM3基体制となり、出荷は同時に2基が稼働し、1基は予備。1基の出荷能力は日量約80-90万バレルで、2基の稼働により現状でも最大で日量180万バレル程度の出荷が可能。

(データ出所:生産量、消費量はBP統計2022およびカザフスタンエネルギー省発表の目標値、CPCパイプライン出荷量はCPC公表値)
2. 2022年の一連のトラブル
2022年はCPCにとって、安定した石油輸送・出荷体制を脅かす事態が頻発し対応を迫られる1年となった。以下、CPCのプレスリリース[1]を主要な情報源として4つのトラブルの経緯を記載する。
(1) 3月下旬の悪天候による出荷一時停止(トラブルその1)
ユージュナヤ・オゼレエフカ周辺の黒海北東部では2022年3月19日から20日にかけて強い北東の風が吹いた(図4)。この悪天候によりCPCパイプライン出荷ターミナルのSPMが損傷を受け、CPCは3月21日に3号機(SPM-3)の運転停止を発表。翌3月22日には2号機(SPM-2)にも損傷が確認され、また海象状況が悪く1号機(SPM-1)の検査を実施できずに操業の安全を確保できなかったため、3基全てのSPMを停止した。SPM-1の検査は翌3月23日に実施され、運転継続が可能と判断されて、SPM-1単独での出荷が3月24日に再開された。なお、SPMの故障に伴う石油の流出等は確認されなかった。また、ユージュナヤ・オゼレエフカ出荷ターミナルには10基の石油貯蔵タンクが設置されていて、出荷が滞る際はパイプラインからの石油を最大100万トン(約750万バレル)貯蔵できるようになっている。
当初、SPM-2、SPM-3の修理には1、2か月程度を要すると見込まれた。実際の修理完了日は、SPM-3が4月23日、SPM-2が5月25日だった。

(データ出所:ターミナルの北西約40キロメートルに位置するアナパ空港の気象観測データ[2]から作成。3月19日から20日にかけて風が強まった。アナパ空港は内陸7キロメートルにあり、海上ではより強い風が吹いたと考えられる。)
カザフスタンの石油輸出はCPCパイプラインに大きく依存しているため、CPCパイプラインの運転に支障が起こると、上流事業では減産による生産量の調整と代替ルートの確保の必要が出てくる。4月のカザフスタンの石油生産量は前月比で1割弱減少しており、これはCPCのSPM一時停止を受けて上流事業で生産量を調整したため。また3月のターミナル施設の故障をきっかけに、代替ルートを模索する動きが上流事業者、カザフスタン政府の中で活発化した。代替ルートについては4.に記述する。
(2) 周辺海域の機雷撤去によるSPM一時停止(トラブルその2)
5月25日にSPM3基体制が回復した後、2回目のトラブルは6月中旬に発生した。経緯は以下のとおり。
CPCは、ノボロシースク港湾管理局、ロシア黒海艦隊の規則に従い、6月にターミナル周辺で定期的な海底調査を実施。調査の結果、SPM-1、SPM-2近辺の海底に潜在的危険物の存在が確認され、追加調査と必要な処置を実施するために6月15日から10日間の予定で上記2基のSPMが運転を停止することとなった。
当初は6月25日までの予定だった追加調査は延長され、6月27日にSPM-2の近くで、第二次世界大戦時の機雷が確認され、機雷は安全な場所まで移動後に6月29日に解体処理された。
SPM-1近辺の追加調査も完了し、7月5日に再びSPM3基体制を回復した。
黒海は第二次世界大戦中に激戦地となり、また海流によって海底面が移動することから、現在に至っても不発弾の発見は珍しくなく、SPM近辺でも機雷が見つかることがあることをCPCはプレスリリースで示唆している。
SPM-3のみによる出荷体制は6月15日から29日まで2週間続いた。しかし、タイミングを同じくしてKashagan油田では6月1日から7月7日まで定期メンテナンスにより生産を停止していたため、元々6月中のCPCブレンドの出荷予定量が少なく、SPMの停止による上流事業への直接の影響は発生しなかったと見られる。

(出所:CPCプレスリリース、報道情報から作成)
(3) 裁判所による操業停止命令(トラブルその3)
3回目のトラブルは、SPMではなくCPCそのものの操業停止に繋がりうるもので、2回目のトラブルの終了と同時に発生した。経緯は次のとおり。
CPCは、3月から5月にかけて発生したSPMの故障に関して、連邦政府の指示を受けて、運輸監督庁(Transnadzor)による検査を5月に受検。その後6月に、検査の結果としてTransnadzorから、CPCの石油流出対策計画に対して、書類上の複数の違反が指摘され、違反是正の期限が11月末に設定された。
ところが、違反是正期限は11月末であるにもかかわらずTransnadzorは7月5日にノボロシースク臨海地区裁判所に対し、CPCの90日間の操業停止命令を要請。同日、裁判所はCPCに対して30日間の操業停止を命令する決定を下した。
CPCはすぐに反発し、「石油パイプラインの操業は連続運転が必要な事業であって、一斉運転停止は施設に取り返しのつかない破壊的な影響を与える恐れがある。司法の決定がそのような結果をもたらすことがあってはならず、CPCの申立てに対する審議が終了するまでの間、操業停止命令の発効を猶予すべき」という内容で上訴。
7月11日、ノボロシースク臨海地区裁判所の上級裁判所であるクラスノダール地方裁判所が、操業停止命令を20万ルーブルの罰金命令に変更することを決定。決定を受けてCPCは、罰金支払いの有無には言及せず、Transnadzorの指摘事項を早急に是正するというプレスリリースを出した。
このトラブルでは結果的にパイプラインの運転に影響が出なかったが、ロシア政府組織や裁判所の判断でパイプラインの操業に支障が出る寸前となったことから、これまでの一連のトラブルにはロシア政府が関与しているのではないかとする報道が多く出るようになった。
(4) SPMの海中部品の交換(トラブルその4)
4回目のトラブルは8月に発生し、2022年に起きた一連のトラブルの中では最も長く、完全復旧まで約4か月を要した(図5参照)。経緯は次のとおり。
8月にSPMの定期点検が行われたところ、海底のパイプラインと海面のSPMの間で石油が通るホースの形状を調整する浮力タンク(buoyancy tank)という部品に亀裂が見つかり、安全な運転に支障をきたす恐れがあるため、SPM-1が8月5日、SPM-2が8月17日にそれぞれ運転を停止した。SPM-3は検査の結果、問題ないことが確認されたため、再びSPM-3のみによる出荷体制となった。
損傷したタンクの交換作業には最低でも1か月が必要とされ、タンク交換のための業者選定(9月中旬にロシア企業を選定)と、潜水作業員、クレーン船等、作業に必要な人員及び設備の現場への配置(作業船は10月中旬までに到着)に時間を要した。さらに作業実施に必要な海象条件(風速20メートル以下、波の高さ1.5メートル以下)の待機が長引き、SPM-1の修理が完了したのは11月12日、続いてSPM-2の修理が完了したのは11月29日だった。
SPM-3のみによる出荷体制は8月17日から11月12日までの約3か月におよび、SPM-1が8月5日に運転停止してから、11月29日にSPMの3基体制が回復するまでは約4か月かかった。一方、上流ではこの間に、まずTengizで8月から9月にかけて定期メンテナンスを実施し生産量が大きく低下していた。またKashaganでは8月の初めにガスリークが発見されたことにより一時生産を停止し、その後11月まで生産能力を従来の半分以下まで落として減産が続いた。さらにKarachaganakでも、9月の中旬から3週間程度メンテナンスのため減産が行われた。したがってユージュナヤ・オゼレエフカの出荷ターミナルが3か月間フル稼働していなかったことが直接の原因となるような生産量減少、出荷量減少はこの時も発生しなかった。
3. トラブル連続の背景
本稿で列挙した2022年の4つのトラブルの内、機雷除去に関するトラブルを除いた3つのトラブルの根本的な発端はSPMの故障にあった。SPM-1とSPM-2は2023年と2024年に、メーカーが定める最初の交換時期を迎える。CPCでは2021年8月に石油流出事故が発生し、その際もSPMの故障が起きていた[3]。操業開始から20年以上たったパイプラインの特に出荷施設に老朽化が見られ、2022年にトラブルが相次いだ要因となったことが考えられる。
他方、ロシア側から政治的な背景に基づく関与があったのではないかという見方もある。この見方の裏付けにはならないが、補強しうる事実として、CPCの最大の株主はロシア国営Transneftで、2021年3月からは操業・保守を担う業者もTransneft子会社のTransneft-serviceに変更されていること、また機雷の除去に関して、海底調査のルールと実施にノボロシースク港湾管理局と黒海艦隊が強い影響力をもっていること、さらに、7月の操業停止命令を要求したのが政府機関であるTransnadzorだったことが挙げられる。
ロシアが仮に関与する場合の政治的な意図としては、カザフスタンからの石油輸出を不安定化することで、需給のひっ迫感を煽って油価の引き上げ圧力をつくり、対露制裁によって減少が見込まれる重要な石油収入を少しでも多く確保することや、ロシア依存に危機感をもつカザフスタンに、ロシアが影響力を行使できることを暗に示して引き続き連帯を求めようとしていることなどが考えられる。
4. カザフスタンの石油輸出体制の脱CPC依存
カザフスタンの2022年の石油生産量は約8,420万トンで、目標としていた8,570万トンに2%弱の未達となった。CPCパイプラインのターミナルの故障は、上流事業でほぼ同じタイミングで生産減少が起きたため、年間を通してカザフスタンの石油生産量に与えた影響は限定的だったと言える。しかしCPCパイプラインに石油輸出を大きく依存する体制が深刻に再認識され、見直す動きを急加速させた。11月末以降はCPCに関連する新たな目立ったトラブルは発生していないものの、今後の状況が脱CPC依存の動きと併せて注目される。
CPCパイプライン以外のカザフスタンの主要な石油輸出ルートを以下に記述する。
北向けロシア経由
Atyrau-Samaraパイプライン経由でロシア国内のTransneftの輸送システムに接続する。バルト海のウスチ・ルガ、黒海のノボロシースクが主要な出荷港となる。Atyrau-Samaraパイプラインの輸送能力は日量34万バレルで、通常の稼働率は6割程度。
なお、従来ウスチ・ルガ、ノボロシースクから出荷される場合はウラル原油として扱われたが、2022年6月からカザフスタン産は新たに導入されたブランド名KEBCOでロシア産と区別して取引されている。
また、12月に発効したEUのロシア産石油禁輸に並んで、ドイツがロシア産パイプライン石油の受入れを自粛し、代替として2023年からカザフスタンがDruzhbaパイプライン経由でドイツの製油所向けに石油供給する見通し(2023年は150万トン(日量約3万バレル)程度の予定)。
東向け中国へ
カザフスタン-中国パイプライン(KKTパイプライン)のカザフスタン東部から中国国境までの区間(Atasu-Alashankou部分)の輸送容量は日量40万バレル(年間2,000万トン)。稼働率は6割程度で大部分はロスネフチがカザフスタンとのトランジット契約に基づき中国向け輸出に使用している。2021年のカザフスタンからの輸送量は日量2万バレル程度だった。これを日量20万バレル程度まで増加させることは設備能力としては可能だが、西部から接続するAtyrau-Kenkiyakパイプラインの容量が日量12万バレル(年間600万トン)しかなく、鉄道輸送での補完には石油タンク車両が不足する。カザフスタン政府は、Atyrau-Kenkiyakパイプライン、Kenkiyak-Kumkolパイプラインの容量を2倍に拡張することを検討している。
西向けカスピ海、アゼルバイジャン経由
油田が集中するカザフスタン西部のAtyrau地方からロシア経由の鉄道でアゼルバイジャンのバクーまで、またはカスピ海Aktau港、Kuryk港まで鉄道で輸送し、そこからバクーまでカスピ海上をタンカーで輸送してから、BTC(Baku-Tbilisi-Ceyhan)パイプライン(輸送能力日量120万バレル)、Baku-Supsaパイプライン(同15万バレル)で輸送が可能。両パイプラインには輸送余力があるが、バクーまでの鉄道または海上輸送は量が限られ、1日に輸送できる量は20万バレル弱。
また、ロイター通信によると、TengizプロジェクトオペレーターTCO(Tengizchevroil)は2015年以来となる鉄道でのジョージアの黒海沿岸Batumi港向けの石油輸送を2022年4月に開始し、その後断続的に鉄道輸送を実行している。
カザフスタンは、アゼルバイジャン、ジョージア等と協力して、カスピ海を横断する海上輸送の拡大を検討中であり、2024年までに石油の海上輸送量を現在の年間200-300万トン程度から1,200万トンまで増加させるという目標を掲げている。またカザフスタンエネルギー省は、2023年から年間150万トン(日量約3万バレル)の石油をバクーからBTCパイプライン経由で輸出する予定で、将来的に年間600-650万トン(日量約12-13万バレル)に拡大するとしている。
このカスピ海を横断する石油輸送の拡大の検討と併せて、カザフスタンが主導するTrans-Caspian International Transport Route[4](TITR。カスピ海横断国際輸送ルート)の強化拡充の動きも活発になっていて、トカエフ大統領は、石油上流事業者も巻き込んでTITRの早期確立の実現策を検討するよう2022年夏以降に指示を出している。
なお、Baku-Supsaパイプラインの出荷ターミナルとなっているジョージアの黒海沿岸Supsa港は「安全上の理由」により2022年4月以降石油出荷を停止している。

(出所:報道、各社公表値等からJOGMEC作成)
[1] CPCは出荷量に影響しうるトラブルの発生やその対応状況を含むパイプラインの操業状況等について頻繁にプレスリリースを行っている。本稿で記載するそれぞれのトラブルの経緯や損傷のあった部品の図示、写真等は関連するプレスリリースを参照。
https://www.cpc.ru/en/press/releases/Pages/default.aspx(外部リンク)
[2] 次の気象情報サイトのデータアーカイブから取得。https://rp5.ru/(外部リンク)
[3] 2021年8月7日のCPCパイプライン石油流出事故:SPM-1からタンカーへ積出し時にホース接合部が破損し石油が海に流出。CPCの検証によると流出時間は17分間で流出量は69トンだった。事故に対する罰金としてCPCは2022年6月29日に連邦政府に対し5,285,111,430ルーブルを支払っている。
[4] Trans-Caspian International Transport Route(TITR)は中国からカザフスタン、カスピ海を経由してアゼルバイジャン、ジョージア、トルコを通りヨーロッパに至る鉄道と海上輸送の国際物流ルート構想。カザフスタンの主導により関係国間で推進。各国の鉄道を接続し、新路線の拡充、港湾の拡張、接続地点での積替え能力の向上、通関手続きの効率化を進め、スエズ経由やシベリア鉄道経由より輸送日数を短縮することが目標。
以上
(この報告は2023年1月23日時点のものです)