ページ番号1009712 更新日 令和5年5月2日

(短報)非友好国の企業が保有するロシア法人株式等の一時的なロシア政府の管理を認めるロシア大統領令を発出

レポート属性
レポートID 1009712
作成日 2023-05-01 00:00:00 +0900
更新日 2023-05-02 07:41:47 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 基礎情報
著者 原田 大輔
著者直接入力
年度 2023
Vol
No
ページ数 3
抽出データ
地域1 旧ソ連
国1 ロシア
地域2 北米
国2 米国
地域3 欧州
国3
地域4
国4
地域5
国5
地域6
国6
地域7
国7
地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 旧ソ連,ロシア北米,米国欧州
2023/05/01 原田 大輔
Global Disclaimer(免責事項)

このウェブサイトに掲載されている情報はエネルギー・金属鉱物資源機構(以下「機構」)が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、機構が作成した図表類等を引用・転載する場合は、機構資料である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。機構以外が作成した図表類等を引用・転載する場合は個別にお問い合わせください。

※Copyright (C) Japan Organization for Metals and Energy Security All Rights Reserved.

PDFダウンロード372.8KB ( 3ページ )

概要

  • 4月25日、非友好国の企業がロシア国内に保有する不動産・動産、ロシア法人の株式や有価証券、及び財産権を一時的にロシア政府(連邦国有資産管理庁又は政府が任命する者)の管理に置くことを認める大統領令が新たに発出された。条件として、非友好国の領内に所在するロシアの資産が剥奪された場合や脅威に晒された場合が挙げられており、西側諸国に対するカウンター制裁であることが示されている。
  • 具体的な対象として、フィンランド企業Fortumの傘下にあるロシア法人で電力会社「フォルトゥム/Фортум」(98.2295%)と、ドイツ企業Uniperの傘下に入っているロシア法人で同様に電力会社「ユニプロ/Юнипро」(83.73%)が挙げられている。
  • 当該企業の株式所有権が連邦国有資産管理庁へ移譲された後、両社の取締役会はRosneftの人間2名をそれぞれ代表に選出。「フォルトゥム」にはRosneft傘下のBashneft Dobychaの電力担当責任者(ヴャチスラヴ・コジェブニコフ氏)が、「ユニプロ」にはRosneft電力部部長(ヴァシリ・ニコノフ氏)が社長に就任。
  • ペスコフ大統領補佐官は、「外部管理の主要な目的は、在外ロシア資産の非合法な接収に対応するための補償基金を形成することにある」と述べている。最近の特に欧州諸国政府によるロシア資産の国有化の動きに対する対抗措置であることを示唆。ロシア連邦国有資産管理庁は「フォルトゥム及びユニプロの外国人株主は資産を喪失したわけではない。しかし、今後、両社の経営上の決定に関与することはできない」との説明を行っている。
  • 2022年9月、ドイツ政府はRosneftの製油所関連資産(Bayernoil製油所の株式28.57%、MiRo製油所の株式24%、Schwedt製油所の株式54.17%)を連邦ネットワーク庁の管理下に置いた[1]。さらに、11月にはGazpromの傘下に入っていたSecuring Energy for Europe GmbH(旧Gazprom Germania)を連邦ネットワーク庁の管理下に置いてきた[2]。Rosneft関係者が今回対象となった2法人の代表に就任したことは、ドイツによるRosneft資産の接収に対する対抗策であることを示唆している。
  • フィンランドではこれまでロシア資産国有化の目立った動きは見られなかった。しかし、2023年3月30日、トルコ議会がフィンランドのNATO加盟を承認する法案可決を受け、NATOへ正式に加盟した[3]。このことが大統領令における「ロシア連邦の国家、経済、エネルギーに関連する安全保障もしくはその他の種類の安全保障、国防能力に関する脅威」と判断された可能性がある。
  • 本大統領令では政府管理の延長として、資産の売却や再民営化についての権限は定められていない。
  • これから留意される点としては、対象資産(特に外国人が出資するロシア企業株式)の拡大であるが、現時点はロシア側資産の外国での凍結事例や戦略的な脅威という事象の発生に対抗して行われており、その拡大も西側の対応によって変わってくることも暗示していることが挙げられる。また、大統領令で示されている「非友好国の領内に所在する資産の所有権及び(あるいは)財産権が、ロシア連邦及び(あるいは)ロシアの法人もしくは自然人から剥奪された場合」について、これまで対露制裁の一環として、欧米諸国が課してきたロシア中央銀行が各国に保有する外貨準備の凍結が対象となり、その結果として、非友好国の企業や個人がロシア領内に保有する不動産・動産、株式・有価証券、そして財産権が新たに対象とならないとは言い切れず、ロシア政府の今後の動きに注目が集まる。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

<参考>大統領令(第302号)[4]抄訳

「いくつかの資産の一時的外部管理について」

(注)太字は筆者加筆。

アメリカ合衆国、同国と親密な諸外国及び国際機関による、ロシア連邦、ロシアの法人、ロシアの自然人からの所有権の不法な剥奪及び(もしくは)権利の不法な制限を目的とする非友好的かつ国際法に違反する行為に対し緊急措置を講じる必要性を勘案し、2006年12月30日付連邦法第281号「特別経済措置及び強制措置について」、2010年12月28日付連邦法第390号「安全保障について」及び2018年6月4日付連邦法第127号「米国及びその他の外国政府による非友好的行為に対する措置(対抗措置)について」に従い、ロシア連邦の国益を守ることを目的として以下を決定する:

  1. ロシア連邦、ロシアの法人、ロシアの自然人に対し非友好的行為を行う諸外国(以下、非友好国と称する)の領内に所在する資産の所有権及び(あるいは)財産権が、ロシア連邦及び(あるいは)ロシアの法人もしくは自然人から剥奪された場合、それらの権利の剥奪、制限の脅威が生じた場合及びロシア連邦の国家、経済、エネルギーに関連する安全保障もしくはその他の種類の安全保障、国防能力に関する脅威が生じた場合、以下の資産につき、一時的外部管理措置が講じられる:

(ア) 非友好国と関係する外国の法人・自然人(それらの法人・自然人が、それらの非友好国の国民もしくは居住者である場合、それらの非友好国がそれらの法人・自然人の経済活動の拠点である場合、あるいは、利益獲得の中心地となっている場合も含まれる)がロシア連邦領内に保有する不動産と動産及び列挙した外国法人・自然人(以下、非友好国の法人・自然人と称する)の管理下にある法人・自然人がロシア連邦領内に保有する不動産と動産;

(イ) 非友好国の法人・自然人に帰属するロシアの法人の定款資本(共同出資金)における持ち分、有価証券

(ウ) 非友好国の法人・自然人に帰属する財産権

  1. 添付の一時的外部管理の対象となる動産、不動産、ロシア法人の定款資本(共同出資金)における持ち分、財産権のリストを承認する。
  2. ロシア連邦国有資産管理庁を一時的外部管理人に指名する。
  3. ロシア連邦国有資産管理庁からの提案があった場合を含め、ロシア連邦大統領により別の法人・自然人が一時的外部管理人に指名されることがある
  4. 一時的外部管理人は、一時的外部管理下にある動産・不動産、有価証券、ロシア法人の定款資本(共同出資金)の持ち分、財産権(以下、財産と称する)の所有者としての全権を行使できるが、財産の処分に関する全権は有さない。
  5. 一時的外部管理人は、一時的外部管理下にある財産の目録の作成作業及び当該財産の保全のための作業を実施する。
  6. 財産の一時的外部管理に関連する費用は、当該の財産の運用により得られる収入で賄われる。
  7. ロシア連邦大統領の決定に従い、財産の一時的外部管理は停止される。
  8. 本大統領令は、その公布日より発効する。

ロシア連邦大統領 V.プーチン

モスクワ、クレムリン
2023年4月25日
第302号

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

2023年4月25日付け
ロシア連邦大統領令第302号により承認

一時的外部管理措置が導入される動産・不動産、有価証券、ロシアの法人の定款資本(共同出資金)における持ち分及び財産権のリスト

No. 財産 一時的外部管理人
  1. 動産
  2. 不動産
  3. 有価証券
1. Uniper SEに帰属する公開型株式会社
「ユニプロ/Юнипро」の株式の83.73%
ロシア連邦国有資産管理庁
2. Fortum Russia B.V.に帰属する公開型株式会社
「フォルトゥム/Фортум」の株式の69.8807%
ロシア連邦国有資産管理庁
3. Fortum Holding B.V.に帰属する公開型株式会社
「フォルトゥム/Фортум」の株式の28.3488%
ロシア連邦国有資産管理庁
  1. ロシア法人の定款資本(共同出資金)における持ち分
  2. 財産権

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

[3] NATO(2023年4月4日)https://www.nato.int/cps/en/natohq/news_213448.htm?selectedLocale=en(外部リンク)新しいウィンドウで開きます

[4] ロシア大統領府HP:http://kremlin.ru/acts/news/70986(外部リンク)新しいウィンドウで開きます
その他、コメルサント(2023年4月26日)を参照。

以上

(この報告は2023年5月1日時点のものです)

アンケートにご協力ください
1.このレポートをどのような目的でご覧になりましたか?
2.このレポートは参考になりましたか?
3.ご意見・ご感想をお書きください。 (200文字程度)
下記にご同意ください
{{ message }}
  • {{ error.name }} {{ error.value }}
ご質問などはこちらから

アンケートの送信

送信しますか?
送信しています。
送信完了しました。
送信できませんでした、入力したデータを確認の上再度お試しください。