ページ番号1009714 更新日 令和5年5月1日
このウェブサイトに掲載されている情報はエネルギー・金属鉱物資源機構(以下「機構」)が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、機構が作成した図表類等を引用・転載する場合は、機構資料である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。機構以外が作成した図表類等を引用・転載する場合は個別にお問い合わせください。
※Copyright (C) Japan Organization for Metals and Energy Security All Rights Reserved.
概要
- 新型コロナウイルス感染拡大抑制のためのロックダウンによる石油・ガス需要の低迷等で停滞していたVaca Muertaシェールの開発が進展するようになり、それに伴って、アルゼンチンの原油、天然ガス生産量が増加している。同国の2023年2月の原油生産量は日量62.7万バレル、天然ガス生産量は日量1億2,990万立方メートルとなっている。
- 投資が行われ、生産増のネックとなっているパイプラインの輸送能力が拡張されれば、Neuquén州やVaca Muertaシェールの原油生産量が日量100万バレルに達するとの見通しもなされている。
- Vaca Muertaシェールから原油を輸送するパイプラインについては、チリ向けのOleoducto Transandino(Otasa)パイプラインが2023年5月に操業再開を、Bahia Blanca近郊まで原油を輸送するOleoductos del Valle(Oldelval)システムが2024年末までに輸送能力倍増を、YPFがRío Negro州Punta Colorada de Sierra Grande港までのパイプライン敷設を計画している。
- Vaca Muertaシェールから天然ガスを輸送するパイプラインについても、Buenos Aires州SalliqueloまでのNéstor Kirchnerパイプライン第1期が2023年半ば頃までに敷設を終了する予定で、他にも、YPFとPetronasがBahia Blancaまでパイプラインを敷設し、Bahia Blanca でFLNGプロジェクトを立ち上げることを計画している。
- 石油会社も、国営石油会社のYPFやChevron、Vista Energy等が、Vaca Muertaシェールでの増産に励んでいる。
- 様々な障害に遭い、開発が進まず、生産増のペースも遅かったVaca Muertaシェールが、遂に大きく生産量を増やす可能性が浮上してきた。
1. はじめに
EIAによると、アルゼンチンのシェール技術的回収可能量は、シェールガスが802兆立方フィートで世界第2位、シェールオイルが265億バレルで世界第4位となっている。中でも、アルゼンチン中西部Neuquén州、Mendoza州、La Pampa州、Río Negro州にまたがって広がるVaca Muertaシェールは、アルゼンチンのシェールガス技術的回収可能量の38%、シェールオイル技術的回収可能量の61%を占め、世界の中でも米国に次いで開発が進んでいるシェール層となっている。

(出所:EIA Technical Recoverable Shale Oil and Shale Gas Resourcesを基にJOGMEC作成)
Vaca Muertaシェールの開発は、2010年末から、国営石油会社YPFが中心となり行われてきたが、資機材の確保が困難で、生産コストも高く、労働者によるストライキが頻発し、政策変更も多かったこと等の理由で開発のペースは遅かった。政府が補助金を出す等支援策をとったことや、コスト削減が進んだことで、2017年以降ようやく開発が進展するようになった。しかし、2020年には新型コロナウイルス感染拡大抑制のためのロックダウンにより石油・ガス需要が低迷し、2021年にはNeuquén州で抗議行動が起きたことで、再びVaca Muertaシェールの開発は停滞した。その後、政府の支援策がとられたこと等により、Vaca Muertaシェールの開発が再度、活発化し、アルゼンチンの原油、天然ガス生産量が増加するようになっている[1]。
新型コロナウイルス感染拡大前の2020年3月には日量51.9万バレル(うちNeuquén州が日量17万バレル)であったアルゼンチンの原油生産量は、同年6月には日量44.6万バレル(うちNeuquén州が日量16万バレル、Neuquén州の生産に占める非在来型の割合が75%)まで減少したが、これを底に回復し、2023年2月には日量62.7万バレル(同、日量32.4万バレル、90%強)まで増加している。
ガス生産量の回復は原油に比べ遅れたが、2021年4月の日量1億1,400万立方メートルを底に、2022年9月には、直近のピークである2019年4月の日量1億4,440万立方メートルや需要がピークとなる冬季の需要量、日量1億8,000万立方メートルには及ばないものの、日量1億4,120万立方メートルまで回復した。アルゼンチンでは、ガスの季節需要に合わせて生産量も増減するため、その後、生産量は減少し、2023年2月には日量1億2,990万立方メートルとなっている。このうちNeuquén州が日量8,230万立方メートルを生産しており、Neuquén州の生産に占める非在来型の割合は80%強となっている。
2. Vaca Muertaシェールの生産見通し
2022年以降、アルゼンチンやVaca Muertaシェールの生産について強気な生産見通しが発表されている。
政府は、アルゼンチンの原油生産量を2022年4月の日量578,000バレルから、2026年には71%増の日量100万バレル近くに引き上げるという目標を掲げた。天然ガスについても、アルゼンチンは2022年4月の生産量、日量1億2700万立方メートルを2026年には30%増の日量1億6,300万立方メートルに増加させる計画だとした。そして、これらの見通しは、パイプライン新設計画が進み、国内販売、輸出増の見通しが立っていることによるものと説明した。
また、Neuquén州のOmar Gutierrez知事は2022年4月に、Vaca Muertaシェールの開発、生産増に牽引され、2030年までに同州の原油生産量が日量70万バレルに、ガス生産量が日量1億4,000万立方メートルと2倍以上に急増する見込みだと、発表した。Gutierrez知事は、Vaca Muertaシェールには2022年に約50億ドルの投資が約束されているが、生産目標を達成するためには、この額を年間100億ドルにまで増やす必要があると語った。
YPFも、パイプラインの輸送能力を日量100万バレルまで増加させ、上中流に年間90億ドルを投じることにより、アルゼンチンは2026年に原油生産量を日量100万バレルに増やすことができるとしている。
2023年に入っても、同様に大幅な生産増を見込む見通しが発表されている。
Gutierrez知事は2023年1月、Vaca Muertaシェールでのプロジェクト開始とパイプライン輸送能力増強により、Neuquén州の原油生産量が今後数年間で予想以上に増加し、日量100万バレルに達する見込みであると発表した。Gutierrez知事は、原油生産量が日量100万バレルに達する時期については言及しなかったものの、生産見通しが日量100万バレルとこれまでよりも大きく増加したことが耳目を集めた。
また、Vaca Muertaシェールで生産される原油の多くを輸送するパイプラインOleoductos del Valle(Oldelval)システムを所有するOldelval社は、インフラが整えば、2028年にはVaca Muertaシェールの生産量は日量100万バレルに達するとした。同社は、YPF(出資比率37%)、Petrobras(同23.1%)、Chevron(同14%)、Pan American Energy(同11.9%)、Pluspetrol(同11.9%)、Tecpetrol(同2.1%)とVaca Muertaシェールで生産を行う主要な企業が出資する合弁会社で、1993年にYPFから同パイプラインを購入した。
このように、政府や石油会社等は、Vaca Muertaシェールの増産について期待を込めた見通しを発表しているが、その前提として、投資が行われ、パイプラインの輸送能力が拡張されることを挙げている。そこで、次に、その原油、ガスともにパイプラインの輸送能力拡張がどの程度進みつつあるのかを見てみる。
3. Vaca Muertaシェールから原油を輸送するパイプライン
現在、Vaca Muertaシェールを含むNeuquén basinで生産された原油は、輸送能力、日量226,400バレルのOldelvalシステムか、YPFが所有するNeuquén basinとLuján de Cuyo製油所を結ぶ輸送能力、日量85,200バレルのパイプラインで輸送されるか、あるいは、域内のYPF所有のPlaza Huincul製油所(精製能力、日量26,000バレル)で処理されている。
2023年2月のNeuquén州の原油生産量は日量324,000バレルとなっている。ガスに比べてゆとりがあると考えられていた原油パイプラインの輸送能力であったが、生産量が急増していることで、原油についても輸送能力は逼迫一歩手前という状況に追い込まれている。この状況を解決するため、Neuquén basinから原油を輸送するパイプラインの改修、拡張、敷設計画が進められている。
(1) Oleoducto Transandino(Otasa)パイプライン、2023年5月に操業再開
YPFは、Oleoducto Transandino(Otasa)パイプラインを2023年5月に再稼働することを計画している。当初は日量4万バレルを輸送し、2~3カ月後には、フル稼働に持ち込む予定だという。
Otasaパイプラインは、Neuquén州Puesto HernándezとチリBiobío州ConcepcionにあるEnapの製油所およびConcepción港を結ぶ全長425キロメートル、口径16インチ、送油能力が日量11万バレルのパイプラインだ。1994年に敷設され、1996年に操業を開始したが、アルゼンチンの原油生産量減少により送油量がピーク時の日量115,000バレルから日量35,000バレル程度に減少したため、経済的に運営が成り立たなくなったことから、2000年10月に稼働を停止し、放置されていた。
Vaca Muertaシェールの生産増で同パイプラインへの注目が高まり、2019年にアルゼンチンとチリは、同パイプラインの操業を再開し、チリへの原油輸出を再開する計画を発表した。チリ側では2020年2月までにパイプライン再開の準備が完了したが、アルゼンチン側では資金不足と新型コロナウイルス感染拡大からパイプライン改修が進まず、操業は停止したままとなっていた。両国は2021年1月26日に同パイプラインの改修に再度、合意し、Vaca Muertaシェールの生産急増もあって、アルゼンチン側でもパイプライン再開のための計画が進行するようになった。
なお、Otasaパイプラインを用いて輸送された原油のうち、チリの国営石油会社ENAPが引き取らないものについては、Concepción(San Vicente)港より輸出することが可能とされている。
(2) Oleoductos del Valle(Oldelval)システム、2024年末までに輸送能力倍増
Oldelvalは2022年8月に、7億5,000万ドルを投じて、Neuquén basin、Puesto HernándezとBahía Blanca近郊のPuerto Rosalesを結ぶOldelvalシステムの輸送能力を現在の日量226,400バレルから2024年末までに日量452,800バレルに倍増させる計画であると発表した。最終的には輸送能力を日量53万バレルまで引き上げるとしている。
(3) YPF、新たなパイプライン敷設を計画
YPFは、2022年8月、Río Negro州Punta Colorada de Sierra Grande港に原油輸出ターミナルを建設し、Vaca MuertaシェールとPunta Colorada de Sierra Grande港との間にパイプラインを敷設する計画を発表した。パイプラインは、輸送能力が日量72,000バレル、全長700キロメートルで、ルートの大部分である約635キロメートルがRío Negro州に敷設される。総工費は12億6,000万ドルで、うち約6億6,000万ドルをパイプラインの敷設に充てるという。2023年に敷設開始予定とされている。

(各種資料を基にJOGMEC作成)
4. Vaca Muertaシェールから天然ガスを輸送するパイプライン
Neuquén basinで生産された天然ガスは、現在、Transportadora de Gas del Norte(TGN)が所有、運営するNorteパイプラインとTransportadora de Gas del Sur(TGS)が所有、運営するNEUBAⅠ、NEUBAⅡパイプラインで輸送されている。
Norteパイプラインは、Neuquén basin から北にガスを供給するパイプラインだ。TGNは、Total、Techint、CGC、PetronasからなるコンソーシアムGasinvestが株式の70%、CMS Energyが30%を所有する企業となっている。
一方、NEUBAⅠ、NEUBAⅡパイプラインはLoma la Lata鉱区からBahía Blancaまで並行して敷設されている。TGSは、Petrobras Energíaが50%、CIESA Trustが40%、EPCA S.A.(Pampa Energiaの子会社)が10%を所有するCompañía de Inversiones de Energía SA(CIESA)が株式の51%を、残りを公的機関が所有している。
ガスについては、原油以上にパイプラインの輸送能力不足が伝えられている。パイプラインの輸送能力が不足しているために、Vaca Muertaシェールのガス生産を増やすことができず、これを拡張することは急務とされてきた。
また、近年、アルゼンチンやブラジルにパイプラインでガスを供給してきたボリビアのガス生産量が減少している。今後、南米中南部でガスが不足するとの懸念を払しょくするためにもVaca Muertaシェールからのガスパイプライン輸送能力拡張は必要と考えられている。
(1) Néstor Kirchnerパイプライン第1期、2023年半ば頃までに敷設終了予定
政府は2022年2月に国営エネルギー企業IEASAにNéstor Kirchnerパイプラインの敷設を許可した。同パイプラインは、第1期でNeuquén州Vaca MuertaシェールとBuenos Aires州Salliquelo間の558キロメートル、第2期でSalliqueloとSanta Fe州San Jeronimo間の484キロメートルのパイプラインを敷設する。2023年半ば頃までに第1期の敷設が終了予定で、これにより、ガス輸送能力が日量2,400万立方メートル増加することになる。第2期は2024年までに敷設終了予定で、アルゼンチン国内供給のみならず、輸出を促進することも視野に入れているという。輸送能力は最終的に日量4,400万立方メートルとなり、アルゼンチンの天然ガス輸送能力を25%拡大することになるという。総工費は34億ドルで、うち第1期分が15.7億ドルとされている。2023年2月時点で、建設開始から6ヶ月以上が経過し、完成まで残り4ヶ月となっており、不測の事態がなければ冬までに完成するとの発表があった。なお、同パイプラインについては、YPFが優先的に利用することを認められているという。
(2) YPFとPetronas、Bahia BlancaにFLNGプロジェクトを計画
YPFとPetronasは2022年9月に、アルゼンチンの非在来型ガスの開発、ガスパイプラインインフラ整備、LNG生産、国際マーケティング、ロジスティックスを含む統合LNGプロジェクトに関する共同研究・開発契約を締結した。総額600億ドルのプロジェクトで、液化能力は当初、年500万トン、最終的には年2,500万トンを想定しているという。両社はすでに、Buenos Aires州Bahia Blanca港と土地賃貸契約を締結した。最終投資決定が2024年初頭に行われれば、Petronasの既存のFLNG船を使用して、2026年には操業開始できる見通しとの報道もある。ただし、Petronasが現在、利用しているFLNG船をアルゼンチンに移動することは考えにくく、操業開始の時期についてはさらに情報が公開されるのを待つ必要があろう。
両社は2014年以来、Vaca MuertaシェールのLa Amarga Chica鉱区の開発を実施しており、現在、原油を日量4万バレル超、ガスを日量100万立方メートル生産している。

(各種資料を基にJOGMEC作成)
5. アルゼンチンで活動中の主要石油会社の状況
このように、パイプライン等の輸送インフラについては、輸送能力を拡張しようとする具体的な動きが見られるようになったが、石油会社の状況はどうだろうか。特に、多く活動が報告されている企業3社を以下に紹介したが、他にもWintershall DEAがアルゼンチンにおける今後4年間の投資額を4.8億ドルに引き上げ、Vaca Muertaシェール等の開発を進めるとしたり、アルゼンチンで第6位のガス生産企業Pampa Energiaが、2023年に5.5億ドルを投じ、Vaca Muertaシェール、Sierra Chataガス田の増産を図るとしたりする等、Vaca Muertaシェールを中心に活動は活発化している。
(1) 最大の生産者YPF、生産増を目指し投資を増額
YPFは、2022年12月時点で、アルゼンチンの原油生産量の38%、ガス生産量の31%を生産しており、Vaca Muertaシェールで最も活発に活動している企業だ。
YPFは2022年初めの段階では、投資額を2021年の27億ドルから2022年は40%増やし37億ドルとし、うち75%を上流に投じるとしていた。うち16億ドルは非在来型の開発に充て、そのうち50%以上をLoma Campana(パートナーChevron)、Bandurria Sur(同Equinor、Shell)、La Amarga Chica(同Petronas)、Aguada del Chanarの4鉱区に投じ、残りはManantiales Behr等在来型鉱区の生産減退を食いとめるために投じるとしていた。これにより、Vaca Muertaを中心に炭化水素生産量を8%増加させる計画であるとのことであった。そして、YPFは同社の石油生産量、日量22万バレルを5年間で日量45万バレルに倍増させるとしていた。
ところが、YPFは実際には、2022年に41億ドルを投じ、シェールを中心に生産量を増加させ、過去25年間で最高の生産量9%増という画期的な成長を達成した。
2023年については、2022年比22%増の50億ドルを投じ、このうち23億ドルをシェール開発に充てる計画であるという。投資額を増やすことで、2022年に達成した生産量9%増という成長を維持する計画であるという。
YPFはこれまでVaca Muertaシェールの開発にあたってはNeuquén州のオイルウィンドゥを中心に掘削を進めてきたが、シェールポテンシャルのある地域での開発を進め、輸出拡大につなげるため、Mendoza州やRío Negro州等でのシェール開発にも着手するようになった。Mendoza州ではパイロットプロジェクトでシェール井2坑を掘削、結果が有望であればさらに掘削を行う予定である。Río Negro州では、Vaca Muertaシェールの南に位置する未探鉱のChelforóでの掘削を計画しているという。
(2) El Trapial Este鉱区の開発を進めるChevron
ChevronはYPFとVaca Muertaシェール最大の生産量を誇るLoma Campana鉱区で日量6万バレル超を生産している。
Chevronは、2023年までにアルゼンチンへ7億ドルを投資することを予定していたが、2021年9月に、これを3.3億ドル増額すると発表した。Chevronは増額分をVaca Muertaシェールの開発に充てるとした。
Chevronはその後2022年4月に、Vaca MuertaシェールEl Trapial Este鉱区の開発ライセンス(25年間)を取得した。当初、3年間のパイロットプロジェクトに7,870万ドルを投資し、水平坑井5坑を掘削する計画だった。ところが、最初の掘削で予想以上に良い結果が出たことから、2023年までに16坑を掘削し、そのうち8坑は2023年9月に、残りは同年末までに生産を開始するとしている。
(3) Vaca Muertaシェールでの増産、原油輸出増を図るVista Energy
Vista Energyは2022年4月、原油価格上昇とパイプライン拡張計画を受けて、4億ドルを投じVaca Muertaシェールでの掘削を増やし、2022年の生産量を2021年の石油換算で日量38,845バレルから同、日量46,000~47,000 バレルに20%増加させる計画であることを明らかにした。
同年7月には、同社の主要鉱区であるBajada del Palo Oeste、Aguada Federal、Bajada del Palo Esteの3鉱区でのパイロットプロジェクトへの2022年後半の投資額を当初の4億ドルから5億ドルに引き上げるとした。そして、Vaca Muertaシェールでの増産に伴い、原油輸出を増加させていく方針であることを公表した。Vista Energyはすでに、原油輸出量を2022年第1四半期の100万バレルから第2四半期には150万バレルに増やしており、同社の生産量に占める輸出量の割合を40%から、2024年に50%、2026年に60%とする計画であるとした。
特に、Bajada del Palo Oeste鉱区については、2021年半ばにTrafiguraと3.5億ドルを投じて共同開発を進めるためのパートナーシップを構築、2022年10月には、1.5億ドルを投じて共同開発を継続することで合意したことを明らかにした。両社は、この時点までに坑井6坑の掘削を終え、間もなく1坑を掘削する予定で、この合意により新たに3坑を掘削する計画であるとした。さらに、両社は、締結している原油売買契約を12ヶ月間延長することにも合意し、Vistaは2023年上半期に月に38万バレル、下半期に月に34万5,000バレルの原油をTrafiguraに供給することになった。Trafiguraは、Vaca Muertaシェールの生産増で原油輸出量が増加する可能性が高まったことから、Bahia Blancaに石油貯蔵・物流設備の新設を検討していることも明らかになった。
また、Vista Energyは2023年2月には、Neuquén州とRío Negro州の在来型6鉱区の権益をAconcaguaに譲渡し、その対価として受け取る約1億ドルをVaca Muertaシェールの開発に充てるとした。
Vaca Muertaシェールでの生産増によりVista Energyの2022年第4四半期の生産量は前年同期比33%増の石油換算、日量54,718 バレル(うち原油は前年同期比41%増の日量45,745バレル)となった。同社は、2026年までに23億ドルを投じ、生産量を石油換算で日量80,000バレまで増やすことを目指すとしている。

(各種資料を基にJOGMEC作成)
6. 終わりに
このように、アルゼンチンでは、YPFを中心に石油会社が投資を増やし生産増に努めており、原油、ガス共にパイプラインの敷設も順調に進んでいるように見える。2010年末から開発が開始されたものの、様々な障害に遭い、開発が進まず、生産増のペースも遅かったVaca Muertaシェールが、遂に大きく生産量を増やす可能性が浮上してきた。
[1] JOGMEC石油・天然ガス資源情報(2022年7月1日)「アルゼンチン:Vaca Muertaシェールの石油・ガス生産量急増 ―昨今のウクライナ情勢により開発加速への期待高まる―」参照
以上
(この報告は2023年4月28日時点のものです)