ページ番号1009802 更新日 令和5年6月21日
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概要
- 2023年2月16日、仏独立系石油会社Perencoは、ガボンCap LopezにLNGプラントを建設することについて最終投資決定(FID)を行った。液化能力は年70万トンで建設費用は10億ドル、2026年稼働開始予定である。当該プロジェクトは、LNGの他、年産2万トンのLPG(ブタンガス)も生産予定である。なお、本計画の詳細は明らかにされていない部分が多いが、バージ型FLNGによるものと見込まれる。
- サブサハラ・アフリカ(サハラ砂漠以南のアフリカ)ではナイジェリア、赤道ギニア、アンゴラ、カメルーン、モザンビークの5か国がLNGを輸出しており、2023年にはコンゴ共和国、モーリタニア/セネガルが輸出開始予定である。ガボンのプロジェクトが順調に進めば2026年にサブサハラで8番目のLNG輸出国となる。
- LNGプラントへは陸上M'Boukou、Ikassa Kongo、IgongoなどのPerenco保有油ガス田からの供給が見込まれる。なお、Perenco GabonのGMは、ガボンにおいて約4,000万立方メートルのガスを生産しており、2023年には生産量を2倍にする予定であると述べる。LibrevilleとPort-Gentilの2つのガス火力発電所に計50MMscfdのガスを供給しているとされる。LNGプラントへは、Cap Lopez原油出荷ターミナルからのフレアガスも利用可能であるが、これらを併せた場合であってもプラントを満たすほどの供給量には至らないと考えられる。そのため、今後新たな油ガス田の開発も視野に入れる必要があると考えられる。
- 当該LNGプロジェクトはPerencoにとってアフリカで2つ目のLNGプロジェクトである。1つ目はCameroon FLNG(液化能力年180万トン)である。当該プロジェクトはLNG船からのコンバージョンにより開発されたものを使用している。
- Perencoは2023年上半期を目途にOgooué-Maritime県のBatangaプラントにおいて、年産1.5万トンのLPGを生産する予定である。FLNGからのLPG生産量2万トンを合わせると、ガボンの国内需要の大半をカバーする量のLPGを生産することができるようになる。
1. はじめに
2023年2月16日、Perencoは、ガボンCap LopezにLNGプラントを建設することについて最終投資決定(FID)した。液化能力は年産70万トンで建設費用は10億ドル、2026年稼働開始予定である。
ガボンがアフリカのLNG輸出国に加わることにより、ナイジェリアからカメルーン、赤道ギニア、ガボン、コンゴ共和国(2023年稼働開始予定)、アンゴラにかけて大西洋に面するサブサハラ・アフリカ(サハラ砂漠以南のアフリカ)のほとんどの国でLNGが生産されることとなる。
2. ガボン概要
IEAによると、同国の2023年2月の原油生産量は20万b/d、また、EIAによると、2018年の天然ガス生産量は約13Bcfであった。Oil & Gas Journalによると、同国の確認埋蔵量は原油約20億バレル、天然ガス918Bcfである。天然ガスはそのほとんどが随伴ガスとされる。現在同国において、天然ガスは、原油増進回収やガス火力発電所の燃料など自国消費に利用されている。
ガボンはエネルギートランジションの中でブリッジエネルギーとしてのガスに注目しており、石油法において持続可能なガス生産と利用を目的として定めている[1]。また、世界銀行によると[2]同国は2011年よりガスフレア削減を掲げており、2014年8月28日には「Law No. 011/2014」にて、ガスの収益化オプションを促進することにより探査と開発を奨励し、ガスフレアを削減するための法律を制定した。しかし、ガスの商業化についてより魅力的な財政条件を提示したものの、外資を魅了するには足りず、投資は滞った。その後、プロジェクトの政府取り分を引き下げ、コスト回収上限を引き上げ、かつ法人税を廃止すること等を盛り込んだ新しい石油法「Law No. 002/2019」が制定され投資は再度加速した。なお、同国のフレアガス量は2012年の1.3bcmから若干の変動があったものの、2021年には2012年と同値の1.3bcmを記録している。
契約形態について、同国では主要なライセンス契約であるPSCに定められた要件に沿って、第117条では、天然ガス生産者は、国内市場のニーズを満たすために、年間生産量の一部を優先的に国または国が指定する第三者に引き渡すことを要求している。なお、第110条によると国内市場のニーズを満たすことを目的とした炭化水素の販売価格は公式の販売価格から15%割引した金額とされている。「Law No, 002/2019」の第215条は、PSCにおける石油の利益に対する政府の最低取り分を、在来型鉱区では45%、深海及び超深海鉱区では40%に引き下げる(2014年の法律ではそれぞれ55%、50%)ことを規定した。また、天然ガスの場合、在来型は25%、深海及び超深海は20%と規定している。加えて、法人税35%を撤廃し、ロイヤルティを生産量に応じ引き下げる。現在、陸上で生産される液体炭化水素は7~15%、深海等では5~12%、天然ガスは陸上で5~10%、深海、超深海鉱区で2~8%とした。さらに、事業者のコスト回収の条件も改善された。液体炭化水素は在来型鉱区で70%、深海、超深海鉱区で75%、ガスは在来型鉱区で80%、深海、超深海鉱区で90%となっている。
3. プロジェクト概要
当該プロジェクトは、図2の通り同国の主要な原油輸出ターミナルがあるCap Lopezに設置され、LNG年70万トンとLPG(ブタンガス)年2万トンを生産する。本計画の詳細の多くは明らかにされていないが、Perencoが業界紙ENERGY VOICEに寄せた完成予想図によると、バージ型FLNGによるものと見込まれる[3]。なお、過去には陸上に建設されるとの報道もなされていた。Perencoによると、建設には3年かかり、費用は10億米ドル以上となる予定であり、LNGターミナルの他、215キロメートルの陸上ガス収集・輸出パイプライン(onshore gas gathering and export pipelines)と、BatangaからCap Lopezまでの海岸沿いの100キロメートルのパイプラインを新設するとみられる。建設作業は今年中に開始される予定で、最初のLNG輸出は2026年を予定する。なお、LNGの販売先確保の有無については明らかにされていない。
Perencoはガボンにおいて石油・ガスの権益を有している他、沖合に2基の浮体式海洋貯蔵・積出設備(FSO、Floating Storage and Offloading)やCap Lopez原油出荷ターミナル(2020年にTotal Gabonから買収)等の様々な権益を保有する。LNGプラントへは陸上M'Boukou、Ikassa Kongo、Igongoなどの保有油ガス田からの供給が見込まれる。なお、Perenco GabonのGMは、ガボンにおいて約4,000万立方メートルのガスを生産し、またLibrevilleとPort-Gentilの2つのガス火力発電所に計50MMscfdのガスを供給していると述べる。なお、報道によるとPerencoは2023年4月初旬にMayumbaにて新たなガス火力発電所建設にかかるMoUを締結した[4]。また、CO2排出量を減らしつつ2023年には生産量を2倍にする予定であると述べている[5]。加えて、Cap Lopez原油出荷ターミナルからのフレアガスも利用可能であるが、これらを併せた場合であってもプラントを満たすほどの供給量には至らないと推測する。そのため、今後新たな油ガス田の開発も視野に入れる必要がある。
Perencoは、LNGプラントが建設されている間、Cap Lopezターミナルの操業継続性確保にも取り組む予定であり、VLCC(Very Large Crude Tanker)1隻を配備し、ターミナルに流入するすべての原油の貯蔵を行っている。すでに現地のパイプラインシステムからVLCCへ、最初の原油引き揚げを行った。
当該LNGプロジェクトはPerencoにとって2つ目のLNGプロジェクトである。1つ目はCameroon FLNGであり、Golar LNG、カメルーン炭化水素公社(Societe National de Hydrocarbures:SNH)が共同で売主となっており、Gazprom Marketing and Tradingが単独で引き受ける。当該FLNGは図3の通りLNG船からのコンバージョンにより開発されたもの[6]であり、ガボンにおいても同様にトーリング契約を用いたFLNGプロジェクトが行われる可能性が考えられる。
加えて、Perencoは2023年上半期を目途にOgooué-Maritime県のBatangaプラントにおいて、年産1.5万トンのLPGを生産する予定である。FLNGからのLPG生産量2万トンを合わせると、ガボンの国内需要の大半をカバーするLPGを生産することができるようになる。なお、UNdataによると、2020年のLPG生産量は1万トン、輸入量は4.8万トン、最終消費量は5.7万トンであった[7]。
4. おわりに
アフリカ中央部においては天然ガス埋蔵量が豊富であるとされているが、投資家を魅了する適切な法的あるいは財務条件の整備が進んでいなかった。今回のPerencoのFIDによりガボンのガス開発が活性化する可能性がある。今後も開発状況に注目したい。
[1] http://www.droit-afrique.com/uploads/Gabon-Code-2019-hydrocarbures.pdf(外部リンク)
Gabon Code des hydrocarbures Loi n°002/2019 du 16 juillet 2019, DROIT AFRIQUE, 2023年3月24日閲覧
[2] https://flaringventingregulations.worldbank.org/gabon(外部リンク)
GLOBAL FLARING AND VENTING REGULATIONS – Gabon, The World Bank Group, 2023年3月22日閲覧
[3] https://www.energyvoice.com/oilandgas/africa/lng-africa/483412/gabon-perenco-fid-lng/(外部リンク)
Perenco takes FID on Gabon LNG plan, ENERGY VOICE, Feb 16, 2023
[4] https://www.energyvoice.com/oilandgas/africa/pipelines-africa/500329/perenco-gas-pipelines-gabon/(外部リンク)
Perenco sets out Gabon gas-to-power growth plans, Energy Voice, May 3, 2023
[5] https://www.businessfocusmagazine.com/2022/02/25/perenco-unlocking-gabons-potential/(外部リンク)
PERENCO – UNLOCKING GABON’S POTENTIAL, BUSINESSFOCUS, Feb 25, 2023
[6] https://www.golarlng.com/about-us/innovation.aspx(外部リンク)
INNOVATION, Golar LNG, 2023年3月23日閲覧
[7] http://data.un.org/Data.aspx?d=EDATA&f=cmID%3ALP%3BtrID%3A1231(外部リンク)
Liquified Petroleum Gas, UNdata, 2023年2月23日閲覧
以上
(この報告は2023年5月25日時点のものです)