ページ番号1009818 更新日 令和5年6月22日
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概要
- 米系メジャーの一つChevronは気候変動問題対応が不十分だとして投資家からの反発が高まり、2021年にScope 3削減を見据え低炭素事業に乗り出したが、2023年の株主総会では一転し、石油・天然ガス需要の回復、エネルギー安全保障への再認識により、Scope 3対応要求に対して投資家の不支持が広がった。
- 同社は、GHG排出量に関して絶対量の削減ではなく、GHGの排出強度を指標に掲げ、石油天然ガス増産に制約を与えることなく、操業現場でのGHG排出(Scope 1、Scope 2)の削減に注力することで対応する。
- 上流分野においてはシェールやメキシコ湾大水深等の低コストかつ低炭素排出な開発案件に投資し、石油・天然ガスの増産を行う。
- 低炭素化の事業としては、米国(カリフォルニア、メキシコ湾岸)および豪州・東南アジアの既存資産(油ガス田・LNG資産、石油精製、販売ネットワーク)を足掛かりに、バイオ燃料、水素、CCS+カーボンオフセットの3本柱で事業拡大及び事業化を目指す方針。
1. はじめに
米国内ではIRAの成立で低炭素エネルギー投資の機運は高まっているが、米系のメジャーは目標にScope 3を含まず低炭素事業への投資規模も10%台(表1)にとどまっている。他方で、彼らは石油・ガス生産者としての地歩を固めている。欧州系は従前の投資比率30%前後から見直し、TotalEnergies以外米系並みの水準に修正した(表1)。
本稿では、冒頭で2023年の米系メジャーの株主総会でのScope 3の是非の動向を要約するとともに、その一つChevron(カリフォルニア)を取り上げ、その目標設定、従来事業を含めた事業概要、低炭素化の具体的な動向についてとりまとめる。なお、財務面に関しては、別途掲載の欧米メジャーの業績他[1]をご参照いただきたい。
ExxonMobil(米) | Chevron(米) | Shell(英) | bp(英) | TotalEnergies(仏) | |
---|---|---|---|---|---|
Scope 1, 2範囲 |
自社操業 |
自社権益 |
自社操業 | 自社操業 | 自社操業 |
Scope 1, 2ネットゼロ年 | 2050年 | 2050年 | 2050年 | 2050年 | 2050年 |
Scope 3ネットゼロ年 | ― | ― (2028年までにScope 1~3を5%減) |
2050年 | 2050年 | 2050年 |
低炭素事業への投資計画額 | 2022-2027年で170億ドル、全体投資額の15%。 | 2021-2028年で100億ドル。2023年は投資額170億ドルのうち20億ドル(12%)。 | 2023年-2025年で100-150億ドル。年間230~270億ドルの13-20% | 2030年までに80億ドル(年10億ドル超)。2023年投資額160-180億ドルの約6%。 | 2023年は投資額160-180億ドルのうち50億ドル(30%)。 |
各種資料よりJOGMEC作成
2. 後退したScope 3削減の要請
一貫操業を行うメジャー企業にとって、探鉱・開発、精製、販売において排出されたCO2排出がScope 1、Scope 2に該当し、その後の消費段階に排出されたCO2はScope 3に分類される。Chevronの公表資料によれば、探鉱から精製・販売までのScope 1、Scope 2の排出量は全体の約25%であって、消費段階で残りの75%が排出される。
表2.Chevronの主なGHG排出目標
- 2028年までに2016年比で上流事業からのScope 1、Scope 2の炭素強度35%削減
石油生産においてGHG排出強度を2016年比40%削減し、CO2換算24kg/boe
天然ガス生産においてGHG排出強度を2016年比26%削減し、CO2換算24kg/boe
メタン排出強度を2016年比53%削減し、CO2換算2kg/boe
フレアリングにおけるGHG排出強度を2016年比66%削減し、CO2換算3kg/boe
2030年までにフレアリング廃止 - 2050年までに上流事業でのScope 1、Scope 2のネットゼロ達成
- 2028年までにScope 1~Scope 3のPCI(portfolio carbon intensity)を5%以上削減し、目標71g(CO2e)/MJ(Megajoule)
自社権益ベース | 2016 | 2020 | 2021 | 2022 | 2028目標 | |
---|---|---|---|---|---|---|
企業目標 | ||||||
PCI 単位g(CO2e)/MJ | 71.4 | 71.3 | 71.0 | 71.0 | ||
上流部門 | ||||||
石油生産GHG Intensity | 41.9 | 28.2 | 28.6 | 27.5 | 24.0 | |
天然ガス生産GHG Intensity | 32.6 | 26.8 | 28.6 | 27.5 | 24.0 | |
メタン排出強度 | 4.5 | 2.0 | 2.1 | 1.9 | 2.0 | |
フレアリング排出強度 | 8.7 | 3.8 | 4.3 | 3.5 | 3.0 | |
下流部門 | ||||||
リファイニング炭素排出強度 | 36.6 | 38.6 | 37.9 | 37.0 | 36.0 |
データ出所:ChevronのEnvironmental performance
Chevronは、2021年の株主総会でScope 3削減目標の設定を提案する議題が採択され、Scope 1, Scope 2の2050年のネットゼロを宣言するとともにScope 3の削減を目標に盛り込んだ(表1、表2、表3)。欧州メジャーのような2050年までのScoep 3ネットゼロではないが、2028年までにScope3を含む少なくとも5%(2016年比)の削減という比較的無理なく達成可能な範囲を目標に掲げた。
しかし、2023年5月末の株主総会では、石油・天然ガス需要の回復、エネルギー保障への再認識により、Scope 3対応要求に対して投資家の不支持が広がった。ExxonMobil、Chevronともに中長期的にScope 3削減を要求する決議事項に関して、それぞれ賛成11%、10%で、圧倒的な不支持多数であった(表4)。その他の数多くのCO2削減や気候変動対応にかかわる議決案はすべて否決され、株主からの気候変動問題への圧力は大幅に減じた。2021年当時6割の賛同を得た「2021年総会でのScope 3を削減する決議」を取り消すという、Chevronの今回の株主総会での決議案は賛成1.3%にとどまり、過去の採決を覆すほどではなかった。
開催年次 | Chevron(米) | ExxonMobil(米) |
---|---|---|
2021年 | 61% | ― |
2022年 | 33% | 27% |
2023年 | 10% | 11% |
注) 各社の発表資料より作成。株主提案「中期的なScorp3を目標設定する」に対する賛成割合で、ExxonMobilの2022年は株主提案「排出削減を行う」という決議案についての賛成割合。
3. ChevronのPCI(portfolio carbon intensity)指標
Chevronは、前述のとおり、2021年の投資家からの反発を受けScope 3の目標設定を盛り込んだが、欧州メジャーのような2050年までにScoep3を含めたネットゼロではなく、2028年までにScope 3を含む少なくとも5%(2016年比)の削減を掲げ、“higher returns, lower carbon”をスローガンに高収益追求と同時に低炭素化を目指す戦略を打ち出した。目標値として同社は2028年までに上流部門でScope 1、Scope 2の炭素強度35%削減(2016年比)、Scope 3を含むPCI指標で少なくとも5%を削減する。2022年のデータでは、すでに2028年の目標達成に近い。
Chevronの目標設定の特徴は、Scope 3の絶対量を目標に削減するのではなく、石油・ガスに伴うGHGの排出強度を指標にしたPCI指標である。PCI指標は、石油消費に伴うGHG排出であるScope 3を含めて算出され(図1)、透明性を高めるためにその計算式及び詳細データは同社のウェッブ上で公開されている。また、財務諸表やGHG排出量のデータがあれば他のエネルギー会社との比較も可能であることもその有効性の一つである。ChevronのPCI指標は、自社のエネルギー製品の市場投入に関連するバリューチェーン全体にわたる炭素強度を表し、生産、精製、販売、マーケティング活動それぞれの炭化水素の最大量に関する排出量を推定する。それらの一部の活動を行う他の石油会社にも適用が可能な計算モデルとなっている。

出所:Chevronのホームページ
4. Chevronの上流部門と下流部門
現在のところ低炭素事業は、その内容に応じて上流事業の一部であり、または下流事業の一部である。


同社は、石油・天然ガスの開発やLNG関連の上流部門が投資及び収益の大半を占める(図2、図3)。2022年は、国内外のインフレにより精製ビジネスの収益が改善したが、それでも全体の85%が上流部門からの利益、投資においても同様に上流部門が全体の8割を超えている。
上流部門の石油・ガス生産に関して、Chevronは、2022年実績で石油・天然ガス合計で日量300万boe(表5)。主な生産地は、シェール及びメキシコ湾大水深のある米国が日量120万boe弱の4割を占め、次にGorgon LNG及びWheartstone LNGの生産がある豪州が日量50万boe弱の16%、次がテンギス油田のあるカザフスタンで13%である。天然ガスは全体の43%を占め豪州が最大である(表6)。
単位 | 2020 | 2021 | 2022 | ||
---|---|---|---|---|---|
生産量 | |||||
石油 | 千b/d | 1,868 | 1,814 | 1,719 | |
天然ガス | 百万cf/d | 7,290 | 7,709 | 7,677 | |
合計 | 千boe/d | 3,083 | 3,099 | 2,999 | |
ガス比率 | % | 39% | 41% | 43% | |
埋蔵量 | |||||
石油 | 百万bbl | 6,147 | 6,113 | 6,085 | |
天然ガス | 百万cf | 29,922 | 30,908 | 30,864 | |
合計 | 百万boe | 11,134 | 11,264 | 11,229 |
データ出所:アニュアルレポート2022
石油・天然ガス生産量 (単位:千boe/d) |
比率 | |
---|---|---|
米国合計 メキシコ湾 陸上(Permian等) |
1,181 201 980 |
39% |
豪州合計 Gorgon Wheartstone Northwest Shelf |
482 232 181 67 |
16% |
カザフスタン | 396 | 13% |
ナイジェリア | 152 | 5% |
カナダ | 139 | 5% |
バングラディシュ | 118 | 4% |
イスラエル | 101 | 3% |
アンゴラ | 70 | 2% |
タイ | 67 | 2% |
中立地帯(サウジ、クウェート) |
60 | 2% |
その他、赤道ギニア、カザフスタン、アルゼンチン、コンゴ共和国、中国、ミャンマー、英国、インドネシア、クルド |
233 | 8% |
合計 | 2,999 |
データ:アニュアルレポート(2022)
2021‐2022年にかけてインドネシア及びタイで生産油ガス田の権益期限が迎え両国の生産量が減少。インドネシアRokan生産油田のコンセッション契約が期限を迎え2020年に同国の生産量日量13.8万boeは2022年にほぼゼロに減少し、またタイ沖合のErawanガス田のコンセッション契約が期限を迎え2020年の同国の生産量日量20.7万boeが2022年は日量6万boeに減少した。
他方で、2020年10月に米国内のシェール及び東地中海のガス資産を有するNoble Energyを130億ドル(負債額含む)で買収、最近では2023年5月に米国コロラド州を拠点とするシェール事業者(PDC Energy)を76億ドル(負債額含む)で買収すると発表し、上流部門の石油・天然ガスの埋蔵量及び生産量の補填を行う。
Chevronは、現行石油・ガス生産量を2027年まで年率3%で増加させる計画である。既存アセットの減退を補いつつ増産するため、2027年までに、米国内のPermianで日量45万boeの増産、2023‐2025年に米国メキシコ湾のMad Dog 2、Anchor、Whale、Ballymoreの各大水深油・ガス田から新規生産が開始し、メキシコ湾全体で2027年までに日量10万boeの増産、その他、カザフスタンのテンギス油田の拡張事業により同日量13万バレルの増産、他の米国内のシェールやアルゼンチンのシェールから日量20万バレルboeの増産を計画する。そのほか、アンゴラ大水深また豪州のGorgon LNGステージ2の生産が近く開始される。将来の増産ポテンシャルとなる探鉱エリアは、主にブラジル、キプロス、エジプト、メキシコ、ナミビア、スリナム、コロンビアである。
Chevronは、低コストかつ低炭素な排出強度の案件を重要視しており、当面はシェールやメキシコ湾生産が増え米国の比重が一層高まるものとみられる。また、今後は、LNGポートフォリオを拡充する計画で、自社の豪州、アンゴラ、赤道ギニアのLNG生産のほか、米国のメキシコ湾で計画中の案件について長期LNG購入契約(Venture Global、Cheniere)を締結済み、さらに東地中海の天然ガス供給のポテンシャルを有する。
製油所、州 | 精製能力 千b/d | ||
---|---|---|---|
製油所能力 石油精製量 |
1,779 1,505 |
米国 El Sugundo、カリフォルニア州 | 290 |
米国 Pasadena、テキサス州 | 85 | ||
米国 Pascagoula、ミシシッピー州 | 369 | ||
米国 Richmond、カリフォルニア州 | 257 | ||
米国 Salt Lake City、ユタ州 | 58 | ||
タイ Map Ta Phut | 175 | ||
シンガポール Pulau Merlimau(50%) | 145 | ||
韓国 Yeosu(50%) | 400 | ||
石油販売量 | 2,614 |
データ出所:アニュアルレポート2022
下流の精製販売部門(表7)では、2022年は精製量日量150万バレル、販売量日量260万バレルで、こちらも米国およびアジア太平洋が拠点である。2022年はインフレのため精製業の収益性が改善し良好な状況である。下流部門では、現在、ConocoPhillipsとのJV事業者Chevron Phillips ChemicalがQatar Energyと共同でテキサス州のメキシコ湾沿岸でU. S. Gulf Coast II石化プラント、またカタールのRas Laffanでも石化工場を建設中である。そのほか、2022年に買収したRenewable Energy Group(REG)のバイオ精製所(表8)のGeismar(ルイジアナ)の拡張を行っている。
2023年の投資計画額は170億ドル、うち上流部門が134億ドルである。そのうちPermianシェールに40 億ドル、その他シェールに20億ドル、米国メキシコ湾に23億ドル以上である。下流部門は32億ドル(うち10億ドルはリニューアブル燃料)である。同社の中期の投資額は年間140~160億ドル(PDC Energy買収後)規模の計画。
低炭素事業における投資計画は2021年から2028年までに総額100億ドルで、うち20億ドルは従来の石油ガス操業の低炭素化の取り組み(表9)、残り80億ドルはバイオ燃料/リニューアブル燃料、水素、CCS及びカーボンオフセットに投資する計画である。すでに2021年及び2022年においてREG買収29億ドルを含めて、過半の48億ドルを投資済みである。
合計能力 | バイオ精製所、州 | 精製能力 千b/d | |
---|---|---|---|
米国 | 36 | Grays Harbor、ワシントン州 | 7 |
Geismar、ルイジアナ州 | 7 (リニューアブルディーゼル) | ||
Seneca、イリノイ州 | 5 | ||
Danville、イリノイ州 | 3 | ||
Raiston、アイオワ州 | 3 | ||
Albert Lea、ミネソタ州 | 3 | ||
Newton、アイオワ州 | 3 | ||
Mason City、アイオワ州 | 3 | ||
Madison、ウィスコンシン州 | 2 | ||
ドイツ | 4 | Emden | 2 |
Oeding | 2 |
リニューアブルディーゼルは動物性脂肪、コーン油、リサイクル食用油、植物油から水素を利用して製造、バイオ燃料とは異なる化学プロセス。
データ出所:アニュアルレポート2022
Scope 1及びScope 2削減への取り組み | ||
---|---|---|
排出のタイプ | 削減のための対策・方法 | 削減促進する政策支援 |
エネルギー直接利用 |
エネルギー管理の強化: 効率性の改善 低炭素エネルギーへの燃料転換 CCUS カーボンオフセット |
カーボンプライシング 炭素排出のレポーティング CCUSやオフセットなど技術イノベーション |
フレアリング |
ガス供給市場の開拓 操業上のベストプラクティス |
ガス市場開拓のためのインフラ整備支援 |
ベンティング(放散) |
メタン管理: 漏ガス検知と修繕 圧力管理システム |
機器性能の基準化 |
間接利用:エネルギー消費、輸入した電力等(Scope 2) |
エネルギー管理の強化: 効率性の改善 低炭素エネルギーへの燃料転換 CCUS カーボンオフセット |
カーボンプライシング 炭素排出のレポーティング CCUSやオフセットなど技術イノベーション |
出所:ChevronのCorporate sustainability report 2022を参照
低炭素の分野における方針としては、油・ガス田のメタン管理のリーダー格を目指すとともに、リニューアルブル燃料の増産に力を入れ、またCCUSや水素生産に対しては先手(Early actions)を取ることを目指す。米国および豪州・東南アジアに有する既存の資産(油ガス田・LNG資産、石油精製、販売ネットワーク)を足掛かりに、低炭素分野での事業化を模索している。
他方で、実投資とは別に、必要なアセット取得や新分野への進出に関しては、近年のNoble Energy(米)、REG(米)、PDC Energy(米)買収にみられるように企業買収を通じて補強あるいは獲得を図り、進出するオプションも予想される。
5. Chevronの具体的な低炭素化事業
公表されている情報に基づき、Chevronの脱炭素エネルギーの事業化に向けた動きを紹介する。
(1) バイオ及びリニューアブル
2030年目標
バイオ燃料 日量10万バレル
リニューアブル天然ガス(RNG) 40,000mmbtu/d
2022年、米国第2のバイオ燃料生産者であるRenewable Energy Group(REG)を買収し子会社化し、米国と欧州であわせて11のバイオ精製所(表8)及びそのサプライチェーンを取得した。2030年までにバイオ燃料日量10万バレルまで能力の拡大することを目指す。またアグリビジネスのBunge North AmericaとJVを組成して、オイルシード処理や農場連携を通じたリニューアブル燃料のフィードストックの開発を行う。https://bungenorthamerica.com/(外部リンク)
リニューアブル天然ガスに関しても2030年までに日量40,000mmbtuを目指して資産拡充やインフラ構築を進めている。例えば、カリフォルニアでは、農場バイオメタンの生産及び販売のためのインフラ構築に向けCalifornia BioenergyとJVの組成が挙げられる。https://calbioenergy.com/(外部リンク)
(2) 水素、CCS
2030年目標
CCS+カーボンオフセット 年間25百万トン
水素 年間15万トン
Chevronの説明によれば、水素、CCSに関しては先手を狙う。
同社は、CO2の管理に関しては長年の経験を有しているとしてCCUSの利用方法としては、一つは自前の資産の炭素強度を下げることであり、もうひとつは第3者の排出源者に提供すること。
同社は、豪州とカナダでCCSを操業中で、豪州では、LNG生産を行うGorgonガス田でCCSを実施している。2022年末までに累積約700万トンを圧入、カナダではQuest CCS事業に20%の権益を有し、年間1百万トンのCO2を回収し地下に圧入し、2021年時点で約700万トンを貯留した。
米国では、同社はテキサス州沖合のBayou Bend CCS事業に50%権益を取得し、上流企業のTalos Energy(25%、オペレーター)及び脱炭素ビジネスを展開するCarbonvert(25%)とともに、米国初の沖合CCSの事業化を目指している。場所は、テキサス州政府の管轄域Beaumont及びPort Arthur沖合で、予備的評価ではCO2貯蔵ポテンシャル225から275百万トンと発表されている。
水素やアンモニアに関しては、既存資産や現在の戦略的なパートナシップ等を梃子に基盤づくりを進めている。自社が操業するカリフォルニア州のRichmond製油所を拠点に複数の水素プロジェクトを計画、例えば、廃棄物からの水素生産を目指しRaven SR(米)及びHyzon Motors(米)と協働する。また、長年のLNGパートナーであるJERAと連携し、CCS、水素キャリアーや低炭素燃料の製造などの事業化実現可能性調査を実施している。
その他、公表情報では、脱炭素エネルギーの事業化に向けた技術提携として、先進的な地熱技術に関して三井石油開発(日)との提携、水素供給ステーションに関し岩谷産業(日)との提携、また水素製造の実証試験を行うAurora Hydrogen(加)への投資を行っている。またCO2回収技術に関してCarbon Clean(米)やSvante Technology(米)、また核融合技術に関してTAE Technologies(米)と連携し事業化の可能性を追求している。
6. まとめ
米国内ではIRAの成立で低炭素エネルギー開発への投資熱は高まったが、米系のメジャーは長期目標にScope3を含まず、低炭素事業への投資額も全体の10%程度。欧州系メジャーも、2023年に入り、低炭素事業への投資ウエイトを以前の30%台から大幅に引き下げる動きがみられる。
米系メジャーのひとつChevronは、GHG排出量の絶対値の削減ではなく、GHGの排出強度を数値目標に掲げており、石油天然ガスの増産に制約を与えることなく、自社操業におけるGHG排出(Scope 1、Scope 2)の削減に注力することで目標達成を目指す。また、低炭素事業としては、バイオ燃料、水素、CCS+オフセットの3本柱に事業拡大または事業化に取り組んでいる。
[1] 参照先として、石油天然ガス資源情報 2023年5月 メジャー5社2023年第1四半期決算 ―堅調な業績から設備投資・株主還元を継続―(鑓田、高木) https://oilgas-info.jogmec.go.jp/info_reports/1009585/1009726.html、石油天然ガス資源情報 2023年6月 エネルギー開発企業の低炭素事業投資動向 ―石油天然ガス事業投資とのバランス―(鑓田) https://oilgas-info.jogmec.go.jp/info_reports/1009585/1009814.html
以上
(この報告は2023年6月21日時点のものです)