ページ番号1009897 更新日 令和5年10月2日
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概要
ガイアナは、2023年9月12日を入札提出期限として、沖合14鉱区を対象にガイアナ初の鉱区入札を実施、翌9月13日に、6コンソーシアムが8鉱区に入札を行ったことを明らかにした。その後、Jagdeo副大統領の発言から、合計で14件の入札があったこと、10月初旬に評価を終え、年内に契約を締結する予定であることが判明した。
なお、19世紀以来、ベネズエラは、Essequibo川西側のすべての土地および関連する沖合の海域は自国の領土だと主張しており、今回の鉱区入札にも反対を表明している。これに対して、Jagdeo副大統領は、鉱区入札が予定通り行われることを確認したという。
ガイアナは、2022年12月9日に沖合14鉱区を対象とした同国初の鉱区入札を開始した。
対象とされた14鉱区中、11鉱区(S1~S11)は、Oreo地区と呼ばれる浅海に位置している。このエリアはもともとDemerara鉱区と名付けられ、カナダのCGX Energyとその親会社であるFrontera Energyが権益を保有していた。しかし、CGX EnergyとFrontera Energyは、スリナムとの国境に位置するCorentyne鉱区で2021年に掘削したKawa-1号井と2023年1月末より掘削したWei-1号で相次いで炭化水素層を確認したことから、今後はCorentyne鉱区の探鉱に注力したいとして、Demerara鉱区を返還し、これが今回の入札対象鉱区とされた。残りの3鉱区(D1~D3)は、北東部のスリナムとの国境に接したもともとBlock Cと名付けられていた深海鉱区を分割した鉱区である。鉱区面積はそれぞれ1,000〜3,000平方キロメートルとなっている。
表1に示した通り、サインボーナス、最低投資額、探鉱期間が定められ、2023年4月14日を入札提出期限として、入札が開始された。
浅海 | 深海 | |
---|---|---|
鉱区 | S1~S5 | D1~D3 |
サインボーナス | 1億500万ドル | 3億1,000万ドル |
最低投資額 | 9,500万ドル | 2億9,000万ドル |
探鉱期間 | 5年 | 10年 |
各種資料を基にJOGMEC作成
しかし、この鉱区入札と並行して行われていた石油法の改正に時間がかかり、そのために鉱区入札締め切りが2023年7月15日、9月12日と相次いで延期されることとなった。ようやく2023年8月9日に議会がPetroleum Activities Billを承認し、鉱区入札が実施できるようになった。
これまでのガイアナの石油法Petroleum(Exploration and Production)Act No.3(1986)は、主に探鉱・開発について規定していた。そのため、例えば、ExxonMobilが陸上へガスを輸送するパイプラインの敷設を許可するよう政府に求めても、これについて規定がなく、許可することができなかった。今回成立した石油法Petroleum Activities Actは、炭化水素の貯蔵、輸送を含む中流・下流の事業や二酸化炭素の地下貯蔵を含む内容となっている。さらに、石油会社が開発になかなか着手しない場合に鉱区の一部を放棄するといった鉱区権益放棄のメカニズムが強化され、また、国境をまたぐ炭化水素資源のユニタイゼーションについての規定も含まれている。
Petroleum Activities Actは、表2の通り、新たな生産物分与契約(PS契約)の条件も提示した。表2にStabroek鉱区のPS契約とPetroleum Activities Actに基づくPS契約を比較した。進行中の鉱区入札で付与される鉱区やStabroek鉱区以外の鉱区で油田が発見され、生産に移行した場合には、Petroleum Activities Actの契約条件が適用されることとなっているが、Stabroek鉱区の契約に比べ、Petroleum Activities Actの条件は石油会社側に厳しいものであることから、石油法の改正が、Stabroek鉱区以降の開発や新規投資に影響を与えるのではないか、さらには、進行中の入札にExxonMobilが入札を行わないのではないかと懸念された。
Stabroek鉱区 | Petroleum Activities Act | |
---|---|---|
ロイヤルティ | 2% | 10% |
コスト回収上限 | 75% | 65% |
コスト回収後の利益配分(政府:石油会社) | 50:50 | 50:50 |
法人税 | ― | 10% |
各種資料を基にJOGMEC作成
入札提出期限の翌日にあたる9月13日、ガイアナ政府は、対象14鉱区中8鉱区に、表3に示した6コンソーシアムが札を入れたことを明らかにした。
ExxonMobil(米国)/Hess(米国)/CNOOC(中国) |
TotalEnergies(フランス)/Qatar Energy(カタール)/Petronas(マレーシア) |
Delcorp Inc.(ガイアナ)/Watad Energy(サウジアラビア) |
Liberty Petroleum(米国)/Cybele Energy(ガーナ) |
International Group Investment(ガイアナ)/Montego Energy(英国) |
SISPRO(ガイアナ) |
各種資料を基にJOGMEC作成
入札に参加するのか懸念されていたExxonMobilは、共にStabroek鉱区の権益を保有するHess、CNOOCとコンソーシアムを組み、入札を行った。どのコンソーシアムがどの鉱区に入札したかは明らかにされなかったが、ExxonMobilは、D1やD2に札を入れたのではないかと見られている。というのも、ExxonMobilはKaieteur鉱区の権益を保有しており、同鉱区で2020年に試掘井1坑を掘削している。この試掘井では商業規模の油・ガスを確認できなかったものの、Kaieteur鉱区内には他にも複数の構造があり、その中のいくつかは掘削が行われた構造よりも有望と見られているからだ。
TotalEnergies/Qatar Energy/Petronasのコンソーシアムはいずれも、ガイアナの隣国スリナムで探鉱を進めている企業だ。このコンソーシアムは、ExxonMobilのコンソーシアムと同じ深海の鉱区、また、浅海の鉱区にも札を入れた可能性があると見られている。
表3の3行目以下には、ガイアナ企業を中心に、比較的小規模な石油会社が並んでいる。企業の規模から考えて、これらのコンソーシアムは浅海の鉱区に関心を示したのではないかと考えられる。
Ali大統領は、鉱区入札の結果について、世界経済が不透明な時期で投資家の関心を集めることが困難であったことを考慮すれば、成功裡に終了したと指摘し、「我々は非常に満足している」と語ったと伝えられた。
政府の正式な報道としては、入札を行ったコンソーシアムに関する情報以外の情報は開示されていなかったが、Jagdeo副大統領は記者会見で、6コンソーシアムから合計14件の入札があったことを明らかにした。また、D3、S1、S2、S6、S9、S11の各鉱区については入札が行われなかったとした。すなわち、D1、D2、S3、S4、S5、S7、S8、S10の8鉱区に複数の入札が行われたことになる。さらに、Jagdeo副大統領は、10月初旬に入札の評価を終え、年内に契約を締結する予定であると語った。一方、Ali大統領は、政府が、今回の鉱区入札の対象とされた沖合鉱区のいくつかを、ドミニカ共和国、インド、カタールを拠点とする投資家に対して直接付与する可能性もあると述べたという[1]。
なお、ベネズエラは、19世紀以来、Essequibo川がガイアナとベネズエラの国境であり、Essequibo川西側のすべての土地および関連する沖合の海域は自国の領土だと主張している。両国の間では数十年にわたり調停が続けられているが、この問題は未解決のままとなっている。そのため、これまでも、2013年にAnadarkoがRoraima鉱区で2D地震探査を開始したところをベネズエラにより船舶が押収されたり、2019年にExxonMobilがStabroek鉱区の北西部で3D地震探鉱を実施したところをベネズエラ海軍艦艇に停止させられたりするという事象が発生していた。今回の鉱区入札にもベネズエラは反対を表明しており、係争地の領有権を守るために国民投票の実施を計画している。これに対して、Ali大統領は合法的かつ平和的な手段によって自国の主権と領土保全を守ることを約束し、Jagdeo副大統領も、この鉱区入札が予定通り行われることを確認したという。
[1] NewsBase, Latin America Oil & Gas Monitor, 2023/9/21
以上
(この報告は2023年9月27日時点のものです)