ページ番号1009920 更新日 令和5年11月1日

ExxonMobil、CCSのDenburyとシェールのPioneerを買収へ

レポート属性
レポートID 1009920
作成日 2023-11-01 00:00:00 +0900
更新日 2023-11-01 13:38:27 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 企業CCS
著者 高木 路子
著者直接入力
年度 2023
Vol
No
ページ数 6
抽出データ
地域1 北米
国1 米国
地域2
国2
地域3
国3
地域4
国4
地域5
国5
地域6
国6
地域7
国7
地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 北米,米国
2023/11/01 高木 路子
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概要

  • 米系メジャーのExxonMobilは、7月のCO2貯留及びEOR(石油増進回収)を得意とするDenbury(米)の買収に続き、今般、テキサス州及びニューメキシコ州に広がるPermianの上流専業のシェール会社Pioneer Natural Resources(米)を買収すると発表した。どちらも米国の石油産業中心地であるメキシコ湾岸を中心に資産を保有する企業である。
  • Pioneer を買収すると、ExxonMobilはPermian最大の生産者となり、シェールの生産性向上を一層進めるとともに、会社全体としても2027年に5百万boe/dの規模になるとの見通し。
  • これら2社の買収を通じて、ExxonMobilはメキシコ湾沿岸における、上流から精製・石化、水素・アンモニアの生産、さらにCO2の輸送及び地下貯留(CCS)を含めた下流までの一貫した事業展開が可能となり、効率的な低炭素エネルギーの供給網の基盤づくりが促進される。
  • インフレ削減法(IRA)等の連邦政府の支援を後押しに、ExxonMobilの低炭素化事業(low carbon solutions)は商業化に向けて大きく前進する。

 

1. シェール企業Pioneer Natural Resources(米)を買収

10月11日、米国メジャーのExxonMobil(米)は、1998年のExxonとMobil合併以来最大の大型買収を行うことを発表した。買収相手は、シェール開発会社のPioneer Natural Resources。Pioneerはテキサス州及びニューメキシコ州に広がるPermian盆地の一部Midland Basinに85万 エーカー(net)を保有する上流専業のシェール開発企業。買収は10月5日のPioneer株価終値の18%プレミアム価格で全株株式交換によって行われ、総額595億ドル(負債額を含める645億ドル)となる。2024年第1四半期の取引完了を予定する。

図1. PioneerとExxonMobilのPermian資産
図1.PioneerとExxonMobilのPermian資産

出所:2023年10月11日の買収発表資料[1]より

 

この買収により、ExxonMobilは、保有するPermian資産(57万net acres)とあわせて生産量及び埋蔵量を2倍にし、Permian最大の事業者となる。統合後のPermianでの生産規模は130万boe/dで2027年までに200万boe/dに増加させる計画。ExxonMobilは規模においても現在の石油・ガス生産量370万boe/dから統合後は440万boe/dに増加し、2027年までに500万boe/dに拡大する見通し。

買収の効果としてプレスリリースでは、(1)両社の技術・ノウハウの統合によるシェール生産性のさらなる上昇、(2)ExxonMobilのショートサイクル資産(全体の40%超)による資金面での柔軟性の確保、(3)Pioneer資産に関するネットゼロ操業の早期実現、(4)Pioneerの上流アセットと、ExxonMobilが周辺に有する製油所、石化プラント、CCS関連とのバリューチェーン化、さらにBaytownで計画中の水素・アンモニア生産事業とのバリューチェーン化、(5)国内技術及び資金を使った生産増によるエネルギーセキュリテイーへの貢献、である。

中でも、PioneerのMidlandに保有する広大なフィールドに対してExxonMobilはその資金力及び開発力をもって大規模に開発を行い、投資効率やコスト削減効果をさらに高めることが狙い。これにより、最大4マイルに達するような水平掘削を可能にし、地上のフットプリントを最小化しながら資源の回収率を上げていく投資戦略を示す。

図2. Pioneer上流資産とExxonMobil下流資産の統合後のバリューチェーン
図2.Pioneer上流資産とExxonMobil下流資産の統合後のバリューチェーン

出所:2023年10月11日の買収発表資料[2]より

 

Permianでは、現在、石油のみならず沿岸部までの輸送パイププラインが新設され、随伴ガスの生産が増加している。加えて、2024年には建設中のGolden Pass LNG事業(能力1,810万トン/年, Qatar Energy 70%, ExxonMobil 30%)が生産に移行する予定であり、他事業者による建設中案件を含め、この地域でのLNG向けのフィードガス需要が一層高まることが予想される。

 

Pioneer Natural Resources

1997年創業、2022年の生産規模は65万boe/d(石油比率75%)、PermianのMidlandで操業し、確認埋蔵量24億バレル相当を有するシェール専門の開発事業者である(表1-1)。2020年のパンデミック直後、シェール企業の統廃合が相次いだ時期にParsley Energyを45億ドル(負債含む76億ドル)で買収し資産を大幅に拡充している。

表1-1.Pioneer Natural Resources概要(メキシコ湾岸Permian)
表1-1.Pioneer Natural Resources概要(メキシコ湾岸Permian)
出所:Pioneer Natural Resourcesアニュアルレポート
表1-2.Denbury 概要(メキシコ湾岸域及びロッキーマウンテン地域)
表1-2.Denbury 概要(メキシコ湾岸域及びロッキーマウンテン地域)
出所:Denbury アニュアルレポート

2. CO2-EOR事業者のDenbury(米)を買収

ExxonMobilは、本年7月に、CO2-EOR事業者であるDenbury(米テキサス州)を49億ドルで買収することも発表している。2023年第4四半期に買収完了を予定する。

図3 ExxonMobilとDenburyの統合後のCCSバリューチェーン
図3.ExxonMobilとDenburyの統合後のCCSバリューチェーン

出所:2023年7月13日の買収発表資料[3]より

 

Denbury社は、メキシコ湾岸域にCO2パイプラインを有し(図3)、Pioneer買収と同様に、ExxonMobilの製油所や石化、水素・アンモニア製造拠点に隣接し、両社のアセットが統合されることで脱炭素事業におけるシナジー効果が期待できる。また、CCSに関してはExxonMobilのCO2回収能力とDenburyの輸送・貯留能力を統合させ、ExxonMobilの資金力及び政府補助金も加わって効率的な事業化に向け大きく前進する(表2)。すでにExxonMobilは、公表情報によると、鉄鋼メーカーNucor(米)との間でルイジアナ州Conventにある製造拠点から年間最大80万トンのCO2を回収、輸送及び貯蔵する契約を締結しているほか、産業用ガス製造事業者のLinde(独)や肥料メーカーのCF Industries(米)を含め少なくともこれら排出事業者3社との間で合計約500万トン/年のCO2を輸送および貯蔵する契約を締結している。

ExxonMobilの説明では、この買収により、メキシコ湾岸においてCO2輸送及び貯留の効率的なシステムを構築して第3者へのCCSサービスを商業化させるとともに、CCS、水素、アンモニア、バイオ燃料、DAC(CO2直接回収法)を含む低炭素化のバリューチェーンの構築を進める。

 

Denbury

Denburyは長年にわたりCO2‐EOR(増進回収)を主に石油・ガスを生産する上流事業者である。2012年以降は排出されたCO2を貯留するCCSにも進出し、現在、年400万トン超のCO2地下圧入を行っている。同社は、メキシコ湾岸地域とロッキーマウンテン地域のみで活動し、2022年、確認埋蔵量2億BOEを保有し4.7万boe/d(石油97%)を生産(表1-2)した。同社は国内の20%に相当する約1,300マイル(2,100キロメートル)のCO2パイプラインを保有する国内最大のCO2パイプライン保有者でもあり、うち925マイルはテキサス州、ルイジアナ及びミシシッピー州の排出源コリドーと呼ばれる産業地帯に保有する。加えて操業中7か所及び計画中3か所のあわせて陸上10か所のCO2貯留サイトを保有する。

表2. DenburyとExxonMobilのCCS関連能力
表2.DenburyとExxonMobilのCCS関連能力

出所:2023年7月13日の買収発表資料[4]より作成

 

図4. CCSバリューチェーン
図4.CCSバリューチェーン

出所:2023年7月13日の買収発表資料[5]を参考に作成

 

3. ポイント

  • 米系メジャーのExxonMobilは、7月のCO2‐EOR(CO2圧入による石油増進回収)を得意とするDenbury(米)の買収に続き、今般、シェール専業会社Pioneer Natural Resources(米)を買収すると発表した。これら2社の買収を通じて、(短期間で収益をあげられる)ショートサイクルの上流資産を補充するとともに、メキシコ湾沿岸において石油・ガスの生産から精製・石化、さらに水素アンモニア製造・供給、CCSを含めた脱炭素化までの一連の事業展開が可能となり、効率的な低炭素エネルギーに向けて自前のサプライチェーンが構築される。
  • インフレ削減法(IRA)等の連邦政府の支援を後押しに、ExxonMobilは低炭素化事業(low carbon solutions)の商業化に向けて大きく前進する。
  • ExxonMobilを含め欧米メジャー各社は2022年に原油・ガス価格や精製マージンが上昇し、高収益を達成した。潤沢なキャッシュフローをどこに投じるのか注目されたが、2023年に入ってExxonMobilはPioneer及びDenburyいずれも買収にむけ交渉中との報道が一部で流れた。
  • 今回のPioneerの買収タイミングについて、双方が合意できる市場環境にあったとExxonMobilのWoods CEOは説明するが、市場の不透明感が強まる中であまり先延しできない状況であったとも推察される。ExxonMobilの発表の11日後、Chevron(米)も独立系のHess(米)を530億ドルで買収する大型M&Aを発表した[6]

 

参考資料 最近のExxonMobil関連のレポート

  1. メジャー5社業績(鑓田、高木)
  1. ExxonMobilのトランジション戦略(高木)

以上

(この報告は2023年11月1日時点のものです)

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