ページ番号1009936 更新日 令和5年11月20日

LNG生産企業から見た豪州、セーフガード・メカニズム改定について

レポート属性
レポートID 1009936
作成日 2023-11-14 00:00:00 +0900
更新日 2023-11-20 13:07:03 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 天然ガス・LNG環境
著者 加藤 望
著者直接入力
年度 2023
Vol
No
ページ数 23
抽出データ
地域1 大洋州
国1 オーストラリア
地域2
国2
地域3
国3
地域4
国4
地域5
国5
地域6
国6
地域7
国7
地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 大洋州,オーストラリア
2023/11/14 加藤 望
Global Disclaimer(免責事項)

このウェブサイトに掲載されている情報はエネルギー・金属鉱物資源機構(以下「機構」)が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、機構が作成した図表類等を引用・転載する場合は、機構資料である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。機構以外が作成した図表類等を引用・転載する場合は個別にお問い合わせください。

※Copyright (C) Japan Organization for Metals and Energy Security All Rights Reserved.

PDFダウンロード3.9MB ( 23ページ )

概要

  • 労働党率いる豪州政府は、2016年に施行されていたセーフガード・メカニズムの改定を行い、2023年3月に議会を通過し、同年7月1日に効力が発生した。改定により、年間10万トン以上のGHGを排出する発電事業を除く215の指定大規模排出施設からのGHG排出を2023年7月から毎年4.9%ずつ削減することが定められた。
  • 2021年11月のグラスゴーでのCOP26において、保守連合政権(当時)は、エネルギー産業保護の観点から2050年におけるネット・ゼロ宣言目指す計画を発表したが、世界の脱炭素・エネルギー移行の潮流からは出遅れていた感があった。しかし、2022年5月に労働党政権に交代してからは、上院議会でグリーンズ(各州の緑の党の連合体)と政策協定をしなければならないこともあり、脱炭素に向けて大きく舵を切った。セーフガード・メカニズムの改定はその一環である。
  • 本稿では、セーフガード・メカニズム改定に至る経緯と制度について概説し、天然ガス・LNG生産企業に与える影響、GHG削減策について考察を試みた。セーフガード・メカニズムの関連法律と規則は詳細を極めているが、未確定、不透明な部分も多く、LNG液化プラントへの経済的なインパクトを定量的に示すのは困難であった。実務面での取り扱いが進み、影響の見極めが可能となるような制度運用、整備ならびにその成果が注目される。

 

1. 豪州のセーフガード・メカニズム改定に至る経緯

豪州のカーボン・プライシングを基本とするセーフガード・メカニズムは、2012年に当時の労働党政権により導入されたが、2013年に中道右派の保守連合(自由党と国民党による連立)が政権を担うと、2014年に一旦廃止された。その後、2016年7月に保守連合によって復活、運用が開始された。排出権取引はキャップ・アンド・トレード方式であって政府がキャップ(豪州ではベースラインと呼ぶ)を定めて個々に排出できる上限量(枠)が設定される。上限量を超えた場合は、2014年に設立された「排出削減基金(ERF: Emission Reduction Fund)」の一つの排出削減制度として市場からクレジット(ACCUs: Australian Carbon Credit Units)を購入し相殺(オフセット)する。ベースライン以下の場合はもう一つのクレジットであるセーフガード・メカニズム・クレジット(SMCs: Safe Guard Mechanism Credit Units)が与えられ、こちらも売買が可能である。

2022年5月の総選挙で、表1のとおり労働党政権が任期3年の下院で過半数の議席を占め9年ぶりに保守連合(国民党と自由党等の連立)に代わり政権を担うことになった。半数改選の上院では、労働党は過半数を取れなかったため、グリーンズ(豪州各州の緑の党の連合体)と政策協定を結び、特に環境保護関連でグリーンズの意向が反映されることになった。選挙の際に労働党はGHG削減を強化すると公約しており、実際にそれまで保守連合が掲げていたパリ協定に基づく国別自主削減目標(NDC: National Determined Contribution)である2030年に2005年比でGHG排出量を28%削減するという目標を、政権交代直後の2022年5月に2030年時点で2005年比43%削減すると上方修正(注:2021年6月末時点では既に24.1%減達成)するとともに、2050年にネット・ゼロを実現するとした(気候変動法2022: Climate Change Act 2022)。2005年の豪州のGHG排出量は、6億2100万トンであったが、これを2030年に3億5400万トンにまで削減するものである。因みに、2021年から2030年までの推定累計GHGは43億8100万トン(年平均4億3810万トン)である。セーフガード・メカニズムの改定に対してグリーンズは新規ガス・石炭開発プロジェクトの全面禁止を改定案賛成の条件としていたが、全面禁止の主張は取り下げた。ただし、グリーンズ党首はこの変更により116ほどある化石燃料プロジェクトのうち半分は停止させることができると言及。メディアは、開発困難が予想されるガスプロジェクトとして、Barossa、Beetaloo、Browse、Scarborough、Crux、Narrabriを例示した。

改定NDCは、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局に報告された。NDC達成の一環として、保守連合時代に設定されていたGHGを年間10万トン以上排出する、発電施設を除く指定大規模排出施設215ヶ所(設備、工場、プラント等)について、従来のベースラインの設定は甘く、排出削減に寄与していないとの批判があったことから、労働党政権は、選挙公約において年5万トン以上のGHG排出施設を対象とすることを掲げるも、この対象施設の拡大は見送られ、従来通り年10万トン以上の施設が対象となった経緯がある。

また、セーフガード・メカニズムを改定し、ベースラインを厳しく設定すると表明していた。その結果、年間4.9%ずつ削減するという改定案を連邦国会に提出し、2023年3月30日に連邦上院と下院で可決し、2023年7月1日に発効した。

表1 2022年5月豪州総選挙の結果
政党名/議席数 労働党 保守連合
(自由党および国民党)
グリーンズ 諸党及び無所属 合計
下院(総数151議席) 77 58 4 12 151
上院(改選40)(非改選36) 15
(11)計26
15
(17)計32
6
(6)計12
4
(2)計6
40
(36)計76

出所 豪州新聞報道等

 

2. 改定セーフガード・メカニズムの概要

2023年3月30日に国会を通過し制定された、改定セーフガード・メカニズム法2023「The Safeguard Mechanism(Crediting)Amendment Bill 2023」は、全3箇条、附則4編からなり従来制定されていた以下の7つの法案の改定を規定している。

  1. 国家温室効果ガスおよびエネルギー報告法2007「National Greenhouse and Energy Reporting Act 2007(NGER)」第3章Hに新たに第4A節を追加(第22XNA条~第22XNN条)。皮膚
  2. 所得税評価法1997(Income Tax Assessment Act 1997)
  3. 気候変動法2022(Climate Change Act 2022)
  4. 産業調査および開発法1986(Industry Research and Development Act 1986)
  5. 豪州国家排出権ユニット登録法2011(Australian National Registry of Emissions Units Act 2011: SMC Act)
  6. カーボンクレジット法(Carbon Credits(Carbon Farming Initiative)Act 2011)
  7. クリーン・エネルギー規制庁設置法(Clean Energy Regulator Act 2011)

その他、セーフガード・メカニズム改定ルールとして以下3つの政令(ルール)が公布された。

  1. 国家温室効果ガスおよびエネルギー報告法・ルール(NGER Rules)
  2. カーボンクレジット・ルール(CC Rules)
  3. 豪州国家排出権ユニット登録ルール(SMCs Rules)

今回の改定では指定大規模排出施設からのGHG排出を2023年7月から毎年4.9%ずつ削減することが定められた。対象となる215施設が2022年7月から2023年6月までの一年間に排出した量を、1億3,700万トンと仮定し、毎年4.9%削減する場合、2029年7月から2030年6月の最終年一年間の排出量は34.3%減の約9,640万トンとなる。

 

(1) 指定大規模排出施設

年間10万トン以上のGHGを排出する発電事業を除く大規模排出施設215ヶ所(暫定)が新たなセーフガード・メカニズムの対象に指定されたが、公表されている直近の2021年7月~2022年6月(豪州政府会計年度は7月1日から翌年6月30日まで)のデータによると、年間10万トン以上のGHGを排出する215施設における排出量は約1億3700万トンCO2eであった。2021年~22年における豪州全体のGHG排出量4億8,800万トンの28%に相当する。

指定大規模排出施設の対象となる産業は以下のとおりである。

  • 鉱山
  • 製図業
  • 輸送業
  • 石油・ガス処理・製造
  • ゴミ処理・排水処理

 

(2) 発電施設の取り扱い

発電施設からのGHG排出削減については、セーフガード・メカニズムと異なる手法が用意されている。送電網で繋がっている発電施設(化石燃料を使用した発電所および再生可能エネルギーを含め)を一つとカウントし指定大規模排出施設には含めない。個々の発電施設でGHGを測るのではなく、送電網を含めて全体で2009/2010年度~2013/2014年までの発電セクターからのGHG排出量、即ち年平均1億9800万トンを初年度の全体のベースラインと設定する。西豪州(WA)は、他の州と送電網が接続していないため一つのセクターとして扱われ、北部準州(NT)は豪州東部の送電網に接続しているものの、送電量が少ないことから別個の発電セクターとして扱われる模様。連邦電力市場NEM(National Electricity Market)として機能し、豪州全体の80%を消費する最大電力消費エリアであるクイーンズランド州(QLD)、ニューサウスウェールズ州(NSW)、ビクトリア州(VIC)、南オーストラリア州(SA)およびタスマニア州(TAS)の5州とキャンベラ首都地域もひとつの発電セクターとして扱われる見通しである。しかし毎年の削減率はまだ決まっていない。2014年以降太陽光発電を中心とした再生可能エネルギーの伸びは目覚ましく、かつ石炭火力発電所の閉鎖が前倒しで進んでいることから、各年のベースラインの設定は未定だが達成は難しくないと思われる。また、オフグリッド、電力網に接続されていない発電所は、対象とはならない。

図1 豪州における総発電量の推移(2021年~2022年まで)とその内再生可能エネルギーによる発電量
図1 豪州における総発電量の推移(2021年~2022年まで)とその内再生可能エネルギーによる発電量
出所 Department of Climate Change, Energy and the Environment and Water(DCCEEW)
図2 豪州における大型太陽光発電設備容量の推移(単位 MW)
図2 豪州における大型太陽光発電設備容量の推移(単位 MW)
出所 Australia Energy Update 2023 by DCCEEW

(3)  セーフガード・メカニズムの対象となるGHGの範囲

対象となるGHGの範囲は以下の通りである。

  • Scope 1は、セーフガード・メカニズムの対象である。
    Scope 1は、直接排出とも言われ、施設で自ら燃料の燃焼や製品の製造などを通じて排出するGHGを意味する。
  • Scope 2は、セーフガード・メカニズムの対象外である。
    Scope 2は、他施設から供給された、電気・熱・蒸気を使うことによって、間接的に排出されるGHGを意味する。ただし、Scope 2はNGERによって報告義務はある。
  • Scope 3は、セーフガード・メカニズムの対象外である。

セーフガード・メカニズムにおけるGHG排出量の計算はScope 1だけである。NGER Rulesに基づき報告義務がある。Scope 2の一例として電力の購入がある。電力のうち再生可能エネルギーで発電された電力以外を報告する必要がある。Clean Energy Regulatorが毎年2月15日までに各州における、購買電力の内に占める再生可能エネルギー比率を公表している。

施設の定義は、上流ガス田とLNG液化プラントの権利保有者が同じ(垂直統合型)であれば、両者は一体の施設として取り扱われる。一方、上流ガス田(またはパイプライン)とLNG液化プラントの権利保有者が異なる場合は、それぞれ単独の施設としてカウントされる。

 

(4) ベースラインの設定とGHG削減率目標

指定大規模排出施設215ヶ所の翌年度7月1日からの削減目標であるベースラインは、Clean Energy Regulatorによって4月15日までに定められ各施設に通知される。2023年7月から2030年までのGHG年間削減率目標は年4.9%である。前年比ではなく、当初ベースラインを100として毎年4.9%削減する。なお、2030年7月以降2035年6月までの削減率目標は暫定で年3.285%となっているが、これは2027年7月までに見直されることになっている。

なお、既存施設のベースラインは毎年見直される。業界平均と個々の施設の年度毎のGHG排出量を表3の比率で按分して、定める。即ち、初年度(2023年7月~2024年6月)におけるベースラインは個々の施設の排出量の実績値の90%が考慮されるが、最終年度(2029年7月~2030年6月)には、業界平均にしなければならない。また、個々の実績は過去5年間のうち中間値の3年分を加重平均する。

業界平均は毎年4.9%削減されることになる。即ち、初年度に業界平均よりも高い排出量を出している施設は、業界平均値を超えたハイブリッドなベースラインが設定されることになる。なお、業界平均値の算出方法は11の変数からなる。NGER Ruleにその計算方法が定められているが、不明確な部分もありそのインパクトは未定である。

新規施設のベースラインは、豪州に適合される「国際的なベスト・プラクティス」を勘案して決められる。新しい施設は、最新の技術を利用できる機会があるということだが、これは既存施設が新製品を製造する際にも当てはまる。国際的なベストプラクティスは個々の施設に適用されるエネルギー効率やGHG排出を最小限に抑える最新技術という理解であるが、この適用にはClean Energy Regulatorとの協議が必要となるだろう。

表2 2023年7月から2030年6月までの年間削減率目標
Financial year Decline rate Resultant baseline emission reduction contribution
2023-24 4.9% 95.1%
2024-25 4.9% 90.2%
2025-26 4.9% 85.3%
2026-27 4.9% 80.4%
2027-28 4.9% 75.5%
2028-29 4.9% 70.6%
2029-30 4.9% 65.7%
1 July 2030 or a later 1 July 3.285% 62.4%

出所 Baseline for financial years commencing on or after 1 July 2023

 

表3 既存施設のベースライン設定メカニズム
表3 既存施設のベースライン設定メカニズム
出所 DCCEEW

(5)  GHG排出量とベースライン、カーボンクレジット

豪州ではセーフガード・メカニズム・クレジット(SMC)とカーボンクレジット・ユニット(Australian Carbon Credit Unit: ACCU)の二種類のカーボンクレジットが併存する。当該年度の排出量が、ベースラインを下回った場合、排出施設はERFからGHGトン当たりセーフガード・メカニズム・クレジット(SMC)1ユニットが与えられる。当該年度の排出量が、ベースラインを上回った場合、排出施設は市場から1トン当たりGHGにつき1ACCUを購入し、排出義務に充当(オフセット)しなければならない。

SMCの、カーボンクレジットの性格はキャップ・アンド・トレード型と言える。SMCはセーフガード目的で法律は2011年に設けられたが、今回初めて運用が始まる。SMCは政府から与えられ、他の施設でベースラインを超えて排出した施設と当面相対取引で譲渡できるが、おそらく多くの施設では、将来ベースラインを超えて排出した時に備えて、これを蓄えておくものと考えられる。SMCの市場取引への移行は、2025年以降に検討されることになっている。2030年を超えた場合の取り扱いは未定だが、2027年頃に検討されることになっている。

SMCはACCUsのような政府によるリバースオークションによる単位削減量当たりの価格が存在しない代わりに毎年6月30日までに政府が次年度の「Safeguard Mechanism default prescribed unit price」について公表する(豪州政府は総額A$25.5億規模の基金をERFに用意)。

一方、ACCUsは2012年から試験的に固定価格による運用が始まり、2015年以降市場連動型に移行した。2015年にERFが設けられ、ERFによって排出削減プロジェクトからカーボンクレジットを買い取る仕組みが構築され、Clean Energy Regulatorの下Carbon Market InstituteがERFを運営する。ACCUsの発行については、排出企業、排出量とも政府の適格審査が必要だが、価格形成は市場に委ねられており、当該企業は、連邦政府または購入を希望する企業等に売却することが可能である。

SMCとACCUの違いを表4に示す。なお、SMCとACCUに互換性はない。また、ACCUの市場における価格推移を図3で示す。ちなみに11月9日時点の1ACCUの価格は、A$ 31.0(同日1A$=96.296円)である。ACCUは、セーフガード・メカニズムが導入されると、市場で流通されている単位数を遥かに超えて需要が生じることが予測されることから、供給不足分は政府が放出することになっている。需要増のため価格が急騰することが予想され、2023年7月からの1年間はA$75/ACCUを上限とすることが定められている。その後、毎年の物価上昇プラス2%(CPI+2%)でこの上限価格は上昇する。

表4 SMCとACCUの比較
  付与のされ方 市場性 その他
SMC ベースラインを下回って削減したとき、バースラインとGHG量との差分のSMCがERFから与えられる 現在のところ市場性なし(2025年以降の課題)。ACCUとの互換性なし。 ベースライン未達の場合、上回ったGHGに対して、自らSMCを充当(borrowing)できるが、ベースラインの30%が上限という制限あり。
ACCU 企業の自主的な削減目標達成した場合政府から与えられる(ただし、政府の審査が必要となる)。民間制度との違いがここにある。 市場連動 セーフガード・メカニズムの導入によって、ACCUが不足することが考えられ、その場合は政府がその時点での時価により追加発行する。

 

図3 2022年度のACCUの価格推移
図3 2022年度のACCUの価格推移
出所 Clean Energy Regulator

(6) マルチイヤー・モニタリング期間(MYMP)

セーフガード・メカニズムには、マルチイヤー・モニタリング期間(MYMP)という制度が設けられている。単年度では、ベースラインを超過していても最長5年の最終年度では累積GHGがベースライン総量を下回れば良いという制度である。そのためには、信用に足る、財務役員の宣言書がある計画書を当該年度の11月15日までに提出する必要がある。過去の例を見る限りでは、最長の5年を申請ないし認められている例はなく、多くは2年程度である。

なお、輸出企業向けの特例制度として、削減率の低い制度(製造業で1%、非製造業で2%)があるが、これはPowering Regional Fundの対象プロジェクト向けであり、新規ないし拡張の石炭とガス施設には適用されない。

 

参考:ベースラインとカーボンクレジットの関係(JOGMECシミュレーション)

初年度GHG排出量50万トンの排出施設と単純化し、ベースラインと両カーボンクレジットとの関係のシミュレーションを行い、図4に示した。

  1. Year 1は、ベースライン50万トン(年間)とGHG排出量50万トンが同じ。
  2. Year 2では、ベースライン45万トンに対し、GHG排出量が40万トンと下回る。この場合、この施設はSMCs 5万ユニットを政府(Energy Reduction Fund: ERF)から与えられ、貯蓄(Banking)した(図の緑色部分)。
  3. Year 3では、ベースライン40万トンに対し、GHG排出量が50万トンになった。この場合、この施設では10万トン分のACCUsを市場で購入するか、またはBankingしていたSMCs 5万ユニットのうち4万ユニットを引き出して相殺(borrowing and set-off)すると共に不足分ACCUsを市場から6万ユニット購入する。なお、BankingされていたSMCsを相殺目的で引き出せるのは、毎年ベースラインの10%以下との制限がある。
  4. Year 4は、ベースライン35万トンに対し、GHG排出量が55万トンと20万トンの超過となった。この場合、べ―スラインの30%、10.5万トンを9.5万トン超過しているため、この施設はClean Energy Regulator(CER)に対して超過した理由および軽減に向けて取った対策を報告しなければならない。この報告の透明性が高く、かつ削減策を施したにも拘らず未達成と判断された場合、30%超過分の9.5万トンはACCUsの購入によりオフセットすれば足りる。報告内容または排出源対策が不十分だと判断された場合、CERは侵害通知(Infringement Notice)を当該排出施設に出す。これには裁判所の当該施設の使用差し止め命令が伴うこともある。更に、民事罰(Civil Penalty)として、民事罰単位/トン/年が課される。2023年1月1日時点で、民事罰1単位は、A$275である。しかし、民事罰の範囲は5万~15万単位と決められている。GHGがベースラインを30%超過して排出される場合最大でA$275 x 150,000単位 = A$41,250,000(1A$=95円とした場合、約39億2000万円)が民事罰として課されることになる。民事罰は、刑事罰や課徴金とも異なるため、不服な場合は、連邦裁判所に訴えることができる。
図4 ベースライン推移、GHG排出量およびカーボンクレジットのシミュレーション 
図4 ベースライン推移、GHG排出量およびカーボンクレジットのシミュレーション 
出所 JOGMEC作成

3. 天然ガス・LNG生産企業に与える影響

3-1. LNG液化プラントからのGHG排出量

豪州では、以下の図のとおり現在10のLNG液化プラントが稼働している。このうち、Darwin LNGについては、供給ガス田である東ティモールのBayu-Undanガス田が枯渇に向かっており、同プラントの操業停止は2023年12月末と予想されている。

豪州のLNG液化プラントはNorth West Shelfを除いて比較的新しく、生産ガスのうち15%をフィードガスとして使用すると言われている。内訳は、オフショア・プラットフォームで約5%、LNG液化プラントで約10%である。オフショア・プラットフォームでは、陸上LNG液化プラント向け海底パイプラインに生産ガスを送り込む際に使用されるコンプレッサーの動力源としてのガスタービンに、また陸上液化プラントでは、冷媒をコンプレッサーで圧縮して熱交換器に送り込む際の動力源としてのガスタービンの燃料である。また、貯留層に含まれるCO2は大気放散(Venting)され、また通常ではない運転を強いられる場合は、ガス圧力を逃がすため燃焼の上、大気放散(Flaring)が行われることがある。

図5 オーストラリアのLNG液化プラント
図5 オーストラリアのLNG液化プラント
出所 Department of Industry, Science and Resources (DISR)

直近の指定大規模排出施設のCO2e排出データは、2021~2022年分が公表されているが、同年度の各LNG液化プラントのCO2e排出量のトップ30を、参考までに表5に示す。

表5 2021-2022 Safeguard Facility Data (一部抜粋)
表5 2021-2022 Safeguard Facility Data (一部抜粋)
出所 Clean Energy Regulator

  1. 本データは、30位までを掲載。実際には年間GHG排出量10万トン未満の6施設を含む219施設までを網羅している。
  2. 黄色でハイライトしたのが、LNG液化プラントである。トップから始まりすべてのLNG液化プラントが30位以内に入っていることが分かる。
  3. LNG液化プラント以外では、鉄鋼業、アルミ精錬、石炭および上流ガス田の名が上がっている。
図6 2021-2022年の各LNG液化プラントプラントからのCO2e排出量(Scope1)
図6 2021-2022年の各LNG液化プラントプラントからのCO2e排出量(Scope1)
出所 Rystad Energy および Clean Energy Regulator 2023年3月17日公表データ

図6は、各LNG液化プラントをGHG排出量順に並べたものである。

次の図7および表6では、各LNG液化プラントからの炭素強度を示す。

図7 LNG1トン当たりのGHG排出量(2021-2022)
図7 LNG1トン当たりのGHG排出量(2021-2022)
出所 Clean Energy Regulatorのデータを基にJOGMEC作成
表6 豪州各LNG液化プラントのデータ
表6 豪州各LNG液化プラントのデータ
出所 Wood MackenzieおよびClean Energy Regulatorのデータを基にJOGMEC作成
注:灰色の枠で囲んだLNG液化プラントは、垂直統合型である。白枠はTolling型である。

表6においては、以下の点に注意が必要であり、平均値はあくまで参考であり、液化プラント毎に条件が異なるため正確には表していないことに留意されたい。

  1. 政府会計年度と企業会計年度のずれ。政府会計年度は、7月1日に始まり翌年6月30日に終わる。一方、企業会計年度は、暦年ベース(1月1日~12月31日)が多い。
  2. Preludeは、2021年12月~22年4月まで、電気系統の故障で操業が停止していたほか、2022年7月~8月にかけて労働組合のストライキで72日間操業が停止した。
  3. 東海岸の炭層ガス(Coal Seam Gas)を使用した3カ所の液化プラント(APLNG、QCLNGおよびGLNG)の上流の供給ガス田は、液化プラントの権益保有者と異なるため、供給ガス田から生産ガスを購入し液化するトーリング(Tolling 型)である。従って、この表でのCO2e排出量の計算においては、LNG液化プラントのみが指定大規模排出施設にあたり上流の供給ガス田は含まれない。
  4. 西豪州にある3つの液化プラントは、WA州により州内へ15%の供給義務が課せられている。GorgonではLNG換算で年間200万トン相当、North West ShelfでLNG 300万トン相当、PlutoでLNG 37万トン相当の天然ガスをパイプラインで州域内に供給している。この場合、液化プロセスを必要としないため、燃料として消費されるフィードガスは、オフショア・プラットフォームが中心となり、液化プラントにおけるフィードガスの消費量が必要なくなる。
  5. Gorgon CCSのCO2の貯留設計能力は年間450万トンであるが、貯留層の砂による目詰まりが原因で、現在年間200万トン程度のCO2しか貯留されていないと報じられている。
  6. GorgonやNorth West Shelfでは一部、他社のガス田から生産ガスを購入し、LNGを液化するTolling型も一部採り入れている。

炭素強度の観点から、高い炭素強度を示したIchthysやPreludeにおいて年4.9%削減にプラスして業界平均に達する上乗せの削減が求められる可能性がある。Preludeにおいては、陸上に繋がっていないため、今後のCO2処理は海上で処理することになると思われる。

 

3-2. 既存の液化プラントへのバックフィルに対する「国際ベスト・プラクティス」の適用

既存のLNG液化プラントに新規に開発したガス田から供給する場合においても、「国際的なベスト・プラクティス」が勘案される。即ち、CCSの開発を背景に、新たに生産される天然ガスからのGHG排出量はゼロとされる。しかし、これにはCCSで回収できるCO2は技術的に100%分離・回収可能でも、商業的な観点、即ちコスト面からすると100%回収は高くつくという批判がある。何が国際的なベストプラクティスに該当するのだろうかという疑問は常に残る。今日の技術ではCCSは、90%~95%範囲で回収設定率の設定が現実的と言われている。不足分は、カーボンクレジット(ACCUs)を購入してオフセットすることが可能ではあるが、既存のLNG液化プラントは設計と商業的な観点との兼ね合いもあり単純ではない。例えばChevronがオペレーターのGorgon LNGのCCSは、CO2を80%分離回収する年間450万トン回収することが設計目標とされているが、貯留層の砂による目詰まりが原因で約200万トンの回収に留まっているという。

 

4. GHG排出削減についての考察

豪州におけるGHG削減についてCCSや電動モーターへの転換を含め考察を試みた。

豪州ではCCS鉱区入札や複数のCCSハブ計画が進行中である。LNG液化プラントのCO2削減に関しては、CCSは決め手になるが、CCSの開発は遅れ気味であり、最初のCCS鉱区入札の結果、各社とも2025年までは評価、スタディ段階であり、今後、帯水層(Saline Aquifer)を発見し、評価、開発、完成するまで早くて2028年、おそらく2029年になると思われる。それでは、セーフガード・メカニズムによる削減目標を達成することは困難だと思われる。2030年までの最後の1年か2年間CO2を圧入しても、それまでの炭素負債が大きい。

 

4-1. CCS

ガス田の天然ガス組成中CO2の含有率が大きいガス田からは当然CO2排出量が大きくなる。陸上のLNG液化プラントにおいては、LNGにCO2を含めてはならないため完全に分離除去しなければならない。アミン(化学吸収法)等の酸性ガス除去装置(AGRU: Acid Gas Removal Unit)によりCO2を分離しCO2フリーで液化プロセスに送りこむ。また、前述したとおり、フィードガスは海上プラットフォームおよびLNG液化プラントで主にタービンの燃料としてガスを燃焼する。その際にCO2が排出される。また、僅かではあるが、ガス漏れによるものもある。

 

(1) CCS(Carbon Capture and Storage)鉱区入札

豪州では、2021年12月に5エリアで第一回目CCS鉱区入札(Offshore Greenhouse Gas Storage Acreage Release 2021)を発表。入札の締め切りは2022年3月であった。

図8 Offshore Greenhouse Gas Storage Acreage Release 2021
図8 Offshore Greenhouse Gas Storage Acreage Release 2021
出所 Geoscience Australia
注:薄緑で囲まれているエリアが対象
  • Bonaparte Basin GHG21-1(G-7-AP鉱区)INPEX 53%オペレーター, TotalEnergies 26%, Woodside 21%のJV
  • Bonaparte Basin GHG21-2(G-11-AP鉱区)Santos 40% オペレーター, Chevron 30%、SK E&S 30%のJV
  • Browse Basin GHG21-3(G-8-AP鉱区)Woodside 100% オペレーター
  • Northern Carnarvon Basin GHG21-4(G-9-AP鉱区)Santos 50% オペレーター、Chevron 50%のJV
  • Northern Carnarvon Basin GHG21-5(G-10-AP鉱区)Woodside 20% オペレーター、BP 20%, Chevron 20%, MIMI 20%、Shell 20%のJV

これらの事業体はすべて、探査許可(Assessment Permit)を取得している。

また、2023年8月には二回目の7カ所の堆積盆地で計10のエリアを対象とした、CCS鉱区入札(Offshore Greenhouse Gas Storage Acreage Release 2023)を発表。この入札の締め切りは、2023年11月28 日である。

  • Bonaparte Basin GHG23-1
  • Browse Basin GHG23-2
  • Northern Carnarvon Basin GHG23-3, GHG23-4 and GHG23-5
  • Perth Basin GHG23-6
  • Otway Basin GHG23-7 and GHG23-8
  • Bass Basin GHG23-9
  • Gippsland Basin GHG23-10

Otway、BassおよびGippslandの各堆積盆地は、ビクトリア州沖であり、豪州東海岸の石油・ガスおよび産業から排出されるGHGを主な対象にしている。

図9 Offshore Greenhouse Gas Storage Acreage Release 2023
図9 Offshore Greenhouse Gas Storage Acreage Release 2023
出所 Geoscience Australia
注:薄緑で囲まれているエリアが対象

(2) Santos Moomba CCS HubおよびBayu-Undan CCS Hub

また、Santosは、自らCCS Hub開発を二箇所で行っている。

図10 SantosのMoombaおよびBayu-Undan CCS Hub位置図
図10 SantosのMoombaおよびBayu-Undan CCS Hub位置図
出所 Santos HP
Moomba CCS Hub(緑色の矢印)

Santosは、内陸部のMoombaでCCS Hub(年間170万トンCO2)を建設中で2024年完成、圧入開始を目指し順調に進捗しているようだ。この年間170万トンは、サントスがオペレーターのGLNGの年間CO2e排出量とほぼ同程度である。今後、規模の拡張があると聞いている。

Bayu-Undan CCS Hub(橙色の矢印)

東ティモールで間もなく枯渇するBayu-Undanガス田の廃坑を利用して、年間1000万トンの貯留が可能なBayu-Undan CCS Hubを2025年に操業開始する計画である。Bayu-Undan CCS Hubは、2025年操業開始を目指しているが、Darwin LNGのバックアップガス田であるBarossaガス田のCO2含有率が18%と高く、そのCO2を貯留することを考慮し開発がCCSとガス田開発が同時に進行している。

しかし、Barossaガス田からダーウィン市まで天然ガスを運ぶパイプラインに関し、同パイプラインが沖合7㎞のところを通過するティウィ(Tiwi)諸島の先住民が、先住民の遺跡が破壊されるとして連邦裁判所に提訴した。2022年9月に、連邦裁判所は、先住民の訴えを認め、Barossaガス田の開発は中断した。

NOPSEMA(National Offshore Petroleum Safety and Environmental Management Authority: 連邦オフショア石油安全環境監督庁)はSantosに対しパイプライン敷設について地元先住民への説明会を開催すると共に、環境評価をやり直し再提出することを求めていた。Santosは独立した専門家の調査の結果、パイプライン近辺に特定の海底遺跡は存在しないと発表し、2023年11月に敷設を再開しようとしたところ、先住民側は文化遺産保護法に基づいて海底文化遺産への影響とリスクが適切に評価されるまでパイプライン工事を中止するよう緊急に差し止め命令の申請を提出、11月2日に裁判所によって仮差止命令が下った。裁判所は11月13日に最終審問まで差し止め命令を延長するかどうかを決定する。

Bayu-Undanガス田は東ティモールのEEZ内に位置することから、豪政府と東ティモール政府の間で生産物分与に関する取り決めに関し、条約を締結しなければならないが、交渉は進んでいないようだ。

 

4-2. その他CO2削減方法

この他、CCSとの組み合わせや電化、再エネ電力の利用などにより一定程度の削減効果が得られる。

 

(1) 上流ガス田における分離膜法

上流プラットフォームにおける生産ガスからCO2を分離するには、分離膜法によるCO2の分離回収後、CCSにより貯留する取り組みが始まっている。現在Petronasがマレーシア、サラワク沖のKasawariガス田でHoneywell  UOP法によるCO2の分離回収、CCSの建設を進めている。また、タイ湾ではPTTEPがArthitガス田で同じくHoneywell UOP法を使用した実証試験を行っている。日本においてもセラミック製分離膜(DDR膜)を利用したCO2分離をJOGMEC、日本ガイシおよび日揮が共同で開発している。いずれも、分離回収したCO2を圧入するCCSが必要だが、化学吸収法におけるCO2分離には大きなエネルギーが必要となる上、回収塔と分離塔の二本のタワーが必要であり、規模が大きくなると高さが100m近くなる。これに対して分離膜法は、重量が軽く、オフショア・プラットフォームに設置することが可能でCapexも少ないと思われる。ただし、分離膜法はガス田生産ガスに一定以上の圧力が必要であることから、井戸元向きである。また、特に西豪州ではサイクロン等の海象条件が重要となり、既設のプラットフォームに追加して設置できるかの検討が必要となる。

 

(2) LNG液化プラントの動力源をフィードガスから電動モーターに切り替える

液化用のガスタービンの燃料は生産ガスの一部(フィードガス)を使用しているが、これを電動モーター(e-Drive Motor)に切り替える。通常、LNG液化プラントは、自家発電設備を有しており、照明、計装その他の施設に供給している。ガスタービンを電動モーターに置き換えるには多額のCapexが必要となるが、外部から電力を購入する場合、Scope 2となり、フィードガスは不要になるため、Scope 1を対象とするセーフガード・メカニズムではGHG排出量は減少することになる。

現在、世界でe-driveを採用しているeLNG液化プラントは次のとおりである。

  • Freeport LNG(米)テキサス州、Quintana Island。2020年完成。Freeport LNGが100%所有し、オペレーター。3トレイン 1,500万トン/年の生産能力。すべてのトレインでe-driveを採用。一トレイン当たり75MWのGE製e-driveモーターを使用。外部電源を使用
  • Hammerfest LNG(Snohvit LNG)ノルウェー。2007年生産開始。Equinorがオペレーター。1トレイン 410万トン/年の生産能力。現在5基のガスタービンをe-driveモーターに交換するために420kV、54kmの電線を敷設し外部電源を使用する(ノルウェーの電源構成のうち水力発電が95%を占める)。2025年完成予定。
  • Woodfibre LNG(加)ブリティッシュ・コロンビア州Squamish、2025年完成予定。1トレイン 210万トン/年の設計生産能力。Woodfibre Managementが100%所有し、オペレーター。e-driveを採用。47MWの電動モーターを使用。電源は水力発電。
  • Papua LNG(パプア・ニューギニア)2027~2028年完成予定、FEED段階。TotalEnergiesがオペレーターであるが、LNG液化プラントは、ExxonMobilが所掌。4トレイン 400万トン/年の設計生産能力。すべてのトレインがe-driveを採用。電動モーター能力不明。電源はガス火力発電所を自ら建設。CCSも同時開発。

 

(3) LNG液化プラント用再生可能エネルギー発電を建設

再生可能エネルギーによる発電所を独自で建設し利用する。ただし、電源の太陽光および風力は出力が変動する。これを補うべく、蓄電設備も備える必要がある。LNG液化プラントの生産量にもよるが、LNG液化プラントの生産能力を1,000万トン/年とした場合、200MWから300MWの発電能力が必要とされる。CCS設備は必要ないが、再生可能エネルギーとして設置する太陽光パネルや風力発電設備および蓄電池はかなり大掛かりな規模となり、設置可能な地域、条件は限られると思われる。

 

(4) LNG液化プラント用ガス火力発電所を建設

LNG液化プラントは通常自家ガス火力発電所を有しているが、更に小型ガス火力発電所(200MW~300MW)を増設する。一見すると、ガス火力発電にフィードガスを利用することから従来のガスタービンとの差異が分かりづらい。この場合でも、CCSは必要となるが以下の点においてメリットがある。

  • コンバインド・ガスタービン(CCGT、ガスタービンからの余熱で水蒸気発電を行う)を採用することにより、ガスタービンで直接燃焼させた場合の熱効率40%から60%程度に効率が向上する。
  • ガス火力発電所において燃焼後のフィードガスから、CO2を回収する(Post-combustion)ことが容易にできる。

ガス火力発電所の建設コストは、1kWあたり16万~20万円程度と想定すると、Capexは400億円~600億円程度掛かるだろう*。

注 資源エネルギー庁総合資源エネルギー調査会、発電コスト検証ワーキンググループ第8回資料、2021年8月

 

(5) 液化CO2タンクによる貯留

CCSが完成し、圧入が開始されるまで、CO2を液化しタンクに貯蔵する考えはあるだろう。しかし、20万m3のタンクで約20万トンのCO2が貯蔵できるが、500万トンCO2が排出されると25基のタンクが必要となり、かつボイルオフするCO2を再液化しタンクに戻す設備が必要になることから、経済性に疑問が残る。ただし、地下貯留の適地があれば、圧力をかけて貯蔵することは考えられるかもしれない(一種のCCS)。

 

(6) 液化設備のメタンリーク対策

1トレインあたり、1000個を超えるバルブがあり、バルブからの漏れがある。主にメタンリークを止める目的でしっかりとシールをしていく作業は必要。また、適正な省エネオペレーションを行うことも大事だが、両方併せてもGHGの削減量は年間数万トン程度。

 

5. まとめ

セーフガード・メカニズムは、2012年に当時の労働党政権によって法制化され枠組は整えられていたが、翌年から9年間の保守連合政権では形骸化され実質的に発動されることはなかった。また、GHG排出量の上位にLNG液化プラントが名を連ね、石炭産業も上位に位置する。

2022年の総選挙において労働党の政権公約の一つに挙げていたこともあり、WoodsideやSantos等の豪州のE&P企業は、ある程度想定していたかもしれない。しかし、新規ガス田に対して、生産開始した日からネット・ゼロを強いられるのは意外だったのではないだろうか。既存ガス田のバックフィル新規ガス田の取り扱いについては疑問が残る。

本稿ではセーフガード・メカニズムを主に制度面から解説した。現時点では未確定あるいは不明確な箇所も多く、特に「国際的なベスト・プラクティス」および「業界平均の算定」が具体的に見えないため、各LNG液化プラントに対する経済的な影響を正確に算定することは困難であった。実務面での取り組みが進み、影響の見極めが可能となるような制度運用、整備が進むとその成果が注目される。

 

参考資料

以上

(この報告は2023年11月9日時点のものです)

アンケートにご協力ください
1.このレポートをどのような目的でご覧になりましたか?
2.このレポートは参考になりましたか?
3.ご意見・ご感想をお書きください。 (200文字程度)
下記にご同意ください
{{ message }}
  • {{ error.name }} {{ error.value }}
ご質問などはこちらから

アンケートの送信

送信しますか?
送信しています。
送信完了しました。
送信できませんでした、入力したデータを確認の上再度お試しください。