ページ番号1009977 更新日 令和5年12月18日

原油市場他:OPECプラス産油国閣僚級会合において公式な原油生産目標引き下げが見送られたこともあり、下落傾向となる原油価格

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レポートID 1009977
作成日 2023-12-18 00:00:00 +0900
更新日 2023-12-18 12:14:10 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 市場
著者 野神 隆之
著者直接入力
年度 2023
Vol
No
ページ数 34
抽出データ
地域1 グローバル
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地域2
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地域10
国10
国・地域 グローバル
2023/12/18 野神 隆之
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概要

  1. 米国では、秋場のメンテナンス作業が終了したり不具合が発生した装置の改修が完了したりしたことで、製油所の稼働が上昇するとともに、石油製品製造活動が活発化した一方、ガソリン及び留出油需要が必ずしも堅調ではなかったことにより、両製品在庫は増加傾向となった他、ガソリン在庫は平年幅上限を超過する、留出油在庫は平年幅下限付近に位置する、それぞれ量となっている。他方、輸出がもたつき気味となったこともあり、同国の原油在庫は増加傾向となったうえ、平年幅上限を超過する状態が継続している。
  2. 2023年11月末のOECD諸国推定石油在庫の対前月末比での増減は、原油については、米国では増加となった他、日本においては秋場のメンテナンス作業実施に伴い操業を停止した製油所の稼働再開が遅延したことに伴い精製処理活動が停滞したことが一因となり、原油在庫は増加した。このため、欧州では装置不具合発生に伴い操業を停止した製油所の稼働再開による原油精製処理活動活発化により原油在庫は減少したものの、OECD諸国全体では原油在庫は増加となり、平年幅上限を超過する状態は継続している。石油製品については、欧州では経済活動減速が産業部門等の石油需要に対し負の影響を与えたこと等もあり、在庫は微増となった。しかしながら、日本では気温低下とともに暖房向け需要が喚起されたことにより灯油在庫が減少したこと等から石油製品在庫は減少した。米国でもプロパンやその他の石油製品等の在庫が減少したことから石油製品在庫水準は低下した。この結果、OECD諸国全体では石油製品在庫は減少となり平年並みの量となっている。
  3. 2023年11月下旬から12月中旬にかけての原油市場においては、11月下旬においては、OPECプラス産油国閣僚級会合において追加の減産措置が決定されるとの観測等が原油相場に上方圧力を加えた反面、11月24日にパレスチナ自治区ガザ地区においてイスラエルとハマスとの間で一時停戦が実施されたこと等が、原油相場に下方圧力を加えた結果、原油価格は概ね1バレル当たり74~79ドルを中心とする範囲内で方向感なく推移した。しかしながら、11月30日に開催されたOPECプラス産油国閣僚級会合において一部産油国による自主的な追加減産実施を事実上決定するにとどまったことにより、OPECプラス産油国の結束と減産遵守に関し懐疑的な見方が市場で発生したこと等が原油相場に下方圧力を加えたことから、11月末以降原油価格は下落傾向となり、12月12日の終値は1バレル当たり68.61ドルと、2023年6月27日以来の低水準に到達した。
  4. 既に北半球では冬場の暖房用燃料需要期に突入していることから、季節的な石油需給の引き締まり感が市場で意識されやすく、この面では原油相場が下支えされたり上方圧力が加わる場面が見られたりすることもありうる。また、米国金融当局による金融引き締め局面終了期待が市場で増大しやすいことから原油価格が上振れする可能性もある。他方、OPECプラス産油国の結束及び遵守に対して疑問視する見方が市場で根強く続くことが原油価格をもたつかせる可能性がある他、中国経済の不安定な回復状況から原油相場に下方圧力が加わる場面が見られることもありうる。そのような中、紅海等における船舶攻撃等中東情勢を含む地政学的リスク要因や米国原油在庫の動向等が原油相場に影響を及ぼしうるものと考えられる。

(出所 IEA、OPEC、米国DOE/EIA他)

 

1. 一部のOPECプラス産油国が2024年第1四半期において自主的な追加減産を拡大

(1) 協議内容等

OPEC及び一部非OPEC(OPECプラス)産油国は2023年11月30日に閣僚級会合をオンライン形式で開催した。同会合は当初11月26日に対面形式で開催される予定であったが、11月22日午後(ウイーン時間)になり開催が11月30日に延期される旨OPEC事務局が発表した(後述)。また、今回のOPECプラス産油国閣僚級会合に際しては会合後の記者会見は開催されなかった。

協議の結果、2024年1月1日以降のOPECプラス産油国全体に適用される公式な減産拡大(原油生産目標のさらなる引き下げ)に関する発表は見送られる格好となった。代わりに、2024年1月1日から2024年3月31日にかけての自主的な追加供給削減を一部の産油国から個別に発表する形となった(表1参照)。例えば、サウジアラビアは2023年7月1日から12月31日まで実施予定であった日量100万バレルの自主的な追加減産を2024年3月31日まで延長する旨11月30日に国営サウジ通信が発表した。また、アルジェリア(日量5.1万バレル)、イラク(同22.3万バレル)、クウェート(同13.5万バレル)、アラブ首長国連邦(UAE)(同16.3万バレル)、カザフスタン(同8.2万バレル)及びオマーン(同4.2万バレル)が2024年1月1日から3月31日にかけ追加減産を実施するとした。さらに、ロシアは従来日量30万バレルであった原油及び石油製品輸出の削減(2023年5~6月平均を基準とする)を同50万バレルに拡大して2024年1~3月に実施する旨11月30日にノバク副首相が発表した(なお、後にOPEC事務局から声明が発表され、一部産油国による自主的な追加減産幅が明らかになった他、日量50万バレルのロシアの石油輸出削減は原油が日量30万バレル、石油製品が同20万バレルであることが判明した)。

また、6月4日に開催された前回のOPECプラス閣僚級会合時に検討課題とされた、ナイジェリア、アンゴラ及びコンゴに対する2024年の原油生産目標(6月4日時点ではナイジェリア日量138万バレル、アンゴラ同128万バレル及びコンゴ同27.6万バレルであった)については、その後独立した専門機関3機関(IHS(S&Pグローバル)、ウッド・マッケンジー及びライスタット・エナジー)による評価の結果、2024年に到達しうる原油生産量(つまりこれが事実上の原油生産目標と解釈される)は、ナイジェリア日量150万バレル、アンゴラ同111万バレル及びコンゴ同27.7万バレルとされた。しかしながら、アンゴラはこの評価を不服とし、日量111万バレルの原油生産目標に固執することなく、足元の水準である日量118万バレルで原油を生産する意向である旨11月30日に同国のOPEC理事であるペドロ(Pedro)氏が明らかにした。

他方、今回のOPECプラス閣僚級会合においては、ブラジルが2024年1月よりOPECプラスに合流するとして歓迎する意を表する一方、OPECプラスへの招請内容を検討した後2024年にOPECプラスに参加することを希望する旨ブラジルのシルベイラ(Silveira)鉱山・エネルギー相が11月30日に発言した(なお、同日ブラジル大統領府は同国がOPECプラスへの招請を受けているものの現在検討中でありOPECプラスに対し正式な回答は行なっていない旨11月30日に明らかにしている(なお、OPECプラス産油国減産措置には参加する意向はない旨11月30日に伝えられる))。また、ブラジルのルラ大統領は、OPECプラス産油国の化石燃料からの燃料転換を促進させることが、OPECプラス参加への目的である旨12月2日に示唆した他、OPECプラスへはオブザーバー参加を目指す(正式参加ではない)と12月3日に同大統領が明らかにした。なお、次回のOPECプラス産油国閣僚級会合は2024年6月1日に開催される予定である。

表1 OPECプラス産油国の減産幅


(2) 今回の会合の結果に至る経緯及び背景等

2022年12月4日に開催された前々回のOPECプラス産油国閣僚級会合以降、米国中堅金融機関の破綻や同国金融当局の政策金利引き上げ等による経済減速と石油需要の伸びの鈍化への懸念が市場で強まったこともあり、原油相場に下方圧力が加わった結果、2023年3月17日には原油価格が1バレル当たり66.74ドルの終値と2021年12月3日(この日の終値は同66.26ドル)以来の低水準に到達する場面も見られた(図1参照)。このようなこともあり、サウジアラビアを含む一部OPECプラス産油国は2023年5月1日から12月31日にかけ日量115.7万バレルの自主的な追加減産を実施する旨4月2~3日に伝えられた他、ロシアも当初3月のみに適用する予定であった日量50万バレルの自主的な追加減産を12月末まで実施する旨4月2日に同国のノバク副首相が明らかにした。この結果、原油価格は一時的に持ち直したものの、その後再び下落し始め、前回の閣僚級会合開催直前の5月31日には1バレル当たり68.09ドルと3月20日(この日の終値は同67.64ドル)以来の低水準の終値に到達した。

図1 原油価格の推移(2022~23年)

このようなことから、2023年の財政収支均衡価格が1バレル当たり80ドル超(当時)とされたサウジアラビアは、同国の社会構造改革等を含む今後の経済発展に支障が生ずる恐れがあることを危惧し、減産を強化することを通じ原油価格の立て直しを図ろうとしたものと考えられる。しかしながら、少なくともこの時点では消費国による自国産原油購入敬遠等の可能性のため原油価格を十分に引き上げられない結果かえって石油販売収入が抑制される恐れのあるロシアは追加減産措置の実施には消極的であったものと見られる。また、この時点で既に原油生産目標を相当程度下回る状態で原油を生産するOPECプラス産油国もあったことから、OPECプラス産油国全体を対象とする公式な原油生産目標の引き下げでは、表明した減産規模での減産の達成が実際には困難となることが予想された。このように、OPECプラス産油各国の石油収入を維持もしくは拡大するための条件や、減産目標達成状況が異なっていたこともあり、2023年6月4日に開催された閣僚級会合では2023年のOPECプラス産油国全体としての公式な減産措置の強化は見送りとなった。

ただ、閣僚級会合においては、2024年につきOPECプラス産油国全体としての公式な原油生産目標を新たに設定することで、より長期の石油需給引き締まり感と原油価格の先高感を市場関係者間で醸成させるとともに、サウジアラビアが7月1日より日量100万バレルの自主的な追加減産(当初は7月末までの実施)を実施することにより、原油価格の浮揚を図ろうとしたものと考えられる。なお、7月3日にサウジアラビアは日量100万バレルの自主的な追加減産を8月末まで、8月3日には9月末まで、それぞれ延長する旨国営サウジ通信が報じた。

2023年6月4日に開催された前回のOPECプラス産油国閣僚級会合以降、米国の雇用の伸びの鈍化や失業率の上昇、中国経済が底打ちしつつあることを示唆する指標類、9月5日に国営サウジ通信か発表されたサウジアラビアの日量100万バレルの自主的な追加減産の2023年末までの延長等に伴い、2023年後半を中心として世界石油需給が引き締まるとの観測が市場で強まったことにより、原油価格は7月初頭以降上昇基調となり、9月27日にはWTIで1バレル当たり93.68ドルの終値と、2022年8月29日(この日の終値は1バレル当たり97.01ドル)の高水準の終値に到達する場面も見られた。

しかしながら、その後は中国経済の回復が不安定であることを示唆する経済指標類が明らかになったことや、米国金融当局関係者による政策金利引き上げ継続観測が市場で発生したこと、米国原油在庫が増加したこと等が、原油相場に下方圧力を加えた結果、11月16日には原油価格が1バレル当たり72.90ドルの終値と7月6日(この日の終値は同71.80ドル)以来の低水準に到達した他、9月27日の終値から22%程度の下落となるなど、原油価格は下落傾向を示すようになった。

加えて、サウジアラビアが7月1日より実施している日量100万バレルの自主的な追加減産を2023年末で終了した場合、2024年は通年で日量101万バレル程度石油供給が需要を上回る(表2参照)他、特に同年第1四半期は日量170万バレル程度、第2四半期は同159万バレル程度、それぞれ供給が需要を上回る(つまり供給過剰となる)可能性があることが示唆されたため、2024年に向け原油価格の下落が加速する恐れがあることが懸念された。

表2 世界石油需給バランスシナリオ(2024年)(2023年11月29日時点)

このようなこともあり、特に2024年前半の世界石油供給過剰観測を払拭すべく、今次OPECプラス産油国閣僚級会合においてはサウジアラビアの自主的な追加減産措置の延長と併せ、OPECプラス産油国の公式原油生産目標の引き下げを実施することで、日量200万バレル相当の原油供給を市場から排除することにより、原油価格の持ち直しを試みたものと見られる(閣僚級会合においては、サウジアラビアの自主的な追加減産の実施延長とは別に、最大日量100万バレルの追加減産が検討される可能性がある旨11月17日にフィナンシャル・タイムスから示唆されていた)。この流れは、2023年5月23日に(積極的な原油先物契約の空売りを行なうことにより原油価格を押し下げようとするのであれば)痛い目に遭うので注意する必要がある旨サウジアラビアのアブドルアジズ・エネルギー相が石油市場の空売り投機筋に対して行なった警告に沿ったものでもあった。

ただ、今回のOPECプラス産油国閣僚級会合開催に際しては、ナイジェリア、アンゴラ及びコンゴといった西アフリカの一部OPECプラス産油国がさらなる原油生産目標引き下げに異議を唱えたことから、当初11月26日に開催される予定であった閣僚級会合が11月30日に延期される格好となったとされる。6月4日に開催された前回のOPECプラス産油国閣僚級会合において、西アフリカの一部OPECプラス産油国3ヶ国は2024年の原油生産目標が2023年末までの水準から引き下げられたが、その際、これら3産油国の原油生産可能量を外部の専門3機関(IHS(S&P グローバル)、ウッド・マッケンジー及びライスタッド・エナジー)が精査し、妥当であると判断される場合には、原油生産目標を引き上げる旨の条件が付されていた。例えば、ナイジェリアは日量157.8万バレルを原油生産目標として検証の対象とし、これが確認された場合、当該水準が2024年の原油生産目標に反映されるとしていた。

前回の閣僚級会合開催に際し原油生産目標の引き下げをサウジアラビア等から持ちかけられた3ヶ国は今後の原油生産能力拡大のための石油開発投資促進上の障害となる(原油生産目標を理由に生産を制限される可能性があることから外国石油会社がこれら産油国における石油開発投資を敬遠するようになる)等を理由として受け入れに難色を示したとされる。それでも、自国の原油生産目標の妥当性を精査すべく、第三者機関に検討を依頼し、妥当と認められるのであれば原油生産目標を再度引き上げるとしたことから、これら産油国の2024年の原油生産目標の引き下げにつき関係産油国間で合意に至ったとされる。

その後、原油生産目標再検討のための精査結果が提示された(ここにおいて、ナイジェリアが日量150万バレル、アンゴラが同111万バレル、コンゴが同27.7万バレルと、ナイジェリア及びコンゴは6月4日に開催された前回の閣僚級会合において決定した、それぞれ同138万バレル及び同27.6万バレルから引き上げられたものの、アンゴラは同128万バレルからさらに引き下げられたものと見られる)ものの、3ヶ国は当該結果の受入を拒否した旨11月22日にブルームバーグ通信により伝えられており、これら3ヶ国に対しては自国が満足いくような原油生産目標の上方修正が提案されなかったうえ、2024年初頭から原油生産目標が引き下げられる可能性が高まったことに不満を抱いたため、当初開催予定であった11月26日の閣僚級会合においての2024年における減産のさらなる強化(つまり、原油生産目標のさらなる引き下げ)を巡る合意が困難になった結果、同会合の開催が延期されたものと見られる。

その後も、西アフリカの一部OPECプラス産油国との間での協議は継続したとされるが、結果的に合意に至らなかったこともあり、今回のOPECプラス産油国閣僚級会合においては、一部産油国による自主的な追加減産等の延長及び拡大という形を採用することとなり、OPECプラス産油国全体に適用される公式な原油生産目標の引き下げ(つまり減産措置の拡大)は見送られることとなった。

特に、2024年の原油生産目標が6月4日の前回閣僚級会合において定められた日量128万バレルから第三者機関による精査の結果日量111万バレルへと2024年の原油生産目標を引き下げられたアンゴラは自国に適用された原油生産目標は受け入れられないものであるとして、当該目標にかかわらず自国の意志で生産する方針である旨11月30日に明らかにした(前述)他、2024年原油生産目標の日量111万バレルへの引き下げに対し抗議する旨の書簡をOPEC事務局に送付した旨、12月1日にアンゴラのアゼベド(Azebedo)鉱物資源・石油・ガス相が声明を発表した。

なお、ロシアが(他の一部産油国と異なり自主的な追加減産ではなく)自主的な石油輸出削減を実施することになったことについては、ロシアに対しては(追加)減産の実施を希望していたものの、特に冬場においては同国の原油生産調整が容易ではない旨ロシアが主張し続けたことにより、減産を受け入れさせることが困難であった旨12月4日にサウジアラビアのアブドルアジズ・エネルギー相が明らかにしている。

 

(3) OPECプラス産油国閣僚級会合開催に際しての原油価格の動き等

今回のOPECプラス産油国閣僚級会合開催に際しては、サウジアラビアによる日量100万バレルの自主的な追加減産の延長に加え、OPECプラス産油国全体で日量100万バレルの原油生産目標の引き下げ(減産強化)を実施することが検討されている旨の情報が流れたこと(前述)もあり、原油価格は11月30日午前の早い時間(米国東部時間)頃までは前日終値比で上昇して推移しており、一時は1バレル当たり79.60ドル(前日終値比同1.76ドルの上昇)に到達する場面が見られた。

しかしながら、当該閣僚級会合においてOPECプラス産油国全体による原油生産目標の引き下げ(減産強化)が見送られるとともに一部産油国による自主的な追加減産等を実施する方向となったうえ、自主的な追加減産幅については追って産油各国から発表される予定である旨伝えられたことから、当該減産規模に関する不透明感(つまり、減産規模が世界石油需給を引き締めるのに十分なのかという懸念)が市場で強まったことが、原油相場に下方圧力を加えるようになった結果、原油価格は下落し始め、この日正午前(同)には1バレル当たり75.05ドル(前日終値比同2.81ドルの下落)に到達する場面も見られた。

ただ、その後一部OPECプラス産油国から自主的な追加減産幅が発表され始めた結果、少なくとも2024年第1四半期においては、大規模な供給過剰には至らない旨示唆された(表3参照)ことから、原油相場の下落は抑制されることとなった。

表3 世界石油需給バランスシナリオ(2024年)(2023年11月30日時点)

それでも、与えられた目標に固執することなく原油生産を行なう旨アンゴラが表明するなどしたことにより、OPECプラス産油国間での結束の乱れを不安視する向きが市場で発生したことや、イラン等のOPECプラス産油国減産措置の枠外の産油国が増産した(後述)場合には、2024年第1四半期であっても、供給過剰に傾く可能性がある他、同じく供給過剰となる可能性のある同年第2四半期(閣僚級会合開催時点で日量159万バレル程度の供給過剰になることが示唆された)については、今回の閣僚級会合においては追加減産等による手当がなされなかったことにより、同時期の世界石油需給緩和感が市場で発生したことが、原油相場を抑制し続けた結果、11月30日の原油価格の終値は1バレル当たり75.96ドル(前日末終値比同1.90ドル程度の下落)となった。

 

2. 原油市場を巡るファンダメンタルズ等

2023年9月の米国ガソリン需要(確定値)は日量883万バレル、前年同月比で0.2%程度の減少となり(図2参照)、8月の当該需要である同930万バレルから需要量が下振れした他同月の前年同月比の増加率である2.0%程度の増加から減少に転じた。ただ、当該需要は速報値(前年同月比5.6%程度減少の日量835万バレル)からは上方修正されている。9月の同国からのガソリン最終製品輸出量が速報値段階では日量94万バレル程度と推定されたところ確定値では同77万バレルへと下方修正されたことにより、同国ガソリン需要が速報値から確定値へと移行する段階でこの部分が輸出から国内需要に振り替えられたことが、当該需要の上方修正に部分的にせよ寄与しているものと見られる。米国労働者の日(レイバー・デー)(9月4日)に伴う連休(9月2~4日)を以て同国での夏場のドライブシーズンに伴うガソリン需要期が終了した(加えて、9月29日の週の同国ガソリン需要が日量801万バレルとこの時期としては2000年(9月29日の週において日量782万バレル)以来の低水準に到達しており、熱帯性低気圧「オフェリア(Ophelia)」衰退後の低気圧の来襲により9月下旬に同国北東部に大雨がもたらされるとともに一部地域で洪水等が発生したことに伴い個人の外出が敬遠されたことが影響したと示唆する向きもある)こともあり、9月の米国自動車運転距離数は1日当たり92億マイルと8月の同93億マイルから減少したことが、9月の同国ガソリン需要が前月比で減少した背景にあるものと考えられる。また、9月のガソリン小売価格は1ガロン当たり3.958ドルと8月の同3.954ドルとほぼ同水準ではあったものの、前年同月の水準(同3.817ドル)を上回る状況となったことが、同国のガソリン需要を抑制する格好となった結果、9月の米国ガソリン需要は前年同月比で減少となったものと見られる。なお、2023年9月の米国ガソリン需要は新型コロナウイルス感染流行前の2019年9月の当該需要(日量920万バレル)(確定値)を4.0%程度下回っている。他方、2023年11月の米国ガソリン需要(速報値)は日量859万バレル、前年同月比で2.7%程度の減少と、10月の当該需要(速報値)である日量890万バレルから需要量が減少した他同月の前年同月比1.1%程度の増加から減少に転じた。2023年9月において米国の一部地域が悪天候であったことによりガソリン需要が抑制された反動が10月に現れたと見られる他、2023年10月は全米ガソリン小売価格が1ガロン当たり3.742ドルと前月(同3.958ドル)及び前年同月(同3.935ドル)を下回ったことにより、同国においてガソリン需要が喚起される格好となったことが、10月の当該需要を上振れさせるとともに同需要の前月比及び前年同月比での増加をもたらしたものの、11月はその動きも一巡したものと見られることに加え、気温が低下傾向となったこともあり、個人の外出が鈍化したものと思われることが、同月のガソリン需要を前月比で減少させた側面があるものと見られる。もっとも、同月のガソリン小売価格は1バレル当たり3.443ドルと前年同月(同3.799ドル)をそれなりに下回った他、同月の同国推定自動車運転距離数は1日当たり87億マイルと前年同月の同86億マイルを0.8%程度上回るなど、当該需要が比較的堅調であった旨示唆されることから、11月の米国ガソリン需要が確定値に移行する段階で上方修正されたり、もしくは反動で12月の当該需要が上振れしたりする場面が見られることもありうる。なお、2023年11月の米国ガソリン需要は2019年11月の当該需要(日量921万バレル)(確定値)を6.7%程度下回っている。また、米国では秋場のメンテナンス作業が終了したり、不具合が発生した装置の改修が完了したりするとともに、冬場の暖房シーズンに伴う暖房用石油製品需要期突入に向け製油所が稼働を上昇させたものと見られることもあり、原油精製処理量が増加傾向となる(図3参照)とともにガソリンを含む石油製品製造活動が活発化した(ガソリン最終製品生産量は図4参照)ものの、前述の通りガソリン需要はもたつき気味となったことから、11月上旬から12月上旬にかけての同国におけるガソリン在庫は混合基材を中心として増加傾向となったうえ、平年幅上限を超過する量となっている(図5参照)。

図2 米国ガソリン需要の伸び(2015~23年)

図3 米国の原油精製処理量(2009~23年)

図4 米国のガソリン(最終製品)生産量(2009~23年)

図5 米国ガソリン在庫推移(2003~23年)

2023年9月の米国留出油需要(確定値)は日量392万バレルと前年同月比で4.1%程度の減少となり(図6参照)、8月の同413万バレル(前年同月比4.9%程度の増加)から需要量が減少した他前年同月比では8月の増加から減少に転じた。ただ、当該需要は速報値(前年同月比5.3%減少の日量387万バレル)からは上方修正されている。9月の同国からの留出油輸出量が速報値段階では日量110万バレル程度と推定されたところ確定値では同105万バレルへと下方修正されたことで、同国留出油需要が速報値から確定値への移行する段階でこの部分が輸出から国内需要に振り替えられたことが、当該需要の上方修正に影響しているものと見られる。また、原油価格が上昇基調となったこともあり7月下旬頃から9月中旬頃にかけ全米平均軽油小売価格が上昇傾向となった(7月17日時点で1ガロン当たり3.806ドルであった当該価格は9月18日には同4.633ドルと2023年初頭以降では最高水準に到達した)ことから、軽油価格の上昇が進む前に駆け込みで軽油を調達しようとする動きが発生したことが、8月の当該需要を押し上げたものと考えられるが、その反動に加え、軽油価格上昇に伴い2023年9月の同国の物流活動が前年同月比で1.7%程度減少したことから、軽油需要が落ち込んだ結果当該需要は前月比及び前年同月比で減少となったものと考えられる。なお、9月の米国留出油需要は2019年同月の当該需要(日量392万バレル)(確定値)からほぼ横這いとなっている。他方、2023年11月の米国留出油需要(速報値)は日量378万バレルと前年同月比で6.8%程度の減少となり、10月の当該需要量(速報値)の日量387万バレル(前年同月比3.2%程度の減少)から需要量が多少なりとも減少したうえ前年同月比の減少率は拡大した。11月の全米平均軽油小売価格は1ガロン当たり4.254ドルと前月(同4.507ドル)及び前年同月(同5.255ドル)を下回ったものの、11月の同国鉱工業生産が前年同月比で0.4%の減少となるなど、製造業活動が前年に比べて不活発となったことが、留出油需要の前年同月比での減少に影響しているものと考えられる。ただ、11月の米国鉱工業生産活動は前月比では0.2%の増加となっていることから、速報値から確定値に移行する際に2023年10月及び11月の当該需要が修正される、ないしは反動で12月の需要が影響を受けることもありうる。なお、2023年11月の米国留出油需要は2019年同月の当該需要(日量420万バレル)(確定値)を9.9%程度下回っている。このように、同国の留出油需要が必ずしも堅調であるとは言い切れなかった反面、製油所の稼働上昇とともに留出油を含む石油製品製造活動が活発化した(図7参照)結果、11月上旬から12月上旬にかけ米国留出油在庫は増加傾向となった他、平年幅下限付近に位置する量となっている(図8参照)。

図6 米国留出油需要の伸び(2015~23年)

図7 米国の留出油生産量(2009~23年)

図8 米国留出油在庫推移(2003~23年)

2023年9月の米国石油需要(確定値)は、前年同月比0.2%程度減少の日量2,009万バレルとなり(図9参照)、8月の同2,088万バレルから需要量が減少したうえ、同月の前年同月比3.0%程度の増加から減少に転じた。ガソリン及び留出油両需要が前月比及び前年同月比で減少したことが、9月の同国石油需要の前月比及び前年同月比の減少に反映されている。また、その他の石油製品の需要が速報値(日量541万バレル)から確定値(同453万バレル)に移行する段階で相当程度下方修正されたことにより、同国石油需要(確定値)は速報値(前年同月比0.6%程度増加の日量2,026万バレル)から下方修正されている。なお、2023年9月の米国石油需要は2019年9月の当該需要(日量2,025万バレル)(確定値)を0.8%程度下回っている。他方、2023年11月の米国石油需要(速報値)は日量1,980万バレル、前年同月比で2.1%程度の減少となっており、10月の同国石油需要(速報値)である日量2,065万バレル、前年同月比3.2%程度の増加から、需要量が減少した他前年同月比でも増加から減少に転じた。11月の同国ガソリン需要が前月比で減少した他前年同月比でも10月の増加から減少に転じたうえ、11月の同国留出油需要も前月比で減少した他前年同月比では10月から減少率が拡大したことが、背景にあるものと考えられる。また、2023年11月の米国石油需要は、2019年11月の当該需要(日量2,074万バレル)(確定値)を4.5%程度下回っている。

11月上旬から12月上旬にかけての米国における国内原油生産量は日量1,310~1,320万バレルで概ね横這いであった一方、秋場のメンテナンス作業が終了したり不具合が発生していた装置の改修が完了したりしたこともあり製油所における原油精製処理活動は上向きとなったものの、原油輸出が概して好調であるとは言い切れなかった(金融当局による政策金利引き上げ等の影響により欧州等において産業部門を中心として軽油等の石油製品需要が抑制されたことが一因であるものと見る向きもある)ことから、11月上旬から12月上旬にかけての同国の原油在庫は増加傾向を示した他、平年幅上限を超過する状態は継続している(図10参照)。そして、原油及びガソリン在庫が平年幅上限を超過する量、そして留出油在庫が平年幅下限付近に位置する量となったこともあり、原油とガソリンを合計した在庫、そして原油、ガソリン及び留出油を合計した在庫は、いずれも平年幅上限を超過する状態となっている(図11及び12参照)。

図9 米国石油需要の伸び(2015~23年)

図10 米国原油在庫推移(2003~23年)

図11 米国原油+ガソリン在庫推移(2003~23年)

図12 米国原油+ガソリン+留出油在庫推移(2003~23年)

2023年11月末のOECD諸国推定石油在庫の対前月末比での増減は、原油については、米国では増加となった他、日本においては秋場のメンテナンス作業実施に伴い操業を停止した製油所の稼働再開が遅延したことに伴い原油の精製処理が進まなくなったことが一因となり、原油在庫は増加した。このため、欧州においては装置不具合発生に伴い操業を停止した製油所が稼働を再開したことから原油精製処理活動が相対的に活発化したことにより原油在庫が減少したものの、OECD諸国全体では原油在庫は増加となり、平年幅上限を超過する状態は継続している(図13参照)。石油製品については、欧州では製油所の原油精製処理活動が活発化した反面足元の気候が概して温暖であったことが暖房向け石油製品需要を抑制したり、経済活動がもたつき気味となったことが産業部門や輸送部門における石油需要に対し負の影響を与えたりしたものと見られることもあり、在庫は微増となった。しかしながら、日本においては気温が低下するとともに暖房向け需要が喚起されたこともあり灯油在庫が減少したこと等から石油製品在庫は減少となった。また、米国においてはガソリン及び留出油両在庫は増加したもののプロパン(気温の低下に伴い暖房用需要が発生したことが一因であるものと見られる)及びその他の石油製品(冬用ガソリンに混入するブタンの需要が増加しつつあることによるものと見られる)の両在庫減少により相殺されて余りあったことから、同国石油製品在庫は減少した。この結果、OECD諸国全体では石油製品在庫は減少となり平年並みの量となっている(図14参照)。そして、原油在庫が平年幅上限を超過する一方、石油製品在庫が平年並みの量となったことから、原油と石油製品を合計した在庫は平年幅上限付近に位置する量となっている(図15参照)。なお、2023年11月末時点のOECD諸国推定石油在庫日数は61.9日と10月末の推定在庫日数(61.6日)から増加している。

図13 OECD諸国原油在庫推移(2005~23年)

図14 OECD諸国石油製品在庫推移(2005~23年)

図15 OECD諸国石油在庫(原油+石油製品)推移(2005~23年)

11月15日に1,300万バレル台半ば程度の水準であったシンガポールにおけるガソリンを含む軽質留分在庫は、11月22日及び29日には1,100万バレル台後半程度の量へと減少した。12月6日には1,200万バレル強程度の水準に回復したものの、12月13日には1,100万バレル台半ば程度の量へと減少した結果、11月15日の水準を下回る状態となるなど、当該在庫は概して減少傾向を示した。アジア等の一部諸国及び地域において秋場のメンテナンスを実施していたことに伴う製油所での石油製品製造活動の不活発化により、これら諸国からのガソリン等を含む石油製品の輸出が鈍化するとともに、国外からの石油製品輸入が旺盛になった影響により、シンガポールからそれら諸国等への軽質留分の流出が促進されたことが、シンガポールにおける軽質留分在庫を押し下げる一因となったものと考えられる。また、そのような中で豪州のジーロン(Geelong)製油所(操業者:ビバ・エナジー(Viva Energy)、原油精製能力日量12万バレル)がメンテナンス作業中の6月6日にコンプレッサー破損事故が発生した結果以降同製油所の稼働が低水準で推移したことにより、国内販売手当のために国外からのガソリン等の石油製品の輸入を推進したことも、シンガポールでの軽質留分在庫減少に影響している可能性がある。そしてこのように、シンガポールにおける軽質留分在庫が減少傾向となったことが、アジア市場におけるガソリン価格に上昇圧力を加えることになった一方、米国においてガソリン在庫が増加傾向となったことにより世界的にガソリン需給の緩和感が市場で醸成されたことがアジア市場におけるガソリン価格を抑制する格好となったことから、11月中旬から12月中旬にかけてはアジア市場におけるガソリンとドバイ原油との価格差(従来ガソリン価格がドバイ原油価格を上回っていた)は上下に変動したものの、多少なりとも拡大する傾向と示した。

他方、2023年に入り中国国内におけるナフサ分解装置(及びプロパン脱水素化装置(PDH))の稼働率が上昇しつつある(ナフサ分解装置に投入される原料であるナフサは中国が輸入等した原油を精製することにより製造されているものと推測される)ことが示唆される旨指摘されており、同国の石油化学製品輸入が限定される格好となっている(2023年10月の同国のエチレン輸入量は約16万トンと直近のピーク時である2019年1月(約29万トン)の半分強の規模となっている)こともあり、(中国を除く)アジア地域における石油化学製品需要は好調でないことに伴い、原料となるナフサの需要も堅調ではないものと見られる。しかしながら、冬場の暖房シーズンに突入するとともに暖房向け需要が旺盛となったことにより、石油化学部門向け原料として競合する液化石油ガス(LPG)の価格が上昇した(また、渇水のためパナマ運河を通航する船舶数が制限されたため、米国メキシコ湾岸地域等から太平洋圏へのLPG供給が低下するとの懸念が増大していることもLPG価格に上方圧力を加える格好となっていると見る向きもある)ことにより、ナフサ価格もその影響を受けている他、中東における複数の製油所がメンテナンス作業実施や火災等の発生により操業が停止等したことや、ロシアの黒海沿岸で濃霧を含む荒天によりナフサの出荷に支障が発生したとされることにより、それら地域からアジアへのナフサ供給が減少するとの観測が市場で発生したことが、アジア市場のナフサ価格に上方圧力を加えた結果、11月中旬から12月中旬にかけての同市場におけるナフサとドバイ原油と価格差(この場合ナフサ価格がドバイ原油価格を下回っている)は縮小する傾向を示したうえ、12月中旬には、ナフサ価格がドバイ原油価格を上回る場面も見られている。

11月15日には1,000万バレル台半ば程度の量であったシンガポールにおける軽油やジェット燃料といった中間留分在庫は、11月22日も1,000万バレル台半ば程度の水準を維持したが、11月29日には900万バレル強程度、12月6日及び13日には800万バレル台後半程度の、それぞれ量へと減少した結果、12月13日の在庫水準は11月15日を下回る状態となっている。アジア地域の一部製油所における秋場のメンテナンス作業実施による石油製品製造活動の不活発化による石油製品供給減少に伴いインドネシアや豪州(また前述の通り同国においては一部製油所の稼働が低迷したことにより、国外から軽油の輸入を促進したといった側面もある)等向けにシンガポールから軽油が流出したことがシンガポールにおける中間留分在庫減少の背景にあるものと考えられる。このようにシンガポールにおける中間留分在庫減少に伴い軽油需給の引き締まり感を市場が意識したことがアジア市場の軽油価格に上方圧力を加えたものの、政策金利引き上げ等の影響により欧州経済が減速気味となったこともあり、産業部門を中心として同地域の軽油需要が軟調となったこと等で、欧米地域における軽油需給の緩和感が市場で意識されるとともに、中東地域やインドを含むアジア地域から欧州方面への軽油輸出が鈍化するとの観測が市場で広がったことが、アジア市場における軽油価格に下方圧力を加えたことから、11月中旬から12月中旬にかけての同市場における軽油とドバイ原油の価格差(この場合軽油価格がドバイ原油価格を上回っている)は比較的限られた範囲内で推移した。

11月15日に1,700万バレル台半ば程度の水準であったシンガポールの重油在庫は、11月22日には2,000万バレル強程度の量へと増加した。しかしながら、11月29日には1,900万バレル台半ば程度、12月6日には1,800万バレル台後半程度の、それぞれ量へと減少した。それでも、12月13日には2,100万バレル台半ば程度の水準へと回復した結果、同日の在庫量は11月15日を上回るなど、当該在庫は増加傾向となった。ロシアの黒海沿岸地域における荒天やクウェートにおける一部製油所の装置不具合発生等によりシンガポール方面への重油供給が軟調となった一方、欧州において秋場の製油所メンテナンス作業が終了しつつあったことに伴い、同地域の製油所で製造された重油がシンガポール方面に流入したことが、シンガポールにおける重油在庫を押し上げる格好となったものと考えられる。そして、このようにシンガポールにおいて重油在庫が増加したことが、アジア市場における重油価格に下方圧力を加えたものの、当初11月26日に開催予定であったOPECプラス産油国閣僚級会合が11月30日へと延期されたことにより、同閣僚級会合における減産措置を巡る意見の相違が産油国間で発生しているとの観測が市場で増大したこともあり、原油相場が下落したことに対し、重油価格の下落が追い付かなかったことから、11月下旬においてはアジア市場の高硫黄重油とドバイ原油との価格差(この場合高硫黄重油価格がドバイ原油価格を下回っている)は概ね限られた範囲内で変動していた。そして、11月30日に開催されたOPECプラス産油国閣僚級会合において公式な原油生産目標を引き下げる代わりに一部産油国による自主的な追加減産の実施が事実上決定されたことにより、OPECプラス産油国による結束と減産遵守を疑問視する見方が市場で発生したこともあり、原油相場が下落し続けたことに対し、重油の下落が追い付かなかったこともあり、この時期アジア市場における高硫黄重油とドバイ原油との価格差(この場合高硫黄重油価格がドバイ原油価格を下回っている)は縮小する傾向を示した。他方、3基目の常圧蒸留装置(原油精製能力日量20.5万バレル)が稼働を開始した(7月6日に操業者であるKIPI(Kuwait Integrated Petroleum Industries)が発表)とされるクウェートのアル・ズール(Al-Zour)製油所(原油精製能力同61.5万バレル)については、数日中に同製油所での原油精製処理量が日量61.5万バレルの名目能力水準での稼働に到達する旨10月9日にKIPIが発表したものの、その後もクウェートからの低硫黄重油の国外販売が拡大しているようには見受けられなかった(クウェートの既存のミナ・アルアマディ(Mina Al Ahmadi)製油所(原油精製処理能力日量46.6万バレル)及びミナ・アブドラ(Mina Abdullah)製油所(同27万バレル))において、どちらか、もしくは双方の脱硫装置に不具合が発生した一方、クウェート国内の電力供給を賄うための発電所や同国内の塩水淡水化装置において利用される重油について、環境規制に適合させるため低硫黄のものを出荷する必要があったことや、11月12日には装置の不具合によりアル・ズール製油所の稼働がほぼ停止した他、11月16日には同製油所で火災が発生したことが影響しているものと見られる)ことがアジア市場における低硫黄重油価格を下支えしたものの、同製油所がほぼ完全な操業状態に到達した旨KIPIが12月3日に声明を発表したことにより、同製油所からの低硫黄重油供給増加観測が市場で発生したことが、アジア市場における低硫黄重油価格に下方圧力を加えたことから、11月下旬には比較的限られた範囲内で推移していた同市場における低硫黄重油とドバイ原油との価格差(この場合低硫黄重油の価格がドバイ原油価格を上回っている)は12月初頭頃以降縮小する傾向を示した。

 

3. 2023年11月下旬から12月中旬にかけての原油市場等の状況

2023年11月下旬から12月中旬にかけての原油市場においては、11月下旬においては、11月23日に開催予定であったOPECプラス産油国閣僚級会合において追加の減産措置が決定されるとの観測やロシアの黒海沿岸港周辺における荒天に伴う石油供給への影響への懸念等が原油相場に上方圧力を加えた反面、11月24日にパレスチナ自治区ガザ地区においてイスラエルとハマスとの間で一時停戦が実施されたことや、OPECプラス産油国閣僚級会合が延期されたことによりOPECプラス産油国間での意見の相違が発生しているとの観測が市場で発生したこと等が、原油相場に下方圧力を加えた結果、原油価格は概ね1バレル当たり74~79ドルを中心とする範囲内で方向感なく推移した。しかしながら、11月30日に開催されたOPECプラス産油国閣僚級会合において、公式な原油生産目標の引き下げが見送られるとともに一部産油国による自主的な追加減産が事実上決定されたことにより、OPECプラス産油国の結束と減産遵守に関し懐疑的な見方が市場で発生したことや、サウジアラビアが2024年1月のアジア向け原油販売価格を引き下げた旨12月5日に伝えられたこと、米国ガソリン在庫が市場の事前予想を上回って増加していた旨判明したこと、EIAが2024年の原油価格見通しを引き下げたこと等が原油相場に下方圧力を加えたことから、原油価格は下落傾向となり、12月12日の終値は1バレル当たり68.61ドルと、2023年6月27日以来の低水準に到達した(図16参照)。

図16 原油価格の推移(2003~23年)

現状の減産規模では原油価格支持には十分ではないとの認識により、11月26日に開催される予定である閣僚級会合においてOPECプラス産油国が追加減産を検討する旨11月17日午後(米国東部時間)に報じられたことにより、この先の石油需給の引き締まり感を市場が意識した流れを引き継いだことから、11月20日の原油価格は前週末終値比で1バレル当たり1.71ドル上昇し、終値は77.60ドルとなった(なお、この日を以てNYMEXの2023年12月渡し原油先物契約は取引を終了したが、2024年1月渡し原油先物契約のこの日の終値は1バレル当たり77.83ドル(前週末終値比1.79ドルの上昇)であった)。また、11月21日の原油価格の終値は1バレル当たり77.77ドルと前日終値比で0.17ドル上昇したが、米国原油先物契約2024年1月渡し間では同0.06ドルの下落となった。これは、11月26日に開催される予定である閣僚級会合においてOPECプラス産油国が追加減産を検討する旨11月17日に報じられたことにより、この先の石油需給の引き締まり感を市場が意識した流れを11月21日の市場も引き継いだことが、原油相場に上方圧力を加えた反面、イスラエルとハマスとの間での戦闘につき停戦合意が近い旨11月21日にハマスの最高指導者であるハニヤ(Haniyeh)氏が明らかにしたうえ、ハマスにより拘束されている人質の解放が近づいている旨11月21日に米国のバイデン大統領が明らかにしたことにより、中東情勢の不安定化に伴う同地域からの石油供給途絶懸念が後退したことが、原油相場に下方圧力を加えたことによる。そして、11月26日に開催される予定であった次回OPECプラス産油国閣僚級会合が11月30日に延期される旨11月22日にOPEC事務局が発表した(この時点では延期理由は明示されていなかった)ことにより、原油生産方針を巡り関係産油国間で意見の相違が発生している結果、当該会合において世界石油需給を引き締めるような決定が見送られることに伴い2024年の石油需給が緩和するのではないかとの観測が市場で増大したことに加え、11月22日に米国エネルギー省エネルギー情報局(EIA)から発表された米国石油統計(11月17日の週分)で、原油在庫及びガソリン在庫が前週比870万バレル及び同75万バレルの、それぞれ増加と市場の事前予想(原油在庫同120~175万バレル程度の増加、ガソリン在庫同15~110万バレル程度の減少)に反し、もしくは事前予想を上回って増加していたたうえ、米国オクラホマ州クッシングの原油在庫が前週比で85.8万バレル増加していた旨判明したことにより、同国石油需給の緩和感を市場が意識したこと、11月22日に米国労働省から発表された同国新規失業保険申請件数(11月18日の週分)が20.9万件と前週比2.4万件の減少となった他市場の事前予想(22.6~22.7万件)を下回ったうえ、同日同国ミシガン大学から発表された1年先の期待物価上昇率が4.5%と10月調査時の4.2%から上昇率が拡大した他市場の事前予想(4.4%)を上回ったこともあり、米国金融当局による政策金利引き上げ継続観測が市場で強まったことが一因となって、米ドルが上昇したことから、この日の原油価格の終値は1バレル当たり77.10ドルと前日終値比で0.67ドル下落した。なお、11月23日は、米国感謝祭(サンクスギビング・デー)の休日に伴い、米国原油先物契約の終値は計上されなかった。ただ、11月24日も、11月26日に開催される予定であった次回OPECプラス産油国閣僚級会合が11月30日に延期される旨11月22日朝(米国東部時間)にOPEC事務局が発表したことにより、当該会合における世界石油需給を引き締める方向での原油生産方針の決定を巡る不透明感が増大するとともに世界石油需給緩和観測が市場で発生した流れを引き継いだことに加え、4日間の予定のイスラエルとハマスによるガザ地区等を巡る戦闘停止が11月24日午前7時(現地時間)に開始され、ハマスが拘束していた人質が解放され始めたことにより、中東情勢の不安定化に伴う同地域からの石油供給途絶懸念が市場で後退したことから、この日の原油価格は前日終値比で1バレル当たり1.56ドル下落し、終値は75.54ドルとなった。この結果原油価格は11月22~24日の2取引日で1バレル当たり合計2.23ドル下落した。

ただ、サウジアラビアはOPECプラス産油国に対しより大規模な減産を要求する一方、一部産油国が抵抗していることにより、合意にはまだ至っていない旨11月27日に伝えられたことにより、2024年に向けての世界石油需給緩和感を市場が意識したことから、この日の原油価格は前週末終値比で1バレル当たり0.68ドル下落し、終値は74.86ドルとなった。しかしながら、11月28日には、これまでの原油価格下落に対し値頃感から原油の買い戻しが発生したことに加え、米国金融政策が自国の物価上昇を抑制するには十分であるとの自信を深めつつある旨ウォーラーFRB理事が考えていると11月28日に報じられたことにより、同国金融当局による金融引き締め局面終了期待が市場で増大したこともあり、米ドルが下落したこと、11月29日にEIAから発表される予定である米国石油統計(11月24日の週分)で原油在庫が前週比で減少している旨判明するとの観測が市場で発生したことから、この日の原油価格の終値は1バレル当たり76.41ドルと前日終値比で1.55ドル上昇した。また、11月30日に開催される予定である(当初の開催予定日11月26日から延期された)OPECプラス産油国閣僚級会合を前にした持ち高調整が11月29日の市場で発生したことに加え、ロシアの黒海沿岸港の位置するロシアのノボロシイスク地域において11月24日以降の悪天候に伴う波浪が継続していることに伴い港湾での原油の船積み作業が中断した結果、ロシア及びカザフスタンからの最大日量200万バレルの原油輸出に支障が発生している旨11月29日に伝えられたことにより、同地域からの原油供給途絶に伴う世界石油需給引き締まり感を市場が意識したこと、11月29日に米国商務省から発表された2023年第3四半期の同国国内総生産(GDP)(改定値)が年率換算で前期比5.2%の増加と10月26日に発表された速報値である同4.9%増加から上方修正された一方、コア(食料品及びエネルギーを除く)個人消費支出(PCE:Personal Consumption Expenditures)価格指数(改定値)が年率換算で前期比2.3%上昇と速報値の2.4%上昇から下方修正されたことにより、米国経済成長が堅調である一方で同国物価上昇が抑制されつつあることから、米国金融当局による金融引き締め局面終了に伴い同国の経済成長とともに石油需要の伸びが加速することに対する市場の期待が増大したことから、11月29日の原油価格は前日終値比で1バレル当たり1.45ドル上昇し、終値は77.86ドルとなった。この結果原油価格は11月28~29日の2日間で1バレル当たり合計3.00ドル上昇した。しかしながら、11月30日には、この日開催されたOPECプラス産油国閣僚級会合において、サウジアラビアを含む一部産油国による2024年1~3月の自主的な追加減産実施が事実上決定したものの、OPECプラス産油国全体に渡る公式な原油生産目標の引き下げではなかったことにより、OPECプラス産油国の結束と減産遵守に関し懐疑的な見方が市場で発生したことに加え、2023年9月の米国原油生産量(確定値)が日量1,324万バレルと1920年以降の同国月間原油生産統計史上最高水準に到達した旨11月30日にEIAが明らかにしたことにより、同国の石油需給緩和感を市場が意識したことから、この日の原油価格は前日終値比で1バレル当たり1.90ドル下落し、終値は75.96ドルとなった。また、12月1日も、11月30日に開催されたOPECプラス産油国閣僚級会合において、一部産油国による自主的な追加減産実施が事実上決定したものの、公式な原油生産目標の引き下げではなかったことにより、OPECプラス産油国の結束と減産遵守に関し懐疑的な見方が市場で発生した流れを引き継いだことに加え、12月1日に米国石油サービス会社ベーカー・ヒューズ(Baker Hughes)から発表された同国石油坑井掘削装置稼働が同日時点で505基と前週比5基増加(同国石油水平坑井掘削装置稼働数は495基と同6基増加)している旨判明したことにより、この先の米国原油生産増加観測が市場で増大したことから、この日の原油価格の終値は1バレル当たり74.07ドルと前日終値比で1.89ドル下落した。

12月4日も、11月30日に開催されたOPECプラス産油国閣僚級会合において、一部産油国による自主的な追加減産実施が事実上決定したことに対し、OPECプラス産油国の結束と減産遵守に関し懐疑的な見方が市場で発生した流れを引き継いだことに加え、12月8日に米国労働省により発表される予定である同国雇用統計を控え、これまでの下落に対する利益確定のための米ドル買い戻しが発生したこともあり米ドルが上昇したことから、この日の原油価格は前週末終値比で1バレル当たり1.03ドル下落し、終値は73.04ドルとなった。また、2024年1月のアジア向け原油販売価格を2023年6月以来7ヶ月ぶりに引き下げる旨サウジアラビア国営石油会社サウジアラムコが明らかにしたと12月5日に伝えられたことにより、世界石油需要の伸びの鈍化観測が市場で発生したことに加え、12月5日に米国供給管理協会(ISM)から発表された11月の同国非製造業部門景況感指数(50が当該部門拡大と縮小の分岐点)が52.7と前月(51.8)から上昇した他市場の事前予想(52.0~52.3)を上回ったことにより、米国金融当局による金融引き締め局面終了期待が市場で後退したこともあり、米ドルが上昇したことから、この日の原油価格の終値は1バレル当たり72.32ドルと前日終値比で0.72ドル下落した。12月6日も、この日EIAから発表された米国石油統計(12月1日の週分)において、ガソリン在庫が前週比542万バレルの増加と市場の事前予想(同103~134万バレル程度の増加)を相当程度上回って増加している旨判明したことにより、同国ガソリン需給緩和感を市場が意識したこともあり、米国ガソリン先物相場が下落した(この日の終値は1ガロン当たり2.0302ドルと2021年12月3日(この日の終値は同1.9529ドル)以来の低水準となった)ことに加え、12月6日にドイツ連邦統計局から発表された10月の同国製造業受注が前月比で3.7%の減少と市場の事前予想(同0.2%の増加)に反し減少している旨判明したこともあり、欧州金融当局による政策金利引き下げ観測が市場で拡大したことによりユーロが下落した反面米ドルが上昇したことから、この日の原油価格は前日終値比で1バレル当たり2.94ドル下落し、終値は69.38ドルとなった。この結果原油価格は11月30日~12月6日の5取引日で1バレル当たり合計8.48ドル下落した。12月7日には、この日中国税関総署から発表された11月の同国原油輸入量が4,245万トン(推定日量1,036万バレル)と前月比で10.4%(日量ベース)、前年同月比で9.2%、それぞれ減少している旨判明したことにより、同国石油需要の伸びの鈍化懸念が市場で増大したことが、原油相場に下方圧力を加えた反面、これまでの原油価格下落に対し値頃感から原油を買い戻す動きが市場で発生したことに加え、経済及び金融情勢によっては日本のマイナス政策金利を解除することも排除されない旨日本銀行の植田総裁が12月7日の参議院財政金融委員会で示唆したと金融市場関係者間で受け取られたこともあり、日本円が上昇するとともに米ドルが下落したことが、原油相場に上方圧力を加えたことから、この日の原油価格は前日終値比で1バレル当たり0.04ドルの下落にとどまり、終値は69.34ドルとなった。ただ、この日の原油価格の終値は2023年6月23日(この日の終値は同69.16ドル)以来の低水準であった。また、これまでの下落に対し値頃感から原油を買い戻す動きは12月8日の市場にも引き継がれたことから、12月8日の原油価格の終値は1バレル当たり71.23ドルと前日終値比で1.89ドル上昇した。

12月11日も、これまでの下落に対し値頃感から原油を買い戻す動きが引き継がれたことに加え、米国において、2019年の730万人を超過し2000年の統計開始以降で最高水準となる750万人の旅行者が12月23日~1月1日の時期に空路で旅行する他、同時期1.152億人と2019年(1.193億人)以来の高水準となり2000年の統計開始以降で2番目に多い水準で個人が旅行に出かけるものと予想している旨12月11日に米国自動車協会(AAA)が明らかにしたことにより、年末に向け米国石油需要が盛り上がることに対する期待が市場で増大したことが、原油相場に上方圧力を加えた反面、12月9日に中国国家統計局から発表された11月の同国消費者物価指数(CPI)が前年同月比で0.5%の下落と2020年11月(この月は同0.5%の下落)以来の大幅な下落となった他、市場の事前予想(同0.1~0.2%の下落)を上回って下落している旨判明したうえ、11月の同国生産者物価指数(PPI)は同3.0%の下落と10月の同2.6%の下落から下落幅が拡大した他2022年10月以降14ヶ月連続前年同月比での下落となった旨判明したことが、原油相場に下方圧力を加えたことから、12月11日の原油価格は前週末終値比で1バレル当たり0.09ドルの上昇にとどまり、終値は71.32ドルとなった。12月12日には、この日米国労働省から発表された11月の同国CPIが前月比0.1%の上昇と10月の同横這いから上昇した他市場の事前予想(同横這い)を上回っている旨判明したことにより、米国金融当局による金融引き締め局面終了期待が市場で後退したことに加え、12月12日にEIAから発表された12月の短期エネルギー見通し(STEO: Short-term Energy Outlook)において、EIAが2024年の世界石油需要の伸びを11月見通し時点の日量140万バレルから同134万バレルへと下方修正したうえ、2024年の原油価格(WTI)見通しを11月時点の1バレル当たり89.24ドルから同78.07ドルへと引き下げたことにより、原油価格の先高感が市場で後退したことから、この日の原油価格の終値は1バレル当たり68.61ドルと前日終値比で2.71ドル下落した他、2023年6月27日(この日の終値は同67.70ドル)以来の低水準に到達した。しかしながら、12月13日には、この日EIAから発表された米国石油統計(12月8日の週分)において、原油在庫が前週比426万バレルの減少と市場の事前予想(同65~180万バレル程度の減少)を上回って減少している旨判明したことに加え、12月13日にOPEC事務局から発表された月刊オイル・マーケット・レポートでOPECが2024年の世界石油需要の増加量を前年比で日量225万バレルと11月13日時点の前回見通し時点から据え置いた旨判明したことにより、世界石油需要の伸びに対し楽観的な見方が市場で増大したこと、12月12~13日に開催された米国連邦公開市場委員会(FOMC)において、政策金利の据え置きが決定された一方、この先の同国の政策金利引き下げが視野に入りつつある旨同委員会開催後の記者会見でパウエルFRB議長が示唆するとともに、同委員会開催の際に明らかになった2024年末の政策金利見通しが4.6%と9月19~20日に開催されたFOMC時点の見通しである5.1%から下方修正され、2024年に3回の政策金利引き下げが実施される可能性がある旨示されたこともあり、米ドルが下落するとともに、米国経済成長加速期待が市場で増大したこともあり同国株式相場が上昇(この日同国ダウ工業株30種平均の終値は史上最高水準に到達)したこと、イエメン沖合の紅海においてケミカルタンカー(マーシャル船籍)が小型高速艇から銃撃を受けた他、米国海軍の駆逐艦「メイソン」がイエメンのフーシ派武装勢力から発射された無人機を迎撃した旨米国当局者が明らかにしたと12月13日に報じられたことにより、紅海を含む中東地域からの石油供給等に対する懸念が市場で増大したことから、この日の原油価格は前日終値比で1バレル当たり0.86ドル上昇し、終値は69.47ドルとなった。また、米国の政策金利引き下げが視野に入りつつある旨FOMC開催後の12月13日にパウエルFRB議長が示唆するとともに、同FOMC開催の際に明らかになった2024年末の政策金利見通しにおいて2024年に3回の政策金利引き下げが実施される可能性がある旨示された流れが12月14日の市場に引き継がれた一方、12月14日に開催された欧州中央銀行(ECB)理事会後の記者会見においてラガルドECB総裁が政策金利引き下げについては全く議論されなかった旨明らかにしたことによりユーロに上方圧力が加わったこともあり、米ドルが下落するとともに、米国経済成長加速期待が市場で増大したことに伴い米国株式相場が上昇(同国ダウ工業株30種平均のこの日の終値は史上最高水準を更新)したことから、この日の原油価格の終値は1バレル当たり71.58ドルと前日終値比で2.11ドル上昇した。この結果原油価格は12月13~14日の2日間で1バレル当たり合計2.97ドルの上昇となった。しかしながら、12月15日には、この日米国ニューヨーク連邦準備銀行から発表された12月のニューヨーク地区製造業景況感指数(ゼロが当該部門拡大と縮小の分岐点)がマイナス14.5と11月のプラス9.1から減少に転じた他市場の事前予想(プラス2.0)を下回ったことにより、米国経済減速と石油需要の伸びの鈍化懸念が市場で増大したことに加え、米国金融当局は政策金利引き下げについて議論しているという段階にまでは至っていない他、2024年3月の米国政策金利引き下げ(12月14日時点で2024年3月19~20日に開催される予定であるFOMCにおいて0.25%の政策金利引き下げが決定される確率が65%となっていた)について話をするのは時期尚早である旨12月15日にニューヨーク連邦準備銀行のウイリアムズ総裁が明らかにしたこともあり、当該政策金利引き下げに伴う米国経済成長加速と石油需要の伸びの拡大に対する市場の期待が後退したことから、この日の原油価格の終値は1バレル当たり71.43ドルと前日終値比で0.15ドル下落した。

 

4. 原油市場における主な注目点等

10月7日以来戦闘状態となっていたイスラエルとハマスとの間で、11月24日午前7時(現地時間)に当初4日間の予定で停戦を開始した。その後2回延長されるとともに、ハマスが拘束していた人質の一部が開放された。しかしながら、12月1日午前7時(同)を以て停戦が終了するとともにイスラエルはハマスに対する攻撃を再開した。他方、バブ・エル・マンデブ(Bab el-Mandeb)海峡付近でイスラエルの船舶2隻をそれぞれミサイル及び無人機で攻撃した旨12月3日にフーシ派武装勢力が発表した一方、紅海南部を航行していた商業船舶3隻が4件の攻撃を受けた旨12月3日に米国中央軍が発表した(死亡者及び負傷者は発生しなかったとされる)。このように、イスラエルを巡る情勢は不安定な状態ではあったものの、中東地域からの石油供給に直接的に大きな影響が発生しているわけでもなく、また、イエメンのフーシ派武装勢力により攻撃が試みられる対象となっている船舶はイスラエルが関与しているものに限られていたこともあり、船舶輸送に際しての保険料が上昇しているとは言われたものの、紅海及びスエズ運河を経由した船舶の往来はその後も継続した。しかしながら、イエメンとハマスの戦闘は終結したわけでもなく、紅海上空ではフーシ派武装勢力から発射された無人機やミサイル等が飛来し続けた。そして、12月9日にはフーシ派武装勢力がパレスチナ自治区ガザ地区に対し食料及び衣料品が供給されないのであれば、イスラエルに向かう船舶全てを攻撃対象とする旨宣言した。その後、バブ・エル・マンデブ海峡付近を航行していたノルウェー船籍のケミカルタンカー「ストリンダ(Strinda)」がフーシ派武装勢力の支配地域から発射された巡航ミサイルによる攻撃を受け炎上した(人的被害はないとされる)旨12月11日に米国が明らかにした。また、イエメン沖合の紅海においてケミカルタンカー(マーシャル船籍)が小型高速艇から銃撃を受けた他、米国海軍の駆逐艦「メイソン」がイエメンのフーシ派武装勢力から発射された無人機を迎撃した旨米国当局者が明らかにしたと12月13日に報じられた。さらに、12月15日にもイエメン沖合のバブ・エル・マンデブ海峡付近で2隻の船舶(双方ともリベリア船籍)がフーシ派武装勢力の支配地域から攻撃を受け、1隻にはミサイルが着弾した結果炎上した旨伝えられた他、紅海における船舶航行を巡る安全性の低下から海運大手マークス等が紅海経由での海上輸送を当面停止する旨12月15日に明らかにした。さらに、米国海軍の駆逐艦がイエメンのフーシ派武装勢力の支配地域から紅海に向け発射された無人機14機を、英国海軍の軍用艦が紅海において無人機1機を、それぞれ迎撃した旨それぞれ、米国中央軍及び英国海軍が明らかにした。このようなこともあり、今後も、例えば、ミサイルや無人機が船舶に命中することや迎撃されたミサイルや無人機の残骸が船舶に落下することを含め、紅海等を航行する船舶が攻撃され被害が発生する可能性があることにより、それまで紅海等を航行していたタンカーを含むより多くの船舶が被害を回避すべく紅海等への進入を敬遠するとともに迂回経路として喜望峰を経由するようになれば、そのような船舶が迂回することに伴い従来陸揚げ地点に到着ているはずの時点で石油が到着しないことにより一時的にせよ陸揚げ地点における石油供給に支障が発生する他、タンカーが石油を輸送する(つまりタンカーが使用中である)期間が長期化することにより、利用可能なタンカー供給が減少することを通じタンカー需給が引き締まることにより、船舶運賃が上昇したり、円滑な石油供給が行なわれにくくなったりすることにより、遠隔地から供給される石油の代替として短中距離に位置する産油国等から供給される石油への需要が高まるなど、石油市場が混乱するとともに石油製品及び原油相場に上方圧力が加わる可能性があるので注意する必要があろう。

また、10月17日以降イラク及びシリアにおける米軍駐留基地等が攻撃される(親イラン武装勢力によるものであるとの指摘もある)ようになったことに対し、米軍はシリアにある親イラン武装勢力の関連施設等を空爆している。今後もイスラエルとハマスの対立が強まるとともに、それがイスラエル、イスラエルを支援する米国、及びイスラエルとの外交関係改善に向かいつつあったサウジアラビアと、ハマス、ハマスを支援するとされるイラン、同じくイランが支援するとされるレバノンの武装勢力ヒズボラ、イエメンのフーシ派武装勢力、及びイラクやシリア等を拠点とする親イラン武装勢力等との間での対立が先鋭化することにより、前述の通り紅海等における船舶の航行上の安全が脅かされる可能性がある他、2023年3月10日に発表されたサウジアラビアとイランとの間での外交関係正常化の合意(サウジアラビアが2016年1月2日にテロ行為に関与した等の理由によりイスラム教シーア派指導者ニムル師の処刑を執行したことに対し、イランでデモ隊が抗議行動として在テヘランサウジアラビア大使館を襲撃したことから両国は2016年1月3日以降断交状態となっていた)後、それまでサウジアラビアが支援するハディ暫定大統領派勢力とフーシ派武装勢力との間で内戦状態となっていたイエメンで両勢力間での和平の機運が相対的に高まりつつあったものの、再びハディ暫定大統領派勢力とフーシ派武装勢力との間で内戦状態に戻るとともに、フーシ派武装勢力によりサウジアラビアの石油関連施設へミサイルや無人機等が発射される結果、サウジアラビアからの石油供給に支障が発生したり、イランがホルムズ海峡(2018年時点で原油及びコンデンセート日量1,730万バレル、石油製品同330万バレル、合計同2,070万バレル相当分の石油を積載したタンカーが通過する)を封鎖したりする結果、相当量の石油供給が途絶する恐れがあるとの懸念が増大したりする(カーグ島を含めイランの主力石油積出港がホルムズ海峡内のペルシャ湾岸地帯に位置することもあり、イランが同海峡を封鎖する確率は高くないとは認識されているが、実際封鎖された場合世界石油需要の20%程度が影響を受けるなどするため、市場では懸念が発生しやすい)ことにより、原油価格が影響を受けるといった展開となる可能性は残っているので、注意する必要があろう。

他方、国際的な監視の下で2024年後半に公正な大統領選挙を実施することで、10月17日にベネズエラのマドゥロ政権と同政権に反対してきた野党勢力が合意したことを受け、米国バイデン政権がベネズエラ石油部門に対する制裁を緩和した(半年間に渡り同国石油・天然ガス部門における取引を許可する他同国国営石油会社PDVSAの株式や社債の取引の禁止を解除することが含まれる)旨10月18日午後遅く(米国東部時間)に米国財務省が発表した。しかしながら、10月22日に野党側の大統領予備選挙が実施された結果マチャド(Machado)元国会議員が選出されたものの、10月30日にベネズエラ最高裁判所(マドゥロ大統領に近いとされる)が、この予備選挙で不正行為があったとしたうえで、結果の効力を停止する旨発表した他、米国が求めているベネズエラ当局に拘束されている米国籍の個人や政治犯の解放に対しベネズエラの対応が遅いことから、米国はベネズエラに対する制裁を再び強化する構えを見せている。さらに、ベネズエラは隣国のガイアナの北部にある「エセキボ(Essequibo)地域」(ガイアナの国土の7割程度を占める)(国際的な仲裁裁定を通じ1899年に同地域はガイアナ(当時は英領)の領有であるものと認定されたが、ベネズエラはその裁定に不正があった旨主張している)とともに、現在エクソンモービル等が原油生産を実施しているリザ(Liza)油田等を含むガイアナ沖合鉱区の大部分がベネズエラ領に属する旨主張しているとされる。ベネズエラは12月3日に国民投票を実施し同地域がベネズエラ領であることに対し国民の賛否を問う方針である旨明らかにしたと11月29日に伝えられたが、実際に12月3日に国民投票が実施され、賛成が90%超を占めた旨ベネズエラ選挙管理当局が同日宣言した。そして、ベネズエラのマドゥロ大統領は、エセキボ地域において鉱区を設定するよう国営石油会社等に指示するとともに、同地域で事業を実施する外国石油会社に対し3ヶ月以内に撤退するよう要求した旨12月3日に伝えられた。他方、12月14日にはベネズエラのマドゥロ大統領とガイアナのアリ(Ali)大統領の両首脳が本件に関し会談を行なったうえ、協議を継続する他事態の深刻化を回避することで合意した。ただ、アリ大統領は本件につき「国際司法裁判所(ICJ: International Court of Justice)」を通じた解決を希望しているのに対し、マドゥロ大統領はICJを通じた解決を拒否していると伝えられているなど、ベネズエラとガイアナを巡る緊張がこの先低下するかどうかを巡っては不透明感が漂っており、今後さらに両国による対立の高まりから、ガイアナ沖合鉱区における原油生産、出荷及び輸送に影響を及ぼすことにより、同地域からの石油供給に支障が発生することに対する懸念が市場で増大する結果、原油相場に上方圧力を加えるといった展開となることもありうるので注意する必要があろう。

11月30日に中国国家統計局から発表された11月の同国製造業購買担当者指数(PMI)(50が当該部門拡大と縮小の分岐点)は49.4と10月の49.5から低下した他市場の事前予想(49.7~49.8)を下回ったうえ、11月の同国非製造業PMIも50.2と10月の50.6から低下した他市場の事前予想(50.9)を下回った。また、中国の信用格付け見通しを従来の「安定的」から「弱含み」へと引き下げる旨12月5日に米国格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスが明らかにした。さらに、12月7日に中国税関総署から発表された11月の同国輸出(米ドル建)は前年同月比で0.5%増加と2023年4月(この月は同7.6%の増加)以来の増加となっていた他、市場の事前予想(同0.0~1.1%程度の減少)に反し増加していた一方、輸入(同)が同0.6%の減少と10月の同3.0%の増加から減少に転じた他市場の事前予想(同3.3~3.9%程度の増加)に反し減少している旨判明するなど、まちまちであったものの、併せて発表された11月の同国原油輸入量が4,245万トン(推定日量1,036万バレル)と前月比で10.4%(日量ベース)、前年同月比で9.2%、それぞれ減少していたことにより、同国石油需要の伸びの鈍化懸念が市場で増大した。さらに、12月9日に中国国家統計局から発表された11月の中国消費者物価指数(CPI)は前年同月比で0.5%の下落と2020年11月(この月は同0.5%の下落)以来の大幅な下落となった他、市場の事前予想(同0.1~0.2%の下落)を上回って下落している旨判明したうえ、11月の同国生産者物価指数(PPI)も同3.0%の下落と10月の同2.6%の下落から下落幅が拡大した他2022年10月以降14ヶ月連続前年同月比での下落となった旨判明した。また、12月15日に中国国家統計局から発表された11月の同国鉱工業生産は前年同月比で6.6%の増加と10月の同4.6%の増加から伸びが拡大した他市場の事前予想(同5.6~5.7%の増加)を上回った一方、11月の小売売上高は同10.1%の増加と10月の同7.6%から伸びが拡大したものの市場の事前予想(同12.5%の増加)を下回ったうえ、11月の同国製油所の原油精製処理量は5,953万トン(推定日量1,452万バレル)と10月の6,393万トン(同1,509万バレル)から減少した他前年同月(5,961万トン(同1,454万バレル)を下回った。このように、各種指標類から示唆される中国の経済回復や石油需要の伸びの展望は不安定な状態となっている。12月11~12日には中国経済工作会議が開催されており、2024年の同国経済成長目標を2023年と同水準である5.0%程度に設定する方向となった旨12月15日に伝えられた一方、必要に応じて追加支出を行なう余地はあるものの、2024年の財政赤字は国内総生産の3.0%以内とするなど、2023年の同3.8%以内(従来の同3.0%が同3.8%に引き上げられた旨10月24日に同国国営新華社通信から報じられていた)から引き下げられているとされる。また、12月12日に報じられたところでは、同会議において不動産業に対する支援を拡大する方針が示されたことを含め2024年の経済回復を支援するために積極的に政策を調整していくことが示唆されているものの、大規模景気刺激策の具体的内容に関する言及はなされなかったことから、市場関係者による同国経済回復を巡る懸念は払拭出来ない状態となっている。このため、今後は中国による2024年に向けた大規模景気刺激策等の発表や当該政策を巡る動きや兆候の発生を市場は待つことになろうが、景気刺激策の発表等がなされない中で、同国経済回復が不安定なままである旨同国経済指標類が示唆し続けるようだと、2024年の世界石油需要の伸びの69%程度を占めるとされる中国石油需要の伸びの鈍化観測が市場で強まることにより、世界石油需要の増加が下振れするとの見方が広がるとともに石油需給緩和感を市場が意識する結果、原油相場に下方圧力が加わることもありうる。

12月12~13日には米国連邦公開市場委員会(FOMC)が開催され、政策金利を5.25~5.50%で据え置くことを決定した。ただ、併せて、FOMC開催後の12月12日には、同国の政策金利引き下げが視野に入りつつある旨パウエルFRB議長が示唆するとともに、同委員会開催の際に明らかになった2024年末の政策金利見通しが4.6%と9月19~20日に開催されたFOMC時点の見通しである5.1%から下方修正され、2024年に3回の政策金利引き下げが実施される可能性がある旨示された。ただ、米国金融当局は政策金利引き下げについて議論しているという程度の状況ではない他、2024年3月の米国政策金利引き下げ(12月14日時点で2024年3月19~20日に開催される予定であるFOMCにおいて0.25%の政策金利引き下げが行なわれる確率が65%となっていた)について話をするのは時期尚早である旨12月15日にニューヨーク連邦準備銀行のウイリアムズ総裁が明らかにした。また、米国アトランタ連邦準備銀行のボスティック総裁も現在の予想通りに物価上昇が沈静化するのであれば政策金利引き下げは2024年第3四半期に実施される可能性があるとの見解を12月15日に明らかにしたこと。それでも、米国シカゴ連邦準備銀行のグールズビー総裁は2024年3月の政策金利引き下げを否定しない旨示唆したと、12月15日にウォール・ストリート・ジャーナルが報ずるなど、米国金融当局による政策金利引き下げに関しては、関係者間でも意見が分かれている旨明らかになっている。ただ、これまで政策金利引き下げに対しては慎重な姿勢を示していたパウエルFRB議長が政策金利引き下げに言及するなどしたことにより、米国金融当局による金融政策が転換点を迎えたと受け取る市場関係者は多く、金融引き締め局面終了と緩和局面開始に対する期待が市場で強まりやすい状態となりつつあり、この結果、米ドルが下落するととともに、政策金利引き上げ等により米国の経済成長が加速するとの観測が市場で増大することにより、以前に比べこの面では原油相場に上方圧力を加えやすい状態になるものと考えられる。また、2024年1月中旬頃以降、主要米国企業等の2023年10~12月期等の業績及び今後の業績見通し等が明らかになる予定であり、その結果が株式相場に織り込まれるとともに原油相場が変動する場面が見られることもありうる。

北半球では既に冬場の暖房シーズンに突入しているが、これに併せ、暖房用石油製品需要が拡大、製油所も秋場のメンテナンス作業を終了し稼働を上昇、原油精製処理量を増加させるとともに原油購入を活発化させるとの観測が市場で増大しやすくなっており、この面でこの先も暖房用石油製品価格とともに原油相場を下支えする格好となるものと考えられる。そして、米国の暖房油消費の中心地である北東部を含め北半球の主要暖房用石油製品消費地域における気温や気温予報に対して市場関係者は敏感に反応するものと見られ、足元の気温が低下したり、気温が低下するとの予報が発表されたりするようだと、需給の引き締まり感が市場で強まる結果、暖房油価格が上昇、それに引きずられて原油価格に上方圧力が加わる可能性がある。

なお、12月末にかけ、米国メキシコ湾岸の主要製油所に通じるヒューストン運河(Houston Ship Channel)等において発生する濃霧の影響で原油輸送タンカーの航行にしばしば支障が生じることにより当該製油所への原油供給が影響を受けるとともに原油在庫の積み上げが鈍化することがありうる他、米国のテキサス州やルイジアナ州では年末の石油在庫評価額に対して固定資産税等が課税されることから、課税額を低減させるために精製業者等は必要以上の陸上在庫保有を敬遠することにより原油在庫が相当程度減少する場面が見られる可能性がある(もっとも、その間原油は沖合に停泊するタンカーに貯蔵されていると言われている)。このようなことから、年末にかけ発表される米国石油統計では、特にメキシコ湾岸地域での原油在庫等が相当程度減少傾向を示すことにより、これが市場で石油需給の引き締まりの兆候と受け取られ、原油価格が上振れする可能性もある(ただ、1月以降は製油所等での原油等の受入が再開される(沖合で停泊していた原油貯蔵タンカーが接岸し陸上タンクへと原油を送出し始める)ことから、反動で相当程度の原油在庫増加が見られる結果、原油相場が押し下げられる場面が見られることもありうる)。

11月30日に開催されたOPECプラス産油国閣僚級会合においては、前半を中心として供給が需要を上回ることが予想される2024年に向け、相対的に強制力が強いものと見込まれるOPECプラス産油国全体への公式な原油生産目標引き下げ(減産強化)が講じられず、各産油国の自主性に委ねられる自主的な追加減産という形での決着となったことから、今後実際にどの程度各産油国が表明した減産を実施できるかにつき市場関係者が確信を持ちにくい状態となっている。実際、2023年10月時点では、イラクやUAEが、現在実施されている公式減産措置に自主的な追加減産を加味した原油生産目標を超過している旨判明している(表4参照)。今後も、今回定められた自主的な追加減産を併せた原油生産目標を超過する産油国が出てくるようだと、当初企図した通りには世界石油需給が引き締まらないとの観測が市場で広がる結果、原油相場が下振れしやすくなるものとも見られる。また、2023年1月より実施されるOPECプラス産油国の自主的な追加減産の遵守状況が部分的にせよ明らかになるのは、早くても1月末前後となることから、それまでは、市場関係者の心理においてはOPECプラス産油国による減産遵守に対する不安感がつきまとうことになることから、この面で原油相場が抑制されることもありうる。

 

表4 OPECプラス産油国の減産遵守状況(2023年11月29日現在)(単位:日量千バレル)

さらに、中東、ロシア及びベネズエラ等を巡る情勢、中国や欧米諸国の経済情勢等を含め、2024年において世界石油市場に影響を与えうる要因が複数存在する。このため、このような要因の影響により2024年の世界石油需給バランスが今回のOPECプラス産油国による減産強化に伴い想定されるシナリオから乖離するとともに、その乖離が石油市場関係者の心理に織り込まれる結果原油価格が上昇、もしくは下落するといったリスクを抱えているものと考えられる。そして、そのようなリスクに対し、投機筋による原油先物契約の空売りの勢いが拡大する結果原油価格の下落が加速することにより、その時点でOPECプラス産油国が減産強化等を用いて石油市場に介入しようとしても既に原油相場が制御不能の事態に陥っている可能性があることから、そうなる前の段階である、原油価格の下落が継続する結果例えば1バレル当たり70ドルを割り込みつつあるような場合、あるいは原油価格は1バレル当たり70ドルを相当程度上回ってはいるものの急落する兆候を示しているような場合には、OPECプラス産油国は、予防的かつ先制的に、原油価格の下落を防止すべく行動する可能性があるものと考えられる。そしてその場合、OPECプラス産油国は、まずは自主的なものを含め追加減産の実施可能性等につき警告を発し(いわゆる口先介入を行ない)、それでも原油価格の下落が抑制されない場合には、次回のOPECプラス産油国閣僚級会合、ないしは緊急を要する場合には、次回の閣僚級会合の開催を待たずして、OPECプラス産油国共同閣僚監視委員会(JMMC: Joint Ministerial Monitoring Committee、約2ヶ月に1回の割合で開催され、原油生産方針につき進言を行う等する他、必要に応じて石油市場の展開に対処するために、いつ何時でも追加会合を開催したり、OPECプラス産油国閣僚級会合の開催を要請したりする権限を持つ)開催の機会を捉えるか、もしくは臨時の閣僚級会合を開催するなどして、実際に追加減産を検討したりするものと見られる。反面、原油価格が上昇した場合には、それが実際に足元の石油需給の引き締まりの証拠を伴うものであれば、OPECプラス産油国は直ちに減産の緩和を決定することもありうるが、原油価格の上昇が、市場の石油需給引き締まり懸念によるものである様相を呈しており、足元の実際の石油需給引き締まりの証拠を伴ったものであるとの判断が困難な状況では、OPECプラス産油国はそのような証拠が入手できるまで様子見となる結果、原油価格の上昇局面が長引くといった展開となることもありうる。例えば、イスラエルとハマスの戦闘が激化するとともに、関係者(米国、欧州、サウジアラビア、イラン、レバノン武装勢力ヒズボラ、イエメン武装勢力フーシ派等)間での対立が高まったり、ロシアのウクライナへの事実上の侵攻に対し、西側諸国等が対ロシア制裁を強化したりすることにより、中東湾岸諸国等の原油生産、ペルシャ湾及び紅海等を通過するタンカーによる石油輸送、もしくはロシア原油輸出等に影響が及ぶとの懸念等が市場で増大するようであれば、原油価格が上昇する可能性があるが、その場合でも原油相場の上昇が石油市場関係者の懸念に伴うものであり、実際の供給途絶等による需給の引き締まりに伴うものでなければ、減産を緩和等することによりかえって石油供給過剰感を市場で増大させる結果原油価格の急落を招く恐れがあることを懸念するOPECプラス産油国は減産緩和に対し消極的な姿勢(「(石油供給が脅かされていても)足元石油供給が途絶していないので減産を緩和する必要はない」等の主張を行なう)を示す結果、原油価格が上昇し続ける、ないしは高水準を維持すると言った展開となることもありうる。

他方、今回の閣僚級会合においては、OPECプラス産油国間での意見の相違を容易に解消できないなど、産油国間の結束の乱れが露呈する格好となった。今後、このような結束の乱れが拡大する結果、2024年第2四半期以降の公式原油生産目標の設定や自主的な追加減産方針等の決定等にOPECプラス産油国が苦慮するのではないかとの観測も市場で発生しやすくなる結果、この面で原油相場が抑制されやすくなるものと考えられる。また、OPECプラス産油国が減産を一層強化しなければならない場面に遭遇することもありうる。例えば、11月13日にEIAから発表された「掘削生産性報告(DRP: Drilling Productivity Report)」では、同国主要7シェール地域における原油生産量は2023年11~12月に前月比で日量1,200~4,100バレル程度減少するとの見通しが明らかになった。しかしながら、2023年8月14日に発表されたDPRでは同年9月の当該生産量は日量941万バレル(そして前月比日量1.9万バレル減少、2022年12月比では日量62万バレル増加)と見込まれていたが、11月13日に発表された最新のDPRによれば同月の原油生産量は日量965万バレル(そして前月比で日量1.6万バレルの増加、2022年12月比では同79万バレル増加)となるなど、当該原油生産量は当初見込みよりも上方修正される傾向が認められる。このようなことから、現在予想される2024年の米国原油生産が時間の経過とともに上振れする結果、非OPEC産油国の原油生産もその分だけ押し上げられることに伴い、世界石油需給の緩和感が市場で増大することにより、原油相場に下方圧力を加える可能性も否定できない。また、これまで(西側諸国等による制裁に伴うロシアからの石油供給等の制約への影響を緩和すべく)米国はイランに対し制裁の運用を事実上緩和する格好とすることで、2022年9月に日量248万バレルであったイランの原油生産量は2023年9月には同314バレルへと日量70万バレル弱増加した。今後も、イランの原油生産が増加を持続する(既にイランの原油生産量が日量340万バレルに到達した旨イランのオウジ(Owji)石油相が明らかにしたと2023年11月1日に報じられたうえ、2024年3月20日までに同国の原油生産量が同360万バレルに、さらに同日から開始されるイランの次年度中には同400万バレルの原油生産量を目指す旨2023年11月21日に同石油相は明らかにしている)。そして、このような事態に直面した際においても、OPECプラス産油国が、相対的に拘束力が強いと市場から見做される公式な原油生産目標の引き下げ(減産強化)が困難であることにより一部産油国による自主的な減産措置の設定にとどまったりしたうえ、遵守率が芳しくなかったりするなどすれば、石油需給緩和観測が市場で強まる結果、原油相場に下方圧力が加わると言った展開にならないとも限らないことにも注意する必要があろう。ただ、原油価格下落がOPECプラス産油国の各産油国にとって前向きな結果をもたらさない旨各産油国が認識するとともに、公式な原油生産目標の引き下げ実施に向けた動きの兆候や実際の動きが見られるようであれば、OPECプラス産油国間の結束向上とこの先の石油需給引き締まり観測が市場で強まる結果、原油相場が持ち直すと言った展開となることもありうる。

全体としては、既に北半球では冬場の暖房用燃料需要期に突入していることから、季節的な石油需給の引き締まり感が市場で意識されやすく、この面では原油相場が下支えされる他、気温が低下したり低下するとの予報が発表されたりするようであれば、原油相場に上方圧力が加わる場面が見られることもありうる。また、米国金融当局による金融引き締め局面終了期待が市場で増大しやすいことから原油価格が上振れする可能性もある。他方、OPECプラス産油国の結束及び遵守に対して疑問視する見方が市場で根強く続くことが原油相場をもたつかせる他、中国経済の不安定な回復状況から原油相場に下方圧力が加わる場面が見られることもありうる。そのような中、紅海等における船舶攻撃等中東情勢を含む地政学的リスク要因や米国原油在庫の動向等が原油相場に影響を及ぼしうるものと考えられる。

 

以上

(この報告は2023年12月18日時点のものです)

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