ページ番号1009991 更新日 令和5年12月27日
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概要
ブラジル国家石油庁(ANP)は2023年12月13日にプレソルトエリアの内外を対象としてOpen Acreage方式の鉱区入札を実施した。
プレソルトエリア外の鉱区を対象とした入札は、落札鉱区数、サインボーナス、参加企業数等いずれも過去のOpen Acreage方式の入札の中で最高の結果となった。特に関心を集めたのは南部Pelotas Basinで、PetrobrasやChevronが44の鉱区を落札した。Pelotas Basinではまだ十分に探鉱が行われていないが、大西洋を隔てたナミビア沖のOrange Basinでの探鉱結果が良好であることが、Pelotas Basinでの探鉱の見通しを楽観的なものにしたと考えられる。ANPが、企業が入札に参加しやすくなるように探鉱期間中の最低作業義務を変更したことも良好な入札結果を生んだ一因と考えられる。
プレソルトエリア内を対象とする入札は、BPが唯一札を入れ、Tupinambá鉱区をサインボーナス141万ドル、政府引取利益原油の割合6.5%、最低投資額6,400万ドルで落札するという、低調な結果に終わった。
ナミビア沖Orange Basinで探鉱成果が上がっていることを受けて、ブラジルに限らず、ウルグアイやアルゼンチンでも探鉱が活性化する模様だ。
ブラジル国家石油庁(ANP)は2023年12月13日にプレソルトエリアの内外を対象としてOpen Acreage方式の鉱区入札を実施した。
プレソルトエリア外についてOpen Acreage方式の鉱区入札が実施されるのは今回が4回目で、955の探鉱鉱区と成熟エリアJapiimを対象に入札が実施された。
このうち、沖合鉱区は561鉱区であったが、7社が48の鉱区を落札した。サインボーナスの額は合計で8,120万ドルであった。
落札された48鉱区中44鉱区がブラジル南部Pelotas Basinの鉱区であった。
Santos Basinとの境界に近いPelotas Basin北部の鉱区にはChevronのみが関心を示し、入札を行った9鉱区全てを落札した。
Pelotas Basin南部では、ChevronとPetrobrasがオペレーターを務める2つのコンソーシアム[1]が7つの鉱区で競った。Petrobrasがオペレーターを務めるコンソーシアムは、7鉱区全てでChevronに競り勝ち、鉱区を取得した。Chevronは、Pelotas Basin南部のその他の6鉱区を落札し、Pelotas Basin全体で合計15の鉱区を獲得、ブラジルでの探鉱・開発の足場を固めた。Chevronのサインボーナスは総額で2,530万ドルであった。

(出所:各種資料を基にJOGMEC作成)
沖合では他に、Santos Basinで、Karoonが2鉱区、Equinorが1鉱区、CNOOCが1鉱区を落札した。
このうち、Equinorが落札したSS-UAP5セクターのBlock S-M-1378については、サインボーナスが1,250万ドルともっとも高額で、加えて、Equinorは5年間の探鉱期間中に最低作業義務として2,200万ドル近くを投じるという。
陸上については、9社が6堆積盆地の合計140の鉱区を落札した。サインボーナスは合計で344万ドルとなった。
今回の入札で最多となる122の陸上鉱区を落札したElysian Petroleumは、2023年8月に設立されたMinas Gerais州の企業で、起業家のErnani Machado氏が所有している。石油分野での経験がないことが懸念されている。
成熟エリアJapiimは、Amazonas、Maranhaoに資産を保有する国内最大級の陸上オペレーターであるEnevaに付与されることとなった。
今回のプレソルトエリア外の鉱区を対象としたOpen Acreage方式の入札は、過去の入札に比べ、落札鉱区数、サインボーナスの金額、参加企業数のいずれを取っても多く、過去最高の結果となった(表1)。
このような好結果を生んだ背景には、Pelotas Basinでの探鉱への期待の高まりがあると考えられる。Pelotas Basinではまだ十分に探鉱が行われていないが、大西洋を隔てたナミビア沖のOrange Basinでは、TotalEnergiesやShellが大規模な原油の埋蔵を確認し、開発に向けて取り組んでいる。Orange Basinでの油田発見がPelotas Basinでの探鉱の見通しを楽観的なものにしたと考えられる。
また、企業が入札に参加しやすくなるように、ANPが試掘井掘削義務を免除する等、探鉱期間中の最低作業義務を変更したことも、活発な入札が行われた理由と考えられる。
実施日 | 落札鉱区数 |
サインボーナス |
入札企業 | 落札企業 | ||
陸上探鉱 | 沖合探鉱 | 成熟エリア | ||||
2019/9/10 | 30 | 3 | 12 | 400万ドル | 10 | 10 |
2020/12/4 | 16 | 1 | 1 |
600万ドル |
7 | 7 |
2022/4/13 | 50 | 8 | 0 | 8,200万ドル | 14 | 13 |
2023/12/13 | 140 | 48 | 1 | 8,500万ドル | 17 | 15 |
(出所:各種資料を基にJOGMEC作成)
プレソルトエリア内については5鉱区が対象とされた。Petrobrasは今回、入札への参加を見送り、事前に入札への参加を認められていたPetronas、Chevron、QatarEnergy、Shell、TotalEnergiesはいずれも入札を行わなかった。その結果、BPが唯一の入札企業となり、Tupinambá鉱区をサインボーナス141万ドル、政府引取利益原油の割合6.5%、最低投資額6,400万ドルで落札した。2022年12月16日に行われた前回のプレソルトエリア内を対象とした初のOpen Acreage方式の入札では、対象11鉱区中4鉱区に6件の入札があり、合計でサインボーナスは1億7,300万ドル、最低投資額は7,800万ドルであり、プレソルトエリア内を対象とした今回の入札は低調であったことが見て取れる。
プレソルトエリア内を対象としたOpen Acreage方式の入札への関心の低さを懸念して、ANPは次回の入札で対象鉱区に含む予定の4鉱区Calcita、Hematita、Malaquita、Opalaについて評価を始めた。また、プレソルトエリアを設定し、その内側の鉱区についてはPS契約を締結することとなっている現在の法制について再検討を求める声も高まっているという。
なお、プレソルトエリア外の鉱区についてはコンセッション契約、プレソルトエリア内の鉱区についてはPS契約が締結される。
ブラジル南部沖合での探鉱・開発への石油会社の関心の高まりは、2022年4月13日に行われた前回のプレソルトエリア外を対象としたOpen Acreage方式の入札でも見られた。Shell/EcopetrolのコンソーシアムとTotalEnergiesがSantos Basin南部の6つの鉱区で競合し、Shell/Ecopetrolが4鉱区を、TotalEnergiesが2鉱区を落札、Shell/Ecopetrolはこれらの鉱区とは別に2鉱区を競合他社からのオファーなしに落札している。今回の入札では、この傾向がより鮮明に表れたといえよう。2023年初めにPelotas basinを対象として隣国ウルグアが実施した入札でも、ShellやYPFが沖合鉱区を落札、さらに、アルゼンチンでもEquinorやYPFが、2024年初めに北部沖合のBlock CAN-100で試掘井を掘削する準備を進めており、ブラジルにとどまらずこの地域全体として探鉱が活性化する模様だ。
[1]Petrobras(権益保有比率70%)/Shell(同30%)のコンソーシアムとPetrobras(同50%)/Shell(同30%)/CNOOC(同20%)のコンソーシアム。
以上
(この報告は2023年12月26日時点のものです)