ページ番号1010109 更新日 令和6年4月26日

米国、ベネズエラ石油産業に対する制裁緩和措置を更新せず ベネズエラの原油生産の伸び鈍化?

レポート属性
レポートID 1010109
作成日 2024-04-26 00:00:00 +0900
更新日 2024-04-26 15:10:52 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 探鉱開発基礎情報
著者 舩木 弥和子
著者直接入力
年度 2024
Vol
No
ページ数 4
抽出データ
地域1 中南米
国1 ベネズエラ
地域2
国2
地域3
国3
地域4
国4
地域5
国5
地域6
国6
地域7
国7
地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 中南米,ベネズエラ
2024/04/26 舩木 弥和子

(石油・天然ガス資源情報「米国制裁一時解除も、ベネズエラの急激な原油生産増は期待薄」続報
https://oilgas-info.jogmec.go.jp/info_reports/1009585/1009958.html

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概要

  1. 米国財務省外国資産管理局(Department of the Treasury’s Office of Foreign Assets Control:OFAC)は、ベネズエラに対する経済制裁の緩和措置を認めた一般許可証44号(General License No. 44:GL44)を、2024年4月18日の期限後は延長しないこととした。ベネズエラの石油・ガス部門の事業に関連する取引を行っている企業に対しては、45日間の事業縮小期間を設け、この間に事業を縮小し、終了するよう定めたGL44Aを発効した。一方、ベネズエラでの事業継続を希望する企業は個別にライセンスを申請することとなった。Chevron等、GL44とは別にライセンスを取得している企業は、新たなライセンスを取得する必要はなく、PDVSAとジョイント・ベンチャーを組み事業を継続することができる。
  2. GL44が発効された2023年10月以降、ベネズエラには米国メキシコ湾岸からナフサが輸入されるようになり、その結果、ベネズエラの原油生産量は着実な増加を見せてきた。GL44が延長されていた場合に比べれば、今後、ベネズエラの原油生産量の伸びは鈍化すると考えられる。ただし、Chevron等の企業はGL44とは別のライセンスを維持し、原油生産を続けたり、増産を試みたりすると考えられることから、2024年末にかけてベネズエラの原油生産量は現状維持から微増となると見る向きが多い。

 

1. 米国、ベネズエラの石油・ガス産業に対する制裁緩和措置を更新せず

米国は2024年4月17日、ベネズエラの石油・ガス産業に対する制裁の緩和措置を同月18日の期限後は延長しないと発表した。

ベネズエラのMaduro政権と野党の国会議員で構成された政治同盟Plataforma Unitaria(PU)の代表は、2023年10月17日、次期大統領選挙を2024年末までに自由で公正に実施するとするバルバドス協定に署名した。これを受けて、米国財務省外国資産管理局(Department of the Treasury’s Office of Foreign Assets Control:OFAC)は、翌18日に一般許可証44号(General License No. 44:GL44)を発効し、ベネズエラに対する既存の経済制裁を緩和した。これにより、2024年4月18日までの6ヶ月間、ベネズエラの石油・ガスの生産、販売、輸出、および関連商品とサービスの供給、石油・ガス部門運営に関連する商品およびサービスの請求書の支払い、債務返済の一環として、政府やベネズエラの国営石油会社PDVSAの債権者へのベネズエラからの石油およびガスの輸送、石油・ガス部門への新たな投資、封鎖されているベネズエラ中央銀行やベネズエラ銀行等一部の銀行との取引が許可された。

しかし、Maduro政権は、予備選挙で野党の大統領候補に選出されたMaría Corina Machado氏を公職から追放したり、Machado氏が指名した代替候補者Corina Yoris氏の登録を許可しなかったりと、バルバドス協定の内容を守らなかったことから、4月18日の期限切れ後の制裁緩和措置の行方が懸念されていた。

米国当局者は4月9日にメキシコでMaduro政権のメンバーと会談を行い、7月28日に実施されることとなったベネズエラ大統領選挙の条件について話し合った。会談の詳細は公表されなかったが、会談に詳しい情報筋によると、意見の相違を縮めるための進展はほとんどなかったという。

4月15日には、米国国務省報道官が、Maduro大統領が自由で公正な選挙へのコミットメントについて進展を示さない限り、米国はGL44を更新しないと発表した。

そして、米国は、ベネズエラはバルバドス協定の一部を実行に移したが、いくつかの分野では協定は履行されていないと判断し、4月17日にBiden大統領はGL44の更新を見送り、ベネズエラへの制裁を再開すると発表した。

OFACはGL44の代わりにGL44Aを発効し、ベネズエラの石油・ガス部門の事業に関連する取引について、2024年5月31日まで、45日間の事業縮小期間を設け、この間に事業を縮小し、終了するよう猶予を与えた。

GL44は更新されないこととなったが、ベネズエラの石油・ガス部門での事業継続を希望する企業は、個別にライセンスを申請できることとなった。この申請については、ケースバイケースで評価され、許可が与えられることになるという。

GL44Aは、Chevronに対してベネズエラでの操業を認めたGL41やサービス会社Halliburton、Weatherford、Baker Hughes、Schlumbergerに対して操業を認めたGL8Mを含む他の既存の許可には影響を及ぼさないとされている。したがって、これら2022年にベネズエラで操業するためのライセンスを取得した企業については、新たなライセンスを取得することなく、PDVSAとのジョイント・ベンチャーで事業を継続することが可能となる。

米政府関係者は、ライセンスを申請すると考えられる企業やその企業数については明らかにしていないが、GL44に基づいて新たにベネズエラに参入を試みていた企業よりは、すでにベネズエラに資産や拠点を保有し、事業を展開している企業が優先されるのではないかとの見方がある。また、GL41ではChevronに対して原油輸出は全て米国向けにすることを義務付けていたことから、米国へ原油を供給することが含まれる申請については、優先的にライセンスが発効される可能性があるのではないかと見る向きがある。ベネズエラから債務の回収を試みる内容の申請についても、ベネズエラに原油輸出による収入が入らないことから、ライセンスが発効される可能性があるとの見る向きがある。他にも、米国の商品やサービスを調達する等、米国の戦略的利益と合致するような申請については、許可が得やすいのではないかとの見方がある。

 

2. 最近のベネズエラの原油生産状況と今後の見通し

ベネズエラの原油生産量は2022年に入ってから日量70万バレル前後で推移していたが、OFACがベネズエラに対する経済制裁を一部緩和し、Chevronにベネズエラでの原油と石油製品の生産を許可し、米国から希釈剤が輸入されるようになったことで、わずかではあるが増加し、2023年4月以降は日量80万バレル前後で推移していた。GL44が発効された2023年10月以降は、10月が日量78万バレル、11月と12月が日量80万バレル、2024年1月が日量83万バレル、2月と3月が日量86万バレルと、同国の原油生産量は、さらに、着実な増加を見せている。

GL44が発効されたことで、米国メキシコ湾岸からナフサが輸入されるようになり、これを希釈剤として利用することで、Orinoco Oil Belt(OOB)の原油生産量が2023年第4四半期に比べ、2024年第1四半期は日量6万バレル増加し、日量50万バレルを上回るようになった。このOOBの増産が、ベネズエラの原油生産量増加を後押ししたと考えられる。

これまでは見られなかった増産に向けた動きも見られるようになった。PDVSAとChevronのジョイント・ベンチャーPetroindependenciaは、2月にCMI 14号井の掘削を開始したのを皮切りに、原油生産増を目指してOOBでの掘削キャンペーンを開始したという。17坑を掘削する計画であるという。

ベネズエラの原油生産量(万b/d)

GL44が更新されなかったことで、この増産の傾向に変化が生じるのだろうか。

ベネズエラの石油・ガス部門で事業継続を希望する企業は、個別に申請を行うこととなったが、どのような基準でこれが評価されるのかが、現時点では推測の域を出ず、生産の見通しを立てることが難しい。

ベネズエラのRafael Tellechea石油相兼PDVSA総裁は、アジア、ヨーロッパ、インドの企業に対し5月31日までにライセンスを申請し、ベネズエラとの取引を継続するよう呼びかけた。しかし、米国が、ベネズエラが利益を上げられる事業に容易に許可を与えるとは考えにくい。

GL44が延長されていた場合に比べれば、ベネズエラの原油生産量の伸びは鈍化すると考えられるが、Chevron等がライセンスを維持し、原油生産を続けたり、増産を試みたりしていることから、2024年末にかけて同国の原油生産量は現状維持から微増となるとの見方をする向きが多いようだ。

 

以上

(この報告は2024年4月23日時点のものです)

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