ページ番号1010199 更新日 令和6年9月6日
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概要
- 今期のBrent原油価格は、期中平均で85.0ドル/バレルと、前期の83.2ドル/バレルから2.2%上昇した。また、天然ガス価格は米国Henry Hub価格で今期平均1.9ドル/MMBtu(前期の2.3ドル/MMBtuから低下)となり、各社決算に影響を与えた。
- 各社とも、配当と自社株買いの継続により、株主への還元を重視する姿勢は変わらない。ExxonMobilは、2024年上期で81億ドルの配当と83億ドルの自社株買いを実施。Shellは、前期同様となる0.344ドル/株で22億ドル程度の配当を行うとともに、40億ドルの自社株買いを行った。bpは前期の7.27セント/株から10%の増配となる8.00セント/株で配当を行うとともに、今期は17.5億ドルの自社株買いを完了。Chevronは、2024年第2四半期は前期と同水準の総額60億ドルを株主に充当し、配当と自社株買いはそれぞれ30億ドルとなった。TotalEnergiesについては、2024年第2回の中間配当を前年より7%近い引き上げとなる0.79ユーロ/株とした。
- 各社の事業戦略を概観すると、各社とも既存の化石燃料需要は引き続き堅調であると認識。これを手ごろな価格で安定的に供給するための投資を行いつつ、気候変動問題対応のため低炭素化に努める方針に回帰。同時に、低炭素エネルギー事業にも積極的に投資を行う姿勢は共通。
- そのうえで今期及び直近の主な事業実績をみると、各社とも既存資産近傍での追加開発投資により中長期的な埋蔵量及び生産量確保を継続しているほか、企業買収を通じて優良資産や事業基盤を獲得する動きが見られた。ExxonMobilはPioneer Natural Resourcesの買収を完了したほか、ガイアナのHammerhead事業開発の認可申請を実施。Shellはブラジル沖合におけるAtapu油田開発事業の2基目となるFPSOのFIDを実施。bpはアゼルバイジャンにおけるACEプラットフォームからの生産を開始したほか、Chevronについては、ナミビア、アンゴラ、赤道ギニア、ブラジルにおける探鉱鉱区取得を行い、追加埋蔵量の獲得を目指している。
- 国際通貨基金(IMF)が7月16日に世界経済見通し(WEO)を更新し、2024年の世界国内総生産(GDP)成長率予測を3.2%、2025年は前回から引き上げ3.3%と推計。これを背景に、2024年第3四半期以降の原油価格は、米国の政策金利引き下げによる経済活動活発化と需要の伸び等に下支えされるものの、中国石油需要の伸びが不透明となれば、上値を抑制する要因となるとみられる。また、天然ガスについては、2024年の世界ガス需要は前年比2.5%の増加と見込まれている。他方、世界のLNG供給は、下期には米国からの追加供給が見込まれるが、新規供給プラントの稼働遅延、既存プラントでの原料ガス調達や地政学リスクの高まりによる輸送障害などの要因により供給に影響が生じれば、価格変動を引き起こす可能性が指摘される。よって、資源価格に下支えされ、各社の次期四半期決算は今期と同様に推移する可能性が高いと考えられる。
1. ExxonMobil
2024年第2四半期決算において当期純利益は前期の82億ドルから12%増の92億ドル、前年同期78億ドル比の17%増であった。天然ガス価格の下落や精製マージンの低下がマイナス要因だったが、生産販売量の伸びと原油価格の高止まりがプラスに働いた。
今期はシェール専業のPioneer Natural Resourcesの買収を完了し、上流のアセットを拡充したことで50億ドルの売り上げ増につながったと同時に、南米ガイアナや米国Permianでの石油・ガス生産量が記録的な水準に達して、原油換算で全体の生産量が前期比日量57万バレル増の日量430万バレル超となったと発表した。同社の会長兼CEOであるDarren Woods氏は「低コストで生産されるPermian及びガイアナの生産が記録的な水準に達し、ExxonとMobilの統合以降の過去最高の生産水準となった。また下流部門の高付加価値製品の販売が記録的に伸び前年上期と比較して10%増加した」、さらに脱炭素関連について「高付加価値製品であるProxximaTM、炭素商品(Carbon Materials)やCO2を除去したカーボンフリー水素といった商品の事業化を継続していく」と総括した。
2024年上半期の事業キャッシュフローは278億ドルに達し、フリーキャッシュフローは170億ドル超となった。2024年第2四半期の設備投資額は70億ドルで第1四半期の59億ドルを大幅に上回る水準となった。上半期全体の投資額は129億ドル、昨年同期の125億ドルとほぼ同水準である。公表のガイドライン上限の年間250億ドルにPioneer Natural Resourcesの投資分30億ドルを加えて、2024年は投資額280億ドルを想定する。
引き続き同社は、株主への利益還元を最重視しており、2024年上期では81億ドルの配当と83億ドルの自社株買いの総額164億ドルを株主に還元した。2025年にかけて自社株買いは年間200億ドルに引き上げる計画であり、2024年は190億ドルの自社株買いを予定する。2024年第3四半期(9月支払)配当は据え置きの0.95ドル/株を決定。企業のDebt-to-Capital率は14%となり、Net-debt-to-capital率は6%と、健全な財務基盤を維持する。
上流部門については、2024年第2四半期の石油換算生産量は日量435.8万バレルとなり、前期の日量378.4万バレルより57万バレルの大幅増となり、営業利益は前期56億ドルに比べて71億ドルの増益決算であった。上半期全体の純利益は127億ドルで前年同期の112億ドルから増益。全体としては、税務関連の特別事項のほか、天然ガス価格の低下、非コア資産売却及び産油国の生産制限がマイナス要因となったが、生産増加による収入増、原油価格の上昇や組織構造的なコスト削減がプラスに働いた。
第2四半期は、Pioneer Natural Resourcesの買収総額である630億ドルに相当する普通株発行545百万株を発行し同社買収を完了[1]、これは将来的に非在来型の資源開発ポテンシャルをもたらすだろうと期待し、今期最大の成果と位置付けた。ExxonMobilのPermian生産量は、2023年の2倍以上の石油換算日量130万バレルとなり、2027年には日量約200万バレルに増加する予想。そのほかの第2四半期実績として、ガイアナの環境保護庁に対して、第7次開発となるHammerhead事業開発の認可申請を行った点を挙げた。本事業の生産能力は石油換算日量12万から18万バレルが期待され、2029年の生産開始を予定する。
次に、低炭素化事業関連のうち、テキサス州Baytownにおいて計画中のカーボンフリー水素(CO2を98%除去)とアンモニア製造計画において、Air Liquideと連携していくことで大きく前進した[2]。製造した水素をAir Liquideが所有する既存のパイプラインネットワークを通じて輸送し、加えてAir Liquideが9,000トンの酸素と6,500トンの窒素を供給するためLarge Modular Air separationユニット(LMAs)4基を建設及び操業することを決定した。本事業はExxonMobilがカーボンフリー水素を日量100億立方フィート製造し、あわせて年間100万トン以上のアンモニア製造を行う計画であり、Air Liquideととともに、産業顧客向けにメキシコ湾岸地域において低炭素水素市場を拡大していくことを狙いとする。
リチウムについては、韓国のEVバッテリーメーカーSK Onとの間で、アーカンソー州で計画中の事業から最大10万トンのMobilTMリチウムを供給するオフテーク契約に関して基本合意をしたと発表[3]。SK Onは米国内においてEVバッテリー製造を行う計画であり、ExxonMobilは本契約により米国内での電気自動車及びEVバッテリーのサプライチェーン構築に向けたマイルストーンとなるとともに、国内のリチウム生産はエネルギー安全保障に貢献し、米国の製造業の雇用を支え炭素排出量を削減する。
二酸化炭素回収貯留(CCS)については、ExxonMobilは4回目となる新たな二酸化炭素のオフテーク契約を締結したと発表[4]、既存の契約と合わせ、累積550万トン分を調達することになった。今回の契約相手である大手肥料メーカーCF Industriesとの間では2回目の調達契約となる。本契約ではCF IndustriesのYazoo City複合施設から排出される二酸化炭素を年間最大50万トン輸送し、これを地下貯留することで同施設から排出される二酸化炭素を50%削減する。事業開始は2028年の予定としている。
2. Shell
2024年第2四半期は、堅調な操業パフォーマンスを維持し、前期同様の決算水準となった。今期の事業キャッシュフローは135億ドル、純利益は63億ドルを達成し(2024年第1四半期は、事業キャッシュフロー133億ドル、純利益77億ドル)、フリーキャッシュフローは103億ドルとなった。ワエル・サワンCEOは、「Shellは業務及び財務面でまたも好調な四半期業績を達成し、(中略)排出量を減らしながら、より多くの価値を提供していることを引き続き実証している」とプレスリリースで述べた。2022年以降の構造的なコスト削減は17億ドルに達したと発表したほか、今期の株主還元については、前期同様となる0.344ドル/株で22億ドル程度の配当を行うとともに、40億ドルの自社株買いを行った。2023年第3四半期から当期までの12か月間における自社株買いは135億ドルとなった。また、2024年第3四半期中に追加で35億ドルの自社株買いを実施する旨発表し、継続的な株主還元方針を発表した[5]。
今期の石油換算生産量は日量277.2万バレルとなり、前期(日量286.4万バレル)比3.2%の減少となった。季節要因による統合ガス部門(LNG事業)における生産減少から、前期を下回る水準となった。2024年第3四半期は、ポートフォリオ全体において通常を上回る定期修繕も予定されており、今期を下回る生産水準となる見込みである。
主要な石油・天然ガス関連事業の進捗としては、5月24日にブラジル沖合サントス盆地でPetrobras(65.7%、オペレーター)、Shell(16.7%)、TotalEnergies(15.0%)、Petrogal Brasil(1.7%)及びPPSA(0.9%)によるコンソーシアムを通じて参画するAtapu油田開発事業の2基目となる浮体式生産貯蔵出荷施設(FPSO)に係る最終投資決定(FID)を行った[6]。Atapu-2 FPSOは、追加の生産井16坑に加え、Atapu-1 FPSOからのつなぎ替え4坑により、最大で日量22.5万バレルの操業能力を持つ。生産施設はすべて電気駆動となり、操業時の排出抑制に寄与する。また、6月18日にはLNGトレーディング事業を手掛けるPavilion Energy Pte. Ltd.の全株式を取得することについて、同社株式を保有するCarne Investments Pte. Ltd.との間で合意した。Pavilion Energyはアジア及び欧州を中心にLNGトレーディング及び輸送等を担っており、年間650万トンのLNGを供給している。これにより、Shellが保有するLNGポートフォリオに柔軟性を追加することで、LNGにおける先導的な立ち位置を強化する狙いがある[7]。
このほかにも、2024年第3四半期の実績となるが、7月9日にトリニダードトバゴにおけるManatee事業のFIDを発表[8]し、2027年の生産開始を見込むほか、7月10日にはアラブ首長国連邦アブダビにおけるRuwais LNGの事業権益10%を取得することでアブダビ国営石油会社のADNOCと合意した[9]。Ruwais LNGは年産480万トンの液化施設2系統からなり、Shellのほか、bp、三井物産及びTotalEnergiesがそれぞれ10%の事業権益を保有する。
低炭素事業においては、6月26日にカナダにおけるPolaris CCS事業のFIDを決定した。Polaris CCS事業は、アルバータ州におけるShell Energy and Chemical Parkから排出される二酸化炭素を年間約65万トン回収し圧入する計画である[10]。
3. bp
2024年第2四半期において、bpは81億ドルの事業キャッシュフローを創出した(前期の50億ドルから増加)。アンダーライイング・リプレースメント・コスト利益では前年同期より落ち込んだものの28億ドルと前期(27億ドル)と概ね同水準であった。2024年第1四半期と比べ、マーケティング及びトレーディング事業は平均的な水準であったものの、精製マージンの低下等がみられた。こうした四半期決算状況のなか、同社は前期の7.27セント/株から10%の増配となる8.00セント/株で配当を行うとともに、今期は17.5億ドルの自社株買いを完了。2024年第3四半期には追加で17.5億ドルの自社株買いを実施すると発表したほか、2024年下半期には合計で35億ドル、2025年にかけて140億ドルの自社株買いを行い、利益を株主に還元すると発表した[11]。
今期の石油換算生産量は日量234.0万バレルとなり、前期の日量233.7万バレルと比べ微増となった。2024年にはアゼルバイジャンにおけるAzeri Central East(ACE)プラットフォームからの生産開始(後述、4月16日発表[12])のほか、米国メキシコ湾におけるAtlantis Drill Centre ExpansionへのFIDや子会社であるbpxを通じて実施する米国陸上石油ガス開発において、3番目の中央処理施設となるCheckmateを稼働させる予定である。
最近の石油天然ガス関連事業の進捗としては、4月16日にアゼルバイジャンにおけるACEプラットフォームからの生産を開始した。ACEは、bpが1997年に生産を開始したAzeri-Chirag-Gunashli(ACG)油田開発事業における7番目のプラットフォームにあたり、最大で日量10万バレルの原油を処理できる設計となっている。同プラットフォームは、bpが操業するなかでも最新の技術とデジタル化を駆使することで自動化作業を拡大し、安全性及び効率性に配慮した設計となっている。
このほか、ブラジルでバイオ燃料製造を手掛ける共同事業であるbp Bunge Bioenergiaの50%事業権をBunge社から約14億ドルで買収し、単独で事業を継続することとなった。買収により、bpが設定するバイオ燃料事業の投資効率である15%を達成する見込みである[13]。
4. Chevron
2024年第2四半期は事業キャッシュフロー63億ドルを創出して純利益は47億ドル、前期の54億ドルからは主に為替変動を理由に13%減益となった。
石油及び天然ガス生産量は前年同期比11%の増加、主にPDC Energy買収とPermian及びDenver-Julesburg Basinからの堅調な生産増が寄与した。2024年第2四半期の投資額は昨年同期の38億ドルを上回り40億ドルの実績となり、上半期全体では2023年68億ドルの2割増となる81億ドルに達した。
「今期の成果は、堅調な生産量の伸びと世界的な探鉱ポートフォリオを充実させたこと、また過去2年にわたり総額500億ドルに達する株主還元を実施してきたこと。これらによって、操業停止のダウンタイムやマージンの低下に関わらず長期的に十分な収益とキャッシュフロー成長をもたらすだろう」とChevronの会長兼CEOのMike Wirth氏は総括した。
2024年第2四半期は前期と同水準の総額60億ドルを株主に充当し、配当と自社株買いはそれぞれ30億ドルとなった。これにより9期連続の50億ドル超の利益還元を達成した。9月10日支払いの配当金は前期据え置きの1.63ドル/株を取締役会で決議。Debt-to-Capital率は12.7%、またNet-debt-to-capital率は10.7%と健全な財務基盤を維持した。
2024年第2四半期の石油換算生産量は、前期日量334.6万バレルより約5万バレル減の日量329.2万バレル、内訳は国内日量157.2万バレル、国外日量172.0万バレルであった。これは、前年同期の日量295.9万バレルと比較して約33万バレル増で、主に米国のシェール開発企業であるPDC Energyの買収とPermianでの堅調な増加が寄与した。米国以外では、豪州での生産一時停止及びミャンマーのガス田からの撤退により生産量が減少した一方で、山火事によるカナダでの生産停止もなく全体で2万バレルの減少に留まった。
第2四半期の業績としては、ナミビア、アンゴラ、赤道ギニア、ブラジルにおける探鉱鉱区の取得を挙げた。ナミビア沖合では、探鉱鉱区PEL82の80%を取得し同国の探鉱ポジションを拡充した。アンゴラでは大水深Lower Congo Basinのフロンティア探鉱鉱区を取得、さらに赤道ギニアではBioko Islandの沖合探鉱鉱区2鉱区を取得し、ブラジルでもSouth Santos及びPelotas Basinにおいて15探鉱鉱区を取得したと報告した。その他成果として、カザフスタンの子会社Tengizchevroilの拡張事業の一部であるWPMP(Wellhead Pressure Management Project)が操業を開始[14]、拡張プロジェクトの最終段階は2025年前半に完了する予定であり、日量26万バレルの生産量が増加する。
第2四半期の業績発表会では、2023年10月に合意されたHessとの統合に関してすでに株主決議で承認され、公正取引委員会FTCの審査プロセスは第3四半期に終了する見込みと説明したが、Hessが保有するガイアナStabroek鉱区の共同事業者であるExxonMobilとCNOOCがHess権益の先買権を主張しており、設置された仲裁委員会では2025年の審理を設定した。このため買収は先送りされる見込み。また、解決に向けてChevronを含めすべての当事者間で協議を持ったものの、打開策を見つけられず今回の仲裁裁判に至ったとする経緯も明かされた。
なお、2024第2四半期の業績発表のタイミングにおいて、Chevronは本社をカリフォルニア州サンラモンからテキサス州ヒューストンに移転することも発表した[15]。2024年末までにヒューストンに本社を移動させ、今後5年間ですべての企業機能をヒューストンに移行する計画である。カリフォルニア州事業をサポートする業務はサンラモンに残る。Chevronは、現在サンラモンの従業員数約2,000人に対してヒューストンには約7,000人が従事しており、大多数がすでにヒューストンを拠点とする。今回の本社移転の詳しい理由について説明はなかったものの、気候変動対応が先行するカリフォルニア州において、当局のエネルギー・化石燃料産業に対する規制及び脱炭素の取り組み強化が背景にあるのではとみられる。
5. TotalEnergies
TotalEnergiesの2024年第2四半期決算は、90億ドルの事業キャッシュフロー、32億ドルのフリーキャッシュフローを創出した。今期においては、38億ドルの純利益(前期は57億ドル)を達成した。また、2024年第2回の中間配当について、前年より7%近い引き上げとなる0.79ユーロ/株とするほか、2024年第3四半期中に20億ドルの自社株買いを実施し、株主への還元を継続することを発表した[16]。
今期の石油換算生産量は日量244.1万バレルとなり、前期の日量246.1万バレルから1%ほどの減少となった。北海を中心に定期メンテナンスが増加したことにより若干生産量は減少したものの、前年同期比ではカナダオイルサンド資産からの生産分を除き3%の増加となった。ブラジルにおけるMero 2事業や、オマーンのBlock 10事業、ナミビアにおけるAkpo West事業の生産立ち上げなどが、生産量増加に寄与した。
今期における石油・天然ガス上流事業の進捗としては、以下が挙げられる。新たな油ガス田の開発や生産開始など、今後の供給増加に寄与することが期待できる新たな事業を積極的に展開している。
- 4月8日:米国テキサス州で操業するLewis Energy Groupが保有するDoradoリース権益の20%を取得すると発表。同リースはEOG Resourcesが80%権益を保有するオペレーターであり、天然ガス生産能力を拡大することで、米国におけるLNG生産バリューチェーンへの関与を強化する狙いがある。今回の権益取得により、日量5,000万立方フィートの天然ガス生産量を追加する見通し[17]。
- 4月8日:アルジェリア国営会社であるSONATRACHと、同国Timimoun地方北東部におけるガス資源の評価と開発を進めるための覚書を締結[18]。
- 4月22日:オマーンとの長期パートナーシップの関係確認を行ったほか、同国国営石油会社のOQとともに、Marsa LNG事業のFIDを発表。TotalEnergiesは、2025年から年80万トンのLNGを同国から引き取る契約をOman LNGと締結している[19]。
- 4月22日:マレーシアでガス上流事業に参画するSapura OMV Upstream Sdnの50%事業権益を5.3億ドルで取得することで合意。2024年1月31日に締結した50%事業権益取得契約と合わせ、Sapura OMVの全事業権益を取得する。同社はSK408鉱区の40%権益を保有するオペレーターであるほか、SK310鉱区でも30%権益を保有するオペレーターであり、マレーシアで活動する重要なガス生産事業者である[20]。
- 4月24日:コンゴ共和国で子会社を通じて参画するMohoライセンスの事業権益をTrident Energyから追加で10%取得し、Trident Energyが保有するNkossa及びNsoko IIライセンスの53.5%をTotalEnergiesの子会社に譲渡する合意を締結したと発表。政府による許認可取得を条件に、MohoライセンスはTotalEnergiesがオペレーターとして63.5%の事業権益を保有し、Trident Energyが21.5%、国営企業のSNPCが15%を保有する。Nkossa及びNsoko IIライセンスは、Trident Energyが85%権益を保有しオペレーターを務め、SNPCが15%を保有する[21]。
- 5月8日:ノルウェーで操業するEldfisk North事業からの原油生産開始を発表。同事業はTotalEnergies EP Norge AS(39.896%)、ConocoPhillips Skandinavia AS(35.112%、オペレーター)、Vår Energi ASA(12.388%)、Sval Energi AS(7.604%)及びPetoro AS(5.000%)が参画する。ピーク時生産量は原油換算で日量1.5万バレルとなる見込み[22]。
- 5月21日:アンゴラ大水深Block 20/11におけるKaminho事業について、同国大統領他の臨席のもと、FIDを発表した。同事業は、アンゴラ沖合100キロメートルに位置する最大水深1,700メートルの大水深域において、TotalEnergies(40%)、Petronas(40%)及びSonangol(20%)が参画する。Kwanza盆地における初の大規模大水深開発事業であり、VLCCを改造したFPSOを投入し、2028年の生産開始を見込む。生産量は最大で日量7万バレル[23]。
- 5月27日:ブラジル沖合サントス盆地におけるAtapu及びSépia油田の第二開発フェーズのFIDを発表。Atapu油田は2020年に生産を開始し(日量15万バレル)、新造のAtapu-2 FPSOを投入し日量22.5万バレルの生産能力を追加する。Sépia油田は2021年に生産開始(日量18万バレル)、新造のSépia-2 FPSOにより日量22.5万バレルの生産能力を追加する。いずれの新造FPSOも生産開始は2029年を予定している[24]。
- 6月5日:スリナム沖合Block 58において、TotalEnergies(事業権益50%を保有するオペレーター)及びAPA Corporation(50%)が推進する開発事業において、FEED作業を実施しており、2024年第4四半期のFID、2028年の生産開始を予定していると発表。FID後は、同国国営石油会社であるStaatsolieが事業権益の20%を上限に参画する[25]。
- 6月14日:TotalEnergiesの完全子会社であるTotalEnergies EP (Brunei) B.V.を、マレーシアの独立系石油天然ガス探鉱生産企業であるHibiscus Petroleum Berhadに2億5,900万ドルで売却することで合意したと発表。2024年第4四半期に手続きが完了する見込み。TotalEnergies EP (Brunei) B.V.は、ブルネイ沖合85キロメートルに位置するBlock Bにおいて37.5%の事業権益を保有するオペレーターとして操業しており、Shell Deepwater Borneo(35%)及びBrunei Energy Exploration(27.5%)が参画している。同鉱区にはMaharaja Lela/Jamalulam(MLJ)油ガス田が存在し、1999年に生産を開始。2023年のTotalEnergies持ち分生産量は石油換算で日量約9,000バレルとなっている[26]。
- 6月20日:ナイジェリア陸上OML58ライセンスにおいて、Ubetaガス・コンデンセート田開発のFIDを発表。TotalEnergiesは同ライセンスの40%事業権益を保有するオペレーターであり、国営石油会社のNNPCが60%を保有。既生産のObagi油田及びIbewaガス・コンデンセート田に加えてUbetaガス・コンデンセート田からの生産を2027年から見込む。同ガス・コンデンセート田から生産された天然ガスは、TotalEnergiesが15%権益を保有するNLNGにおいて液化される予定[27]。
- 6月26日:サントメプリンシペにおいて、洋上鉱区であるBlock STP02における60%権益及びオペレーターシップを同国機関のAgência Nacional do Petroléo de S. Tomé e Principé(ANP-STP)から取得。残りの事業権益は、Sonangol(30%)及びANP-STP(10%)が保有する。Block STP02は、TotalEnergiesが55%権益を保有しオペレーターとして事業を遂行するBlock STP01と一体的に探鉱を実施する戦略である[28]。
- 6月27日:英国の西シェトランドにおける全資産をThe Prax Groupに売却することで合意。当局の承認を条件に、石油換算で日量7,500バレル相当の生産中資産(90%が天然ガスを生産)を売却する。成熟した非コア資産を売却することで、ポートフォリオの最適化を図る[29]。
低炭素エネルギー事業及び再生可能エネルギー事業の関係では、新規再生天然ガス事業や、グリーン水素関連の進捗が見られた。
- 4月3日:ベルギーにおいて新たな蓄電設備の建設開始を発表。2025年末の稼働を予定する75メガワット時の容量を持つ蓄電設備の導入により、ベルギー国内における同社の蓄電設備は150メガワット時まで増加する見込み[30]。
- 4月24日:TotalEnergies、米国再生可能天然ガス製造事業者であるVanguard Renewables及び投資会社であるBlackRock傘下のDiversified Infrastructure Businessの三社は、米国における再生可能天然ガス事業開発を行う共同事業体を設立する合意書を締結[31]。
- 5月28日:TotalEnergiesとEREN Groupの共同事業体であるTE H2は、オーストリアの電力会社であるVERBUNDと、チュニジアにおける大規模グリーン水素製造事業(H2 Notos)開始に向けたスタディに関する覚書を締結したと発表。同事業は、初期段階として年産20万トンのグリーン水素を供給し、北アフリカからイタリア、オーストリア、ドイツへと続くSoutH2 Corridor(2030年頃稼働開始見込)へのアクセスも想定している[32]。
- 6月7日:TotalEnergiesとAir Productsは、2030年から15年間にわたり、欧州域内において年7万トンのグリーン水素を供給する契約を締結。これはTotalEnergiesが欧州域内に保有する製油所の脱炭素化を目的とした年50万トンのグリーン水素供給に係る入札に次ぐものである。本契約に基づき、Air Productsは同社の世界的な供給網からグリーン水素をTotalEnergiesに供給し、年70万トン程度の二酸化炭素排出を抑制する見込み。TotalEnergiesは、2030年までに2015年比で石油及び天然ガス関連の操業に係るScope 1+2温室効果ガスの排出を40%削減する目標を有している[33]。
- 6月21日:TotalEnergiesが株主となっているOffshore Wind One GmbHは、ドイツ沖合における洋上風力発電事業権を取得し、ドイツ領北海における3.5ギガワット相当の洋上風力発電施設を建設する予定。事業権は25年間、最大35年間まで延長可能[34]。
6. まとめ
今期のBrent原油価格は、期中平均で85.0ドル/バレルと、前期の83.2ドル/バレルから2.2%上昇した。また、天然ガス価格は米国Henry Hub価格で今期平均1.9ドル/MMBtu(前期の2.3ドル/MMBtuから低下)となり、各社決算に影響を与えた。前年同期との比較においては、期中平均のBrent原油価格は8.8%の上昇(2023年第1四半期平均は78.1ドル/バレル)、他方Henry Hub価格は9.5%低下したことで、ExxonMobilを除き、前年同期を下回る決算となった。
こうした状況下においても、各社は比較的高水準で推移するエネルギー価格に支援されつつ、化石燃料の開発と低炭素事業の両立を据えた事業方針を維持し、堅調な決算を記録したとの認識を示している。Shellのワエル・サワンCEOは、「Shellは業務及び財務面でまたも好調な四半期業績を達成し、(中略)排出量を減らしながら、より多くの価値を提供していることを引き続き実証している」とプレスリリースで述べている。
また各社とも、配当と自社株買いの継続により、株主への還元を重視する姿勢は変わらない。ExxonMobilは、上半期までの2024年では81億ドルの配当額と83億ドルの自社株買い68億ドルの総額163億ドルを株主に還元。2024年第3四半期(9月支払)配当は据え置きの0.95ドル/株を決定した。Shellは、前期同様となる0.344ドル/株で22億ドル程度の配当を行うとともに、40億ドルの自社株買いを行った。2023年第3四半期から当期までの12か月間における自社株買いは135億ドルとなった。また、2024年第3四半期中に追加で35億ドルの自社株買いを実施する旨発表し、継続的な株主還元方針を発表した。bpは前期の7.27セント/株から10%の増配となる8.00セント/株で配当を行うとともに、今期は17.5億ドルの自社株買いを完了。2024年第3四半期には追加で17.5億ドルの自社株買いを実施すると発表した。Chevronは、2024年第2四半期は前期と同水準の総額60億ドルを株主に充当し、配当と自社株買いはそれぞれ30億ドルとなった。これにより9期連続の50億ドル超の利益還元を達成している。TotalEnergiesについては、2024年第2回の中間配当について、前年より7%近い引き上げとなる0.79ユーロ/株とするほか、2024年第3四半期中に20億ドルの自社株買いを実施し、株主への還元を継続することを発表した。
各社の事業実績を概観すると、ExxonMobilは第2四半期にPioneer Natural Resourcesの買収を完了、これによって非在来型の資源開発ポテンシャルをもたらすとして今期最大の業績に挙げた。また、ガイアナの環境保護庁に対して、第7次開発となるHammerhead事業開発の認可申請を行った。Shellはブラジル沖合におけるAtapu油田開発事業の2基目となるFPSOに係るFIDを行った。bpはアゼルバイジャンにおけるACEプラットフォームからの生産を開始。ACEは、bpが1997年に生産を開始したACG油田開発事業における7番目のプラットフォームにあたる。Chevronについては、米国シェール開発企業であるPDC Energyの買収とPermianでの堅調な生産増加が見られたほか、ナミビア、アンゴラ、赤道ギニア、ブラジルにおける探鉱鉱区取得を行い、追加埋蔵量の獲得を目指している。TotalEnergiesは、新たな油ガス田の開発や生産開始など、今後の供給増加に寄与することが期待できる新たな事業を積極的に展開しているほか、新規再生天然ガス事業や、グリーン水素関連の進捗が見られた。
国際通貨基金(IMF)が7月16日に世界経済見通し(WEO)を更新し、2024年の世界国内総生産(GDP)成長率予測は4月時点の予想に沿う形で3.2%、2025年については、前回の3.2%から引き上げ3.3%と推計。サービス価格の上昇がディスインフレの進展を妨げており、金融政策の正常化を複雑にしている。そのため、インフレの上振れリスクが増大しており、金利がより高くより一層長く維持される見通しが高まっていると指摘した。先進国のGDP成長率は2023年の1.7%から2024年は横ばい、2025年は1.8%へとやや加速する見込みである一方、新興国及び発展途上国は2023年の4.4%から、2024年と2025年はともに4.3%へやや鈍化する見込みで、先進国の加速を相殺する[35]。
こうした世界経済成長見通しを背景に、2024年第3四半期以降の原油価格は、(1)大規模石油需要国である米国の政策金利引き下げが市場関係者間で意識されており、これに伴う同国経済活動活発化による需要の伸びが期待されるほか、(2)北半球の夏場の需要期により、石油需給精製施設の稼働水準が上昇し原油調達を高めること等が原油価格に上方圧力を加えるものの、(3)中国の各種経済指標などから堅調な石油需要の伸びが見通しにくいこと等が、原油価格の上値を抑制する要因となるとみられる。OPECプラス諸国は、2024年10月以降の自主的な減産措置の緩和を予定しているものの、2025年は供給が需要を相当程度上回ることが市場関係者の間で認識されている。このため、予定される減産措置の緩和の再調整が10月2日に開催される予定の共同閣僚監視委員会(JMMC)で行われる場合には、需給ひっ迫感を市場で生じ、2024年第4四半期以降の原油価格を下支えするとみられる。
また、天然ガスについては、アジア太平洋地域の新興市場における伸び等を背景に2024年の世界ガス需要は前年比2.5%の増加と見込まれている。2024年上期のガス需要は前年比3%の増加となったが、第2四半期のガス供給減少に伴う価格上昇が需要を一部抑制。下期のガス需要は前年比2%以下に留まる見通しである。他方、世界のLNG供給増加は上期で前年比わずか2%程度の増加にとどまった。特に第2四半期においては原料ガスの供給や想定外のメンテナンスにより、供給量が前年を下回った影響が大きい。下期においては、米国からの新規供給増(Freeport LNG拡張、Plaquemines LNGフェーズ1及びCorpus Christiステージ3の生産開始)が見込まれるが、新規供給プラントの稼働遅延、既存プラントでの原料ガス調達や地政学リスクの高まりによる輸送障害などの要因により供給に影響が生じれば、価格変動を引き起こす可能性が指摘されている[36]。よって、資源価格に下支えされ、各社の次期四半期決算は今期と同様に推移する可能性が高いと考えられる。
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[2] ExxonMobil, ExxonMobil adds Air Liquide to world’s largest low-carbon hydrogen project, https://corporate.exxonmobil.com/news/news-releases/2024/0624_exxonmobil-adds-air-liquide-to-worlds-largest-low-carbon-hydrogen-project(外部リンク) 2024年8月15日閲覧
[3] ExxonMobil, ExxonMobil and EV battery maker SK On sign MOU regarding U.S. produced Mobil™ Lithium, https://corporate.exxonmobil.com/news/news-releases/2024/0625_exxonmobil-sk-lithium-supply-agreement(外部リンク) 2024年8月15日閲覧
[4] ExxonMobil, ExxonMobil signs carbon capture agreement with CF Industries in Mississippi, https://corporate.exxonmobil.com/what-we-do/delivering-industrial-solutions/carbon-capture-and-storage/exxonmobil-signs-carbon-capture-agreement-cf-industries-yazoo(外部リンク) 2024年8月15日閲覧
[5] Shell, Second quarter 2024 results – August 1, 2024, https://www.shell.com/investors/results-and-reporting/quarterly-results/latest-results.html(外部リンク) 2024年8月19日閲覧
[6] Shell, Atapu Consortium Takes Final Investment Decision on Atapu-2 Project in Brazil’s Pre-Salt, https://www.shell.com/news-and-insights/newsroom/news-and-media-releases/2024/atapu-consortium-takes-final-investment-decision-on-atapu-two-project-in-brazils-pre-salt.html(外部リンク) 2024年8月19日閲覧
[7] Shell, Shell signs agreement to acquire Pavilion Energy, https://www.shell.com/news-and-insights/newsroom/news-and-media-releases/2024/shell-signs-agreement-to-acquire-pavilion-energy.html(外部リンク) 2024年8月19日閲覧
[8] Shell, Shell boosts LNG business with Manatee FID in Trinidad and Tobago, https://www.shell.com/news-and-insights/newsroom/news-and-media-releases/2024/shell-boosts-lng-business-with-manatee-fid-in-trinidad-and-tobago.html(外部リンク) 2024年8月19日閲覧
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