ページ番号1010239 更新日 令和6年10月22日

TotalEnergiesによる大規模油田開発投資決定を契機に入札、企業参入、LNG輸出計画など活況を呈するスリナム

レポート属性
レポートID 1010239
作成日 2024-10-22 00:00:00 +0900
更新日 2024-10-22 10:37:08 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 探鉱開発
著者 舩木 弥和子
著者直接入力
年度 2024
Vol
No
ページ数 6
抽出データ
地域1 中南米
国1 スリナム
地域2
国2
地域3
国3
地域4
国4
地域5
国5
地域6
国6
地域7
国7
地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 中南米,スリナム
2024/10/22 舩木 弥和子
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概要

  • TotalEnergiesは、2024年10月1日、スリナム沖合Block 58のGranMorguプロジェクトについて最終投資決定(FID)を行ったと発表した。GranMorguプロジェクトは、105億ドルを投じて同鉱区内のSapakara油田とKrabdagu油田(可採埋蔵量は合計で7億5,000万バレル以上)の開発を行うもの。生産能力が日量22万バレルのFPSOを用いて、2028年に生産を開始する。
  • スリナムでは、隣接するガイアナよりも早く1982年より原油生産が行われてきたが、近年の原油生産量は日量15,000バレル程度で、2019年末に生産を開始し、原油生産量を2024年初頭に日量64万バレル超まで増加させ、さらに2027年には日量130万バレルに増加させる計画のガイアナの後塵を拝していた。
  • しかし、GranMorguプロジェクトのFIDを契機に、スリナムの探鉱・開発にも注目が集まっている。Block 52ではPetronas/ExxonMobilが評価作業を行っており、LNG輸出の計画も検討されている。また、スリナム国営石油会社Staatsolieは、Petrobrasと炭化水素の探鉱・生産、炭素回収・貯留、再生可能エネルギー等の分野で協力の機会を探ることで覚え書きを締結した。
  • スリナムは、探鉱・開発にエネルギー企業を誘致するために定期的に沖合鉱区入札を実施しており、2021年以降、Chevron、TotalEnergies、Qatar Petroleum、PetroChinaが浅海鉱区に参入した。

 

1. TotalEnergies、沖合Block 58のGranMorguプロジェクトについて最終投資決定を実施

TotalEnergiesの会長兼最高経営責任者(CEO)であるPatrick Pouyanné氏は、2024年10月1日、スリナム沖合150キロメートル、水深100〜1,000メートルの海域に位置するBlock 58のGranMorguプロジェクトについて最終投資決定(FID)を行ったと発表した。

Block 58では、2019年から2020年に試掘井4坑と評価井1坑が掘削され、油・ガスが確認され、その可採埋蔵量は石油換算で17億バレルと評価された。その後も、同鉱区では、西側に隣接するガイアナのStabroek鉱区で発見された油田と同じトレンドラインに沿った海域で油田発見が続いた。GranMorguプロジェクトは、これらの油・ガス田のうちSapakara油田とKrabdagu油田(可採埋蔵量は合計で7億5,000万バレル以上)の開発を行うものだ。

同プロジェクトは、当初、90億ドルを投じて開発を行い、生産能力、日量20万バレルの浮体式生産貯蔵積出設備(Floating Production Storage and Offloading:FPSO)を用いて、2028年に生産が開始される計画とされていたが、今回の発表で、総投資額が約105億ドルに、FPSOの生産能力が日量22万バレルに引き上げられた。生産開始時期は当初発表通り2028年とされている。TotalEnergiesは、ガイアナで使用されている実績のある効率的なFPSOの設計を選択することで、GranMorguプロジェクトのFIDを早期に実現できたとしている。そして、将来、生産期間を長引かせることができるように、FPSOにはタイバックが可能な設計がなされている。

また、全電動FPSOの導入やフレアリングをゼロにし、随伴ガスを貯留層に完全に再注入すること、廃熱回収ユニットにより電力使用量を最適化すること等の対策により、同プロジェクトの排出原単位を石油換算1バレル当たり二酸化炭素換算で16キログラム未満に抑えるという。

Pouyanné氏は、「評価終了からわずか1年で立ち上げることができたGranMorguプロジェクトは、市場投入までの時間を短縮し、低コストで低排出の石油プロジェクトを開発するという当社の戦略に適合している」と述べている。

Block 58は、APA(旧Apache)が2014年のライセンスラウンドで落札した鉱区だ。2019年12月にTotalEnergiesが同鉱区の権益の50%を取得してファームインし、2021年1月からはTotalEnergiesがオペレーターを務めている。現在の権益保有比率は、TotalEnergiesが50%、APAが50%となっているが、スリナム国営石油会社Staatsolieが、最大20%の権益を持ち同プロジェクトに参加するオプションを行使する意向を示している。3社は、StaatsolieがFID以降、同プロジェクトに貢献し、2025年6月までに権益を確定することに同意した。

なお、GranMorguプロジェクトで生産される原油は、ガイアナのStabroek鉱区で生産されている原油(API比重30度前後の中質原油)とほぼ同様の性状であるという。

図1スリナム、ガイアナ主要鉱区図
図1スリナム、ガイアナ主要鉱区図
各種資料を基にJOGMEC作成

2. GranMorguプロジェクトのFIDを受け、探鉱・開発活発化

スリナムでは、陸上Tambaredjo鉱区のTambaredjo油田(Staatsolieが1968年に発見し、1982年に生産を開始)が長い間、同国唯一の油田として生産を行っていた。1999年以降、その生産量は日量12,000バレル前後で推移していた。2006年3月に同油田に隣接するCalcutta鉱区のCalcutta油田、2010年7月にTambaredjo鉱区のTambaredjo Northwest油田の生産が開始されたことで、同国の原油生産量は日量15,000バレル程度に増加し、現在までその生産量で生産が続けられている。これらの油田で生産されている原油のAPI比重は16度で、生産された原油はWanica地区のTout Lui Faut製油所(精製能力、日量15,000バレル)で処理され、主に国内で消費され、一部がカリブ諸国に輸出されている。

2011年にTullow Oilがスリナムの東に隣接する仏領ギアナでZaedyus油田を、2015年にExxonMobilがガイアナのStabroek鉱区でLiza油田を発見したことで、スリナム沖合での探鉱にも興味を示す企業が増加した。しかし、ガイアナほどには大規模な油田発見が続かず、そのため、開発についてもガイアナの後塵を拝することになった(ガイアナは2019年末に生産を開始し、2024年初頭には原油生産量を日量64万バレル超まで増やし、2027年には日量130万バレルに増加させる計画)。

ところが、この度のスリナム初の沖合開発GranMorguプロジェクトのFIDを契機として、スリナムの探鉱・開発をめぐる動きが活発化している。

 

(1) Petronas/ExxonMobil、Block 52の評価作業を継続

Block 58の東に位置するBlock 52は、2013年4月にPetronasが権益100%を取得、その後、2020年5月にExxonMobilが権益50%を取得して参入したが、現在もPetronasが権益の残り50%を保持し、オペレーターを務めている。

同鉱区では、2020年にSloanea-1号井でガス、2023年にRoystonea-1号井で原油、2024年5月にFusaea-1号井で炭化水素が確認された。

同鉱区の原油の可採埋蔵量は約5億バレルで現在、開発の可能性が検討されている。Petronasは、2025年に新たな掘削キャンペーンを実施する計画だという。

同鉱区では、約4~5兆立方フィートの天然ガスも発見されている。スリナムでは、電力の太宗が安価な水力発電で賄われており、国内にはガス需要はほとんどない。そこでLNG輸出の計画が検討されている。Petronasは、Sloanea-1号井の評価を実施、Staatsolieと浮体式LNG生産施設(FLNG)開発の可能性に関する条件について合意したという。また、Petronasは、FLNGのPre-FEEDを開始し、早ければ2029年の操業開始を目指しているとの情報もある。

ガイアナのStabroek鉱区と併せてBlock 52のガスを開発する可能性も検討されており、両国政府もガスインフラを共有することについて協議を行っている。Stabroek鉱区の可採埋蔵量は石油換算で116億バレルであるが、このうちガスは約17兆立方フィート(石油換算28.3億バレル)となっている。ExxonMobilは、その一部をガイアナ陸上の発電所等へ供給するGas-to-Energyプロジェクトに利用するとともに、LNG輸出を含むさまざまなオプションを検討しているという。Gas-to-Energyプロジェクトは、全長200キロメートルのパイプラインで日量5,000万立方フィート、最大で日量1億2,000万立方フィートのガスをStabroek鉱区Liza 1及びLiza 2プロジェクトから陸上の発電所(発電容量300メガワット)とNGLプラントに輸送し、利用するもの。ExxonMobilによると、パイプラインは予定通り2024年に完成するものの、ガイアナと発電所の建設を請け負ったLindsayca CH4 Guyana Inc(LNDCH4)との意見の相違により、発電所の建設が遅延している。

スリナムはトリニダード・トバゴのAtlantic LNGにガスを供給することについてトリニダード・トバゴと検討する協定を締結したが、それには多額の投資を必要とする新規パイプラインが必要になり、実現は困難を伴うと考えられる。

Petronasは、Block 52の他に、Block 48とBlock 63の権益100%を保有し、オペレーターを務めており、また、Block 64の権益の30%も保有している。

PetronasはこのうちBlock 63の3D地震探鉱を実施するため環境影響評価書(EIS)を環境開発機関NIMOSに提出した。地震探鉱には約150日かかる予定であるという。

 

(2) Staatsolie、Petrobrasと炭化水素の探鉱・生産、炭素回収・貯留、再生可能エネルギー等の分野で協力へ

Staatsolieは2024年9月下旬、Petrobrasと、炭化水素の探鉱・生産、炭素回収・貯留(CCS)、再生可能エネルギー等の分野での協力の機会を探るという内容の覚え書き(MoU)を締結した。

Staatsolieは、Petrobrasの沖合での探鉱・開発をはじめとする専門的な知識を活用して、スリナムの石油、ガス、エネルギー産業をより持続可能な方法で発展させることを目指すとしている。

一方、Petrobrasは、これまでの下流やブラジル国外資産を売却し、ブラジル沖合プレソルトの開発に注力する方針を変更し、下流や国外での探鉱・開発にも再び注力する方針を示している。国外探鉱・開発事業については、近年、ブラジルのプレソルトでの油田発見が滞っており、ブラジル以外の探鉱にも目を向けている。2024年9月から10月にかけては、Petrobrasが、南アフリカDeep Western Orange Basin(DWOB)blockの権益10%を取得、アルゼンチンの国営石油会社YPFと技術協力に関するMoUを締結、また、ナミビア、南アフリカ、アンゴラ等アフリカの探鉱鉱区の権益を取得するため、ExxonMobil、Shell、TotalEnergies、Equinor等と交渉を行っているとの報道が相次いだ。StaatsolieとのMoU締結もこれらの動向の一環と考えられる。

 

(3) 選択と集中が進むBlock 53

Block 53は、2012年のライセンスラウンドでAPAが取得した鉱区だ。その後、CepsaとPetronasが参入し、権益保有比率はオペレーターのAPAが45%、Petronasが30%、Cepsaが25%となっていた。

2022年に同鉱区で掘削されたBaja-1号井で34メートルの油層が確認され、評価が行われていたが、APAとPetronas、Cepsaは、2023年12月31日に探鉱期間が終了する際に、少なくとも1坑の探鉱井を掘削することで同鉱区の契約期間を延長するオプションを行使しないことを選択した。そして、2024年1月1日に、Baja-1号井周辺のエリアを保持した上で、Block 53の大部分のエリアを放棄した。APAは、Baja-1号井の周辺エリアについてさらに評価を行うとしている。

 

(4) ExxonMobilとEquinor、Block 59から撤退

ExxonMobil、Hess、Equinorが2018年に生産分与契約を締結したBlock 59(権益保有比率:ExxonMobil、Equinor、Hess各33.33%)では、2024年後半に探鉱が実施される予定とされていた。

2024年7月、ExxonMobilとEquinorは、Block 59の権益をHessに譲渡し、HessがBlock 59の権益100%を所有することになった。金銭的なやり取りは発生していないという。

これにより、Equinorはスリナムから撤退することとなった。Equinorは、ノルウェー、米国メキシコ湾、ブラジル等の中核地域に重点を移す一方、再生可能エネルギーや低炭素エネルギーへの投資を世界的に拡大している。この戦略に沿って、すでに、南アフリカ、メキシコ、ロシア等、約20カ国から撤退しており、スリナムからの撤退もこの戦略の一環と考えられる。

Staatsolieが設定したスケジュールによると、Hessは2025年7月までに、Block 59の新たなパートナーを確保する必要があり、現在、パートナーを探している。

 

(5) 定期的に鉱区入札を実施

スリナムは、探鉱・開発にエネルギー企業を誘致するために定期的な沖合鉱区入札を実施するようになった。

ガイアナとの境界に近い浅海8鉱区を対象に行われた鉱区入札Suriname Shallow Offshore Bid Round 2020/2021では、Block 5をChevronが、Block 6とBlock 8をTotalEnergiesとQatar Petroleumから成るコンソーシアムが落札、2021年から2023年に、これら3鉱区に加え、ChevronとBlock 7について生産分与契約が締結された。

続いて行われたSuriname Shallow Offshore 2 Bid Round 2023/2024では、PetroChinaがBlock 14およびBlock 15を落札、2024年9月にStaatsolieと両鉱区の生産分与契約を締結した。水深はBlock 14が50~75メートル、Block 15が75~150メートルであるという。Staatsolie傘下のParadise Oil Company(POC)が権益30%を保有し、PetroChinaのパートナーとなる。両社は、石油とガスの探鉱、開発、生産、およびプロジェクトのコスト、リスク、収益の配分に関する契約当事者間の合意を定める共同運営契約(JOA)を締結した。

これらの鉱区では、2025年と2026年に、少なくとも4坑の探鉱井が掘削される予定となっている。

 

おわりに

TotalEnergiesによると、GranMorguとは、スリナムの現地語、スラナン・トンゴ語で、「新たな夜明け」と旧約聖書に登場する巨人ゴリアテの名を冠する巨大なハタ「ゴリアテハタ」の両方を意味するという。GranMorguプロジェクトは、その名の通り、大規模プロジェクトとして成功し、スリナム、そして、その石油・ガス業界に投資を呼び込み、新たな夜明けをもたらすのだろうか。スリナムが、プレソルトの開発で南米第一の産油国に成長したブラジルやStabroek鉱区の開発で急激に原油生産量を増やしているガイアナに続く産油国、産ガス国に台頭することができるのか、今後の動向が注目される。

以上

(この報告は2024年10月18日時点のものです)

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