ページ番号1010240 更新日 令和6年10月24日

米国:ハリケーン2024 -メキシコ湾岸輸出拠点へのインパクト-

レポート属性
レポートID 1010240
作成日 2024-10-24 00:00:00 +0900
更新日 2024-10-24 15:07:46 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 市場天然ガス・LNG
著者 高木 路子
著者直接入力
年度 2024
Vol
No
ページ数 11
抽出データ
地域1 北米
国1 米国
地域2
国2
地域3
国3
地域4
国4
地域5
国5
地域6
国6
地域7
国7
地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 北米,米国
2024/10/24 高木 路子
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概要

  1. 6月から11月にかけて米国の大西洋側は熱帯暴風雨(風速18~32m/s)やハリケーンの発生しやすいシーズンとなり、沿岸部はその動向が注視される。米国では大西洋からカリブ海、メキシコ湾にかけて熱帯暴風雨が発生し、そのうちいくつかは発達して猛烈な暴風を伴う大規模ハリケーン(風速50m/s以上)となって米国沿岸に上陸する。油ガス田生産や石油製品、LNG等の輸送・出荷設備が集積するメキシコ湾岸沿岸地域に深刻な影響を及ぼすことがある。
  2. 近年、米国南部は石油・ガスの産出地というだけでなく、国際市場に供給する一大輸出拠点であり、ハリケーン襲来は供給リスクの一つとして指摘される。特にテキサス州及びルイジアナ州は、油・ガス田群が広がり、LNG生産基地、製油所、輸出港が集まる石油・ガス産業の中心地である。
  3. 2024年はシーズンが始まる前に、発達したハリケーンの発生確率が例年より高いとの見通しが出されていた。そして予報通り7月の「ベリール(Beryl)」、8月の「フランシーヌ(Francine)」、9月の「ヘリーン(Helen)」などとハリケーンが相次ぎメキシコ湾を北上し沿岸部に上陸した。上陸後のハリケーンは陸域では勢力を徐々に弱めて消滅する場合が大半だが、人的被害、建物・生活インフラ破壊や広域停電など甚大な影響をもたらすことがある。
  4. 今年はこれまでのところ、エネルギー輸出関連インフラに対して上陸前に港湾の閉鎖や油ガス田の生産停止の事前措置をとることで直接的な影響や被害は最小限にとどまり、上陸後は速やかに操業再開して、国際市場に大きな影響を及ぼす事態に至っていない。
  5. 米国のエネルギー供給構造は複雑で重層的ではあるものの、供給設備の強靭性や透明性が高く、市場の調整力と緊急時の連携が有機的に機能すれば回復力が高い。メキシコ湾内の油・ガス田生産操業等に関して所管当局がリアルタイムに状況を公表していることも市場の懸念を早期に払拭することに貢献している。しかし大規模ハリケーンの発生や激甚化、発生シーズンの長期化が米国の石油・天然ガス生産活動や国内サプライチェーンに影響を及ぼすだけでなく、米国エネルギー輸出の停止リスクや国際価格の上昇懸念など広範に繋がっていることに引き続き留意する必要がある。

 

1. ハリケーン

米国メキシコ湾及び沿岸域は石油・ガス田が広がるだけでなく、製油所、石化コンビナート、供給網、出荷施設などの石油関連の他、各種輸送パイプライン、ガス集積施設、LNG液化基地、LPG出荷基地、港湾施設、発電施設など多くのエネルギー産業の機能が集中する。

米国海洋大気庁(NOAA)国立ハリケーンセンターは、大西洋のハリケーンシーズンを6月1日から11月30日の期間と定義し、熱帯低気圧(tropical depression(TD))から発達して熱帯暴風雨(tropical storm(TS))と成長した中でも、風速33m/s以上に勢力が強まった場合はハリケーンに分類する。風速に応じてハリケーンはカテゴリー1~5まで(風速33m/s以上、風速43m/s以上、風速50m/s以上、風速58m/s以上、風速70m/s以上)の5クラスに分けられ、特にカテゴリー3~5の風速50m/s以上の猛烈なハリケーンは大規模ハリケーンと呼ばれ、最大級の警戒が求められている。通常、6月から熱帯暴風雨が発生し始めるが、大規模ハリケーンは主に8月から9月上旬に発生する傾向がある。今年は熱帯性暴風雨30個と多発した2020年ほどではないが発生頻度が例年より多く、エネルギー関連インフラが集中するメキシコ湾沿岸地域に接近するケースがみられる。

 

図1. 2024年のハリケーンと進路実績(2024年10月20日時点)
図 1. 2024年のハリケーンと進路実績(2024年10月20日時点)

南部に上陸したハリケーン:No.2 ベリール、No.4 デビー、No.6 フランシーヌ、No.8 ヘリーン、No.13 ミルトン。No.4、No.8、No.13はフロリダ州に上陸。
出所:NOAA2024 Atlantic Hurricane Season (noaa.gov)(外部リンク)新しいウィンドウで開きます

 

4月に発表されたAccuWeatherの予報でも、2024年のハリケーンシーズンに20-25の熱帯暴風雨(18–32m/sクラス)以上が発生しうちハリケーンは8-12個が発生するだろうとの予想であった。コロラド州立大学も同様に23個の熱帯暴風雨の発生を予想した。2024年5月に発表した米国海洋大気庁NOAAの予報では今年は海水温の高さと気候パターンからハリケーンの発生数が例年より頻発する確率が85%と高いと発表し、警戒を呼びかけた。9月時に再評価しAccuWeatherは当初の予報より下方修正したものの、依然例年以上の頻度発生の見通しである(表 1)。

近年では、ハリケーン13件を含め熱帯性暴風雨30個と多発した2020年(文末 参考3)にルイジアナ州Cameron及びLake Charles近郊に上陸したハリケーンLauraの影響でLNG設備の損傷は軽度で済んだものの、Cameron LNGが2か月弱停電し停止し、Sabine Pass LNGが停電により1週間ほど生産が停止した。2021年8月末にハリケーンカテゴリー4のアイダ(Ida)がルイジアナ州Port Fourchon近郊に上陸した際は、沖合の石油・ガス生産がほぼ全量停止し、州内の製油所に稼働率の低下がみられた上、続けて9月上旬にハリケーンカテゴリー1のNicolasがヒューストン港近くに上陸し、停電による主要ガスパイプラインの操業停止やFreeport LNGの停止、またヒューストン港一時閉鎖などの影響が重なった。石油・ガス業界は油ガス田や製油所などの操業再開に向け急ピッチで対応するとともに石油製品の輸入増強にも努め[1]、国内外のひっ迫感を極力抑制し影響を軽減させた。

2022年はハリケーンの発生数9件のうち湾岸上陸はフロリダ州南部の1件のみ、また2023年もハリケーンに発達した7件のうち湾岸上陸も同様にフロリダの1件のみで輸出への直接の影響は生じなかったが、今年は既に5件がメキシコ湾岸に上陸、うち輸出インフラが集中するテキサス州とルイジアナ州に各1件、その他フロリダ州を直撃した。今後大規模ハリケーンの発生回数が増えて、発生期間も長期化することになると、夏季の米国の石油・天然ガスにおける生産停止及び輸出停止のリスク国際石油・ガス市場に及ぼす影響が高まることとなる。

参考1 ハリケーンのクラス分け
カテゴリー 呼称 風速 被害規模
ハリケーン 74-95mph(時速マイル)
33-42m/s(秒速メートル)
非常に危険な風速で、ある程度のダメージあり。
2 ハリケーン 96-110mph
43-49m/s
非常に危険な風速は、甚大な被害をもたらす。
3 大規模ハリケーン 111-129mph
50-57m/s
壊滅的な被害が発生する。
4 大規模ハリケーン 130-156mph
58-70m/s
壊滅的な被害が発生する。
5 大規模ハリケーン 157mph以上
70m/s以上
壊滅的な被害が発生する。

Mph=miles per hour、m/s= meters per second
出所:各種資料より作成

 

表 1. 2024年ハリケーン発生の予報(AccuWeather)
発表時期 熱帯暴風雨 ハリケーン 大規模ハリケーン 米国に影響する数
2024年4月発表 20-25 8-12 4-7 4-6
2024年9月修正 16-20 6-10 3-6 -
10月18日現在(実績) 13 9 4 5
2023年(実績) 19 7 3 4
過去30年間平均
1990‐2020
14 7 3 4

出所:NOAA またhttps://afb.accuweather.com/2024-hurricane-season-forecast(外部リンク)新しいウィンドウで開きますより作成

 

次項にて、2024年の主要ハリケーンの概要(表 2)、エネルギー輸出インフラ施設の対応措置(表 3)及びメキシコ湾内の石油・ガス生産停止等の概況(表 4)をとりまとめた。

 

2. 2024年のハリケーン

メキシコ湾沿岸部に上陸した2024年10月までのハリケーン5件は、7月の「ベリール(Beryl)」、9月上旬の「フランシーヌ(Francine)」、8月上旬の「デビー(Debby)」、9月下旬の「ヘリーン(Helen)」と10月上旬の「ミルトン(Milton)」。いくつかは人的被害、建物被害や広域停電を含め甚大な被害を与えた(表1)。最強のカテゴリー5の勢力を維持してフロリダを直撃した10月のミルトンは竜巻、暴風や洪水によって甚大な被害を与え、11月の大統領選挙を前に現大統領及び両党大統領候補らも被災地域の支援にあたるなどハリケーン対応が選挙戦終盤になって争点化している。

ハリケーンの動向によっては石油市場やLNG市場にも警戒感が広がり価格変動の要因になる。これまでのところ、2024年のいずれのケースも上陸前に影響軽減のために港湾閉鎖や製油所稼働制限、沖合での油ガス田生産の事前の停止措置や可動式リグの事前の退避といった対策がとられ、通過後に速やかに操業が再開された。市場で警戒感が広がったものの、実際の生産・供給への影響や価格への影響は一時的かつ軽微であった。

表 2. 2024年のこれまでに上陸したべリール、フランシーヌ、ヘリーン
名前 ベリール Beryl

フランシーヌ Francene

ヘリーン Helene

(参考)
2021年アイダ Ida

時期

2024年7月8日(月)午前4時50分(東部夏時間)にテキサス州に上陸し州南東部に強風、大雨、高潮、洪水による被害発生。都市部に襲来。
ベリールは上陸前の同月1日にカテゴリー4でカリブ海グレナダ領カリアク島に上陸、同5日にカテゴリー2に勢力弱めてメキシコのユカタン半島を通過後、湾岸に接近した。
2024年9月11日(水)午後6時頃(東部夏時間)に勢力を強め上陸直前にハリケーンまで発達してルイジアナ州に上陸。豪雨、強風、高潮が発生、上陸後は急速に弱体化した。 2024年9月26日(木)午後11時10分頃(東部夏時間)にフロリダ州に上陸、27日~28日かけて北上し、ジョージア、サウスカロライナ、ノースカロライナ、バージニア、ウエストバージニア、テネシー、ケンタッキー、オハイオ、インディアナと広範囲に甚大な被害をもたらした。 2021年8月29日(日)午前2時、ルイジアナ州Port Fourchonに上陸。ルイジアナ州を中心にミシシッピ州も含め沿岸部に人的被害も含め大きな被害が発生した。

上陸時の勢力

ハリケーン
カテゴリー1
ハリケーン
カテゴリー2
ハリケーン
カテゴリー4
ハリケーン
カテゴリー4

上陸地

テキサス州Matagorda ルイジアナ州Terrebonne Parish フロリダ州Big Bend ルイジアナ州Port Fourchon

連邦等の
非常事態宣言

9日、テキサス州に大規模災害宣言(5日付け)

https://www.ltgov.texas.gov/wp-content/uploads/2024/07/DISASTER-Hurricane-Beryl-adding-81-counties-IMAGE-07-06-24.pdf(外部リンク)新しいウィンドウで開きます

その他

https://www.energy.gov/sites/default/files/2024-07/TLP-CLEAR-DOE-Situation-Report-Beryl-05-clean.pdf(外部リンク)新しいウィンドウで開きます

11日、ルイジアナ州に非常事態宣言

22日アラバマ州、23日フロリダ州に非常事態宣言、その後、ジョージア、ケンタッキー、サウスカロライナ、アラバマ、ノースカロライナ、テネシーに対象拡大

https://www.energy.gov/sites/default/files/2024-10/Hurricane%20Helene%20Situation%20Report%2011.pdf(外部リンク)新しいウィンドウで開きます

26日から28日にかけてアラバマ州、ルイジアナ州、ミシシッピ州に非常事態宣言発令

https://www.energy.gov/sites/default/files/2021-08/TLP-WHITE_DOE%20Situation%20Update_Hurricane%20Ida_2.pdf(外部リンク)新しいウィンドウで開きます

陸上直前の予報図

出所:
連邦政府内務省BSEE Hurricane Activity Updates | Bureau of Safety and Environmental Enforcement (bsee.gov)(外部リンク)新しいウィンドウで開きます
国立ハリケーンセンターNational Hurricane Center (noaa.gov)(外部リンク)新しいウィンドウで開きます
エネルギー省Hurricane Response | Department of Energy(外部リンク)新しいウィンドウで開きます

 

表 3. 輸出施設への影響
名前 ベリール Beryl

フランシーヌ Francene

ヘリーン Helene

(参考)
2021年アイダ Ida
港湾機能 上陸前の8日時点、テキサス州沿岸のCorpus Christi港、Brownsville港、Houston港、Galveston港、Texas City港、Freeport港は閉鎖したが翌日からCorpus Christi、Brownsvilleが再開しそのほかも順次操業再開。 上陸前にCameron港とLake Charles港は閉鎖され、通過後速やかに再開。

27日時点、フロリダ州Tampa港他、 Manatee、 Jacksonville、 Canaveral、Panama Cityの各港が閉鎖Savannahは航行制限。

https://www.energy.gov/sites/default/files/2024-09/TLP%20CLEAR_Helene_ESF%2012-Sit%20Rep_092724-%20CLEAN_PDF.pdf(外部リンク)新しいウィンドウで開きます

29日以降順次再開。
29日時点、ルイジアナ州New Orleans、 Baton Rouge、 Gramercy、Morgan Cityの各港閉鎖、ミシシッピ州のPascagoula港閉鎖https://www.energy.gov/ceser/hurricane-ida-situation-reports(外部リンク)新しいウィンドウで開きます、ルイジアナOffshore Oil Port(LOOP)閉鎖。9月初旬に、徐々にいずれも操業再開。LOOPは9月6日修繕し操業再開。原油・石油製品の主要輸入港。
LNG基地の
稼働状況
上陸前日の7日、テキサス州Freeport基地の生産を停止、通過後徐々に稼働開始、22日出荷再開、28日フル稼働[2] 上陸前にルイジアナ州Cameron LNGが生産制限(能力2.2bcf/d前日1.9⇒当日1.1bcf/d)。その他基地は大規模な制限せず概ね通常運転。 ルイジアナ州Sabine Pass基地及びCameron基地はほぼ通常通り。その他4基地も通常運転。
製油所の稼働 製油所(能力590万バレル/日)が集中するテキサス州ではCitgoのCorpus Cristy製油所及びMarathonのGalveston製油所(能力53万バレル/日)が停電に伴い一時操業停止。 ルイジアナ州Baton Rouge、Lake Charles、New Orleans周辺(精製能力300万バレル/日)で生産操業を制限がみられた。ExxonMobilはBaton Rouge製油所(52.3万バレル/日)を稼働率20%減の対応。 29日時点、ルイジアナ州少なくとも製油所(能力230万バレル/日)が事前に操業制限または操業停止措置。当該地域パイプラインに一部閉鎖あり。
停電 テキサス州270万世帯以上(上陸日14:30時点)

ルイジアナ州南部中心に45万世帯以上

(上陸日翌朝時点)
9月27日時点フロリダ及びサウスカロライナ中心460万世帯以上https://www.energy.gov/sites/default/files/2024-09/TLP%20CLEAR_Helene_ESF%2012-Sit%20Rep_092724-%20CLEAN_PDF.pdf(外部リンク)新しいウィンドウで開きます

8月30日時点ルイジアナ州中心に120万世帯

https://www.energy.gov/sites/default/files/2021-09/TLP-WHITE_DOE%20Situation%20Update_Hurricane%20Ida_20.pdf(外部リンク)新しいウィンドウで開きます

エネルギー省ステータスレポート

Hurricane Beryl Situation Reports | Department of Energy

https://www.energy.gov/ceser/hurricane-beryl-situation-reports(外部リンク)新しいウィンドウで開きます

Hurricane Francine has taken energy infrastructure offline - U.S. Energy Information Administration (EIA)

https://www.eia.gov/todayinenergy/detail.php?id=63104(外部リンク)新しいウィンドウで開きます

Hurricane Helene Situation Reports | Department of Energy

https://www.energy.gov/ceser/hurricane-helene-situation-reports(外部リンク)新しいウィンドウで開きます

Hurricane Ida Situation Reports | Department of Energy

https://www.energy.gov/ceser/hurricane-ida-situation-reports(外部リンク)新しいウィンドウで開きます

bcf/d=billion cubic feet per day
出所:各種資料より作成

 

表 4. 石油・ガス生産活動への影響
名前 ベリール Beryl

フランシーヌ Francene

ヘリーン Helene

(参考)
2021年アイダ Ida

メキシコ湾生産施設の事前停止による生産減(ピーク)

石油15万バレル/日(10%未満)
ガス154mmcf/d(10%未満)

https://www.rigzone.com/news/bsee_reveals_hurricane_beryls_production_platform_impact-10-jul-2024-177353-article/#:~:text=At%20Hurricane%20Beryl%E2%80%99s%20peak%20on%20July%208,%2015(外部リンク)新しいウィンドウで開きます

2024年7月8日

石油73万バレル/日(42%)
ガス992mmcf/d(53%)

https://www.bsee.gov/newsroom/latest-news/statements-and-releases/press-releases/bsee-monitors-gulf-of-mexico-oil-and-73(外部リンク)新しいウィンドウで開きます

2024年9月11日

石油51万バレル/日(29%)
ガス363mmcf/d(20%)

https://www.bsee.gov/newsroom/latest-news/statements-and-releases/press-releases/bsee-monitors-gulf-of-mexico-oil-and-82(外部リンク)新しいウィンドウで開きます

2024年9月26日

石油171万バレル/日(96%)
ガス2,100mmcf/d(94%)

https://www.bsee.gov/newsroom/latest-news/statements-and-releases/press-releases/bsee-monitors-gulf-of-mexico-oil-and-49(外部リンク)新しいウィンドウで開きます

2021年8月29日

BESS緊急時モニターレポート(最終日状況)

上陸6日後(9月17日) ほぼ再開

石油10.1万バレル/日(5.6%)

ガス180mmcf/d(9.7%)

https://www.bsee.gov/newsroom/latest-news/statements-and-releases/press-releases/final-update-bsee-monitors-gulf-of-0(外部リンク)新しいウィンドウで開きます

上陸3日後(9月29日) ほぼ再開

石油5.9万バレル/日(3.5%)

ガス17mmcf/d(0.9%)

https://www.bsee.gov/newsroom/latest-news/statements-and-releases/press-releases/final-update-bsee-monitors-gulf-of-0(外部リンク)新しいウィンドウで開きます

上陸25日後(9月23日)回復途上

石油29.4万バレル/日(16%)

ガス541mmcf/d(24%)
人員が避難した生産プラットフォーム

15基

2024年7月8日(Rigzone)

https://www.rigzone.com/news/bsee_reveals_hurricane_beryls_production_platform_impact-10-jul-2024-177353-article/#:~:text=At%20Hurricane%20Beryl%E2%80%99s%20peak%20on%20July%208,%2015(外部リンク)新しいウィンドウで開きます

171基/全371基(46%)

27基/全371基(7.3%)

288基/全560基(51%)

人員が退避した固定式掘削リグ数

3基/全5基(60%)

1基/全5基(20%)

11基/全11基(100%)

退避した可動式掘削リグ数

4基/全20基(20%)

3基/全21基(14%)

10基/全15基(67%)

出所:内務省BESSほか発表資料より作成

図 2.メキシコ湾沿岸の主要な油ガス田及びエネルギー施設
図 2. メキシコ湾沿岸の主要な油ガス田及びエネルギー施設
石油、ガス等パイプライン広域輸送網、発電施設、石化プラント、産業用工場などが集積する産業地帯。
出所:各種資料より作成

3. メキシコ湾岸に集中するエネルギー関連インフラ施設(図 2)

テキサス州は最大の石油・ガス産地。テキサス州とニューメキシコ州に広がる国内最大のシェールPermianは原油520万バレル/日、天然ガス16.3bcf/dを生産し、テキサス州南部のEagle Fordは原油100万バレル/日、天然ガス4.5bcf/dを生産、さらにテキサス州及びルイジアナ州に広がるHaynesvilleはドライガス14.6bcf/dを生産する。テキサス州及びルイジアナ州の沖合では大手石油会社が開発生産を手掛け、原油190万バレル/日(14%)、天然ガス2.0bc/d(4%)を生産する[3]。生産された原油や天然ガスはパイプラインネットワークを通じて国内の製油所、石化工場や発電所などに供給され、近年ではアジアや欧州への輸出向けが増大中である。2023年現在、湾岸域(PADD3)の輸出量は原油が約400万バレル/日、石油製品はLPGを含めて約500万バレル/日、LNGは年間8000万トン弱まで増加している。[4]一方で精製設備の需給調整の観点から原油170万バレル/日、石油製品60万バレル/日が輸入されている。

 

4. 最も影響を及ぼしたハリケーンフランシーヌ

これまでに最も生産に影響を与えたハリケーンは9月上旬にルイジアナ州に上陸したフランシーヌ。フランシーヌは2024年9月11日(水)午後6時頃(東部夏時間)に、勢力を強めながらカテゴリー2でルイジアナ州に上陸し、豪雨、強風、高潮が発生した。しかし上陸後急速に弱体化した(図 3)。通過に先立って同州Cameron港及びLake Charles港が閉鎖され、LNG生産基地の一つCameron LNGは生産制限(前日1.9bcf/d⇒0.9bcf/d)を行い、前週平均の2.1bcf/dに比べて半減以下に引き下げた[5]。いずれも通過後に速やかに回復中と報じられた。その他のLNG基地は大幅な制限はなく、全米でのLNG輸出基地への天然ガスの流量は前日10日の12.8bcf/dから最も接近した11日は11.7bcf/dに減少し、前週平均約13.4bcf/d比で1.7bcf/dの減少幅に収まった。

 

図 3.フランシーヌ上陸時(2024年9月12日)
図 3. フランシーヌ上陸時(2024年9月12日)
出所:米国エネルギー省EIA

メキシコ湾内の油・ガス田生産操業に関しては所管当局がリアルタイムに状況を公表しており、ShellのPerdido、Auger及びEnchilada/Salsaの各油田が操業停止する[6]など、ハリケーンが通過した9月11日には石油10万バレル/日の沖合海域の5.6%が減少し、天然ガス180mmcf/dの同9.7%の生産が減少した。また、海上の生産プラットフォーム371基のうち171基は人員を退避させて人的被害を最小限にし、同海域に展開していた掘削用リグは半数以上が安全な場所に退避し被害を回避した。

また、精製関連ではルイジアナ州のBaton Rouge及びNew Orleans地域(あわせて精製能力300万バレル/日)の製油所で操業を制限して対応した。ハリケーン進路上に位置する国内第6番目に大きいExxonMobilのBaton Rouge製油所(能力52.3万バレル/日)は20%稼働を絞って操業継続した。上陸後の翌々日9月13日には、ルイジアナ州の製油所は通常レベルに操業回復しつつあると報じられた[7]

2024年はこれまでのところ、上陸前に港湾閉鎖や油ガス田の生産停止の事前措置をとることで直接的な影響や被害は最小限にとどまり、上陸後は速やかに操業再開に至り国際市場に大きな影響を及ぼす事態に至っていない。米国は複雑で多層な供給構造であるものの供給設備の強靭性や市場の透明性が高い。市場調整機能と緊急時の連携が有機的に機能すれば早急な回復にも繋がるだろう。メキシコ湾内の油・ガス田生産操業等に関して所管当局がリアルタイムに状況を公表していることも市場の懸念を早期に払拭することに貢献している。しかし大規模ハリケーンの激甚化やシーズンの長期化が米国の石油・天然ガス生産活動や国内サプライチェーンに影響を及ぼすのみならず、米国エネルギー輸出の停止リスクや国際価格の上昇懸念など広範に繋がっていることに引き続き留意する必要がある。

 

参考 2 テキサス州のエネルギー事情

テキサス州は最も原油と天然ガスを生産する州。米国全体の原油生産量のうち43%、同天然ガス生産量は27%を占める(2023年実績)。またテキサス州には34か所の製油所、あわせて日量630万バレルにのぼる全米3分の1相当が集まる。風力発電でも全米最大で国内風力発電量の28%を占め、同州の2023年電力発電量は全米最大の13%、2位のフロリダ州の2倍以上を発電。

LNG輸出は、同州ではCorpus Cristy、Freeport、Sabine Passの各基地が生産操業中で、現在建設中のGolden Pass(2025年稼働開始予定)、Port Arthur(2027年稼働開始)、Rio Grande(2027年稼働開始)も数年内に輸出開始となる。また原油輸出は同州のCorpus Cristy港及びHouston港が国内全体の9割近くを占めるほか、同州のBeaumont港、Port Arthur港、Texas City港からの輸出実績がある。

テキサス州は最大のエネルギー消費州でもあり、他州への最大のエネルギー純供給州である。製油所や石油化学プラントを含む産業部門は州の消費量の半分以上を占め、これは国内産業部門のエネルギー消費量の5分の1に相当する。

参考3 2020年のハリケーンとその進路
参考 3 2020年のハリケーンとその進路

以上

(この報告は2024年10月22日時点のものです)

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