ページ番号1010554 更新日 令和7年7月18日

好調なブラジルの鉱区入札 プレソルトに続き赤道周辺海域での探鉱が活発化?

レポート属性
レポートID 1010554
作成日 2025-07-18 00:00:00 +0900
更新日 2025-07-18 10:20:47 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 探鉱開発
著者 舩木 弥和子
著者直接入力
年度 2025
Vol
No
ページ数 7
抽出データ
地域1 中南米
国1 ブラジル
地域2
国2
地域3
国3
地域4
国4
地域5
国5
地域6
国6
地域7
国7
地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 中南米,ブラジル
2025/07/18 舩木 弥和子
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概要

  • ブラジルでは2025年6月17日に、プレソルトエリア外の鉱区を対象としてOpen Acreage方式の鉱区入札が実施された。9社が34鉱区を落札し、サインボーナスの総額は同じ方式の鉱区入札としては過去最高の約1億8,000万ドルを記録した。
  • 近年、プレソルトでの油田発見が減少する中、その後のブラジルの探鉱・開発の中心となると見られる北東部赤道周辺沖合のFoz do Amazonas盆地にChevron/CNPCとPetrobras/ExxonMobilのコンソーシアムが競って入札し、合計で19の鉱区を落札した。PetrobrasはPetrogal(Galp)ともコンソーシアムを組み、Pelotas盆地の3鉱区を落札した。ShellやEquinor、Karoonも自らが保有する鉱区に隣接するSantos盆地の鉱区を落札した。
  • ブラジル政府、関係機関は今回の入札結果は好ましいものと肯定的に受け止めているが、環境保護団体や気候監視団体、先住民団体は、Foz do Amazonas盆地における探鉱・開発が環境を破壊し、温室効果ガスの排出量を増加させるだけでなく、国連気候変動枠組条約第30回締約国会議(COP30)の主催国としてブラジルが提唱する脱炭素に向けた方針と矛盾する等と主張し、抗議活動を行った。
  • Foz do Amazonas盆地は、ガイアナ、スリナムや西アフリカと同様の地質と資源量を有する有望なエリアとされているが、環境面への配慮から掘削が認められず、探鉱が進まないため、TotalEnergiesとBPが撤退したという経緯がある。現在はPetrobrasが掘削ライセンス取得に向け動いており、ライセンス取得まであとは、原油流出に対するPetrobrasの対応能力のテストを残すだけとなっている。
  • ブラジルは、石油収入をよりクリーンなエネルギー源へ転換するための財源とする計画で、石油とガスの生産は今後数十年にわたって必要不可欠だとしている。ブラジルが、石油、ガス開発と環境保護、温室効果ガスの排出削減などの問題解決を両立させ、環境保護団体等とどのように折り合っていくのか、今後の動向が注目される。

 


1. 北東部赤道周辺沖合を中心に活況を呈した鉱区入札

ブラジルの国家石油・天然ガス・バイオ燃料庁(Agência Nacional do Petróleo, Gás Natural e Biocombustíveis:ANP)は2025年6月17日、プレソルトエリア外の鉱区を対象としてOpen Acreage方式の鉱区入札を実施した。

Open Acreage方式の入札は、成熟油田や過去の入札で落札されなかった鉱区、返還された鉱区を対象に、企業の要請に基づいて実施される。企業がこれら入札可能な鉱区のうちいずれかに関心を持った場合、その旨をANPに通知し、入札の実施を要請することで入札が開始される。入札実施までの間に、他の企業も自らが関心のある鉱区を入札対象鉱区に追加するようANPに要請できる。Open Acreage方式の入札は、2019年よりプレソルトエリア外の鉱区を対象に実施されていたが、2021年12月に、政府は鉱区入札制度をOpen Acreage方式に一本化し、プレソルトエリア内の鉱区も対象にする方針を示した。今回は同方式によるプレソルトエリア外の鉱区の5回目の入札となった。

2025年2月時点で332の探鉱鉱区が入札可能な鉱区とされ、このうち5堆積盆地の172鉱区が入札対象鉱区となった。入札資格を取得した31社のうちの9社が34鉱区を落札し、サインボーナスの総額はプレソルトエリア外を対象とするOpen Acreage方式の鉱区入札としては過去最高の約1億8,000万ドルとなった。

(表1)Open Acreage方式入札の結果(プレソルトエリア外)
実施日 落札鉱区数 サインボーナス 入札企業 落札企業
陸上探鉱 沖合探鉱 成熟エリア
2019/9/10 30 3 12 400万ドル 10 10
2020/12/4 16 1 1 600万ドル 7 7
2022/4/13 50 8 0 8,200万ドル 14 13
2023/12/13 140 48 1 8,500万ドル 17 15
2025/6/17 1 33 0 1億8,000万ドル 9 9

(出所)各種資料を基にJOGMEC作成

今回の入札で最も関心を集めたのが、Foz do Amazonas盆地だ。

ChevronはCNPCをパートナーとして、Foz do Amazonas盆地の9つの鉱区に入札、うち、7鉱区でPetrobrasのコンソーシアムと競合したが、これらを全て落札した。Chevronは、Foz do Amazonas盆地の鉱区獲得のために、今回の鉱区入札で最多のサインボーナス約6,000万ドルを投じた。

PetrobrasはExxonMobilとコンソーシアムを組み、Foz do Amazonas盆地の10鉱区を落札した。ExxonMobilについては、ガイアナでの探鉱が頭打ちになりつつある中で、次の大きな機会を探ろうしているのではないかとの見方がなされている。

これらの企業は、減少する埋蔵量を補填するとともに、2030年以降の生産増のために埋蔵量を確保するという観点から、ガイアナと類似した地質が期待されるブラジル北東部赤道周辺沖合のFoz do Amazonas盆地での探鉱に強い関心を抱いたと考えられる。Foz do Amazonas盆地のサインボーナス合計額は、今回の入札のサインボーナス総額の85%にあたる約1億5,000万ドルとなっている。

Santos盆地では、ブラジルを中核資産とするShellが、同盆地における既存の経験を活かすべく、サインボーナス約400万ドルを支払い、単独で4鉱区を取得した。Shellは、掘削の可能性を評価するため、地震探査を計画しているという。

オーストラリアのKaroonも単独でSantos盆地の6鉱区を落札した。このうち2鉱区は、Karoon自らがオペレーターを務めるNeon油田とGoia油田に隣接する鉱区だ。KaroonはNeon油田の最終投資決定(FID)を2026年半ばに、生産開始を2029年初頭に予定しており、ピーク生産量は日量4万~5バレルを見込んでいるという。今回の鉱区取得により、開発の相乗効果を狙っていると考えられる。

Equinorは、2023年の入札で取得したSantos盆地の鉱区に隣接する鉱区を落札した。Equinorは2025年5月に、石油換算で日量93,000バレルを生産中のCampos盆地Peregrino油田の権益60%をブラジルの独立系石油会社Prioに売却することに合意したものの、ブラジルは同社にとって引き続き重要な国であるとしており、Bacalhau油田の生産開始とRaiaガスプロジェクトの進展に焦点を当てるとともに、今後も積極的に鉱区入札に参加する可能性がある。

PetrobrasはポルトガルのPetrogal(Galp)とコンソーシアムを組み、Pelotas盆地の3鉱区を落札した。Petrobrasは、近年、油田発見が減少しているSantosとCamposの両盆地以外での探鉱を進める計画で、特に新規フロンティアでの探鉱に重点を置く戦略を取っており、ExxonMobilおよびGalpとパートナーを組むことで、この戦略に沿った入札を行ったと考えられる。Galpは、ナミビアのOrange盆地での探鉱成功を受けて、大西洋を挟んだブラジル沖合への事業拡大を試みている。

ブラジル、ポルトガル、アメリカ、イギリスに展開する多国籍企業で、太陽光発電、不動産、農業などの分野で事業を進めてきたDillianzは、陸上Parecis盆地の鉱区を取得し、ブラジルでの石油・ガス探鉱に初めて参入した。Parecis盆地では、2008年にPetrobrasが鉱区入札で6鉱区を落札し、2013年に探鉱井を掘削しガスを確認したものの、その後、全鉱区を放棄している。

Potiguar盆地の鉱区も入札対象鉱区とされていたが、最終的に入札はなかった。

(図1)第5次Open Acreage方式入札(プレソルトエリア外)の結果
(図1)第5次Open Acreage方式入札(プレソルトエリア外)の結果
(出所)ANP websiteを基にJOGMEC作成
(表2)第5次Open Acreage方式入札(プレソルトエリア外)の結果
盆地 鉱区 入札数 落札企業(シェア) *オペレーター

サインボーナス(単位:レアル)

Foz do Amazonas FZA-M-188 1

Petrobras(50%)*、ExxonMobil(50%)

4,365万
FZA-M-190 1 Petrobras(50%)*、ExxonMobil(50%) 7,275万
FZA-M-194 2 Chevron(65%)*、CNPC(35%) 1億224万
FZA-M-196 2 Chevron(65%)*、CNPC(35%) 6,816万
FZA-M-265 2 Chevron(65%)*、CNPC(35%) 1億224万
FZA-M-267 2 Chevron(65%)*、CNPC(35%) 6,816万
FZA-M-334 2 Chevron(65%)*、CNPC(35%) 2,840万
FZA-M-336 2 Chevron(65%)*、CNPC(35%) 2,840万
FZA-M-403 1 Petrobras(50%)*、ExxonMobil(50%) 1,455万
FZA-M-405 1 Chevron(50%)*、CNPC(50%) 7,952万
FZA-M-473 1 Chevron(50%)*、CNPC(50%) 5,964万
FZA-M-475 2 Chevron(50%)*、CNPC(50%) 4,544万
FZA-M-477 1 ExxonMobil(50%)*、Petrobras(50%) 1,389万
FZA-M-547 1 ExxonMobil(50%)*、Petrobras(50%) 1,455万
FZA-M-549 1 ExxonMobil(50%)*、Petrobras(50%) 3,880万
FZA-M-619 1 ExxonMobil(50%)*、Petrobras(50%) 1,455万
FZA-M-621 1 ExxonMobil(50%)*、Petrobras(50%) 3,880万
FZA-M-1040 1 Petrobras(50%)*、ExxonMobil(50%) 527万
FZA-M-1042 1 Petrobras(50%)*、ExxonMobil(50%) 527万
Santos S-M-1358 1 Karoon(100%)* 363万
S-M-1603 1 Karoon(100%)* 1,204万
S-M-1912 1 Shell(100%)* 428万
S-M-1038 1 Karoon(100%)* 205万
S-M-974 1 Karoon(100%)* 197万
S-M-1484 1 Karoon(100%)* 4,550万
S-M-1605 1 Karoon(100%)* 1,644万
S-M-1819 1 Shell(100%)* 1,024万
S-M-1821 1 Shell(100%)* 343万
S-M-1914 1 Shell(100%)* 338万
S-M-1617 1 Equinor(100%)* 3,049万
Pelotas P-M-1670 1 Petrobras(70%)*、Petrogal(30%) 406万
P-M-1672 1 Petrobras(70%)*、Petrogal(30%) 372万
P-M-1741 1 Petrobras(70%)*、Petrogal(30%) 368万
Parecis PRC-T-121 1 Dillianz(100%)* 5.5万

(出所)ANP websiteを基にJOGMEC作成

TotalEnergiesとBPは今回、入札を行わなかった。

両社は2013年に実施された第11次ライセンスラウンドでFoz do Amazonas盆地の鉱区を取得したが、2021年にこれらの鉱区の権益をパートナーのPetrobrasに譲渡している。これらの鉱区での掘削に環境保護団体から強い反対があり、環境規制当局IBAMAが掘削計画を繰り返し拒否したことで、掘削を延期せざるを得ない状態が続いていた。これがFoz do Amazonas盆地から両社が撤退した理由であると見られている。このような経緯から、両者は今回の入札でPetrobrasやメジャーが競って入札を行ったFoz do Amazonas盆地への関心が薄かったと考えられる。

一方で、TotalEnergiesは2025年6月にShellと、Santos盆地Gato do Matoプロジェクトの権益20%と、同じくSantos盆地Lapa油田の権益3%を交換することで合意した。これにより、TotalEnergiesはLapa油田の権益を48%に増加させ、同油田のオペレーターとなった。2023年にFIDが行われたLapa油田南西部、Lapa South-Westのタイバック開発は、2025年末までに生産量を日量25,000バレル増加させ、同油田の生産量を日量60,000バレルに引き上げる見通しだ。

TotalEnergiesはLapa油田に加え、2021年12月に実施された入札で権益を取得したAtapu油田、Sépia油田についても、2024年5月に両油田の開発第2フェーズとなるAtapu-2およびSépia-2プロジェクトのFIDを行い、生産能力が日量22.5万バレルのFPSO(浮体式石油生産設備)を導入し、2029年に生産を開始する計画だ。

さらに、同社はMero油田も、2024年10月にMero-3プロジェクトで生産能力が日量18万バレルのFPSOを用いて生産を開始、同規模の生産能力のFPSOを利用するMero-4プロジェクトも2025年後半までに生産開始予定となっている。

このようにTotalEnergiesは、利益率が高く、炭素強度を最小限に抑えられ、長期にわたる埋蔵量を確保できる同社の理念に合致したプロジェクトを選別し、ブラジルの探鉱・開発において独自のポジションを確立しつつあるようで、その結果、今回の入札に参加しなかったのではないかと思われる。

BPも、Santos盆地Bumerangue鉱区で2025年5月に試掘井の掘削を開始したが、今回の入札では、周辺鉱区の取得に動かなかった。

今回の鉱区入札に関して、Alexandre Silveiraエネルギー相は、「米国企業の関心は、我が国のポテンシャルの大きさを示すものであり、ブラジル北部地域の貧困削減につながる」と述べ、入札結果を歓迎した。ANPの臨時長官、Patricia Baran氏も、「結果は非常に好ましいもので、ブラジルの探鉱に対する投資家の信頼を示している」と述べた。また、PetrobrasのCEO、Patricia Baran氏は、同社が優先的に取得を目指した地域を「獲得することに成功した」、「鉱区入札の結果に満足している。これらの結果と、赤道周辺海域およびPelotas盆地での探鉱活動の継続を受けて、我々は原油埋蔵量の補充とブラジルのエネルギー安全保障を確保する可能性について楽観的だ」と語った。

一方で、環境保護団体や気候監視団体、先住民団体は、Foz do Amazonas盆地における探鉱・開発が環境を破壊し、温室効果ガスの排出量を増加させるばかりでなく、国連気候変動枠組条約第30回締約国会議(COP30)の主催国としてブラジルが提唱する脱炭素に向けた方針と矛盾する等と主張し、今回の入札に対する抗議活動を行った。

環境保護団体等が、Foz do Amazonas盆地での探鉱・開発に反対するのは、同盆地が、アマゾン川が大西洋に注ぎ込むエリアに位置するため、淡水と海水が混ざり合う特異な環境となっており、マングローブやサンゴ礁、絶滅危惧種であるハナゴンドウやマナティなどが生息する等、他にない豊かな生態系が存在し、環境的に極めて脆弱な地域とされているからだ。いったん原油流出等が発生すれば取り返しのつかない事態になると主張している。

温室効果ガスの排出については、気候研究所Climainfoと排出量追跡プラットフォームSEEGのデータによると、今回入札があった全ての鉱区で石油、ガスを開発、生産すると、二酸化炭素換算で110億トン以上の温室効果ガスが排出される可能性があるという。これは過去6年間の農業部門の排出量を上回るとされる。

Luiz Inácio Lula da Silva大統領は、今回の入札を含め探鉱・開発の必要性を主張、Foz do Amazonas盆地での掘削ライセンス発行の遅延についてもIBAMAと対立を続けてきた。Lula大統領は、同エリアで探鉱・開発を進めることでブラジルの石油生産量を増やし、これをエネルギー転換のために必要な資金に充てるとしている。そして、Pará州の州都Belémで2025年11月10日から21日まで開催されるCOP30では、気候変動との戦いにおける世界的リーダーとしての地位を確立しようとしている。これが、環境保護団体等から矛盾する方針と受け取られた。

なお、落札された鉱区については、必要書類の提出とサインボーナス支払い後、2025年11月28日までにコンセッション契約が締結される予定だ。

 

2. Foz do Amazonas盆地での掘削の見通し

Foz do Amazonas盆地は、ガイアナ、スリナムや西アフリカと同様の地質と資源量を有し、現在のブラジルの原油生産の中心となっているプレソルトと同じく有望なエリアとされている。ANPは2013年に、この地域には最大で140億バレルの原油と40兆立方フィートの天然ガスが賦存している可能性があるとした。

2013年に実施された第11次ライセンスラウンドでは、Total(当時、権益保有比率40%)がオペレーターとなりBP(同30%)、Petrobras(同30%)とコンソーシアムを組んでFoz do Amazonas盆地のFZA-M-57、86、88、125、127鉱区を、BP(同70%)がオペレーターとなりPetrobras(同30%)をパートナーとしてFZA-M-59鉱区を落札した。

しかし、先述した通り、これまで、環境面への配慮から、IBAMAが掘削を行うためのライセンスを発行せず、探鉱が進まなかった。そのため、Totalは2020年9月にこれらの鉱区の権益を譲渡することでPetrobrasと合意し、2021年7月にANPの承認を得て、正式にこれらの鉱区から撤退した。BPも2020年10月にPetrobrasにオペレーターを譲り、2021年4月にはPetrobrasに6鉱区の権益全てを売却、同年7月にANPからの承認を得て、撤退に至った。

これらの動きに関しては、TotalやBPがオペレーターを務めるよりも、ブラジルの探鉱・開発について最も経験、知見を有し、国営石油会社であるPetrobrasのほうが、スムーズに掘削ライセンスが取得できるのではないかと期待する向きもあった。しかし、掘削ライセンス取得には時間がかかっている。

IBAMAは2023年5月にFZA-M-59鉱区で試掘井を掘削するための許可を求めるPetrobrasの申請を拒否した際に、Petrobrasに野生生物回復ユニットの建設を求めていたが、Petrobrasは2025年4月にAmapa州にこの施設を完成させた。

同年5月には、Petrobrasが原油流出時の緊急対応計画の一環として提出した汚染動物の保護および支援計画を、IBAMAが承認した。

このようにFoz do Amazonas盆地での掘削ライセンス取得に向けPetrobrasが努力を続けてきたことにより、掘削ライセンスの取得まであとは、偶発的な緊急事態(原油流出)に対するPetrobrasの対応能力のテストを残すだけとなっている。Ocyanが運航する掘削船ODN II(NS-42)の船体から外来種のサンゴを除去した後、FZA-M-9鉱区へ移動、これを用いて動物救助のための緊急対応行動のシミュレーションを行い、IBAMAがその効果を評価、監査するという。

これにより、掘削が確実に認められるとは限らないが、Petrobrasは、IBAMAがFoz do Amazonas盆地で掘削を行うためのライセンスを発行することに自信を持っていると伝えられており、ChevronやExxonMobil、CNPCも同盆地での掘削が可能になると考えて、今回、入札に至ったと考えられる。

今後、COP30を契機に、先住民団体や環境保護団体による抗議活動が再燃すると考えられるが、ブラジル国内外の環境保護団体との更なる摩擦を避けるため、IBAMAは掘削ライセンスを発行することになったとしても、それをCOP30後まで延期する可能性があるとの見方が浮上してきている。

2025年7月には、ANPが、Foz do Amazonas盆地FZA-M-57、59、86、88、125、127鉱区に関するPetrobrasとの契約を、IBAMAがこれらの鉱区での掘削許可を発行するまで停止するとした。これにより、Petrobrasは探鉱期間の終了を気にせずに、IBAMAの決定を待つことが可能になった。

(図2)Foz do Amazon盆地にPetrobrasが保有する鉱区
(図2)Foz do Amazon盆地にPetrobrasが保有する鉱区
(出所)ANP website他を基にJOGMEC作成

おわりに

ブラジルの鉱山エネルギー省は、石油収入をよりクリーンなエネルギー源へ転換するための財源とする計画である。そして、この移行は急進的なものではなく、石油とガスは今後数十年にわたって必要不可欠だとしている。このような政策のもと、ブラジルは2025年10月22日に、プレソルトエリア内の鉱区を対象とした3回目のOpen Acreage方式の鉱区入札を実施する計画だ。ブラジル政府が、石油、ガス開発と環境保護、温室効果ガスの排出削減などの問題解決を両立させ、環境保護団体等とどのように折り合っていくのか、今後の動向を注目したい。

 

以上

(この報告は2025年7月15日時点のものです)

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