ページ番号1010587 更新日 令和7年9月4日

メジャー企業の第2四半期決算について―メジャー企業5社の生産・投資動向と事業ポートフォリオ―

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レポートID 1010587
作成日 2025-09-04 00:00:00 +0900
更新日 2025-09-04 12:02:44 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 企業CCS
著者 古藤 太平
著者直接入力
年度 2025
Vol
No
ページ数 18
抽出データ
地域1 グローバル
国1
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国・地域 グローバル
2025/09/04 古藤 太平
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概要

  • メジャー企業の第2四半期決算は前年同期比で石油・ガスを増産したExxonMobil、Chevron、TotalEnergiesの利益が減少となり、減産したShell、BPは増益という対照的な結果となった。
  • 油価が低下する状況下、メジャー企業による脱炭素戦略の見直しや上流開発事業への回帰に注目が集まるが、設備投資を拡大したExxonMobil、Shell、TotalEnergiesは低油価に対応しながらも二酸化炭素回収貯留(CCS)やクリーンファームパワー(CFP)といった低炭素関連技術によるプロダクト、ソリューション、ビジネスモデルを提供することで事業ポートフォリオの最適化に取り組んでいる。
  • IEA WEI 2025が指摘するように、メジャー企業各社の石油・天然ガス上流開発投資においても革新的技術を需要の拡大する市場に導入することが投資拡大のペースを規定している。

1.はじめに

 メジャー企業5社の第2四半期決算が7月下旬から8月上旬にかけて発表された。石油・ガス生産量では、資産売却[1]の影響を受けたShellとBPが前年同期比減少となったのに対し、ExxonMobil、Chevron、TotalEnergiesは増産となった。純利益ではShellとBPは前年同期に償却処理を行っていたため増益となったが、原油価格低下の影響によりExxonMobil、Chevron、TotalEnergiesでは減益となった。設備投資はExxonMobil、Shell、TotalEnergiesが増加、ChevronとBPでは減少となった(表1)。

表1メジャー企業の2025年第2四半期決算概要
表1 メジャー企業の2025年第2四半期決算概要
出所:各社決算報告資料

 油価が下落する中での設備投資動向は中長期的な石油・天然ガス供給と低炭素事業を含む事業ポートフォリオへの影響の観点からも注目される。国際エネルギー機関(IEA)が6月に公表した世界エネルギー投資年次報告(WEI 2025)[2]ではメジャー企業による上流開発投資は2021年以降回復してきたが、2025年は全体として前年並みという見通しが示されている。中東・アジアの国営石油会社NOCが積極的に設備投資を拡大する一方、米国シェール事業者等の独立系上流開発企業が投資を減少、その他のNOCとメジャー企業は全体としては前年並みという見通しになっているが、個社別の事情には触れられていない(図1)。

図1石油・天然ガス上流開発投資動向(企業タイプ別、2015~2025年)
図1 石油・天然ガス上流開発投資動向(企業タイプ別、2015~2025年)
出所:IEA WEI 2025にJOGMEC調査部加筆

 WEI 2025では2025年の石油・天然ガス上流開発投資が5,700億ドルとなり、新型コロナ感染の影響を受けた2020年以降初めて前年比減少するとの見通しを示している。世界全体のエネルギー投資3.3兆ドルの内訳は、クリーンエネルギー(再生可能エネルギー、原子力、送電網、蓄電、低排出燃料、効率化、電化)が2.2兆ドル、燃料供給(石油、天然ガス、石炭)が1.1兆ドルとなっており、2020年以降の増加はクリーンエネルギー関連が牽引していることを示している。メジャー企業各社の事業ポートフォリオに占める低炭素関連投資の動向も注目される(図2)。

図2 世界エネルギー投資動向(2015~2025年)
図2 世界エネルギー投資動向(2015~2025年)
出所:IEA WEI 2025にJOGMEC調査部加筆

 以下、メジャー企業の第2四半期決算から石油・天然ガス上流開発と低炭素関連技術に対する設備投資、事業ポートフォリオの動向を検討する。


2.メジャー企業の第2四半期決算動向

(1)ExxonMobil

 第2四半期[3]の石油・天然ガス生産量は、1999年にExxonとMobilが合併して以来の最高水準を記録し、463万boed、前年同期436万boedから6%の増加となった。要因としては昨年5月に完了したPioneer Natural Resourcesの買収により米国パーミアンの生産が160万boedに達したことがあげられる。増加した事業キャッシュフローを、より収益性の高い資産に投資する好循環に入っており、2030年以降も石油・天然ガス生産を増加させるための上流開発投資が設備投資の大宗を占めている。

 当期純利益は71億ドルで前年同期92億ドルから23%減少した。油価低下の影響を受け大幅な減益であるが、ソリューション事業の貢献に加えて2019年以降取り組んできた(10年間に180億ドルを削減することを目標とする)構造的コスト削減の取り組みが進展したことにより一部相殺された。

 ExxonMobilは2025年度中に10件の主要プロジェクト[4]の操業開始を予定しており、第2四半期はシンガポール、英国Fawley、カナダStrathconaの製油施設アップグレードと米国CCSプロジェクト(ルイジアナ州のアンモニア工場からのCO2受け入れ)が操業を開始した。8月には南米ガイアナに4隻目のFPSOが到着しYellowtail油田が生産を開始している。

表2 Exxon Mobil決算概要
表2 Exxon Mobil決算概要
出所:Evaluate EnergyよりJOGMEC調査部作成

(2)Chevron

 第2四半期[5]の石油・天然ガス生産量は340万boed、前年同期329万boedから3%増加となった。パーミアンの生産量が100万boedを超え米国全体の石油・ガス生産量が過去最高を記録したほか、カザフスタン、メキシコ湾からの生産増加が貢献した。

 当期純利益は25億ドルとなり前年同期の44億ドルから44%減少、油価下落の影響に加えてHess Corporation買収に伴う公正価値会計があったため減益幅が拡大した。

 Hess Corporation統合後も設備投資見通し(190~220億ドル)は据え置き探鉱活動に重点を置いている。損益分岐点の低いガイアナのロングサイクル資産と米国バッケン・シェールのショートサイクル資産を獲得したことで事業ポートフォリオ戦略の動向が注目される。

表3 Chevron決算概要
表3 Chevron決算概要
出所:Evaluate EnergyよりJOGMEC調査部作成

(3)Shell

 第2四半期[6]の石油・天然ガス生産量は264万boed、前年同期277万boedから5%減少した。構造的コスト削減計画に伴うナイジェリア資産売却(SPDC:Shell Petroleum Development Company of Nigeria)に加えて既存設備のメンテナンスが実施されたことも影響した。

 当期純利益は36億ドル、前年同期35億ドルから2%の増加となり、原油価格下落、トレーディング部門の利益減少をコスト削減が一部相殺した。LNGカナダ・プロジェクトが生産を開始、2030年までLNG売上年間成長率4~5%を目指す。上流開発部門でもMero-4が稼働開始したほか、Gato do Mato(ブラジル)とBonga(ナイジェリア)の持分を拡大するなど深海開発を強化している。2025年の資本支出見通しは200~220億ドルで維持、競争優位を保つ分野に焦点を当てた戦略を継続している。

 

表4 Shell決算概要
表4 Shell決算概要
出所:Evaluate EnergyよりJOGMEC調査部作成

(4)BP

 第2四半期[7]の石油・ガス生産量は226万boed、前年同期234万boedから3%減少、2025年通年でも生産量は前年比で減少する見通し。

 当期純利益は16億ドル、LNGヘッジ取引に伴う公正価値会計処理によって生じた前年同期の損失計上(1億ドル)から黒字に転換したが、有利子負債は前年同期657億ドルから9%増加し750億ドルとなった。第2四半期の設備投資は前年同期37億ドルから9%減少して34億ドル。ブラジルにおける探鉱活動を活発化する動きがみられるが、全体としての上流開発投資計画は据え置き、企業価値向上を重視した事業ポートフォリオの見直しを進めるとしている。

表5 BP決算概要
表5 BP決算概要
出所:Evaluate EnergyよりJOGMEC調査部作成

(5)TotalEnergies

 第2四半期[8]の石油・ガス生産量は241万boed、前年同期234万boedから3%の増加(石油2%、天然ガス4%)となった。増加の要因としては米国メキシコ湾油田開発プロジェクトAnchorとBallymore、南米ブラジルのMero、アルゼンチンFenixの稼働開始と生産拡大が上げられる。またTotalEnergiesはメジャー企業の中で唯一の発電事業部門(Integrated Power)を持っており、第2四半期の総発電量は12TWhとなり、前年同期9TWhから27%増加している。

 新規プロジェクトからの生産増加により油価と精製マージン低下の一部は相殺されたものの、第2四半期の当期純利益は27億ドルとなり前年同期38億ドルから21%減少した。これは2021年以来の低水準で有利子負債は622億ドルと前年同期比16%増加している。

 事業キャッシュフローが90億ドルから60億ドルへと減少する間に設備投資は51億ドルから72億ドルに増加しており、上流開発と低炭素電力への投資を拡大している。設備投資ガイダンスは据え置いているが、米国、フランス、ギリシャ等の再生可能エネルギー・ポートフォリオの入れ替え、スリナム、アルジェリア、マレーシア等における天然ガス資産の獲得と債務削減を目指している。

表6 TotalEnergies決算概要
表6 TotalEnergies決算概要
出所:Evaluate EnergyよりJOGMEC調査部作成

3.メジャー各社の石油・天然ガス上流開発動向

 第2四半期決算報告から2025年上半期にメジャー企業各社の石油・天然ガス上流開発部門が近年減少傾向にあった埋蔵量を確保する探鉱活動と需要増加に対応して生産量を拡大する開発投資を拡大する取り組みを確認することができる。

(1)探鉱活動

 2020年以降、メジャー企業各社の石油・ガス埋蔵量は(米国シェールを除き)減少傾向にあった。脱化石燃料の潮流による探鉱活動のペースダウン、地政学リスクの顕在化によるエネルギー安全保障に対する関心の高まりなどを経て、第2四半期決算発表からは再び探鉱活動を活発化し埋蔵量を補充する動きが注目される。

図3 メジャー企業5社の石油・ガス埋蔵量推移 (地域別)
図3 メジャー企業5社の石油・ガス埋蔵量推移 (地域別)
出所:Evaluate EnergyよりJOGMEC調査部作成

1.ExxonMobil

 ExxonMobilは2015年以来130億バレル相当の石油・天然ガス資源を発見してきたガイアナ沖からの生産量が100万b/dに達する見通しである。過去20年間における最大の発見と言われるガイアナの成功を再現するべく新たな探鉱活動を推進しており、中南米のトリニダード・トバゴ、ブラジル、東地中海のキプロス、リビア、東南アジアのインドネシアで探鉱鉱区の確保や探査活動を活発化している。

表7 ExxonMobil探鉱活動 (2025年上半期)
表7 ExxonMobil探鉱活動 (2025年上半期)
出所:当社HP・各種業界誌よりJOGMEC調査部まとめ

2.Chevron

 Chevronの探鉱活動は2015年以降米国シェール・メキシコ湾深海開発を除いて比較的低調であったが、上半期はナミビアにおける探鉱への再参入に加えブラジルでも探鉱鉱区獲得の動きが見られた。

表8 Chevron探鉱活動 (2025年上半期)
表8 Chevron探鉱活動 (2025年上半期)
出所:当社HP・各種業界誌よりJOGMEC調査部まとめ

3.Shell

 上半期はフロンティア地域における探査活動に目立った動きは見られず、既存資産に近い地域の探鉱に特化し、ノルウェー、ブラジル、ナイジェリアなど、すでに発見されている国に集中している。

表9 Shell探鉱活動 (2025年上半期)
表9 Shell探鉱活動 (2025年上半期)
出所:当社HP・各種業界誌よりJOGMEC調査部まとめ

4.BP

 BPは2020年以降、脱炭素化の取り組みを推進し新規フロンティア地域における探鉱を取り止めてきた。再生可能エネルギー事業の投資利回りが低いことを懸念する資本市場の要請などを踏まえ、今年2月に戦略を転換し、継続的に利益を上げるため探鉱活動による埋蔵量確保に方向転換した。上半期はエジプト、リビア、アンゴラ、ナミビア、米国GOM、トリニダード・トバゴに加え、最近ではブラジルで100%権益を持つBumerangue油田を発見している。

表10 BP探鉱活動 (2025年上半期)
表10 BP探鉱活動 (2025年上半期)
出所:当社HP・各種業界誌よりJOGMEC調査部まとめ

5.TotalEnergies

 TotalEnergiesは成長エリアと位置付けるスリナムで昨年10月にFIDしたGranMorguプロジェクトに隣接するブロック53の持分25%を取得し探査を継続している。スリナムの他にもPetronas(マレーシア)、Chevron(米国)、Petronas(マレーシア)、QatarEnergy等と共同してマレーシア、インドネシア、アルジェリア等の探査リースポートフォリオを拡充している。

表11 TotalEnergies探鉱活動 (2025年上半期)
表11 TotalEnergies探鉱活動 (2025年上半期)
出所:当社HP・各種業界誌よりJOGMEC調査部まとめ

(2)開発投資

 原油価格の低下は垂直統合ビジネスモデルのメジャー企業にとっても利益圧迫要因であるが、資産売却の影響のあったShellとBPを除けばメジャー企業の石油・天然ガス生産はむしろ増産傾向にある。他方で利益水準の低下は、投資利回りの低い再生可能エネルギー投資よりも上流開発投資、上流開発の中でも大規模で損益分岐点の低いフロンティア地域の深海油田開発に軸足を移す動きがみられる。新型コロナウィルス感染拡大からの回復過程ではショートサイクルの米国シェールによる機動的な増産が事業ポートフォリオ占めるウェイトが増したが、2022年ウクライナ侵攻を経てエネルギーセキュリティ確保が重視され、ロングサイクルでコストの低い大規模開発の回復に注目が集まる。

図4 メジャー企業5社の石油・ガス生産量 (地域別)
図4 メジャー企業5社の石油・ガス生産量 (地域別)
出所:Evaluate EnergyよりJOGMEC調査部作成

1.ExxonMobil

 ExxonMobilはエネルギートランジションの潮流の中でも一貫して上流開発投資を持続してきた。事業ポートフォリオの中心をシェール資産・企業買収から大規模・高採算・低排出強度の優位性高い資産基盤の強化にシフトする動きが注目される。上流投資を維持しながら財務基盤を強化し、ソリューション提供の強化により精製・石油化学事業の高効率・低炭素化、さらには採算に留意しながら低炭素技術投資も推進している。

表12 ExxonMobil 開発投資 (2025年上半期)
表12 ExxonMobil 開発投資 (2025年上半期)
出所:当社HP・各種業界誌よりJOGMEC調査部まとめ

2.Chevron

 ChevronはHess買収を完了し、シェール資産・企業買収から大規模・高採算・低排出強度の石油・天然ガス開発にシフトする動きが見られる。

表13 Chevron 開発投資 (2025年上半期)
表13 Chevron 開発投資 (2025年上半期)
出所:当社HP・各種業界誌よりJOGMEC調査部まとめ

3.Shell

 Shellは増産による収益源の強化を図り、天然ガス価格上昇/エネルギー危機の経験を踏まえて手頃な価格と安定供給を重視。低炭素関連投資とのバランスを取りつつ、石油・天然ガスは増産を指向、開発投資加速の動きが見られる。

表14 Shell 開発投資 (2025年上半期)
表14 Shell 開発投資 (2025年上半期)
出所:当社HP・各種業界誌よりJOGMEC調査部まとめ

4.BP

 BPは今年2月にファンダメンタル・リセット戦略を発表、化石燃料とクリーンエネルギー投資の両立を図りながらも石油・天然ガスが適応力の中心であり続けるという現実的な対応に軸足を移している。

表15 BP開発投資 (2025年上半期)
表15 BP開発投資 (2025年上半期)
出所:Evaluate EnergyよりJOGMEC調査部作成

5.TotalEnergies

 メジャー企業の中では統合電力事業部門を持ち再生可能エネルギー投資に積極的であるが、再生可能エネルギー発電を拡大するのに必要な調整電源として天然ガス火力発電容量も提供する。エネルギー需要の増加に対応するため、化石燃料とクリーンエネルギー投資の両立を図るため再生可能エネルギーと並行して石油・天然ガス開発投資を拡大している。

表16 TotalEnergies開発投資 (2025年上半期)
表16 TotalEnergies開発投資 (2025年上半期)
出所:当社HP・各種業界誌よりJOGMEC調査部まとめ

4.メジャー各社の低炭素関連投資動向

 メジャーの設備投資はエネルギー需要が回復する過程で増加しているが、新型コロナウィルス感染拡大以前から欧州系メジャー企業が中心となって拡大してきた再生可能エネルギー投資から採算性の高い石油・天然ガス上流開発投資にシフトする動きが見られる。このような上流回帰の流れの中で注目されるメジャーの低炭素関連投資がCCSと電化その他の低炭素事業に対する投資である。

(1)CCS事業

 2015年のパリ協定成立によるカーボンニュートラル化の潮流の中で欧州系メジャーを中心に風力・太陽光発電等の再生可能エネルギー投資が注目されてきたが、2020年の新型コロナウィルス感染拡大からの需要回復過程においてはむしろ石油・天然ガス上流開発に設備投資の重心がシフト、上流に回帰する動きが顕著である。

 このような流れの中でも欧米メジャー企業は事業ポートフォリオのリターンを向上するため引き続き低炭素技術による低炭素強度のプロダクト・ソリューションを提供するためCCS投資を拡大している。ExxonMobilは4月に米国テキサス州のBaytown Energy Centerの発電設備から年間200万トンの二酸化炭素を回収貯留する契約を発電事業大手Calpineと締結、CCSを低炭素ソリューションとして提供するサービスを事業モデルとして確立している。また欧州ではShell、BP、TotalEnergiesがノルウェーのNorthern Lights、英国のNorthern Endurance Partnershipプロジェクトに参画しており、二酸化炭素回収・貯留を石油・天然ガス企業の事業ポートフォリオに統合する動きが進展している。具体的には3月にNorthern Lightsが貯留容量を拡張するフェーズ2に移行し、6月にはNorthern Endurance Partnershipが二酸化炭素回収・貯留事業の契約発注を行っている。

表17 メジャー企業関連のCCSプロジェクト(2025年上半期)
表17 メジャー企業関連のCCSプロジェクト(2025年上半期)
出所:各社HP・各種業界誌よりJOGMEC調査部まとめ

 欧米におけるCCS事業が各国政府・EUの支援策、補助金や税制優遇措置などにより影響を受ける中、メジャー企業各社は欧米市場で開発した技術やビジネスモデルを人口増加と経済成長による化石燃料需要拡大が続く東南アジア・中国、中東・オーストラリアに展開している。

図5 メジャー企業によるCCSプロジェクトのグローバル化
図5 メジャー企業によるCCSプロジェクトのグローバル化
出所:Lambert Energy Advisory (2024年度委託調査)

(2)電化(その他低炭素技術)

 メジャー企業の設備投資も、人工知能・データセンターの利用拡大に伴って増加する低炭素強度の電力を安定的に供給するために再生可能エネルギーの出力変動を補う電力グリッド・バッテリー設備や(CCSを伴う)天然ガス火力発電で対応する動きがみられる。

 TotalEnergiesは再生可能エネルギーと天然ガス火力発電を包含した電力バリューチェーンを包含したエネルギー供給ビジネスモデルであるクリーンファームパワーを構築、価格変動の大きさ活用し電力卸売市場のトレーディングに参加することで投資利回りの向上を目指している。

図6 メジャー企業5社の設備投資 (セクター別)
図6 メジャー企業5社の設備投資 (セクター別)
出所:Evaluate EnergyよりJOGMEC調査部作成

1.ExxonMobil

 上述の通り4月にBaytown Energy Center発電設備から年間200万トンの二酸化炭素を回収貯留するサービスを電力事業者に低炭素ソリューションとして提供しているが、Baytownではこの他にもリサイクルやアンモニア製造を低炭素技術として事業化/実装している。

表18 ExxonMobilその他低炭素技術投資 (2025年上半期)
表18 ExxonMobilその他低炭素技術投資 (2025年上半期)
出所:各社HP・各種業界誌よりJOGMEC調査部まとめ

2.Chevron

 再生可能エネルギー、CCSと並んで注目される低炭素技術のバイオ燃料の再生可能ガス/ディーゼル・プロジェクトを推進しているほか、アクティビスト投資家Engine No.1とガスタービンメーカーのGE Vernovaと共同でCCS付きガス火力発電からデータセンターに低炭素電力を供給するビジネス、低炭素電力バリューチェーンのリチウム資源にも投資している。

表19 Chevron その他低炭素技術投資 (2025年上半期)
表19 Chevron その他低炭素技術投資 (2025年上半期)
出所:各社HP・各種業界誌よりJOGMEC調査部まとめ

3.Shell

 米国ロードアイランド州でCCGT発電施設を所有するRISEC Holdings LLCの100%株式を取得したことでニューイングランド地方の独立系システム事業者電力市場における地位を確保し、需要拡大が見込まれる電力市場に信頼性の高い安定した低炭素電力を供給するビジネスモデルで投資リターンを向上する。

表20 Shellその他低炭素技術投資 (2025年上半期)
表20 Shellその他低炭素技術投資 (2025年上半期)
出所:各社HP・各種業界誌よりJOGMEC調査部まとめ

4.BP

 CCSによる低炭素調整可能電力供給のビジネスモデルはNorthern Endurance PartnershipにおけるNZT Powerでも見られるが、BPはこの他にも米国テキサス州で再生可能エネルギー事業に投資している。

表21 BPその他低炭素技術投資 (2025年上半期)
表21 BPその他低炭素技術投資 (2025年上半期)
出所:各社HP・各種業界誌よりJOGMEC調査部まとめ

5. TotalEnergies

 TotalEnergiesは低炭素関連投資にも利益率12%以上をポートフォリオのハードルレートに設定、これは原油価格60ドル/バレルでの上流開発事業を想定しているとされる。米国洋上風力発電事業では相互関税やサプライチェーン再構築の体制整備を急いでいる。そのほか各国において自社の発電事業ポートフォリオと電力取引、蓄電事業を組み合わせて低炭素電力を安定的に供給するクリーンファームパワーをビジネスモデルとして展開している。

表22 TotalEnergiesその他低炭素技術投資 (2025年上半期)
表22 TotalEnergiesその他低炭素技術投資 (2025年上半期)
出所:各社HP・各種業界誌よりJOGMEC調査部まとめ

5.まとめ

 冒頭にも引用したIEAのWEI 2025の総括コメントは、エネルギー業界を取り巻く環境は第一版発行当時(2016年)と同様、シェールなどの技術革新によるエネルギー価格下押し圧力が設備投資に影響しているが、重要な違いは過去10年間で幅広く競争力のある技術革新の成果を社会実装する知見が蓄積されていることを指摘している。

 上流回帰については探鉱活動の成功確率の向上、開発期間の短縮化、排出強度の低いアドバンテージト・アセットへのシフトにより、フロンティア地域の探鉱、米国LNG設備、中南米やアフリカなどの深海油ガス田開発が進展している。電化については人工知能(AI)・データセンターによるクリーンエネルギー需要増加に対応し、太陽光・風力等の再生可能エネルギー発電重視から技術中立的で多様な低炭素化技術へのシフトが起こり高効率ガス火力発電とCCSによる低炭素技術によるエネルギー安定供給をハイライトした。

 メジャー企業各社の事業ポートフォリオ戦略においても上流開発と低炭素技術の最適化を達成する物差しが投資利回りであり、投資利回りを基準として事業ポートフォリオの最適化を図る企業が石油・天然ガス上流開発と革新的技術の投資拡大のペースを規定している。

 

注:本稿は7月17日に実施したJOGMEC海外石油天然ガス動向ブリーフィング「メジャー企業の決算・投資動向 ―IEA 世界エネルギー投資年次報告(WEI 2025)の視点」に第2四半期決算報告の内容を中心に書き加えたものです。ブリーフィングの動画は2025年9月30日まで期間限定でJOGMECチャンネルからご覧いただけます。
https://www.youtube.com/watch?v=ui2_WzS5J-E&list=PLBIv78_IaSRGKwPOEJHg2ZZ4wHzNIhjnL&index=11(外部リンク)新しいウィンドウで開きます

 

[1]   Shellは2025年第1四半期にナイジェリア現地法人Shell Petroleum Development Company of Nigeria(SPDC)、BPは2024年第4四半期にエジプトとトリニダード・トバゴで上流権益を一部売却した。

[2]   World Energy Investment 2025(https://www.iea.org/reports/world-energy-investment-2025)(外部リンク)新しいウィンドウで開きます
2016年初版以降、石油・天然ガス上流開発、中・下流、LNG、石炭、水素・CCS・バイオ燃料、電力、クリーンエネルギー、研究開発、省エネ技術・ベンチャー投資と対象を拡大するIEAの年次投資レポート。2025年度(第10版)では希少金属、資本市場、地域毎のクリーンエネルギー投資もカバーしている。

[3]   ExxonMobil 2Q 2025 Earnings Release
https://d1io3yog0oux5.cloudfront.net/_07154f779a8e8ee2f635beee5f10e9b7/exxonmobil/db/2288/22462/earnings_release/2Q25+Earnings+Press+Release+Website.pdf(外部リンク)新しいウィンドウで開きます

[4]   1. China Chemical Complex (Guangdong, China), 2. Second Advanced Recycling Unit (Baytown, Texas), 3. Singapore Resid Upgrade (Singapore), 4. Fawley Hydrofiner (UK), 5. Strathcona Renewable Diesel (Canada), 6. CF Industries Ammonia Production Industry CCS (Donaldsonville, Louisisana), 7. Yellowtail (Guyana), 8. Golden Pass (LNG), 9. Bacalhau (Brazil), 10. Proxxima Resin Systems (Specialty Products)


(この報告は2025年9月4日時点のものです)

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