ページ番号1010639 更新日 令和7年11月7日

メジャー企業の第3四半期決算について ― 生産・投資と事業ポートフォリオの動向 ―

レポート属性
レポートID 1010639
作成日 2025-11-07 00:00:00 +0900
更新日 2025-11-07 15:30:09 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 企業
著者 古藤 太平
著者直接入力
年度 2025
Vol
No
ページ数 8
抽出データ
地域1 グローバル
国1
地域2
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地域3
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地域10
国10
国・地域 グローバル
2025/11/07 古藤 太平
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概要

  • 2025年第3四半期のメジャー企業による石油・天然ガス生産は前四半期比でいずれも増加、当期純利益は評価損計上のあったBPを除き各社とも増益となり、引き続き堅調であった。
  • これに対し設備投資は米系2社が増加、欧州系3社は減少と明暗を分けた。化石燃料に対する需要が急速に減少する懸念は後退しているが上流開発投資拡大には慎重な姿勢が維持されている。
  • 欧米メジャー各社は事業ポートフォリオのバランスを取るアプローチを志向しており、大型開発とフロンティア探査の両方に重点を置いた化石燃料に回帰する動きと、AI・データセンター関連の電力需要への対応を進める電化の動きが注目される。

 

1. はじめに

メジャー企業各社の第3四半期決算が発表された(10月30日にShellとTotalEnergies、31日にExxonMobilとChevron、11月4日にBPがそれぞれ発表)。石油・天然ガス生産量はいずれも前期比増加、当期純利益も評価損を計上したBPを除く各社で増益となり全般的には引き続き堅調であった。他方で精製マージン回復の持続は欧米によるロシア産原油・石油製品に対する制裁の効果次第の側面があり不透明感が残る。不確実性の残る設備投資動向の注目ポイントとしてはフロンティア探査の拡大と人工知能(AI)・情報処理データセンター(DC)の電力需要への対応の動向が挙げられる。

表1 メジャー企業の決算概要(まとめ)
表1 メジャー企業の決算概要(まとめ)
出所:Evaluate Energy、メジャー企業各社決算資料よりJOGMEC作成

2. 米系メジャー企業

(1) ExxonMobil

ExxonMobil([1])の2025年第3四半期純利益は75億ドル(前四半期71億ドル)、原油価格低下に関わらず純利益は増加した。この結果は、2019年以降140億ドル以上の構造的コスト削減を達成し(2020年代末までに180億ドルの削減を目標としている)、石油・天然ガス生産量が477万バレル相当/日(boed)に増加した(前四半期463万boed)中で記録されたもの。なお通年の生産見通し(470万boed)に変更はない。

表2 ExxonMobil決算概要
表2 ExxonMobil決算概要
出所:Evaluate Energy、ExxonMobil決算資料よりJOGMEC作成

ExxonMobilのパーミアンにおける石油・天然ガス生産量は170万boed、ガイアナではイエローテール開発の操業開始に伴い生産量が70万boedに到達。ExxonMobilはSinochem Petroleumからパーミアンの8万エーカー超のシェール権益を取得すると共にガイアナにおける総生産能力を2030年末までに170万boedまで拡大する目標を発表した。2025年末までに予定している上流プロジェクト10件のうち8件は稼働を開始しており、残り2件も順調に進捗している。2030年までに、ExxonMobilの上流部門生産量の60%以上がパーミアン盆地、ガイアナ、LNGの優位性ある資産から供給される見込み(現状50%程度)であり、エネルギートランジションやパンデミックにより他社が設備投資を縮小する中で継続してきたことが奏功する形になっている。ExxonMobilは「業界全体では自然減退率が過小評価されているため、新規プロジェクトへの投資が不十分になっており、現状維持のためには投資の拡大が必要であると指摘、モザンビークでは治安状況改善を受けてLNGプロジェクトが前進している」と述べている。

また、ヒューレット・パッカードおよびNVIDIAと共同開発した次世代スーパーコンピューター(「ディスカバリー6」)が稼働を開始したことを発表しており、これが世界で17番目に強力なコンピューターであるとした。これにより従来数ヶ月かかっていた地震探査データ処理が数週間に短縮され、ガイアナのスタブローク鉱区における資源回収率向上など既に10億ドル以上の潜在的価値が創出されているとしている。

 

(2) Chevron

Chevron([2])の2025年第3四半期純利益は35億ドル、(前四半期25億ドルに対して42%の増加となった。2023年10月に発表されたHessの買収が第3四半期に完了し、米国における石油・天然ガス生産量が過去最大となった(前四半期340万boedから409万boedに増加)。テキサス州西部のパーミアンからの生産量が第3四半期には106万boedに到達しており、シェール開発投資よりもキャッシュフローに注力するため当面の生産量は頭打ちとなるが、原油価格の動向に変化があれば敏感に反応することができるとしている。

表3 Chevron決算概要
表3 Chevron決算概要
出所:Evaluate Energy、Chevron決算資料よりJOGMEC作成

カザフスタンのテンギスチェブロイル鉱区の延長に関するカザフスタンとの協議については最終合意には時間を要するが交渉を開始しており、ナミビアの開発についても楽観的な見通しを示している。Chevronは上流開発ポートフォリオの最適化を進めており、(旧Hess分を除く)通年の生産量増加はガイダンス範囲(6~8%)の上限に近くなる見通し。事業部門別の割合が上流85%、下流15%となっており、下流部門の比率は現状維持の見通し。

 

(3) 温室効果ガスの排出削減と電力需要の拡大に対応する米系メジャーの設備投資

ExxonMobilは脱炭素化技術のグローバル市場を構築するためには排出削減を測定可能にするために原単位のベースラインを設けるべきと提案している([3])。2023年のデンベリー買収によりCO2パイプラインネットワークと年間5億トンを超える産業排出量に近い十分な地質貯蔵容量を確保、8つのサードパーティ顧客と契約し計1,100万トン/年のCO2を調達している。テキサス州ベイタウンのブルー水素・アンモニアプロジェクトが稼働すればさらに年間700万トンの回収排出量を追加できるが最終投資決定のスケジュールは遅れる可能性が示唆されている。

ExxonMobilは今年度200億ドルの自社株買い計画を進めているのに対し、設備投資計画はガイダンス(270~290億ドル)を若干下回るとの見通しを示している。Chevronの設備投資は計画(170億~175億ドル)の範囲内(Hess分を含む)、配当は据え置かれている。次世代コンピューターに加えてAI・DC向け低炭素電力供給関連の投資が見込まれており、今後発表される予定のExxonMobilとChevronの新年度の投資計画発表が注目される。

 

3. 欧州系メジャー企業

(1) Shell

Shell([4])の第3四半期後利益は53億ドル、前四半期36億ドルから48%の増益となった。ブラジルの記録的生産、アメリカ湾岸地域の生産が20年ぶりの高水準、LNGカナダの増産/本格稼働により石油・天然ガス生産は5%増の278万boedとなった。Shellは2028年末までに構造的コストを(2022年度比)50~70億ドル削減する目標を掲げており、第3四半期末の有利子負債は740億ドル、前四半期末757億ドルから減少した。原油価格の下落は資産価格の低下/M&Aの好機に繋がるという見方を示しており、深海油田、ガス田、下流資産買収の提案も増える中、投資基準の目線を上げ、自社株買いと有機的・非有機的投資案件を選別するとしている。

表4 Shell決算概要
表4 Shell決算概要
出所:Evaluate Energy、Shell決算資料よりJOGMEC作成

(2) BP

BP([5])の第3四半期純利益は12億ドル、前四半期16億ドルから減少した。有利子負債748億ドル、設備投資34億ドルはいずれも横ばいとなっており、年間の設備投資着地見込みも145億ドルに据え置かれている。2026~27年の資本支出枠130~150億ドルに変更なく、2027年末までの資産売却200億ドルによる負債削減目標を維持している。この業績は第3四半期の石油・天然ガス生産量が前期比3%増の232万boedを記録した中で達成され、年間の生産量は2024年比横ばいから増加に上方修正した。

探査活動ではブラジル・ブメランゲ油田の発見について初期の調査結果が有望でガス対原油比率、コンデンセート対ガス比率、および埋蔵量の推定のための試験を継続しているとしている。また中下流事業のカストロールとゲルゼンキルヒェン製油所の売却を進める一方、再生可能エネルギーのLightsource BPに対する投資は検討の初期段階にあり、米国メキシコ湾岸資産の一部売却を含めポートフォリオを見直す動きが継続している。

表5 BP決算概要
表5 BP決算概要
出所:Evaluate Energy、BP決算資料よりJOGMEC作成

(3) TotalEnergies

TotalEnergies([6])の第3四半期純利益は37億ドル、前四半期27億ドルから37%の増加となった。ブラジル、米国、アルゼンチン、デンマークにおける継続的な増産と、マレーシアの上流資産(SapuraOMV)および米国イーグルフォードの権益買収により石油・ガス生産は増加傾向にある。モザンビークLNGプロジェクトについてプロジェクト総額200億ドルは変わっておらず(過去4年間にTotalEnergiesが支出してきた45億ドルは予算内)、2029年末までに200~205億ドルでプロジェクトを完遂する計画は不変とした。

TotalEnergiesは米国預託証券(ADR)プログラムを終了し、転換された普通株は12月8日よりニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場される。2025年度の設備投資は170億~175億ドルの範囲となる見通し、純負債は2025年第3四半期末時点で246億ドルとなり、前四半期末の259億ドルから減少。ADRへの転換は株式の9~10%となる見込みであるが、自社株買いは上場したばかりのニューヨーク市場ではなくパリ証券取引所で実施される。

表6 TotalEnergies決算概要
表6 TotalEnergies決算概要
出所:Evaluate Energy、TotalEnergies決算資料よりJOGMEC作成

(4) 注目される欧州系メジャーの上流開発投資

Shellは石油市場が供給過剰となるシナリオがあり原油価格はさらに逆風にさらされると見ているが、米系メジャーが供給不足への懸念を示しているのと対照される。Shellは保有する太陽光、風力、貯蔵用資産への設備投資を見直し、事業ポートフォリオの効率化に注力している。BPも米国の洋上風力発電を縮小、太陽光発電、陸上風力発電、蓄電池事業の50%パートナーを探している。TotalEnergiesも規制緩和された市場であるテキサス州電気信頼性評議会Ercot、カリフォルニア独立システムCalifornia_ISO、および米国東部13州とコロンビア特別区PJMインターコネクションに重心を移している。

パリ協定以降、再生可能エネルギー投資による低炭素技術投資で先行してきた欧州系メジャー企業各社が石油・天然ガスの増産に動く中、上流開発投資の拡大が注目される。

 

4. まとめ

メジャー企業5社の業績は引き続き堅調となったが、上流開発投資の拡大には慎重姿勢を示している。上流開発投資に占めるおける米国シェール等の非在来型生産割合の増加による自然減退率が上昇する中、フロンティア探査が再び注目を集めているが、メジャー企業は探鉱投資においてもバランスの取れたアプローチを志向しており、インフラ主導の大型開発とフロンティア探査のバランスに重点を置いている。

またメジャー企業は次世代コンピューターの活用やAI・DC関連投資にも注目している。AIの活用による探鉱・開発・生産の各分野で効率性・生産性を改善に加え、再生可能エネルギー投資に懐疑的であった米系メジャー企業も安定した電力供給に対する需要増加が見込まれる高効率天然ガス火力発電などに積極姿勢を示している。化石燃料回帰の動きとともに低炭素化技術・電化対応に関連する設備投資動向にも注目したい。

 

 

[1] ExxonMobil 3Q 2025 Earnings Release, October 31, 2025
https://corporate.exxonmobil.com/news/news-releases/2025/1031-exxonmobil-announces-third-quarter-2025-results

[2] Chevron News release, October 31, 2025
https://chevroncorp.gcs-web.com/static-files/4aaa3d8c-2f68-49fd-a253-378fb877f5a8

[3] “Exxon Leads Push for Unified CCS Standards Ahead of COP30” Energy Intelligence, October 27, 2025
https://www.energyintel.com/0000019a-24d2-d536-a7de-3fd26d000000

[4] Shell Q3 2025 Results Press Release, 3rd Quarter Unaudited Results, October 30, 2025
https://www.shell.com/investors/results-and-reporting/quarterly-results.html

[5] BP p.l.c. Group results: Third quarter and nine months 2025, November 4, 2025
https://www.bp.com/content/dam/bp/business-sites/en/global/corporate/pdfs/investors/bp-third-quarter-2025-results.pdf

[6] TotalEnergies Third quarter 2025 Results, October 30, 2025
https://totalenergies.com/system/files/documents/totalenergies_pr-results-3q25_2025_en.pdf

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