ページ番号1010667 更新日 令和7年12月1日
原油市場他: OPECプラス産油国が2026年末までの公式減産措置の実施を確認するとともに、OPECプラス有志8産油国は2026年1~3月の原油生産を当初予定通り据え置きへ(速報)
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概要
- OPEC及び一部非OPEC(OPECプラス)産油国は2025年11月30日に閣僚級会合を開催し、現在実施中の公式減産を当初予定通り2026年末まで実施することを確認した。
- また、同日別途OPECプラス有志8産油国が会合を開催し、11月2日に開催された前回の会合において決定された、2026年1~3月の原油生産量の据え置きを当初予定通り実施することとした。
- 次回のOPECプラス産油国閣僚級会合は2026年6月7日、OPECプラス有志8産油国会合は同年1月4日に、それぞれ開催される予定である。
- 中東における安全保障を確保するために米国からの軍事支援を増強するため、OPECプラス産油国の中心的存在であったサウジアラビアは、米国のトランプ大統領の原油価格抑制の要望に沿うよう便宜を図るべく、OPECプラス産油国の増産を主導しようとした。
- しかしながら、8月以降ウクライナがロシアのエネルギー供給関連インフラ等をより積極的に攻撃するようになった結果、ロシアの原油供給等が混乱を来すようになった。
- 加えて、10月22日には米国がロシア石油産業等に対し制裁を発動する旨発表した結果、同国産石油の大口引き取り国であった中国やインド等が購入を見送る兆候が見られるようになった。
- このようなことから、当初は、ウクライナとの戦闘終結に向けた和平計画を巡る交渉を自国に優位に持ち込もうとするため、米国に便宜を図るべく、サウジアラビアの増産方針に対し異論を唱えなかったロシアは、サウジアラビアを含む中東湾岸産油国と異なり、原油増産余力が削がれる結果、OPECプラス有志8産油国による増産決定に伴う原油価格下落を供給拡大で相殺することが困難となったこともあり、原油価格の維持もしくは引き上げを図るべく、増産に難色を示すようになったものと見られる。
- 結果として、OPECプラス産油国は2025年10~12月については、増産を決定したものの、各月前月比日量13.7万バレルの増産と、9月の前月比日量54.7万バレルの増産から、大幅に規模が縮小することとなった。
- また、例年冬場の後半は、米国を初めとして世界主要国及び地域の石油需要が軟調になりやすいことを考慮し、11月2日に開催されたOPECプラス有志8産油国会合においては、先制的に増産の凍結を決定することにより、原油相場のさらなる下落の防止を図ろうとしたものと見られ、その方針は今次会合でも維持されることとなった。
- OPECプラス有志8産油国の2026年1~3月の原油生産据え置き方針の維持は、既に事前に石油市場関係者間である程度織り込まれる形となっていたことものの、それでも世界石油需給を緩和させるわけではなかったことが、原油相場を下支えする格好となった他、米国のベネズエラ攻撃の可能性に伴う同国からの石油供給途絶懸念が増大したこともあり、日本時間12月1日午前9時現在原油価格は前週末終値比1バレル当たり0.85ドル程度上昇の59.40ドル近辺で推移している。
(OPEC、IEA、EIA他)
1. 協議内容等
- OPEC及び一部非OPEC(OPECプラス)産油国は2025年11月30日に閣僚級会合をテレビ会議形式で開催した(巻末参考1参照)。
- 会合では、現在実施中の公式減産を当初予定通り2026年末まで実施することを確認した(表1参照)。

- 加えて、OPECプラス産油国共同閣僚監視委員会(JMMC: Joint Ministerial Monitoring Committee)を2ヶ月毎に開催するとともに、世界石油市場の状況、(OPECプラス各産油国の)原油生産水準及び減産遵守状況を同委員会において検証する他、必要と判断される如何なる時において追加会合を招集したりOPECプラス産油国閣僚級会合の開催を要請したりする権限をJMMCに付与する旨再確認した。
- また、減産の完全遵守と(原油生産目標を超過して生産した場合には追ってその超過生産分を追加して減産することにより)減産を補償する措置に固執することが極めて重要であることを改めて強調した。
- さらに、2027年のOPECプラス産油国の原油生産基準(設定の際)の参考とするため、産油国の最大持続可能生産能力(MSC: Maximum Sustainable Production Capacity)を評価する方式を開発するよう(2025年5月28日に開催された前回のOPECプラス産油国閣僚級会合において)OPEC事務局に義務付けたことを受け、OPECプラス産油国は事務局が開発した(原油生産能力評価)方式を今回の閣僚級会合において承認した(後述)。
- なお、次回のOPECプラス産油国閣僚級会合は2026年6月7日に開催される予定である。
- また、別途11月30日には、自主的な減産措置を実施してきたOPECプラス有志8産油国(アルジェリア、イラク、クウェート、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、カザフスタン、オマーン及びロシア)による会合がテレビ会議形式で開催された(巻末参考2参照)。
- 当該会合開催に際しては、2025年11月2日に開催されたOPEC有志8産油国による会合において決定された、季節的要因(例年冬場の後半は米国を初めとして世界主要国及び地域の石油需要が軟調になりやすいことを指しているものと見られる)を理由とした、2026年1~3月の増産の一時停止(原油生産量の据え置き)を(当初予定通り)実施することを再確認した(表2参照)。

- また、市場の状況次第では、2025年4~9月において実施してきた日量216万バレルの自主的減産緩和、及び現在実施途上段階にある日量165万バレルの自主的減産緩和につき、OPECプラス有志8産油国が一時的に停止したり撤回したりすることもありうるとし、石油市場の安定を確保するための継続的な努力の一環として、原油生産を柔軟に調整することの重要性を再確認した。
- さらに、目標の完全遵守に固執することを改めて表明し、2024年1月以降の目標を超過した生産量につき、(追って減産目標を上回って減産することにより)全量を補償する意志を確認した。
- なお、市場の状況、各産油国の原油生産目標遵守及び補償の各状況を検討するため、次回のOPECプラス有志8産油国による会合を2026年1月4日に開催する予定とした。
2. 今回の会合の結果に至る経緯及び背景等
- 2025年5月28日に開催された前回のOPECプラス産油国閣僚級会合においては、足元で実施中であった公式減産を予定通り2026年末まで実施することを確認した。
- また、5月31日には、別途OPECプラス有志8産油国が会合を開催し、2025年4月より実施中である増産につき、5~6月と同様7月についても前月比日量41.1万バレルと、4月(前月比日量13.8万バレルの増産)の約3倍の規模で実施する旨決定した。
- 米国大統領の就任直後の2025年1月23日に、トランプ氏は、サウジアラビアを含むOPEC産油国に対し原油価格の引き下げを要求する意向である旨表明した他、1月24日にはOPEC産油国に対し原油価格を引き下げるべきである旨実際に要求したこともあり、原油相場に下方圧力が加わった結果、トランプ氏の大統領就任直前の1月17日には1バレル当たり77.88ドルの終値であった原油価格は5月30日には60.79ドルの終値へと下落傾向となった。
- それでも、足元では米国等が夏場のドライブシーズンに伴うガソリン需要期に突入しつつあることにより季節的な石油需給の引き締まり感が市場で感じられやすくなってきていた他、イラン核問題を巡る米国とイランとの交渉の過程においてイランに対し米国がさらなる圧力を加えることも想定されえたうえ、ウクライナとロシアとの間での戦闘停止を巡る協議が紆余曲折を経る可能性があったことなどから、原油価格に上方圧力が加わるとともに米国においてガソリン小売価格を含め物価が上昇する結果、消費者の不満が高まることに伴い大統領支持率に影響する恐れがある他、経済を活性化するための米国金融当局による政策金利引き下げ等がより困難になるという、トランプ大統領の望まない展開となることが懸念された。
- OPECプラス有志8産油国による増産加速の決定はそのような中で行なわれており、国交が再開するなど緩和してきたとはいえ、なお中東を巡りイラン等との間で緊張が高まると言ったリスクを抱える中、米国による外交及び軍事的な支援を確保する必要のあるサウジアラビアを中心とするOPECプラス産油国が増産規模拡大を主導することを通じ原油価格に下方圧力を加えることにより、トランプ大統領に便宜を図る格好となった。
- また、ウクライナとの戦闘終結等の和平計画策定に向けた交渉を、できる限り自国に有利な方向に持ち込むため、米国に対し友好的な姿勢を示すと言った側面があったこともあり、最終的にはロシアもサウジアラビアが事実上主導する増産の加速を支持する格好となったものと見られる。
- OPECプラス有志8産油国は7月5日、8月3日、9月7日、10月5日、及び11月2日に会合を開催し、それぞれ、8月、9月、10月、11月および12月以降における原油生産の取り扱いにつき協議した。
- そして、7月の会合においては8月の原油生産を前月比で日量54.8万バレル、8月3日の会合においては9月の原油生産を前月比で日量54.7万バレル、それぞれ拡大することを決定した(これにより、9月を以てOPECプラス有志8産油国による日量216万バレル(に加えUAEの日量30万バレル)の段階的増産は完了することとなった)一方、9月、10月および11月の会合では、当初2026年末まで実施する予定であった日量165万バレルの減産の段階的緩和に踏み込んだが、10月、11月及び12月の原油生産量を前月比で日量13.7万バレルと小幅の増産にとどめた他、特に11月に開催された会合においては、2026年1~3月の原油生産量を据え置きとする旨決定した。
- 前述の通り、従来ロシアは、ウクライナとの戦闘終結と和平合意に向け、ロシアが有意な条件を獲得するために、米国に事実上の便宜を図るべく、サウジアラビアが主導する大幅な増産を受け入れてきた側面がある。
- しかしながら、特に8月に入り、ウクライナによるロシアの製油所、石油ターミナルおよび天然ガス処理施設を含むエネルギー供給関連インフラ等への無人機等を利用した攻撃が頻発するようになるとともに、ロシアの石油生産が脅かされるようになった(8月から11月半ばにかけウクライナはロシアのエネルギー供給関連インフラを少なくとも40回余り攻撃した一方、2025年1月から7月にかけては21回であったとされる)。
- 加えて、10月22日には、米国がロシア大手石油会社ロスネフチおよびルクオイルに対し制裁を発動した結果、西側諸国等がロシア産石油引き取りを回避するようになった後の同国産石油の大口引き取り国であった中国やインド等が引き取りを見送る兆候が見られるようになるなど、米国は必ずしもロシアに友好的な姿勢を示さなくなり始めたこともあり、ロシアはサウジアラビアによる大幅な増産に異議を唱えるようになったものと見られる。
- 結果として、OPECプラス有志8産油国は2025年10~12月における原油生産につき増産としたものの、各月前月比日量13.7万バレルの増産規模と、9月の前月比日量54.7万バレルの増産から、大幅に規模が縮小する(いわば事実上ほぼ名目的な増産となる)こととなった。
- また、11月2日に開催されたOPECプラス有志8産油国会合において、2026年1~3月における原油生産据え置きを主張したのはロシアのノバク副首相であったとされ、8月以降激化したウクライナによるロシアの石油を含むエネルギー供給関連インフラへの攻撃や、10月22日に発表された米国によるロシア石油産業に対する制裁等により、ロシアからの石油輸出(従って増産)がより困難になりつつあることにより、今後ロシア以外のOPECプラス有志7産油国による増産に伴う世界石油需給緩和感の醸成に伴い原油相場に下方圧力が加わりやすい状況となりつつある中、増産が事実上困難なロシアは政府原油収入(そしてその一部はウクライナとの戦闘への費用へと充填されるものと見られる)の減少を招きやすくなることから、原油生産を据え置く旨決定することにより、原油価格の維持(もしくは持ち直し)を図ろうとしたものと見られる。
- また、サウジアラビアとしても、足元の原油価格は財政収支均衡価格(1バレル当たり90ドル程度とされる)を大きく下回っており、財政状態は必ずしも良好ではないことから、2026年1~3月における原油生産拡大の停止には強く反対しなかったものと考えられる。
- なお、OPECプラス有志8産油国の2026年1~3月の原油生産拡大停止に対し、市場関係者は、OPECプラス有志8産油国は世界石油需給バランスが大幅な供給過剰に振れることを危惧して、原油生産拡大を停止せざるをえない事態に追い込まれた(そうでなければ、例年1~3月は季節的に需給が緩和しやすいとはいえ、気候が温暖だったり寒冷だったりするなどの不透明要因が残る中、原油生産の取り扱いについてより慎重な姿勢で望んだ(例えば、1ヶ月毎に原油生産の取り扱いにつき判断し、様子を見る)であろう)と解釈したことから、11月2日の会合開催後、原油価格はむしろ1バレル当たり60ドル割れの水準へと変動領域を切り下げたこともあり、米国のトランプ大統領もOPECプラス有志8産油国の判断につき特段不満を述べることはなかった。
- 11月30日に開催されたOPECプラス有志8産油国会合においても、米国の対ロシア制裁が緩和される兆候が見られるわけでもなく、またウクライナによるロシアのエネルギー供給関連インフラ等への攻撃も停止しつつあった訳ではなかったことから、OPECプラス有志8産油国による原油生産方針を巡るロシアの考え方は変らず、従って、2026年1~3月の原油生産据え置き方針は維持される旨決定されることとなったものと見られる。
- 他方、2024年12月5日に開催されたOPECプラス産油国閣僚級会合においては、従来2025年12月末まで実施予定であったOPECプラス19産油国による公式減産措置を2026年12月末まで延長する旨決定したが、今回のOPECプラス産油国閣僚級会合において公式減産措置を2027年12月末まで延長する旨決定した場合、OPECプラス産油国が世界石油需給引き締めによる原油価格の浮揚を明確に意識していると市場から受け取られることにより、会合後の原油価格が上昇する場面が見られるとともに、原油価格の上昇を良しとしない米国のトランプ大統領の不興を買う恐れがあったため、そのような判断は次回OPECプラス産油国閣僚級会合では見送られることとなったものと考えられる。
3. 原油価格の動きと石油市場における今後の注目点等
- OPECプラス有志8産油国による2026年1~3月の原油生産維持方針の決定は、既に事前に石油市場関係者間の認識としてある程度織り込まれる形となっていたものの、それでも世界石油需給を緩和させるものではなかったことが、原油相場を下支えする格好となった。
- 加えて、11月16日からの週に電話会談を実施した際、米国のトランプ大統領がベネズエラのマドゥロ大統領に対し自発的な退陣を要求し、拒否した場合には軍事行動を含む方策の実施を検討する意向である旨表明したと11月29日にウォールストリート・ジャーナルが報じた他、ベネズエラ空域は事実上閉鎖されている旨11月29日に米国のトランプ大統領が警告した(その後、同警告につき余り深く考えるべきではないとしてトランプ大統領は事実上自身の発言を訂正した旨11月30日夕方(米国東部時間)に伝えられる)ことにより、米国のベネズエラ攻撃の可能性に伴う同国からの石油供給途絶懸念が市場で増大したことが、原油相場に上方圧力を加えた。
- このため、日本時間12月1日午前9時現在原油価格は前週末終値比1バレル当たり0.85ドル程度上昇の59.40ドル近辺で推移している。
- 2022年2月24日に開始されたロシアとウクライナとの間の戦闘については、トランプ氏は2025年1月20日の米国大統領就任前、大統領就任後24時間以内に終結させる意向である旨明らかにしていたが、実際には24時間以内に戦闘は終結せず、また現時点に至るまで停戦の明確な兆候も見られない。
- また、戦闘停止に向けたトランプ大統領の言動が、ある時には、ウクライナに対し対ロシア戦闘積極化を支援することを示唆したり、またある時にはロシアに対し友好的な姿勢を示したりするなど、揺らいでいる様に見受けられる(これについては、ルビオ国務長官等がロシアに対し強硬である反面、ウイットコフ中東担当特使等がロシアに融和的であるなど、政権幹部の姿勢が分裂していることが背景にある旨示唆する(トランプ政権は否定している)向きもある)。
- 他方、ロシアはほぼ一貫して、ウクライナ東部のドンバス地方をロシアの割譲するよう要求する反面、ウクライナのゼレンスキー大統領に加え、欧州諸国等は、少なくとも現状の前線で以て戦闘を凍結することを前提に和平協議を開始するとしており、依然として両者の姿勢には隔たりがあることを含め、近い将来ウクライナとロシアが停戦等につき合意するとともに、西側諸国等による対ロシア制裁が緩和されることにより、ロシアからの石油を含むエネルギー供給の速やかな円滑化が図られる可能性はそれほど高くないものと考えられる。
- むしろ両者の溝が埋まらないことにより、西側諸国等が、ロシア産エネルギーを引き取る第三国に対し二次制裁の類を発動すると言ったことを含め、追加制裁をロシアに対し実施する結果、中国やインドと言った諸国等による石油を含むロシア産エネルギーの調達が消極化する(つまりロシア産エネルギーが世界市場から事実上排除される)とともに、それら諸国等は代替供給源として、中東地域からの石油等の調達を活発化しようとすることにより、従来中東産石油等を引き取っていた消費国及び地域との間で競合が激化する、もしくは激化するとの懸念が市場で発生する可能性がある。
- そして、現時点では2026年に向け世界石油供給が需要を最大日量500万バレル程度超過すると見込まれるものの、ロシアの石油供給(2024年時点で同国からの原油輸出が日量487万バレル、石油製品輸出が同218万バレルと推定される)が世界市場から排除されることになるため、前述の世界石油供給過剰が相殺されて余りある形となる結果、石油需給引き締まり感が市場で誘発されやすくなるとともに原油相場等に上方圧力が加わると言った展開となることを想定されうる。
- また、8月以降ウクライナによるロシアの石油関連インフラ攻撃が活発化しているが、最も効果があり最も即効性のある制裁は、ロシアの石油関連インフラへの攻撃であり、これによりロシアの石油産業での活動が大幅に制限されるとともに(ウクライナとの)戦闘活動が著しく限定されることになるであろう旨9月14日にウクライナのゼレンスキー大統領が明らかにしているところからすると、ウクライナによるロシアの石油を含むエネルギー供給関連インフラ攻撃は少なくとも今暫く継続するものと見られる(また、ウクライナのロシアのエネルギー供給関連インフラ攻撃は長い間製油所が中心であったが、11月14日未明(現地時間)には、ロシア南西部の黒海沿岸都市ノボロシイスクにある石油出荷施設に対しウクライナ軍が無人機等を利用して攻撃した結果、停泊していた船舶及び石油貯蔵施設、集合住宅等が損傷した他、同施設からの石油輸出が停止した(同石油出荷施設及び近隣のカスピ海パイプラインコンソーシアム(CPC: Caspian Pipeline Consortium)石油出荷施設からは、ロシア産原油日量70万バレル程度、カザフスタン産原油同150万バレル程度、合計同220万バレル程度が出荷されているとされ、これは世界石油需要の約2%に相当する)旨同日報じられるなど、攻撃対象が拡大するとともに、より大規模にロシアからの石油供給等が影響を受ける可能性が高まりつつある)ことから、この面ではより頻繁に原油相場に上方圧力が加わる場面が見られる可能性があるものと考えられる。
- 2025年4月にOPECプラス有志8産油国は増産を開始したが、OPECプラス産油国の盟主の一国であるサウジアラビアは同国を含む中東地域の安全保障確保のために、武器の売却や軍隊の駐留を含む軍事支援等の面で米国に対し事実上の便宜を図るべく、米国のトランプ大統領がしばしば行なっていたOPEC産油国に対する原油価格抑制の要求(米国経済活性化のために同国金融当局に政策金利引き下げを要求しているが、物価上昇の沈静化が緩慢なこともあり金融当局関係者の姿勢が必ずしも積極的ではないことから、物価上昇を沈静化させるために原油価格の抑制を図ろうとしていることが一因であるものと考えられる)に応えようとしていることに加え、OPECプラス産油国の盟主のもう一国であるロシアもウクライナとの戦闘終結に向け自国の要求(ウクライナ東部ドンバス地方のロシアへの割譲等)をウクライナに受け入れさせるべく米国の働きかけるため米国に事実上の便宜を図ろうしていたことが、原油価格下落に伴う原油収入、そしてそこから得られる国家収入の減少の恐れがあるにもかかわらず、9月にかけ積極的な増産を行なってきた背景にあるものと考えられる。
- ただ、サウジアラビア(同国のムハンマド皇太子が訪米するとともに、11月18日には米国のトランプ大統領と会談を実施したが、その場において、トランプ大統領は、従来イスラエルにしか供与していなかったF35ステルス戦闘機を含め軍事用資機材の売却を承認した)は、引き続き米国に便宜を図る格好とすべく、原油価格が下落しても大幅な増産を希望していることが覗われる場面があった(11月のOPECプラス有志8産油国の原油生産につきサウジアラビアが前月比で日量27.4~54.8万バレルの拡大を希望している旨10月3日に伝えられていた)が、これまでの増産継続により米国への便宜を図るべくサウジアラビアに同調して協力してきたにもかかわらず、ウクライナとの戦闘を巡り政権発足後初めて本格的な対ロシア制裁を発動した他、ロシアとの間で事業を実施する国等に対し制裁を発動する法案を米国共和党が準備しつつある旨11月16日に米国のトランプ大統領が明らかにした(そしてそれに対しトランプ大統領は差し止めの姿勢を示しているわけではない)等、さらなる対ロシア制裁強化の動きが見られつつあるなど、米国はロシアに対し必ずしも友好的ではない対応を行ないつつあることもあり、ロシアはサウジアラビアによる大幅増産には必ずしも同意しないようになってきているように見受けられる(原油価格下落による国家収入(またそのうちの一部はウクライナとの戦闘のための費用に充当されているものと見られる)の減少を理由としている)とともに、サウジアラビアによる大幅増産の希望がそのままの規模でOPECプラス有志8産油国の増産の実施決定として実現しない状態となりつつある。
- 今後も、米国がロシアに対する対応をより友好的なものへと転換する、といったことでなければ、ロシアは大規模な増産、もしくは増産そのものに対し消極的な姿勢を示すことにより、OPECプラス有志8産油国間での増産に向けた意思決定が複雑化する結果、OPECプラス産油国の増産ペースが鈍化するとともに、この面では、世界石油需給の一層の緩和感が市場で醸成されにくくなることにより、原油相場へのさらなる下方圧力も加わりにくくなるものと考えられる。
- また、2026年にかけ原油価格がさらに大幅に下落したり、下落する兆候が見られたりするようであれば、OPECプラス産油国は増産自体を見合わせると言った展開となることも考えられる(その場合、米国においても原油価格下落によりシェールオイル開発・生産企業の収益が悪化するものと見られることから、これら企業によるトランプ大統領支持率に対する負の影響への懸念が増大することもあり、トランプ大統領もさらなる原油価格の下落は望まなくなるとともに、OPECプラス産油国に対する圧力も緩和する可能性があるものと考えられる)。
- なお、前月比で日量13.7万バレルの増産(増産規模の中では最も小さなものと考えられる)を継続した場合でも、12ヶ月すれば合計日量165万バレル程度の増産となるため、そう遠くない時期にOPEC有志8産油国による自主的な減産は完全に解消する可能性もある。
- そうなった場合には、2022年11月より実施されている日量193万バレル程度の減産(当初は日量200万バレルであったが、2023年12月21日にアンゴラがOPECから脱退すると発表したため、同国の減産日量7万バレル分が減少している)の緩和を実施するかどうかの議論となるが、日量193万バレルの減産はOPECプラス有志8産油国ではなく、OPECプラス19産油国によるものであるため、現在減産を行なっていないイラン、リビア及びベネズエラを含め、全OPECプラス産油国間で原油生産方針につき協議しなければならなくなることから、より議論が複雑化しやすく、従って意思決定までに紆余曲折を経やすくなる点に注意する必要があろう。
- 他方、2027年のOPECプラス産油国の原油生産基準(設定の際)の参考とするため、産油国の最大持続可能生産能力(MSC: Maximum Sustainable Production Capacity)を評価する方式を開発するよう2025年5月28日に開催された前回のOPECプラス産油国閣僚級会合においてOPEC事務局に義務付けたことを受け、今般のOPECプラス産油国閣僚級会合においてOPECプラス産油国はOPEC事務局が開発した原油生産能力評価方式を承認したとされる。
- OPECプラス産油国は2024年12月5日に閣僚級会合を開催した際、外部の専門機関(IHSマークイット(IHS Markit)、ウッド・マッケンジー(Wood Mackenzie)及びライスタッド・エナジー(Rystad Energy))によるOPECプラス各産油国の原油生産能力評価を2026年11月初頭にかけ実施するとともに、2027年のOPECプラス各産油国の原油生産目標設定のための参考とするとしていた。
- そして、2025年9月18~19日にオーストリアのウィーンにおいて対面形式でOPECプラス各産油国の生産能力の評価に関する会合を開催する予定である旨9月16日に伝えられていた。
- ただ、今回のOPECプラス産油国閣僚級会合開催後、ロシア、ベネズエラ及びイランを除くOPECプラス各産油国の原油生産能力を検討するため、コンサルタントであるデゴリヤー・アンド・マクノートン(DeGolyer & MacNaughton)(2019年12月11日に行なわれたサウジアラビア国営石油会社サウジアラムコの株式公開のための同社の埋蔵量評価を実施した企業とされる)を選定した他、ロシア、ベネズエラ(これら産油国は西側諸国等から制裁を科されている)については、前述のコンサルタントとは異なる組織が評価する(国外企業が石油産業等を評価することに懸念があるとしており、インド企業になる予定であるとされる)他、イラン(同じく西側諸国等から制裁を科されている)については2026年8~10月の平均原油生産量を用いて評価する方向であることを含め、2027年に新規の原油生産能力(基本的には、90日以内に到達でき、その後1年間維持できる原油生産量として定義されると11月30日に報じられる)の利用が可能となるよう、OPECプラス各産油国の原油生産能力評価を2026年1~9月において実施する予定である旨別途伝えられるなど、今回のOPECプラス産油国閣僚級会合において発表された、OPEC事務局が開発した各産油国の原油生産能力評価方式のOPEC各産油国による承認は、各産油国の具体的な原油生産能力の算定数値結果を承認したというよりは、評価方法の枠組みを承認したという段階にとどまっていることが示唆される。
- OPECプラス各産油国の原油生産能力を巡る評価が、その後の各産油国の原油生産目標設定に大きく影響するものと見られ、原油生産能力が低く評価された場合、現状の原油生産量から増産余地の余りない水準で原油生産目標が設定されやすくなるものと考えられる。
- その場合、原油生産目標を理由に増産が制限されやすくなることから、その産油国において石油探鉱・開発活動を推進する国外の石油会社の増産意欲が削がれやすくなるとともに、国外の石油会社が同産油国において新規に石油探鉱・開発活動に参入しようとしなくなる(参入しても、生産制限を課せられる結果、投下資本の回収が遅延することにより収益が低下しやすい)ことから、このような産油国は長期に渡り原油生産、及び原油販売(及びそれから得られる政府)収入の拡大が困難な状態に陥りやすい。
- このため、各産油国は自国の原油生産能力につき現状を大きく上回る水準を主張しがちになるとともに、自国の主張を下回る水準で原油生産能力(及び原油生産目標)が設定された産油国は、そのような設定を不服として、OPEC(もしくはOPECプラス)から脱退するといった展開となることも想定されうる。
- 2023年6月4日に開催されたOPECプラス産油国閣僚級会合後、前述の3機関による評価の結果、2024年に到達しうるアンゴラの原油生産量(つまりこれが事実上の原油生産能力及び原油生産目標であると解釈される)は日量111万バレル(それまでの原油生産目標は同128万バレルであった)とされたが、アンゴラはこの評価を不服とし、日量111万バレルの原油生産目標に固執することなく、足元の水準である日量118万バレルで原油を生産する意向である旨11月30日に開催されたOPECプラス産油国閣僚級会合の際にアンゴラのOPEC理事(当時)であるペドロ(Pedro)氏が明らかにした他、2024年原油生産目標の引き下げに抗議する旨の書簡をOPEC事務局に送付した旨12月1日にアンゴラのアゼベド(Azebedo)鉱物資源・石油相が声明を発表、12月21日には、(原油生産目標が)自国の利益に合致しないとして、OPECを脱退する旨アンゴラが表明した。
- この先も、自国の原油生産能力の評価(及びそれを基準として設定される原油生産目標)への不満が高まることにより、一部産油国がOPEC(及びOPECプラス)を脱退するようだと、世界石油供給に占めるOPECプラス産油国の占める比率が低下することにより、OPECプラス産油国の世界石油市場支配力が縮小することから、OPECプラス産油国の結束を乱す恐れのある、各産油国の原油生産能力評価を巡る作業については慎重に進めがちとなる結果、実際にこのような評価が完了するまでには長い期間を要する可能性があるものと考えられる。
- そして、評価が完了するまでの間は、UAEの原油生産目標の引き上げ(つまり増産)を含め個別の原油生産目標の調整が行なわれる場面が見られないわけではないものの、概ね、既存の各産油国の原油生産目標水準の比率で全体の原油生産目標の増減を各産油国に配分することにより、各産油国の原油生産目標が決定されていくものと考えられる。
(参考1: 2025年11月30日開催OPECプラス産油国閣僚級会合時声明)
40th OPEC and non-OPEC Ministerial Meeting
Press Statement
In light of the continued commitment of the OPEC and non-OPEC Participating Countries in the Declaration of Cooperation (DoC) to achieve and sustain a stable oil market, the Participating Countries decided to:
- Reaffirm the Framework of the Declaration of Cooperation, signed on 10 December 2016 and further endorsed in subsequent meetings.
- Reaffirm the level of overall crude oil production for OPEC and non-OPEC Participating Countries in the DoC as agreed in the 38th OPEC and non-OPEC Ministerial Meeting until 31 December 2026.
- Reaffirm the mandate of the Joint Ministerial Monitoring Committee (JMMC) to closely review global oil market conditions, oil production levels, and the level of conformity with the DoC, assisted by the OPEC Secretariat. The JMMC meeting is to be held every two months.
- Reaffirm the JMMC’s authority to hold additional meetings, or to request an OPEC and non-OPEC Ministerial Meeting at any time to address market developments, whenever deemed necessary.
- Reiterate the critical importance of adhering to full conformity and the compensation mechanism.
- In reference to the decision of the 39th ONOMM; mandating the OPEC Secretariat to develop a mechanism to assess participating countries’ maximum sustainable production capacity (MSC) to be used as reference for the 2027 production baselines for all DoC countries, the Participating Countries approved the mechanism developed by the Secretariat.
- Reaffirm the framework of the Charter of Cooperation (CoC), signed on 2 July 2019, and request the OPEC Secretariat to develop a plan and convert it into programs to achieve the full objectives of the CoC, as it was originally mandated, and present it to the 41st OPEC and non-OPEC Ministerial Meeting.
- Hold the 41st OPEC and non-OPEC Ministerial Meeting on 7 June 2026.
(参考2: 2025年11月30日開催OPECプラス有志8産油国会合時声明)
Saudi Arabia, Russia, Iraq, UAE, Kuwait, Kazakhstan, Algeria, and Oman reaffirm commitment to market stability on steady global economic outlook and current healthy oil market fundamentals as reflected in low inventories
The eight OPEC+ countries, which previously announced additional voluntary adjustments in April and November 2023, namely Saudi Arabia, Russia, Iraq, UAE, Kuwait, Kazakhstan, Algeria, and Oman met virtually on 30 November 2025, to review global market conditions and outlook.
The eight participating countries reaffirmed their decision on 2 November 2025 to pause production increments in January, February, and March 2026 due to seasonality as detailed in the table below.
The eight participating countries reiterated that the 1.65 million barrels per day may be returned in part or in full subject to evolving market conditions and in a gradual manner. The countries will continue to closely monitor and assess market conditions, and in their continuous efforts to support market stability, they reaffirmed the importance of adopting a cautious approach and retaining full flexibility to continue pausing or reverse the additional voluntary production adjustments, including the previously implemented voluntary adjustments of the 2.2 million barrels per day announced in November 2023.
The eight countries reiterated their collective commitment to achieve full conformity with the Declaration of Cooperation, including the additional voluntary production adjustments that will be monitored by the Joint Ministerial Monitoring Committee (JMMC). They also confirmed their intention to fully compensate for any overproduced volume since January 2024.
The eight OPEC+ countries will hold monthly meetings to review market conditions, conformity, and compensation. The eight countries will meet on 4 January 2026.

以上
(この報告は2025年12月1日時点のものです)


