ページ番号1010669 更新日 令和7年12月2日
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概要
- 探鉱を取り巻く投資環境は目まぐるしく変化している。地政学的リスクの上昇、経済秩序の変化、脱炭素化機運の変化、市場環境の変化、技術の進展スピードなどである。加えて、探鉱開発の操業は大水深やシェールなどの必要な技術が高度化しており、参画から生産開始までが長期化している。
- しかし、アフリカや南米などでは安全保障上あるいは自国経済の基盤強化を急ぎ、技術力や資金力のある外国企業を誘致し、石油・ガスの開発を活性化させようとする産油国が見受けられ、欧米メジャーズに新たな参画機会を提供している。この数か月でも数多くの契約が成立。石油・ガスを重視する米政権のディール外交や後押しがその推進力の一因となっている可能性が指摘できる。
- 現状、アジアを中心に成熟エリア及びフロンティアでの新規の探鉱活動が行われており、たとえば、インドネシア、マレーシアやペルシャ湾岸などの成熟エリア、あるいは南米・アフリカの大西洋沿岸、東地中海及び黒海、さらにインド、中国やパプアニューギニアなど地下情報が乏しい未探鉱域で油ガスの発見に向けた掘削が行われている。
- 世界の油ガスの探鉱費は、油価が高騰した2010年代前半をピークに半減。2020年以降は、主にアジアや中東をはじめとした国営石油会社(NOC)が投資をけん引し、欧米企業は脱炭素化重視の中で探鉱支出を手控えてきた。最近のメジャーズの探鉱参加はこの傾向に変化をもたらすのだろうか。
- 欧米メジャーズはGHG排出量削減の長期目標を据え置くものの、石油・ガスの増産目標を改めて掲げ、現在、探鉱・開発を推し進める。「探鉱投資」を過度にアピールしていないが、生産分の埋蔵量を補填しようと意欲的だ。ただ、不確実性に直面する中で、いかに長期にわたって効率的な開発生産に繋げられていくか、手腕が試される。
1. 探鉱を取り巻く環境
投資環境の変化はめまぐるしい。ロシア・ウクライナ紛争や中東情勢の悪化などにより、各国政府においてエネルギー安全保障/エネルギーセキュリティの意識が高まっている。相次ぐ各国の経済制裁がエネルギー市場の分断に繋がり、自由貿易がもたらす効率的な流通機能が失われている。例えば、2022年までロシア産の石油は欧州向けの大半が既存パイプライン経由で流れていたが、石油禁輸措置により、パイプラインによる輸出量は約3割減少した一方、中国、インドなどの数か国への海上輸送が大幅に増加している。輸出規制や関税競争によるサプライチェーンの分断も石油開発においてコストアップや事業の非効率化をもたらしている。
セキュリティ意識の高まりと並行しエネルギートランジションへの優先度も変化している。再生可能エネルギーのコスト低下などを背景に国産の再エネ投資や電化投資は世界的に大きく伸びているが、他方で、トランプ大統領率いる米国新政権はそれまでの国際的な脱炭素化の推進役から、国内外の石油・ガス推進派に転じている。
市場環境の不確実性も顕著である。原油・LNG市場は、短期面では供給過剰感から下方圧力がかかるが、長期的な油ガス需要の見通しも依然不透明である。株主によるESG(環境・社会・ガバナンス)投資への圧力も流動的であり、AI、ビッグデータ、ロボティクスによる探査・掘削技術の効率化も目覚ましく未知数である。
2. 外資を誘致する動き
しかしながら、不透明感が高いからこそ、産油国は安全保障や経済基盤の強化に向けて外資を導入して探鉱を促す動きが見受けられ、加速している(表1)。
大きな動きとしては、膨大なポテンシャルのあるイラクである。同国の石油開発に2023年に参画したTotalEnergies(仏)だけでなく、2025年に入ってBP(英)、Chevron(米)、さらにExxonMobil(米)が続けて復帰した。イラク政府は、復帰したメジャーズの助けを借りて、さらなる石油増産と輸出増加を目指す意向である。
南米の成熟したガス生産国であるトリニダード・トバゴでは、ベネズエラやガイアナに隣接する未探鉱の広大な鉱区をExxonMobilに付与し生産分与契約を締結したと政府が発表した。これも個別交渉とみられる。
2026年末までにロシア産LNGを輸入停止する欧州では、ギリシャ政府がEnergeaをオペレーターにHelleniq EnergyとExxonMobilをパートナーに加えて、40年以上ぶりに沖合で掘削する計画を発表した。2025年11月上旬に同国を訪問した米国エネルギー省(DOE)のライト長官が立ち合う場で調印された。また同国政府は、米国メジャーのChevronに対しても別の大水深4鉱区に独占的交渉権を付与したことを明らかにしている。
日量10万バレルを生産するシリアでは、シャラー新大統領が米国を訪問したタイミングに、同国の担当大臣より、再建に向けて米国石油企業の参画への期待が示され、ConocoPhillips(米)やChevronの具体名にも言及した。オマーンやUAEなどの石油会社もシリア再建に向けて協力する意向を示しており、地中海に発見されたガス田と絡んで同国に関心が集まる。
こうした最近の動きの中には、米政権とのディールの中での外資誘致も多く含まれると推察される。
さらに11月下旬、米国が制裁を課した大手石油企業のRosneftやLukoilの国外資産を買収することにExxonMobil、ChevronやUAEのADNOCなど多数の石油会社が関心を示している、あるいはベネズエラの現マドゥロ大統領が政権維持の代わりに鉱区開放する用意がある旨のニュースが流れるなど、大産油国との間の取引にも話は及んでいる。
出所:各種報道より作成
| リビア[1] |
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| アルジェリア |
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出所:各種資料より作成
アフリカでは毎年のように大小多くの産油国で探鉱入札が実施されているが、リビアとアルジェリアではそれぞれ数十年ぶりの鉱区入札が実施され(表2)、アルジェリアは既にTotalEnergiesなど5鉱区の落札者が発表され、リビアではRepsol(西)やConocoPhiilips(米)含め40社以上の石油会社が入札に関心を示し盛況ぶりが伝えられる。ロシア‐ウクライナ戦争をきっかけに、欧米側の探鉱意欲が刺激された可能性が高い。また公開入札とは別に個別交渉も行われているようで、リビアでは大手メジャーShellやExxonMobilなどがNOCとの間で技術スタディに関するMOUをそれぞれ締結、アルジェリアでも国営石油会社SonatrachがEniとの間で探鉱開発に関する権益取引を完了させた。またアルジェリア政府はExxonMobilとChevronとの間でそれぞれシェール開発を含む豊富な石油・ガス田の開発に向けて最終合意の段階にある旨、報じられる。
西アフリカ諸国でも数多くの契約交渉が進んでいるようだ(表3)。ナイジェリアやアンゴラといった大産油国だけでなく、小規模な産油諸国においても相次ぐ欧米企業の探鉱参画が発表されている。多くのケースで、相対交渉において政府及びメジャー企業間で協議が進められ、事前の地質スタディ等を実施する、もしくは探鉱契約を締結した。たとえば、Chevronはギニアビサウで2鉱区を取得し、ExxonMobilやBPはガボンと探鉱に向けMOUを締結、Eniはシエラレオネの沖合5鉱区で技術スタディに合意、同社はコートジボワールでも探鉱鉱区を取得したと発表した。また国内に回帰していたブラジルの国営石油会社Petrobrasもコートジボワールとサントメプリンシペなどに再び参画し、ブラジル沖と地質的に類似する西アフリカ沖での探鉱に積極的な姿勢をみせている。
| 国名 |
外資参画の概要 |
| アンゴラ | 同国政府は、国営石油会社Sonangolを株式30%放出して上場するIPO計画を表明。同国はピーク時180万boe/dから大きく減退しすでに100万boe/d、競争力ある上流企業への転換を目指す政策の一環。 |
| ギニアビサウ | ChevronがBlock5BとBlock6Bの各権益90%を取得。残りPetroguinが保有(2025年11月)。 |
| シエラレオネ | EniがG113、G129、G130、G131とG132の沖合5鉱区の調査認可を取得(2025年10月)。 |
| リベリア |
TotalEnergiesがLB6、LB-11、L-17、LB-29 の4鉱区(浅海‐超大水深)の権益取得。 Atlas/OrantoがLB15、LB16、BL22、BL24の4鉱区(超大水深)の権益取得(2025年9月)。 |
| コートジボワール |
BPが10年ぶりの同国復帰の意向を表明(2025年3月)。 Petrobrasが9鉱区の独占交渉権を取得(2025年6月)。 Eniが、ガス発見したBlock CI-205に隣接するBlock C1-707を取得(2025年10月)。 |
| コンゴ共和国 | TotalEnergies(50%、オペレーター)、QatarEnergy(35%)、SNPC(同国NOC、15%)にBlock Nzombaの権益が付与された(2025年9月)。 |
| ガボン |
BPとExxonMobilがそれぞれ沖合探鉱に向けてMOU締結(2025年10月)。 Reconnaissance Energy他にBlock Nguluを付与(2025年9月)。 |
| サントメプリンシペ | PetrobrasとShellは2023年の探鉱協力MOUに基づき、PetrobrasがShellのBlock 4にファームイン(2025年9月)、既参画鉱区とあわせてShellの4鉱区にPetrobrasが参画。 |
出所:各種資料より作成
3. 世界の探鉱トレンド(1):発見量は年々減少、生産まで長期化
世界の石油・ガス発見量は、在来型では2020年から2024年の平均で約90億バレル(石油換算)であり、2010年代の平均より約60%の減少、1960年代と比較し90%の減少である。アクセスしやすい有望なエリアが少なくなり、徐々に在来型の石油・ガスが見つかりにくくなっているのが現状である(図1)。また探査の現場は陸上域から遠隔地や海上に移り、インフラも乏しいうえに操業が複雑化している。発見に関わるコストもじわじわ上昇している(図2)。それでも発見コストは1バレル当たり平均6ドル程度と安価であり、発見後に生産まで至れば市場価格で販売でき、時間はかかるがメジャーズにとって依然として主要な収益源である。
出所:The Implications of Oil and Gas Field Decline Rates、国際エネルギー機関
出所:The Implications of Oil and Gas Field Decline Rates、国際エネルギー機関
国際エネルギー機関(IEA)レポート[3]によれば、探鉱鉱区の取得から生産開始までの期間は長期化しており、現在、平均約20年という時間が必要となっている。メジャーズにとっていくら経験を積んだ大水深や超大水深の開発であるといっても、商業的かつ安全に掘削するために発見後10年ほどの時間を要し、さらに長い案件も多数ある。しかし、近年は、企業は埋蔵量評価と開発を平行で進めたり、生産施設を標準化したりしてマネタイズまでの期間を短縮化させ、財務負担を軽減化させている。たとえば、ExxonMobilのガイアナは発見から5年という短期間で生産まで至った。探鉱期間(商業化宣言するまで)に限れば、徐々に長期化しており、現在平均7年程度を要する。地質学的に未知な、あるいは政治面や環境面でリスクのあるフロンティア地域や遠隔地に試掘場所が移行している上に、世界的に探鉱活動自体が低調なことが長期化の背景としてIEAは指摘する。
4. 世界の探鉱トレンド(2):アジア、超大水深とNOC化
近年の上流開発投資は、中東とアジアの国営石油会社(NOC)が投資を押し上げ、欧米メジャーズなどの民間企業(IOC)は投資を抑制する傾向にある。2025年のメジャーズの上流投資額も前年比減の計画である。探鉱支出は、コンサルタントRystad Energyによると、価格高騰した2010年代前半をピークに年間1,100億ドルから近年は年間500億ドル[4]ほどである。2010年代前半に比べてコストも下落しているため実質およそ4割の減少である。
出所: Rystad Energy(https://www.rystadenergy.com/news/oil-and-gas-explorers-zero-in-on-near-field-plays)
探鉱活動は、アジアを中心に成熟エリアでの探鉱活動と、大水深域のフロンティア海域での探鉱に大きく分けられる。たとえば、前者はインドネシア、マレーシアや米国、ノルウェー、ペルシャ湾内などのサービス産業やインフラが整備された生産エリア周辺での探鉱(表4)であり、後者はインフラや地下の知見が乏しいフロンティアでの探鉱である(図3)。前者の成熟エリアは、既存のインフラが整備され発見後の早期生産が期待できるが、発見量は小規模に留まる可能性が高い。後者の未探鉱なエリアは、大規模な発見を期待できるが、周囲にインフラが少なく生産に至るまでに多くの時間を要する。どのように攻めるかは企業の戦略面に依存する。NOCは国内エネルギーのセキュリティ確保を目的に基づき計画するだろうが、メジャーズなどの民間企業は財務面や技術面を強みにハイリスクハイリターンを狙って後者を長年試みてきた。
海上では、アフリカや南米沖合、東地中海や黒海、インド、パプアニューギニアなどの水深が深い1,500メートルを超える超大水深(Ultra-deepwater)に試掘場所は広がっている。
出所:JOGMEC
最近の大規模な在来型油ガスの発見例(ロシアや中国陸上除く)は、陸上は中東のUAE(シャルジャ)、イラン、南米のボリビアに限られ、それ以外は沖合である(図4)。1,500メートル以深の超大水深での発見が過半数を占め、オペレーターとしても欧米のメジャーズの件数は多い。近年、古参の国営石油会社(NOC)であるEquinor、PetrobrasやPetronasに加えて、トルコTPAO、インドONGCやOil India、中国CNOOCなど国内活動を中心に行うNOCがオペレーターとして自国の大水深での試掘に成功している。
出所:各種資料より作成
5. まとめ:メジャーズの探鉱と生産拡大
アフリカや南米など開発途上国では、外国企業を誘致して石油・ガスの開発を活性化させようとする産油国が数多く見受けられ、欧米メジャーズに新たな参画機会を提供している。この数か月間でも数多くの契約締結や参加意向が表明された。技術的評価を経て実際に試掘に至るまでに少し時間がかかるだろうが、2026年後半にも世界的に試掘作業が再び戻ってくるとの見通しもある。
出所:各種資料より作成
探鉱費に関してみれば、Shellは2013年の90億ドルから2024年の20億ドル弱まで減らし、TotalEnergiesは2013年の30億ドルから2024年に10億ドル以下の3分の1に減らしていた。
出所:Evaluate Energyより作成
しかし、2024年~2025年、欧州系のBP及びShellは2030年に向けて生産量の目標を掲げ、収益源である上流事業を重視する戦略に立ち返った。戦略上、メジャー企業は、従来のGHG排出量削減を維持する姿勢を崩さず「探鉱投資」を強いてアピールする場面もなさそうだが、石油・ガスの生産分の埋蔵量(可採年数、図6)を確実に補填していく計画を示す。探鉱機会が足元増えてきたとはいえ、先行きの見通しが悪い中、長期目線の探鉱とさらにその後の開発生産をいかに効率的に追求し続けられるか、各社の手腕が試される。
出所:JOGMEC
【参考】油ガス田の自然減退について
最近発行されたIEAレポート[5](参考表(1))やExxonMobilの長期エネルギー見通し(下記参考図(1))が示す通り、生産中の油ガス田の生産量の自然減退は避けられない。IEAでは、現行の生産水準を維持するだけでも毎年5,400億ドルの投資が必要であり、2025年の上流投資額の9割は油ガス田の自然減退を補うため支出されるとして継続的な投資の必要性を強調する。投資が止まれば減退率が低い中東やロシアなどの少数の大産油国(参考図(2))に生産国が集中していくと指摘する。
出所:The Implications of Oil and Gas Field Decline Rates、国際エネルギー機関(2025年9月発表)
出所:ExxonMobil Global Outlook Our View to 2050
出所:Energy Institute統計2025、Oil and Gas Journal
[1] JOGMECブリーフィング資料参照「中東・北アフリカ地域における石油・ガス産業の断層 ―多角化への機運と政治的変動」https://oilgas-info.jogmec.go.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/010/551/250717_Research2.pdf
[2] リビアNOC ” BP Reopens Office in Libya and Shell Explores Cooperation in Oil Field Development”
https://noc.ly/en/bp-reopens-office-in-libya-and-shell-explores-cooperation-in-oil-field-development/
bpプレスリリース“bp and NOC sign MoU to explore redevelopment of giant Libyan oilfields and unconventional potential”, https://www.bp.com/en/global/corporate/news-and-insights/press-releases/bp-and-noc-sign-mou-to-explore-redevelopment-of-giant-libyan-oilfields-and-unconventional-potential.html
[3] The Implications of Oil and Gas Field Decline Rates, 国際エネルギー機関
[4] Rystadプレスリリース“Oil and gas explorers zero in on near-field plays as budgets tighten and prospects shrink” https://www.rystadenergy.com/news/oil-and-gas-explorers-zero-in-on-near-field-plays
[5] The Implications of Oil and Gas Field Decline Rates, 国際エネルギー機関
以上
(この報告は2025年11月30日時点のものです)


