ページ番号1010681 更新日 令和7年12月15日

原油市場他: ウクライナとロシアの和平案を巡る米国等による調整の動き等に伴い、下落傾向を示す原油価格

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レポートID 1010681
作成日 2025-12-15 00:00:00 +0900
更新日 2025-12-15 11:34:35 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 市場
著者 野神 隆之
著者直接入力
年度 2025
Vol
No
ページ数 40
抽出データ
地域1 グローバル
国1
地域2
国2
地域3
国3
地域4
国4
地域5
国5
地域6
国6
地域7
国7
地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 グローバル
2025/12/15 野神 隆之
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概要

  1. 米国では秋場のメンテナンス作業等が完了するとともに製油所の操業が再開しつつあることもあり、原油精製処理量が増大するとともに原油在庫は減少したが、平年幅上限を超過する状態は継続している。一方、石油製品製造活動が活発化したこともあり、ガソリン及び留出油の両在庫は増加傾向となり、ガソリン在庫は平年幅上限を超過する、留出油在庫は平年幅下限付近に位置する、それぞれ量となっている。
  2. 2025年11月末のOECD諸国推定石油在庫の対前月末比での増減は、原油については、米国では製油所での原油精製処理量が増加した反面、原油生産量が増加したり原油輸出が減少する場面が見られたりしたこともあり、在庫は若干ながら増加した。また、欧州では、装置の不具合発生に伴い一部製油所の操業が停止したことにより原油精製処理活動が滞ったこともあり、原油在庫は増加した。日本でも、秋場の製油所メンテナンス作業完了に伴う原油精製処理活動の活発化を見据えて原油調達が拡大したものと見られることから、在庫は増加した。結果として、OECD諸国全体の原油在庫は増加となり、平年幅上限を超過する状態は継続している。石油製品については、米国では、製油所の稼働上昇に伴いガソリンや留出油等の在庫は増加となったものの、その他の石油製品の在庫が減少となったことで相殺されたことにより、在庫はほぼ横這いとなった。また、欧州や日本においては、気温が低下傾向となったことに伴い暖房向けの軽油や灯油の需要が喚起されるようになったものと見られることにより、両製品を中心として石油製品在庫は減少した。このため、OECD諸国全体の石油製品在庫は減少となった他、平年幅上方付近に位置する量となっている。
  3. 2025年11月中旬から12月中旬にかけての原油市場においては、ロシア等における石油を含むエネルギー供給関連インフラに対するウクライナの攻撃や、米国のベネズエラへの攻撃実施方針を示唆する情報等が原油相場に上方圧力を加えた反面、ウクライナとロシアとの間の和平案の合意に向けた米国等による調整の動き等が原油相場に下方圧力を加えた結果、原油価格は1バレル当たり概ね57~61ドルの範囲内で変動しつつも、どちらかと言うと下落傾向となり、12月12日の原油価格の終値は5月5日以来の低水準に到達した。
  4. 北半球の冬場の暖房シーズンに伴う暖房用石油製品需要期突入により、石油需給の引き締まり感が意識されやすいことが、今後も原油相場を強含ませやすいものと考えられる。また、ウクライナによるロシアのエネルギー供給関連インフラ攻撃激化の可能性や西側諸国等による対ロシア制裁強化の動きが、世界石油供給混乱懸念を増大させることにより、原油相場に上方圧力を加えることもありうる。ただ、ウクライナとロシアとの間での和平案に関する米国等を介した協議を巡る関係国等の動向によっては原油相場に下方圧力が加わる可能性がある他、次期FRB議長候補発表を含む米国金融当局等を巡る動き、中国経済指標類の内容、米国北東部等の気温状況及び予報、そして中東情勢等が原油相場に影響を及ぼしうるものと考えられる。

(出所 IEA、OPEC、米国DOE/EIA他)

 

1. OPECプラス産油国が2026年末までの公式減産措置の実施を確認するとともに、OPECプラス有志8産油国は2026年1~3月の原油生産を当初予定通り据え置きへ

(1) 協議内容等

OPEC及び一部非OPEC(OPECプラス)産油国は2025年11月30日に閣僚級会合をテレビ会議形式で開催した。会合では、現在実施中の公式減産を当初予定通り2026年末まで実施することを確認した(表1参照)。

表1 OPECプラス産油国の減産措置

加えて、OPECプラス産油国共同閣僚監視委員会(JMMC: Joint Ministerial Monitoring Committee)を2ヶ月毎に開催するとともに、世界石油市場の状況、(OPECプラス各産油国の)原油生産水準及び減産遵守状況を同委員会において検証する他、必要と判断される如何なる時において追加会合を招集したりOPECプラス産油国閣僚級会合の開催を要請したりする権限をJMMCに付与する旨再確認した。また、減産の完全遵守と(原油生産目標を超過して生産した場合には追ってその超過生産分を追加して減産することにより)減産を補償する措置に固執することが極めて重要であることを改めて強調した。

さらに、2027年のOPECプラス産油国の原油生産基準(設定の際)の参考とするため、産油国の最大持続可能生産能力(MSC: Maximum Sustainable Production Capacity)を評価する方式を開発するよう(2025年5月28日に開催された前回のOPECプラス産油国閣僚級会合において)OPEC事務局に義務付けたことを受け、事務局が開発した(原油生産能力評価)方式を承認した(後述)。なお、次回のOPECプラス産油国閣僚級会合は2026年6月7日に開催される予定である。

また、11月30日には、自主的な減産措置を実施してきたOPECプラス有志8産油国(アルジェリア、イラク、クウェート、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、カザフスタン、オマーン及びロシア)による会合が別途テレビ会議形式で開催された。当該会合開催に際しては、2025年11月2日に開催されたOPEC有志8産油国による会合において決定された、季節的要因(例年冬場の後半は、米国を初めとして北半球諸国及び地域において、暖房シーズンに伴う暖房用石油製品需要期の終了が視野に入り始めるとともに、石油需要が軟調になりやすいことを指しているものと見られる)を理由とした、2026年1~3月の増産の一時停止(原油生産量の据え置き)を(当初予定通り)実施することを再確認した(表2参照)。

表2 OPECプラス有志8産油国の減産緩和予定(前月比)(2025~26年)(日量千バレル)

また、市場の状況次第では、2025年4~9月において実施してきた日量216万バレルの自主的減産緩和、及び現在実施途上段階にある日量165万バレルの自主的減産緩和につき、OPECプラス有志8産油国が一時的に停止したり撤回したりすることもありうるとし、石油市場の安定を確保するための継続的な努力の一環として、原油生産を柔軟に調整することの重要性を再確認した。さらに、目標の完全遵守に固執することを改めて表明し、2024年1月以降の目標を超過した生産量につき、(追って減産目標を上回って減産することにより)全量を補償する意志を確認した。なお、市場の状況、各産油国の原油生産目標遵守及び補償の各状況を検討するため、次回のOPECプラス有志8産油国による会合を2026年1月4日に開催する予定とした。

 

(2) 今回の会合の結果に至る経緯及び背景等

2025年5月28日に開催された前回のOPECプラス産油国閣僚級会合においては、足元で実施中であった公式減産を予定通り2026年末まで実施することを確認した。また、5月31日には、別途OPECプラス有志8産油国が会合を開催し、2025年4月より実施中である増産につき、5~6月と同様7月についても前月比日量41.1万バレルと、4月(前月比日量13.8万バレルの増産)の約3倍の規模で実施する旨決定した。

米国大統領の就任直後の2025年1月23日に、トランプ氏は、サウジアラビアを含むOPEC産油国に対し原油価格の引き下げを要求する意向である旨表明した他、1月24日にはOPEC産油国に対し原油価格を引き下げるべきである旨実際に要求したこともあり、原油相場に下方圧力が加わった結果、トランプ氏の大統領就任直前の1月17日には1バレル当たり77.88ドルの終値であった原油価格は5月30日には60.79ドルの終値へと下落傾向となった。

それでも、足元では米国等が夏場のドライブシーズンに伴うガソリン需要期に突入しつつあることにより季節的な石油需給の引き締まり感が市場で感じられやすくなってきていた他、イラン核問題を巡る米国とイランとの交渉の過程においてイランに対し米国がさらなる圧力を加えることも想定されえたうえ、ウクライナとロシアとの間での戦闘停止を巡る協議が紆余曲折を経る可能性があったことなどから、原油価格に上方圧力が加わるとともに米国においてガソリン小売価格を含め物価が上昇する結果、消費者の不満が高まることに伴い大統領支持率に影響する恐れがある他、経済を活性化するための米国金融当局による政策金利引き下げ等がより困難になるという、トランプ大統領の望まない展開となることが懸念された。

OPECプラス有志8産油国による増産加速の決定はそのような中で行なわれており、国交が再開するなど緩和してきたとはいえ、なお中東を巡りイラン等との間で緊張が高まると言ったリスクを抱える中、米国による外交及び軍事的な支援を確保する必要のあるサウジアラビアを中心とするOPECプラス産油国が増産規模拡大を主導することを通じ原油価格に下方圧力を加えることにより、トランプ大統領に便宜を図る格好となった。また、ウクライナとの戦闘終結等の和平案策定に向けた交渉を、できる限り自国に有利な方向に持ち込むため、米国に対し友好的な姿勢を示すと言った側面があったこともあり、最終的にはロシアもサウジアラビアが事実上主導する増産の加速を支持する格好となったものと見られる。

その後、OPECプラス有志8産油国は2025年7月5日、8月3日、9月7日、10月5日、及び11月2日に会合を開催し、それぞれ、同年8月、9月、10月、11月および12月以降における原油生産の取り扱いにつき協議した。そして、7月の会合においては8月の原油生産を前月比で日量54.8万バレル、8月3日の会合においては9月の原油生産を前月比で日量54.7万バレル、それぞれ拡大することを決定した(これにより、9月を以てOPECプラス有志8産油国による日量216万バレル(に加えUAEの日量30万バレル)の段階的増産は完了することとなった)。

一方、9月、10月および11月の会合では、当初2026年末まで実施する予定であった日量165万バレルの減産の段階的緩和に踏み込んだが、10月、11月及び12月の原油生産量拡大を前月比で日量13.7万バレルと小幅にとどめた他、特に11月に開催された会合においては、2026年1~3月の原油生産量を据え置きとする旨決定した。

前述の通り、従来ロシアは、ウクライナとの戦闘終結と和平合意において、ロシアが有意な条件を獲得するために、米国に事実上の便宜を図るべく、サウジアラビアが主導する大幅な増産を受け入れてきた側面がある。

しかしながら、特に8月に入り、ウクライナによるロシアの製油所、石油ターミナルおよび天然ガス処理施設を含むエネルギー供給関連インフラ等への無人機等を利用した攻撃が頻発するようになるとともに、ロシアの石油生産が脅かされるようになった(8月から11月半ばにかけウクライナはロシアのエネルギー供給関連インフラを少なくとも40回余り攻撃した(因みに、2025年1月から7月にかけては21回であったとされる))。

加えて、10月22日には、米国がロシア大手石油会社ロスネフチおよびルクオイルに対し制裁を発動した結果、西側諸国等がロシア産石油引き取りを回避するようになった後の同国産石油の大口引き取り国であった中国やインド等が引き取りを見送る兆候が見られるようになるなど、米国は必ずしもロシアに友好的な姿勢を示さなくなり始めたこともあり、ロシアはサウジアラビアによる大幅な増産に異議を唱えるようになったものと見られる。

結果として、OPECプラス有志8産油国は2025年10~12月における原油生産を前月比で拡大するものとしたものの、各月前月比日量13.7万バレルの増産規模と、9月の前月比日量54.7万バレルの増産から、大幅に規模が縮小する(いわば事実上ほぼ名目的な増産となる)こととなった。

また、11月2日に開催されたOPECプラス有志8産油国会合において、2026年1~3月における原油生産据え置きを主張したのはロシアのノバク副首相であったとされ、8月以降激化したウクライナによるロシアの石油を含むエネルギー供給関連インフラへの攻撃や、10月22日に発表された米国によるロシア石油産業に対する制裁等により、ロシアからの石油輸出(従って増産)がより困難になりつつあることで、今後ロシア以外のOPECプラス有志7産油国による増産に伴う世界石油需給緩和感の醸成に伴い原油相場に下方圧力が加わりやすい状況となりつつある中、増産が事実上困難なロシアは政府原油収入(そしてその一部はウクライナとの戦闘への費用へと充填されるものと見られる)の減少を招きやすくなることから、原油生産を据え置く旨決定することにより、原油価格の維持(もしくは持ち直し)を図ろうとしたものと見られる。

また、サウジアラビアとしても、足元の原油価格は財政収支均衡価格(1バレル当たり90ドル程度とされる)を大きく下回っており、財政状態は必ずしも良好ではなかったことから、2026年1~3月における原油生産拡大の停止には強く反対しなかったものと考えられる。

なお、OPECプラス有志8産油国の2026年1~3月の原油生産拡大停止に対し、市場関係者は、OPECプラス有志8産油国は世界石油需給バランスが大幅な供給過剰に振れることを危惧して、原油生産拡大を停止せざるをえない事態に追い込まれた(そうでなければ、例年1~3月は季節的に需給が緩和しやすいとはいえ、気候が温暖だったり寒冷だったりするなどの不透明要因が残る中、原油生産の取り扱いについてより慎重な姿勢で望んだ(例えば、1ヶ月毎に原油生産の取り扱いにつき判断し、様子を見る)であろう)と解釈したことから、11月2日の会合開催後、原油価格はむしろ1バレル当たり60ドル割れの水準へと変動領域を切り下げたこともあり、米国のトランプ大統領もOPECプラス有志8産油国の判断につき特段不満を述べることはなかった。

11月30日に開催されたOPECプラス有志8産油国会合においても、米国の対ロシア制裁が緩和される明確な兆候が見られるわけでもなく、またウクライナによるロシアのエネルギー供給関連インフラ等への攻撃も停止しつつあった訳ではなかったことから、OPECプラス有志8産油国による原油生産方針を巡るロシアの考え方は変らず、従って、2026年1~3月の原油生産据え置き方針は維持される旨決定されることとなったものと見られる。

他方、約1年前の2024年12月5日に開催されたOPECプラス産油国閣僚級会合においては、従来2025年12月末まで実施予定であったOPECプラス19産油国による公式減産措置を2026年12月末まで延長する旨決定したが、今回のOPECプラス産油国閣僚級会合において公式減産措置を2027年12月末まで延長する旨決定した場合、OPECプラス産油国が世界石油需給引き締めによる原油価格の浮揚を明確に意識していると市場から受け取られることにより、会合後の原油価格が上昇する場面が見られるとともに、原油価格の上昇を望まない米国のトランプ大統領の不興を買う恐れがあったため、そのような判断は次回OPECプラス産油国閣僚級会合では見送られることとなったものと考えられる。

 

(3) 原油価格の動きと石油市場における今後の注目点等

OPECプラス有志8産油国による2026年1~3月の原油生産維持方針の決定は、既に事前に石油市場関係者間の認識としてある程度織り込まれる形となっていたものの、それでも世界石油需給を緩和させるものではなかったことが、原油相場を下支えする格好となった。

また、ロシア南西部ノボロシイスクにあるカスピ海パイプラインコンソーシアム(CPC: Caspian Pipeline Consortium)の原油船積み施設が11月29日未明(現地時間)にウクライナ軍による無人艇で攻撃された結果係留装置3基中1基が深刻な被害を受けたことにより操業を停止した旨CPCが明らかにした旨伝えられた他、トルコの黒海沿岸沖合を航行していた、ロシア産石油を輸送していたとして制裁対象となっていた石油タンカー2隻(カイロス(Kairos)及びビラト(Virat)(いずれもガンビア船籍))に対し11月28日深夜から29日早朝(現地時間)にかけ攻撃を行なった旨11月29日にウクライナ治安当局関係者が明らかにしたと報じられたうえ、ロシアが関与しているとされるタンカー(マーシン(Mersin)(パナマ船籍))(軽油を輸送していたとされる)がセネガルのダカール沖で爆発した旨12月1日に伝えられたことにより、ロシアからの石油供給に対する懸念が増大した。

さらに、11月16日からの週において電話会談を実施した際、米国のトランプ大統領がベネズエラのマドゥロ大統領に対し自発的な退陣を要求し、拒否した場合には軍事行動を含む方策の実施を検討する意向である旨11月29日にウォールストリート・ジャーナルが報じた他、間もなくベネズエラ陸上での攻撃を開始する旨11月27日に米国のトランプ大統領が表明したうえ、ベネズエラ空域は事実上閉鎖されている旨11月29日にトランプ大統領が警告した(その後、同警告につき余り深く考えるべきではないとしてトランプ大統領は事実上自身の発言を訂正した旨11月30日夕方(米国東部時間)に伝えられた)他、12月1日午後5時(米国東部時間)よりトランプ大統領がベネズエラに対する今後の対応につき政権関係者等との間で協議を行なう旨同日CNNが報じたことにより、米国とベネズエラの対立の先鋭化に伴う、ベネズエラからの原油供給への影響を巡る懸念が増大した。

このため、12月1日の原油価格の終値は1バレル当たり59.32ドルと、前週末終値比で0.77ドルの上昇となっている。

 

2. 石油市場等を巡るファンダメンタルズ

2025年9月の米国ガソリン需要(速報値)は日量895万バレル、前年同月比0.3%の減少と8月の当該需要(速報値)である日量923万バレル(前年同月比0.3%程度の減少)から需要量は減少した一方前年同月比での減少率はほぼ同水準であった(図1参照)。また、当該需要は速報値(前年同月比2.5%程度減少の日量876万バレル)から上方修正されている。9月の同国からのガソリン最終製品輸出量が速報値段階では日量103万バレル程度と推定されたところ確定値では同78万バレルへと下方修正されたことにより、速報値から確定値へと移行する段階で、この下方修正部分が輸出から国内需要に振り替えられたことが、当該需要の上方修正に寄与しているものと見られる。9月1日を以て米国では夏場のドライブシーズンに伴うガソリン需要期が終了するとともに不需要期に突入したこともあり、9月の同国ガソリン需要は前月比で減少した。また、9月の米国自動車運転距離数が前年同月比で2.0%の増加と8月(前年同月比0.9%の増加)から増加率が拡大していることから、9月の米国ガソリン需要の前年同月比での増加率も8月のそれから拡大しているはずのところ、7月の米国自動車距離数が前年同月比1.7%増加したにもかかわらず同国ガソリン需要が同1.8%の減少へと落ち込んだ反動で、8月の当該需要(及び前年同月比の増加率)が押し上げられる格好となったことから、結果として9月の当該需要の前年同月比での増加率が8月のそれと同水準となったものと考えられる。なお、2025年9月の米国ガソリン需要は新型コロナウイルス感染拡大前の時点である2019年9月の当該需要(日量920万バレル)(確定値)を2.7%程度下回っている。他方、2025年11月の米国ガソリン需要(速報値)は推定日量864万バレル、前年同月比2.2%の減少と10月の当該需要(速報値)である日量870万バレル(前年同月比4.0%程度の減少)から需要量が若干ながら減少したものの前年同月比の減少率は縮小した。11月は10月に比べ気温が低下したことにより、個人の外出がより敬遠されるようになったことが、11月の米国ガソリン需要を前月比で押し下げる形で作用したものと考えられる。また、2025年11月は前年同月比でも寒冷であったことから、この面でも、同月の米国ガソリン需要は前年同月比を下回ることとなった。ただ、2024年9月は下旬を中心としてハリケーン「へリーン(Helene)」が米国南東部に来襲したこともあり、同時期を中心として個人の外出が不活発化した反動に加え、地域に被害を及ぼしたハリケーンの通過後の復旧もあり、同年10月は同国自動車運転距離数が前月比及び前年同月比で増加した(前年同月比では2.7%の増加となった)ことにより、かえって2025年10月の同国推定自動車運転距離数が前年同月比で0.6%の増加へと圧縮されたに伴い、同月のガソリン需要が前年同月をそれなりに下回ったことから、結果として、2025年11月の米国ガソリン需要も前年同月比で減少となったものの、10月に比べれば減少率は縮小する格好となったものと考えられる。なお、2025年11月の米国ガソリン需要は2019年11月の当該需要(日量921万バレル)(確定値)を6.2%程度下回っている。そして、米国のガソリン需要が比較的抑制される中、秋場のメンテナンス作業や装置の不具合発生に伴う改修作業の実施が完了しつつあるとともに、留出油を中心として石油製品製造利幅が拡大しつつあった(ウクライナによる製油所等の攻撃や米国等による制裁等により冬場の暖房シーズン到来に伴う暖房向けの暖房油需要期を控えロシアからの軽油及び暖房油供給が事実上世界市場から排除されること等に対する懸念から世界的に軽油価格が上昇しつつあったことが背景にあるものと考えられる)ことに伴い、製油所の稼働が上昇するとともに原油精製処理量が増加した(図2参照)ことにより、混合基材を中心としてガソリン製造も活発化したものと見られる(ガソリン最終製品生産量は図3参照)ことから、11月上旬から12月上旬にかけ米国ガソリン在庫は増加傾向となった他、平年幅上限を超過する量となっている(図4参照)。

図1 米国ガソリン需要の伸び(2015~25年)

図2 米国の原油精製処理量(2009~25年)

図3 米国のガソリン(最終製品)生産量(2009~25年)

図4 米国ガソリン在庫推移(2003~25年)

9月の米国留出油需要(速報値)は日量377万バレル、前年同月比で2.2%程度の増加となり、8月の当該需要(確定値)である同377万バレル(前年同月比3.0%程度の減少)から、需要量はほぼ同水準となった反面前年同月比では減少から増加に転じた。また、当該需要は速報値(前年同月比1.3%程度増加の日量374万バレル)から若干ながら上方修正されている。5月12日に米国が中国からの輸入製品に対する関税賦課を90日間猶予する旨発表した他、さらに猶予期限を11月10日(午前0時1分)まで延長する旨の大統領令に8月11日に米国のトランプ大統領が署名したこともあり、猶予期限到来に伴う対中国関税の賦課再開と中国により予想される報復措置の実施前に、駆け込みで米国製品の製造が活発化(9月の同国鉱工業生産は前年同月比1.6%増加と8月の同0.9%増加から伸びが拡大)したこと(なお、関税賦課猶予は2026年11月10日まで延期される旨、10月30日の米国のトランプ大統領と中国の習近平国家主席との間での首脳会談開催後の11月1日に明らかになっている)に加え、8月の同国鉱工業生産が前年同月比で多少なりとも増加となったにもかかわらず、留出油需要が同3.0%の減少となった反動が9月に現れている側面があることが、同月の米国留出油需要の前年同月比での増加に反映されているものと考えられる。なお、9月の米国留出油需要は2019年同月の当該需要(日量392万バレル)(確定値)を3.9%程度下回っている。他方、11月の米国留出油需要(速報値)は推定日量371万バレル、前年同月比で0.7%程度の増加となり、10月の当該需要(速報値)である同388万バレル(前年同月比6.1%程度の減少)から、需要量が減少したものの、前年同月比では減少から増加に転じた。10月を中心時期とする米国の穀物収穫シーズンが峠を越えつつあることにより、農機具類稼働のための軽油需要が喚起されにくくなっていることが、同月の留出油需要を前月比で減少させる方向で作用したものと考えられる。また、2024年11月は米国鉱工業生産が低調であった(前年同月比で1.6%の減少となっており、同年9月13日から11月5日まで実施された同国ボーイング社のストライキの影響によるものであるものと見られる)こともあり同月の留出油需要が前年同月比で6.8%減少した反動で2025年11月の当該需要は前年同月比で増加する格好となっており、もし2024年11月の同国留出油需要が落ち込んでいなければ、2025年11月の当該需要の前年同月比での増加率は縮小していたか、同需要は前年同月比で減少となっていた可能性がある。なお、11月の米国留出油需要は2019年同月の当該需要(日量420万バレル)(確定値)を11.8%程度下回っている。そして、米国における留出油需要は比較的抑制された状態で推移したものの、同国の製油所の稼働が上昇するとともに留出油製造活動が活発化した(図6参照)こともあり、11月上旬から12月上旬にかけての米国の留出油在庫は増加傾向となったが、平年幅下限付近に位置する量となっている(図7参照)。

図5 米国留出油需要の伸び(2015~25年)

図6 米国の留出油生産量(2009~25年)

図7 米国留出油在庫推移(2003~25年)

2025年9月の米国石油需要(速報値)は日量2,089万バレル(前年同月比で2.6%程度の増加)となり、8月の同国石油需要(速報値)である日量2,120バレル(前年同月比1.0%程度の増加)から需要量は減少したものの前年同月比では増加率が拡大している。また、ガソリン及びプロパン/プロピレン等の需要が速報値から確定値に移行する際に上方修正されたことから、米国石油需要も速報値(前年同月比1.6%程度増加の日量2,068万バレル)から上方修正されている。ガソリン需要が前月比で減少したことが、9月の米国石油需要の前月比での減少に影響している一方、留出油に加え、米国の一部貿易相手国に対する関税賦課猶予期限の延期等もあり米国石油化学製品生産が好調に推移した影響でエタン及びプロパンといった石油化学製品製造向け原料の需要が前年同月を上回っていることが、9月の同国石油需要の前年同月比での伸びに寄与する格好となっている。なお、2025年9月の米国石油需要は2019年9月の当該需要(日量2,025万バレル)(確定値)を3.2%程度上回っている。他方、2025年11月の米国石油需要(速報値)は推定日量2,039万バレル(前年同月比で0.1%程度の増加)となっており、10月の同国石油需要(速報値)である日量2,046万バレル(前年同月比3.7%程度の減少)から需要量は減少したものの前年同月比では減少から増加に転じた。ガソリン需要が前月比で減少したことが、11月の米国石油需要の前月比での減少に影響している一方、ガソリン需要の前年同月比での減少率が10月に比べ縮小した一方、留出油及びその他石油製品の需要が前年同月比で増加した(その他の石油製品は石油化学製品製造向け原料であるエタン及びプロパンが増加の中心であるものと見られる)ことが、11月の米国石油需要が前年同月比で増加に転じた一因であるものと見られる。なお、2025年11月の米国石油需要は2019年11月の当該需要(日量2,074万バレル)(確定値)を1.7%程度下回っている。また、米国における原油生産は概ね横這いで推移した一方、秋場のメンテナンス作業や、不具合が発生した装置の改修作業が概ね完了するとともに、同国の製油所における原油精製処理量が増加傾向となったことが、原油在庫を減少させる方向で作用した結果、12月5日時点の米国原油在庫は11月7日時点の量を下回る水準となったが、平年幅上限を超過する状態は継続している(図9参照)。そして、留出油在庫が平年幅下限付近に位置する量となっている反面、原油及びガソリン在庫が平年幅上限を超過する量となっていることから、原油とガソリンを合計した在庫、そして原油、ガソリン及び留出油を合計した在庫は、いずれも平年幅上限を超過する状態となっている(図10及び11参照)。

図8 米国石油需要の伸び(2015~25年)

図9 米国原油在庫推移(2003~25年)

図10 米国原油+ガソリン在庫推移(2003~25年)

図11 米国原油+ガソリン+留出油在庫推移(2003~25年)

2025年11月末のOECD諸国推定石油在庫の対前月末比での増減は、原油については、米国では製油所での原油精製処理量が増加した反面、原油生産量が増加したり原油輸出が減少する場面が見られたりしたこともあり、在庫は若干ながら増加した。また、欧州においては、装置の不具合発生に伴い一部製油所の操業が停止したことにより原油精製処理活動が滞ったこともあり、原油在庫は増加した。他方、日本においても、秋場の製油所メンテナンス作業完了に伴う原油精製処理活動の活発化を見据えて原油調達が拡大したものと見られることから、在庫は増加した。結果として、OECD諸国全体の原油在庫は増加となり、平年幅上限を超過する状態は継続している(図12参照)。石油製品については、米国においては、製油所の稼働上昇に伴いガソリンや留出油等の在庫は増加となったものの、その他の石油製品の在庫が減少となった(冬用ガソリンに混入するブタンの需要が増加しつつあることに伴うものと見られる)ことで相殺されたことにより、在庫はほぼ横這いとなった。また、欧州や日本においては、気温が低下傾向となった(11月は欧州の一部地域において気温が平年を相当程度下回って低下する場面が見られた)ことに伴い暖房向けの軽油や灯油の需要が喚起されるようになったものと見られることにより、両製品を中心として石油製品在庫は減少した。このため、OECD諸国全体の石油製品在庫は減少となった他、平年幅上方付近に位置する量となっている(図13参照)。そして、原油在庫が平年幅上限を超過しつつ前月末から増加した一方、石油製品在庫が平年幅上方付近に位置しつつ前月末から減少した結果、原油と石油製品を合計した在庫は前月末から増加した他、平年幅上限を超過する状態となっている(図14参照)。また、2025年11月末時点のOECD諸国推定石油在庫日数は62.9日と10月末の推定在庫日数(62.4日)から増加している。

図12 OECD諸国原油在庫推移(2005~25年)

図13 OECD諸国石油製品在庫推移(2005~25年)

図14 OECD諸国石油在庫(原油+石油製品)推移(2005~25年)

11月12日に1,200万バレル台後半程度の水準であった、シンガポールにおける、ガソリンを含む軽質留分在庫は、11月19日には1,400万バレル台半ば程度の量へと増加した。ただ、11月26日には1,300万バレル台半ば程度、12月3日には1,300万バレル台前半程度の、それぞれ水準へと減少した。それでも、12月10日には1,500万バレル弱程度の量へと回復しており、この結果、12月10日の軽質留分在庫量は11月12日の水準を上回ることとなった。北東アジアを中心とする地域では秋場の製油所メンテナンス作業等が終了に向かいつつあるとともに、冬場の暖房シーズンに伴う暖房用石油製品(軽油、暖房油及び灯油等)需要期に突入しつつあった他、欧州等において軽油需給の引き締まり感が強まる場面が見られた(後述)こともあり、軽油製造活動を活発化させるべく製油所の稼働を上昇させた結果、併せてガソリン製造も拡大したことが、シンガポールにおける軽質留分在庫を増加させる格好となった反面、マレーシア(ペンゲラン(Pengerang)製油所(操業者: ペンゲラン精製会社(サウジアラビア国営石油会社サウジアラムコとマレーシア国営石油会社ペトロナスの折半出資)、原油精製処理能力日量30万バレル)を含む一部諸国及び地域の製油所においてガソリン製造装置(流動接触分解装置(RFCC: Residue Fluid Catalytic Cracker))を含む装置の不具合等の発生により操業が停止したままとなっている(ペンゲラン製油所は9月12日時点では既に操業を停止している旨伝えられた一方、同製油所は11月下旬から12月上旬に操業を再開する旨11月20日に関係者が明らかにした他、実際に12月9日までに操業を再開したとされる)ことが、シンガポールにおける軽質留分在庫を減少させる方向で作用した結果、同地における軽質留分在庫水準は増減しながらも増加する傾向を示している。そしてそのようにシンガポールの軽質留分在庫が増加傾向を示したことが、アジア市場におけるガソリン価格に下方圧力を加えるとともに、ガソリンとドバイ原油との価格差(この場合、ガソリン価格がドバイ原油価格を上回っている)を縮小させる形で作用したものの、原油価格の下落にガソリン価格の下落が追い付かなかい場面が見られたことが、ガソリンとドバイ原油の価格差を拡大する形で作用したことから、11月中旬から12月中旬にかけてのガソリンとドバイ原油の価格差は明確な拡大もしくは縮小の傾向を示すことなく推移した。

他方、サウジアラビアのサトルプ(SATORP)製油所(操業者: SATORP(Saudi Aramco Total Refining and Petrochemical: Saudi Aramcoが62.5%出資、Totalが37.5%出資)、原油精製処理量日量46万バレル)(間もなくメンテナンス作業を開始する旨10月6日に伝えられた一方、操業再開作業中である旨12月4日に伝えられた)、同国のサスレフ(SASREF)製油所(操業者: SASREF(Saudi Aramco100%出資)、原油精製処理量日量30.5万バレル)(11月15日にメンテナンス作業を開始する旨11月11日に報じられており、12月中旬もしくは下旬に操業を再開するとされる)、クウェートのミナ・アブドラ(Mina Abdullah)製油所(操業者: KNPC、原油精製処理量日量49万バレル)(10月よりメンテナンス作業を実施していたが完了した旨11月25日に伝えられた)の、各製油所においてメンテナンス作業が実施されていた他、クウェートのアルズール(Al-Zour)製油所(操業者: KIPI(Kuwait Integrated Petroleum Industries)、原油精製処理能力日量61.5万バレル)において火災が発生した結果同製油所が操業を停止した(10月21日に停止したが12月14日に操業を再開する予定である旨示唆されていたが、12月末まで停止する見込みである旨12月12日に伝えられた)ことに加え、ウクライナによるものと見られるロシアの製油所等石油供給関連施設への攻撃に伴い、中東及びロシアからアジア方面へのナフサの供給減少を巡る懸念が増大したことがアジア市場のナフサ価格に上方圧力を加えたものの、中国の石油化学製品製造のためのナフサ分解施設の能力(そして原料のナフサは同国が国外から輸入する原油を国内の製油所において精製することにより主に調達されているものと考えられる)拡大に伴い、他のアジア諸国における石油化学製品需要の低迷(この結果、韓国石油化学産業の再編を求める方向である旨8月20日に同国の具潤哲(ク・ユンチョル)副首相兼企画財政省長官が明らかにしていた)により、日本、韓国及びシンガポール等における、ナフサ分解装置の稼働が低下したこともあり、原料となるナフサの需要が影響を受けた他、液化石油ガス(LPG)価格が依然としてナフサ価格を下回っていたこともあり、石油化学製品製造のための原料面でLPGと競合するナフサの需要が抑制されるとともにナフサ価格に下方圧力を加える格好となったことから、11月中旬から12月中旬にかけての同市場におけるナフサとドバイ原油との価格差(この場合、ナフサ価格がドバイ原油価格を下回っている)は変動しつつも、どちらかというと拡大する傾向を示した。

11月12日には900万バレル強程度の水準であったシンガポールにおける軽油、暖房油及びジェット燃料を含む中間留分在庫は、11月19日には1,000万バレル弱程度の量へと増加したものの、11月16日には800万バレル強程度の量へと減少した。12月3日には900万バレル強程度の水準へと回復したものの、12月10日には800万バレル台前半程度の量へと減少し、結果として12月10日の当該在庫量は11月12日の水準を下回る状況となっている。欧州諸国においては気温が低下するととともに暖房向けの軽油需要が喚起されるようになったこともあり、軽油在庫が減少するとともに、欧州の軽油価格がアジアのそれを上回る幅が拡大しつつあったことから、インド等のアジア諸国及び地域等から欧州方面に軽油が流出する反面それら諸国等からシンガポールに向けての軽油等の供給が抑制される格好となっていることが、シンガポールにおける中間留分在庫を減少させる方向で作用しているものの、アジアの一部諸国において一部製油所の秋場のメンテナンス作業等が終了するとともに、欧州の軽油在庫低迷もあり、世界的に軽油価格が上昇したことに伴い、軽油製造利幅が堅調となったことにより、製油所の稼働が上昇するとともに軽油製造活動が活発化したことが、シンガポールにおける中間留分在庫を増加させる方向で作用したことから、結果として、同地における中間留分は増減しつつも減少傾向となった。ただ、欧州における軽油在庫が減少傾向となったことに加え、ウクライナがロシアの製油所を含む石油供給関連インフラへの攻撃を強化しつつあったこともあり、ロシアからの軽油供給が支障を来すとともに、冬場の暖房シーズンに伴う需要期到来を控え軽油需給のさらなる引き締まり感を市場が意識したことが、欧州の軽油価格に上方圧力を加えるとともに、アジアから欧州方面に軽油が一層流出するとの見方が広がったことが、アジア市場における軽油価格に上方圧力を加えたものの、米国において11月後半を中心として留出油在庫が増加傾向となったことから、米国から欧州方面への軽油等の輸出が活発化するとの観測が発生したことが、欧州のみならず欧州に軽油を輸出しているアジアの軽油需給緩和感を醸成させるとともにアジア市場の軽油価格を押し下げる格好となったこともあり、11月中旬から12月中旬頃にかけての同市場における軽油とドバイ原油との価格差(この場合、軽油価格がドバイ原油価格を上回っている)はむしろ縮小傾向となった。

11月12日に2,600万バレル弱程度の水準であったシンガポールの重油在庫は、11月19日には2,400万バレル台半ば程度の量へと減少したが、11月26日には2,400万バレル台後半程度、12月3日には2,500万バレル台半ば程度、12月10日には2,600万バレル強程度の、それぞれ量へと回復した。結果として12月10日の当該在庫量は11月12日の水準を若干ながら上回ることとなった他、前年同期の水準(2024年12月11日の1,800万バレル弱程度)を相当程度上回ることとなった。ウクライナが発射したものと見られる無人機等による攻撃により、ロシアにおける製油所の操業に支障が発生していることもあり、同国からアジア方面への重油供給が抑制される格好となっていることが、シンガポールにおける重油在庫を減少させる方向で作用しているものと見られるものの、欧州やアジアにおける一部製油所で秋場のメンテナンス作業等が完了、稼働を上昇させるとともに、軽油の製造を活発化した一方、併せて製造された重油や、マレーシアのペンゲラン製油所のRFCCが稼働を停止していたことにより、軽質製品製造のために処理されなかった重油が、シンガポールに流入する格好となったものと見られることが、同地における重油在庫を拡大させる形で作用したものと考えられる。そしてこのように、シンガポールの重油在庫が底堅く推移した他、今後中東湾岸OPEC産油国を中心として増産された中質もしくは重質原油がアジア諸国及び地域等で精製されることにより製造される重油の供給が増加するとの見方が市場で強まりつつあることが、アジア市場の重油価格に下方圧力を加えていることから、11月中旬から12月中旬頃にかけての同市場における高硫黄重油とドバイ原油との価格差(この場合高硫黄重油価格がドバイ原油価格を下回っている)は拡大する傾向を示した一方、低硫黄重油とドバイ原油との価格差(この場合、低硫黄重油価格がドバイ原油価格を上回っている)は縮小する傾向を示している。

 

3. 2025年11月中旬から12月中旬にかけての原油市場等の状況

2025年11月中旬から12月中旬にかけての原油市場においては、ロシア等における石油を含むエネルギー供給関連インフラに対するウクライナの攻撃や、西側諸国等による対ロシア制裁強化に向けた動き、米国のベネズエラへの攻撃実施方針を示唆する情報等が原油相場に上方圧力を加えた反面、ウクライナとロシアとの間の和平案の合意に向けた米国等による調整の動きや、米国原油生産見通しの上方修正に伴う同国石油需給緩和感の醸成等が原油相場に下方圧力を加えた結果、原油価格は1バレル当たり概ね57~61ドルの範囲内で変動しつつも、どちらかと言うと下落傾向となり、12月12日の原油価格の終値は5月5日以来の低水準に到達した(図15参照)。

図15 原油価格の推移(2003~25年)

ロシア南西部の黒海沿岸港であるノボロシイスクにおける原油等の出荷が再開した(11月14日にウクライナ軍が発射した無人機による攻撃で操業を停止していた)旨11月16日に報じられたことにより、ロシアからの石油供給途絶懸念が市場で後退したことに加え、11月17日に米国ニューヨーク連邦準備銀行から発表された11月のニューヨーク地区製造業景況感指数(ゼロが当該部門拡大と縮小の分岐点)が18.7と10月の10.7から上昇した他市場の事前予想(5.8~6.0)を上回ったこともあり米ドルが上昇したこと、11月19日夕方(米国東部時間)に発表される予定である米国半導体製造大手エヌビディアの業績発表を前にした持ち高調整が発生したことにより米国株式相場が下落したことから、11月17日の原油価格は前週末終値比で1バレル当たり0.18ドル下落し、終値は59.91ドルとなった。しかしながら、米国トランプ政権関係者が米国連邦準備制度理事会(FRB)の次期議長選出のための面接を開始した旨11月18日にトランプ大統領が発言したことにより、同国金融当局の政策金利引き下げ推進に伴う同国経済成長加速と石油需要の伸びの拡大期待が増大したことに加え、ポーランド国内の鉄道の線路爆破(11月17日にポーランドのトゥスク首相が発表)を含め、ロシアの攻撃はテロ行為と見做されるべきである旨11月18日に欧州委員会(EC)のカラス外務・安全保障政策上級代表が発言したことにより、欧州による対ロシア制裁の強化に伴うロシアからの石油供給混乱を巡る懸念が市場で増大したことから、この日の原油価格の終値は1バレル当たり60.74ドルと前日終値比で0.83ドル上昇した。それでも、ウクライナとロシアとの間での戦闘終結に向けた和平案を米国が策定し調整を実施しつつある旨11月18日夜(米国東部時間)に報じられたことにより、欧米諸国等による対ロシア制裁緩和とロシアからの石油を含むエネルギー供給正常化への期待が発生したことから、11月19日の原油価格は前日終値比で1バレル当たり1.30ドル下落し、終値は59.44ドルとなった。また、ウクライナとロシアとの戦闘終結に関し米国とロシアが起草した和平案をもとに協議を開始することに合意する旨11月20日にウクライナのゼレンスキー大統領が明らかにしたことにより、両国の戦闘終結に伴う西側諸国等による対ロシア制裁緩和とロシアからの石油等エネルギー供給の正常化に対する期待が増大したことから、この日の原油価格の終値は1バレル当たり59.14ドルと前日終値比で0.30ドル下落した(なお、この日を以てNYMEXの2025年12月渡し米国原油先物契約は取引を終了したが、2026年1月渡し米国原油先物契約のこの日の終値は1バレル当たり59.00ドル(前日終値比同0.25ドルの下落)であった)。また、11月27日までに米国とロシアの起草した和平案を受諾しなければ、ウクライナに対する支援を停止する可能性がある旨米国が警告したと11月21日に報じられたことにより、ウクライナの和平計画受諾に伴う米国の対ロシア制裁緩和とロシアからの石油等エネルギー供給拡大観測が増大したことから、11月21日の原油価格は前日終値比で1バレル当たり1.08ドル下落し、終値は58.06ドルとなった。この結果原油価格は11月19~21日の3日間合計で1バレル当たり2.68ドル下落した。

ただ、米国物価上昇は沈静化しつつある一方、同国労働市場は悪化しつつあるものと見られることにより、12月9~10日に開催される予定である次回米国連邦公開市場委員会(FOMC)において政策金利引き下げを支持する旨11月24日に米国連邦準備制度理事会(FRB)のウォラー理事が表明した他、米国物価上昇リスクが低下しつつある一方、同国労働市場悪化リスクが高まっているように見受けられるとして、次回FOMCにおける政策金利引き下げを支持する旨サンフランシスコ連邦準備銀行のデーリー総裁が明らかにしたと11月24日に報じられたこともあり、米国金融当局による政策金利引き下げに伴う同国経済活性化期待が増大したこともあり、米国株式相場が上昇したことから、この日の原油価格は前週末終値比で1バレル当たり0.78ドル上昇し、終値は58.84ドルとなった。しかしながら、ウクライナとロシアとの間での和平計画を巡る合意に極めて接近しつつある旨11月25日に米国のトランプ大統領が明らかにしたことにより、和平を巡る合意に両国が到達することに伴い、欧米諸国等による対ロシア制裁が緩和されるとともにロシアからの石油供給が正常化に向かうとの期待が増大したことから、11月25日の原油価格の終値は1バレル当たり57.95ドルと、前日終値比で0.89ドル下落した。それでも、11月26日には、翌日の11月27日の米国感謝祭(サンクスギビング・デー)の休日を前にした持ち高調整とともに、これまでの原油価格下落に対し値頃感から原油を買い戻す動きが発生したことに加え、11月26日に米国シカゴ購買部協会から発表された11月の消費者信頼感指数(50が景気拡大と縮小の分岐点)が36.3と10月の43.8から低下した他、市場の事前予想(43.6~44.3)を下回ったこともあり、12月9~10日に開催される予定である次回FOMCにおいて政策金利引き下げが決定されることに対する期待が増大したことにより、米ドルが下落するとともに米国株式相場が上昇したこと、11月26日に米国石油サービス会社ベーカー・ヒューズ(Baker Hughes)から発表された同国石油坑井掘削装置稼働数が同日時点で407基と前週末から12基減少(同国石油水平坑井掘削装置稼働数は402基と同12基減少)と、2021年9月10日(この時は401基)以来(同国石油水平坑井掘削装置稼働数は2025年8月22日(この時は402基)以来)の低水準に到達したことにより、この先の米国原油生産の伸びの鈍化懸念が発生したことから、この日の原油価格は前日終値比で1バレル当たり0.70ドル上昇し、終値は58.65ドルとなった。また、米国の感謝祭(サンクスギビング・デー)の休日に伴い11月27日の原油価格の終値は計上されなかったが、2025年9月の米国原油生産量(確定値)が日量1,384.4万バレルと8月(同1,380万バレル)から同4.4万バレル増加し過去最高に到達した旨11月28日にEIAが明らかにしたことにより、足元及びこの先の石油需給緩和感が意識されたことに加え、11月5日前後に発表される予定であるサウジアラビアの2026年1月の原油販売価格が前月比で引き下げられている旨判明するとの観測が11月28日の市場で発生したこと、米国のトランプ大統領が敵対関係にあるベネズエラのマドゥロ大統領と先週電話会談を行なっていた旨11月28日にニューヨーク・タイムズが報じたことにより、両国間の緊張緩和によるベネズエラの原油生産回復期待が増大したことから、この日の原油価格の終値は1バレル当たり58.55ドルと前取引日終値比で0.10ドル下落した。

しかしながら、ロシア南西部の黒海沿岸都市ノボロシイスクにあるカスピ海パイプラインコンソーシアム(CPC: Caspian Pipeline Consortium)の原油船積み施設が11月29日未明(現地時間)にウクライナ軍の無人艇で攻撃された結果係留装置3基中1基が深刻な被害を受けたことにより操業を停止した旨CPCが明らかにしたと伝えられた他、トルコの黒海沿岸沖合を航行していた、ロシア産石油輸送に関与していたとして制裁対象となっていた石油タンカー2隻に対し11月28日深夜から29日早朝(現地時間)にかけ攻撃を行なった旨11月29日にウクライナ治安当局関係者が明らかにしたと報じられたうえ、ロシアが関与しているとされるタンカー(軽油を輸送していたとされる)がセネガルのダカール沖で爆発した旨12月1日に伝えられたことにより、ロシアからの石油供給に対する懸念が増大したことに加え、11月16日からの週において電話会談を実施した際、米国のトランプ大統領がベネズエラのマドゥロ大統領に対し自発的な退陣を要求し、拒否した場合には軍事行動を含む方策の実施を検討する意向である旨伝えたと11月29日にウォールストリート・ジャーナルが報じた他、ベネズエラ空域は事実上閉鎖されている旨11月29日にトランプ大統領が警告したうえ、12月1日午後5時(米国東部時間)よりトランプ大統領がベネズエラに対する今後の対応につき政権関係者等との間で協議を行なう旨同日CNNが伝えたことにより、米国とベネズエラの対立の先鋭化に伴う、ベネズエラの原油供給への影響を巡る懸念が増大したことから、12月1日の原油価格は前週末終値比で1バレル当たり0.77ドル上昇し、終値は59.32ドルとなった。ただ、12月2日は、同日実施が予定される米国のトランプ大統領のウィットコフ中東担当特使他とロシアのプーチン大統領他との間でのウクライナとロシアとの和平案を巡る協議を控え市場関係者が様子見となったこともあり、この日の原油価格の終値は1バレル当たり58.64ドルと前日終値比で0.68ドル下落した。それでも、12月2日に行なわれた、米国のウィットコフ中東担当特使他とロシアのプーチン大統領他との会談後、ロシアのウィシャコフ大統領補佐官が、ウクライナとの和平案に関しては、領土問題等において両国の考え方の相違が顕著であることから妥協策は見出せておらず、なお多くの作業を行なう必要があり、合意には至らなかった旨明らかにしたと同日夕方(米国東部時間)に報じられたことで、ウクライナとロシアが和平案を巡って合意することに伴う、西側諸国等による対ロシア制裁緩和によるロシアからの石油供給正常化への期待が後退したことから、この日の原油価格は前日終値比で1バレル当たり0.31ドル上昇し、終値は58.95ドルとなった。また、ウクライナ東部のドンバス地方(ドネツク州及びルハンスク州)からウクライナ軍が撤退しないのであれば、ロシア軍は武力により同地方を完全に制圧する意向である旨ロシアのプーチン大統領が表明したと12月4日に報じられたことにより、両国の和平案への合意と西側諸国等による対ロシア制裁緩和、及びロシアからの石油を含むエネルギー供給の円滑化に対する期待が後退したことに加え、CPCパイプライン出荷施設へのウクライナの攻撃に伴う同施設の操業停止により、12月1~2日のカザフスタンの原油及びコンデンセート生産量が11月平均から6%減少した旨関係筋が明らかにしたと12月4日に報じられたことにより、ウクライナによるロシアのエネルギー供給関連インフラ等に対する攻撃に伴うロシアからの石油供給等の減少への懸念が増大したことから、この日の原油価格の終値は1バレル当たり59.67ドルと前日終値比で0.72ドル上昇した。さらに、これまでのロシア産原油販売価格上限設定から西側諸国のロシア産原油輸送禁止へと、事実上対ロシア制裁を強化する旨主要7ヶ国(G7)及び欧州連合(EU)が検討していると12月5日に報じられたことにより、同措置の実施に伴うロシアからの石油供給混乱による世界石油需給引き締まり感を市場が意識したことに加え、ロシア南西部サマラ州のシズラニ(Sizran)製油所(操業者:ロスネフチ、原油精製処理量日量17万バレル)及び同国南西部アゾフ海沿岸のテムリュク(Temryuk)港を、それぞれウクライナが攻撃した旨12月5日に報じられたことにより、ウクライナによるロシアのエネルギー供給関連インフラ等への攻撃激化に伴うロシアからの石油供給等への支障拡大を巡る懸念が増大したことから、この日の原油価格は前日終値比で1バレル当たり0.41ドル上昇し、終値は60.08ドルとなった。この結果原油価格は12月3~5日の3日間合計で1バレル当たり1.44ドル上昇した。

しかしながら、12月8日には、これまでの原油価格上昇に対する利益確定の動きが発生したことに加え、12月9~10日に開催される予定である米国連邦公開市場委員会(FOMC)を前にした持ち高調整が発生したこともあり、米ドルが上昇するとともに米国株式相場が下落したことから、この日の原油価格は前週末終値比で1バレル当たり1.20ドル下落し、終値は58.88ドルとなった。また、12月9日にEIAから発表された短期エネルギー見通し(STEO: Short-term Energy Outlook)において、EIAが2025年の米国原油生産量を日量1,361万バレルと、11月12日に発表された前回の見通し時点の同1,359万バレルから上方修正したことにより、足元の米国石油需給緩和感を市場が意識したことから、この日の原油価格の終値は1バレル当たり58.25ドルと前日終値比で0.63ドル下落した。この結果原油価格は12月8~9日の2日間合計で1バレル当たり1.83ドルの下落となった。ただ、ロシア産原油を輸送する影の船団のタンカーとされるタンカー「ダシャン(Dashan)」(コモロ諸島船籍)(ロシアの黒海沿岸港ノボロシイスクにおいてウラル原油を積載しようとしていた旨指摘される)を黒海においてウクライナが無人艇を利用して攻撃した結果、同船が大きな損傷を受けた旨12月10日に報じられたことにより、ロシアからの石油供給を巡る支障拡大に対する懸念が増大したことに加え、米軍がベネズエラ沖合において制裁対象となっているタンカーを拿捕した旨関係者が明らかにしたと12月10日午後(米国東部時間)に報じられたことにより、今後海運会社がベネズエラ産原油の輸送に消極的になる結果、同国からの原油供給が減少するとの懸念が増大したこと、12月9~10日に開催された米国連邦公開市場委員会(FOMC)において、0.25%の政策金利引き下げが決定されたことにより、米ドルが下落するとともに、米国株式相場が上昇したことから、12月10日の原油価格の終値は1バレル当たり58.46ドルと前日終値比で0.21ドル上昇した。それでも、12月10日にEIAから発表された米国石油統計(12月5日の週分)において、原油在庫が前週比181万バレルの減少、ガソリン同640万バレル、留出油在庫同250万バレルの、それぞれ増加と、原油在庫が市場の事前予想(同230万バレル程度の減少)及び12月9日午後4時30分(米国東部時間)に発表された米国石油協会(API)の米国石油統計(その際明らかになった原油在庫は前週比478万バレルの減少)程減少していなかった他、ガソリン及び留出油両在庫は市場の事前予想(ガソリン在庫同280万バレル程度、留出油在庫同190万バレル程度の、それぞれ増加)を上回って増加している旨判明したうえ、米国原油先物契約受け渡し地点である同国オクラホマ州クッシングの原油在庫が前週比31万バレル増加していたことにより、米国石油需給の緩和感を市場が意識した流れを引き継いだことに加え、ロシアとの戦闘を終結させるための20箇条の和平案をウクライナが米国に提出した旨12月11日に報じられたことにより、関係国が和平案で合意することにより、西側諸国等による対ロシア制裁が緩和されるとともにロシアからの石油供給が円滑化することに対する期待が市場で増大したことから、12月11日の原油価格は前日終値比で1バレル当たり0.86ドル下落し、終値は57.60ドルとなった。また、12月10日夕方(米国東部時間)に発表された、米国情報技術(IT)大手オラクルの2025年9~11月期業績が市場の事前予想を下回った流れを引き継いだ他、労働力及び資材の不足に伴い米国IT大手オープンAI向けに同社が提供するデータセンター完成時期が2027年から2028年へと遅延する旨12月12日にブルームバーグ通信が報じたことにより、同データセンター稼働開始の延期が、オラクルの収益拡大に負の影響を与えるとの観測が発生したこともあり、IT関連企業を中心とした業績不安が増大するとともに利益確定の動きが発生したことにより、米国株式相場が下落したことから、この日の原油価格の終値は1バレル当たり57.44ドルと、前日終値比で0.16ドル下落した他、5月5日(この日の終値は57.13ドルと、2021年2月5日(この日の終値は56.85ドル)以来の低水準)以来の低水準に到達した。また、原油価格は12月11~12日の2日間合計で1バレル当たり1.02ドルの下落となった。

 

4. 原油市場における主な注目点等

11月17日夕方(米国東部時間)に国連安全保障理事会において、米国のトランプ大統領が提案した、20項目に渡るパレスチナ自治区ガザ地区の戦闘終結計画を支持する決議案が採択された。しかしながら、決議案の中に将来のイスラエル国家の樹立可能性が示唆されているとして、11月16日にイスラエルのネタニヤフ首相が反発の意を表明するなどしている。また、パレスチナ人の権利を含めた要求が充足されていないとして当該計画の受入を拒否する旨11月18日にイスラム武装勢力ハマスが表明した。そのような中、11月19日及び22日にはイスラエル軍がガザ地区のハマスの施設を攻撃した旨報じられた。また、レバノンの首都ベイルートを攻撃しイスラム武装勢力ヒズボラの軍事担当幹部を殺害した旨11月23日にイスラエルが発表(11月28日にヒズボラの指導者カセム師はイスラエルに対し報復する可能性を示唆)した。さらに、11月26日にはイスラエル軍がパレスチナ自治区ヨルダン川西岸地区北部の都市トゥバス(Tubas)において軍事作戦を実施し始めた。加えて、12月4日にもイスラエル軍はレバノン南部を攻撃した。そして、ガザ地区の中心都市であるガザ市を空爆した結果、ハマスの兵器製造幹部を殺害した旨12月13日にイスラエル軍が発表した一方、イスラエルが意図的に停戦違反を行なったとして、ハマスが非難した旨同日伝えられた。このように、イスラエルとハマスは10月8日にガザ地区の和平を巡る第1段階の合意に到達したものの、その後もイスラエルによるハマス及びヒズボラ等の攻撃が散見される状態にある他、第1段階の合意内容に含まれる、ハマスが拘束した人質の解放が完了していない(12月14日時点でイスラエル人の遺体1体が返還されてない)こともあり、第2段階の合意(ハマスの武装解除及びガザ地区の治安維持のための国際部隊の設置を含む恒久的な停戦が主な内容になることが想定される)を巡る交渉については、イスラエルのネタニヤフ首相が12月29日に米国のトランプ大統領と会談し協議する意向である旨12月8日にイスラエル政府が発表しているものの、事実上開始されていない。今後もカザ地区等における和平を巡る関係者間協議が紆余曲折を経る中、軍事攻撃等が実施されるとともに、例えば、ハマスを支援するイエメンのフーシ派武装勢力(イランが支援しているとされる)によるイエメン周辺海域を航行する、イスラエルが関与していると解されるタンカーを含む船舶が攻撃される(従来からフーシ派武装勢力はハマスを支援すべくイスラエルが関与していると見られるタンカーを攻撃する方針である旨明らかにしていた)ことにより、これら海域における船舶による石油等の輸送が混乱するとの懸念が市場で増大する結果、原油相場に上方圧力が加わると言った展開もありうるため、注意する必要があろう。

また、イランの濃縮ウランの貯蔵や空爆された核関連施設の状況を直ちに明らかにすべきである旨11月20日に開催された国際原子力機関(IAEA)理事会において決議されたことに対し、イランが反発、IAEAによるイラン核関連施設査察を巡る協力を停止する旨11月20日にイランのアラグチ外相が表明するなど、イランと西側諸国等との緊張はイスラエルとイランとの間で戦闘が行なわれた2025年央時点からは低下しているものの、なお継続しているものと見られる他、ホルムズ海峡からオマーン湾方向に航行していたタンカー(「タララ(Talara)」(マーシャル諸島船籍)と見られる)をイランが拿捕した旨11月14日に米国国防当局関係者が明らかにしたと報じられた一方、別途UAEを出港しシンガポールに向かいつつあった石油タンカーを11月14日に拿捕した旨11月15日にイラン革命防衛隊が明らかにした他、密輸した燃料を輸送していたとして、12月11日にイラン当局がオマーン湾において外国籍タンカーを拿捕した旨12月12日に伝えられた一方、中国からイランに軍事関連物資を輸送していたとして、11月にインド洋において米軍が船舶に乗り込み当該物資を押収後破壊した旨12月12日にウォールストリート・ジャーナル(電子版)が報じるなど、ペルシャ湾周辺海域においてイランがタンカーを含む船舶を拿捕する事案等を含め米国とイランとの緊張が相対的に高まる兆候が見られることから、この面でも中東情勢の不安定化に伴う同地域からの石油供給途絶懸念が市場で強まりやすく、それが結果として原油相場に織り込まれる可能性もある。

さらに、12月13日には、シリア中部パルミラ(Palmyra)郊外において、イスラム過激派組織「イスラム国(IS: Islamic State)」の戦闘員が攻撃を行なった結果、米国陸軍関係者2人及び同国民間通訳1人が死亡(別途米軍関係者3人が負傷)した。これに対し同日米国のトランプ大統領は非常に厳しい報復措置を実施する意向である旨示唆した。今後も、シリア等においてIS等の武装勢力の活動が活発化することにより、シリアのみならず、イラク等周辺諸国情勢に影響が及ぶようであれば、中東情勢の不安定化に伴う同地域からの石油供給途絶懸念が市場で増大する結果、原油相場が上振れすると言った展開となることも否定できない。

他方、ロシア南西部の黒海沿岸都市ノボロシイスクにある石油出荷ターミナルに対し11月14日未明(現地時間)にウクライナ軍が無人機等で攻撃した結果、停泊していた船舶、石油貯蔵施設、及び集合住宅等が損傷した他、同ターミナルからの石油輸出が停止した(同ターミナルからは、ロシア産原油日量70万バレル程度、カザフスタン産原油同150万バレル程度の、合計同220万バレル程度の原油が出荷されているとされ、これは世界石油需要の約2%に相当する)旨同日報じられたが、同ターミナルからの原油等の出荷が再開した旨11月16日に報じられた(但し、石油ターミナルの桟橋が損傷したため、原油の船積みが2~3日程度遅延している旨11月18日に伝えられる)。他方、ロシア西部リャザン(Ryazan)州にあるリャザン製油所(操業者: ロスネフチ、原油精製処理能力日量34万バレル)を攻撃した結果火災が発生し原油精製処理装置2基が損傷した旨11月15日にウクライナが明らかにした(同製油所は11月末まで操業を停止する予定である旨関係筋が明らかにしたと11月18日に伝えられる)他、ロシア南西部サマラ(Samara)州にあるノボクイビシェフスク(Novokuibyshevsk)製油所(操業者: ロスネフチ、原油精製処理能力日量17.7万バレル)をウクライナが攻撃した旨11月16日に伝えられた。また、ポーランド国内の鉄道の線路が爆破された旨11月17日にポーランドのトゥスク首相が明らかにした他、同爆破はロシアが関与している旨ポーランド政府が主張した旨11月17日に伝えられたうえ、ロシアの攻撃によりLNGを輸送するタンカーがウクライナ南部のオデッサ沖合で損傷した旨11月17日にウクライナのシビハ(Sybiha)外相が明らかにした。さらに、ロシアとの間で事業を実施する国等に対し制裁を発動する法案を米国共和党が準備しつつある旨11月16日に米国のトランプ大統領が明らかにした(併せてトランプ大統領は議会に対しそのような準備を差し止める意向である旨表明しなかった)他、ポーランド国内の鉄道の線路爆破を含め、ロシアの攻撃はテロ行為と見做されるべきである旨11月18日に欧州委員会(EC)のカラス外務・安全保障政策上級代表が発言した。

また、ウクライナとロシアとの間での戦闘終結に向け策定した和平案を米国が策定し調整を実施しつつある旨11月18日夜(米国東部時間)に報じられたが、同案はウクライナの一部領土をロシアに割譲することや、ウクライナ軍の縮小を主な内容としており、ウクライナにとっては受け入れ困難なものである旨示唆されると11月19日に伝えられた。ただ、ウクライナとロシアとの戦闘終結に関し米国とロシアが起草した和平案をもとに協議を開始することに合意する旨11月20日にウクライナのゼレンスキー大統領が明らかにした。それでも、11月20日に開催された国連安全保障理事会において、米国から受領したウクライナとロシアとの和平案につき、交渉を行なう用意はあるとしたものの、領土割譲と軍の縮小等の内容については受け入れを拒否する旨ウクライナが明らかにした。そのような中、ロシア南西部リャザン州にあるリャザン製油所、及び同じく南西部クラスノダール(Krasnodar)地方にあるイルスキー(Ilsky)製油所(操業者: KNGK、原油精製処理能力日量13万バレル)を攻撃した旨11月20日にウクライナ軍関係者が明らかにした。そして、11月27日までに米国とロシアが起草した和平案を受諾しなければ、ウクライナに対する支援を停止する可能性がある旨米国が警告したと11月21日に報じられた一方、11月23日には、米国とウクライナがスイスのジュネーブで協議を行ない、ウクライナとロシアの戦闘終結に向けた和平案に関する修正案を策定した旨11月24日に伝えられた。さらに、ウクライナとロシアとの間での和平計画を巡る合意に極めて接近しつつある旨11月25日に米国のトランプ大統領が明らかにした他、11月27日の和平案に対するウクライナの受け入れ期限を撤回する旨11月25日にトランプ大統領が表明した。他方、ロシアの黒海沿岸港ノボロシイスク及び同国南西部クラスノダール地方にあるトゥアプセ(Tuapse)製油所(操業者: ロスネフチ、原油精製処理能力日量24万バレル)を攻撃した旨11月26日にウクライナが明らかにするとともに、近隣のCPCパイプライン石油ターミナルが操業を停止(後に再開し、船積みは影響が生じていない旨11月26日にカザフスタンエネルギー省が発表)した旨11月26日に報じられた。また、ウクライナのゼレンスキー大統領はロシアとの和平協議の過程でウクライナの領土のロシアへの割譲を認める意向はない旨ウクライナのイェルマーク大統領府長官(当時、同長官は汚職疑惑により11月28日に大統領府長官を辞任した)が明らかにしたと11月27日に報じられたが、ロシアが領土であると主張する地域からウクライナが撤退しなければ、軍事力により領有する意向である旨11月27日にロシアのプーチン大統領が発言した。また、ロシア南西部サラトフ(Saratov)州にあるサラトフ製油所(操業者: ロスネフチ、原油製処理能力日量14万バレル)を攻撃した旨ウクライナ軍が明らかにしたと11月28日に伝えられた。さらに、ロシアのノボロシイスクにあるCPCの原油船積み施設が11月29日未明(現地時間)にウクライナ軍による無人艇で攻撃された結果操業を停止した旨CPCが明らかにした(当初同施設から出荷する予定であった原油は代替経路を利用して出荷する方針である旨カザフスタン政府が明らかにした)旨伝えられた(同施設の係留装置3基中1基(第2一点係留装置(SPM: Single Point Mooring))が深刻な被害を受けた他、第1一点係留装置が予防的に操業を停止したが、カザフスタンのテンギス油田(原油生産量推定日量92万バレル)の操業者であるシェブロンは、原油出荷は継続している旨11月30日に明らかにした他、その後第1一点係留装置を利用して原油出荷を再開した旨12月1日にCPCが明らかにした(なお、第3一点係留装置は11月21日より修理中であり完了まで最長2ヶ月を要するとされる)が、CPCパイプライン出荷施設の操業停止により、12月1~2日のカザフスタンの原油及びコンデンセート生産量が11月平均から6%減少した旨関係筋が明らかにしたと12月4日に報じられた)。そして、ロシア南西部クラスノダール地方のアフィプスキー(Afipsky)製油所(操業者: サフマル(SAFMAR)、原油精製処理能力日量18万バレル)を夜間に攻撃した旨11月29日にウクライナ軍が発表した他、トルコの黒海沿岸沖合を航行していた、ロシア産石油を輸送していたとして制裁対象となっていた石油タンカー2隻(カイロス(Kairos)及びビラト(Virat)(いずれもガンビア船籍))に対し11月28日深夜から29日早朝(現地時間)にかけ攻撃を行なった旨11月29日にウクライナ治安当局関係者が明らかにしたと報じられたうえ、ロシアが関与しているとされるタンカー(マーシン(Mersin)(パナマ船籍))(軽油を輸送していたとされる)がセネガルのダカール沖で爆発した旨12月1日に伝えられた。また、トルコ沖の黒海においてヒマワリ油を輸送していたタンカー「ミッドボルガ-2(Midvolga-2)」(ロシア船籍)が12月2日に無人機による攻撃を受けた(ウクライナは攻撃を否定したとされる)旨同日報じられた。そのような中、欧州が戦争を開始するのであれば、ロシアは戦闘する用意がある旨12月2日にロシアのプーチン大統領が警告した一方、12月2日に行なわれた、米国のトランプ大統領のウィットコフ中東担当特使等とロシアのプーチン大統領等との会談後、ロシアのウィシャコフ大統領補佐官が、ウクライナとの和平案に関しては、領土問題等において両国の考え方の相違が顕著であることから妥協策は見出せておらず、なお、多くの作業を行なう必要があり、合意には至らなかった旨明らかにしたと同日夕方(米国東部時間)に報じられた。さらに、ロシア南西部タンボフ(Tambov)州中部に敷設されているドルジバ(Druzhba)パイプライン(ロシア産原油をハンガリー及びスロバキア等に輸出する際に利用される)を攻撃した旨12月3日にウクライナ軍が発表した(ただ、同パイプライン経由の原油輸送は通常通りである旨スロバキアのパイプライン運営会社及びハンガリー石油・ガス会社が同日遅く(現地時間)に明らかにしている)。そして、ウクライナ軍がウクライナ東部のドンバス地方(ドネツク州及びルハンスク州)から撤退しないのであれば、ロシア軍が武力により同地方を完全に制圧する意向である旨ロシアのプーチン大統領が表明したと12月4日に報じられた。他方、これまでのロシア産原油販売価格上限からロシア産原油の西側諸国による輸送禁止へと対ロシア制裁を事実上強化すべく、主要7ヶ国(G7)及び欧州連合(EU)が検討している旨12月5日に報じられた他、ロシア南西部サマラ(Samara)州のシズラニ(Sizran)製油所(操業者: ロスネフチ、原油精製処理量日量17万バレル)及び同国南西部アゾフ海沿岸のテムリュク(Temryuk)港(同港からは液化石油ガス(LPG)、石油製品及び石油化学製品等を出荷しているとされる)を攻撃した旨12月5日にウクライナ軍が明らかにしたうえ、ロシアのリャザン製油所を攻撃した旨12月6日にウクライナ軍が発表した。また、ロシア産原油を輸送する影の船団のタンカーとされるタンカー「ダシャン(Dashan)」(コモロ諸島船籍とされる他、ロシアの黒海沿岸港ノボロシイスクにおいてウラル原油を積載しようとしていたと指摘される)をウクライナが黒海において無人艇を利用して攻撃した結果、同船は大きな損傷を受けた旨12月10日に報じられた。そのような中、ロシアとの戦闘を終結させるための20箇条の和平計画をウクライナが米国に提出した旨12月11日に伝えられた。ただ、ロシアがカスピ海で操業していたフィラノフスキー(Filanovsky)油田(操業者: ルクオイル、原油生産能力日量12万バレルとされる)関連施設を12月11日にウクライナが無人機により攻撃した結果、同油田の20超の生産井の操業が停止した旨同日報じられたうえ、フィラノフスキー油田及びカスピ海にあるコルチャギン(Korchagin)油田(操業者:ルクオイル、原油生産能力日量5万バレルとされる)関連施設を12月12日にウクライナが無人機により攻撃した結果、施設が損傷するとともに同油田の生産が停止した旨12月12日に報じられた。さらに、ロシア西部ヤロスラブリ(Yaroslavl)州にあるヤロスラブリ製油所(操業者: スラブネフチ-ヤノス(Slavneft-YANOS)、原油精製処理量日量30万バレル)がウクライナの発射した無人機により攻撃された結果、操業を停止した旨12月12日に伝えられた。そして、ウクライナはロシア南西部のクラスノダール地方にあるアフィプスキー製油所を再び攻撃した他、同国南西部ボルゴグラード州にある石油貯蔵施設を攻撃した旨12月14日にウクライナが発表した(なお、アフィプスキー製油所の操業には影響はない旨地元当局が同日明らかにしている)。

このように、ウクライナとロシアとの和平案を巡っては、領土問題を巡る意見の相違が顕著であるため、短期的に妥結する可能性はそれほど高くはないものと考えられる。そのような中、できる限り交渉を自国に有利な方向に持ち込むべく、ロシアは領有を希望するウクライナ東部のドンバス地方(ドネツク州及びルハンスク州)を中心に攻撃を激化させる反面、それまで製油所が中心であったロシアのエネルギー供給関連インフラ攻撃につき、ウクライナは、石油ターミナル、タンカー及び油田関連施設等その範囲を拡大させる他、より頻繁に攻撃を行なうといった展開となりつつあることから、今後も、ロシアからの石油を含むエネルギー供給途絶懸念を市場で増大させるとともに、原油相場に上方圧力を加える場面が頻繁に見られようになることもありうる。また、ウクライナとロシアとの和平案を巡る事実上の仲介国である米国の方針にも揺らぎが見られており、ウクライナの要望にもある程度耳を傾けつつロシアとの間で交渉を続ける場面も見られる米国が、いつまたロシアの要求の大部分を受け入れるとともに、ウクライナにその受諾を迫るといった姿勢にならないとも限らず、そのような展開となった場合には、ウクライナとロシアとの間での和平案への合意に伴う西側諸国等による対ロシア制裁緩和とロシアからの石油供給等の拡大への期待が増大することにより、原油相場に下方圧力が加わる場面が見られることもありうる反面、ウクライナの要求を受け入れることにより米国とロシアとの間での和平案を巡る協議が合意に向け接近しないのであれば、和平案への合意に伴う西側諸国等による対ロシア制裁緩和とロシアからの石油供給等の拡大への期待が後退することにより、原油相場に上方圧力が加わる場面が見られることもありうる。また、ウクライナを事実上支援するEU等が米国に働きかけるとともに、対ロシア制裁強化に向け検討を進めるようである場合でも、ロシアからの石油を含むエネルギー供給を巡る混乱に対する懸念が増大する結果、原油相場が上振れするといった展開となる可能性もある。

ベネズエラのマドゥロ大統領が対話の実施を希望している旨11月16日に明らかにしていた米国のトランプ大統領は、同日から始まる週にベネズエラのマドゥロ大統領と電話会談を行なっていた旨11月28日にニューヨーク・タイムズが報じた。ただ、電話会談を実施した際、トランプ大統領はマドゥロ大統領に対し自発的な退陣を要求し、拒否した場合には軍事行動等の実施を検討する意向である他、マドゥロ大統領とその家族に対する恩赦につき議論した旨11月29日にウォールストリート・ジャーナルが報じたうえ、間もなくベネズエラ陸上での攻撃を開始する旨11月27日に米国のトランプ大統領が表明した他、ベネズエラ空域は事実上閉鎖されている旨11月29日にトランプ大統領が警告した(その後、この警告につき余り深く考えるべきではないとしてトランプ大統領は事実上自身の発言を訂正した旨11月30日夕方(米国東部時間)に伝えられた)。そして、12月1日午後5時(米国東部時間)よりトランプ大統領がベネズエラに対する今後の対応につき政権関係者等との間で協議を行なう旨同日CNNが報じた。また、麻薬密輸組織を標的とした、ベネズエラ陸上における攻撃の時期が接近しつつある旨12月2日に米国のトランプ大統領が示唆した他、麻薬密輸組織撲滅のためのベネズエラにおける陸上攻撃を間もなく開始する旨米国のトランプ大統領が改めて表明した旨12月3日夕方(米国東部時間)に伝えられた。さらに、米軍がベネズエラ沖合において制裁対象となっているタンカーを拿捕した旨関係者が明らかにしたと12月10日午後(米国東部時間)に報じられた他、12月10日午後遅く(同)には、米国のトランプ大統領がベネズエラ沖合におけるタンカーの拿捕を認めたうえ、さらなる事態が発生しつつある旨明らかにした。そして、ベネズエラ産原油輸送に関与していると見られる原油タンカー6隻、海運会社6社、及びベネズエラのマドゥロ大統領の妻の甥3人に対し新規の制裁措置を発動する旨12月11日午後(米国東部時間)に米国財務省が発表した。このように、ベネズエラにおいては、米国のトランプ大統領が麻薬密輸組織破壊のためにベネズエラにおいて陸上攻撃を含む作戦を実施に移す兆候が見られる。このため、今後も米国のトランプ大統領の同作戦実施を巡る発言を含め、ベネズエラに対する攻撃の実施が間近に迫りつつあることを示唆する情報が流れるようだと、ベネズエラからの石油供給途絶を巡る懸念が市場で増大する結果、原油相場に上方圧力が加わる可能性があるので、留意する必要があろう。

ここ最近、米国の貿易相手国及び地域に対する、新たな関税の賦課、及び既に実施する方針を示している関税措置の実際の賦課の猶予もしくは撤回に関し、トランプ政権関係者による大きな動きは見られない(但し、メキシコから米国農業部門等への水供給を巡る問題により、メキシコからの輸入品に対し5%の追加関税を導入する旨12月8日に米国のトランプ大統領が警告するなど、動きが全くなかったわけではない)。また、米国のトランプ大統領は11月24日に中国の習近平国家主席と電話会談を実施した際、両国関係は極めて強固である旨強調した他、習近平主席による2026年4月の訪中招待をトランプ大統領が受け入れた旨11月25日に伝えられるなど、貿易問題を含む米中関係は概ね小動きとなっている。ただ、トランプ大統領は突然新規の関税賦課を表明したり、貿易面等での事実上の制裁措置の実施を表明したりすることがあり、その場合世界経済の減速に伴う石油需要の伸びの鈍化への懸念が市場で増大することにより、原油相場に下方圧力が加わりうる反面、例えば米国と中国との間での貿易面等での協議が進展する結果、関税等の税率引き下げや撤廃、実施の猶予期限の延長、ないしは他の貿易制限措置等の緩和等が図られるようであれば、世界経済減速による石油需要の伸びの鈍化懸念が市場で後退することにより、原油相場に上方圧力が加わりうるため、今後この面でのトランプ大統領等の動向につき注目する必要があろう。

また、米国労働市場のさらなる悪化を防止するための保険として12月9~10日に開催される予定である米国連邦公開市場委員会(FOMC)においては、政策金利を0.25%引き下げる必要があるとの考えを米国連邦準備制度理事会(FRB)のウォラー理事が示した旨11月17日に伝えられた。他方、米国のトランプ政権関係者がFRBの次期議長選出のための面接を開始した旨11月18日にトランプ大統領が発言した。また、米国の物価上昇及び雇用状況につきさらなる情報が得られるまで、12月9~10日に開催される予定である次回のFOMCにおける政策金利を巡る判断を行なうことは困難である旨米国リッチモンド連邦準備銀行のバーキン総裁が示唆したと11月18日に報じられた。さらに、10月28~29日に開催された前回のFOMCにおいては、同国金融当局関係者数人が政策金利引き下げに反対する意向を示した他、12月9~10日に開催される予定である次回のFOMCにおいても政策金利の据え置きが適切である可能性が高い旨の見解を示していたと11月19日に公表されたFOMC議事録(10月28~29日開催分)で示唆されていた旨判明した。加えて、米国物価上昇は沈静化に向かわないどころか加速する兆候を見せているものと考えられることから、12月9~10日に開催される予定である次回のFOMCにおける政策金利引き下げには慎重な姿勢で望む旨11月20日に米国シカゴ連邦準備銀行のグールズビー総裁が明らかにした。そして、米国の物価上昇よりも労働市場の方を懸念しているものの、今後入手される経済指標類等をもとに、12月9~10日に開催される予定である次回のFOMCにおける政策金利引き下げを巡っては慎重に判断したい旨の意向を11月20日に米国フィラデルフィア連邦準備銀行のポールソン総裁が示した。それでも、米国物価上昇リスクは低減している反面、雇用の悪化リスクが増大しているものと見られることから、近い将来さらなる政策金利引き下げの余地が発生するものと見込んでいる旨米国ニューヨーク連邦準備銀行のウィリアムズ総裁が明らかにしたと11月21日に伝えられた。同日には、米国ダラス連邦準備銀行のローガン総裁が、米国物価上昇が予想以上に沈静化したり、同国労働市場がより急速に悪化したりしつつあるといった明確な事象が無い限り、12月9~10日に開催される予定であるFOMCにおける政策金利の引き下げ判断は困難である旨発言した。また、米国経済が堅調な状態であることから、FRBの現行の金融政策は適切であるため、12月9~10日に開催される予定であるFOMCにおける政策金利の取り扱いを巡る判断は慎重に行なうべきである旨11月21日に米国ボストン連邦準備銀行のコリンズ総裁が明らかにした。しかしながら、10月28~29日に開催されたFOMC以降に発表されている経済指標類は、物価上昇が沈静化しつつあるうえ、労働市場が悪化しつつあることを示している旨、FRBのミラン理事が示唆したと11月21日に報じられた。また、米国物価上昇は沈静化しつつある一方、同国労働市場は悪化しつつあるものと見られることにより、12月9~10日に開催される予定である次回FOMCにおいて政策金利引き下げを支持する旨11月24日にFRBのウォラー理事が表明した他、米国物価上昇リスクが低下しつつある一方、同国労働市場悪化リスクが高まっているように見受けられるとして、次回FOMCにおける政策金利引き下げを支持する旨サンフランシスコ連邦準備銀行のデーリー総裁が明らかにしたと11月24日に伝えられた。そのような中、政策金利引き下げに積極的であるとされる、米国国家経済会議(NEC: National Economic Council)のハセット委員長が次期FRB議長の最有力候補になりつつある旨11月25日にブルームバーグ通信が報じた。また、12月2日にはトランプ大統領が2026年初頭にはFRBのパウエル議長の後継候補を発表する意向である旨発言した。

そして、12月9~10日に開催されたFOMCにおいては、0.25%の政策金利の引き下げが決定された(これに対し、政策金利引き下げ幅は少なくとも2倍にすべきであった旨12月10日に米国トランプ大統領が金融当局を批判した)が、同会合においては前回のFOMC(10月28~29日開催)において政策金利引き下げに反対したカンザスシティ連邦準備銀行のシュミッド総裁が再度政策金利引き下げに反対した他、シカゴ連邦準備銀行のグールズビー総裁も政策金利引き下げに反対した一方、FRBのミラン理事が0.50%の政策金利引き下げを主張するなど、意見が分裂気味であった。ただ、FOMCの声明では、今後明らかになる経済指標類や見通し、及びリスク等の内容を慎重に評価する方針であるとされており、このような声明がなされた場合には、今後一旦政策金利変更は停止する方向である旨解釈されると見る向きもあった。また、委員会終了後の12月10日に行なわれた記者会見においても、FRBのパウエル議長は、今後も政策金利の取り扱いについてはFOMC開催時において個別に判断していく方針である旨明らかにした。他方、2026年に向けては米国労働市場悪化のリスクの方が同国物価上昇拡大のリスクを上回るものと認識している旨12月12日に米国フィラデルフィア連邦準備銀行のポールソン総裁が明らかにした他、現在の経済情勢から判断すると、金融政策は物価上昇を沈静化させるべく現状よりも引き締める方向とすることが適切である旨の見解を12月12日に米国クリーブランド連邦準備銀行のハマック総裁が示した。また、米国物価上昇率は依然として目標を上回っているとして、12月9~10日に開催されたFOMCにおいて政策金利引き下げに反対した旨12月12日に米国カンザスシティ連邦準備銀行のシュミッド総裁が発言したうえ、米国労働市場が悪化しつつある兆候は殆ど見られない一方、同国物価上昇に対し法人及び個人が依然として強い懸念を持っている旨示唆されたことにより、物価上昇率を含むさらなる経済指標類の発表を待つべきであったとして、12月9~10日の開催されたFOMCにおいては、政策金利引き下げに反対した旨12月12日に米国シカゴ連邦準備銀行のグールズビー総裁が表明した。ただ、米国金融政策を引き締めすぎると、家計に多大な負担を与えるとともに、労働市場の悪化を招くとして、労働市場を回復させるとともに、賃金を上昇させることにより、米国個人の購買力拡大を目指すため、政策金利引き下げを支持する旨12月12日に米国サンフランシスコ連邦準備銀行のデーリー総裁が明らかにしている。

このように、依然として米国金融当局関係者の見方は分裂気味で推移していると見受けられることもあり、今後も、米国雇用統計等の労働関連指標類、同国生産者物価指数(PPI)及び消費者物価指数(CPI)といった物価関連指標類、及び米国金融当局関係者の発言等によって、次回FOMC(2026年1月27~28日開催予定)に向け、政策金利の取り扱いに関する観測が市場で発生する結果、米ドルや米国株式相場が変動することを通じ、原油相場にその影響が織り込まれる場面が見られることもありうる。

また、2026年1月初頭にはトランプ大統領が次期FRB議長候補を発表する予定であり、現時点では政策金利引き下げに積極的なNECのハセット委員長が最有力であるとされており(但し土壇場でトランプ氏が判断を変更する可能性がある旨指摘する向きもある)、この面から今後も米国金融当局の政策金利引き下げによる同国経済活性化期待と米ドル下落観測の増大により、原油相場に上方圧力が加わりやすい他、実際にハセット氏が次期FRB議長候補となった場合には、政策金利引き下げに対する市場の見方が一層強まる結果、原油価格が上振れする場面が見られることもありうる。

そして、2026年1月に入ると米国主要企業等の2025年10~12月等の業績が発表されることから、それら企業の業績もしくは2026年以降の業績見通し(もしくは見通しの修正)等の内容によっては米国株式相場を通じて原油相場に圧力が加わる可能性もある。

11月27日に中国国家統計局から発表された10月の同国工業企業利益は前年同月比5.5%の減少と9月の同21.9%の増加から減少に転じた。また、11月30日に中国国家統計局から発表された11月の同国製造業購買担当者指数(PMI)(50が当該部門の拡大と縮小の分岐点)は49.2と10月の49.0から上昇したものの8ヶ月連続で50を割り込んだ(市場の事前予想は49.2~49.4であった)うえ、11月の同国非製造業PMIは49.5と10月の50.1から低下、2022年12月(この時は41.6)以来の50割れとなった他、市場の事前予想(50.0)を下回った。さらに、12月1日に中国民間調査機関S&Pレーティングドッグから発表された11月の同国製造業PMIは49.9と10月の50.6から低下、7月(この時は49.5)以来の50割れとなった他市場の事前予想(50.5)を下回った。そして、12月3日にS&Pレーティングドッグから発表された11月の同国サービス業PMIは52.1と3ヶ月連続で低下、2025年6月(この時は50.6)以来の低水準に到達(市場の事前予想52.1とは一致)した。また、12月8日に中国税関総署から発表された、11月の同国輸出(米ドル建)は前年同月比5.9%の増加と10月の同1.1%の減少から増加に転じた他、市場の事前予想(同3.8~4.0%の増加)を上回って増加している旨判明したものの、11月の同国輸入(同)は前年同月比1.9%の増加と10月の同1.0%の増加から伸びが拡大したものの、市場の事前予想(同3.0%の増加)を下回った。それでも、12月8日に中国税関総署から発表された11月の同国原油輸入は5,089万トン(推定日量1,242万バレル)と前年同月(4,852万トン(同1,184万バレル)から増加した他日量としては2023年8月(この時は同1,247万バレル)以来の高水準に到達した旨判明した。ただ、12月10日に中国国家統計局から発表された11月の同国消費者物価指数(CPI)は前年同月比0.7%の上昇と9月の同0.2%の上昇から上昇幅が拡大、2024年2月(この時は同0.7%上昇)以来の大幅上昇となった(市場の事前予想(同0.7%の上昇)とは一致)ものの、11月の生産者物価指数(PPI)は同2.2%の下落と10月の同2.1%の下落から下落幅が拡大した他、3年2ヶ月連続で前年割れとなったうえ、市場の事前予想(同2.0%下落)を上回って下落している旨判明した。このように、中国経済指標類は依然として同国経済(回復)がまだら模様の様相を呈しているように見受けられる。今後も、同国経済が加速しつつあることを示唆する経済指標類が発表され続けるようであれば、同国石油需要の伸びの加速期待が市場で広がる結果、原油相場に上方圧力が加わりやすくなる反面、同国経済が減速しつつあることを示唆する経済指標類が発表され続けるようであれば、石油需要の伸びの鈍化懸念が市場で広がるとともに、原油価格を抑制する方向で作用する可能性があるため、今後発表される予定である同国経済指標類(及び原油輸入もしくは製油所の原油精製処理量に関する統計類)に注目する必要があろう。ただ、原油価格が下落した局面では、自国における石油在庫積み増しのために一時的にせよ原油の購入が活発化する可能性があることに留意する必要がある。また、米国と中国との間で貿易面等において取引が成立することにより、関税率の引き下げや関税の賦課の猶予等が決定されるようであれば、中国経済回復による石油需要の伸びの加速期待が市場で広がる結果、原油価格が上振れする場面が見られることもありえよう。

北半球では既に冬場の暖房シーズンに突入しているが、これに併せ、暖房用石油製品需要が拡大、製油所も秋場のメンテナンス作業を終了し稼働を上昇、原油精製処理量を増加させるとともに原油購入を活発化させるとの観測が市場で増大しやすくなっており、この面ではこの先も暫くの間暖房用石油製品価格とともに原油相場が下支えされる格好となりやすいものと考えられる。そして、米国の暖房油消費の中心地である北東部を含め北半球の主要暖房用石油製品消費地域における気温や気温予報に対し市場関係者は敏感に反応するものと見られ、足元の気温が低下したり、気温が低下するとの予報が発表されたりするようだと、需給の引き締まり感が市場で強まる結果、暖房油価格が上昇、それに引きずられて原油価格に上方圧力が加わる可能性がある。

なお、12月末頃にかけ、米国メキシコ湾岸の主要製油所に通じるヒューストン運河(Houston Ship Channel)等において発生する濃霧の影響で原油輸送タンカーの航行にしばしば支障が生じることにより当該製油所への原油供給が影響を受けるとともに原油在庫の積み上げが鈍化することがありうる他、米国のテキサス州やルイジアナ州においては年末の石油在庫評価額に対し固定資産税等が課税されることから、課税額を低減させるために精製業者等が必要以上の陸上在庫保有を敬遠することにより原油在庫が相当程度減少する場面が見られる可能性がある(もっとも、その間原油は沖合に停泊するタンカーに貯蔵されていると言われている)。このようなことから、年末にかけ発表される米国石油統計では、特にメキシコ湾岸地域における原油在庫等が相当程度減少することにより、これが市場で石油需給の引き締まりの兆候と受け取られ、原油価格が上振れする可能性もある(ただ、1月以降は製油所等での原油等の受入が再開される(沖合で停泊していた原油貯蔵タンカーが着桟し陸上貯蔵施設へ原油を送出し始める)ことから、反動で相当程度の原油在庫増加が見られる結果、原油相場が押し下げられる場面が見られることもありうる)。

2025年4月にOPECプラス有志8産油国は増産を開始したが、OPECプラス産油国の盟主の一国であるサウジアラビアは同国を含む中東地域の安全保障確保のため、武器の調達や軍隊の駐留を含む軍事支援等の面で米国に対し事実上の便宜を図るべく、米国のトランプ大統領がしばしば行なっていたOPEC産油国に対する原油価格抑制の要求(米国経済活性化のために同国金融当局に政策金利引き下げを要求しているが、物価上昇の沈静化が緩慢なこともあり金融当局関係者の姿勢が必ずしも積極的ではないことから、物価上昇を沈静化させるために原油価格の抑制を図ろうとしていることが一因であるものと考えられる)に応えようとしていることに加え、OPECプラス産油国の盟主のもう一国であるロシアもウクライナとの戦闘終結に向け自国の要求(ウクライナ東部ドンバス地方のロシアへの割譲等)をウクライナに受け入れさせるべく米国に働きかけるため米国に事実上の便宜を図ろうしていたことが、原油価格下落に伴う原油収入、そしてそこから得られる国家収入の減少の恐れがあるにもかかわらず、9月にかけOPECプラス有志8産油国が積極的な増産を行なってきた背景にあるものと考えられる。ただ、サウジアラビア(同国のムハンマド皇太子が訪米するとともに、11月18日には米国のトランプ大統領と会談を実施したが、その場において、トランプ大統領は、従来イスラエルにしか供与していなかったF35ステルス戦闘機(但しイスラエルに供与したものよりも性能が劣る旨11月19日に伝えられる)を含め軍事用資機材の売却を承認した)は、引き続き米国に便宜を図る格好とすべく、原油価格が下落しても大幅な増産を希望していることが覗われる(11月のOPECプラス有志8産油国の原油生産につきサウジアラビアが前月比で日量27.4~54.8万バレルの拡大を希望している旨10月3日に伝えられていた)が、これまでの増産継続により米国への便宜を図るべくサウジアラビアに同調して協力してきたにもかかわらず、10月22日には、ウクライナとの戦闘を巡り米国トランプ政権は同政権発足後初めて本格的な対ロシア制裁を発動した他、ロシアとの間で事業を実施する国等に対し制裁を発動する法案を米国共和党が準備しつつある旨11月16日に米国のトランプ大統領が明らかにした(そしてそれに対しトランプ大統領は差し止めの姿勢を示しているわけではなかった)等、さらなる対ロシア制裁強化の動きが見られつつあるなど、米国はロシアに対し必ずしも友好的ではない対応を行なうようになりつつあることもあり、ロシアはサウジアラビアが主導しようとした大幅増産には必ずしも同意しないようになってきているように見受けられる(原油価格下落による国家収入(またそのうちの一部はウクライナとの戦闘のための費用に充当されているものと見られる)の減少を理由としている)とともに、サウジアラビアによる大幅増産の希望がそのままの形でOPECプラス有志8産油国の増産の実施決定として実現しない状態となりつつある。今後も、米国がロシアに対する対応をより友好的なものへと転換する、といったことでなければ、ロシアは大規模な増産、もしくは増産そのものに対し消極的な姿勢を示すことにより、OPECプラス有志8産油国間での増産に向けた意思決定過程が複雑化する結果、OPECプラス産油国の増産ペースが鈍化するとともに、この面では、世界石油需給の一層の緩和感が市場で醸成されにくくなることにより、原油相場へのさらなる下方圧力も加わりにくくなるものと考えられる。また、2026年にかけ原油価格がさらに大幅に下落したり、急落する兆候が見られたりするような場合においても、OPECプラス産油国が増産規模を縮小したり増産自体を見合わせたりすると言った展開となることも考えられる(その場合、米国においても原油価格下落により同国シェールオイル開発・生産企業の収益が悪化するものと見られることから、これら企業によるトランプ大統領支持率に対する負の影響への懸念が増大することもあり、トランプ大統領もさらなる原油価格の下落は望まなくなるとともに、OPECプラス産油国に対する増産圧力も緩和する可能性があるものと考えられる)。なお、前月比で日量13.7万バレルの増産(増産規模の中では最も小さなものと考えられる)を継続した場合でも、12ヶ月すれば合計日量165万バレル程度の増産となるため、そう遠くない時期にOPEC有志8産油国による自主的な減産は完全に解消する可能性もある。そうなった場合には、2022年11月より実施されている日量193万バレル程度の減産(当初は日量200万バレルであったが、2023年12月21日にアンゴラがOPECから脱退すると発表したため、同国の減産目標日量7万バレル相当分が減少している)の緩和を実施するかどうかの議論となるが、日量193万バレルの減産はOPECプラス有志8産油国ではなく、OPECプラス19産油国によるものであるため、現在減産を行なっていないイラン、リビア及びベネズエラを含め、全OPECプラス産油国間で原油生産方針につき協議しなければならなくなることから、より議論が複雑化しやすく、従って意思決定までに一層紆余曲折を経やすくなる点に注意する必要があろう。

他方、2027年のOPECプラス産油国の原油生産基準(設定の際)の参考とするため、産油国の最大持続可能生産能力(MSC: Maximum Sustainable Production Capacity)を評価する方式を開発するよう2025年5月28日に開催されたOPECプラス産油国閣僚級会合においてOPEC事務局に義務付けたことを受け、2025年11月30日に開催されたOPECプラス産油国閣僚級会合においてOPECプラス産油国はOPEC事務局が開発した原油生産能力評価方式を承認したとされる。OPECプラス産油国は2024年12月5日に閣僚級会合を開催した際、外部の専門機関(IHSマークイット(IHS Markit)、ウッド・マッケンジー(Wood Mackenzie)及びライスタッド・エナジー(Rystad Energy))によるOPECプラス各産油国の原油生産能力評価を2026年11月初頭にかけ実施するとともに、2027年のOPECプラス各産油国の原油生産目標設定のための参考とするとしていた。そして、2025年9月18~19日にオーストリアのウィーンにおいて対面形式でOPECプラス各産油国の生産能力の評価に関する会合を開催する予定である旨9月16日に伝えられていた。ただ、今回のOPECプラス産油国閣僚級会合開催後、ロシア、ベネズエラ及びイランを除くOPECプラス各産油国の原油生産能力を評価するため、コンサルタントであるデゴライアー・アンド・マクノートン(DeGolyer & MacNaughton)(2019年12月11日に行なわれたサウジアラビア国営石油会社サウジアラムコの株式公開のための同社の埋蔵量評価を実施した企業とされる)を選定した他、ロシア、ベネズエラ(これら産油国は西側諸国等から制裁を科されている)については、前述のコンサルタントとは異なる組織が評価する((米国を含む西側諸国等の)国外企業が石油産業等を評価することに懸念があるとしており、インド企業となる予定であるとされる)他、イラン(同じく西側諸国等から制裁を科されている)については2026年8~10月の平均原油生産量を用いて評価する方向であることを含め、2027年に新規の原油生産能力(基本的には、90日以内に到達でき、その後1年間維持できる原油生産量として定義されると11月30日に報じられる)の利用が可能となるよう、2026年1~9月においてOPECプラス各産油国の原油生産能力評価を実施する予定である旨11月30日に伝えられるなど、今回のOPECプラス産油国閣僚級会合において発表された、OPEC事務局が開発した各産油国の原油生産能力評価方式のOPEC各産油国による承認は、各産油国の具体的な原油生産能力の算定数値結果を承認したというよりは、評価方法の枠組みを承認したという段階にとどまっていることが示唆される。そして、OPECプラス各産油国の原油生産能力を巡る評価が、その後の各産油国の原油生産目標設定に大きく影響するものと見られることから、原油生産能力が低く評価されれば、現状の原油生産量から増産余地の余り大きくない水準で原油生産目標が設定されやすくなるものと考えられる。その場合、原油生産目標を理由に増産が制限されやすくなることから、その産油国において石油探鉱・開発活動を推進する国外の石油会社等の増産意欲が削がれやすくなるとともに、それまで新規の石油探鉱・開発活動に参入しよう検討していた国外の石油会社等が参入しようとしなくなる(参入しても、生産制限を課せられる結果、投下資本の回収が遅延することにより収益が低下しやすい)ことから、このような産油国は長期に渡り原油生産、及び原油販売(及びそれから得られる政府)収入の拡大が困難な状態に陥りやすい。このため、各産油国は自国の原油生産能力につき現状を大きく上回る水準を主張しがちになるとともに、自国の主張を下回る水準で原油生産能力(及び原油生産目標)が設定された産油国は、そのような設定を不服として、OPEC(もしくはOPECプラス)から脱退するといった展開となることも想定されうる。2023年6月4日に開催されたOPECプラス産油国閣僚級会合後、前述の3機関(IHSマークイット、ウッド・マッケンジー及びライスタッド)による評価の結果、2024年に到達しうるアンゴラの原油生産量(つまりこれが事実上の原油生産能力及び原油生産目標であると解釈される)は日量111万バレル(それまでの原油生産目標は同128万バレルであった)とされたが、アンゴラはこの評価を不服とし、日量111万バレルの原油生産目標に固執することなく、足元の水準である日量118万バレルで原油を生産する意向である旨2023年11月30日に開催されたOPECプラス産油国閣僚級会合の際にアンゴラのOPEC理事(当時)であるペドロ(Pedro)氏が明らかにした他、2024年原油生産目標の引き下げに抗議する旨の書簡をOPEC事務局に送付した旨12月1日にアンゴラのアゼベド(Azebedo)鉱物資源・石油相が声明を発表、12月21日には、(原油生産目標が)自国の利益に合致しないとして、OPECを脱退する旨アンゴラが表明した。この先も、自国の原油生産能力の評価(及びそれを基準として設定される原油生産目標)への不満が高まることにより、一部産油国がOPEC(及びOPECプラス)を脱退するようだと、世界石油供給に占めるOPECプラス産油国の占める比率が低下することにより、OPECプラス産油国の世界石油市場支配力が縮小することから、OPECプラス産油国の結束を乱す恐れのある、各産油国の原油生産能力評価を巡る作業については慎重に進めがちとなる結果、実際にこのような評価が完了するまでには長い期間を要する可能性があるものと考えられる。そして、評価が完了するまでの間は、UAEの原油生産目標の引き上げ(つまり増産)を含め個別の原油生産目標の調整が行なわれる場面が見られないわけではないものの、概ね、既存の各産油国の原油生産目標水準の比率で以て全体の原油生産目標の増減を各産油国に配分することにより、各産油国の原油生産目標が決定されていきやすいものと考えられる。

全体としては、北半球の冬場の暖房シーズンに伴う暖房用石油製品需要期突入により、石油需給の引き締まり感が意識されやすいことが、今後も原油相場を強含ませやすいものと考えられる。また、ウクライナによるロシアのエネルギー供給関連インフラ攻撃激化の可能性や西側諸国等による対ロシア制裁強化の動きが、世界石油供給混乱懸念を増大させることにより、原油相場に上方圧力を加えることもありうる。ただ、ウクライナとロシアとの間での和平案に関する米国等を介した協議を巡る関係国等の動向によっては原油相場に下方圧力が加わる可能性がある他、次期FRB議長候補発表を含む米国金融当局等を巡る動き、中国経済指標類の内容、米国北東部等の気温状況及び予報、そして中東情勢等が原油相場に影響を及ぼしうるものと考えられる。

 

以上

(この報告は2025年12月15日時点のものです)

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