ページ番号1010698 更新日 令和8年1月7日

LNG市場:歴史的規模の供給の波が訪れる

レポート属性
レポートID 1010698
作成日 2026-01-06 00:00:00 +0900
更新日 2026-01-07 09:52:04 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 天然ガス・LNG
著者 芝 正啓
著者直接入力
年度 2025
Vol
No
ページ数 3
抽出データ
地域1 グローバル
国1
地域2
国2
地域3
国3
地域4
国4
地域5
国5
地域6
国6
地域7
国7
地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 グローバル
2026/01/06 芝 正啓
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概要

2025年の世界の天然ガス・LNG市場は、ロシアによるウクライナ侵攻を契機とする混乱期から段階的に安定を取り戻す中、史上最大規模の供給増が進展する中で新たな局面へ移行しつつあると言えるだろう。堅調な供給に支えられてスポットLNG価格は比較的落ち着いて推移したものの、10ドル/MBtu付近という価格水準はまだまだ市場がタイトであることを表している。

 

1. 2025年は価格変動が少なく市場が安定LNG貿易量は大幅に増加

まず価格動向に目を向けると、冬季は2月にかけて一時的な上昇局面を迎えた。欧州での寒波の影響や再エネ出力低下を受けて短期需要が増加、欧州TTFは2月中旬に17ドル/MBtu半ばまで高騰している。4~5月にかけては、アジアの低調な需要を背景に価格は再び落ち着き、北東アジアJKMも一時10ドル半ばまで低下したものの、6月にはイスラエル―イランの衝突を契機に地政学的リスクが意識され再び上昇局面が見られた。その後、日本では観測史上最も暑い夏を経験するも、価格は穏やかな推移に留まり、第3四半期平均では、欧州TTFは11.3ドル/MBtu、アジアJKMは11.7ドル/MBtuとなり、いずれも前年より低い水準に収まった。欧州では第3四半期においてLNG流入が前年比30%以上増加し、再エネ発電の出力改善と合わせてガス火力の利用が抑制され、構造的な下押し圧力が強かったようだ。一方アジアでは、中国および東南アジア諸国のスポット需要が弱く、中国における国内ガス生産の好調およびパイプラインガスの供給増加がスポットLNG価格の上昇を抑える要因となった。

こうした供給面の安定は、市場のボラティリティにも顕著に表れた。TTFの月次変動性は28%と2018 年以降で最も低い水準まで縮小し、2022~2023年に見られたような急激な値動きは影を潜めた。2025 年を通じて、不測の供給障害や急激な需要増といったファンダメンタルズの大きな変化が限定され、世界的に供給力が拡大していることが、市場の安定性向上につながったのではないだろうか。

2025年のLNG貿易量は大幅に増加を見せている。2025年1~9月のLNG取引量は前年比4.7%(約14MT)増加し、通年では約5%(21MT)増が見込まれる。増加の最大要因は何と言っても米国による供給拡大であり、Plaquemines LNG、Corpus Christi Stage 3の立ち上がりやFreeport LNGの安定操業が米国の輸出量を押し上げることとなった。カナダも北米西海岸からの供給プロジェクトとなるLNGカナダが生産開始に至り、2025年の供給増に寄与している。需要面では、欧州のLNG輸入がロシアからのパイプライン供給減少を補う形で28%増となり、世界全体の供給増を吸収している。他方、アジアでは中国の輸入が前年比17%減と大幅に落ち込んでいることが影響し、全体として5%の減少となる。

(図1)2025年1~10月の日本のLNG輸入量と航海日数
(図1)2025年1~10月の日本のLNG輸入量と航海日数
(出所:JOGMEC作成)

2. 2025年は米国LNGのFIDラッシュの年

2025年の特徴的な出来事は、前述のとおり供給増の中心となった米国を中心としてLNGプロジェクトのFID(最終投資決定)がかつてない高水準に達した点が挙げられるだろう。2025年1月にトランプ大統領が就任し米国がFTA非締結国向け輸出許可の凍結を解除すると、米国では1~10月の間に58MTPA(MTPA:Million Ton Per Annual)超の液化能力が承認され、史上最大の投資ペースとなった。Louisiana LNG Phase 1(16.5MTPA)、Corpus Christi Midscale(5MTPA)、CP2 LNG Phase 1(14.4MTPA)、Port Arthur Phase 2(13.5MTPA)、Rio Grande Train4・5(11.8MTPA)など、多数のプロジェクトが2025年中にFIDに達した。米国以外でもアルゼンチンFLNG(6MTPA)やモザンビークCoral North(3.5MTPA)がFIDに到達、南米・アフリカ供給源の多様化が進んだ1年となった。

こうしたFIDラッシュにより、2024~2030年にかけては約220MTPAの新規液化能力が追加される見通しであり、LNG市場に歴史的規模の供給波が訪れようとしている。新規液化能力の70%以上を米国とカタールが占める一方、豪州・マレーシア・インドネシアやアルジェリアなどの伝統的供給拠点では、ガス田の成熟や国内需要の増加により輸出余力が徐々に限られていくとみられる。このため、世界のLNG供給の地理的重心は中長期的に大西洋側へ移行する傾向が強まり、アジア新興国との距離は相対的に長くなる。結果としてトンマイルは増加する方向に働き、LNG輸送市場における船腹需要や航路構造にも一定の変化をもたらす可能性がある。こうした構造変化は、海運セクターにおける運航環境を中長期的に下支えする要因として注目されている。

 

3. 低炭素化への緩やかな移行で需要は底堅く推移

低炭素化が想定より緩やかに進む中で、天然ガスは移行期の重要なエネルギーとして需要が底堅く、これが中期的な供給拡大の継続性と市場の安定化にも寄与している。需要の中心は、前述のとおり今後は南アジア・東南アジアへと移っていく見通しだ。インド、バングラデシュ、フィリピン、ベトナム、タイなど、価格にセンシティブとされる市場においては、2024年比で2030年に125〜150%の輸入増が見込まれる。ただし、その実現にはガス火力、都市ガス網、FSRUやパイプラインといったインフラ整備、そして政府の継続的な政策支援が不可欠であろう。中期的な価格見通しとして、需給緩和に向かう一方で新興国を中心に追加需要が顕在化する可能性が高いものの、低価格が続けば投資インセンティブが損なわれ、2030年代半ばにかけて再び市場がタイト化するリスクもあり、長期的な上流投資が市場の安定にとって肝要であることに変わりはない。

LNG市場は様々な要素が複雑に絡み合う構造に移行していく。市場の柔軟性と多様性を維持しつつ、各プレーヤーの契約戦略やインフラ整備の進展具合が、拡大に向かう今後のLNG市場での需給バランスを左右することになるだろう。

 

※月刊誌「KAIUN(海運)」2026年1月号に寄稿したものです。

 

以上

(この報告は2025年12月19日時点のものです)

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