2020年5月

天然ガス・LNG価格動向

直近の値動き

  • 原油価格の急落とCOVID-19の影響に伴い世界各地のガス価格が下落している。2020年5月22日時点で米国ヘンリーハブガス価格(HH)、オランダガス価格(TTF)、英国ガス価格(NBP)及び北東アジアのアセスメントされたスポットLNG価格(JKM)は、100万Btu当たりUSD 1台の最安値水準を付けている。特に米国産LNGを欧州北西部に持ち込み採算を取ることは難しくなっている。
  • JKM(期近分)は、4月28日に史上最安値を更新し100万BtuあたりUSD 1.825を付けた後、USD 2台前半で推移した。5月に入り、米国産LNGカーゴのキャンセルや液化設備の定期修繕による供給力の減少、ロックダウンの段階的緩和による需要回復への期待によって、USD 2 以上に回復したもの、依然として過去最低水準を維持している。今後アジア各国でロックダウンの緩和は進むものと考えられ、経済活動の再開によりJKMは上向くものと予想される。なお、2020年4月のMETIスポットLNG価格はUSD 3.0 (2月比 USD 2.5下落、3月は公表なし) となった。
  • 2020年4月末時点のHHはUSD 1.95と、前月比でUSD 0.31上昇した。1月20日以降、5月2日のUSD 2.13を除き、USD 2を下回っている。原油価格の低迷により、シェールオイル随伴ガス生産の減少が予測され、COVID-19の影響によるガスの需要減退の中で、4月後半、HHは上昇した。これにより、5月初旬時点で、世界の各地域市場の代表的なスポット価格の中でHHが最も高くなるという現象が発生した。2020年4月末時点のTTFはUSD 1.98と、前月比でUSD 0.24下落した。4月下旬からUSD 2未満で推移しており、5月21日にはUSD 1.23と過去10年の最安値を更新した。欧州域内ではロックダウンが継続されており、経済活動の減速によってガス価格も低迷しているものと考えられる。
  • 2020年4月の日本平均LNG輸入価格はUSD 9.29であった。財務省貿易統計によれば、供給地域別では、米国産LNGがUSD 9.21、ASEAN地域産LNGがUSD 8.96、ロシア産LNGがUSD 8.16と、日本平均LNG輸入価格を下回った。また、4月の日本平均LNG輸入価格USD 9.29は、JKMの4月引き渡し分平均USD 3.14に対して2.96倍と、3月の2.71倍より格差は広がった。一方、日本が長期契約で購入する米国産を除くLNGの大部分は、原油価格に連動した価格指標を採用している。3月9日以降の原油価格の急落により、今後LNG輸入価格も下落する可能性が高い。4月分の日本平均原油輸入価格は、1バレル当たりUSD 42と前月より下落した。原油価格の長期契約LNG価格への反映には3ヶ月程度の時差があるため、7月以降のLNG輸入価格が下がることが見込まれる。なお、4月の日本のLNG輸入量は513.2万トンと前年同月比8.8%減、月単位では2010年5月の479.1万トン以来の低水準となった。

天然ガス・LNG価格推移(直近1年)

中長期の値動き

  • 日本平均LNG輸入価格は、直近10年間では2012年のUSD18台をピークに下落している。これは基本的に長期契約のLNG価格が連動している原油価格の下落基調によるものとみられる。2019年4月以降、8月のUSD 10.13を除き、USD 10を下回っている状況にある。
  • JKMは、2018年1月引き渡し分のUSD 10前後から、2019年の7 - 10月引き渡し分は USD 4台半ばまで下落し、2019年11月 - 2020年1月引き渡し分は、いずれも一時的にUSD 6前後の水準にあったが、その後下落を続け、2020年6月引き渡し分については、2020年4月末、USD 2未満に下落した。これは下落率、そして到達水準ともに歴史的に顕著なものとなっている。JKMは、近年欧州スポットガス価格水準を下限、原油等価水準を上限とするレンジの中で変動してきたが、2019年は終始その下端近くに留まり続けた。また2019年6月以降は基本的に史上最低水準で推移している。
  • 日本平均LNG輸入価格は、2019年第2四半期以降平均でJKM当該月引き渡し分期近平均の1.6 倍を超え、同年7 - 10月、2020年3 - 4月は各月2倍を超えており、2011年以降、両者の価格差が最大となる傾向が継続している。これは現在進行中の米国を中心とした供給容量拡大に対して、北東アジアの伝統的市場、特に日本及び韓国を中心にLNG引き取り意欲が弱いことに加え、COVID-19による需要減退懸念が要因とみられる。2020年第1四半期の日本、韓国、台湾合計のLNG輸入量は、前年同期比で143万t増加し3.9%増となったが、2018年第1四半期と比較すると、3カ国合計のLNG輸入量は366万t減少し9%減となっており、低調に推移している。

天然ガス・LNG価格推移(直近10年)

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(出典)
米国HH(Henry Hub)価格: NYMEX Futures and Options, CME Group
英国NBP(National Balancing Point)価格: ICE Futures Europe, Intercontinental Exchange
蘭TTF(Title Transfer Facility)価格:ICE Futures Europe, Intercontinental Exchange
JKM: LNG Japan/Korea Marker© 2020 by S&P Global Platts, a division of S&P Global Inc.
METIスポットLNG価格: 経済産業省「スポットLNG価格調査」
日本平均LNG輸入価格: 財務省貿易統計をもとに作成

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天然ガス・LNG在庫動向

日本

  • 2020年1月末の国内LNG在庫は447万tで、前月比1.5%の減少、前年同月比7.2%の増加となった。これは過去5年平均値を81万t上回り、1月としては2008年の統計開始以来最大であった。このうち、ガス事業用在庫については、2020年1月のLNG消費量が前月比7.3%増の327万tで、都市ガス用LNG受け入れ量300万tを27万t上回ったため、1月の在庫は205万tと、前月比10.9%減となった。前年同月比では2.6%減少した。また、電力事業用在庫については、1月のガス火力発電所の発電量は前月比1.3%増だったが、在庫は242万tで、前月比8.2%増、前年同月比で17.1%増加した。
  • 過去10年の国内LNG在庫は増加の傾向がみられる。原子力発電所の再稼働や再生エネルギーの増加などで、2014年度をピークにLNGの輸入量、消費量が減少するのに呼応してLNG在庫量も一時減少したが、2018年度から再び増加に転じ、統計開始以来過去最高水準の在庫量を維持している。原子力発電所の再稼働や暖冷房需要の減少が在庫量増加の主な要因と思われるが、米国その他から仕向地制限のないLNGが徐々に増えており、エネルギー事業者も供給安定性のためのLNG自主備蓄に加え、LNGトレーディングのクッションとしての利用を徐々に行いつつあるものと推測される。
  • 日本のLNG在庫水準は、LNG消費水準と比較すれば全般的に高い水準にある。これは天然ガス供給について殆ど全て輸入LNGに頼っていることが要因である。欧州、米国は天然ガスの形での地下貯蔵量が多いため、LNG在庫水準は日本と比して低い。なお、日本に向かっているLNG船の積荷LNGを在庫として想定する場合、約150万t相当が常に洋上にあるとみなすこともできる。日本ではLNGの備蓄義務がなく、LNGタンクでの長期保管はコスト的にも技術的にも現実的ではないものの、調達先や調達経路の多様化により、供給セキュリティ向上を図っている。
  • LNGの6割以上が電力会社により消費されている。これら電力会社は、LNG以外にも発電源を持っており、LNGを全発電の不足分、あるいは余剰分を調整するための発電源として用いていることも在庫水準が高い要因として挙げられる。近年、原子力発電所の再稼働状況や再生可能エネルギー電源の電力供給の増加が、LNG在庫のパターンを大きく変化させている。2018年や2019年の11月末時点には総在庫量が約500万tまで上昇したがこれら大きな要因の一つとみられる。

国内LNG月末在庫(直近10年)

国内LNG月末在庫量(直近1年)

(出典)
経済産業省「ガス事業主生産動態統計」及び「電力調査統計・火力発電燃料実績」をもとに作成したもので、これら月末在庫を合算した値を国内在庫としてみなしたもの。なお、利用可能なデータは2008年1月以降のものであるため、過去5年平均は2013年1月分から計算している。


米国

  • 2020年5月15日の米国天然ガス地下貯蔵有効稼働ガス在庫は、米国エネルギー情報局(U.S. Energy Information Administration, EIA)のデータによると、2,503 Bcf で前月比17 %の増加となった。在庫量は2019年の同時期と比較すると42.8 %増、750 Bcf 高く、過去5年平均値の2,096 Bcf を407 Bcf 上回っているが、過去5年レンジの範囲内には収まっている。
  • EIAが2020年5月上旬に発表した短期エネルギー展望(Short-Term Energy Outlook)の報告では、天然ガスの有効稼働在庫は補充シーズン(4月 - 10月末)に約2.1 Tcf 増加し、2020年10月末には記録的な数値である約 4.2Tcf に達すると予測している。
  • 米国の過去10年間の天然ガス有効稼働ガス在庫の最大値はほぼ 4 Tcfで推移している。しかし、EIAのデータベースによると、2017年から2019年で米国の天然ガス生産量は20%以上、消費量は14%以上増加、また天然ガスの輸出量は45%以上も増加しており、天然ガスの需給にかかわる環境は大きく変わりつつある。今後は冬期暖房期間の気温動向に加え、国内天然ガス価格、LNG輸出動向等、様々な要因が天然ガス在庫に与える影響が大きくなると予想される。
  • 米国の貯蔵設備は通常、4月からの夏季にガスをより多く注入し、11月からの冬季にガスをより多く送出する。このような運転パターンは、冬季の暖房向けにガスが必要なこと、および4月から10月にかけて需 要が減少する期間に安価にガスを購入し、需要がピークを迎える期間に高価格で販売したいという商業上の動機により生じてきたものである。この傾向は近年、夏季についても発電用の天然ガス需要が増加したこと、LNG輸出が増加していること、パイプラインによるメキシコ向け輸出が増加していることにより、2017 - 2018年の在庫量ピークが対前年比下がるなど、ある程度緩和され、冬季においても在庫水準は下がる傾向がみられていた。しかし2019年は天然ガス生産量の増産により、冬季の在庫水準を押し上げた。

米国天然ガス地下貯蔵量(直近10年)

米国天然ガス地下貯蔵量(直近1年)

(出典)
米国エネルギー情報局(U.S. Energy Information Administration, EIA)のデータをもとに作成


欧州

  • 2020年5月20日現在のAggregated Gas Storage Inventory(AGSI+)加盟各社中の欧州連合(EU)各社が有する欧州天然ガス地下貯蔵在庫は764 TWhであった。暖房需要期が終了し、4月以降はガスの注入期に入ったため、直近の1ヶ月間で16.9%増、前年同期比では165 TWhの増(27.5%増)で同時期の過去5年平均よりも321 TWh高く、過去最大値である。さらに貯蔵容量に対する充填率は、5月20日時点で69%と、依然として過去5年間の同時期の充填率レンジ約30% - 約57%に比べて高い水準にある。今冬は在庫の充填率が50%を下回らなかったため、例年に比べてガスの在庫余力が少なく、今後の欧州の天然ガスやLNGの輸入にも影響を与える可能性がある。
  • 既に欧州向けLNGカーゴの引き渡しペースが失速しており、洋上に留まっているLNGカーゴ数は増加している。欧州の在庫も例年より早く夏場には満杯になる可能性があるため、欧州スポットガス価格も低迷しており、今後のLNG輸入も鈍化する可能性がある。
  • 過去10年間の欧州天然ガスの貯蔵容量は600 TWh から1,100 TWhと約1.8倍に増加、在庫量の最大値ピークもそれに伴って増加傾向にある。2016年から2018過去3年の貯蔵在庫量の最大値ピークは約1,000 TWh で推移していたが、2019年2019年度は欧州での天然ガス輸入量の急激な増加と欧州での暖冬が重なり、在庫量は過去最大の1,084 TWhを記録した。2020年3月末の冬期暖房期間の終了時(ボトム時)の在庫量は年間最小値に当たるが約600 TWh で、2011年11月の年間最大値に当たる冬期暖房期間開始前(ピーク時)の在庫量に匹敵する。
  • これら貯蔵設備は通常の場合、4月からの夏季にガスをより多く注入し、充填率は、注入シーズンの終わりに80%から90%台まで上がる。11月からの冬季にガスをより多く送出し、払い出し期間終期には容量の20%から30%に下がる。しかし最近数年間は、充填率の変動が大きくなっている。これは極端な気象変動の影響と、貯蔵設備を使う事業者の商業上の動機によるものである。2018年初めには、厳しい寒波により、在庫水準は2018年3月末時点で18%に低下した。一方前記の通り、2018年後半からの欧州地域のLNG輸入増加により、2019年の夏季・秋季はガス貯蔵が容量上限に近い水準まで増加し、冬季に入っても高い充填率が続いた。

欧州天然ガス貯蔵量(直近10年)

欧州天然ガス貯蔵量(直近1年)

(出典)
Aggregated Gas Storage Inventory(AGSI), Gas Infrastructure Europeのデータをもとに作成。なお、利用可能なデータは2011年1月以降のものであるため、過去5年平均は2016年1月分から計算している。


天然ガス・LNGプロジェクト動向

サマリー

  • COVID-19、エネルギー価格低迷の影響により、LNGプロジェクトの投資失速が懸念されるが、最終投資決定(FID)がなされたプロジェクトにおいても感染防止策のため活動レベルの制限や現場での感染事例から遅延が見込まれている。状況が安定するまで工事に着手せず、建設計画を調整しているプロジェクトもあることから、プロジェクト完工は従来の想定から遅れが生じる可能性は高い。またCOVID-19に伴うLNG需要への影響は第2四半期から本格化していることから、引き続きLNG需要は減少し、既存LNG設備においても稼働率低下、あるいは一時停止の可能性がある。

 

北米地域

  • 千代田化工建設は、McDermott 社、Zachry 社 と共同で建設中の米テキサス州の Freeport LNG プロジェクト第3系列の商業運転を2020年5月1日に開始したことを発表した。
  • Sempra Energy は、2020年5月18日、米ルイジアナ州 のCameron LNG Phase 1プロジェクトの第3液化系列で生産を開始したことを発表した。トーリング契約に基づく第3系列の商業生産開始は2020年第3四半期を予定している。
  • 米連邦エネルギー規制委員会(FERC)は、2020年5月初旬、米ジョージアElba Island LNG 第8系列への原料ガス導入を承認した。同設備モジュラー系列10本中6本が既に稼働しており、2本がコミッショニングを開始している。なお2020年5月11日、2号機混合冷媒圧縮装置で火災があり、1 - 3号機と合わせて3系列が停止した。
  • 米NextDecade社は、2020年5月18日、 米テキサス州Rio Grande LNGの最終投資決定(FID)を2021年に延期することを明らかにした。 Bechtel 社とのEPC (エンジニアリング・建設)契約価格は2020年4月22日まで有効だったが、同日 Bechtel社は有効期間を2020年7月31日まで延長することに合意した。
  • Liquefied Natural Gas社は、2020年5月中旬、 米ルイジアナ州Magnolia LNG プロジェクトを所有・操業する自社関係会社を Global Energy Megatrend社に売却する売買契約を締結したことを明らかにした。
  • 加Pieridae Energy社 は、2020年5月5日付でカナダ・ノバスコシア州Goldboro LNG 設備最終投資決定(FID)期限を2021年6月30日に延期すると公表した。ドイツのエネルギー企業Uniper 社に対しGoldboro 第1系列の年産480万tを20年契約で供給するもので商業生産開始は2025年8月末から2026年2月末の間を予定している。他方、アルバータ州エネルギー規制機関(AER)は、 Shell の Foothills プロジェクトのPieridae Energy社への移管申請を却下した。 Foothillsプロジェクトは同LNGプロジェクトに向ける中核的ガス原料源として期待されている。

 

アジア・オセアニア地域

  • 2020年5月中旬、川崎汽船、JERA、豊田通商及び日本郵船が所有するセントラルLNGシッピング株式会社が発注し川崎重工業の坂出工場で建造中の船舶向けLNG燃料を供給するためのLNGバンカリング船が進水した。2020年9月末に国内初のLNGバンカリング船として竣工する予定。JERAの川越火力発電所を拠点とし、中部地区で船舶向けLNG燃料の供給事業に従事する。
  • 中国国家発展和改革委員会(NDRC)によると、2020年第1四半期天然ガス消費量は前年同期比1.6%増の78.5 Bcmに留まり、天然ガス生産量は7.9%増加して47.8 Bcmとなった。
  • 中国国家石油天然气管网集团 (PipeChina)は、山东省龙口南山LNG基地建設を2020年5月16日に開始した。同社が2019年12月に発足してから初の大型プロジェクトとなる。年2,000万tの容量を有する見込み。
  • インド石油類・天然ガス省PPACの天然ガス報告(2020年1 - 3月号)によると、同年第1四半期の天然ガス生産は10.5%減少したが、天然ガス消費は3.5%増加、LNG輸入は37%増加となった。肥料製造部門のLNG消費が大幅に増加した。
  • 豪Venice Energy 社は2020年4月下旬、豪州南オーストラリア州アデレードのOuter Harbour 浮体LNG輸入基地プロジェクトの最終投資決定(FID)を2021年2月までに実施し、同年末までに稼働開始を目指すことを明らかにした。初年度80 PJ (147万t)、その後年間140 - 150 PJ (257 - 276万t)の取扱量を想定している。同プロジェクトはFSRU及び500 MWガス火力発電設備の2段階での建設を含み、基地の投資決定後、発電設備の政府許可を取得し、2024年までに発電設備の稼働開始を予定している。基地はトーリング方式とする計画である。

 

欧州・ロシア地域

  • Total はスペインのEnergías de Portugal が所有していたB2C顧客250万件、ガス火力コンバインドサイクル発電設備2基850 MW分を取得した。Totalは2020年2月に同国の太陽光発電プロジェクト2 GW分を取得しており、同国で家庭用ガス市場12%、家庭用電力市場6%を占める第4のガス・電力供給者となる。
  • ロシア Yamal LNG は、LNG第2系列・第3系列の定期修繕を2020年5月21日から6月15日までの間、各12日間停止して実施する。通常のメンテナンスに加え、水銀除去設備の吸収機器の更新、LNG系列効率向上のための各種更新作業を計画している。今回の定期修繕は年間計画に沿って実施されるもので、LNG年産量に影響しない。リスク基準点検(RBI)メンテナンスシステム実施に基づき、第1系列の計画メンテナンスは2020年8月から2021年に1年延期された。 Yamal LNG は、ロシア極北 South-Tambeyskoye ガス田を原料ガスとして年550万tを3系列、年90万tを1系列の、合計年1,740万tの液化設備を建設している。

 

その他地域

  • 天然ガスの国際団体 CEDIGAZ は「2020年版通年実績」速報を公表した。経済成長鈍化、中国の政策変更、暖冬により、世界のガス需要成長は、2018年5%から2019年2.3%に鈍化し、LNG余剰、価格下落につながったとしている。欧米では発電・工業部門での石炭・石油から天然ガスへの転換が顕著で2019年世界の天然ガス消費は3.948 Bcmに達した。2018年同様に米国、中国が需要成長の中心となり、各々増加分の約3割占めた。EUは2.4%増と需要は堅調だった。
  • Qatar Petroleumは2020年4月下旬、 North Field 拡張プロジェクト含む将来の船腹需要に対応するべく造船容量を予約する契約を中国船舶工業集団公司(CSSC)傘下の沪东中华造船(集团)有限公司(Hudong)と締結した。
  • Nigeria LNG (NLNG)は、第7系列プロジェクトのEPC (エンジニアリング・建設)契約を Saipem、千代田化工建設、大宇のSCD連合との間で2020年5月初旬に締結した。同プロジェクトは、現在の6系列設備容量を、年2,200万tから3,000万tに拡大するもので、2019年12月に最終投資決定(FID)を行っており COVID-19 状況が安定化すれば、建設計画が確定される。
  • 赤道ギニア鉱業・炭化水素省(MMH)は、 Marathon Oil社、 EG LNG社と共同でガスマスタープラン開発計画を Gas Strategies社に発注した。アフリカでは初の試みとなるガスメガハブ開発の第一段階としてAlen ガス田の商業化のための最終合意書はMMH、Marathon Oil社、 EG LNG社との間で2019年4月に締結された。Punta Europa 港湾の既存インフラ利用を最大化することでギニア湾のガス埋蔵量のプール運用を目指す。 Marathon Oil社及びEG LNG社の既存のメタノール製造設備等は、Alba ガス田に依存してきた。ガスマスタープランでは、 Punta Europa はギニア湾内外のガスを処理する拠点となる見込みで、カメルーン、ナイジェリア沖合ガス商業化に経済的な道筋を開く可能性は高い。
  • Total はAnadarkoが 所有していたガーナ資産の取得を断念すると2020年5月18日に明らかにした。Total 及びOccidental Petroleum社は、Totalが Anadarko のアフリカ資産を買い取る契約を2019年8月に締結していた。両社はその後モザンビーク、南アフリカの資産の売買を完了した。
  • 米輸出入銀行の取締役会は、モザンビークの統合型LNGプロジェクト開発・建設のための米国からの輸出を支援する2019年9月の直接融資承認を修正した。今回の修正では、融資範囲をLNG設備・関連諸設備の陸上部分から、沖合生産部分の推定総額47億米ドルのうち18億米ドルまで拡大する。

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