2020年11月
天然ガス・LNG価格動向
直近の値動き
- 北東アジアのアセスメントされたスポットLNG価格JKM(期近分)は、9月下旬に5米ドル台まで回復、その後も上昇し、10月下旬には一時7米ドルを超えた。一部のLNG生産設備トラブル等の影響もあり、やや過剰気味に価格は上昇したが、米国LNG設備の稼働率上昇により緩和され、11月上旬は6米ドル後半を推移した。その後、足元での北東アジアでの暖冬とCOVID-19の再拡大防止措置にかかる需要減退懸念等により6米ドル前半まで下げたが、11月25日時点(2021年1月引き渡し分)では、カタール等の新たな供給障害懸念により価格は上昇し、7.12米ドルとなっている。なお、10月のMETIスポットLNG価格は4.9米ドル(9月比 1.5米ドル上昇) であった。
- HHは2020年11月25日時点で2.90米ドルとなった。9月中旬には一部の液化設備停止の影響を受けて1.8米ドルへ一時的に下落したものの、10月に入り価格は上昇し、下旬にかけて3米ドルを上回った。冬期に向けた需要増加と比較的低いレベルの生産量、LNG輸出の増加により価格は上昇した。11月に入り約3米ドルで推移していたが、米国では11月の気温が平年よりも高く、これが下旬まで続く予報となったことに加え、生産量も増加しており、11月16日には約30セント下落した。2020/2021年の冬期気温は昨年より低いと予想されており、LNG輸出も含めた暖房需要の増加は依然として期待されている。
- TTFは2020年10月下旬に5米ドルを越えた後は約 5米ドルで推移し、11月25日時点では4.79米ドルとなった。欧州地下貯蔵設備の利用率も減少に転じており、今後も冬期に向けた暖房需要の増加によって価格は上昇するものと予想されるが、一部地域ではCOVID-19の再拡大が発生、行動規制を再導入した国もあり、需要見通しは依然として不透明な状況となっている。
- 財務省貿易統計速報に基づくと、2020年10月の日本平均LNG輸入価格は5.81米ドルであった。供給地域別では、中東産が5.62米ドルと日本平均LNG輸入価格を下回った。一方、米国産LNGが7.54米ドルと、先月の8.08米ドルよりは下落したものの日本平均LNG輸入価格を大きく上回った。また、10月の日本平均LNG輸入価格5.81米ドルは、JKMの10月引き渡し分平均4.31米ドルに対して1.35倍と、9月の1.9倍から縮まった。
- 日本が長期契約で購入する米国産を除くLNGの大部分は、原油価格に連動した価格指標を採用しているため、原油価格の下落の影響により、10月の日本平均LNG輸入価格は8月、9月に続き5米ドル台に留まった。8月以降に原油価格は上昇していることから、これを反映して11月以降の日本平均LNG輸入価格は上昇すると予想される。なお、10月の日本のLNG輸入量は594.3万トンと前年同月比5.7%減、10月分として10年振りの低水準となった。
中長期の値動き
- 日本平均LNG輸入価格は、直近10年間では2012年の18米ドル台をピークに下落しており、2020年3月以降の原油価格急落の影響により8~10月の日本平均LNG輸入価格は2005年1月以来の低水準となる5米ドル台まで下落した。これは基本的に長期契約のLNG価格が連動している原油価格の下落基調によるものとみられる。
- JKMは、2019年11月 - 2020年1月引き渡し分は6米ドル前後の水準にあったが、その後下落を続け、2020年6月引き渡し分については、2020年4月末に2米ドル未満まで下落した。これは下落率、そして到達水準ともに歴史的に顕著なものとなった。JKMは、近年欧州スポットガス価格水準を下限、原油等価水準を上限とするレンジの中で変動しており、2019年からは終始その下端近くに留まり続けていたが、2020年10月中旬から欧州ガス価格との差が生じ始めている。
- 日本平均LNG輸入価格は、JKM当該月引き渡し分期近平均を大きく上回ってきた。その傾向が強まっていた理由として、米国を中心とした世界的な供給拡大に対し日本及び韓国等の需要がCOVID-19により減少し、在庫が積み上がってスポットLNGの引き取り意欲が弱く、長期契約による調達割合が高かったことにあるとみられる。今後は、油価下落の影響とJKMの上昇により、日本平均LNG輸入価格とJKMの価格差の拡大は限定的になると予想される。2020年1 - 10月の日本、韓国、台湾合計のLNG輸入量は、前年同期比で226万トン、2.0%減、2018年の同時期と比較しても、3カ国合計のLNG輸入量は1,114万トン、9.4%減となっており、低調に推移している。景気回復が緩慢なため、大幅なLNG需要増加は見込まれていない。
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(出典)
米国HH(Henry Hub)価格: NYMEX Futures and Options, CME Group
英国NBP(National Balancing Point)価格: ICE Futures Europe, Intercontinental Exchange
蘭TTF(Title Transfer Facility)価格:ICE Futures Europe, Intercontinental Exchange
JKM: LNG Japan/Korea Marker© 2020 by S&P Global Platts, a division of S&P Global Inc.
METIスポットLNG価格: 経済産業省「スポットLNG価格調査」
日本平均LNG輸入価格: 財務省貿易統計をもとに作成
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天然ガス・LNG在庫動向
日本
- 2020年7月末の国内LNG在庫は498万tで、前月比1.5%の増加、前年同月比4.9%の増加となった。これは過去5年平均値を107万t上回り、2008年の統計開始以来、7月の在庫量としては過去最大であった。
- このうち、ガス事業用在庫は212万tで、前月比2.5%減、前年同月比では0.8%の増加となった。2020年7月の都市ガス用LNG消費量は前年同月比6.9%減の226万t、都市ガス用LNG受入量は前年同月比11.3%減の220万tだった。都市ガス消費量は4月、5月に前年比で大きく落ち込んだ後、6月に回復の兆しを見せたが、7月にはまた前年比で減少幅が拡大した。7月も先月に続き消費量が受入量を若干上回ったため、ガス事業用在庫は前月から減少し、前年度を下回った。日本ガス協会が9月末に行った会見では、都市ガス販売量がコロナ前の水準まで回復するにはまだ時間を要すると予想している。
- 7月のガス発電燃料用LNG在庫量は286万tで前月比4.8%増、前年同月比8.3%の増加となった。ガス火力発電所の発電量が前年同月比4.3%減と前月に引き続き減少したが、在庫量は先月から増加しつつ、前年並みに近づきつつある。
- 10月時点の気象庁の予報では今後もラニーニャ現象が継続する可能性が高く、12月から2月にかけての平均気温は東北地方以南で平年並みか、やや低めとなっている。昨年は全国的に暖冬で都市ガス需要、発電用LNG需要とも低迷した結果、LNG在庫は高い水準が続いた。今後も予報が変わらなければ、今冬はガスの需要が増加し、LNG在庫は前年同期を下回る可能性がある。一方で国内のCOVID-19の感染が再び拡大していることを受けて、ガス需要が再び低迷することも懸念され、これにより在庫を押し上げる可能性も考えられる。
(出典)
経済産業省「ガス事業主生産動態統計」及び「電力調査統計・火力発電燃料実績」をもとに作成したもので、これら月末在庫を合算した値を国内在庫としてみなしたもの。なお、利用可能なデータは2008年1月以降のものであるため、過去5年平均は2013年1月分から計算している。
米国
- 2020年11月20日の米国天然ガス地下貯蔵有効稼働ガス在庫は、米国エネルギー情報局(EIA)のデータによると、3,940 Bcf で前月比 0.4%減となった。在庫量は2019年の同時期と比較すると9.1%高く、過去5年平均値の3,690 Bcf を上回っている。在庫量は10月23日をピークに減少したが、11月に入り増加に転じた。天然ガス在庫への注入が終了するのは伝統的に10月31日と定義されているが、注入が11月に行われることは珍しくない。
- EIAが2020年11月に発表した月例の短期エネルギー展望(Short-Term Energy Outlook)によると、10月の天然ガスの在庫はほぼ4.0 Tcfで終了し、5年間の平均より5%上回り、10月末としては過去2番目に高いレベルであった。ただし、2020/2021年の冬の天然ガス生産量は、2019/2020年の冬より少なくなると予想されるため、EIAは在庫の払い出しが5年平均を上回り、2021年3月末の在庫量は1.5 Tcfになると予測している。これは、2016〜2020年の平均よりも16%低くなる。
(出典)
米国エネルギー情報局(U.S. Energy Information Administration, EIA)のデータをもとに作成
欧州
- 2020年11月24日現在のAggregated Gas Storage Inventory(AGSI+)加盟各社中の欧州連合(EU)各社が有する欧州天然ガス地下貯蔵在庫は1,014 TWhであった。在庫量は前月比4.0%減、前年同期比では3.5 %減少し、同時期の過去5年平均よりも94TWh高い。在庫量は10月11日に今年の最高値1,066 TWhを記録し、それ以後は減少に転じた。また、在庫量が減少に転じた日は昨年より2週間程度早かった。貯蔵容量に対する充填率は、2020年11月24日時点で91%と、過去5年間の同時期の充填率レンジ83% - 96%の範囲内に入っている。
- 11月以降のガス需要期における在庫量については、2つの要素に左右される。一つは冬期の気温である。昨年は欧州、アジアとも暖冬の影響で天然ガス供給が過剰になり在庫ガスが行き場を失ったが、今年はラニャーニャ現象で昨年よりも気温が低くなり、暖房需要が高まる可能性がある。もう一つの要因として、COVID-19の再流行による景気回復が妨げられることである。英国、フランス、ドイツ、イタリア等では10月以降、この春の新規感染者を大幅に上回り、一部ではロックダウンが再開しており、LNG需要の低迷も予想される。
(出典)
Aggregated Gas Storage Inventory(AGSI), Gas Infrastructure Europeのデータをもとに作成。なお、利用可能なデータは2011年1月以降のものであるため、過去5年平均は2016年1月分から計算している。
天然ガス・LNGプロジェクト動向
ハイライト
- 11月は北米太平洋岸の大型LNG輸出プロジェクトの最終投資決定(FID)がなされ、2020年では初のFIDとなった。また、いくつかのLNG売買契約に関わる当事者発表がなされたが、米国産LNGの中国向けの中期契約の商談成立の一方で欧州向けでは一部商談の頓挫が報じられた。
アジア・オセアニア地域
- 2020年10月20日、セントラルLNGシッピング株式会社が保有するLNGバンカリング船「かぐや」が、株式会社新来島豊橋造船(愛知県豊橋市)のバースで、日本郵船の自動車専用船「SAKURA LEADER」向けに、日本初となる船から船への(Ship to Ship方式による)LNG燃料の供給を行った。LNG燃料はJERAの川越火力発電所(三重県)にて積み込まれたもの。
- 上海石油天然ガス取引所(SHPGX)は、2020年11月2日、初の国際LNG入札取引を実施した。CNOOCはAramco Trading Singapore から2021年3月に6.5万トンのLNGを購入することとなる。
- Total は2020年10月20日、自社初となるカーボンニュートラルLNGカーゴを中国海洋石油(CNOOC)に2020年9月29日に納入したことを発表した。このカーゴは豪州 Ichthys 設備からのもので、中国の大鵬基地に引き渡された。この「カーボンニュートラル」とは、 Total と CNOOC が当該LNGカーゴのカーボンフットプリント全量を、VCS (Verified Carbon Standards、実証カーボン基準)認証の排出削減プロジェクトを通じて相殺していることを意味している。
- 現地報道によると、2020年11月2日の11時45分、 中国広西チワン族自治区の北海LNG受入基地の貯蔵タンクの一つで火災が発生し、11時55分に鎮火したが、6人が死亡、3人が負傷した。同基地は、2016年に操業を開始しており、当初は中国石化(SINOPEC)が所有していた。現在はPipeChina(国家石油天然ガスパイプラインネットワークグループ)の管理下にあり、LNG受入能力は年間600万トン、容量16万立方メートルのタンク4基を有している。火災は第2タンクで発生したとされる。
- Qatar Petroleum (QP) は2020年11月9日、LNGトレーディング専業部門 QP Trading LLC がシンガポール Pavilion Energy Trading & Supply Pte. Ltd. と初の契約を締結したと発表した。 QP Trading はシンガポール向けに年間最大180万トンのLNG を10年間納入する。この取引は、当該LNG供給のカーボンフットプリントを最終的に削減するために設計された特定の環境基準と要件を含む初の長期的なLNG取引となる、とQPは述べた。
- マレーシア PETRONAS は2020年11月5日、2050年までにネットゼロカーボンエミッションを実現するとの目標を発表した。
- マレーシア PETRONAS は2020年11月11日、ジョホール州 Pasir Gudang で初のLNGバンカリングを完了し、LNGバンカリング事業を正式に開始したと発表した。 Titan LNG との協業により、このオペレーションでは、PETRONAS初のLNGバンカリング船(LBV)である MV Avenir Advantage(容積7,500立方メートル)からSIEM Aristotle 向けに船舶間移送(STS)のLNGバンカリングが行われた。
- JERAは2020年10月28日、ExxonMobil Hai Phong Energy Pte Ltd(EMPHE)、ハイフォン人民委員会との間でベトナム北部ハイフォン市におけるLNG to Power統合プロジェクトの可能性について協力するための覚書を締結したと発表した。ExxonMobilは、ベトナムの国家電力開発計画にプロジェクトコンセプトを盛り込んだマスタープラン申請書を提出している。JERAによると、同プロジェクトは日米戦略的エネルギーパートナーシップ(JUSEP)の目標に沿ったものであるという。
- Venice Energy は2020年11月4日、アデレード港で提案されているLNG輸入設備の開発を支援するための枠組みを定めたプロジェクト契約をFlinders Ports と締結したと発表した。 Venice Energy によると、は年間約80ペタジュールのLNGを南オーストラリア州に搬入することが期待されているという。10月下旬、Venice Energy は州政府に開発申請書を提出した。このプロジェクトには、LNG船、係留浮体式貯蔵・再ガス化装置(FSRU)、およびそれを支えるインフラを収容するための2つのバースの新しい埠頭施設の建設と運営が含まれている。提案された設備はPelican Point ガス火力発電設備に隣接し、2022年後半までに稼働開始を見込んでいる。
- 豪 Origin Energy は2020年11月17日、タスマニア州 Bell Bay で輸出規模でのグリーン水素・アンモニア生産設備建設の320万豪ドルでのFS調査を実施することを発表した。グリーン水素は再生可能エネルギーを利用して水から製造され、この水素が大気中から抽出された窒素と化合してグリーンアンモニアが生産される。この500 MWを超える設備は、年間42万トンを超えるゼロエミッション・アンモニアを生産することとなる。グリーンアンモニアの生産開始は、2020年代半ばを目標としており、この調査の一部はタスマニア州政府からの160万豪ドルの補助金で賄われる。
- 豪 Santos は2020年10月22日、 クーパー盆地のStrzelecki鉱区の枯渇ガス貯留層に、Moomba炭素回収・貯留(CCS)プロジェクトの最終フィールド試験の一環として100トンの二酸化炭素を注入したと発表した。Santosは、2020年末までに年間170万トンのプロジェクトをFIDに向けて準備するとして、技術的および商業的な取り決めを行う予定。最終的にMoomba CCSプロジェクトは年間最大2,000万トンの二酸化炭素を貯留できる可能性があると同社は述べている。
- 豪 Woodside は2020年11月11日に開催されたInvestor Briefing Day 2020において、Pluto プロジェクト第2系列の50%の権益の売却を想定していることを示した。同社によれば、Scarborough、 Pluto 第2系列のFIDのタイミングは2021年後半、Scarborough 合弁事業体は2026年にLNG生産を開始する予定である。
- Shell は、2020年第3四半期、16億3600万米ドルの減損を計上し、主として豪 Prelude 浮体LNG関連(税引前13億2700万米ドル)が影響した。この減損は生産見通しの修正を反映したもので、2020年中に同プロジェクトの生産再開は見込めないという。
北米地域
- EIAの天然ガス月報(2020年10月30日)によると、2020年8月の米国の天然ガス生産は、4ヶ月連続で前年同月を下回った。8月分は速報値で2兆8,010億立方フィート、または日量904億立方フィートで、前年同月比で日量45億立方フィート(-4.7%)減となった。2020年8月の天然ガスの推定消費量は2兆4,070億立方フィート、日量776億立方フィートで、前年同月比日量11億立方フィート(-1.4%)減となった。2020年8月のLNG輸出は、前年同月比19.4%減の日量36億立方フィートだった。
- 米国エネルギー省(DOE)は2020年10月、合わせて10件の長期LNG輸出許可の条件を2050年まで延長したと発表した。これは、非自由貿易協定(Non-FTA)国への長期天然ガス輸出許可を2050年まで延長することを認めるDOEの2020年7月の政策を踏襲している。認可を受けたのは、Venture Global Calcasieu Pass, LLC、Venture Global Plaquemines LNG, LLC、Rio Grande LNG, LLC、Dominion Energy Cove Point LNG, LP、Corpus Christi Liquefaction Stage III, LLC、フリーポート事業体Freeport LNG Expansion, L.P.、FLNG Liquefaction, LLC、FLNG Liquefaction 2, LLC、FLNG Liquefaction 3, LLC、FLNG Liquefaction 4, LLC、Cheniere EnergyのSabine Pass LNG、Corpus Christi LNG、およびSempra EnergyのPort Arthur LNG。
- Cheniere Energy は2020年第3四半期に4億6300万米ドルの損失を計上した。2020年9月までの3ヶ月間と9ヶ月間に、顧客が引き渡しを受けないことを同社に通知していたLNGカーゴに関連した収益として、それぞれ1億7,100万米ドルと9億3,200万ドルを計上した。Corpus Christi 第3系列、 Sabine Pass 第6系列は2021年第1四半期と2022年下半期に実質的な完成が見込まれる。
- Dominion Energy は2020年11月2日、同社が保有するガス輸送・貯蔵資産の大半について Berkshire Hathaway への売却が完了したことを発表した。譲渡された事業は、Dominion Energyが操業する州際ガス輸送パイプライン5,500マイル(8,851 km)以上、ガス貯蔵7,750億立方フィート(1,613万トン)、 Cove Point における操業権付25%持ち分である。 Questar Pipelines の権益売却は2021年初に完了が見込まれる。
- 米 Venture Global LNG は2020年11月10日、Calcasieu Pass LNG 輸出設備に最初の2本の液化系列が到着したことを発表した。この年間60万トンのLNG系列は、プロジェクトのFIDから15ヶ月間以内に工場で組み立てられ引き渡されたもので、これら2台のモジュラー液化系列と混合冷媒コンプレッサースキッドは、イタリアのBaker Hughes 製造施設からルイジアナ州に輸送された。
- カナダ・ブリティッシュコロンビア州環境評価部門は2020年10月26日、Woodfibre LNG Limited が Woodfibre LNG プロジェクトの実質開始期限を5年延長する許可を受けたと発表した。新たな期限は2025年10月26日となる。
- Sempra Energy は2020年11月17日、メキシコのバハ・カリフォルニア州にあるEnergía Costa Azul(ECA)の気化基地に液化・輸出能力を追加するECA LNGフェーズ1を建設するための新規投資を決定したと発表した。ECA LNGフェーズ1は、2020年にFIDに達した唯一のLNG輸出プロジェクトで、米国の天然ガスを太平洋沿岸諸国の市場に接続する太平洋沿岸初のLNG輸出設備となる。ECA LNGフェーズ1のための約20億ドルの設備投資に加え、メキシコでの約4億ドルの新規パイプラインがIEnovaによって開発・所有され、Sempra全体で約25億ドルの追加投資が行われることになる。
欧州・ロシア地域
- Engie は、米 NextDecade との話し合いを打ち切り、LNG輸入契約を締結しないことを現地メディアに2020年11月3日に確認した。
- LTeW (LNG Terminal Wilhelmshaven GmbH)は2020年11月6日、ドイツのヴィルヘルムスハーフェンのLNG基地計画を見直していると発表した。同社はその理由として、現在の環境下で拘束力ある形で基地容量を予約することに市場関係者が消極的であることを挙げた。プロジェクトを推進する同社は、ヴィルヘルムスハーフェンの敷地を環境に優しいガスの輸入港として利用するために、新たな選択肢を既に検討している。
- ノルウェー Equinor は2020年9月28日に発生したHammerfest LNG 設備の火災による被害状況を調査した結果、修繕のため2021年10月1日まで同設備を閉鎖することを明らかにした。同設備の5基の発電用タービンのうち1基の吸気口部の火災での損傷に加え、消火時に用いた大量の海水により、設備内の電気系統やケーブルなどの他の補助システムが損傷しているという。
- ノルウェー Equinor は2020年11月17日、自国の石油類産業安全監視機関(PSA)より、 2020年9月21 日から 24日にかけて発生したHammerfest LNG 設備における事故および電気システムの検査に関する報告を受領したと発表した。 Equinor は、PSAの報告で指摘されている不備・改善箇所にかかる対応を開始している。今回のPSA報告は、不備への対処に関して適用・実施に関する体系的なアプローチが欠けていると結論付けている。さらに同報告は、過去の検査においてPSAが指摘していた問題点に対して是正やフォローアップが不足していることも指摘しており、今回の検査で、不備への対処に関して規制に対する重大な違反が証明されたとして、 Equinor に対して特定された不備・フォローアップに関する記録方法、特定された不備に対する着実な対処に関する自社の手法を見直し、確実に遵守するための必要な措置を実施するように命じている。
その他地域
- ADNOCは2020年11月12日、 Total との間で、二酸化炭素排出削減と炭素回収・利用・貯蔵(CCUS)分野での共同研究・開発・実施機会検討の戦略枠組協定を締結したと発表した。ADNOCの Al Reyadah 設備における中東初の商業規模CCUS設備は、年間80万トンの二酸化炭素を回収できるとしている。ADNOCは自社のガス諸設備から二酸化炭素を回収することにより、容量を6倍に拡張することを計画しており、2030年までに年間500万トンを回収することを目指しているとしている。
- ADNOC LNG は2020年11月11日、 Vitol と2022年以降6年間にわたり、年間180万トンのLNG供給契約を締結し、 Total とは2021 年と 2022年の2年間について年間75万トンのLNG供給契約を締結したことを発表した。
添付ファイル
- 日本のLNG在庫量(16.5KB) (2020/11/26更新)
- 米国天然ガス地下貯蔵量(47.1KB) (2020/11/26更新)
- 欧州天然ガス貯蔵量(274.2KB) (2020/11/26更新)