2021年2月
天然ガス・LNG価格動向
直近の値動き
- 北東アジアのアセスメントされたスポットLNG価格JKM(期近分)は、2021年1月12日に史上最高値の100万Btu当たり32.5米ドルを記録したのち、寒波の緩和や追加LNGカーゴが確保されたこと等により1月下旬に8米ドル台まで下落、2月に入り7米ドルを下回り、2月下旬は6米ドル前半を推移している。経済産業省統計速報によれば、1月契約ベースのスポットLNG価格は18.5米ドル(12月比11.1米ドル上昇)、1月入着ベースのスポットLNG価格は15.5米ドル(12月比 8.7米ドル上昇)と、経済産業省が公表を開始した2014年3月以来の最高値となった。
- 1月の米国の気温は昨年より低かったものの、HHは欧州やアジアに比べて安定して推移した。2月に入り、気温の低下と引き続き旺盛なLNG輸出により、価格はやや上昇、2月中旬にはテキサス州の寒波の影響を受けて3米ドルを上回った。依然として他地域のスポット市場との価格差は大きく、今後もLNG輸出量は高水準になると予想され、価格は堅調に推移すると考えられる。また、米国の一部地域では、寒波の影響により記録的なスポットガス価格の高騰が見られた。
- TTFは1月の7米ドル前半から2月に入りやや下落し、2月下旬には6米ドルを下回り5米ドル後半を推移している。欧州でも昨年より気温が低下して需要は増加し、地下貯蔵量は減少して5年平均を下回ったが、アジア向けスポットLNG価格の高騰が落ち着いたため、欧州向けのLNG輸出も徐々に回復すると思われる。
- 財務省貿易統計速報に基づく2021年1月の日本平均LNG輸入価格は8.45米ドルであった。供給地域別では、ASEAN地域産が8.00米ドル、中東産が7.51米ドル、ロシア産が8.09米ドルと全体平均を下回ったが、米国産は9.92米ドルと全体平均を上回った。1月の日本平均LNG輸入価格は、北東アジアのスポットLNG価格の1月引き渡し分平均8.17米ドルに対して1.03倍と、2020年6月に約4倍であった差は大幅に縮小した。なお、1月の日本のLNG輸入量は、寒波の影響もあり806.0万トンと前年同月比で7.3%増加し、2018年2月以来の800万トン超えとなった。このうち米国産は95万トンと過去最大の輸入量となった。
中長期の値動き
- JKMは、2019年冬期は6米ドル前後の水準にあったが、2020年1月以降、供給拡大とCOVID-19による需要減少により下落基調となり、2020年4月末には史上最安値の1.83米ドルを記録した。5月以降2米ドル台が続いたが、8月に入り複数の生産設備での供給障害により上昇基調に転じ、12月には10米ドル台を超え、2021年1月には寒波の影響で需要が急増し32.5米ドルの史上最高値を付けた。この上昇率は下落時と同様に過去に類を見ない顕著なものとなった。ただし、実際にその価格水準で取引されたカーゴ数は限定的と想定される。
- 日本平均LNG輸入価格は、2020年3月以降の原油価格急落の影響により、8月から10月にかけて2005年1月以来の低水準となる5米ドル台まで下落、その後原油価格の回復に伴い、12月には7米ドル台に上昇した。2021年1月は8米ドル半ばまで上昇したが、その理由としては、スポットLNG価格高騰と相対的に高価となった米国産LNGの輸入が多かったことが影響したと推定される。
- 2019年から2020年9月頃まで、JKM当該月引き渡し分期近平均は日本平均LNG輸入価格を大きく下回ってきた。その傾向が強まっていた理由として、米国を中心とした世界的な供給拡大に対し、日本と韓国等の需要が減少し、COVID-19の影響もあり在庫が積み上がったことでスポット市場が緩和していたことが挙げられる。なお、2021年1月の日本、韓国、台湾合計のLNG輸入量は1,393万トンで、2020年同期比で109.5万トン、8.5%増となり、寒冷化の影響により輸入量は増加した。
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(出典)
米国HH(Henry Hub)価格: NYMEX Futures and Options, CME Group
英国NBP(National Balancing Point)価格: ICE Futures Europe, Intercontinental Exchange
蘭TTF(Title Transfer Facility)価格:ICE Futures Europe, Intercontinental Exchange
JKM: LNG Japan/Korea Marker© 2021 by S&P Global Platts, a division of S&P Global Inc.
METIスポットLNG価格: 経済産業省「スポットLNG価格調査」
日本平均LNG輸入価格: 財務省貿易統計をもとに作成
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天然ガス・LNG在庫動向
日本
- 2020年10月末の国内LNG在庫量は433万tで、前月比4.8%、20万tの増加、前年同月比7.3%の減少となった。LNG在庫量は8月に大幅に減少した後、10月末まで過去5年平均値とほぼ同じ水準を維持した。
- 10月末のガス事業用LNG在庫量は187万tで、前月比4.9%減、前年同月比では19.4%の減少となった。2020年10月の都市ガス用LNG消費量は前年同月比2.0%増の226万t、都市ガス用LNG受入量は前年同月比2.2%増の217万tだった。10月の受入量は、2020年3月以来7か月ぶりに前年同月比で増加したが、10月は消費量が受入量を上回ったため、ガス事業用LNG在庫は前月から減少し、前年同月比でも大きく下回った。
- 10月末の発電燃料用LNG在庫量は246万tで前月比13.6%増、前年同月比4.6%の増加となった。2020年10月の発電燃料用LNG消費量は、前年同月比で2.3%増の372万t、発電燃料用LNG受入量は、前年同月比で10.1%減の398万tであった。10月の受入量は減少したものの、消費量を上回ったことから、発電燃料用LNG在庫量は前月比、前年同月比ともに増加した。
- 気象庁の予報では、2021年2月から4月にかけての平均気温は全国的に平年並みか高めと見込まれている。12月中旬から1月中旬にかけて全国的な寒波に度々見舞われ国内LNG在庫量が低水準となったが、2月以降はLNG消費量も想定範囲内に落ち着き、LNG在庫水準も回復するものと想定される。
(出典)
経済産業省「ガス事業主生産動態統計」及び「電力調査統計・火力発電燃料実績」をもとに作成したもので、これら月末在庫を合算した値を国内在庫としてみなしたもの。なお、利用可能なデータは2008年1月以降のものであるため、過去5年平均は2013年1月分から計算している。
米国
- 2021年2月19日の米国天然ガス地下貯蔵有効稼働ガス在庫は、米国エネルギー情報局(EIA)のデータによると、1.94 Tcfで前月から32.6%減少した。在庫量は2020年の同時期と比較すると11.7%低く、過去5年平均値を161 Bcf 下回った。米国での寒波の影響により天然ガスの暖房需要が増加し、週間引き出し量としては過去2番目に多くなった。
- EIAが2021年2月に発表した月例の短期エネルギー展望(Short-Term Energy Outlook)によると、1月の在庫の払い出し量は0.70 Tcfであった。この値は先月の予測値よりも低かったが、米国の1月の平均気温が例年よりも暖かく、暖房用の天然ガスの消費量が減少したことが理由として挙げられる。EIAはこの冬は米国の天然ガス生産量が昨年より減少しているため、天然ガス消費量の減少を十分に相殺し、天然ガス貯蔵量が冬の終わりまでに過去5年平均値近くの水準に戻ると予測している(公表された時点では寒波の影響は反映されていない)。
(出典)
米国エネルギー情報局(U.S. Energy Information Administration, EIA)のデータをもとに作成
欧州
- 2021年2月17日現在のAggregated Gas Storage Inventory(AGSI+)加盟各社中の欧州連合(EU)・英国各社が有する欧州天然ガス地下貯蔵在庫は445 TWh、前月比34.3%減、前年同期比では38.0%減少し、同時期の過去5年平均よりも50.0TWh低い。貯蔵容量に対する充填率は2021年2月23日時点で37.9%と、過去5年間の同時期の充填率レンジ33% - 65%の範囲内に入っているものの、1月中旬以降、5年平均値を下回っている。
- 欧州天然ガス地下在庫量は2021年1月に入ってから急激に減少しており、1月中旬に、2018年8月以来の1年5ヵ月ぶりに過去5年平均値を下回ってからも減少を続けている。欧州のLNG輸入量は2020年下期以降低位で推移しており、特に冬期のLNG輸入量はアジアスポットLNG価格高騰を受けて大幅に減少したことが影響したとみられる。貯蔵容量が多い国のうち、ドイツの減少が特に早く、充填率は2月17時点32%となっている。これは2月としては2018年以来の水準である。
(出典)
Aggregated Gas Storage Inventory(AGSI), Gas Infrastructure Europeのデータをもとに作成。なお、利用可能なデータは2011年1月以降のものであるため、過去5年平均は2016年1月分から計算している。
天然ガス・LNGプロジェクト動向
ハイライト
- 2021年2月上旬、LNGプロジェクトとして史上最大規模となる最終投資決定(FID)がカタールで発表された。脱炭素、ネットゼロの動きが活発化しているが、カタールのプロジェクトについても、CCS利用や操業時の電力を再エネから調達するといった温室効果ガス対策が織り込まれている。
アジア・オセアニア地域
- JERAは2021年2月10日、Petronasとの間で脱炭素分野等での協業に関する覚書を締結したことを発表した。アジア諸国におけるLNGの利用促進やアンモニア・水素燃料のサプライチェーン構築に関して、両社の連携の可能性を協議することを定めたとしている。
- bpは2021年1月25日、bpが輸入したLNGを原料とするガスを中国の顧客に直接供給を開始したとして、初となる中国向けの完全統合型ガスバリューチェーンを実現したと発表した。bpは広東大鵬(GDLNG)受入基地に30%出資しており、年間60万トンの気化容量を有する。bpは2020年に新奥集団(ENN)、佛燃能源(Foran Energy)とガス供給契約を締結しており、両社向けに各年間30万トンを2021年から2年間供給する。
- Petronasは2021年2月15日、自社2基目の浮体LNG生産設備(FLNG) のPFLNG DUA がLNG生産を開始したことを発表した。同設備は現在、サバ州コタキナバル沖 Rotan ガス田に位置している。PTT Exploration and Production (PTTEP)と共同で操業しており、2021年3月中旬までにLNGカーゴを買主に引き渡す見込み。PFLNG DUA は最大水深1,500mに対応しており、年間150万トンのLNGを生産できる。
- タイTTCLは、子会社 TTCL Power Myanmarが2021年1月20日、ミャンマー電力・エネルギー省(MOEE)傘下の国営企業 Electric Power Generation Enterpriseとの間で、ヤンゴン地域 のAhlone LNG火力発電プロジェクト(388MW)に関して売電契約(PPA)を締結したことを発表した。本プロジェクトは、現在は双日、四国電力、国際石油開発帝石(INPEX)と共同で開発されている。電力供給は2024年から2049年までの予定で、ミャンマーで初のLNG発電設備となる。
- 東京ガスエンジニアリングソリューションズは、バングラデシPetrobangla から、陸上LNG受入基地に関する事業化調査、エンジニアリングおよびディベロッパー選定マネジメント業務を日本工営株式会社と共同で受注したことを2021年1月29日に発表した。
- 豪州連邦政府は2021年1月21日、東海岸のLNG企業 Australia Pacific LNG、 Queensland Curtis LNG、GLNG との間で、少なくとも 2023 年まで自国の東部市場への競争力ある価格でのガス供給を確保するための新たな合意(HOA)を発表した。政府はまた、新たなガス供給を開放するという公約を継続しており、North BowenとGalilee盆地での作業も進んでいるとコメントした。
- 豪 Woodside は2021年2月19日、 Woodside Energy Trading Singapore とRWE Supply & Trading との間で、 自社ポートフォリオから年間84万トンのLNGを2025年から7年間にわたり売買する契約(SPA)を締結したことを発表した。 Woodside は本SPAについて、カーボンニュートラルLNGの生産とトレーディングに関しても検討する機会となると述べた。また2020年10月には、 WoodsideとRWEは相互に有益な水素関連の機会について協議する覚書(MOU)を締結している。
- 豪 Transborders Energy は2021年1月27日、海洋ガス田の商業化を推進するため、FLNGソリューション・フレームワーク契約を締結したことを発表した。提携先は Add Energy Group、九州電力、商船三井、 SBM Offshore、 TechnipFMC としている。
北米地域
- 米連邦エネルギー省(DOE) "LNG Annual Report 2020"によれば、米国の2020年LNG輸出量は前年から32%増加し、約5,000万トンとなった。
- 全米州際天然ガス協会(INGAA、パイプライン・貯蔵設備運営企業の団体)は2021年1月26日、2050年までに天然ガス輸送・貯蔵からの温室効果ガス(GHG)排出ネットゼロに向け業界として協力することを含む、気候変動対応への取り組みを支援するためのミッションを示すコミットメントを発表した。
- Sempra LNG 子会社 LA Storage は、2021年1月29日、米連邦エネルギー規制員会(FERC)に、ルイジアナ州ハックベリーの天然ガス貯蔵岩塩ドーム設備の建設許可を申請し、FERCに対し2022年1月31日までの承認を要請した。現在塩水で満たされている3件の岩塩ドームの改造と新規開発の1件から成り、2024年第1四半期までに稼働を開始できる見込み。当該貯蔵設備は複数のLNG輸出設備に供給するガスパイプラインから近傍に位置するため、柔軟なガスの供給や貯蔵に役立つと期待されている。
- Venture Global LNG は2021年2月11日、JPMorgan Chase、 Morgan Stanley、みずほ銀行、 Bank of America と5億米ドルの融資契約を締結したことを発表した。Plaquemines LNG 輸出プロジェクトのFID建設準備資金、また自社活動全般に用いられる。
欧州・ロシア地域
- Fluxys LNG は2021年2月15日、ベルギーZeebrugge LNG 基地の気化能力拡張にかかるFIDを行ったことを発表した。2024年初から年間470万トン、2026年初から130万トン分が気化容量として追加される。
- NOVATEK は、2021年1月29日、ドイツUniper と、水素バリューチェーン開発可能性を検討する基本合意(MOU)を締結したことを発表した。両社は、 Uniper のロシア、西欧の発電設備向け水素供給を含む統合水素生産、輸送、供給チェーンを開発する。
- NOVATEK と米Baker Hughes 子会社 Nuovo Pignoneは2021年2月1日、CO2排出削減を目指す協力協定を締結した。両社は天然ガス、LNG生産向け電気・ガスタービンやCO2排出削減ソリューションの開発で協力していく予定で、ガスタービンを水素ベースの燃料ガス混合への転換を目指すとしている。
その他地域
- Qatar Petroleum (QP)は2021年2月8日、自国のLNG生産能力を年間1.1億トンに拡張する North Field East (NFE)プロジェクトのFIDを発表した。2025年第4四半期生産開始見込みで、陸上エンジニアリング・調達・建設(EPC)契約は千代田化工建設、 Technip Energies との間で締結された。QPは、NFEプロジェクトのCO2回収・貯留(CCS)システムはラスラファンの広範囲のCCSの一部として統合されると述べた。QPは新たな太陽光発電設備から電力を確保し、「桟橋ボイルオフガス」回収システムは、CO2換算で年間100万トン程度の温室効果ガス削減に役立つとしている。次の North Field South (NFS)プロジェクトでは、LNG生産能力を年間1.26億トンまで拡張する予定で、2系列を建設し2027年の生産開始見込みとしている。またQPは1.26億トンを超えるさらなる拡張も検討している。
- Equinor は2021年1月29日、2020年第4四半期決算において、Tanzania LNG プロジェクト(TLNG)簿価を9.82億米ドル減額することを決定したと発表した。同社はTLNG実現に向けてタンザニア政府との検討を継続する。
- パナマ運河当局は2021年2月3日、2021年1月のLNG船の通航が58隻と過去最高を記録したと発表した。2021年1月に通航予約システムが変更され、ネオパナマックス船舶の利用枠があれば、通航96時間前に競売方式でオファーされる。実際にネオパナマックス船舶について25回の競売が実施され、うち9件はLNG船に落札された。
添付ファイル
- 日本のLNG在庫量(16.7KB) (2021/2/26更新)
- 米国天然ガス地下貯蔵量(47.7KB) (2021/2/26更新)
- 欧州天然ガス貯蔵量(282.2KB) (2021/2/26更新)